習近平氏が、台湾統一を目指した5つの提案を出した。急ぎ始めた背景に何があるか興味深い。
① 米中貿易戦争による国内経済の落込みで、習氏に批判が集中していること。それを回避すべく台湾問題を持ち出している。
② 中国へ進出している台湾IT企業が、台湾回帰の動きを見せていること。中国にとって、宝の山である台湾企業が回帰すれば大きな損失だ。そこで編み出したのが、蔡総統を外して台湾の各政党と交渉しようという作戦である。
台湾側にすれば、自由を謳歌している現状を放棄して、大陸(中国)と一体化することは、牢獄に入るようなものだ。いくら、「一国二制度」を保証すると言っても共産党政権が存続している限りは、第二の「香港」である。本土の支配を受けて身動きできなくなる。
米国がどう動くかも焦点である。米中冷戦が目前に来ている段階で、台湾を「手放す」はずがない。国民党は、どこまで大陸と密約を結んでいるか分らないが、動きは注目すべきだ。長い目で見た場合、中国経済の凋落は不可避である。米中が冷戦化すれば、その凋落はさらに早まる。その際、中国本土で何が起るか分らないのだ。中国の誘いに乗るのは得策でない。習氏の支援をするようなものだろう。
『日本経済新聞 電子版』(1月6日付)は、「中国、台湾統一へ5提案、蔡政権外しで分断図る」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の習近平国家主席は演説で5項目の台湾政策を示し、台湾当局以外との協議や中台経済の一体化によって統一をじわじわと進める方針を掲げた。平和統一や一国二制度を軸とする従来の基本方針を踏襲しつつ、独立志向の民進党、蔡英文政権への圧力を強化。2020年1月の台湾総統選に向けて統一への機運を高める」
台湾で、言論弾圧と人権弾圧の大陸と統一したいという市民がどれだけいるだろうか。政府を少しでも批判すれば、国家反逆罪という独裁国家が中国である。中国の経済的な魅力は、はっきりと下降線を描いている。輝きをすべて失うのは遠くない。台湾は、米国と密接な関係を保つことが生き残る道である。
(2)「習氏が2日の演説で提唱したのは次の5項目である。
(1)平和統一の実現
(2)台湾版の「一国二制度」を検討
(3)「1つの中国」原則を堅持し、外国の介入には武力使用も放棄しない
(4)中台経済の一体化加速
(5)同胞意識の強化」
仮に、統一を目指すには、(5)同胞意識の強化が先決である。台湾人は、自らを中国人と認識していないのだ。これが統一を妨げる最大の要因であろう。今後、時間が経てば経つほど、中国経済の成長率は落ちていく。これまでの「駿馬」は、いずれ「駄馬」に成り下がる。バブル経済の崩壊とは、そういうものである。中台統一は、台湾が食い物にされるだけ。年金の支払いも保証はないのだ。
(3)「過去の国家主席演説との最大の違いは、江氏や胡氏が協議相手として念頭に置いた『台湾当局』という言葉を使わず『「両岸の各政党や各界」との統一に向けた協議を呼びかけたことだ。蔡政権を相手にしない考えを示唆する。一国二制度に関しては統一後も私的財産や信教を保障すると明言した」
中国得意の揺さぶりが始っている。こういう揺さぶりが、成功すると考えている習氏の構想力は貧弱である。台湾側が一層、警戒するリアクションを考えるべきだ。統一後も、信教と私有財産を保証する。当たり前のことで、統一のメリットは台湾にゼロである。進んで監獄へ入るようなものだ。大陸の知識人が、改革開放40周年で発表したインターネット上での宣言(すぐに削除)は、余りにも痛々しい。台湾の人々で、そんな苦痛を自ら引き受ける奇特な人はいない。
メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。
まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。
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