中国の7月の新規人民元建て融資は、4月以来となる今年2回目のマイナスとなり、減少幅は過去最大となった。季節要因や家計の借り入れ需要低迷が重石となった。これは、「季節要因」で説明できない現象だ。家計・企業の両方が、金融機関から借りない(=需要が消えた)という構造的現象になった。
26年7月は、中国が信用収縮過程へ「突入」したことを示している。日本経済の1998~2003年と同じ現象が始まった。もはや、「泥沼」から脱出するにはどうするか、という深刻な事態である。
『ロイター』(8月14日付)は、「中国新規銀行融資、過去最大のマイナス 需要弱く個人・法人とも減少」と題する記事を掲載した。
7月の新規融資は、中国人民銀行(中央銀行)が14日発表した統計に基づくロイターの算出で3400億元(504億3000万ドル)の純減となった。4月は100億元減少していた。
(1)「キャピタル・エコノミクスは、リポートで「銀行の名目貸出金利が引き続き低下しているが融資需要は弱い」と指摘。「最近のインフレ率上昇により今年の銀行貸出金利は実質ベースで入って大幅に低下している」と述べた。中国の銀行は通常、第2・四半期末に向けて融資を前倒しした後、減速させる。人民銀は月次の内訳を公表していない。ロイターは1─7月データを1─6月データと比較し7月の数値を算出した」
金利を下げても、貸出が減るどころか減っている。明らかに、信用収縮過程へ「飛び込んで」いる。最悪事態へ向っているのだ。
(2)「人民銀によると、1─7月の新規融資は10兆3800億元。前年同期の12兆8700億元を下回った。7月末時点の融資残高は前年比5.1%増。伸び率は6月の5.2%増から鈍化し過去最低となった。市場予想の5.3%増も下回った。家計が、債務圧縮(デレバレッジ)を続け、民間部門の借り入れ需要が低迷する中で、融資回復の兆しは乏しい。7月の住宅ローンを含む家計向け融資はロイターの算出で4603億元の純減、企業向け融資は1300億元の純減。6月はそれぞれ2646億元増、1兆5000億元増だった」
7月の新規貸出は、3400億元の純減(過去最大)である。家計向けは、4603億元の純減で住宅ローンが落込んだ。企業向けは、1300億元の純減で投資が止まったことを意味する。こうして、7月の融資残高伸び率が、前年比5.1%増(過去最低)となった。
(3)「人民銀は12日、適度に緩和的な金融姿勢を維持し、必要に応じて実効性のある追加措置を導入する方針を示した。ただ具体論には踏み込まず、政策金利や銀行預金準備率の引き下げを明示しなかった。キャピタル・エコノミクスは、「人民銀は最近の信用データの弱さについて特に懸念していないようだ」としたが、今後1年で約30ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されるとの見方を維持した」
金利を下げたら、人民元は売られる。金利を下げても貸出が増える訳でもない。既に、「流動性の罠」にはまっているからだ。
(4)「中銀系の金融時報は、国内の信用システムが多様化しているとし、銀行融資だけでなく債券発行やその他の資金調達チャネルと併せて融資動向を投資家は評価すべきと論じた。中銀によると、2025年の社会融資総量の増加分に占める割合は、融資が45%、債券と株式による資金調達が合わせて47%と、初めて融資を上回った」
これは、「信用システムの多様化」ではない。銀行が融資を渋っている結果、債券発行や株式発行に頼らざるを得なかっただけである。中国経済の現状が、資金調達多様化をさせるほど、まだ発展していないからだ。資金調達コストの一番安いのは銀行借入である。そこが貸出を渋っているのだ。要するに、銀行借入は最も安いが、銀行は貸さない。だから、企業は高コストの債券・株式へ依存せざるを得ないのだ。その結果、比率が逆転しただけである。これは、資金調達の「多様化」ではなく。「信用収縮の表れ」である。現実を見誤ってはならない。
(5)「人民銀のデータによると、7月の広義マネーサプライ(M2)残高は前年同月比7.7%増と、アナリスト予想(7.9%増)を下回り、6月(8%増)から伸びが鈍化した。信用と流動性を示す広範な指標である社会融資総量残高は、前年比7.4%増で6月から変わらずだった。政府債の発行が加速すれば、こうした資金調達額が押し上げられる可能性がある」
7月のM2増加率が、ついに8%割れの7.7%になった。中国経済の現状では、5~6%がM2の適正増加率とされてきた。この過剰供給分が、資金の海外流出原因とみられている。M2増加率鈍化は、7月の手形市場の閉鎖による当局の意図した結果とも言えよう。人民元相場維持という「最終防衛ライン」を守る準備である。第二次世界大戦の「ダンケルク」の戦いである。




