勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    中国の7月の新規人民元建て融資は、4月以来となる今年2回目のマイナスとなり、減少幅は過去最大となった。季節要因や家計の借り入れ需要低迷が重石となった。これは、「季節要因」で説明できない現象だ。家計・企業の両方が、金融機関から借りない(=需要が消えた)という構造的現象になった。

     

    26年7月は、中国が信用収縮過程へ「突入」したことを示している。日本経済の1998~2003年と同じ現象が始まった。もはや、「泥沼」から脱出するにはどうするか、という深刻な事態である。

     

    『ロイター』(8月14日付)は、「中国新規銀行融資、過去最大のマイナス 需要弱く個人・法人とも減少」と題する記事を掲載した。

     

    7月の新規融資は、中国人民銀行(中央銀行)が14日発表した統計に基づくロイターの算出で3400億元(504億3000万ドル)の純減となった。4月は100億元減少していた。

     

    (1)「キャピタル・エコノミクスは、リポートで「銀行の名目貸出金利が引き続き低下しているが融資需要は弱い」と指摘。「最近のインフレ率上昇により今年の銀行貸出金利は実質ベースで入って大幅に低下している」と述べた。中国の銀行は通常、第2・四半期末に向けて融資を前倒しした後、減速させる。人民銀は月次の内訳を公表していない。ロイターは17月データを16月データと比較し7月の数値を算出した」

     

    金利を下げても、貸出が減るどころか減っている。明らかに、信用収縮過程へ「飛び込んで」いる。最悪事態へ向っているのだ。

     

    (2)「人民銀によると、17月の新規融資は10兆3800億元。前年同期の12兆8700億元を下回った。7月末時点の融資残高は前年比5.1%増。伸び率は6月の5.2%増から鈍化し過去最低となった。市場予想の5.3%増も下回った。家計が、債務圧縮(デレバレッジ)を続け、民間部門の借り入れ需要が低迷する中で、融資回復の兆しは乏しい。7月の住宅ローンを含む家計向け融資はロイターの算出で4603億元の純減、企業向け融資は1300億元の純減。6月はそれぞれ2646億元増、1兆5000億元増だった」

     

    7月の新規貸出は、3400億元の純減(過去最大)である。家計向けは、4603億元の純減で住宅ローンが落込んだ。企業向けは、1300億元の純減で投資が止まったことを意味する。こうして、7月の融資残高伸び率が、前年比5.1%増(過去最低)となった。

     

    (3)「人民銀は12日、適度に緩和的な金融姿勢を維持し、必要に応じて実効性のある追加措置を導入する方針を示した。ただ具体論には踏み込まず、政策金利や銀行預金準備率の引き下げを明示しなかった。キャピタル・エコノミクスは、「人民銀は最近の信用データの弱さについて特に懸念していないようだ」としたが、今後1年で約30ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されるとの見方を維持した」

     

    金利を下げたら、人民元は売られる。金利を下げても貸出が増える訳でもない。既に、「流動性の罠」にはまっているからだ。

     

    (4)「中銀系の金融時報は、国内の信用システムが多様化しているとし、銀行融資だけでなく債券発行やその他の資金調達チャネルと併せて融資動向を投資家は評価すべきと論じた。中銀によると、2025年の社会融資総量の増加分に占める割合は、融資が45%、債券と株式による資金調達が合わせて47%と、初めて融資を上回った」

     

    これは、「信用システムの多様化」ではない。銀行が融資を渋っている結果、債券発行や株式発行に頼らざるを得なかっただけである。中国経済の現状が、資金調達多様化をさせるほど、まだ発展していないからだ。資金調達コストの一番安いのは銀行借入である。そこが貸出を渋っているのだ。要するに、銀行借入は最も安いが、銀行は貸さない。だから、企業は高コストの債券・株式へ依存せざるを得ないのだ。その結果、比率が逆転しただけである。これは、資金調達の「多様化」ではなく。「信用収縮の表れ」である。現実を見誤ってはならない。

     

    (5)「人民銀のデータによると、7月の広義マネーサプライ(M2)残高は前年同月比7.7%増と、アナリスト予想(7.9%増)を下回り、6月(8%増)から伸びが鈍化した。信用と流動性を示す広範な指標である社会融資総量残高は、前年比7.4%増で6月から変わらずだった。政府債の発行が加速すれば、こうした資金調達額が押し上げられる可能性がある」

     

    7月のM2増加率が、ついに8%割れの7.7%になった。中国経済の現状では、5~6%がM2の適正増加率とされてきた。この過剰供給分が、資金の海外流出原因とみられている。M2増加率鈍化は、7月の手形市場の閉鎖による当局の意図した結果とも言えよう。人民元相場維持という「最終防衛ライン」を守る準備である。第二次世界大戦の「ダンケルク」の戦いである。

     

     

     

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    中国の元首相朱鎔基氏が、8月12日に亡くなった。中国が、台頭する重要な時期に最も大きな影響力を振るった経済政策の立案者である。朱氏は、大規模な改革開放政策を実施したが、地方財政の土地依存、輸出依存、内需の弱さなど、現在抱える諸問題の発端をつくった人物としても記憶される。しかし、朱鎔基政策は、市場化を進める方向で改革した。問題は、朱氏の後継に当たる習近平氏が「改革続行」でなく、「改革阻止」した責任は重大である。

     

    習近平氏の政策は、朱鎔基氏とは「逆方向」であった。民間企業の締め付け、国有企業の強化、不動産規制の急ブレーキなどだ。これは、改革が既得権益と党支配を揺るがすことを理解していたからだ。党支配力を強める方向で、経済政策の舵取りを行ったのである。習近平氏は、改革ではなく統制を、市場ではなく党支配を、分配ではなく締め付けを選んだ。つまり、朱氏は改革方向を追及したが、習近平氏は改革そのものを拒否するという、「改革阻止」に動いた。こういう意味で、習近平氏こそ批判されるべき立場にある。朱鎔基改革は「構造的欠陥」を残したが、習近平氏はそれを「悪化」させたのである。

     

    『ロイター』(8月13日付)は、「中国悩ます朱鎔基改革の光と影、習指導部に迫る『棺おけ』の覚悟」と題するコラムを掲載した。。

     

    朱氏は中央政府の税収基盤を強化し、後に世界貿易機関(WTO)加盟を実現させた。この二つの功績は数十年にわたる経済成長を促した半面、不動産の売却と輸出に過度に依存する経済モデルを生んだ。20兆ドル規模の中国経済がこうした構造的欠陥を克服するには、朱氏に劣らぬ大胆さが求められる。

     

    (1)「朱氏は1991年に副首相に就任し、その後、中国人民銀行(中央銀行)総裁も兼務。危機的な局面にあった中国経済の事実上のかじ取り役となった。インフレ率は20%近くまで上昇し、中国は1989年の天安門事件がもたらした外交的打撃と、それに伴う経済的余波になお苦しんでいた。市場重視の改革は共産党内の保守派から激しい抵抗に遭い、当時の最高指導者トウ小平氏は政治的な行き詰まりを打開するため、92年に南巡講話に踏み切らざるを得なかった」

     

    朱鎔基氏が始めた市場重視の改革は、共産党内の保守派から激しい抵抗に遭った。これを救ったのが、トウ小平による「南巡講話」である。こういう苦闘を経てきた中国経済が、習氏によって簡単に「市場軽視」政策へ切替えられた。民営企業への抑圧である。

     

    (2)「機能不全に陥った中国経済に処方箋を示した医師がトウ氏だとすれば、執刀医は朱氏だった。その大胆な手術の影響は今も残る。朱氏が94年に実施した財政改革は中央政府の財政を立て直し、その力を強めた。一方、税収を中央に集中させながら、歳出の多くを省や市に負担させたため、地方当局は土地売却や簿外融資を収入源として頼るようになった。このため、習近平国家主席が2021年に不動産開発業者の債務削減を進めると、既に不安定だった地方財政は窮地に陥った」

     

    朱氏が94年に実施した財政改革で、地方当局は土地売却や簿外融資を収入源として頼るようになった。いわゆる「土地本位制」を構築するきっかけである。これが、不動産バブルを引き起すテコになったが、習氏はこれを利用して軍事費拡大を行った。

     

    (3)「朱氏が、国際舞台で成し遂げた最大の功績は、01年に中国のWTO加盟を実現し、その後数十年にわたる輸出主導の成長に道を開いたことだ。しかし、その代償として中国経済は海外市場と外国からの投資に大きく依存するようになり、25年の貿易黒字は過去最大の1兆2000億ドルに膨らんだ。内需が低迷する中、この成長モデルの弊害は一段と鮮明になっている。政府が「内巻」と呼ばれる消耗的な過当競争の抑制に乗り出しているにもかかわらず、企業は必死に値下げを続けている。一方、中国国内で行き場を失い海外に向かう製品に対し、貿易相手国の反発も強まっている」

     

    中国は、WTO加盟で一挙に工業国家へ仲間入りした。だが、WTO規定にないダンピングを使って、相手国市場を攪乱する手法を多用した。これが、中国製品を締め出す「デカップリング」を正統化させるきっかけになった。先進国と中国の「付加価値構造」を比較すると、中国は、「低賃金・低付加価値」であり、先進国の「高賃金・高付加価値」と全く相容れないことが判明した。

     

    このまま、中国製品の輸入を認めることは、先進国の「文明崩壊」招きかねず、デカップリングは正しい政策として位置づけられる。その意味で、米国は最初から中国工業製品を締め出してきた。正解であった。欧州が今、その分岐点に立たされている。日本は、中国製品を寄せ付けない深層構造になっている。

     

    (4)「中国政府が今日直面する問題は、多くの点で朱氏の経済改革が残した課題だ。当局は、不動産不況に歯止めをかけ、債務を抱えた地方政府の新たな財源を確保し、消費主導型の成長への転換を目指している。しかしこれらの目標を達成するには、朱氏が得意とした専門官僚的な政策対応だけでは不十分だ。富裕層と貧困層、中央政府と地方政府、国有部門と民間部門の間で資源と権限を再配分するという、政治的に困難な改革が必要になる」

     

    朱鎔基氏の残した課題について、習近平氏は見向きもせずに国有企業復活を推進した。朱氏の政策に反することを行った。その財源調達で、土地依存を一段と深めた。朱氏に従って民営化を推進すれば、現在のような経済不振を招くことはなかった。

     

    (5)「こうした改革は、既得権益層を動揺させかねない。朱氏はそのことをよく理解しており、かつて敵のために99個、自分のために1個の棺おけを用意したと語ったことで知られる。後継者たちが現在の難題に立ち向かうには、朱氏と同様の決意が求められる」

     

    習氏は、粛清という強圧手法で立ち向かってきた。「自分用」の棺おけなど、全く存在せず責任をすべて他人へ押し付けてきた。これ一つ取っても、朱鎔基氏と習近平氏は別次元の人間である。

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    新型コロナウイルス禍を経て続いた、急速な出生減が底入れしつつある。2026年の出生数は15月に前年同期を0.4%とわずかに上回った。11年ぶりの増加である。婚姻数が2年連続で増えたことが出産につながっている。東京など4都県で、25年の出生数が増加に転じた。人口急減期(2021〜24年)が終わり、底を打ったことは確実である。

     

    コロナ禍であった2020〜23年の婚姻数急減は、異常値であった。2024〜26年は、その反動で婚姻数が戻っている。出生数は、婚姻数の2〜3年後に反映されるので、これからの出生数反転が期待できる状況だ。「国の未来への自信」は、出生率に最も効く心理変数である。株価の上昇、賃上げの継続などが、若年層の心理を少しずつ改善させていることは間違いない。

     

    『日本経済新聞』(8月14日付)は、「出生数が底入れの兆し 今年15月、11年ぶり前年上回る 婚姻数が2年連続増」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「厚生労働省が、毎月発表する人口動態統計(外国人を含む速報値)によると、26年15月の出生数の合計は28万2222人だった。前年の同じ期間(28万979人)を0.4%上回った。この期間で前年を上回るのは15年以来、11年ぶりとなる。近く公表する6月の出生数が25年と同水準であれば上期の合計では同様に11年ぶりに前年同期を上回る」

     

    婚姻数の増加は、出生数の「先行指標」である。婚姻数が増えると23年後に出生数が増える。これは人口動態の鉄則だ。若年層の雇用・賃金改善が進んでいる。2024〜26年の賃上げは顕著であった。これが、いずれ婚姻数増加→出生判断に直結する。もう一つ、社会心理の改善として「円高は出生率を押し上げる」ことは事実だ。国の未来への自信は、出生率に最も効果的である。出生数は底入れした。本格反転にはまだ至らない。ただし、反転の「可能性」は確実に出てきた。

     

    (2)「上期の出生数の減少ペースは、鈍化してきている。21年の減少率は6%近くとなり、その後は3%台後半~5%程度の水準が続いた。25年は3.%減だった。底入れ傾向はすでに通年の日本人の出生数で兆候があった。6月公表の人口動態統計(概数)では、日本に住む日本人の25年の出生数は前年より1万4937人(2.%)減って67万1236人だった。1899年の統計開始以来で最も少なかったものの、2024年まで3年連続で前年比5%を超えた急速な出生減のペースはやや鈍化した。24年はすべての都道府県で前年比減だったが、25年は東京や石川など4都県で増加に転じた」

     

    25年は、東京や石川など4都県で増加に転じた。こうした地域が増えてくれば、出生数反転は確実になろう。

     

    (3)「日本総合研究所の藤波匠主席研究員は、「26年通年は25出生数反転年を上回る可能性もある」とみる。出生数が底入れしつつある要因の一つが、婚姻数の増加だ。結婚する人の数は23年後の出生率に影響を与えるとされる。婚姻数はコロナ禍を経て24年から2年連続で増加した。25年は0.%増の48万9119組だった。戦後最少だった23年の47万4741組と比べて約1.4万組の増加となる」

     

    出生数反転には、婚姻数増加が前提になる。それには、家庭を持てるような政策実施が最も必要である。個別的な補助金という「細々」としたものでなく、若者が日本の将来に夢が持てる政策の実施である。

     

    (4)「結婚する人は増えつつあるとはいえ、水準は決して高いとはいえない。19年は59万9007組で、なお10万組以上少ない。20年に前年から7万組減ったことなどから、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)はパンデミック(世界的な大流行)による結婚の先送りが背景と分析していた」

     

    結婚は、強いるものではない。社会的な環境条件が整えることである。それは、「夢」であろう。夢を持てる社会をどうやって築くか。ポイントは、これである。今日よりも明日は、もっと良くなる。帰する所は、確実な賃上げの実施=生産性向上だ。

     

    (5)「婚姻数が、大幅な回復とはいいにくいなか、前年を上回る出生数が続くかは見通せない。25年は戦後のピークだった1949年の269万人と比べて3分の1以下に落ち込んでいる。社人研が23年に公表した将来推計人口が見込んだ悲観シナリオの低位推計に近い水準だ。出生数の減少は日本の経済基盤に深刻な影響を与える。経済不安が拭えなければ結婚や出産をさらにためらう悪循環に陥る」

     

    日本経済は、分散型フィジカルAI(人工知能)の現場採用によって確実に上昇する。世界で最初に日本が実現可能であるからだ。ラピダス半導体が、この夢を実現する。となると、出生数の増加の実現期待が強くなる。

     

    (6)「政府が7月に決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、「少子化傾向の反転と人口減少に対応した社会経済の再構築の両面にわたる対策」を打ち出し、26年末に人口総合戦略(仮称)を策定する方針を示している」

     

    子どもを育てやすい環境をどのようにつくるか。従来の「補助金システム」は機能しないであろう。子どもを育てることが、人間としての幸せに繋がる道をつくることが先決だ。北欧型福祉社会も行き詰まっている。雇用確保がスムーズでないからであろう。人口増が、必要な社会を模索することだ。人型ロボットの利用が、人口を増やす手段になる。ここら当たりを模索すれば、道は必ず探せるであろう。

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、成熟品半導体の製造装置であるDUV(深紫外線)露光装置の生産に成功した。今年は5台、27年に20台の生産計画と報じられている。最先端半導体製造装置の生産には、EUV(極端紫外線)露光装置が必要である。これは、中国の基礎科学力をもってしては不可能とされている。余りにも「科学レベル」がかけ離れているので「文明力格差」とされている。オランダASML(EUV露光装置の製造元)は、欧州や米国の頭脳を結集した「文明製品」とされている、精密科学の不得手な中国に最も不向きとされている。

     

    『中央日報』(8月5日付)は、「すぐに米国の半導体に追いつくか国産化に成功した中国露光装置の錯視」と題する記事を掲載した。

     

    中国が半導体生産に必須の深紫外線(DUV)露光装置の国産化に成功し、米国の半導体封鎖網に亀裂が入った。自ら汎用半導体を作る基礎体力は確保したが、これをすぐ先端工程保有と見るのは「錯視」との見方が優勢だ。

     

    (1)「業界によると、中国国営企業の愛晟納が独自開発した浸漬型DUV露光装置が近くSMICと華虹半導体、長鑫存儲技術(CXMT)など中国主要ファブ(半導体工場)に供給される。露光装置はウエハーに半導体を刻み込む超精密プリンタだ。この装置は今年約5台、来年20台前後が投入され、自動車と家電などに使われる28ナノメートルチップの生産に使われると推定される。中国メディアのグローバルタイムズは「対中制裁が効果をみるだろうという西側投資家の盲目的信頼が揺らいだ」と伝えた」

     

    中国のDUVでは、自動車と家電などに使われる28ナノ半導体生産が行われる。これでは、西側にとって「痛くも痒くもない」レベルであろう。ASMLのDUV生産は、2026年で約130台とされている。生産規模が、大きく異なっている。中国は、ASMLが使えなくなる最悪の事態に備えているとみられる。

     

    (2)「今回の成功で「中国崛起」が再び注目されているが、「経済性」には疑問が提起される。最先端半導体に使われる極端紫外線(EUV)露光装置は現在オランダ企業ASMLが唯一生産しているが、DUVとは性能格差が大きい。EUV装置が1回で終わらせる露光作業を、DUV装置を使う場合には蒸着、蝕刻、洗浄までの工程を24回以上繰り返さなければならない。半導体生産は工程が増えるほど費用と時間、欠陥発生率が雪だるま式に増える構造だ。成均館(ソンギュングァン)大学化学工学部のクォン・ソクチュン教授は「特定のチップひとつを作るには成功したかも知れないが、実際の大量生産ラインで経済性を確保できるかは疑問」と話す」

     

    ファーウェイが、7ナノ半導体を装着したスモホを発売したが、EUV装置が1回で終わらせる露光作業を、DUV装置を使う場合には蒸着、蝕刻、洗浄までの工程を24回以上繰り返したとみられる。歩留まり率が低く高コストになるので、量産化は不可能とされている。


    (3)「供給網を構成する技術生態系の障壁も高い。EUV装置は、微細なスズの液滴に高出力レーザーを放って太陽の表面より熱いプラズマを作り、ここから出る13.5ナノメートルの波長の光を活用する。この過程で核心的な役割をする米国企業サイマーの光源、ドイツ企業トランプの高出力レーザー、生成された光を損失なくウエハーまで伝えるドイツ企業ツァイスの超精密光学系はいずれもASMLを中心に構築された「独占同盟生態系」だ。これに対し中国はDUV装置の一部に日本など外国製部品も使ったとされる」

     

    EUV露光装置は、米国企業サイマーの光源、ドイツ企業トランプの高出力レーザー、ドイツ企業ツァイスの超精密光学系技術の結晶である。中国が、逆立ちしても達成不可能とされている。

     

    (4)「顧客が、装置をともに検証する「フィードバック生態系」も超えるのが難しい山だ。漢陽(ハニャン)大学新素材工学部のアン・ジンホ教授は、「ASMLの本当の武器は、世界的部品メーカーと最上位顧客企業との間の細かい協力関係。顧客とフィードバックをやりとりして技術を積み上げる時間が必須」と強調した」

     

    ASMLの本当の武器は、世界的部品メーカーと最上位顧客企業との間の細かい協力関係を築いていることとされる。中国企業が、この域にまで達するには相当の時間が掛る。

     

    (5)「米国の追加規制も中国を締め上げている。4月に発議されたハードウエア技術規制の多国間調整法(MATCH法)は、中国が持つASMLのDUV装置約1400台のメンテナンスと部品供給まで遮断する。すでにASMLのEUV装置の対中輸出が閉ざされた上に、DUV装置まで最新モデルより8世代前の旧型製品だけ供給される状況で既存装置のアフターサービスまで封鎖されることになる」

     

    米国は、DUV露光装置も徹底した制約(メンテナンス)を加えている。そのDUV装置は、最新モデルより8世代前の旧型製品だけ供給するという念の入れ方である。

     

    (6)「それでも韓国の半導体業界は、中国の恐ろしい追撃自体は警戒しなければならないと口をそろえる。ある半導体装置業者高位関係者は、「中国が見せるDUV技術力そのものより、封鎖網を乗り越えようと注ぎ込む執念、政府が主導的に個別企業の資本、人材、技術力をひとつに集めることが本当に脅威。われわれも韓国国内の半導体テストベッド構築と生態系強化にスピードを出さなければならない」と話した」

     

    中国の「スパイ精神」には、凄いものがある。どこからか引っ張り出してくる能力は舌を巻かざるを得ない。それだけに、どのような手段を執るか分からないのだ。警戒する必要があるのだろう。

     

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    日本の今年16月の輸出額が、韓国や台湾に抜かれたと『日本経済新聞』(8月8日付)が報じました。日本は3844億ドルで、韓国の4963億ドルや台湾の4166億ドルを下回ったのです。前年同期と比べて、日本は1割弱増えたものの、韓国、台湾は5割近く伸びて、大差を付けられて「危機感」を鮮明にしました。この差は、半導体価格の暴騰の結果です。

     

    この報道は、日本の輸出競争力を「輸出」一本に絞っている点に大きな限界があります。日本企業は、海外で国内以上の生産や販売をしています。この「海外生産額」や「海外販売額」という重要な経済活動を見落としているのです。例えば、トヨタ自動車の国内生産は300万台でも、世界生産額は1000万台です。この場合、トヨタの国内生産だけをベースにした議論をするでしょうか。次の例も参考になるでしょう。

     

    日本企業の海外生産比率は、どこの国で生産しているかを見る上で重要な指標です。トヨタの海外生産比率は70%です。ホンダが80%、パナソニックも70%です。海外で生産し海外で売る企業は、輸出額に出てきません。輸出額を比較するならば、この海外生産分も加味しなければならないでしょう。

     

    日本企業の海外売上比率は、企業の国際競争力を測る最重要指標です。トヨタが約75%、ソニー約70%、ユニクロ約60%です。これは、日本のGDPに出ない「日本企業の本当の稼ぎ」を示しています。

     

    以上のような精査を行い、これを加算した「拡大GDP」(仮称)を計算すると、日本企業は海外で大活躍しているのです。正しい見方は、「輸出額+海外生産」の合計でしょう。これは、GNI(国民総所得)概念よりも広く、海外生産分が日本国内で生産された場合を前提にした試算になります。韓国や台湾の輸出額と日本を比較するならば、こういう計算も頭に入れて置くべきでしょう。

     

    最新GDP(名目:2025年)に合わせて、日本・ドイツ・韓国の「拡大GDP」を計算してみました。

     

    日本の2025年名目GDPは、670兆円です。海外売上比率は、日本企業全体で50〜60%(推計)。海外生産比率(製造業)40〜70%、海外子会社利益は約20〜30円。海外生産の付加価値が約25%で計算すると、拡大GDPは、合計で約200〜250兆円が上乗せになります。最終的には、「670兆円+200~250兆円=870~920兆円」と日本のGDP規模は現在からみて最大1.37倍に拡大されます。

     

    この計算は、日本が海外生産額もすべて国内生産するという前提の話です。日本は、この分を海外生産によって現地経済で雇用など寄与しているのです。これが、回り回って日本の評価を高めています。ASEAN(東南アジア諸国連合)の主要3ヶ国である、インドネシア・ベトナム・フィリピンが、いずれも日本主宰のTPP(環太平洋経済連携協定)へ加盟(ベトナム)か、加盟交渉中(インドネシア・フィリピン)という現実は、日本経済圏がアジアで確固たるものになる証拠です。「急がば回れ」なのです。

     

    拡大GDPについて、ドイツと韓国に当てはめて試算しました。これによると、ドイツは2025年の名目GDP5.05兆ドル(約760兆円)が、海外分の約200〜240兆円が加算されて、960~1000兆円となります。拡大GDPで日本を上回っています。これは、急激な円安が影響しています。

     

    韓国の拡大GDPは、25年名目GDPが1.87兆ドル(約280兆円)です。これに 約50〜70兆円が加わります。合計で330~350兆円となります。

     

    「海外GDP」だけを取り出すと、次のようになります。

    日本が、約200〜250兆円。ドイツは、約200〜240兆円。韓国が、約50〜70兆円となります。日独はほぼ互角ですが、韓国はこれよりも4分の1程度に過ぎません。

     

    以上のような試算をしてみると、日本が「輸出金額」で台湾や韓国に抜かれた、と「青ざめる」ことはありません。どんと構えましょう。

     

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