習近平氏は、「中国製造2025」を足がかりにして、2050年には世界覇権に挑戦すると威勢の良い発言をしてきた。だが、地方政府の財政は困窮しており、公務員の給与支払い遅延問題が起こるほど切迫している。
中国経済はインフラ投資が牽引してきた。地方政府は、その先頭に立っており、土地売却益を捻出してインフラ投資を続けてGDPを押上げてきた。地方の役人は、経済成長率が出世の尺度になってきたから、遮二無二にインフラ投資に力を入れてきた。インフラ投資ほど、経済成長率を押上げる上で、即効的な項目はない。無駄なインフラ投資でも実施すれば、GDPの押し上げ効果は大である。猫も杓子もインフラ投資に飛びついたのだ。
土地売却益だけで資金調達できるはずもない。だが、資金回収の難しいインフラ投資には銀行もいい顔をして貸出すはずがない。そこで、最終的に頼った先が蔭の銀行(シャドーバンキング)である。金利は高いが審査はないから簡単に借り出せる。地方政府は、このシャドーバンキングの闇に吸い込まれ、無駄なインフラ投資をしてGDPを押上げてきた。それもついに今年に入って限界にぶつかった。政府が、シャドーバンキングの監視を強め、貸出抑制に踏み切ったのだ。地方政府とシャドーバンキングは二人三脚の形できただけに、地方政府は途端に資金不足に陥るところが増えてきた。こういう事情で、給与遅配が起こったのである。
「金の切れ目は縁の切れ目」というごとく、シャドーバンキングの締め付けは、デレバレッジ(債務削減)の実現に不可欠である。これは、インフラ投資抑制に直結する。今年4~6月期の固定資産投資が、下記のデータのように前記と比べて1.5%ポイントも急減した。
4~6月期 1~3月期
実質成長率 6.7% 6.8%
固定資産投資 6.0% 7.5%
小売売上高 9.4% 9.8%
中国経済は、「投資主導経済」と言われてきたように、「土木国家経済」である。固定資産投資の伸び率が落ちれば、小売売上高も鈍化する形になっている。両者の関係は薄いはずだが、住宅価格が高騰しすぎて家計のローンウエイトが高まり、個人消費を減らしている結果だ。中国経済は、インフラ投資も含めた不動産バブルにすっかり毒されている。
この不動産中毒患者の中国経済をどのようにして更生させるのか。いかなる名医といえども妙案があるはずもない。時間をかけた体力回復策だけであろう。日本の場合、「失われた20年」という「時間薬」が必要であった。中国の場合、日本の平成バブルをはるかに上回る不動産バブルである。「2050年に世界覇権挑戦」など、戯言に聞えるはずだ。それほどの深手を負っている現実を自覚すべきであろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月17日付)は、「中国GDPを読み解く、投資減速で今後の難局示唆」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の4~6月期のGDP成長率が発表された。それが何と予想通りの6.7%で、1~3月期の6.8%をわずかに下回った。注目すべきは投資の急減速だ。今年1~6月期は、全体の投資の伸びが前年同期比6%にとどまり、1990年代以降で最低だった」
投資主導経済の中国が、投資の減少によってどうなるのか。それは、支え棒を失うのだからきりもみ状態になるのが道理であろう。それを輸出や消費でどこまでカバーできるか。それが焦点だ。
(2)「企業業績の動向をけん引する不動産セクターが、中国のシャドーバンキング(影の銀行)規制の巻き添えを食っているという兆しが増えている。中国人民銀行(中央銀行)の統計によると、シャドーバンキングの信用残は前年同期に比べ微減だった。これは不動産投資とシャドーバンキングの関連性の強さを踏まえると懸念材料だ。中国経済は7~12月期(下半期)にさらに厳しい局面を迎えそうだ」
インフラ投資も不動産投資も、金融機関からリスク産業として警戒されている。だから、シャドーバンキングのような高利貸付先に向かわざるを得ない。本来であれば、安定した融資先になるはずの業種である。中国の経済政策が、こうした異常な状況を作り出した。今年下半期の中国経済は落込むだろう。





