勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    家電量販大手のノジマは21日、日立製作所の白物家電事業を買収すると発表した。日立製作所は、2009年3月期の巨額赤字から17年間、安定的に稼げる企業構造へと事業を入れ替えてきた。白物家電は、構造改革の完遂に向けた「最後の非中核事業」だった。それが、ノジマの経営へ委ねられる。

     

    高度経済成長期、家電メーカーは破竹の勢いで伸びていた。量販店のダイエーが、松下電器製品をディスカウントしたとして、松下がダイエーへ取引中止を通告して両者が対立。1964~70年まで騒ぎが続いた。あの時代からみると現在は、流通がメーカーを支配する時代。隔世の感がする。

     

    『日本経済新聞』(4月22日付)は、「ノジマ、自前で家電開発 日立の白物買収 ブランド・雇用は維持」と題する記事を掲載した。

     

    家電量販大手のノジマは21日、日立製作所の白物家電事業を買収すると発表した。家電各社の競争領域が、値引きからプライベートブランド(PB)など独自商品の品ぞろえに広がる。メーカー機能を取り込み、製販一体で商品開発力を高めた新しいビジネスモデル構築に挑む。

     

    (1)「21日午後、都内で記者会見を開いたノジマの野島広司社長は、「日立の技術をより顧客のニーズに合わせることで、素晴らしい商品を世の中に出せる」と意気込みを語った。日立傘下の日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)の家電事業などの買収を決めた。日立GLSが新会社に家電事業を継承し、ノジマが特別目的会社(SPC)を通じて新会社の株式約80%を取得する。日立GLSは残りの約20%の株式を保有する。買収額は、1100億円」

     

    ノジマは、家電メーカーを買収した。これで、同社の家電部門は強化される。日立GLSの家電部門は、かつての日立家電である。

     

    (2)「日立GLSは、白物家電で国内有数のメーカーだ。25年3月期の売上高は3676億円で、洗濯機に強みを持つ。25年3月時点で5100人の従業員を抱える。野島社長は会見で「リストラはしない。日立のブランドも守る」と述べた。日立は、物家電の海外事業は21年にトルコ大手アルチェリクと合弁会社を設立し、同社に売却している。日立GLSの家電事業を継承する新会社は、アルチェリクが持つ合弁会社の株式6割、日立GLSが持つ4割をそれぞれ取得し完全子会社とする」

     

    ノジマは、全社員を引き継ぐ。日立ブランドも守る。国産メーカーのシンボルとして貴重な存在である。

     

    (3)「今回のM&A(合併・買収)はノジマにとってこれまで以上に大きな意味を持つ。国内で初めて家電メーカーを傘下に持つ大手家電量販チェーンとなるからだ。野島社長は「顧客の声を製品開発に反映し、製造からアフターサービスまで循環させることで品質にこだわった製品を届ける」と話す。国内での家電量販市場では価格競争に加えて、特色のあるPBを軸とする独自商品に競争領域が広がりつつある」

     

    ノジマは、家電メーカーを傘下に持つことで、他の大手家電量販店チェーンに比べて優位に立つが、価格面で差別し過ぎると問題が起きる。日立家電製品を扱わなくなるからだ。となると、品質や補修サービスなどの面で工夫が求められよう。

     

    (4)「日立家電を取得することでノジマは今後、国内家電市場の中核プレーヤーとなる。OEM(相手先ブランドによる生産)でPBを展開する競合と比べ商品開発分野で大きく先行することになる。ただ、ノジマの買収は成功例ばかりではなく、過去にはCDDVD等のソフト販売店や人材派遣会社の買収で失敗したこともある。今回の買収もかねてから「本当に相乗効果は出るのか」(関係者)との声が挙がる。ノジマの店舗数は約240店舗とヤマダデンキ(直営で約950店舗、家具店なども含む)やケーズHD(約550店舗)と比べて少ない。他社が、ノジマ傘下となった日立ブランドの売り場を縮小することになれば売上高が伸び悩む可能性もある」

     

    他社が、ノジマ傘下となった日立ブランドの売り場を縮小すると、売上高は伸び悩む。この点が、一番の悩みであろう。

     

     

     

     

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    中国は、26年1~3月期の実質GDP成長率が5%になったことで、「好スタート」を切った形である。だが、今年は15次五カ年計画(2026~30年)の初年に当たる。政府が、財政支出を集中的に行い「気勢」を上げさせていることは間違いない。こういう事情を総合すると、先行き不安がよぎるのだ。原油高が、個人消費へ及ぼす影響である。中国メディア自身が、この点を自覚している。

     

    『レコードチャイナ』(4月21日付)は、「中国経済が好スタートも、依然として根深い『構造的課題』―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『第一財経』(4月19日付)は、今年13月の中国経済が前年同期比5%成長で好スタートを切ったものの、「供給強・需要弱」の構造的課題が依然残っていると報じた。

     

    (1)「記事は、13月の中国の国内総生産GDP)成長率が5%で市場予想を上回り、主要経済国の中で上位に位置したと紹介。内需の経済成長への寄与率は84.%に達し前年同期から30ポイント近く大幅上昇したほか、固定資産投資は前年同期比1.%増と前

    年通年の38%減から反転し、社会消費品小売総額は約13兆元(約303兆円)で同24%増となったと伝えた」

     

    内需とは、消費と投資の合計である。これが、1~3月期のGDP成長率の8割を占めたとしている。これは、15次五カ年計画のスタートに合わせたインフラ投資が押し上げたものだ。

     

    (2)「一方で、好材料の裏には懸念も残るとし、最終需要に近い川下産業の価格が圧力を受け続けており、コスト上昇分を末端価格へ転嫁できないことによる利益侵食が深刻化していると指摘。輸入インフレ圧力の中で金融政策が、コスト要因による物価高騰の防止と、経営難の中小企業や調整局面の不動産市場への配慮との間でジレンマに直面しているという専門家の見解を紹介している」

     

    コスト上昇分の価格転嫁が、思うように進まないことで企業負担が増えている。コスト増の減益が始まっているのだ。これが、企業の設備投資や賃上げにブレーキとなる。

     

    (3)「また、「供給強・需要弱」という構造的課題の根深さにも言及。専門家の分析として、住民の平均消費性向が第1四半期でわずか62%にとどまっており、将来不安が消費を抑え込んでいる現実を指摘したほか、供給側では強力な製造業が高い稼働率を維持して売上拡大を追求し続けた結果、原材料や工業製品の在庫が高止まりしていると報じた。記事は、こうした課題に対して政府が具体的な対応方針を打ち出しているとし、国家発展改革委員会の王昌林(ワン・チャンリン)副主任が26〜30年の内需拡大戦略実施計画と、都市・農村住民の所得増進計画の策定方針を明らかにしたと伝えた」

     

    平均消費性向は、第1四半期でわずか62%にとどまった。一方で、供給は増え続けている。在庫増による企業利益圧迫が一段と進む状況だ。

     

    (4)「今月10日に経済情勢に関する専門家・企業家座談会を主宰した李強首相が、新職業の育成と職業技能の向上を通じて、住民所得の増加・内需拡大・経済発展の好循環を強化するよう求めたことにも言及している。記事は最後に、消費を底上げするための具体策として、専門家が提示した革新的なプランを紹介。一部都市を試行地区に国債発行で「住民所得増進誘導基金」を設立し、賃上げを行った企業に政府が補助金を支給する仕組みを導入することで、所得分配の不足問題を解決するものだと伝えた」

     

    政府は、賃上げ企業に補助金を出すというが対症療法に過ぎない。抜本的解決には、過剰生産を止めることである。問題は、この供給にも補助金が出ているのだ。補助金対補助金という、効果を打ち消し合う政策が行われている。愚の骨頂と言うべき政策である。


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    原油価格の値上がりショックは、中国にとって単なる輸入コストの問題だけではない。消費に慎重な家計と過剰生産を続ける産業の二面で、構造的不均衡を浮き彫りにする。中国が、仲介を装いながらイランへ早期解決を迫っているのは、自国の不利益を十分に計算に入れた動きである。

     

    『中央日報』(4月20日付)は、「原油高が浮き彫りにした中国の不均衡」と題するコラムを掲載した。

     

    原油の上昇は、実質所得を削り取る「見えない税金」だ。消費心理を萎縮させ購買力を減少させ、家計が大きな支出を後回しにする原因となる。原油価格が大幅に上昇した場合、6月までに小売販売は約28%減少し、今年の民間消費増加率も従来の展望より04ポイント低下する可能性がある。

     

    (1)「最も直接的な打撃を受けるのは、自動車や家電などの高額耐久消費財だ。これらの品目は、すでに不動産沈滞、雇用不安、景気の不確実性により、消費項目の中で最も振るわない。原油価格の上昇は、すでに躊躇(ちゅうちょ)している消費者をさらに萎縮させる。一時的に電気自動車(EV)へと需要が移る可能性はあるが、長続きは難しい。心理の冷え込みによって実質所得が減少すれば、電気自動車の需要も結局は落ち込む」

     

    原油相場の上昇が、消費者物価を押し上げるので、家計の消費行動が慎重になる。これは、分かりきったパターンである。一時的に、EV需要が増えても線香花火に終わる。所得減が理由だ。

     

    (2)「一方、原油価格ショックに敏感ではない食品・医薬品・外食・レジャーといった日常の消費は、相対的に堅調だとみられる。政策も緩衝役を果たす。中国政府は燃料価格を直接管理し、エネルギー調達と流通の過程でマージンを抑制することで、国際原油価格の上昇が家計にそのまま伝わらないよう速度を調節する。消費者心理も同様だ。財布が薄くなったと感じる時、人々は自動車の購入は見合わせても、友人との夕食や週末のレジャーはそう簡単には諦めない」

     

    日常消費は、相対的に堅調と楽観的としているが、どうだろうか。消費者は、一律に緊縮ムードに入るだろう。輸出減が起こるので、雇用不安が高まるはずだ。

     

    (3)「問題は、その衝撃がよりによって最も脆弱な財貨部門に食い込むという点だ。財貨部門は需要が弱く、供給が溢れている代表的な部門である。これまで中国は、不動産の好況と建設ブームのおかげで、工場から溢れ出る品々をある程度消化することができた。しかし、不動産市場が冷え込んだことで、その出口も塞がった。現在は政府の「以旧換新」政策、すなわち古い製品を新しいものに買い替える際に補助金を支給する制度が、その空白を一部埋めている。在庫を減らし製造業の需要を下支えしながら、エネルギー効率まで高めようという試みだ。しかし、この政策もすでに弱まった消費の上でかろうじて耐えている状態だ。原油価格ショックは、その負担をより一層加重させる」

     

    消費が落込めば当然、生産へ影響する。特に、世界的な石油ショックの拡大によって、中国の輸出は影響を受ける。生産が落込むのは自明の理であろう。

     

    (4)「これに加え、今年満期を迎える大規模な家計預金も変数だ。理論的には消費余力につながる可能性があるが、物価上昇と金利低下の中で、資金は消費よりも資産管理商品・債券・金へと移動する可能性が高い。中国は他のエネルギー輸入国と比較すれば、原油価格ショックを一次的に緩衝する余力がより大きい。しかし、衝撃を避けることはできない。家計は財貨の消費から減らしサービスは維持するが、その負担は結局、すでに供給過剰となっている製造業部門へと跳ね返ってくる」


    中国は、原油価格ショックを一次的に緩衝する余力がより大きいとは、備蓄量が4ヶ月ほどあるという意味であろう。これは別として、値上がりショックは同じである。最終的には、すでに供給過剰となっている製造業部門へと跳ね返る。当然の道筋である。

     

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    4月は、若者が一斉に社会人になる季節だが、韓国の若者に春が来ないようだ。今年1~3月期の若者(15~29歳)失業率は7.4%。4月以降の新卒者を加えると、失業率はさらに高止まりしかねない状況である。原因は、終身雇用制で大企業の採用枠が少ないことと、中小企業と大企業の賃金格差が極めて大きく、大企業採用を待つ「就職浪人」の増加である。これに加えて、AI(人工知能)が採用減に拍車を掛けている。こうして、就職の門は一段と狭まっている。

     

    『中央日報』(4月20日付)は、「韓国の失業者、5年ぶりに100万人台…4人に1人は青年層」と題する記事を掲載した。

     

    1~3月期の月平均失業者数が5年ぶりに100万人台となった。人工知能(AI)の影響などにより、失業者4人に1人が青年層だった。


    (1)「19日、国家データ処によると、今年1~3月期の月平均失業者数は102万9000人で、前年同期比4万9000人増加した。1~3月期基準では、新型コロナウイルスのパンデミックの影響が大きかった2021年(138万人)以来、初めて100万人台となった。1~3月期の失業者数は2021年にピークを記録した後、2022年99万人、2023年91万800人へと減少した。しかし2024年には96万人へ再び増加し、昨年(98万人)と今年まで3年連続で増加している」

     

    韓国の大学(4年制)進学率は、64%(2024年)にも達し、世界で6位にランキングされている。ちなみに、日本は48%(同)だ。韓国では、高い進学率の大卒者を受入れる企業が少ない上に、最近のAI(人工知能)ブームである。企業は、採用を絞っていることで一段と「狭き門」になっている。

     

    (2)「データ処関係者は、「通常1月に再開される(高齢者雇用などの)直接雇用事業が遅れたことに加え、公務員採用試験の受験者数が増えたことも、失業者増加に影響した」と述べた。失業者のうち、15~29歳の青年層は27万2000人で、全体の26.4%を占めた。前年より1万人増え、2年連続の増加となった。1~3月期の青年層失業率も7.4%で、前年同期比0.6ポイント上昇した。これも2021年(9.9%)以来、5年ぶりの高水準となる」

     

    15~29歳の青年層失業者は、27万2000人。全体の26.4%を占めた。4分の1強である。働き盛りの若者が、これだけ失業しているのは、終身雇用制という硬直した制度によって、企業が採用を絞っている結果だ。労働市場は、流動的でなければならない。企業も解雇が困難ということで、採用を絞ることになっている。みすみす雇用機会を奪っているのだ。

     

    (3)「一方、1~3月期の青年層就業者数は342万3000人で、1980年の統計作成開始以来、過去最少となった。経験者優遇や随時採用、AI導入など、雇用市場の構造的変化が社会に出たばかりの若者に打撃を与えている状況だ。1~3月期の青年層雇用率は43.5%で、前年同期比1ポイント低下したが、30代の雇用率は80.7%で、1-3月期基準では過去最高を記録した」

     

    経験者優遇や随時採用は、中小企業の話であろう。中小企業は、大企業と異なり「人不足」という偏りがある。若者は、賃金格差が極めて大きいので、中小企業への就職に尻込みしている。賃金格差の是正には、韓国財閥の特権的地位を引下げることが眼目になる。財閥企業の中小企業製品買い叩きが、中小企業の収益を奪っているのだ。

     

    (4)「韓国政府は今月中に、青年層雇用支援策とともに、就業能力強化、再起支援などを盛り込んだ「青年ニューディール推進案」を打ち出す予定だ」

     

    青年ニューディール推進案とは、韓国政府が4月に発表予定の、若者向けの雇用支援・再教育・再挑戦支援をまとめた包括パッケージである。具体的には、次のような内容だ。

     

    1)青年層の雇用支援

    若者向けの就職支援プログラム

    インターン、職業訓練、企業への採用インセンティブ

    AI導入で減った「初級職」の代替策

     

    2)就業能力の強化(リスキリング)

    デジタル技能、AI活用、専門職への転換支援

    大学卒でも「実務経験不足」で落とされる問題への対策

     

    3)再起支援(再挑戦の仕組み)

    就職失敗後の再教育

    起業支援やキャリア転換支援

    公務員試験浪人の増加への対応

     

    問題解決の根本問題は、ホワイトカラーに終身雇用制を維持していることだ。ブルーカラーであれば、技能蓄積という意味で終身雇用制は成り立つとしても、ホワイトカラーへの適用は無意味である。転職市場育成に逆行するからだ。

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    とてつもない楽観論が現れた。ロイターという名門英国通信社のコラムでだ。上海の中古物件市場では価格が上昇し始めており、3月の住宅価格の下落ペースも再び緩和したというのだ。つまり、下げ止まりとみている。25年GDP成長率が、5%で堅調であったことも不動産バブル底入れ説の材料にしている。データの「つまみ食い」現象だ。

     

    『ロイター』(4月17日付)は、「『不動産バブル』乗り越えた中国、傷浅く 地政学的混乱も好機に」と題する記事を掲載した。

     

    中国がついに大きな転換点を越えた。政府が膨張した不動産セクターの規制に乗り出してから5年、経済は質の高い成長を軸とする、より持続可能な軌道に乗っている。そして調整が残した傷跡は、多くの人々が懸念していたよりもはるかに少なかった。

     

    (1)「中国の不動産価格は、2021年以降、平均4050%も下落しており、弱気相場の中にある。不動産価格の調整は底を打ちつつあるようだ。上海の中古物件市場では、価格が上昇し始めており、3月の住宅価格の下落ペースも再び緩和した。価格の下落が最も深刻だったのは24年後半だった」

     

    上海の中古価格は、2021年ピークから20〜30%も下落し、在庫は依然として高水準である。下げ止まりに見えるが、構造的にはまだ下向き圧力が強い。在庫圧迫によるものだ。カギは、在庫物件数が減ることである。その点で、何らの変化もない。住宅底入れとは、決して言えるものではない。

     

    (2)「不動産価格デフレの規模を考えれば、ほとんどの分野が崩壊を免れたのは驚異的だ。当初は1989年のバブル崩壊後の日本並み、あるいはそれよりずっと深刻な悲劇が起きるという終末論が取りざたされたが、実際にはそれとは対照的な結果となった。日本の場合、不動産価格はピーク時から80%下落した。1997年には銀行危機が起こって経済はデフレの罠にはまり、それを食い止めるには25年の歳月と、大規模な財政出動および積極的な金融緩和を要した」

     

    日本の不動産バブルと中国のそれとの決定的な違いは、中国の地方政府が大きな隠れ債務を抱えていることだ。地価下落によるもので、これから、その悪影響が金融機関の不良債権となって重圧化する。すでに、銀行利ざやはレッドラインの1.8%を大きく割込んで、連鎖倒産危機も起こりうる状況だ。

     

    (3)「中国は、日本よりさらに脆弱な状態で不動産バブル危機に突入した――少なくとも2021、22年ごろの通説ではそう考えられていた――ため、経済や金融システムの他の部分にも連鎖的な破綻を引き起こすと懸念された。しかし、実際にはそうはならなかった。中国は不動産セクターが収縮する中でも、年率実質5%のGDP成長を維持した。さらに重要なのは、政府がこの苦境を好機とし、成長の「最大化」から成長の「質向上」へと舵を切ったことだ」

     

    25年の名目成長率は4%で、実質成長率5%を下回っている。これは、GDPの「名実逆転」という、デフレ期特有の現象だ。現状は、デフレ期である。景気回復とは無縁である。

     

    (4)「中国のGDPは、もはや住宅ブームによって水増しされず、長期的発展を支えそうな活動によって支えられている。人工知能(AI)、ハイテク製造業、代替エネルギー分野での主導権確保を目指す取り組みなどだ。より広い視野で見れば、中国は自律的な産業エコシステムの構築において着実な進展を遂げている。これは、バリューチェーン上位への移行を支援する「中国製造2025」計画による面が大きい。規模とスピードを兼ね備えた中国経済は現在、電気自動車(EV)やロボット工学などの高付加価値商品において、欧米のライバルと真っ向から競争できるようになった」

     

    中国製造2025に基づく、「EV・太陽光パネル・電池」の増産は、補助金による過剰投資が災いして、過剰生産=値下げ競争という最悪事態である。これでは、GDPに何ら寄与しないのだ。

     

    (5)「これは主に、二つの重要な戦略によるものだ。第一に、中国は「超高速の模倣・イノベーション」戦略を採用した。STEM(科学・技術・工学・数学)分野の卒業生やエンジニアという人材群を最大限に活用し、可能なものは全て模倣し、必要に応じてイノベーションを起こすという手法だ。しかも、そのスピードは極めて速い。例えば、中国自動車メーカーの製品サイクルは欧州メーカーの約2倍で、欧州勢が新型モデルの開発に46年を要するのに対し、中国メーカーは1.3年だ」

     

    若者失業率は、17%にも及んでいる。大学卒業=失業という厳しい状況に追い込まれている。STEM分野の卒業生能力が、生かされていないのだ。中国自動車メーカーの新型モデル開発で、1.5~3年と短いのは横並びの模倣であるからだ。これが、災いして特色ある「車づくり」ができず、事故を増やしている。短期間の開発は、販売補助金による買い換えがあるからだ。その販売補助金は、地方政府の財政難で打ち切られつつある。

     

    (6)「もちろん、依然として懸念材料はある。中国は今なお国内需要を十分に刺激できておらず、激烈な競争が国内の利益率を圧迫している。しかし輸出市場は中国メーカーに大きな利ざやをもたらし続けている。例えば、中信証券(CITIC)によれば、EV大手の比亜迪(BYD は、中国国内での利益は1台当たり平均440ドルだが、海外市場では3000ドルに跳ね上がる。米国との貿易摩擦も痛手だが、中国は他の地域、特にアジア、欧州、新興市場への輸出を大幅に増やしている」

     

    26年1~3月期の自動車業界は、営業利益率が初めて3%を割った。自動車は、5%割れはレッドラインとされている。現状は、この危機ラインに落込んでいる。BYDも同じ過当競争下にある。

     

     

     

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