勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    このダム決壊事故は、情報が少ないためにいろいろな説が飛び交っている。古い技術による施工などの情報も流れているほどだ。だが、建設を請け負ったSK建設は、韓国でダム工事首位のランクであり、韓国第3位の財閥であるSKブループに属する企業だ。無名の企業でないから、古い技術で施工する合理的な理由がない。

     

    『レコードチャイナ』(8月3日付)は、次のように伝えた。

     

    (1)「天災なのか、それとも人災なのか?ラオス南東部の水力発電用ダム決壊をめぐり、当事者間の言い分が大きく異なっている。ラオス政府は『欠陥工事による人災』と主張。韓国企業側は豪雨が原因で『ラオス側の対応が被害拡大をもたらした』との見解を示し、対立している。コンクリートダムではなく、粘土をコアにした石積みによるアースフィルダムで、韓国大手財閥SKグループのSK建設と韓国西部発電、タイ政府系の発電大手ラチャブリ電力、ラオスの国営企業が合弁で建設。2013年に着工し、19年の稼働を目指していた」

    完工目前であったようだ。すでに、水を貯めており下請け業者も撤収していたという。腑に落ちないのは、ラオス側が事故調査も済まない早期段階で、「欠陥工事」と決めつけている点だ。人災ゆえに補償は「天災と異なり上乗せ」とも主張しており、「金目当て」という感じもする。少なくも、中立を保つべきラオス政府の言うべきことではあるまい。


    (2)「現地からの報道を総合すると、7月20日、貯水池造成のために建設した五つの補助ダムの一つが豪雨で約11センチ沈下。沈下は許容範囲内だったため措置を取らなかったが、22日になってダム上段部10カ所に拡大し、翌日の23日午前11時にはダム上段部が約1メートル沈下したことから、午後2時半に補修作業に着手しようとしたところ、沈下が加速してダムの一部が壊れたという」

     

     5つの補助ダムのうち一つが決壊した。手抜き工事とすれば、他も疑われるはずだが、なぜこのダムだけを手抜きと断定するのか。沈下が許容範囲というダムがあるのか。工事発注側も最初から「ゆるい基準のダム」とすれば、決壊も想定していた感じがする。不思議なダムである。
     
    (3)「ラオス紙によると、同国のエネルギー鉱山相は『規格に満たない工事と予想以上の豪雨が原因であるようだ。補助ダムに亀裂が入り、この隙間から水が漏れてダムを決壊させるほど大きい穴が生じた』と主張。副首相も『洪水はダムに生じた亀裂のために起きた。被害者への補償も一般的な自然災害の場合とは異なるべきだ』などと強調した」

     

    ラオス政府側は、規格が満たないダム工事であると決めつけている。まだ、現地調査されたという情報は出ていない。盲めっぽうに言っている感じもする。要するに、悪意に解釈すれば、最初から「賠償金目当て」という感じが否めないのだ。このラオス・ダム決壊情報を10日間も扱ってきて、私は大いなる疑問を持つにいたった。SK建設が食い物にされ始めた印象が強い。

     

    (4)「SK建設は決壊が発生した理由として連日の豪雨を指摘。聯合ニュースによると。調査報告で同社は『ラオス当局に連絡して近隣住民を避難させるよう求めた。23日午後6時ごろ、責任者が建設現場職員に避難完了を知らせた後、同8時ごろに大規模な決壊が発生し、多くの死者と行方不明者を出した』とし、『当局や現地住民の事故抑止意識の低さが大きな被害につながった』などと反論している」

    SK建設側は、豪雨が続いていたので早期に避難通知を出すよう、ラオス側に求めていた。その点で、住民への連絡が遅れたと主張している。決壊2時間前に連絡済みとしているからだ。このダム決壊事故は、まだ真相は闇である。賠償金問題よりも事故原因の究明が先のはずだ。補償は二段構えで行なうべきで、最初から「人災」扱いでなく、まず「天災」基準で行なえば、補償は迅速に進むように思える。


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    韓国の経済状況は、確実に悪化してきた。企業は設備投資を抑制している。韓国経済の将来が見えないからだ。これでは、潜在的な成長率を押上げるエネルギーを欠く「ガス欠経済」に転落必至である。自営業者は、最低賃金の大幅引き上げで労働コスト上昇に耐えきれず廃業する。あるいは、従業員を解雇して家族労働で細々と経営を続ける最悪事態だ。この理由はどこにあるのか。

     

    文政権の経済政策が間違えているからだ。自らが革新政権を名乗っている以上、保守党政権と違うことをやらなければ存在理由がない。そういう錯覚に陥っている。文政権の支持基盤は、労組と市民団体である。これらが、現実から遊離した理想論に固執しており、文政権に圧力を加えている。

     

    理想論は結構であるし、時間が掛かっても実行すべきである。だが、労組も市民団体も最低賃金を大幅に引上げれば、それで韓国経済は好循環すると思い込んでいる。IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)の担当官が、韓国の最低賃金の大幅引き上げは経済混乱をもたらすだけ、と忠告した。

     

    『朝鮮日報』(8月4日付)は、「韓国の経済危機は新自由主義のせい?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・スンヒョン政治部次長である。

     

    韓国は、相手の議論を封じる時に証拠を出さずに、レッテルを貼ってやり込める風潮が強い。「エビデンス」(証拠)を確認しようとしない悪弊がある。特に、革新派を標榜する側にそれが顕著である。「右翼」という言葉が、相手を罵倒する際に強力な武器として使われている。これに、「反日」のレッテルを貼られたたら再起不能だ。韓国という国は、レッテル貼り=空論が支配する国である。この弊害が、現在の韓国をダメな国に陥れている。

     

    例えば、日韓併合は絶対的な悪と位置づけられている。日韓併合によって専制支配の両班(ヤンバン)制度を根絶し、経済発展の基盤ができた。こういう歴史的な研究は一切棚上げして、あたかも自力で近代化を達成したかのごとき妄念を抱いている。この奢りが、現在の韓国経済に危機をもたらした。戦後の韓国経済の発展は、日本の資本と技術の導入によって軌道に乗った。そういう謙虚な評価が抜け、反省力を奪っている。それが、問題の解決能力を著しく弱体化させた。存在するのは「奢り」だけで、「反省」の一片もない国である。

     

    (1)「韓国の最近の経済危機を巡り、政府・与党から『全ては新自由主義のせいだ』という時代遅れの論理が聞かれる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『韓国経済の困難な部分は新自由主義の経済政策と雇用なき成長のせいだ』と述べ、共に民主党の金太年(キム・テニョン)政策委員会議長は『過去10年間の新自由主義政策で賃金格差、所得の不平等がさらに拡大した』と指摘した」

     

    ここにも、韓国社会の悪弊が滲んでいる。誰かを悪者にして自らは責任を回避している。韓国経済が現在の混乱を招いた原因は、現状を無視した大幅な最低賃金上昇にある。この因果関係がなぜ分らないのか。「エビデンス」に基づかない空論の世界で、問題を処理しようとしているところに最大の欠陥がある。これこそ、「積弊一掃」の対象である。韓国経済は、こうやって真の原因から目を逸らして衰退するに違いない。

     

    (2)「自由市場、貿易、規制緩和を要諦とする新自由主義は、簡単に言えば、国家による介入を最小化し、市場の自律的な判断に経済と貿易の流れを委ねることが特徴だ。その反対語として、政府主導の計画中心経済がある。新自由主義が韓国社会で最初に本格化したのは、アジア通貨危機の直後だった。当時の金大中(キム・デジュン)大統領が金融市場を開放し、大規模な整理解雇を実施したほか、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が支持層の反発を顧みず、韓米自由貿易協定(FTA)の締結に踏み切った。これらは全て新自由主義の経済政策だ。現在民主党の代表室に写真が掲げられた歴代大統領2人が韓国の新自由主義の出発点だったのだ」

     

    文政権と与党「共に民主党」は、韓国経済疲弊の原点を保守政権に求め、そのバックにある新自由主義なるものを批判している。しかし、資本主義経済は本来、自由な企業の行動の上に築かれるものだ。中国の「社会主義市場経済」は、まやかしの市場経済である。文政権と与党は、どうやら中国式モデルを頭に描いて、市場経済システム自体を排斥しようと考えているにちがいない。そうでなければ、新自由主義批判という話が出てくるはずもあるまい。

     

     


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    文在寅大統領の支持率が、7週間も下落し続けている。最新調査では60%になった。就任以来の最低だが、下げ止まる要因は見当たらない。経済状況悪化が、文氏の支持率を引下げているからだ。このまま、どこまで下がってゆくか、妙な関心を持つにいたった。

     

    文氏は目下、夏休み中である。ご丁寧にも、休暇中の読書リストが公開されたが、その中には一冊の経済書も見られなかった。やっぱり、この大統領は経済に関心がないとお見受けする。

     

    『朝鮮日報』(8月4日付)は、次のように伝えた。

     

    「韓国ギャラップが3日に発表した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は、先週に比べて2ポイント低い60%だった。文大統領の支持率は7週連続で下落しており、ギャラップによる今回の調査もこれまでで最も低い結果となった」

     

    支持しない理由は

        経済問題や国民生活の問題が未解決:38

        北朝鮮との関係・親北的な政策:11

        最低賃金引上げ:6

     

    不支持の理由では、①と③の経済問題・最賃引上が、合計で44%も占めている。国民の不満が経済問題にあることは確実である。

     

    支持する理由は

        北朝鮮との対話再開:12%、

        外交政策がうまくいっている:11

        対北朝鮮政策・安全保障政策:9%

    庶民のための努力と福祉拡大:9

     

    支持する理由では、北朝鮮関連(①と③)が合計で21%を占める。南北対話が文政権支持の主因である。

     

    与党「共に民主党」の支持率も先週に比べて7ポイント低い41%にとどまり、昨年5月の大統領選挙以来最低となった。これに対して正義党の支持率は先週よりも4ポイント高い15%で、共に民主党に次いで2位となった。これは201210月の結党以来最も高い数値だ。

     

    与党の「共に民主党」支持率は41%である。文支持率の60%から見て、見劣りのする数字だが、与党支持以外に「文ファン」が19%ポイント存在することを窺わせている。


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    痛ましい事故であった。すでに10日以上経っているが、被害状況の正確なデータが発表されない状態が続いている。その一方で、早くも補償問題が話題に上がっている。本来であれば、事故原因調査が優先されるはずだが、先ず金銭問題が登場している。お国柄だろうか。

     

    『朝鮮日報』(8月2日付)は、「ラオス政府、ダム事故は人災、SK建設に補償要求か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ラオス国営メディア『ビエンチャン・タイムズ』によると、ラオスのシーパンドン副首相は先ごろ、事故処理のための特別委員会会議で『洪水はダムにできた亀裂が原因で発生したもので、被害者への補償も一般的な自然災害とは違う形になるべき』と言及した。つまり『特別補償』が必要というわけだ。エネルギー鉱業省のポンケオ局長も『われわれには被災者に対する補償規定があるが、この規定は今回の事故には適用されないだろう。今回の事故が自然災害ではないからだ』と述べた」

     

    今回の事故は、自然災害でなく人災と位置づけている。この場合、どの程度の「割増」を要求されるのか不明である。

     

     

    (2)「ラオス当局が発表した現時点での人命被害は死者13人、行方不明者118人。周辺の村や田畑の浸水に伴う物的被害の規模はまだ具体的に明らかにされていない。SK建設、韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスのLHSE社による合弁会社、PMPC側は、68000万ドル(約700億円)規模の建設工事保険に加入している。工事保険は、工事の目的物であるダム自体の損害などを補償するもので、一般住民の被害については特約事項となっている」

     

    68000万ドル(約700億円)規模の建設工事保険に加入しているが、ダム自体の損害補償である。後のパラグラフにあるように、特約条項で一般住民の被害補償も入っている。

     

    (3)「SK建設は、『工事に関連して事故が発生した場合、第三者に対する被害まで補償する保険にも入っている』と説明した。しかし、事故原因が施工上の問題と判明し、民間人の被害金額が保険で設定された金額を上回る場合、SK建設が大規模な被害補償を行わなければならなくなるというのが業界の分析だ」

     

    事故原因が、施工上のミスと断定され、一般人の被害額が全て保険でカバーできない場合、SK建設が負担せざるを得なくなる。これが、業界の分析という。ただ、SK建設は韓国第3位のSK財閥の一員という立場から、SK財閥グループで支援する形になるのでないか。韓国の「反企業ムード」から言えば、文政権がSK財閥に圧力をかけるケースは十分に予想できる。


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    あの強面のドゥテルテ・フィリピン大統領は、初訪中(2016年)で、中国の習近平国家主席と会談した。共同声明も発表されたが、盛りだくさんなフィリピンの開発事業に中国は協力を約した。その後、これらプロジェクトは動き出さずに終わっている。最近、ドゥテルテ氏は、理由を明らかにしなかったが、次期大統領選に立候補しないと語っている。この決断が本当とすれば、中国に空手形を掴まされた責任を取ろうとしているのだ。

     

    フィリピンは、南シナ海における中国の不法行動を常設仲裁裁判所に訴え勝訴判決を得た国である。そのフィリピンのドゥテルテ大統領が、中国に対して媚びる姿勢を見せたことは、極めて不可解であった。この外交上の甘さが、中国に手玉に取られた理由であろう。対中国外交では、厳しく対応することが鉄則である。少しでも脇の甘さを見せると、「空手形」を掴まされるのだ。日本も、東シナ海での共同石油開発協定を反古にされている。中国は、「嘘つき」常連国家である。

     

    『大紀元』(8月2日付)は、「比、中国に利用された、約束の投資が実行されず」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中比共同声明には、中国のフィリピンにおける鉄道、港湾、採鉱、エネルギーのインフラ整備や、中国農作物の輸入再開、貿易や投資の拡大などが盛り込まれた。フィリピン側によると、支援規模は総額240億ドル(25000億円)に上る。しかし、2年経っても投資プロジェクトはほとんど実行されていない」

     

    フィリピンは、完全に中国に一杯食わされた。ドゥテルテ氏は外交経験ゼロであり、百戦錬磨の中国外交の前には歯が立たなかった。最初から、フィリピンが自らの手口を全部相手に見せて始めた外交交渉など聞いたことがない。中国は、外交交渉で得た結論に従わない国である。昨年11月、米大統領が訪中の際に行なった共同発表もその時だけ。何ら実行しなかった。米国は、実行しないことが事前に分かっていたので、今回の「通商法301条」という伝家の宝刀を抜いた。約束を守らない国には、守らせる方法がある。その実例は今、米国が中国に向けて投げつけた刃にある。

     

    (2)「2016年10月、中国電力グループはフィリピンのエネルギー会社と共同で水力発電所の建設に合意した。総工費10億ドルの同計画は中国側が再三にわたり延期した。最後に2017年2月まで延期と発表されたが、2月になっても着工の気配がないため、フィリピン側は契約を中止した。ラテライトニッケル鉱石の探査、採掘を手掛けるGlobal Ferronickel社も中国側と7億ドルに上る工場建設計画を確定した。しかし、その後進展はなかった。726日付のブルームバーグの記事によると、フィリピン国家経済開発庁長官アーネスト・M・ペルニアは2年経ったが、中国政府とフィリピンとの間で、灌漑整備計画のローン貸付(7300万ドル)と2基の橋梁建設計画、合計7500万ドル規模の協議だけを結んだ。当初の投資総額240億ドルから大きくかけ離れている」

     

    前記の灌漑整備計画と、2基の橋梁建設計画で合計7500万ドルが、ようやく日の目を見るという。当初計画の240億ドルにくらべて0.3%に過ぎない。フィリピンが、南シナ海問題で強硬策に出ない。中国は、このことを知ったから約束を守らなかった。中国のような国を相手にするには、トランプ氏のような人物でなければ歯が立たないことを示している。

     

    3)「ドゥテルテ大統領は2016年の訪中時、投資を呼び込むために対中融和政策に転換した。軍事面でも経済面でも欧米と距離を置いた。しかし、中国依存の政策は実質的な収益をもたらされていない。また、ドゥテルテ氏は、中比両国が領有権を主張する南シナ海問題で政治的な譲歩姿勢を見せた。大統領は2017年11月12日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議関連のビジネスフォーラムで演説した際、南シナ海問題について『触れないほうがいい』と発言し、問題を事実上、棚上げした」

     

    ドゥテルテ氏の完敗である。もともと南シナ海問題で、法的に違反しているのは中国である。その相手に妥協するとは、不思議な外交感覚である。ドゥテルテ氏が、大統領1期で終わり立候補しないとなれば、次期大統領が新規まき直しで、中国とやり合わなければならない。7月、フィリピンで1200人の成人を対象に行われた世論調査で、中国への信頼度は2016年4月以降、最低水準を記録したという。国民は怒って当然である。

     


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