勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    リベラリズムを標榜する韓国最大野党「共に民主党」は、自らの支持率が下落すると世論調査会社を規制すると準備を始めた。極めて身勝手な振舞である。世論調査結果を謙虚に受入れる度量がないのだ。あくまでも、国会の最大議席の政党として君臨する構えである。

    『朝鮮日報』(1月23日付)は、「『支持率が下落したから世論調査会社を統制する』という共に民主党の発想」と題する社説を掲載した
     
    韓国野党・共に民主党が、党として世論調査会社への圧力に乗り出した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾後、複数の世論調査で共に民主党の支持率下落と与党・国民の力の支持率上昇という結果が相次いでいるためだ。

    (1)「共に民主党は今月20日の執行部会議で「世論調査検証および制度改善特別委員会」の発足を決め、23日には関連する討論会も開催する予定だ。共に民主党議員は選挙管理委員会が規則で定めている世論調査会社の登録要件を法律でも定め、世論調査会社に対する定期的なチェックを義務づける法律の改正案を提出した」

    戦後の日本では、「昔陸軍、今総評」なる言葉がはやった。戦後の労働運動が激しかった頃、官公労を中心とする総評が、日本労働運動の指揮を執り「政治スト」を頻発させた。これを皮肉り、総評が戦前の日本陸軍と同じで権力を振り回したという意味である。韓国では、「共に民主党」が、この総評まがいのことを行っている。総評が国鉄ストで自滅したように、共に民主党も国民の支持を失う羽目となろう。

    (2)「共に民主党は、世論調査統制強化について「間違った世論調査は民主主義の根幹を揺るがすため、民心が間違って伝えられる事態をなくさねばならない」と説明した。この言葉自体は正しい。しかし、共に民主党は世論調査の統制に乗り出す前に、世論調査の結果が自分たちに有利だったときは何も言わず、なぜ今になって世論調査の統制に乗り出すのか、その疑問に答えねばならない」

    共に民主党は、自らが国民を扇動してきた運動は数え切れない。「狂牛病問題」や「福島原発処理水問題」など、国民生活を惑わす流言飛語を放ってきた。極めて無責任な言動を繰返してきたのだ。今回の「大統領弾劾訴」では、大統領代行の首相まで弾劾するという勇み足をみせている。過去の失敗が「残雪」のように積もってくれば、国民の支持を失うことになろう。国民は、何時までも「寛容」でないのだ。

    (3)「共に民主党の圧勝で終わった2024年の総選挙当時、選挙管理委員会が世論調査結果の捏造を確認した事例は51件あった。これは、2020年総選挙の32件に比べて2倍近い数だ。調査結果を歪曲あるいは捏造したものや、重複回答や虚偽回答の誘導がそのほとんどを占めていた。ところが、総選挙の際に実施された4127回の世論調査のうち、選管に摘発されたのはこれだけだ。実際は、世論調査に名を借りた政治工作がより幅広く行われた可能性もある。共に民主党が持ち上げる金於俊(キム・オジュン)氏が設立した世論調査会社は、昨年10月の釜山市金井区庁長補欠選挙の際、世論調査の結果として共に民主党候補が3ポイントリードと発表したが、実際は共に民主党候補が22ポイント差で敗れた。しかし共に民主党は選挙後にこの世論調査を問題視しなかった」

    共に民主党は、自らに甘い結果を出した世論調査会社について調査をすることもない。逆に、シビアな結果を発表した世論調査会社には、法的な掣肘を加えるという片手落ちな動きをみせている。

    (4)「共に民主党は最近、フェイクニュースの温床としてメッセージアプリのカカオトークに注目しており、これを検閲する意向を表明した。フェイクニュース根絶に反対する国民はいない。そのやりとりの内容が、ほぼ一般国民の私生活であるカカオトークを検閲するという発想にどうすれば行き着くのだろうか。その一方で、共に民主党のある関係者は今も未確認情報を広めている。共に民主党が金於俊氏の世論調査会社を最初にしっかりと調査し、問題点を改善するなら、世論調査統制の動きも違った形で受け取られるだろう」

    韓国では、カカオトークが普及している。このカカオトークが、共に民主党の「フェイクニュース」を流しているとして検閲すると言い出した。もう「権力欲」に酔ってしまい、善悪の判断がつかなくなっているのだろう。まさに、「占領軍」となった積もりのようである。危険な話だ。


    あじさいのたまご
       

    中国の大規模な高速鉄道建設は、2005年に始まった。これまでに、4万6000キロも建設して地球1周を超える総延長距離に達している。だが、建設はなお続いている。高速鉄道は、当初の数年とは異なり現在は、人口密度の低い地域への敷設の結果、多額の赤字を計上している。開業した駅舎が不採算のため閉鎖されたり、一度も開業しない駅舎が現れるなど、杜撰な計画経済の一端を露呈している。

    『レコードチャイナ』(1月7日付)は、「中国、高速鉄道の建設にも求められる『質の高い発展』」と題する記事を掲載した。筆者は、吉田陽介氏で中国の政治や社会、中国人の習慣などの評論を発表している。

    高速鉄道の登場は、人口移動を活性化させることから、一部都市で人口流出が見られるようになった。この結果、地域の中心都市と周辺小都市の格差が拡大し、都市間の発展でアンバランスが顕在化している。

    (1)「中国メディアによると、北京・上海間高速鉄道と上海・漢蓉(上海-武漢-成都)高速鉄道が沿線36の三、四線都市に与える人口の集積度への影響を見ると、高速鉄道は三、四線都市の人口の集積にプラスとならず、その中の58%の都市の常住人口比率が低下している。GDP成長率を見ると、高速鉄道の開通後、北京・上海間沿線の50%の都市、上海・漢蓉間沿線の60%の都市は全省の平均レベルを下回った」

    三、四線都市の人口は、高速鉄道敷設後に大きく減少している。人口の「ストロー効果」が起こったものだ。一、二線都市が人口をストローで吸うような状態を呈した。

    (2)「湖南省株洲市で最初の高速鉄道駅ができた09年は、株洲に新しい時代が来るとみられたが、09年から23年まで、湖南省全体のGDPは286.77%増加し、株洲市のGDPは258.68%も増加した。株洲の常住人口は、20年から現在まで、減少し続けている。これは、株洲だけの問題ではない。江蘇省の昆山市、安徽省の全椒県、六安市、湖北省の巴東県などの都市は、高速鉄道開通前の成長率で全省の平均レベルを上回っていたが、開通後は下回るという結果になった。これは、経済力の低い地域から高い地域へ人口移動が起こった結果だ。経済交流が、活性化した「副作用」といえる現象だ」

    高速鉄道開通前後の成長率は、大都市が目覚ましく成長し、中小都市が平均を下回る結果になった。これは、経済力の低い地域から高い地域へ人口移動が起こった結果だ。

    (3)「都市間の発展がアンバランスになると、経済力の低い都市への人口減少が始まり、不必要な高速鉄道駅が出てくる。中国の経済メディアによると、湖南省株洲市の九郎山駅は16年12月に営業を開始したが、初期の利用客は100人未満で、21年には10人にも満たず、電気料金も払えない状況に陥ったという。広西チワン族自治区桂林市には、高速鉄道駅が9駅ある。それぞれの距離がさほど離れておらず、利用客が著しく不足するという現象が起きている。そのうちの1駅は、22年に旅客輸送業務を中止し、大きな駅舎は「幽霊屋敷」と化し、駅前広場は地元農民の穀物干し場となっているという。

    人口減少の著しい中小都市では、高速鉄道駅舎が利用客減少で閑古鳥が鳴き、閉鎖の憂き目に遭っている。高速鉄道開通が、著しい人口偏在を生んでいる。

    (4)「中国では、建設後何年も稼働していない、または閉鎖している高速鉄道駅が少なくとも20カ所あるといわれる。南京、武漢、瀋陽、大連、合肥などの大都市でもこうした現象が見られる。どうしてこのようなことが起こるのか。次の三つの原因があると考えられる。
    1)一部地域で人口移動が数年で大きく減ったため、駅舎が建設された時点で、実際の利用客数が計画時の数字をはるかに下回っていたことだ。
    2)高速鉄道駅舎の多くが、利用者目線に立っていない配置になっている。高速鉄道の沿線都市は地元での駅舎設置に熱心で、中国国家鉄路集団(国鉄集団)はしばしばいくつかの都市の要請に配慮して駅舎を置いた。都市中心部から50キロ以上も離れて立地する駅舎もある。
    3)高速鉄道建設ブームに乗った「やみくもな投資」だ。各地は、こぞって高速鉄道建設に取り組んだが、地域ニーズからかけ離れていたため、「無駄な投資」となった。インフラ投資は一時的には効果を生むが、完成後に使われなければ、維持費だけかかり、経済効果を持続させることができない」

    上記の3点は、笑うに笑えない計画経済の杜撰を余すところなく示している。中国高速鉄道は、「無駄・無計画」のシンボルとなった。

    (4)「地方財政は21年以降、経済減速の影響を受けて逼迫し始め、建設後の駅舎運営への支出縮小を余儀なくされた。また、期待通りの収入がないため、駅舎運営の補助金も減らした。高速鉄道を地方政府と共同運営する国鉄集団の赤字は、20年から現在までの累計で1700億元(約3兆5700億円)近くに達している。これを受けて、同集団は各高速鉄道駅の商業価値と社会的価値を全面的に評価し、利用客の少ない駅を閉鎖した。
    地方政府と国鉄集団のこうした措置はやみくもな投資によってもたらされた「負の遺産」の処理といえる」

    中国の減りゆく人口が、高速鉄道経営を一段と追込んでいく。ただ、高速鉄道が将来の治安維持の有力手段になるという指摘がある。高速鉄道には、社会不安による騒動が起これば、迅速に「鎮圧部隊」を現地へ送込む手段が課されている。ここだけは、やたらと用心深いのだ。共産党の権威を維持することに、異常な執着をみせている。


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    中国は、兵器産業を担う国有大企業の経営者や関連官庁高官が、次々と失脚している。国防相らが解任・処分された軍内の反腐敗闘争に連動して、大規模な粛清が行われているとみられる。兵器産業部門の汚職は、不動産バブルによる湯水のような土地売却益を使った、膨大な軍需予算の生んだ「畸形」である。不動産バブル後遺症は、兵器産業まで波及したのだ。

    『時事通信』(1月21日付)は、「兵器産業でも大粛清 経営者や高官が次々と失脚」と題する記事を掲載した。

    中国ロケット事業の功労者として、米誌タイムに取り上げられたこともある張克倹氏が1月上旬、兼務していた工業情報化次官、国家国防科学技術工業局長、国家宇宙局長、国家原子力機構主任をすべて解任された。昨年秋から公の場に姿を見せておらず、失脚した可能性が大きい。

    (1)「張氏は、人民解放軍の国防科学技術大学で物理学を学んだ。国防科学技術工業局の副局長・局長を長く務め、中国兵器業界の重要人物だった。香港メディアによると、張氏の上司だった金壮竜工業情報化相も1月に入ってから公式行事を欠席。ロケットやミサイルを製造する国有大企業、中国航天(宇宙)科技の研究機関トップや副社長、中国商用飛機(航空機)会長、中央軍民融合発展委員会の弁公室副主任(事務局次長)を経て、閣僚に昇進していた。同弁公室副主任の後任である雷凡培氏も昨年秋から重要会議に出ていない。雷氏は中国航天科技会長や、軍艦を建造する造船世界最大手の中国船舶会長を歴任した」

    中国の汚職は、1人で行わずグループ化した「集団汚職」が特色である。中国では、「私」は邪悪であり、「我々」が正しい概念とされている。それだけに、複数による汚職が犯罪意識を希薄化させるのであろう。「犯罪心理学」的な分析である。

    (2)「中国軍では2023年10月、李尚福国防相が解任され、同12月にはロケット軍(ミサイル部隊)司令官経験者2人や空軍司令官経験者が全国人民代表大会(全人代)の代表(国会議員)を罷免されて、失脚が判明。同じ12月、中国航天科技会長、中国航天科工副社長、中国兵器工業会長が国政諮問機関である人民政治協商会議(政協)委員の資格を取り消された。航天科工は航天科技と同じく国防省研究機関の後身で、ミサイルなどを製造。兵器工業は戦車など各種の兵器を造っている。その後、兵器業界で反腐敗関係の大きな動きはなかった。中国航天科工の袁潔会長が昨年4月に退任したが、23年秋から姿を見せておらず、それまでに事実上失脚していたようだ」

    ミサイル部隊は、習氏の肝いりで組織された。それだけに予算も十分に付けられたので汚職を生んだ原因だ。

    (3)「しかし、昨年秋以降、前述の張克倹、雷凡培の両氏が重要行事に参加しなくなったほか、共産党中央規律検査委員会が11月27日、重大な規律・法律違反の疑いで上海市浦東新区党委員会の朱芝松書記(次官級)を取り調べていると発表。朱氏も中国航天科技出身で、研究機関のトップを務めてから上海市の官僚に転じていた。また、全国人民代表大会(全人代=国会)常務委でも11月以後、許達哲常務委員が会議に出席していない。許氏は中国航天科工社長や中国航天科技会長を経て、張克倹氏と同じように工業情報化次官と国防科学技術工業局長などを兼任。さらに、湖南省の省長・党委書記(いずれも閣僚級)を務めた」

    次々と汚職が誘発されているのは、中国4000年の歴史が賄賂で染まってきた証である。古代から有力者の下には金が集まっていたのだ。

    (4)「安徽省の省都・合肥市の党委書記(次官級)である張紅文氏も12月上旬に会議を主宰した後、所在が分からなくなった。張氏は中国航天科工の元副社長。「75後(1970年代後半の生まれ)の巡航ミサイル専門家」として有名だ。12月30日には、中国船舶会長の交代が発表された。前会長の温剛氏は10月下旬以後、公式活動が伝えられず、転出先も不明。かつて中国兵器工業に長く勤務し、社長・会長を歴任した」

    習近平氏は、汚職文化のなかで孤軍奮闘しているが空しいものだろう。相手からは、反省どころか恨みを買っているに違いない。習氏が、終身国家主席を務めざるを得ないのは、退任によって災難が降りかかることへの予防策とみられる。因果なことになってきたものだ。

    (5)「以上の経緯から、兵器産業の反腐敗闘争は①ミサイル開発の関係者が多い②関連企業の現経営者だけでなく、OBも調査対象にしている③閣僚級より上の党・国家指導者レベルには及んでいない─ことが分かる。党中央指導部の政治局では、新疆ウイグル自治区党委の馬興瑞書記(元工業情報化次官)と重慶市党委の袁家軍書記が中国航天科技、張国清副首相が中国兵器工業の出身だが、今のところ、異変説は出ていない」

    中国軍では、ミサイル部隊は最新部門である。米軍に遅れを取らないように、予算を湯水のように使ったのだろう。

    テイカカズラ
       

    韓国は、ウォン相場が長く1ドル=1000~1250ウォンラインに収まっていたが、大統領弾劾以来、ウォンの流れは大きく1450ウォン台へと変わり始めた。この結果、ウォン相場は、すでに平均ラインから構造的に離脱している、との診断が出ている。従来の1000~1250ウォンは、頭から消した方が良いということだ。韓国の政治不安が、ウォン安へと飛び火している

    『ハンギョレ新聞』(1月17日付)は、「内乱が為替レートの変動性を強めた、韓国銀行 政治的リスクの長期化を懸念」と題する記事を掲載した。

    韓国銀行が、昨年10月と11月に2度にわたって政策金利を引き下げ、今月には凍結を決めたのは、経済環境の不確実性がいっそう高まっていると判断したからだ。これは、「12・3内乱事態」に起因する政治の不安定が長期化するかどうかと、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の動きをもう少し見守ってから動いても遅くないと韓銀が判断したことを意味する。

    (1)「韓銀のイ・チャンヨン総裁は16日、金融通貨委員会の会議後におこなった記者懇談会で、「(昨年10月と11月の)2度にわたる金利引き下げの効果を見るのも兼ねて、ひとまず息を整えて情勢を見て判断した方がよいと判断した」と語った。イ総裁の述べた「情勢」とは第一に、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領による非常戒厳の宣布からはじまった政治不安だ。「通貨政策の方向性決定文」にも「予想外の政治的リスクの拡大により、成長の下方リスクが高まると共に、為替レートの変動性が強まっている」、「国内の政治状況によって、経済見通しおよび外国為替市場の不確実性が高まっている」と記されている」

    韓国銀行は、戒厳騒動という政治不安が為替レートに及ぼす悪影響を見届けるべく、利下げを見送っている。

    (2)「イ総裁は、政治的リスクが決定的に波及する領域を「外国為替市場」に求めた。同氏は、「現在のウォン相場の水準は、韓国の経済の基礎的諸条件や米国との金利格差など、経済的要因で説明できる水準よりはるかに低くなっている」と述べた。政治的リスクのせいでウォンの価値が異常な水準にまで下落しているということだ。為替レートは、韓銀の第一の存在理由である「物価の安定」を揺るがす最も重要な経済変数だ。ウォン安ドル高は輸入品の価格を押し上げ、消費者物価を刺激するからだ。先月の輸入物価上昇率(対前月比)は2.4%で、前月に比べて上昇幅は3倍近い。韓銀は、内乱事態の序盤には政治的リスクによるドルの上昇幅を最大60ウォン、最近では30ウォンほどと分析している」

    韓国銀行は、政治リスクが為替相場の変動(ウォン安)に現れるとして警戒している。

    (3)「イ総裁は「米国変数」を、韓国経済の不確実性を高めたもう一つの軸だと指摘した。第2次トランプ政権の経済政策と、「一国好況」にともなうFRBによる政策金利引き下げの速度調節の可能性を、注意深く見守っているということだ。10~20%の関税を課すなどの大統領選挙での公約などが直ちに実行されれば、米国はもちろん世界の経済にかなりの衝撃となる恐れがあり、FRBが金利を引き下げなければ韓米の政策金利の格差が拡大し、さらなるウォン安を招きうる、と専門家たちはみている」

    トランプ大統領の関税引き上げが、韓国経済に与える影響も見届けなければならない。

    (4)「イ総裁は、「当初は米国が政策金利を3回ほど引き下げると予想したが、今の米国市場では、1回下げるか、まったく下げず、逆に引き上げる可能性もあるという説も有力だ。トランプ政権の発足後は不確実性が多少は落ち着くだろう」と語った。この日の利下げ凍結決定には、イ総裁を除いた6人の金通委員のうち5人が賛成票を投じた。政策金利を0.25ポイント引き下げるべきだという少数意見を述べた委員は、銀行連合会によって推薦されたシン・ソンファン委員だ」

    25年の米国利下げ回数は、当初見込みの3回から1回程度に減る可能性も見届けなければならない。

    (5)「今後3カ月間の金利見通しでは、6人の委員全員が国内景気の下方リスクを理由に政策金利を3.00%未満に引き下げる可能性を残しておくべきだと主張した。昨年10月から始まった政策金利引き下げの流れそのものは、維持される公算が高いわけだ。イ総裁は「金利の下落期には、国内の経済状況だけを見て判断する余力が上昇期に比べて大きい」として、「国内の政治的対立がある程度落ち着けば、より独立的に引き下げ政策を持っていけるだろう」と語った」

    韓国は利下げにあたり、米国経済と国内政治不安の2要因の動向を見定めなければならない。外国為替市場では、1ドル=1450ウォン台の動きから目を離せない状況である。


    あじさいのたまご
       

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1月19日、ソウル西部地裁によって拘束令状が発付された。尹大統領支持者は、これに反発し地裁の窓を割って建物内に侵入するなど暴れ回った。警察は機動隊など1400人を投じてデモ隊を鎮圧した。2日間で80人余が逮捕されるという混乱が起こっている。

    ソウル西部地裁による大統領拘束令状は、「被疑者が証拠隠滅する恐れがある」とする15文字の理由も論議を呼んでいる。法律専門家は、「この短い令状発布理由だけを見れば、ほぼコソ泥レベルだ」、「容疑に対する疏明などをもう少し明確にした方がよかった」と指摘した。野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は2023年9月、逮捕状を棄却された。ソウル中央地裁令状担当判事は、棄却理由を600字も使い説明した。「偽証教唆の容疑は疏明されるが、逮捕の理由と必要性があるとは言い難い」「政党の現職代表として公職の監視と批判の対象になる点を勘案した」というものだった。

    大統領の逮捕理由は「15文字」であり、最大野党「共に民主党」代表の逮捕状棄却では「600字」も使っている。この司法にみられる左派優遇は、露骨過ぎるという批判が起こっていることから、韓国の政治的混乱は長引く恐れが強くなってきた。

    『朝鮮日報』(1月20日付)は、「韓国、政治危機が長引けば信用格付け引き下げも」と題する記事を掲載した。

    スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ、フィッチという世界の3大信用格付け会社のうち2社が、昨年末の非常戒厳をきっかけに韓国で起きている政治的混乱について「事態が長引けば国の信用格付けが下落する可能性がある」と警告した。韓国の信用格付けは、アジア通貨危機が起きた1997年に投機的等級(ダブルB格以下)まで下落し、以前の水準を回復するのに18年かかった。

    (1)「フィッチでアジア・太平洋諸国の信用格付けを担当するジェレミー・ジューク理事は14日、本紙の電子メールインタビューに対し「韓国の政治危機がかなり長引くか、政治的な分裂が政策の効率性と経済成果を損なう場合、国の信用格付けが引き下げられる可能性が高まるだろう」と述べた。ムーディーズの信用評価部門のアヌシュカ・シャ副社長は「(最近の政治的対立によって)韓国の経済活動が長期的に混乱に陥ったり、消費者や企業からの信頼が失われたりすれば、韓国の信用格付けは否定的な影響を受けるだろう」との見方を示した」

    フィッチとムーディーズは、韓国の政治危機がかなり長引くか、政治的な分裂が政策の効率性と経済成果を損なう場合、韓国の格付けを引下げると予告した。これは、当然のことである。韓国は、「情緒過剰」という特性を持っている。一時的に強く反応するが、その影響が長く尾を引くのだ。これが、消費者心理を不安定にさせる根本理由である。

    (2)「フィッチは1997年、わずか2か月で韓国の国家信用格付けを「AA-」から「B-」まで一気に12段階引き下げた。ムーディーズも当時、韓国の格付けを6段階も引き下げた。韓国の国家信用度は一瞬にして「投機的等級」まで落ちたのだ。1960~70年代の「漢江の奇跡」以降、「成長一辺倒」の経験しかしてこなかった韓国人にとって、これは大きな衝撃で、今でも多くの人々にとってトラウマとして残っている」

    かつての危機時は、輸出急増というテコが効いた。今回は、そのテコがさび付いている。中国の輸入代替が進んでいることと、中国経済の急減速がマイナス要因である。「トランプ関税」も不気味である。韓国の輸出環境が激変している。

    (3)「信用格付け各社はまた、「政治的な不確実性が韓国の今年の成長率にも否定的な影響を及ぼす」との見通しを示した。非常戒厳や大統領の弾劾訴追、内乱容疑などを巡って政治的論争が過熱し、企業の投資心理や国民の消費心理が一気に冷え込むというわけだ。S&Pで信用格付けを担当するキム・ウンタン理事は、「(今回の事態で)韓国の信用格付けが変更されるとは予想していないが、投資・消費心理に否定的影響を与える可能性が高い」として「韓国の国内景気の回復にもマイナスの影響を与えるだろう」と述べた」

    国策研究機関である韓国開発研究院(KDI)が、韓国経済の下方リスクが大きくなっているという診断を出した。内需回復の遅延と輸出の鈍化、通商環境悪化の可能性など国内外の経済の不確実性が高まる中、「国内政治状況」で経済心理の悪化まで加わったという判断だ。KDIが経済の下方リスクが大きくなっていると警告灯を点灯したのは2年ぶりのことだ。韓国政府は1月早々、2025年の経済成長率を1.8%の見通しとした。昨年7月時点の予測では2.2%であった。


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