中国経済の現状は、金融情勢から判断して不動産バブルの崩壊は明らかである。ただ、住宅価格は急落していない点が唯一、日本と異なる。これは、中国政府が値引きした住宅売却を禁止している結果だ。不動産開発会社は、値引きしてでも住宅を売りたいが、政府の規制で売れない状況だ。
最近、高級マンションの販促で景品に「フォルクスワーゲン1台」をつけたところ、当局から大目玉を食って中止したという。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が伝えている。このように、不動産開発会社も資金繰りに困り、自社物件の在庫捌きに追われている。
金融状況は、実物の生産や販売という経済現象と異なっている。なかなか、目に見えにくいので見過ごしがちだが、これこそ実物経済を裏で操っている「ご本尊」である。中国人民銀行(中央銀行)は、次のような通達を出した。バブル経済崩壊後の金融目詰まりが、いかに深刻であるか手に取るように分るのだ。
『ロイター』(1月21日付)は、「中国、銀行に実体経済の支援促す必要―人民銀行幹部」と題する記事を掲載した。
(1)「中国人民銀行(中央銀行)の孫国峰・金融政策局長は21日、人民銀行が発行する『中国金融』に寄稿し、国内の与信を拡大するためには、銀行に融資拡大を指示するよりも、積極的な実体経済の支援を銀行に促すことが重要との認識を示した。同局長は、銀行の与信を制約する大きな要因として、1)資本の補充のタイミングの問題、2)銀行の流動性不足、3)金利の波及効果の低さ──を指摘。金融緩和が与信条件の緩和につながるよう、人民銀行は、こうした制約を軽減する措置を導入していると表明した」
中国の銀行が貸出を渋っている大きな要因として、次の3点をあげている。これは、バブル崩壊後の日本の金融機関が直面した問題である。中国が、紛れもなく同じ泥沼に足を掬われている。
1)資本の補充のタイミングの問題
2)銀行の流動性不足
3)金利の波及効果の低さ
これら3点の説明が、以下のパラグラフで行なわれている。
(2)「同局長は、『適切なタイミングで資本が補充されなければ、次の(融資の)段階で妥当な与信が制限される可能性がある』とし、資本の補充に向けて銀行に永久債の発行を促す取り組みを加速する方針を示した」
1)資本補充のタイミングの問題について説明している。
銀行が、不良債権によって資本が「毀損」している実情を指している。国有五大銀行は、不良債権比率が低いと自慢している。それは一部の優良銀行の話だ。末端の民間銀行では、貸出リスクを十分取れる自己資本比率が低下していると指摘する。いわゆる「資本補充」の必要性だ。永久債の発行を促すほど事態が逼迫している。
(3)「同局長は、一部の銀行では『外国為替状況の変化』に伴い、流動性が中・長期的に大きく制約されているとも指摘。(企業の)預金量で新規融資額を決める銀行の慣習も、新規与信の制限につながるとの見方を示した。人民銀行は、的を絞った預金準備率の引き下げや的を絞った中期貸出制度(MLF)など、様々な措置を通じて中小企業への融資を奨励しているという。局長は、春節を控えた人民銀行の資金供給により『全体の流動性を正確に確保できた』とも述べた」
2)銀行の流動性不足について指摘している。
銀行の流動性不足とは、手持ち預金量の減少によって貸出の「信用創造能力」が減退していることを示している。中国では、昨年10月時点で貯蓄額増加率が、39年ぶりに9%を割り込んで8.3%に落ちて危機感を募らせていた。
この現象は家計債務の増加や、アリババが開発したMMF(マネー・マーケット・ファンド)の急増により、銀行預金が取り崩されてシフトしたことである。銀行の預金量減少は、必然的に貸出能力を相殺している。銀行にとっては、一種の「取り付け騒ぎ」である。
中国経済の危機は、まさに銀行の預金不足という典型的な形で起こり、不況を深化させている。信用危機が、MMFによって引き起こされた点は特筆すべきだ。無秩序な金融機能の拡大がもたらした結果である。それは、中国のスマホ機能の異常な発達が、金融秩序を破壊したとも言える。
銀行は、自らの預金不足による流動性不足を補うべく、貸出先企業を選ぶ基準として預金量の多寡を目安にしていると指摘している。これは、貸出の「見返り預金」の意味だ。100貸出しても30とか40を預金させるもの。日本では、「拘束預金」と呼んでいたが、中国も同じことを始めている。
(4)「金利の波及効果が低いと、銀行融資の需要が抑制されるとも指摘。人民銀行が、一部自由化されている市場金利と一致しない指標預金金利・指標貸出金利の公表を続けていることに触れ、市場原理に基づく金利改革を促し、2つの金利の道筋を緩やかに統一する方針を示した」
3)金利の波及効果の低さについて指摘している。
銀行は、利ざやを稼ぐために市場金利で貸出さず、高い金利を要求していると批判している。これも、日本の銀行が長く使った手である。「拘束預金」は、実質金利を引き上げる手段でもあり、信用危機に立ち向かう銀行の防衛本能と見るべきだろう。銀行を非難しても事態は改善しない。バブル経済崩壊後に起きる典型的な金融現象と理解すべきであろう。





