勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    『ロイター』(8月23日付)は、次のように短い記事を掲載した。

     

    (1)「中国銀行保険監督管理委員会の当局者は23日、同国の銀行セクターが新たに大規模な不良資産へのエクスポージャーにさらされていると警告した。同当局者はまた、銀行セクターは現在のところ、より大きな規模で融資の拡大を実施することに困難を抱えているとの認識を示した」

     

    この短い記事が伝える具体的内容は不明だが、「中国銀行保険監督管理委員会の当局者」が発言元である。日本の金融庁に当る機関だ。そこが、「新たに大規模な不良資産へのエクスポージャー(リスク)にさらされている」と発言するのは、相当な危機レベルに達している証拠だ。通常なら、隠すものだが隠しきれなくなった、とも読める。

     

    昨日、このブログでBIS(国際決済銀行)のデータを用いて、日本の内閣府が分析した結果を紹介した。

     

    主要国のGDPに対する民間非金融部門の債務残高の比率が過去の長期トレンドとどの程度乖離しているかを『債務・GDPギャップ』として定期的に公表。その水準が『9%ポイント』に到達した場合、3年以内に金融危機が起こる可能性が高いとしている。直近の2017年10~12月期の債務・GDPギャップをみると、中国が12・6%ポイントで 警戒ライン入りしている」

     

    実は、16年末に中国の「債務・GDPギャップ」は30%になり、それが1年間で12.6%まで下げたのは、相当の負荷を中国企業に与えているはずだ。減量で、ろくな食事も取らずに体重(負債)を落としたことと同じである。しかも、「債務・GDPギャップ」が9%を上回るのは12年末以来、すでに6年近くなっている。BISは、「3年以内に金融危機が起こる可能性が高い」とまで指摘している。

     

    中国で、大規模な金融トラブルが起こっても何ら不思議でない。そういう事態であることを認識しておきたい。


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    昨年12月、中国の経済改革をたたえる博物館が深圳にオープンした。その博物館は半年後の今年6月、リニューアルして8月再オープンした。内容はがらりと変わっていたという。深圳といえば、鄧小平の改革開放と深い縁がある土地だ。ここにつくられた博物館だから、誰でも展示の主役は鄧小平の偉業を讃える博物館と思って来館するであろう。

     

    ところが、8月のリニューアル後の主役が、習近平に変わっていた。習氏の側近が、こういう根回しをしたのだろうが、行き過ぎも甚だしい。国家主席の経験はまだ5年余。中国経済をバブルまみれにした張本人が、歴史的評価に耐えられるか分らないはずである。それが、あたかも鄧小平を超えたような扱いになった。中国の退廃的な政治情勢が伝わってくるような話だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月22日付)は、「習氏を礼賛、歴史を書換える中国の博物館」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年12月、中国の経済改革をたたえる博物館が当地にオープンした時、来館者は壮大なレリーフに迎えられた。中国を繁栄に導いた『改革開放』に着手したとして共産党史に名を残す、鄧小平の地方視察を描いた彫刻作品だった。6月初め、この博物館は「更新作業」中だとして閉鎖されていた。8月の再開時にはレリーフは消えており、地方の発展を映す動画のスクリーンと、習近平国家主席の言葉が書かれたベージュのパネルに代わっていた」

     

    (2)「中国共産党は改革開放40周年を祝っている。中国を貧困国から世界第2位の経済大国に変貌させたこの政策の立役者は鄧小平だ。しかし、国の組織は習氏を祭り上げてその経済運営を大げさに宣伝する一方、共産党史で描かれる鄧の功績を小さく見せようとしている」

     

    (3)「中国の経済改革を専門とするハーバード大学のジュリアン・ジェワーツ氏は「神話作りが進んでいる」と述べた。中国の将来を描く物語を形作るなかで、習氏は『中国の過去に対する貢献度を誇張している』という。2012年遅くに権力を握って以来、習氏は自身の物語を実行するために法律やメディアを駆使し、公式の記録を書き換えるなど、国の歴史を自身の政策に当てはめようとしてきた。当局者は教科書を改訂し、博物館を改修して習氏の政策を刻み付けた。党が認めた『英雄と殉死者』を中傷した場合の罰則を定めた新しい法律もある」

     

    (4)「歴史家によれば、狙いは習氏の権力強化だ。その手段として、『国威の回復に向け、強く鋭敏な指導者に率いられた共産党が中国国民の先頭に立つ』という習氏の筋書きを固めようとしているという」

     

    習氏が、「中国の夢」を語り国威発揚を最大限に行なっている裏には、習近平を永遠の功績者として記録させたい。そういう野望を持つにいたったのだろう。それには、鄧小平の存在は邪魔なのだ。博物館では鄧小平の扱いを小さくして、自らの展示を広げさせたにちがいない。

     

    人間誰でも、そういう願望はあるとしても、習近平はその度合いが強すぎる。彼は、不動産バブル経済を意図的につくり出し、自らの権力基盤強化に利用した。これは、公私混同であって、一種の「汚職」に近い行為であろう。このように、自らの栄達に国家経済を利用したことは、共産党流に言えば「国家反逆罪」に当ると思われる。歴史の評価の定まらない時点で、早くも「英雄」扱い。中国社会の価値基準が極めて疑わしい。こんな社会が、世界覇権を狙うこと自体おこがましいのだ。

     

     


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    日本の内閣府が、半年ごとに分析する「世界経済の潮流(世界経済報告)」は興味深いデータを示している。GDPに対する債務残高の比率の長期的な傾向から、中国とカナダに「留意が必要」と警鐘を鳴らしている。だが、その中の一枚のグラフによって、習近平氏がバブルを利用してGDPを押上げていた、動かせぬ証拠が見つけられるはずだ。

     

    『SankeiBiz』(8月20日付)は、「中国・カナダの債務拡大に危機感、内閣府が警鐘 」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国際決済銀行(BIS)の早期警戒指標を用いて、民間債務のうちリーマン・ショック後も高止まりしている家計と企業の非金融部門のリスク動向を点検している。BISは、主要国のGDPに対する民間非金融部門の債務残高の比率が過去の長期トレンドとどの程度乖離しているかを『債務・GDPギャップ』として定期的に公表。その水準が『9%ポイント』に到達した場合、3年以内に金融危機が起こる可能性が高いとしている」

     

    (2)「直近の2017年10~12月期の債務・GDPギャップをみると、中国が12・6%ポイント、カナダが9・0%ポイントと警戒ライン入りし、高水準に位置する。内閣府は『中国とカナダで金融危機が起こりやすい状況となっている可能性を示唆している』と指摘。その上で、『両国とも16年に低下に転じており、金融危機発生の可能性が年々高まっている状況にない』とも強調している」

     

    この記事に啓発されて、内閣府の「世界経済の潮流(世界経済報告)」のグラフを見ると、確かに減っている。だが、上記の債務・GDPギャップは、16年末には30%に達していた。それが、昨年10~12月期に12・6%ポイントまで下げさせた。余りにも急激過ぎる。これは、企業の経営体質を相当に痛めていると見るほかない。まさに、アクセルから急ブレーキを踏ませた形で、乱暴きわまりない経済政策である。

     

    中国が、危険ラインの9%を恒常的に上回るのは12年以降である。習氏が国家主席に就任して以来、一貫して放置したことを物語っている。習氏は、政府管理経済だから破綻を未然に防げる。そういう思い上がった考えを持っていたのだろう。それが、手に負えなくなって急ブレーキを踏ませ、企業の体力(潜在能力)を損ねる結果を招いた。

     

    習氏の責任は極めて重い。胡錦濤時代は、危険ラインを超えてもすぐに是正の手を打っている。習氏は、全く打たずにGDPを押上げさせ、自らの権力基盤を固めることに腐心していた。権力維持のために国家経済を犠牲にしたと言える。これぞまさに、「国家反逆罪」に相当する罪に思えるのだ。

     

    統制に依存した中国経済は、政府のさじ加減一つで動かされているロボットである。市場機構に従う自律的な存在ではない。中国経済の抱える本質的な矛楯がお分かり頂けると思う。興味のある方は、ぜひとも内閣府の発表を見ていただきたい。

     

     


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    中国がいかに大国風を吹かせているか。それを証明する話が、また出てきた。南太平洋の夢の国パラオが、中国との国交を拒否したことを理由に、中国人旅行客の渡航禁止命令を出したのだ。大国中国が、人口2万1000人の小国に対する仕打ちとして、度量を疑われる行動だ。中国がいくら美辞麗句を並べ、近隣諸国と融和に務め、中国式社会主義を目標にすると言い募っても、この「パラオ虐め」を見れば、全てウソであることがわかる。

     

    『朝鮮日報』(8月21日付)は、「中国、団体旅行禁止で小国パラオに外交圧力」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年、『台湾と断交しろ』という中国の要求をきっぱりと拒否したことで注目を集めた太平洋の島国パラオが中国の報復に苦しんでいる。中国がパラオへの団体観光を禁止し、パラオを代表する産業である観光業が枯渇しているからだ」

     

    中国は、台湾の外交的孤立を進めている。8月21日、南米のエルサルバドルは台湾と断交し、中国と国交を結んだ。台湾外務省の声明では、エルサルバドルは、台湾に巨額の支援(港湾開発)を求めたが、採算性に問題があるとして断ったところ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。明らかに、中国の札束外国の結果だ。

     

    パラオは、エルサルバドルのような道を選ばなかった。台湾との信義を守ったのだ。中国は、その報復としてパラオへの旅行禁止措置という仕打ちをしてきたもの。なんとも、えげつないことをやるものだ。こういう事例からみると、台湾断交の切り札は、全て「カネ」であろう。トンガ初め8ヶ国が、中国の「借金漬け」にされ後悔している。中国の甘言に乗ったら国を失う覚悟をすることだ。

     

    (2)「パラオの人口2万1000人の約6倍に当たる12万2000人の外国人観光客が押し寄せていた。そのパラオは最近、ホテルの客室やレストランに閑古鳥が鳴き、観光遊覧船が港に停泊したままとなっている。旅行会社の廃業も相次いでいる。観光客の半数近く(5万5000人)を占める中国人観光客が途絶えたからだ。台湾と外交関係を持つ1つであるパラオは昨年、中国に台湾との断交を迫られたが拒否した。中国はパラオを自国民が行くことができない『不法観光地』に指定することで報復した」

     

    パラオの1人当たり名目GDPは、1万7096ドル(2017年)、191ヶ国中47位である。中国は同8643ドル(2017年)、75位である。これか見ると、パラオの民度が上、とも言えそうだ。中国の行動は、このGDP尺度に現れている。

     

    パラオの大統領は毅然として、中国の圧迫に屈しない姿勢で、次のように語っている。

     

    トミー・レメンゲサウ大統領は、ロイターとのインタビューで、観光規制について中国から公式な通知は受けていないと説明。また、集団での観光は環境に被害をもたらしているとし、パラオはより多くを支出する観光客に焦点を合わせることで中国人観光客の減少に適応していると述べた。2017年には、観光名所のひとつだった塩水湖ジェリーフィッシュ・レイク(クラゲ湖)がクラゲの減少から閉鎖されたが、これも大勢の観光客が原因のひとつとされる」(『ロイター』8月21日付)。

     

    集団旅行客を迎えるよりも、パラオの自然環境を心から楽しんで貰える質の高い観光客を迎えたいという。世界のエコロジストが集える「最後の楽園」であって欲しい。同時に、自由と民主主義を守った土地として語り継がれることを望みたい。


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    マレーシアのマハティール首相が20日、北京での中国李首相との共同記者会見で意味深発言をした。「植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない」と言い切った。この「植民地主義」批判こそ、中国の「一帯一路」政策に向けられたものである。貧しい国へ多額の資金を貸し付けて債務漬けにする。返済不可能を承知で行なう中国の振る舞いは、かつての植民地主義とどこが違うのか。

     

    毛沢東はこの植民地主義に反対したが、現在の中国は臆面もなく植民地主義を実行している。マハティール首相の「新植民地批判」は、同席した李首相の胸にどれだけ響いただろうか。

     

    戦前の植民地経営では、宗主国が相当の利益を得られた。現在の中国は、「一帯一路」で資金を貸し付けても返済できない国が続出している。中国の政治的影響力を高める目的であるが、皮肉にも中国の経常収支黒字を減少させる要因になった。中国は、「一帯一路」に深入りして、自らの国力を消耗していることに気付くべきなのだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月20日付)は、「中国訪問中のマレーシア首相、新植民地主義に警告発する」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「マレーシアのマハティール首相が北京での20日の記者会見で貿易に関して発したメッセージは、恐らく中国の李克強首相が予想していたものとは違った。李首相が貿易を巡る見解を尋ねた際、マハティール首相は公平である限りにおいて自由貿易を支持すると言明、各国が発展の異なる段階にあることを誰もが思い出す必要があると主張した」

     

    マハティール氏は、自由貿易の前提は公平であると言っている。中国は、「一帯一路」で不公平な行為をしていると示唆するのだ。

     

    (2)「マハティール首相は、『植民地主義の新たなバージョンがあるような状況は望ましくない。オープンで自由な貿易というだけでは、貧しい国々は豊かな国々と競争することができない』と述べ、『公平な貿易であることも必要だ。そうであれば私は李首相と共に自由貿易を支持する。これは世界全体が進むべき方向だと考えているからだ』と語った」

     

    中国が、自らの経済力の優越性を笠に着て、貧しい国に対して不公平な条件を押しつけている。マハティール首相が批判する点だ。「中国よ、謙虚になれ」。90歳を超えた老首相が、大国の首相を諭している。歴史的な記者会見であろう。


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