中国のEV(電気自動車)業界は、新たな安値競争へ突入した。互いに、格安価格の新型モデルを発売して低価格競争を挑んでいる。体力消耗は間違いなく、最後はすべてのメーカーが、討ち死にしかねない壮烈さだ。
『東洋経済オンライン』(11月3日日付)は、「中国自動車メーカー、格安価格の新モデル続々投入。政府の是正策も効かず、販売競争なお過熱」と題する記事を掲載した。この記事、中国『財新』の転載記事である。
中国政府が国内産業に対し過当競争の是正を指導しているにもかかわらず、自動車産業は引き続き低価格を売り物に激しい新車販売競争を展開している。
(1)「ここ数カ月、多くのメーカーが実施しているのは従来モデルより大幅に安く価格設定した新型モデルの投入だ。たとえば、新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)は9月、大型SUV「ES8」のマイナーチェンジ版を発売、旧モデルより9万元(約190万円)以上低い価格を設定し、値下げ幅は約18%に達した。吉利汽車傘下の領克(リンク)ブランドも9月に新たに改良版の中型SUV「08」を投入し、エントリーモデルの期間限定価格を旧型より2万6000元引き下げた」
EV生産能力は、需要の2倍もある。地方政府の補助金が設備投資を膨らませ、限界のない値下げ競争を繰り広げている。
(2)「新興EV大手の理想汽車(リ・オート)は8月、同社2番目となるBEV(純電気自動車)の大型SUV「i8」を発表。1グレードのみの展開で価格は33万9800元とし、同社のレンジエクステンダー型EV(訳注:航続距離を延長するための発電専用エンジンを搭載したEV)「L8 Ultra」とほぼ同等の装備を備えつつ、価格は一気に4万元も引き下げた」
理想汽車は、価格を一気に4万元(約80万円)も引き下げる新型車を発売した。
(3)「既存モデルの値下げは、当局が定めた過剰な値引きを制限するルールに違反するうえ、既存オーナーの不満を招きやすい。一方、新モデルであれば「過去の価格」についての規制は受けないので、思い切った設定が可能だ。中国政府は自動車業界に対し「反・内巻(行き過ぎた業界内競争)」の方針を示し、過当競争の抑制に動いている。2025年5月末には、業界団体の中国自動車工業協会と所管当局である工業情報化省が相次いで声明を発表。国内での「無秩序な価格競争」が企業の利益を圧迫し、業界の発展を阻害していると批判した。同省の担当者は、「自動車業界の内巻に対する統制を強化する」と明言している」
既存モデルの値下げは、当局が定めた過剰な値引きを制限するルールに違反する。こうして、値引きに代わって格安新型車が登場している。いつになったら値引きは止むのか。企業倒産が出るまで実質「値引き」競争が続くのだろう。
(4)「新S&Pグローバルの大中華区自動車部門担当の共同ディレクターを務める陶杲氏は9月中旬に開催された業界フォーラムで、2025年1~6月期(上半期)の中国乗用車市場は前年同期比11%の販売増を記録したものの、価格競争の影響により売上高の伸びはわずか0.8%にとどまったと指摘した。陶氏の試算によると、上半期の中国国内における乗用車の平均売価の下落率は2.8~5.6%の間だったという」
2025年1~6月期(上半期)は、前年同期比11%の販売台数増を記録したものの、価格競争の影響により売上高の伸びはわずか0.8%にとどまった。凄まじい価格競争である。
(5)「ある自動車業界のアナリストは、「当局は市場の無秩序な競争を抑えようとしているが、表立った、あるいは水面下での値引き行為を一律に禁止するのは難しい。価格競争は今後も長い間続くだろう」との見方を示した。従来のエンジン車では「エンジン、トランスミッション(変速機)、プラットフォーム(車台)」という「3大基幹部品」の技術的ハードルが高く、メーカーごとに得意な技術はそれぞれ異なり、競争は差別化された条件の下で進んだ。EV時代になると、技術的に取り組みやすい「モーター、バッテリー、制御システム」という3つの技術が基本となり、技術格差が縮小した。技術の差別化が難しい分、市場シェアの維持、引き上げには値下げしか有効な手段がないというわけだ」
EVは、「モーター、バッテリー、制御システム」という3つの技術が基本である。メーカー間の技術格差が小さくなっており、価格競争が主体になるという。中国のEV競争は、底抜け状態に嵌まっている。




