勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    文大統領は、なりふり構わないで北朝鮮接近人事を始めた。政策は、ことごとく八方塞がりである。そこで最後の突破口として、北のご機嫌取りをしようという狙いに違いない。このままでは、文政権5年間の治績がゼロどころかマイナスになる。

     

    北朝鮮が、ここまで荒々しい振る舞いを始めた理由は、文大統領の「甘い見通し」による。ハノイでの米朝会談が破談になったのは、文氏が北側に根拠不明の楽観論を伝えて、北朝鮮に過剰期待を持たせたことだ。それ以後、北は韓国を完全に信用しなくなっている。こういう状況下で、韓国は「北朝鮮歓迎人事」を行なおうとしている。文大統領任期中の南北会談を期待しているのだ。

     

    『朝鮮日報』(7月4日付)は、「違法に対北送金した人物が国家情報院長、安全保障は誰が守るのか」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅大統領は3日、国家情報院(韓国の情報機関。国情院)トップに朴智元(パク・チウォン)元「民生党」議員を内定した。青瓦台(韓国大統領府)安保室長には徐薫(ソ・フン)国情院長、統一部(省に相当)長官には仁栄(イ・インヨン)議員、外交・安保特補にはイム・ジョンソク元秘書室長と鄭義溶(チョン・ウィヨン)安保室長をそれぞれ内定した。北朝鮮の核の廃棄より、ほとんど無条件の対北融和策を主張してきた人物で塗りつぶされている。

     

    (1)「国情院長に内定した朴智元氏は2000年、金大中(キム・デジュン)大統領の密使として北朝鮮側と初の南北首脳会談開催に合意し、その首脳会談を実現させるため金正日(キム・ジョンイル)に4億5000万ドル(約484億円)の裏金を渡す役割を担った。その支援で、金正日は「苦難の行軍」の危機を乗り越えて核開発に拍車をかけ、6年後には最初の核実験に成功した。朴氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に特別検察官の捜査対象になり、収監された」

     

    日本には、韓国のような独立した機関である国家情報院を持っていない。スパイ活動を行なう機関は、平和憲法下では許されないという論理からだ。お陰で、日本では世界中のスパイが、集っていると指摘されている。スパイを捕まえるには、スパイ活動できる機関が必要であろう。

     

    国家情報機関のトップには、それにふさわしい経歴の持ち主でなければならない。韓国では、北朝鮮へ秘密資金を持込んだ「容北人物」が、国家情報院長に指名されたとして、異論を呼んでいる。北朝鮮に甘い人物が、北朝鮮監視役になれるのかという率直な疑問である。

     

    (2)「国情院は、北朝鮮を含むあらゆる外部の脅威から韓国を守るための存在する安全保障の第一線機関だ。韓国軍は戦時に戦う機関だが、国情院は平時にも戦わなければならない機関だ。いつからか韓国の大統領は、国情院を「国の安全に責任を負う情報機関」ではなく、「自分のアジェンダを遂行する密使」とみなしている。情報業務は決してたやすいものではない。誰にやらせてもいいポストではあり得ない。北朝鮮はもちろん、海外・サイバー・対テロ関連であふれ出て来る情報の中から、韓国の安全保障を脅かす情報を読み取れる経験と識見を持っていなければならない。数十年にわたって国内政治にのみ没頭してきた朴内定者に、金正日と接触した経験のほかにいかなる情報専門性があるのか、理解できない

     

    韓国の国家情報院の能力は、落ちていると言われる。米朝ハノイ会談が、破談になることを事前に掴めなかったからだ。日本は、事前に米国から「ノー・ディール」を通報されていたが、韓国には知らされていなかった。北朝鮮に漏れることを警戒されたためだ。文氏は、ハノイ会談が成功すると信じ、米朝首脳の記者会見をTVで見るべく側近と待機していたほどだ。韓国の国家情報院は、事前にこの結末を見抜けず、大恥をかかされた。

     

    (3)「国情院は、韓国の弱点である先端装備を持った米国・日本との情報交流に依存してきた。こうした友邦諸国が、北朝鮮を巡る朴氏の立場や態度をどういう視角から見るか、疑問がある。これらの国々がデリケートな対北情報を国情院とどれだけ共有しようとするか、心配だ。国情院は、板門店首脳会談の1カ月前に金正恩(キム・ジョンウン)が特別列車で訪中したにもかかわらず、これをきちんと把握できなかった。ハノイでトランプが偽りの非核化の場を蹴って出て来るまで、ホワイトハウスの動きも分かっていなかった。現政権になって、北朝鮮のスパイが捕まったという話もほとんど聞かない。逆に、北が新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃った日、スパイの捜査はよそに渡すという「改革案」を発表した」

     

    文政権は結果がどうあれ、北朝鮮重視政策を取らなければ、「レゾンデートル」(存在理由)がないと思い込んでいる。それは、病的とまで言って良いほど。だから、北朝鮮が増長する。こうして悪循環に嵌まっているのだ。

     


    (4)「北朝鮮の核をなくそうと思うなら、北の集団とも交渉しなければならない。しかし北は、南北首脳会談を開いた直後に韓国の警備艇を奇襲して将兵を殺す集団だ。交渉の渦中にあっても、誰かが監視の目を光らせておかなければならない。その仕事ができるのは国情院だけだ。それなのに、国情院長が情報機関のトップではなく対北密使だったら、安全保障は誰が守るのか」

     

    韓国学生運動家が、30年前に「親中朝・反日米」を絶叫した。その時の意識のままで、文政権は北朝鮮政策を行なおうとしている。現実とのギャップの大きさを自覚していないので、対北外交は上手くいくはずがない。韓国進歩派は、北朝鮮の巧妙な外交戦術を全く理解しない「盲目集団」と言うほかない。手玉に取られるだけである。



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    いかにも中国企業がやりそうな詐欺話である。担保の「純金83トン」が、実は銅に金メッキしたものであることがバレタのだ。可笑しいやら呆れるやら、という心境である。「金83トン」は、中国の年間の金生産量の22%、2019年の中国の金準備高の4.2%に相当するという。これだけの「純金」が、一企業の手元にあることに疑いの目を向けずにきたことも驚く。中国社会の縮図である。

     

    『大紀元』(7月3日付)は、「『83トンの純金』金メッキを塗った銅だった、ナスダック上場の中国企業が融資担保に使用」と題する記事を掲載した。

     

    中国最大級の金宝飾メーカーで米ナスダックの上場企業でもある金凰珠宝(King

    -Gold、湖北省武漢市)が、所有すると主張している83トンの純金が、金メッキを塗った銅だったことがわかった。ナスダックの同社市場価格は昨年同期比で80%近く下落した。

     

    (1)「中国国内メディア『財新』によると、金凰珠宝は2015年以降、金を担保に信託会社15社から総額200億元(約3000億円)の融資を受けた。国営の中国人民保険公司(PICC)の子会社が融資保険を提供した。金の偽造問題が発覚したきっかけは、2月に債権者であった東莞信託が、金凰珠宝の債務不履行を精算するために、担保に出された金を確認したことだった。調査の結果、保管していた金は純金ではなく「金メッキを施された銅」だったことが判明した。別の債権者である中国民生信托も裁判所に担保検査を求めた。5月22日、裁判所が倉庫を調べたところ、83トンの「純金の延べ棒」は、すべて金メッキが施された合成の銅(タングステン)であることがわかった」

     

    担保の「純金83トン」が、「メッキされた銅」だったとは、歴史に残る超大型の詐欺話である。普通、担保となる物品は第三者によって鑑定されるはずだが、その「証印」も偽造されていたのであろう。「ニセ物づくり」の中国でも、「特大」の詐欺である。

     

    (2)「『財新』が伝えた情報筋の話によれば、金凰珠宝に投資する者の多くは、湖北省外の企業だという。「賈氏がそんなに多くの金を持っているわけがないとみんな周知している。彼が持っているのは銅だけだ」と、情報筋は述べた。事情を知る投資家たちは、賈氏を怒らせないように黙っているだけだという。市場に精通するアナリスト・楊艶氏はラジオ・フリー・アジアの取材に対し、金鳳珠宝は1994年に設立され、かつて中国人民銀行が所有する金製造工場だったと明かした。賈氏は、陸軍の後方総務を管理する後勤部で金鉱山の管理を担当していた。賈氏は金を偽造したことを否定している。しかし、楊氏は、彼が金製造工場と結託していなければ、この大量の偽物の金を製造することは不可能だとみている」

     

    金鳳珠宝の創業者は、人民解放軍の後方総務を管理する部門に所属していたという。実は、人民解放軍の贈賄事件の温床が、この後方総務に関わった人物によって引き起されている。金鳳珠宝の創業者も、ここで「悪の手法」を学んだに違いない。合成の銅(タングステン)を純金に化けさせたというが、純金と合成銅の重量は同じなのか。持った感じで、「ニセ物」という判別ができなかったのか。それも、不思議である。

     

    (3)「2020年、裁判所から同社に対する強制支払い執行命令がすでに22件にも及んでいる。民生信託、東莞信託および長安信託は6月上旬、金凰珠宝に対して訴訟を起こしている。金凰珠宝の金が発行した融資で未払いの商品は160億元にもなるとされる。賈社長が保有する同社株および関連会社の中国市場の株式は、裁判所により凍結されている。上海金取引所は6月24日、会員規定違反により金凰珠宝の会員資格を取り消したと発表した。米ナスダックでは取引は続いているが、2018年には一株13ドル代を記録した同社の株価は、6月30日の金メッキ報道以降10%近く下がり続けており、7月3日の時点で0.48ドルとなっている」

     

    中国で、「ニセ純金」により資金調達した上、さらに米国ナスダックへ上場するというウソの上塗りをする度胸は「大した」もの。中国社会の拝金思想が、こういう大胆な振る舞いをさせるのであろう。中国に、経済倫理観は存在しない。これは、中国人に来世への信仰という真の宗教が存在しない結果だ。漢民族に、不老長寿を祈願する道教という「ニセ宗教」は存在する。だが、これは信仰と呼べるものでない。こういう社会ゆえに、経済行動を律する経済倫理は育たなかった。哀しい民族である。倫理観なき民族は、発展するはずがない。行動をセルフコントロールする術がないからだ。

     

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    また、中国当局に不都合な事実が発覚した。北京市での新型コロナウイルスの感染者数を実態よりも、大幅に過少発表しているからだ。なぜ、こういう「ウソ」を重ねるのか。自らつくりだした「共産党無謬論」を守るためであろう。だが、中国国民は、この「ウソ情報」を真に受けるだろうか。もともと、「上に政策あり、下に対策あり」という具合に、当局を信用しないで、抜け道を探す国民である。民衆は、裏をかくという特技を持っているのだ。

     

    『大紀元』(7月3日付)は、「北京と河北省、ウイルス感染状況を隠蔽か、内部文書を入手」と題する記事を掲載した。

     

    大紀元はこのほど、新型コロナウイルス患者を治療する北京市地壇病院などの内部文書を入手した。それらによると、北京当局は感染者と診断された患者の数を過少報告している。地壇病院は新発地卸売市場を発生源とする中共ウイルス感染患者全員を受け入れる指定病院だ。

     

    (1)「北京市は、ウイルス感染の第2波の抑制に成功し、対応施設は1つで十分であると主張している。しかし、市政府の内部文書によれば、保健当局は患者の急増を見越して、地元の病院に対して追加のベッドを準備するよう求めていたことがわかった。さらに、発生が拡大した近隣の河北省の県政府からの別の内部文書で、現地の流行状況に関する情報は秘密にしておくべきであると指示している。これらの機密文書は、政府のデータベースにアクセスできる信頼できる情報源から大紀元に提供された」

     

    『大紀元』は、法輪功の機関紙である。法輪功は、理由もなく中国政府(江沢民主席以来)により弾圧されている精神修養団体である。宗教ではない。中国伝統の太極拳の普及団体である。それが、反政府組織として睨まれ弾圧を受けているもの。中国の各層に法輪功支持者がおり、機密情報が『大紀元』に寄せられている。これが、中国共産党の内幕を暴いている。

     


    (2)「北京市の保健委員会は、6月24日の内部文書で、「入院患者との面会は許可しない」としている。北京緊急医療センターは6月22日付けの内部文書で、北京の感染状況が「非常に深刻だ」とし、応援のため湖北省入りした北京の医療スタッフは、当分の間、北京に戻ってこないようにと通知した。さらに、学校に対して生徒の検温を毎日の朝、正午、午後に実施するよう求めた。北京市政府の報道官である徐和建氏は6月30日の記者会見で、この第2波の発生における感染者の総数は325人で、無症状の感染者は27人だと述べた。感染者の増加は6月中旬に始まったという。しかし、第2波の感染者を治療する指定病院、北京地壇病院の馬延芳所長は、国営新聞「健康時報」とのインタビューで、施設のコロナ患者用のベッドは、300床では足りないと語った」

     

    北京地壇病院が、コロナ指定病院になっている。この病院の動きをみれば、北京市のコロナ第2波の動きが掴める。

     

    (3)「大紀元が最近、地壇病院から入手した内部文書によれば、6月の複数の日で核酸検査(PCR)結果が示されている。たとえば、6月19日、地壇病院は773人を検査し、そのうち246人が陽性だった。この報告では、246人全員が同病院で治療を受けている。いっぽう、北京保健委員会は、6月19日に新たに診断された患者は22人のみと発表しており、6月11日以降の累計感染者数は205人だと主張している」

     

    6月19日は、246人が陽性だった。当局の発表では22人に減らされている。実際の8.9%である。大幅な隠蔽である。

     

    (4)「北京市は614日、市内79の医療機関がPCR検査を実施すると発表した。地壇病院だけでも、公式に報告されている陽性の診断が多いことから、他の検査地域での結果も過少報告している可能性がある。別の内部レポートによると、6月17日、地壇病院の外来および入院患者に対して、検査を行ったところ、合計109人の陽性患者を確認した。しかし、北京市は同日、新たに診断された患者は21人と発表した」

     

    北京市地壇病院は6月17日、109人の陽性患者を確認したが、公式発表では21人と5分の1に減らされている。

     

    (5)「北京に隣接する河北省は、6月に新型コロナウイルスが再び流行した。しかし、河北省(人口7400万人)は、感染者はわずか12人だとしている。一方、当局はクラスターが発生したという安新県(人口45.8万人)を封鎖した。国営メディアの新華社によれば、当局は、急病患者を除き、安新県のすべての居住者に在宅するよう要求したと伝えた。生活必需品の買い物は11回、各世帯1人と限定している。いっぽう、ここでも、当局が患者数を過少報告していることが、内部文書で明らかになっている。大紀元は、613日に作成された安新県政府の内部文書を入手した。この内部文書では、政府幹部らにクラスター発生についての情報を公開しないように命じた。「(クラスター)発生に関連するすべての情報は、省政府のみが公開できる」と文書にある」

     

    河北省安新県では、クラスター発生について省政府レベルの報告に止め、中央政府レベルでの情報公開を禁止した内部文書が報告されている。中央政府への報告を禁止されたのは、上からの批判を避けたかったのだろう。こういう省レベルに止まっているコロナ感染者情報は、山ほどあるだろう。

     

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    中国は、自ら蒔いた「コロナ禍」で輸出商談が急減している。伝統の「広州交易会」(6月15日~6月24日)は、初めて商談成立高の発表を取り止めるほどの落込みである。今回の広州交易会は、コロナ感染を恐れてオンライン展示にしたが、世界経済の疲弊を反映し、不振を極めた。中国輸出業者の9割が倒産するのでは、と恐れられている。

     

    広州交易会は、中国の広州で毎年春と秋の2回開催される貿易展示会である。正式名称は、中国輸出入商品交易会、略称、広交会。第1回は1957年春に開催された。古い歴史を持っている。ここでの商談が、中国の輸出規模を示してきた。

     

    『大紀元』(7月2日付)は、「従来型の対外貿易商、90%が消える可能性ーアリババ幹部が発言」と題する記事を掲載した。

     

    中国の李克強首相は6月28日、北京で開かれた対外貿易会議で、対外貿易は厳しい状況にあり、中小零細企業を保護しなければならないと述べた。いっぽう貿易業関係者は、新型コロナウイルスの影響で、対外貿易企業の90%が倒産するとみている。

     

    (1)「官製メディアの『中国新聞網』が6月29日、報じたところによると、国際展示会である「広東フェア」(広州交易会)が初めてオンラインで開催され、「ネット展示会」となった。国内外から2万6000社近くの出展者が集まった。しかし、公式メディアは受注数や受注金額を発表しなかった。米華字メディア「看中国」の記者は、広東フェアに問い合わせたが、数字の公表はなかった。『香港経済日報』は、外資系企業が苦境に立たされていることを反映しているとみており、一定の水準まで回復するには長い時間がかかると伝えた」

     

    新型コロナウイルスで、春の「広州交易会」開催が遅れ、しかも「ネット展示会」となった。商談は激減した模様で、例年のような金額の発表もなかった。中国経済の受ける影響は甚大である。

     


    (2)「6月29日のロイター通信によると、中国当局は海外のサプライヤーに対して「ウイルスが付着していない」との証明を要求しているため、一部の米国の農作物貿易商は中国輸入を断念していると伝えた。米農業関係者は、こうした中国の過剰な動きは、時代遅れで非科学的であり、貿易の障壁を作っていると批判する。新型ウイルスの感染拡大の影響で、中国の対外貿易産業は再編され、一部の外国からの注文はなくなった。ほかの注文は、電子商取引に切り替えられた。従来の対外貿易企業は、存続の危機に直面している

     

    オンライン商談は、不成功であった。対外貿易企業は、存続の危機に立たされている。

     

    (3)「電子商取引大手アリババの国際ステーション担当の張闊総経理は、中国メディア『第一財経』に対して、今日の状況では、オンラインを除いた、従来の対外貿易モデルの企業は「90%が消える可能性がある」と述べた。「このような単一ソースの対外貿易ビジネスは衰退している。多くの生産と販売ルートが停止し、中小企業は活路を断たれた。物流、支払い、為替、税還付などのサービスもパンデミックの影響で滞っている。小規模な貨物輸送業者のいくつかも倒産し、航空輸送も危機的である」という」

     

    貿易縮小は、中国経済の大きなネックになる。とりわけ、中小企業は輸出で生きてきただけに倒産の淵に立たされている。

     

    (4)「張総経理は、対外貿易の商品が国内販売にシフトするかとの質問には否定的な見方を示した。「国内市場は確かに巨大だが、競争はより厳しくなる」とした。「パンデミックは短期的には終息するかもしれないが、分断された世界の取引システムが完全に元に戻ることは期待できない」と消極的だった。現在、中国国有企業の対外貿易では、倒産のリスクが大きいものの、政府からの補助金で生き延びている。しかし、補助金のない民間企業は経営維持が困難になっている」

     

    中国の誇ったサプライチェーンは寸断された。100%、元に戻る可能性はないという。期せずして、米国の狙ったサプライチェーンのシフトが始まったようだ。これだけでも、中国の受ける損失は大きい。民間業者は、輸出補助金も受けられず危機である。

     

    (5)「中国国務院は、対外貿易会社の国内販売へのシフトを支援する方針を打ち出した。『看中国』のコメンテーター唐新元氏は、海外向け商品の規格が国内と異なるため、国内で販売できない可能性が高いとその効果に疑問を呈した。また、多くの対外貿易企業は輸出増値税還付から利益を得ているため、国内販売にシフトすると、この部分の収入がなくなり、経営が困難になる」

     

    対外輸出業者は、取引高の減少で輸出増値税還付も減っている。こうして、生き延びる術を失った形だ。中国経済の「死」は、輸出減から始まる。

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    韓国労組は、現在の「コロナ不況」に無関心である。ひたすら、労組の立場だけを主張して、来年の最低賃金引きで2桁要求を出してきた。今年の韓国経済は、マイナス成長が濃厚である。韓国銀行(中央銀行)によれば、「コロナ不況」が元通りに回復するには、2~4年の歳月を要するという。厳しい予測である。

     

    GDP成長率は、生産性の向上分である。マイナス成長もあり得るという予測は、生産性が落込むことである。労組は、それと無関係に来年の2桁に最賃引き上げ要求である。日本の労組は、経済全体の動きを理解しているから、韓国のような突飛もない賃上げ要求を出すことはない。韓国労組は、韓国経済を滅ぼす積もりだろうか。

     

    『中央日報』(7月3日付)は、「韓国労働界、新型コロナでも『最低賃金2桁の引き上げ率』主張」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの感染拡大で経済危機が深刻化する状況で、労働界は2桁の最低賃金引き上げ率を、経営界は「マイナス引き上げ率」をそれぞれ固守した。労使間の溝が大きく、最低賃金が新型コロナ不況局面の重大変数に浮上した。しかし労使の苦痛分担を通じた合意の可能性は大きくない。

     

    (1)「1日、開かれた第4回最低賃金委員会全員会議で、労働界は来年の最低賃金水準を今年の8590ウォン(約768円)より16.4%上げた時給1万ウォンを提示した。3年間で最低賃金が33%上がったが、再び急激な引き上げ率を主張したのだ。労働界は最低賃金を1万ウォンに引き上げねば1人世帯の生計費水準に合わせられないと主張した。労働者委員のイ・ドンホ韓国労総事務総長はこの日の会議で「来年の最低賃金算入範囲まで拡大すれば実質賃金上昇率が低くなる」として1万ウォンを提示した理由を明らかにした」

     


    文大統領の就任後の3年間(2018~20年)で、最賃は33%もの引上である。労組はさらに、来年16.4%の噴き上げ要求である。非常識という以外に言葉はない。労組の言い分は、「賃上げで個人消費を増やそう」というもの。昔の日本でも、こういう要求が出ていた。韓国は、いまでもこういう「時代遅れの」要求を出している。

     

    (2)「これに対し経営界は2.1%減らした8410ウォンを提案した。新型コロナの感染拡大で中小企業・小商工人が厳しい状況だけに人件費負担を減らすべきという理由からだ。韓国経営者総協会(経総)は稼いでも利子も返せない企業の割合が増加し続けていると強調した。韓国銀行が集計したこの割合は2018年の31.3%から昨年は34.1%に増えた。コロナ不況の中で限界企業はさらに増えることが確実視される。使用者委員のリュ・ギジョン経総専務は、「企業を生かし雇用を守る課題を考えれば現在の経済状況を(来年の最低賃金引き上げ率に)反映すべきだろう」と話した」

     

    韓国では、最賃の大幅引き上げをするほど、解雇者が増える構造になっている。最賃引き上げ幅を守れない経営者は、罰則を受けるシステムであるからだ。業績不良企業は、解雇者を増やして、事態を乗り切るのである。最賃大幅引上げ=失業者増加である。

     


    (3)「労使対立の激化で特に泣かされているのは中小企業だ。中小企業中央会スマート雇用本部のイ・テヒ本部長は「中小企業界では最近会社そのものが存廃の岐路に立たされているのに最低賃金議論自体に何の意味があるのかと苦しさを吐露する人が多い」と伝えた。最低賃金引き上げは事業主にだけ負担になるのではない。賃金水準が低い小規模事業者に所属する労働者も過半数が最低賃金据え置きを望んだ。最低賃金引き上げが、結局雇用減少につながるということを体感したためだ」

     

    最賃引き上げ=雇用減少であるのは、韓国経済の最大欠陥である。

     

    (4)「中小企業中央会が、最近発表した「2021年最低賃金関連中小企業労働者意見調査」によると、中小企業の従業員の51.7%は来年の最低賃金を据え置くべきと答えた。今年より引き下げるべきという回答は5%、引き上げるべきという意見は43.3%だった。労使政が雇用を維持する代わりに最低賃金を据え置くよう合意することに63%が賛成した。釜山(プサン)大学法学専門大学院のクォン・ヒョク教授は、「(巨大労組が)過去のように自己主張だけするならコロナ危機局面で国民の支持を受けにくいだろう。政策的・理念的な正当性よりは客観的に経済状況を診断し労使間の溝を狭めていこうとする努力をすべきだ」と話した」

     

    最賃引上の恩典を受けるはずの中小企業従業員の51.7%が、据え置きを希望している。これは、解雇者を増やすこれまでの経験に基づくもの。最賃大幅引上げで一番のメリットは、大企業労組が受けているのだ。

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