勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

    a0960_008532_m
       


    中国は、住宅不況の影響で鉄鋼需要は年間で約4500万トンも縮小しており、過剰設備の圧力が鉄鋼市況の低下をもたらしている。現在(9月時点)の鉄鋼業界の稼働率(操業度)は、約74.%である。とくに中小の民間製鉄所では、不動産不況の影響を強く受けており、稼働率が60%台に落ち込んでいる。

     

    かつては、強制的に鉄鋼設備の廃棄を行なったが、現在はそういう強制性はないものの、新規の鉄鋼投資では、1.5倍の旧設備廃棄を義務づけることになった。新規投資による過剰設備を防ぐ目的である。

     

    『ロイター』(10月25日付)は、「中国、鉄鋼生産抑制へ対策強化 電炉や水素還元技術を奨励」と題する記事を掲載した。

     

    中国工業情報化省は24日、鉄鋼生産能力の抑制に向けた強化案を発表した。新たに鉄鋼生産能力を追加する際、それを上回る既存生産能力の削減を義務付けることなどが柱。温室効果ガスの排出削減につながる電炉の導入促進や水素還元製鉄の技術開発を奨励することも打ち出した。

     

    (1)「中国は2024年8月、鉄鋼業界の過剰生産能力を抑制する従来のプログラムについて、見直しのため一時停止すると発表した。このプログラムでは、鉄鋼生産能力を追加する際に、既存の生産能力を少なくとも同量減らすことを義務付けていた。工業情報化省の声明によると、鉄鋼の総生産量に明確な目標が設定されている省・市では、他地域からの生産能力移転を受け入れることができないとされた。また、新規生産能力1トンに対して、少なくとも1.5トンの既存生産能力を削減することを義務付ける」

     

    鉄鋼産業は、温室効果ガス削減の観点から、電炉の導入促進や水素還元製鉄技術の開発が奨励されている。単なる能力削減ではなく、技術革新と環境対応を含めた構造改革の色合いが濃くなっている。

     

    (2)「北京、天津、河北およびその周辺、長江デルタ地域といった重点地域では、新規の鉄鋼生産能力を追加することや、非重点地域から重点地域への生産能力の移転、重点地域間の生産能力の移転について、いずれも禁止する。このほか、鉄スクラップの利用を促進して電炉を計画的に展開することや、水素還元の製鉄技術を開発することを奨励するとした」

     

    鉄鋼産業は、多量の二酸化炭素の排出で問題を起こしている。それだけに新規設備投資では、過剰設備の削減も同時に行なう。2025年時点での中国の鉄鋼生産能力は、約10億トンに達している。これは、世界全体の粗鋼生産の約半分を占めるので、過剰設備であることは間違いない。操業度80%が「適正」とすれば、現在の能力のうち約2億トンが過剰と見なされている。設備が稼働していなくても、「存在している限り」市場の供給圧力となり、価格や需給バランスに影響を与え続ける。早急な設備調整が必要な背景である。

     


    a0005_000022_m
       


    中国の15次5カ年計画(26~30年)は、相変わらずの供給力先行である。「新質生産力」では、新たにAI(人工知能)や半導体が目標に上がった。これにより、再び過剰生産が始まるのだろう。この生産重視の一方で、国民生活は平均寿命1歳引上げである。政府が、国民の平均寿命を保証できるはずもなく、国民一人一人の生活習慣の改善に待つほかない。その個人の努力が、政権の目標になっている。すり替えである。

     

    『レコードチャイナ』(10月24日付)は、「中国の第15次5カ年計画、『中国経済』『中国人の経済』両面を重視、経済効果で寿命引き上げも」と題する記事を掲載した。

     

    中国商務部の王文涛部長は、「第15次5カ年計画」期間中、国民総生産だけでなく国民総所得にも目を向け、「中国の経済」だけでなく「中国人の経済」も重視すると紹介しました。

     

    (1)「中国共産党中央委員会は10月24日、記者会見を開き、中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)の精神を紹介しました。商務部の王文涛部長は、「第15次5カ年計画」期間中、国民総生産(GDP)だけでなく国民総所得(GNI)にも目を向け、「中国の経済」だけでなく「中国人の経済」も重視すると紹介しました。王部長は、「中国は双方向投資協力の空間を拡大していく。『中国への投資』というブランドを拡充し、外資誘致の新たな優位性を構築し、透明で安定し予測可能な制度環境を整える。また、対外投資管理を効果的に実施し、海外総合サービスシステムを健全化し、生産・供給チェーンの合理的かつ秩序ある越境配置を誘導していく」と述べました」

     

    個人消費は、GDPの40%以下である。生産だけに力を注がず、消費に目配りしなければならないが、そういう配慮はない。あくまでも生産力充実である。「戦時経済態勢」だ。依然として、台湾侵攻の構えを捨てずにいることは明らか。ただ、客観的にみて侵攻は不可能な事態を迎えている。技術だけ磨いても、マクロ経済全体が戦争に耐えられない状態を迎えているからだ。こうして、国民生活無視の国家運営を行なっている。

     

    (2)「一方、国家衛生健康委員会の雷海潮主任は「第15次5カ年計画」について、「今後5年間の努力を通じて、中国人口の1人当たりの平均寿命を現在の79歳から1歳引き上げ80歳前後にしたい」と表明しました。雷主任は、「これは人々の美しく健康的な暮らしへの新たな期待に応える象徴的な取り組みだ。また経済社会が各分野で質の高い発展を遂げる総合的な成果の反映でもあり、十分に実現可能だ」と自信を示しました」

     

    国家衛生健康委員会は「今後5年で平均寿命を79歳から80歳へ引き上げたい」と発表した。これは、医療水準の向上や生活環境の改善を通じて達成する目標だが、実現は個人の努力に依存する部分が大きいのだ。政策目標として掲げるのは弱すぎであろう。それよりも、年金をいくら上げるとか具体的な目標があるはずだ。それを回避している。

     

    「国民生活の安定」が、国家による保障ではなく、個人の健康管理や自己努力に委ねられている点は、「中国式社会主義」を標榜する中国としては拍子抜けするほど期待外れの「政策」である。これは、社会保障制度の限界や、都市と農村の格差を背景にした政策の行き詰まりを示している。

     

     

     

    テイカカズラ
       


    中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)が23日に閉幕した。来年からの5カ年計画の骨格は、半導体などハイテク分野の水準を高めるほか、米国との長期対立を念頭に「国際影響力を大幅に引き上げる」方針も示した。国内需要の立直しという国民生活への配慮はゼロ。新味のない従来路線を継承する新5カ年計画に』張りそうだ。

     

    『ロイター』(10月23日付)は、「中国新5カ年計画、近代的産業システム構築や技術自立推進 4中総会閉幕」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党の第20期中央委員会第4回総会(4中総会)は最終日の23日、近代的な産業システムの構築や、技術の自立への取り組みを強化する方針を示した。

     

    (1)「国営新華社が発表したコミュニケは、202630年の第15次5カ年発展計画の優先事項の概要を示した。「(2630年は)戦略的機会とリスク・課題が共存し、不確実で予測不可能な要素が増加する」と指摘。「強力な国内市場」の開発に先立って「製造業の合理的な比率を維持し、先進的な製造業を基幹とする近代的な産業システムを確立すべきである」と述べた。国民の福祉と社会保障制度の改善を図るとした。財源や措置など具体的な内容には踏み込んでいない」

     

    コミュニケは、5年間の目標として科学技術に関して「自立自強の水準を大幅に高める」と明示した。「新興産業と未来産業の育成」を掲げたうえで、中核技術の強化などを通じて科学技術強国をめざすとうたった。「2035年までに経済、科学技術、国防の実力、総合的な国力、国際影響力を大幅に飛躍的に引き上げることを実現する」と記している。人工知能(AI)や半導体などのハイテクへの投資を増やす方針だ。米国など外国に依存しない独自のサプライチェーン(供給網)の整備を急ぐ。

     

    足元で景気が減速するなか、内需拡大について「消費を力強く喚起し、有効投資を拡大する」と強調した。「人民の生活の質を持続的に高める」などの記載もあったが、26年からの5年間の経済成長に関する具体的な数値目標はなかった。『日本経済新聞 電子版』(10月23日付)が報じた。

     

    (2)「エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのシニアエコノミストは、家計ではなく投資と製造業に資源を振り向ける中国の伝統的な戦略に言及し、「考え方は依然として供給側に焦点を当てている」との見方を示した。その上で「人々への投資」に言及したことに注目、人々の権利や利益の保護や社会保障制度の改善への措置が見込まれると指摘。「政策当局の立案者は地方の高齢者への医療保険や年金を増やす可能性があるが、今のところどのように行うか明確な考えは持っていないのかもしれない」と述べた」

     

    「過剰生産・過小消費」に陥っている中国経済が、相変わらず供給力先行経済を目標にしている。米国との対立処理が政策のトップに掲げられている。明らかに意識は、「準戦時経済」へ落込んでいる。これで、不動産バブル崩壊後の対応などできるはずがない。こうして、景気回復時期が先へ先へとずれ込み、体力を消耗するだけとなろう。

     

    (3)「キャピタル・エコノミクスのアナリスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏はきょうの発表について、国力と安全保障に向けた中心は依然として製造業で、政府の消費拡大の考えは「口先だけ」と指摘。 「指導部が主張する消費拡大の願望と、製造業の規模拡大という目標の間の緊張関係は、依然として解決していない」と述べた。その上で、「指導部はどちらかを選択しなければならないが、今日のコミュニケでは向いている方向に疑問の余地はない」と語った」

     

    製造業の規模拡大は、設備投資重視の経済という意味だ。本来ならば、消費重視型経済へ舵を切らなければならない段階だが、相変わらずの「供給力重視」である。過剰債務と人口急減の下で行なうべき政策ではない。無理を承知での供給力先行によって、米国と対抗するつもりなのだろう。己の実力を知らない不幸な幻想である。

     

    (4)「22年に選出された中央委員は205人、中央委員候補は171人。コミュニケによると、4中総会には中央委員168人と中央委員候補147人が出席した。「規律違反」による軍幹部の処分が実施される中、中央軍事委員会の副主席に張昇民・軍紀委書記(67)を昇格させる人事を決定し、中央委員も17年の7中総会に並ぶ最多の11人を交代させた」

     

    人民解放軍の規律はメチャクチャになっている。習氏側近が、ずれも追放されるという不可思議なことが起こっている。人民解放軍は、政治と離れた特別の存在である。すでに、習氏のコントロールから外れていると指摘されている。今後どうなるか、全く予想がつかない状態だ。

     

    a0005_000022_m
       

    中国は、世界一の自動車市場へ成長したが、肝心の企業モラルに大きな落し穴がある。リコールに対して消極的であり、半数以下に止まっている。当局が、欠陥を発見しない限り「頬被り」しかねない状況である。

     

    『レコードチャイナ』(10月22日付)は、「中国自動車メーカーのリコール、『自主的』は半数に満たず―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

     

    『第一財経』(10月20日付)は、リコールで企業が自主的に申し出たものは半数以下にとどまるなど、中国自動車市場の品質確保や安全性をめぐる問題を報じた。

     

    (1)「記事はまず、国家市場監督管理総局のデータとして今年9月までに中国で実施された自動車のリコール数3230件、対象台数延べ1億2000万台のうち、監督当局の調査を受けて実施されたものが約53%を占め、企業が自主的にリコールを申し出た事例は半数に満たないと紹介。特にここ数年は運転支援システムに関連するリコールが急増しており、昨年には約255万台が回収対象となったことを指摘し、急激な技術革新と商用化が進む中で、自動運転技術の安全性と品質が重大な課題として浮上していると伝えた」

     

    当局の調査を受けて実施されたリコールが、全体の約53%も占めている。本来は、企業が自主申告して実施すべきリコールが、当局に把握されるまで沈黙しているとは「製造物責任」から言っても信じがたいことである。

     

    (2)「具体的な事例として、9月には「高速道路での自動支援走行時に、特殊な走行環境を正確に認識できないケースがあり、衝突リスクが高まる可能性がある」として、小米汽車(シャオミ)が電気自動車(EV)「SU7」約11万7000台がリコールされたほか、今月にもBYDと吉利汽車の計約16万台が電気の安全や環境基準の不適合を指摘されてリコール対象になったと紹介した」

     

    中国で、ブランドになっているBYDや吉利汽車までが、当局の指摘でリコールしている。欠陥は最初にメーカーへ伝わるもの。それを、知らぬ顔で販売を続行しているのだ。

     

    (3)「その上で、安全や品質の確保に向けた行政の取り組みについて言及。国家市場監督管理総局欠陥製品リコール技術センターの王乃鋁(ワン・ナイリュー)王副主任が「ここ2年で電気自動車や高出力充電電池、車載チップなどの品質向上を目的とした『強靱(きょうじん)な品質向上プロジェクト』を実施し、産業およびサプライチェーンの耐性と安全性を効果的に高めた」と紹介したことなどを伝えている」

     

    中国の工業規格は、企業に提出するデータをそのまま認めるという杜撰なものだ。データの追試をしないという驚くべき「ザル法」である。最近、この欠陥に気付いて、追試をするようになった。

     

    (4)「当局が、現在までに車載情報システムの欠陥や無線アップデート(OTA)などを含む新技術分野の基準も含む、自動車製品の安全およびリコール管理に関する国家標準19件を発表したことにも言及。産業政策面でも、工業情報化部が2025年度の車両製造業者に対する生産監査を実施中であり、構造設計や衝突安全、電動車の安全要件などを重点的に調査しており、その背景には「技術競争の過熱により、十分な検証を経ないまま市場投入される不成熟なシステムが増えていること」があるとした」

     

    中国は、来年1月からEV(電気自動車)の輸出で、当局の検査を必要にすることになった。粗悪品輸出を選別するためだ。

     

    (5)「記事は、OTAを活用したリコールが増えており、昨年自動車メーカーによるOTAを通じたリコールが19回発生し、対象台数は406万8000台と前年の3.5倍近くに達したことを伝えた。国も、OTAリコールを行った場合は直ちに対象車種の生産、販売を停止し、問題が解決し認可が得られるまで再開できないようにするなど、OTAリコールに関する管理、規制を強化していると紹介した」

     

    無線アップデート(OTA)まで、無届け欠陥があるという。これは、致命的欠陥となる。人命尊重が徹底している社会では、企業モラルによってこういう不祥事は事前に食止められる。そういう、ブレーキがない社会なのだろう。

     

    (6)「王副主任は、「安全確保の責任は最終的に企業にある」と述べ、開発段階から安全性を最優先に位置づける必要性を強調した上で、国としては今後もリコール制度の高度化と監督強化を進め、虚偽宣伝や過剰競争を抑止する新たな施策を検討していることを明らかにした」

     

    安全確保の責任が、最終的に企業にあるとしても、国家の監視責任は免れない。リコール制度の徹底化がまず不可欠である。

    a0960_008527_m
       


    高市政権が、始動開始である。長かった政治空白を埋めるべく、首相から各閣僚へ指示が出ている。これまでの慣例では、新政権発足後に解散総選挙を迎えた。今回は、公明党が連立を解消し、維新を新たな連立に迎えたものの、選挙面で公明党の代役は不可能とみられている。となれば、首相は難しい舵取りを迫られそうである。

     

    『毎日新聞』(10月22日付)は、「高市首相が連立組む維新 『公明の代わりは困難』中北浩爾・中央大教授」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗首相が誕生した。四半世紀にわたり連立政権を組んできた公明党が離脱し、新たに自民党が選んだパートナーは、日本維新の会だった。憲政史上初の女性宰相が率いる自維政権をどう見るのか。自民に詳しい政治学者の中北浩爾・中央大教授に聞いた。

     

    (1)「(質問)高市首相は、公明の連立離脱という窮地を乗り越えて新政権を発足させました。維新は、これまでの公明とは違って、政権に閣僚を送りこまずに、政策協定に合意して、与党として政権に参画する「閣外協力」にとどめました。(答え)実は、これまで組んできた公明も、連立入りをする際、当時の神崎武法代表らは「閣外協力」を検討しましたが、腹を据えて「閣内協力」を選択しました。今回の維新は、完全に閣内に入りきっていない「半身」の状態です。自民が安定した政権の枠組みを作れたかといえば、流動的な要素が残り、不安定感があります」

     

    公明は、最初から閣内協力という「運命共同体」を選んだ。維新は、閣外協力である。試運転期間を設けている感じだ。自民党を100%信頼していない証拠であろう。

     

    (2)「(質問)女性初の首相は画期的なことです。自民と維新は憲法改正などを巡る考えが、比較的近いです。(答え)これにより、右寄りのスタンスが強まり、いわゆる自民の「岩盤保守層」の期待感は集まるかもしれません。それと、政権運営がうまく進むというのは別問題ではないでしょうか。「閣外協力」は、1997年に発足した第2次橋本龍太郎改造内閣における、社民党と新党さきがけ以来です。維新が「閣外協力」の形を取ったのは、掲げている国会議員定数の1割削減など、政策協議が万が一行き詰まった際に、いつでも連立を解消できるぞ、とプレッシャーをかける狙いがあるためでしょう」

     

    岩盤保守層は公明離脱を歓迎しているが、選挙という「票集め」になると別問題になる。議席が減れば、自民党政権は窮地に立ち、やがては野党へ転じる危険性もあるからだ。問題は、自民党政権がいつまで続くかどうかが問われている。

     

    (3)「(質問)これまで続いてきた自公政権は、99年に始まりました。(答え)自民にとって、維新との「閣外協力」は、何もないよりは安定性を確保したといえるでしょうが、流動的な要素が残っていると言わざるを得ないのです。参院選で過半数を割った橋本政権の後を受けて成立した小渕恵三政権が安定多数を求めて模索しました。しかし、それまで野党として自民と対峙(たいじ)してきた公明が、いきなり自民と連立を組むのは難しかった。水面下で交渉をしていたのは、官房長官だった野中広務氏です。自民時代に対立し、「悪魔」とまで呼んでいた自由党代表の小沢一郎氏に連立を持ちかけて組んだのは、自公間の「クッション」の役割を期待していたからです。こうした下準備は1年ほどかけて進め、ようやく自公政権が始まったのです。そのような経過に比べると、どうも首相指名選挙に向けた、急ごしらえ感は否めないと思います」

     

    過去の自民党は、どれだけ苦労して政権をつないできたか。小渕恵三首相は、小沢一郎氏の連立離脱がショックで亡くなったとも言われる。そういう苦悩を忘れて、政権は天から降ってきたという感覚でいれば、再び政権を失うであろう。

     

    (4)「衆院の選挙区の大半は自民が候補者を擁立します。その候補の多くが、支持者に「比例は公明」と訴えます。相互推薦・支援が実施され、組織票に基づく「ウィンウィン」の関係が築かれていました。維新は強固な地盤を持つ関西地方で圧倒的な強さを誇りますが、全国的な広がりには欠けます。維新と組織票の交換は難しく、選挙区の候補者調整が限度ではないでしょうか。現時点では、それも先送りされています。公明の代替になることは難しいと感じています」

     

    維新は、関西の地域政党の域を出ていないのだ。組織票を持っている訳でない。過大評価していると、痛い目に遭うだろう。

     

    (5)「(質問)残念ながら、高市政権が小泉純一郎政権のように、国民的な熱狂に迎えられてスタートした感じはありません。(答え)派閥パーティーの収入を政治資金収支報告書に不記載だった議員を要職に起用するなどしました。「政治とカネ」の問題の解決も先送り感は拭えません。支持率次第ですが、選挙協力で課題が残っている以上、簡単に解散・総選挙に打って出ることは難しいのではないでしょうか」

     

    自民党は、いつまでも「政治とカネの問題」を棚上げしている訳に行かない。世論が納得しない限り、決着が付いたとはいえないのだ。自民党支持者だけが納得すれば、それで良いという問題ないところに厄介さがある。世論という浮動派が、最後の審判者である。

     

     

    このページのトップヘ