勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    習近平氏は、「中国製造2025」を足がかりにして、2050年には世界覇権に挑戦すると威勢の良い発言をしてきた。だが、地方政府の財政は困窮しており、公務員の給与支払い遅延問題が起こるほど切迫している。

     

    中国経済はインフラ投資が牽引してきた。地方政府は、その先頭に立っており、土地売却益を捻出してインフラ投資を続けてGDPを押上げてきた。地方の役人は、経済成長率が出世の尺度になってきたから、遮二無二にインフラ投資に力を入れてきた。インフラ投資ほど、経済成長率を押上げる上で、即効的な項目はない。無駄なインフラ投資でも実施すれば、GDPの押し上げ効果は大である。猫も杓子もインフラ投資に飛びついたのだ。

     

    土地売却益だけで資金調達できるはずもない。だが、資金回収の難しいインフラ投資には銀行もいい顔をして貸出すはずがない。そこで、最終的に頼った先が蔭の銀行(シャドーバンキング)である。金利は高いが審査はないから簡単に借り出せる。地方政府は、このシャドーバンキングの闇に吸い込まれ、無駄なインフラ投資をしてGDPを押上げてきた。それもついに今年に入って限界にぶつかった。政府が、シャドーバンキングの監視を強め、貸出抑制に踏み切ったのだ。地方政府とシャドーバンキングは二人三脚の形できただけに、地方政府は途端に資金不足に陥るところが増えてきた。こういう事情で、給与遅配が起こったのである。

     

    「金の切れ目は縁の切れ目」というごとく、シャドーバンキングの締め付けは、デレバレッジ(債務削減)の実現に不可欠である。これは、インフラ投資抑制に直結する。今年4~6月期の固定資産投資が、下記のデータのように前記と比べて1.5%ポイントも急減した。

          4~6月期    1~3月期

    実質成長率  6.7%      6.8%

    固定資産投資 6.0%      7.5%

    小売売上高  9.4%      9.8%

     

    中国経済は、「投資主導経済」と言われてきたように、「土木国家経済」である。固定資産投資の伸び率が落ちれば、小売売上高も鈍化する形になっている。両者の関係は薄いはずだが、住宅価格が高騰しすぎて家計のローンウエイトが高まり、個人消費を減らしている結果だ。中国経済は、インフラ投資も含めた不動産バブルにすっかり毒されている。

     

    この不動産中毒患者の中国経済をどのようにして更生させるのか。いかなる名医といえども妙案があるはずもない。時間をかけた体力回復策だけであろう。日本の場合、「失われた20年」という「時間薬」が必要であった。中国の場合、日本の平成バブルをはるかに上回る不動産バブルである。「2050年に世界覇権挑戦」など、戯言に聞えるはずだ。それほどの深手を負っている現実を自覚すべきであろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月17日付)は、「中国GDPを読み解く、投資減速で今後の難局示唆」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の46月期のGDP成長率が発表された。それが何と予想通りの6.7%で、13月期の6.8%をわずかに下回った。注目すべきは投資の急減速だ。今年16月期は、全体の投資の伸びが前年同期比6%にとどまり、1990年代以降で最低だった」

     

    投資主導経済の中国が、投資の減少によってどうなるのか。それは、支え棒を失うのだからきりもみ状態になるのが道理であろう。それを輸出や消費でどこまでカバーできるか。それが焦点だ。

     

    (2)「企業業績の動向をけん引する不動産セクターが、中国のシャドーバンキング(影の銀行)規制の巻き添えを食っているという兆しが増えている。中国人民銀行(中央銀行)の統計によると、シャドーバンキングの信用残は前年同期に比べ微減だった。これは不動産投資とシャドーバンキングの関連性の強さを踏まえると懸念材料だ。中国経済は7~12月期(下半期)にさらに厳しい局面を迎えそうだ」

     

    インフラ投資も不動産投資も、金融機関からリスク産業として警戒されている。だから、シャドーバンキングのような高利貸付先に向かわざるを得ない。本来であれば、安定した融資先になるはずの業種である。中国の経済政策が、こうした異常な状況を作り出した。今年下半期の中国経済は落込むだろう。

     

     


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    昨日のブログで、習近平氏の個人崇拝をめぐる共産党内の反対派の動きを取り上げた。その後、複数のメディアがこの問題を取り上げているので再度、分析したい。

     

    先週末、習近平氏が「権力闘争に敗れ、すでに失権した」との噂がインターネットで飛び交ったという。中国問題専門家の間では、習氏の失権説について疑問視する一方、最高指導部で熾烈な権力闘争が広がっているとの見方が大半を占めている。以下の記事は、『大紀元』(7月18日付「習近平失権の噂が飛び交う 専門家『政治闘争が依然、激しい』」からの引用である。

     

    (1)「異変は、政府系メディアの報道にみられた。79日、12日と15日の三日間、中国共産党機関紙『人民日報』の1面の見出しに『習近平』が含まれる記事が一つもなかった。1週間のうちに3日間も、トップページに習近平氏の名前がなかったのは極めて異例だ。また、中国国営中央テレビ(CCTV)の12日夜の番組は、習氏について『国家主席』『党総書記』などの敬称を付けず、『習近平』と呼び捨てした」

     

    (2)「11日付の国営新華社通信電子版『新華網』が発表した評論記事では、『個人崇拝』について批判を展開した。記事によると、文化大革命後、国家主席に就任した華国鋒氏が『個人崇拝を行った』ことで、党内で不満が噴出したという。華氏は党最高指導部である中央政治局で、自己批判を行った。『この事件は、華国鋒氏が失脚する前兆だった』と同記事が指摘した」

     

    これだけの例証を並べられると、中国で何かあったな、ということは感じる。それにしても、掌を返すようなマスコミ報道にも驚かされる。誰かが裏で糸を引いている人物がいるはずだ。「反習派」が暗躍していることは確かだろう。習氏はこれまで何万、何十万人という高官を汚職容疑で追放してきた。その恨みは大変なものに違いない。これが、江沢民一派と結びつけば、前記のような嫌がらせは連発可能だ。

     

    (3)「香港紙『蘋果日報』(12日付)は、中国当局の関係者の話として、北京警察当局は市内の公共場所にある習近平氏の写真やポスターなどを撤去すると通達した。4日、上海に住む女性が市中心部のビルの前で、習氏の顔写真が入っているポスターにインクをかけた。中国政治評論家の夏業良氏は、政府系メディアなど一連の動きから、『習近平氏が党内の敵対勢力から攻撃されている可能性が高い』と話した。党内からの不満が主に、米中貿易戦の対応や国内経済の失速に集中していると夏氏が分析する」

     

    「習批判」の理由は、個人崇拝を始めた点に対する反対が大きなうねりとなっている、としている。このパラグラフでは、米中貿易戦争や国内景気失速への不安を原因に上げている。この問題では、習氏が深く関わっている。無期限国家主席のポストを手に入れるべく、不動産バブルによって好景気を偽装していたことは疑いない。私は、習氏が景気判断を間違えた罪は極めて大きいと見る。ただ今になって、中国経済破綻の犯人捜しをしても間に合うものではない。中国国内が、こういう形でがたつくことの裏に、経済の混乱があることを明確にしたい。経済不振が、政治不安をもたらす原因である。


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    韓国政府は、自らの政策ミスによって生じた「最賃失業」への対応をせかされている。今年の最低賃金引き上げは16.4%、来年は10.9%と連続して、大幅引き上げだ。中小零細企業では、これに追いつけず、やむなく従業員を解雇するという、とんでもないことが起こっている。韓国の最賃法は、業種、地域、性別、年齢を問わない無差別、一律の適用である。違反企業には罰則を伴う厳しさである。

     

    こうなると、企業は犯罪者になりたくないから、涙をのんで従業員を解雇する。韓国では、政治が失業者をつくり出すという前代未聞のことが起こっている。原因は、間違った経済政策にある。「所得主導経済」とやらを狙っているもの。国民の所得を増やすには、最低賃金を引上げる政策が、最も効果的という「珍説」に惑わされている。中国が2010年頃から始めた政策を真似たのだろう。

     

    中国の目的は、所得不平等を解消する目的であった。この面では、所得再分配政策が有効だが、共産党員が既得権益を侵害されるという「わがまま」によって阻止したので窮余の策で始まった。韓国では、「反企業主議」による誤解が原因である。企業は賃上げに消極的だから政府が先鞭を切って最賃を引上げ、「見本」を見せる。そんな意識であったに違いない。

     

    これが、思い上がりというもの。賃上げは、企業が生産性を引き上げて初めて実現する。政府は、反企業主議ゆえに企業への規制を緩和するどころか強化している。これでは、生産性は向上しない。だが、政府の頭は固いから規制を緩和しないのだ。一方で、最賃は引上げる。この状態では、失業者が増えて当然である。

     

    政府は、財政資金を使って「最賃被害者」を救済するという。もう呆れてものも言えないほどだ。貴重な財源を政府の政策ミスを尻ぬぐいすることに使うとは、世も末であろう。韓国経済は、こういう「トンデモ政権」のお陰で体力を消耗する。

     

    『朝鮮日報』(7月18日付)は、「最低賃金引き上げのツケ、韓国政府が税金で穴埋め」と題する記事を掲載した。

     

    「韓国で行き過ぎた最低賃金引き上げによる副作用で、庶民の所得が目減りするのをカバーするため、政府・与党は17日、計画通りに基礎年金を早期に引き上げるほか、低所得層への勤労奨励金を大幅に引き上げることを骨子とする低所得層支援対策を示した。最低賃金引き上げ分を税金で支援(雇用安定基金から3兆ウォン=3000億円)し、低所得層の所得の空白をまたもや税金で埋める格好だ。政府・与党はこのほか、青年求職者に支給する求職活動支援金を現在の月30万ウォン(約3万円)、最長3カ月から月50万ウォン(約5万円)、最長6カ月に拡大することとし、扶養義務者がいても、所得下位70%に属する重度障害者や高齢者がいる世帯に対しては、来年から生活保護支援を実施する」。

     

    日本のアベノミクスから見ると、異次元の政策だ。企業の規制を緩和して活発化させれば、最賃も自然に上昇する。就職難も解決して、求人難に逆転するはずだ。日本に見本があるのに「左翼経済学の虜になって意地を張っている。


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    ロシアW杯サッカーは、フランスの20年ぶり2度目の勝利で閉幕した。数々の名場面は、サッカーファンに忘れられない思い出を残し、その余韻が続いている。日本代表チームも、世界のサッカーファンにさわやかな印象を残した点では「入賞」だ。「期待以上の成績」ランキングで2位に入った。8強には入れなかったが、堂々の2位である。

     

    米スポーツ・イラストレイテッド(SI)が選定する「2018ロシアワールドカップ(W杯)期待以上の成績を出したチーム」順位で日本は2位に入ったもの。SIは18日(日本時間)、2018ロシアW杯に参加した32カ国のうち「期待以上の成績」を出したチームの順位を発表した。

    『中央日報』(7月18日付)は、次のように報じた。

     

    決勝トーナメント(16強)に進出した日本は2位だった。SIはグループリーグ第1戦でコロンビアのカルロス・サンチェスが前半3分で退場となったことに言及し、これが日本にアドバンテージとして作用したと分析した。また決勝トーナメント1回戦でベルギーに逆転されたものの2-0でベルギーにリードしていた点も印象的だったと分析した」

     

    日本は、ベルギー戦で最初から猛攻を仕掛けて 有利に試合を進めながら、最後に逆転された。その闘いぶりが、世界ファンが魅了されたのであろう。日本人として胸を張れる。

     

    このベルギー戦は、『中央日報』(7月3日付)で次のように報じていた。

     

    「日本の8強進出はならなかったが、海外メディアの好評が続いている。サッカー日本代表は7月3日(日本時間)、ロストフアリーナで行われたロシアワールドカップ(W杯)決勝トーナメント初戦でベルギー代表に2-3で逆転負けを喫した。英BBCは『日本は2回の賭けをした。開幕を控えて監督を交代し、グループリーグ第3戦でも0-1のスコアを維持する選択をした』とし『日本は1966年の北朝鮮、2002年の韓国に続いてアジア史上3番目にW杯8強入りするチームになるところだった』と伝えた」

     

    「また、BBCはベルギーの選手ではなくミドルシュートでゴールを決めた乾をMOM(Man of the match)に選び、ベルギーを追い込んだ日本の競技力を高く評価した。グループリーグ第3戦後に西野朗監督に対し『腹切りとなりかねない戦術を使った』と酷評した英ザ・サンは、『もう少しで日本が忘れられない勝利を築くところだった』と好評した。続いて『2点差となる乾貴士のゴールが決まった時は、ベルギーが突き落とされ、日本が初の8強進出の夢がかなえるように見えた』と伝えた」

     

     


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    北朝鮮との外交交渉は、「忍耐」の二文字を必要とするようだ。約束した場所へ現れない。「ドタキャン」どころか「すっぽかし」である。先に米朝の実務者会談が板門店で開催される予定であった。だが、北朝鮮側が現れず、米国代表団は待たされた挙げ句に連絡も無いままに終わった。徹底的に独りよがりな国である。こういう相手と交渉するにはどうするか。世界覇権国の米国が、最貧国の北朝鮮に振り回されている構図は漫画そのものである。

     

    韓国の文大統領は、こう言っている。

     

    北朝鮮が望んでいる相応の措置に関連しては、『過去のような制裁緩和や経済的補償ではなく、敵対関係の終息と信頼の構築』としながら『これは北朝鮮の過去の交渉態度とは大きな違いがある』と強調した」(『中央日報』7月13日付「文大統領、北の米国非難は戦略、実務交渉長くかかるだろう」)

     

    北朝鮮は、米国の出方を見ながら信頼感を増しながら交渉する。過去のような制裁緩和や経済的な補償を第一義にする姿勢から変わった、というのだ。だが、約束した時間に現れず、すっぽかすのは困った相手である。米国はいつまでも北朝鮮の好き勝手にさせるわけにはいかない。ぴしっとさせる必要がある、それにはやっぱり軍事力という背景がなければ、実務交渉を引き延ばされるだけで、過去と同じ失敗の繰り返しに終わる。

     

    そこで、米国が取りつつある戦術は、つぎのようなものだ。ステルス戦闘機搭載のミニ空母を西太平洋(北朝鮮を含む)へ配置し、無言の圧力をかけることである。「米国を舐めるなよ」というファイティングポーズを取って緊張感を保とうという戦術である。

     

    『中央日報』(7月17日付)は、「米軍、斬首作戦戦力が静かに出港、北朝鮮を意識か」と題する記事を掲載した。

     

    この記事では、「ミニ空母」の「エセックス」がサンディエゴを出港式もなく静かに北朝鮮を含む西太平洋海域へ派遣されたという記事である。注目すべきは、ステルス戦闘機(F-35B)を搭載していることだ。北朝鮮防空網を突破して主席宮やバンカーなど北朝鮮最高指導者を精密打撃する『斬首能力』を備えている。北朝鮮が、米軍を欺いて核実験を行なっていたというような最悪事態に備えていることが窺える。米国は和戦両様の構えだ。

     

    (1)「米国が非核化交渉を進行中の北朝鮮を意識したのか。ステルス戦闘機を搭載した米海軍の『ミニ空母』が7月10日(現地時間)、米カリフォルニア州サンディエゴを出港した。目的地は韓国が含まれる西太平洋。『エセックス』は全長257メートル、排水量4万500トン規模の大型艦。飛行甲板があるため『ミニ空母』とも呼ばれる。『エセックス』には米海兵隊の第211海兵戦闘攻撃飛行大隊(VMFA)が配属されている。この飛行大隊はステルス戦闘機F-35Bを保有する。ステルス戦闘機が関心を引くのは、北朝鮮防空網を突破して主席宮やバンカーなど北朝鮮最高指導者を精密打撃する『斬首能力』を備えているからだ」

     

    (2)「米海軍は、『エセックス』揚陸準備団の出港を発表しなかった。盛大な出港式もなかったという。3月に別のミニ空母『ワスプ』(LHD1)がF-35Bを搭載して出港したが、当時の盛大は出港式に比べると音沙汰なく出港したということだ」

    出港式もなく、静かに任地に向かって出港したことは、北朝鮮の万一の「騙し作戦」にも対応可能な意気込みを内外に示しているように思える。米国が不退転の決意で、「絶対に騙されない」ことを前提に対応しているように見える。


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