勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    テイカカズラ
       


    中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は2031年までに回路線幅が1.4ナノ(ナノは10億分の1)メートルの製品に相当する、高性能の半導体を開発する計画を発表した。ファーウェイはEUV露光装置が使えないため、TSMCやラピダスのような本物の1.4ナノは作れない。いわば、「1.4ナノもどき」だ。

     

    配線の最適化、回路設計の再構成、信号遅延の短縮(タウ・スケーリング)という工夫によって、性能を底上げするというアプローチである。実際は、「7ナノ級チップ」である。これは性能を近づけても、電力効率・密度・歩留まりは全く別物である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月25日付)は、「ファーウェイ、2031年に1.4ナノ並み半導体 微細化以外の技術で」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「回路線幅の微細化で性能を高める「ムーアの法則」は、限界に近づいていると指摘される。ファーウェイは半導体の回路や配線、システムを見直し、信号が伝わる時間を縮めるという独自理論「タウ・スケーリングの法則」を利用して高性能品を開発する」

     

    技術者の間では、今回の発表は次のように見ている。「設計で頑張る」方向は理解できるとしているが、しかし「1.4ナノ相当」という表現は誤解を招くという製造技術としては、1.4ナノとは別物であるからだ。極端紫外線(EUV)露光装置なしでは、物理的に製造が不可能であり、実際の性能はTSMCやラピダスの1.4ナノに届かないのだ。 中国国内向けの政治的アピールの色が濃い。

     

    (2)「ムーアの法則が米インテル共同創業者の一人、故ゴードン・ムーア氏が唱えて広まったのに対し、ファーウェイはこの独自理論を、社内で事業責任者の名前にちなみ「ハーの法則」と呼んでいるという。これまで同社はこの原理をもとに、スマートフォンや人工知能(AI)向けに約380種類の半導体を開発、生産してきた。半導体製造の世界大手である台湾積体電路製造(TSMC)は29年までに、ラピダスも29年めどに1.4ナノ品の量産を始める計画だ。ファーウェイの技術は2年ほど遅れることになる」

     

    ムーアの法則は、経験値で半導体の集積度が約2年で2倍になるとされている。これも限界に達しているので、アーキテクチャ(設計図)改善で性能を伸ばすのは世界的潮流である。だが、EUV露光装置を持たないファーウェイが、実際には7ナノ級の延命に近いとされている。

     

    (3)「同社は、中国を代表する半導体企業だ。現在、米国政府の制裁対象に指定されていることから、半導体の回路線幅の微細化に欠かせないオランダの製造機器大手、ASMLホールディング製の極端紫外線(EUV)露光装置を調達できていない。現状でもファーウェイのAI半導体は、米エヌビディア製品などと比べて性能が劣るとされる」

     

    ファーウェイ側の宣伝する「1.4ナノ相当」は、EUV露光装置が制裁で使えないため、7ナノ級(DUV多重露光)による「延命+配線・回路設計」の工夫で性能を上げるしかない。性能において劣るのはやむを得ないのだ。2030年代の世界標準が、1.4ナノへ移行するとき、中国は7ナノ級半導体にとどまる。大きなギャップになる。データセンターAI、スーパーコンピュータ、軍事・宇宙向け では、電力効率・密度・信頼性で決定的な差がつくのだ。

     

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    サムスン電子の労使が、赤字事業部にも事実上成果給支給の道を開く方向で暫定合意した。この結果、財界と労働市場全般に緊張感が高まっている。「成果あるところに報酬あり」というサムスン式成果主義原則が揺らぎかねないとの懸念と、営業利益連動型成果給構造が他企業に拡散する場合、投資余力まで脆弱化しかねないとの懸念からだ。韓国経済の将来に大きな疑問付がついた形だ。

     

    『中央日報』(5月22日付)は、「『ムスン式成果主義崩れるか』韓国財界、営業利益連動成果給に懸念」と題する記事を掲載した。

     

    サムスン電子労使が赤字の事業部にも事実上成果給を支給する方向で暫定合意し財界全般に緊張感が広がっている。これまで韓国の大企業が維持してきた「成果のある所に報賞あり」という成果主義の原則が揺れるのではないかという懸念だ。サムスン電子が事実上の先例を残し他の大企業労組も本格的に「営業利益連動型成果給拡大」を要求する可能性が大きくなるという見通しが出ている。


    (1)「韓国財界によると、サムスン電子労使はDS(半導体)部門の特別経営成果金の財源を「労使が合意し選定した事業成果の10.5%」に決める内容を盛り込んだ暫定合意案をまとめた。配分構造は部門共通40%、事業部別60%だ。議論になった赤字事業部への支給方式と関連しては「当該会計年度の赤字事業部は部門財源を活用して算出された共通支給率の60%を支給率とする」と明示した」

     

    営業利益の一定割合を成果給にすることは、「利益が出たら払う」ではなく、 「利益が出たら必ず払う」という制度化である。韓国の主力産業である半導体、バッテリー、自動車

    造船などは、 先行投資が巨大で、利益が変動しやすい産業である。 赤字事業部にも成果給を支給する構造が生まれたことで、韓国経済には最大の問題を持ち込んだ 。「赤字事業部にも共通支給率の60%を支給」ことは、成果主義の崩壊を意味する。赤字事業部の従業員にも手厚い配分は、企業の「社会福祉化」である。

     

    (2)「事実上赤字を出しているファウンドリー事業部と、システムLSI事業部の社員にも成果給支給の可能性が開かれることになった形だ。会社側は、これまで「成果給は事業成果に連動しなくてはならない」として赤字事業部への支給に否定的な立場を維持してきたが、ストの危機の中で結局折衷案を受け入れた。財界が最も懸念するのは「サムスン発の先例効果」だ。サムスン電子は2000年代初めに超過利益分配金制度を導入し、韓国大企業の成果給体系を事実上標準化した企業と評価される。こうしたサムスンで営業利益連動型成果給構造が制度化される場合、他の企業労組も類似の要求に出る可能性が高いということだ」

     

    韓国のように、先例重視社会では赤字部門も成果給配分が取り入れられるであろう。これによって、研究開発費も設備投資も人件費で消えてしまうという最悪事態が想定される。企業は、投資よりも人件費を優先せざるを得ない結果。半導体のような「数兆円規模の投資」が遅れる。韓国企業の競争力は、低下するリスクが高まるのだ。

     

    (3)「実際にLGユープラス、カカオ、HD現代重工業など一部大企業労組はすでに営業利益の一定の割合を成果給として配分するよう要求案を使用側に提示した状態だ。業界では今回のサムスン電子の合意がこうした流れに火を付けるとみている。財界関係者は「サムスンは韓国企業の報賞体系の基準の役割をしてきた。営業利益の一定の割合を成果給の財源として配分する構造が定着すれば他の大企業労組も『なぜわれわれはできないのか』と要求する可能性が大きい」と話した」

     

    サムスンの営業利益基準の成果給配分は、他産業にも広がっている。韓国企業の強みだった 「事業部別の競争」 が崩れることになろう。優秀な事業部が、赤字事業部を支える構造になると、事業部間の競争が弱まり、組織が官僚化する。若手のインセンティブが低下し、

    企業全体の生産性が落ちるであろう。

     

    (4)「財界では、今回の合意が成果給規模の問題を超え事業部別の成果責任の原則を弱めさせる先例になりかねない点を懸念する。DS部門全体の利益を基準として成果給の財源を作った後に事業部間で再分配する構造が制度化される場合、今後他の大企業労組も同様の営業利益連動型報賞体系を要求する可能性が大きいということだ」

     

    サムスンの場合、半導体部門の黒字が他部門の不振を覆い隠してしまうので、半導体部門も成長力を失う事態が最も危惧される。

     

    (5)「財界首脳は、「赤字事業には構造調整や体質改善圧力がかかるのが一般的な経営原則。事業部別の業績の違いを十分に反映していない報賞構造が定着すれば成果主義の原則が弱まる恐れがある」と話す。業界では、今回の事態を契機に企業報賞体系論争がさらに強まる可能性が大きいとみる。過去のように単純に営業利益中心の成果主義だけでは若い研究開発人材をつなぎとめるのが難しくなったという指摘とともに、反対に成果責任の原則が弱まる場合、企業の競争力が揺らぎかねないという懸念が同時に衝突しているからだ」

     

    先行投資産業(半導体・バッテリー・造船)は、今回の営業利益基準の成果配分によって、「赤字でも投資を続けないと死ぬ産業」という特性にとって致命傷となろう。このショックは、5年先、10年先に大きく出るであろう。



     



     

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    中国は、国内資金が海外証券・先物・ファンドに流れるのを「違法」として取り締まり、罰則を科すと通達した。これは、通常の資本規制ではない。「海外に逃げる金を止めないと、人民元が崩れる」という危機感の表れとみられる。習近平氏は、米ロ首脳による相次ぐ訪中で「国威」を大きく高めたはずだが、国内では中国経済の不振から大量の資金流出が起こっているとみられる。中国経済危機説が広くしんじられている結果であろう。

     

    『ロイター』(5月22日付)は、「中国、違法な越境証券取引を取り締まり 資本流出を一段と監視」と題する記事を掲載した。

     

    中国証券監督 管理委員会(証監会)は22日、国内の資金を海外の証券、先物、ファンド商品へ違法に向かわせる越境取引を取り締まりと発表。海外市場に資金を違法に送ったとされる証券会社へ罰則を科すと明らかにした。これを受け、関連企業の株価は急落した。

     

    (1)「国内ライセンスを持たずに中国国内でビジネスを行ったとして罰則を科すのは、オンライン証券会社の老虎(タイガー)、富途、長橋証券(ロングブリッジ)。声明で、違法な証券活動は中国の法律に違反し、市場の秩序を乱し、投資家に損害を与えるとした。違法収益は没収するとしたが、具体的な額には言及していない。今回の措置は、中国が厳格に管理している資本流出への監視を一段と強めるもの。対象となる証券会社の顧客は今後、保有株の売却のみが可能で、買い付けはできなくなる」

     

    中国人が、オンライン証券を通じて海外株を大量購入してきた実態を浮き彫りにしている。中国では、自由な資本移動を禁じているので、中国国内では「違法」扱いである。当局はこれを完全に封じた。 売却は許すが、新規購入は禁止。 これは「出口を開けて入口を閉じる」措置で、 資本逃避を止めるための緊急ブレーキである。世界覇権を狙うとする中国が、資本の移動を禁じているとは、笑止千万である。

     

    (2)「取り締まりは、承認なしに中国で事業を展開する海外企業とその国内パートナーを対象としており、既存の違法事業を清算するための2年間の猶予期間を設定。この期間中、影響を受ける投資家は既存の保有資産の売却と資金の引き出しのみが認められ、新規投資は禁止される。規制当局は取り締まりについて、金融市場の秩序を守り、投資家の権利を保護するための長期的なメカニズムを確立する広範な取り組みの一環と説明。資本市場の健全な発展を保全し、合法的なチャネルを通じた海外投資を促進するとしている」

     

    業者は、2年間の営業禁止である。この間、投資家は海外有価証券の売却は可能だが、購入は禁止である。

     

    (3)「タイガーの親会社UPフィンテック・ホールディングと富途ホールディングスの米上場株は、寄り前の取引でいずれも30%超下落した。ロングブリッジは非上場。規制当局の発表は22日の中国と香港市場の取引終了後だった。ハンセン指数先物は0.7%下落。UOBケイヒアン(香港)の機関投資家営業ディレクター、スティーブン・レオン氏は「短期的には、これらの措置は香港での一部の取引や投機活動を冷え込ませる可能性がある」と述べた」

     

    中国は、外貨準備の減少を抑えるために、資金流出抑制に全力をあげている。不動産バブル崩壊や外資撤退で苦境にあり、 人民元を守る外貨が足りないのだ。だから、 「海外に金を出すな」 という強制措置に踏み切ったとみられる。

     

    (4)「今回の取り締まりは、2022年末に証監会が海外機関による本土投資家向けの口座開設を禁止して以降、数年にわたって強化されてきた監視体制を一段と拡大するもの。問題となる口座の大半が所在する香港でも、香港の証券先物委員会(SFC)も22日、12の証券会社を審査した結果、「重大な不備」が見つかったと発表。疑わしい書類や偽造書類で開設された口座の閉鎖を求め、新規口座とその資金源に対するより厳格な審査を義務付ける方針を示した」

     

    記事では、香港の証券先物委員会(SFC)も 12社の証券会社に重大な不備があったとして口座閉鎖を命じて、香港経由の抜け道まで塞ぎ始めた。これは異例である。香港は本来「資本自由化の窓口」である。 中国は、その香港すら封鎖し始めたのだ。これは、 資本逃避が香港経由で爆発していた証拠であろう。

     

    海外株・海外ファンドへの投資を「違法」とし、既存取引を清算させ、新規取引は封じる方向だ。 これは、「資本逃避が危険水域に達した」という自己告白でもある。香港の証券会社・プラットフォームにまで規制が及び始めている。これは、 「本土香港世界」という資本逃避ルートを塞ぎにかかっている緊急事態だ。中国経済は、外貨準備面で危機を迎えたのであろう。

     

     

     

    あじさいのたまご
       

    サムスン電子の労働組合は20日、21日から予定していたストライキを保留すると発表した。会社側との報酬交渉で暫定的な合意に至った。韓国政府による仲裁が後押しとなり、長期化していた労使対立は土壇場で一時収束した。金栄訓(キム・ヨンフン)雇用労働相が20日、労使交渉に立ち会い複数の案を提示して議論をまとめた。

     

    韓国サムスン電子の従業員約4万8000人が、会社側との交渉決裂を受け、21日にストライキを行う見通しった。ただ、20日午後に雇用労働相 の仲介により交渉が再開されたことで、近い将来に合意に至るという期待は残されていた。一方、労働組合に友好的な姿勢で知られる在明大統領は20日 、ある労組が法人所得税の支払いさえ行われていない段階で企業の営業利益の分配を要求していることについて、「一線を越えている」とコメントした。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月20日付)は、「サムスン労組、一転してスト保留 政府仲裁し報酬案で暫定合意」と題する記事を掲載した。

     

    サムスン電子の労働組合は20日、21日から予定していたストライキを保留にすると発表した。組合は521日から67日までと予告していたストについて「指示を出すまで保留とする」と組合員に伝えた。5月下旬に「賃金協定暫定合意案」の賛否投票を実施すると説明した。

     

    (1)「交渉の争点は賞与制度の見直しだった。組合側は営業利益の15%を賞与として分配し、支給上限を撤廃する制度化を要求した。競合のSKハイニックスが先行して上限撤廃を決めたことを引き合いに、人材流出が進んでいると主張していた。一方、会社側は半導体市況の不確実性を理由に慎重姿勢を崩さず、交渉は難航していた。20日にはいったんは会社側との報酬交渉が決裂したとして、労組が21日からストライキに突入する方針を発表していた」

     

    営業利益の15%をボーナス要求という前代未聞の話であった。労組一人当たり6000万円台という「巨額ボーナス要求」だ。さすがに要求額の大きさに、韓国社会も「羨望」の入り交じった複雑な反応を呼び起こした。労組には労組の理由はあるが、「6000万円」が社会を驚かせたのだ。

     

    (2)「暫定合意に至ったことで、半導体の生産への直接的な影響は避けられた。サムスンが手掛けるメモリー半導体は世界的な人工知能(AI)投資ブームで品薄が続いており、供給網への波及を懸念する声も出ていた。韓国では、法律で「緊急調整」と呼ぶ権限を定めている。国の経済に重大な支障が出ると判断した場合は政府が労使紛争に介入し、争議行為を一時停止させる。ストに参加すれば違法になる。韓国政府関係者は、20日のスト決定宣言を受け、「双方の対話の時間はまだ残っており、あらゆる支援をする」として、スト撤回の可能性も残していた」

     

    合意内容は、不明である。韓国では、法律で「緊急調整」と呼ぶ権限を定めている。政府が労使紛争に介入し、争議行為を一時停止させるもので、ストに参加すれば違法になるという「強行法」である。

     

    『中央日報』(5月20日付)は、「李大統領、サムスン電子交渉決裂に『労組には適正なラインが必要』と題する記事を掲載した。

     

    韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は20日、サムスン電子労使の賃金交渉が最終的に決裂したことについて、「一部労働組合が団結権、団体行動権を通じて団体交渉を行い、自分たちの利益を貫徹するため努力するのは良いが、それにも適正なラインがある」と言及した。


    (3)「李大統領は同日、青瓦台で主宰した国務会議兼非常経済点検会議で、「営業利益について利益分配を受けるのは投資家が行うこと」と述べた。その上で、「政府ですら特定企業の成長と発展に寄与している」とし、「税金を減免したり、施設支援を行ったり、さまざまな制度整備を通じて、また外交的努力を通じて支援している」と説明した。続けて、「しかし、国民共同の持分と言える税金すら差し引く前に、営業利益の一定比率を制度的に分け合うというのは、投資家にもできないこと」とし、「投資家も税金を差し引いた後の当期純利益から配当を受けるのではないか。いずれにせよ、私としては理解できない」と話した」


    李大統領は、投資家が利益分配の決定を行うとして、労組が営業利益の15%要求は越権行為として、労組の介入を強く批判した。これは、正論である。韓国労組が「貴族労組」から、「普通労組」へ戻る機会が来ているのだ。

     

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    1~4月の固定資産投資が、累計でマイナス1.6%減という冷え切った中で、国有系企業がマンション建設に乗り出すという。明らかに政府の圧力による「ヤラセ建築」の疑いが濃厚である。住宅不況底入れのサインではなく、さらに悪化するという不吉のサインであろう。売れない住宅の在庫を増やすだけだ。国有系企業は、地方政府の土地売却益捻出目的に奉仕させられている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月18日付)は、「中国『バブルの塔』用地が再起動 超高層ビルの呪いを解けるか」と題する記事を掲載した。

     

    中国で1番高いビルを建設するはずだった広東省深圳市の開発計画が再起動した。経営破綻した民営大手、世茂集団控股が手放し競売にかけられた用地を落札したのは国有大手の華潤置地だ。勝算はあるのだろうか。

     

    (1)「ついにあの土地が動くのか。6日、深圳市北東部にある龍崗区の開発用地の売却が成立した。買い手は商業施設運営に強みを持つ華潤置地だ。華潤置地が、取得した土地面積は約17万平方メートル(東京ドーム4個分弱)で、取得額は最低入札価格の約70億元(1600億円)だった。世茂集団が2017年に取得した金額は239億元の3割だ。9年間で7割も下落した計算である」

     

    深圳市北東部にある龍崗区の開発用地が最近、売却が決まった。最初の企業が倒産して、ようやく次の企業が決まったもの。地価は、9年間で実に7割も下落したという。凄い値下がりである。

     

    (2)「龍崗区は深圳市の郊外地域だ。現在でも中心部から地下鉄を乗り継いで1時間余りと決して利便性の高い場所ではない。25年に深圳市が買い取り、26年4月に再度売り出していた。試算によると、70億元を住宅部分の床面積で割った1平方メートル当たりの金額は2.3万元。周辺の新築住宅価格は1平方メートル当たり5万元前後と、建設費を加味しても元が取れる計算だという。まずは、住宅分譲で用地の取得費用を回収し、投資リスクを抑える算段だ」 

     

    新たに建てるマンションは、付近の新築住宅価格に比べ半値以下の価格に設定して、先ずは、購入した土地代を回収するという。場所は、深圳市中心部から地下鉄を乗り継いで1時間余りの場所だ。思惑通りにうれるか。

     

    (3)「上海市郊外の嘉定区。米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などの合弁工場がある自動車産業の集積地だ。この街の中心部で10年間たなざらしにされた「幽霊ビル」を賃貸住宅に衣替えするプロジェクトが始まった。プロジェクトを進めるのは、中国4大不良債権管理会社の1社、中国信達資産管理だ。28年をメドに家具付きの賃貸住宅に改装し、安定した賃料収入を確保した後に不動産投資信託(REIT)として上場させる計画だ」

     

    上海市郊外の嘉定区で、10年間たなざらしにされた「幽霊ビル」が、賃貸住宅に衣替えする。新たな建築主は、4大不良債権管理会社の1社、中国信達資産管理だ。政府系企業である。不動産投資信託で経営するという。若者の就職動向と密接な関係を持つ。

     

    (4)「成功事例も生まれている。3月21日に上場した匯添富上海不動産賃貸住宅LEATとの投資物件は上海市内の遊休オフィスを転用した賃貸住宅だ。隣接するハイテクパークで働く若者をターゲットに1LDKの間取りを主体としたことが奏功し、入居率は9割を超えるという。ニッセイ基礎研究所の胡笳研究員は「今後もREITを活用した物件の再生事例が増えていく」と指摘する。もっとも、中国で不良債権の物件再生は始まったばかりだ。問題は物件の完成後にもある」

     

    若者をターゲットに1LDKの間取りの賃貸住宅は人気があるという。中国人は、広い家に住みたがるだけに、1LDKで満足するのは相当の低収入層であろう。貧困の象徴である。

     

    (5)「25年4月、直轄市である天津市で高さ597メートルの「世界一高い未入居ビル」の工事が約10年間の中断を経て再開した。誰もが心配するのは、景気が悪い天津でテナント需要があるかだ。米CNNの取材に対し、米デューク大学のチアオ・シトン教授は「必ずしも利益が出るわけではないが、政府は少なくとも人民の自信を増幅できると期待している」と分析した。

     

    天津市の高さ597メートルの高層ビルが、未竣工で放置されてきたことは有名な話だ。これも、25年4月に工事再開である。地元政府のメンツによる建設工事再開だ。

     

    (6)「中国では高層ビルの完成が相次いでいる。国際非営利団体の調査によると、24年に完成した高さ200メートル以上の133棟のビルのうち、91棟が中国だったという。こうした新規ビルの過剰供給がオフィス需給を大きく悪化させている。中国の主要都市のオフィス空室率は23割にのぼる。日本の主要都市の2〜3%台と比べると、かなりの高水準だ。中国のオフィスビルは国有企業や政府系ファンドなどが保有しているケースが多く、その実態がみえてこない。国有銀行が資金を供給し続ければ、未完成や低稼働率ビルの問題が表面化しないからだ。政府系でテナントを埋めることも可能だ」

     

    世界で24年に完成した高さ200メートル以上の133棟のビルのうち、中国が91棟を占めるという。68%に当たる。建設不況が起こっても、何ら不思議のない状態である。バブル崩壊は、起こるべくして起こったのだ。

     

     

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