勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    習近平氏は、すべてが台湾統一に向けられている。国家主席3期目の最大の課題は、台湾統一とされている。習氏が歴史に名を刻むには、これしかないというのだ。

     

    中国政治では、祖国統一が最大の目的とされている。秦の始皇帝が、最も尊敬されるのは中国統一であった。次いで、毛沢東の革命による新中国建国である。後は、台湾統一が残されている。習氏が、万難を排してこれに挑むためには、国内を緊急時に合わせて整備することが不可欠。中国が、台湾有事で西側諸国から制裁されるのに備え、国営の食料品店を拡張しているというのだ。何とも、時代錯誤なことに心血を注いでいるものである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月3日付)は、「中国、国営食料品店が拡大 売上総額120兆円 アリババに迫る 有事念頭に習指導部後押し」と題する記事を掲載した。

     

    中国で、食料や日用品を実店舗で扱う国営の「供銷社」が売り上げを伸ばしている。2021年の売上総額は前年比19%増の6兆2600億元(約120兆円)で、インターネット通販の巨人アリババ集団の8割に迫った。習近平指導部が国主導の流通網の強化に向けて支援していることが一因だ。紛争など有事の際にも食糧を安定供給する狙いがあるとの見方が出ている。

    (1)「供銷社は農家から農産物を買い上げて流通させており、日本の農協に似たところがある。国の機関である中華全国供銷合作総社が管轄する。北京市中心部の朝陽区団結湖地区。外国人も多く住むこの地域に10月、供銷社が開店した。11月平日の午前中に訪れると店内は中高年の買い物客でにぎわっていた。「きょうは大根がほかのスーパーより安い。ここの野菜はどれも形がきれいね」。40代の女性客は笑顔で話した。入り口のポスターには、特売品ではなく「共産党に従い、共産党とともに歩む」とのスローガンが並ぶ。外壁には「供給を保障します」と書いてある。店内は普通のスーパーだが、部分的に国営色が色濃く出ている」

     

    中国共産党の第20回党大会が10月終わった後、国営商店である供銷社(供給販売合作社)が北京、上海、広州、深圳などの大都市で拡大していると官営メディアが大々的に報道している。全国各地で「国営食堂」が営業を始めたというニュースも相次いでいる。10月31日、中国の住宅建設部と民政部は、全国の各市・区政府が共同食堂、商店、乳児院、保育所、老人ホーム、医療施設を備えた「完全な居住団地」(完整社区)を試験建設するよう指示したという。韓国紙『ハンギョレ新聞』(11月15日付)が報じた。「共同富裕論」の実現に向けたテストケースと見られる。

     

    (2)「供銷社は、建国直後の1950年に誕生した。農産品や日用品の配給が滞らないように党と政府が流通統制を敷いたのが誕生のきっかけで、改革開放前の計画経済時代には食品や日用品の主な流通経路だった。改革開放後は民間小売業に押されて衰えたが、近年はじわじわと復活している。特に習氏が党トップに就いた2012年以降に拡大が加速し、21年の売上総額は12年比2.4倍に膨らんだ。21年の伸び率は19%で、中国全体の小売売上高の伸び(12%)を上回る。好調の一因はゼロコロナ政策だ。外食を減らし、自炊する人が増えたことが追い風になっている」

     

    今時、供銷社という国営商店の拡充に乗り出している目的は、鄧小平の改革開放路線を棚上げして、毛沢東時代に戻ろうという動きであろう。また、台湾有事の際は生活必需品を国民に届けるという狙いもあろう。

     

    (3)「ネット通販も含め民間小売業が全盛の時代に、なぜ国営商店なのか。北京市の有名大学の教員は「将来起こりうる『危機』に備えて食糧供給が滞らないように準備している可能性がある」と指摘する。習指導部が「公約」に掲げる台湾統一に武力を用いた場合、米国が中心となって対中国の「経済封鎖」に乗り出す可能性はぬぐえない。仮に食糧不安が起きれば共産党体制を揺るがしかねない。供銷社を通じて流通網への国の関与を強めることが有事の備えにつながるとの見立てだ」

     

    ここでも、国営商店拡充の狙いは台湾有事に備えたものという解釈である。誰でも、「今なぜ」という疑問を持って当然だろう。

     

    (4)「中国の穀物自給率は公式統計では95%と高いが、実際には78割との見方もある。豚の飼料に欠かせない大豆など大半を輸入に頼る穀物もある。供銷社は中国が貧しかった計画経済時代の「象徴」ともいえ、中国の庶民は供銷社に複雑な感情を抱く。北京市出身の50代の男性は「子どもの頃、親が食糧配給切符をもって供銷社で農産物を受け取っていたのを思い出す。あの頃に逆戻りしているようだ」と語る。人口が2千万人を超える北京市では民間の大手スーパーがしのぎを削る。安くて鮮度の高い野菜を売る市場も残る。「国営商店が前面に出てくる事情がわからない」と首をかしげる市民も少なくない」

     

    中国の穀物自給率(エネルギー・ベース)は、70%台前半と推測されている。台湾有事になれば、経済封鎖で2割強が不足する。習氏は、これに備えて「食べ残すな」「レストランでの注文料理数を減らせ」とかやかましいことを言っている。だが、絶対的な食糧不足は如何ともし難いのだ。「頭隠して尻隠さず」である。

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    つい半年前まで、韓国が先進国入りと「大はしゃぎ」していたが、今はそういう浮ついた話もなくなった。それどころか、経済危機が叫ばれる事態になっている。11月の輸出が、中国経済の不調を受けて前年比14%減という落込みになったのだ。

     

    韓国輸出の25%を占める中国経済の停滞は、大きな打撃である。その上、12月1日までで8日間になる貨物労組の運送ストは、12の主要港湾のコンテナの搬出入量を40%も減少させている。これが、輸出へさらなる打撃を与える懸念が強まっている。

     

    『東亜日報』(12月2日付)は、「11月の輸出が前年比14%減、第4四半期にマイナス成長の危機」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「グローバル景気減速とエネルギー価格の高騰に続き、貨物連帯のストにまで見舞われ、韓国経済の主な動力である輸出が2ヵ月連続でマイナスを記録した。このため、貿易収支は8ヵ月連続の赤字に陥り、1997年の通貨危機以来25年ぶりに最長期間の赤字が続いている。政府は、貨物連帯のストが長期化すれば、12月の輸出にも悪影響を及ぼすものと見ている。今年第3四半期(7~9月)に0%台に止まった経済成長率は、第4四半期(10~12月)に逆成長に転じる可能性があるという分析も出ている」

     

    韓国経済は、輸出が屋台骨を支えている。その輸出が11月は、前年比マイナス14%という落込みである。貨物労組のストライキが続いているので、12月も輸出はマイナスを記録するだろう。こうなると、10~12月期のGDPはマイナス成長が不可避の状態だ。

     

    12月1日で8日目を迎えた貨物労組の運送拒否は、低迷している輸出に致命的な打撃を与えるであろう。物流マヒにより、石油化学メーカーの出荷量は通常の30%の水準に激減している。12の主要港湾のコンテナの搬出入量は40%も減少した。これによる被害だけでも、数千億ウォンに上るものと試算されるという。今後、鉄道労組までストに加われば、陸上物流は完全に麻痺する。ストのために、セメントの供給を受けられず止まった建設現場では、第4四半期の完工率を下げる要因になる。泣き面にハチという状況である。

    (2)「産業通商資源部が発表した「11月の輸出入動向」によると、11月の輸出額は519億1000万ドルで、1年前に比べて14.0%減少した。パンデミックが本格化した2020年5月(マイナス23.7%)以来、2年半ぶりの最大の減少幅となる。先月、原油やガス、石炭の輸入額が1年前に比べて27.1%も高騰した影響で、全体輸入額(589億3000万ドル)は2.7%増えた。このため、11月の貿易収支は70億1000万ドルの赤字で、10月(67億ドル)より赤字幅がさらに大きくなった」

     

    11月の貿易赤字は70億1000万ドル、10月の67億ドルの赤字を上回った。この状態は、12月も続く。

     

    (3)「輸出額の減少は、グローバル景気の減速で主な輸出品目である半導体の輸出が昨年より29.8%激減した影響が大きかった。これは2019年11月(マイナス30.8%)以来、3年ぶりの最大の減少幅だ。石油化学(マイナス26.5%)やディスプレイ(マイナス15.6%)など、主な15品目のうち11品目の輸出が軒並み減少した」

     

    主要輸出15品目中、実に11品目が落込んでいる。主力の半導体市況は、これから本格的な調整期に入るので、貿易赤字が今後も続くはずだ。

     

    (4)「問題は、来年以降も輸出が低迷する可能性が高いという点だ。大韓商工会議所は12月1日、来年第2四半期(4~6月)まで景気下落の傾向が続くと予測したのに続き、韓国貿易協会は来年の貿易収は138億ドルの赤字になると予想した。秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官は同日、「物価不安が続く中、生産と輸出が減少し、景気減速が深刻化する非常に厳しい状況だ」と話した」

    大韓商工会議所は、来年央までの景気低迷を予測しているが、後半に立ち直る確証がある訳でもない。半導体市況の回復を見込んでいるのであろうが、半導体は未だ在庫調整が始まったばかりである。半導体「大好況」後の在庫調整である。「浅い谷」で済むはずがないのだ。「山高ければ谷深し」である。

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    習近平氏は2021年の新年演説で、新型コロナウイルス感染を徹底して封じ込める中国の「ゼロコロナ」政策の成功ぶりを誇らしげに語った。先の党大会でも、ゼロコロナ政策の成果を宣伝したものだ。それも束の間で、国内で感染患者が続出しており、ロックダウンが強化される始末である。 

    中国は、これまでコロナも封じ込め、市民の不満も封じ込めと、すべて「臭いものに蓋をする」という便宜的手段で対応してきた。それも、ついに限界に達した。若者が、一斉に街頭へ出た「ゼロコロナ反対」を叫んでいるのだ。21年の新年演説と全く逆の事態が引き起こされている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「中国『ゼロコロナ』出口、手探り 浮かぶ段階的緩和」と題する記事を掲載した。 

    中国政府が新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策の「出口」を模索している。全面解除なら、感染爆発で200万人以上が死亡するとの試算もあるが、長引く行動制限と経済停滞で市民の不満は強い。習近平指導部の威信を傷つけぬよう、段階的な緩和に動くシナリオが指摘されている。 

    (1)「11月26日以降に、ロックダウンなどへの不満を示す抗議活動が全国に広がり、一部は習近平国家主席の退陣や政治的自由の拡大まで求めた。抗議活動が政権の安定を揺るがしかねず、習指導部はゼロコロナの軌道修正を探らざるを得ない状況にある。だが、全面解除には国産ワクチンの有効性と接種率の低さという壁が立ちはだかる。世界保健機関(WHO)の専門家らは7月、各ワクチンの有効性を比較した論文を発表した。2回接種した香港の60歳以上の患者で重症・死亡を防ぐのに、米ファイザー・独ビオンテック製の有効性は約89%、中国のシノバック製は約70%と差が出た」

     

    ゼロコロナという非科学的な封じ込め策は、中国製ワクチンの効果が、欧米製に比べて劣ることと、医療施設の不足という中国の後進性が招いた事態である。世界の笑い者になったことに気づくべきであろう。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月29日付)は、「ゼロコロナの失策で、これまで周到につくり上げてきた習氏の知能と力を備えた人物というイメージはもはや維持できないだろう」と辛辣な批判を加えている。 

    (2)「中国国家衛生健康委員会によると、ワクチンを2回接種した人は60歳以上で約86%、80歳以上で約66%にとどまり、日米よりも低水準だ。英医療調査会社エアフィニティは11月28日の報告書で「中国がゼロコロナを解除すると130~210万人が死亡するリスクがある」との推計を示した。中国政府も4月、ゼロコロナを緩和した場合に「200万人の死者が出る」との試算値を公表した。習指導部がゼロコロナに固執してきたのは、徹底的な隔離で感染や死亡を抑え込み、プラス成長を維持した初期の成功体験があったためだ。ゼロコロナの是非は習氏個人の威信や政治手腕への評価と直結、柔軟な軌道修正が困難になった」 

    中国では、高齢者のワクチン接種率が日米よりも低水準である。これは、農村のお年寄りが「漢方薬」になれきっており、「注射」を嫌うという前時代的な感覚による面が大きい。また、中国製ワクチンの副作用が知れ渡っており、農村では忌避されている。まさに、中国は「身から出た錆」と言える。

     

    (3)「目算が狂ったのは感染力の強いオミクロン型の流行だ。感染者数の急増で今春、最大の経済都市上海を約2カ月にわたって封鎖した。いったんは収束したが、10月以降に再拡大し、野村ホールディングス傘下の野村国際(香港)の推計で、68都市の約5億3000万人(11月28日時点)が封鎖や行動制限の対象となっている。中国では失業率が高止まりし、個人消費も冷え込む。国際通貨基金(IMF)は10月、2022年の中国の実質経済成長率の見通しを3.%と下方修正し「下振れリスクが残る」と注記した」 

    11月28日現在で、約5億3000万人がゼロコロナで行動制限を受けている。全人口の38%にも及ぶ。これでは、中国経済に大きなダメージを与えて当然である。IMFが今年のGDP成長率に下振れリスクがあると警告するほどだ。中国国家統計局が11月30日に発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.0と、前月の49.2から低下し、7カ月ぶりの低水準となった。世界的な需要低迷や新型コロナウイルス対策の規制が影響したのだ。このように、中国経済は沈滞の底を這っている感じである。

     

    (4)「今後の出口戦略について三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、22年末、23年3月末と2段階の緩和を予想する。高齢者のワクチン接種と地方での医療整備を加速しつつ、隔離期間を2段階で短くし、春先にゼロにする流れだ。SMBC日興証券は「政策変更は威信に関わる問題で、目先で劇的な変化が起こると期待すべきではない」と指摘する。ゼロコロナの看板は下ろさずに徐々に緩和を探るとの見方だ。経済停滞が長引けば市民の不満は解消しない。感染爆発で死者の急増を許せば、遺族らの悲しみの矛先は習指導部に向かう。求心力の維持へ難しいかじ取りが続く」 

    ゼロコロナを行なわざるを得ない条件が、全く変わっていない中で、「22年末、23年3月末と2段階の緩和を予想する」のは、無責任という感じである。欧米製ワクチンを導入するなどの施策がない限り、さらなる混乱を招くだけであろう。

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    韓国経済は、半導体・スマホへの依存度が高いことから、市況急落によって大揺れである。来年の成長率は1%台後半との見方であったが、1%も無理という悲観論が広がっている。中国経済の不振が、輸出減で直撃している。

     

    『朝鮮日報』(12月2日付)は、「サムスンのスマホ工場稼働率は過去最低、LGは在庫急増」と題する記事を掲載した。

     

    韓国統計庁が11月30日に発表した産業活動動向によると、10月の生産は前月を1.5%下回った。新型コロナの流行が本格化した2020年4月(1.8%減)以来最大の減少幅だ。 7月(0.2%減)、8月(0.1%減)、9月(0.4%減)に続く4カ月連続の減少である。気懸りなのは、月を追うごとにマイナス幅が拡大していることだ。

     

    (1)「大手企業も生産が減り、稼働率が下落している。サムスン電子の第3四半期(79月)のモバイル機器工場稼働率は72.%で、昨年同期(80.%)に比べ8.1ポイント低下した。工場稼働率の公表を開始した2010年以降で最低だ。LG電子の洗濯機工場稼働率も第3四半期に昨年の105%から88%へと急落した」

     

    サムスンのスマホ工場稼働率が72.2%と急落だ。70%を割ると赤字になる懸念も出てくる。世界の半導体市況では、スマホなどに使われるメモリ半導体の市況が急落している。スマホ需要が、急速に冷え込んでいる証拠だ。中国市場では、すでにスマホの普及率が天井圏に達している。スマホ需要やパソコン需要が回復しないか限り、メモリ半導体の回復期待は持てないのだ。

     

    (2)「主要企業の工場稼働率が大幅に低下したのは、世界需要の減少で在庫が積み上がっているためだ。9月末時点のサムスン電子の在庫は6月末に比べ10%増加した。同じ期間に半導体部門(DS)の在庫は22.6%増に達した。LG電子の在庫は15.7%増だった。企業分析を行うリーダーズインデックスが、売上高上位500社のうち在庫を公表した195社を分析した結果、9月末時点の在庫は昨年末に比べ36.2%増加したことが分かった。同社が統計を取り始めた2010年以降で最大だ」

     

    韓国主要企業195社の9月末在庫は、昨年末に比べて36.2%も増えている。急激な在庫増である。これだけ在庫が増えれば、操業度を引下げざるを得なくなる。失業者の増加が危惧されるのだ。これによって、一段と消費を抑圧する。

     

    (3)「韓国中堅企業連合会の崔鎮植(チェ・ジンシク)会長は、「急激な利上げで需要が低迷し、在庫が積み上がり、主要企業の工場稼動率はますます低下するだろう。さらに大きな問題はそうした悪循環が始まり、来年からさらに本格化することだ」と指摘した。最大の危険シグナルは生産の減少だ。韓国企画財政部は「輸出不振などで鉱工業生産が大きく減少する中、景気回復を主導した消費も伸び悩み、回復の流れが弱まる兆しを見せている」とした。9月は「全般的な回復の流れが維持されている」との表現だったが、1カ月ぶりに悲観的なトーンに転じた」

     

    下線部の指摘は、まさにその通りである。韓国経済が、スパイラル的な不況の渦に巻き込まれていることは確実だ。個人消費の対GDP比が50%程度であるから、消費はストッパー役にならない。輸出不振が、韓国を直撃している。

     

    (4)「経済成長の軸である主力分野で問題が発生したことで、経済全体の低迷につながる可能性も高い。最大輸出品目である半導体の価格が下落し、最大の貿易相手国である中国への輸出も減少している。年初来11月20日までの期間に対中貿易赤字は4億9900万ドルに達した。通年で赤字を記録すれば、1992年の国交正常化以来初となる。シティバンクのチーフエコノミスト、キム・ジンウク氏は、「半導体景気崩壊に伴う製造業輸出景気の低迷は既に7月ごろから始まった」とし、「来年は1%台の成長も困難かもしれない」と述べた」

     

    韓国は、これまで中国輸出で貿易黒字を出してきたが、中国経済はゼロコロナで落込んでいる。若者がデモをする程であるから、相当の行き詰りになっているのだ。中国依存の輸出が、現在は裏目に出ている。来年の成長率は、マイナス成長も視野に入れなくてはならなくなった。

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    習近平氏は、中華思想の復活を目指している。中国が、世界の中心というこの民族主義は、国際社会で摩擦を引き起こしている。まさに、チャイナ・リスクの発生である。中国企業は、このリスクに飲み込まれては大変と、本社所在地をシンガポールで登記する例が急増しているという。台湾有事が起こって中国経済が制裁を受けても、「シンガポール企業」としてリスクをすり抜ける計画だ。

     

    英国『フィナンシャル・タイムズ』(11月30日付)は、「中国企業、シンガポールへの『退避』急増」と題する記事を掲載した。

     

    中国企業が過去1年間でこっそりとシンガポールに住所変更、または登記する事例が急増している。その数は500社にも上る。米中間の緊張が高まる中、地政学的リスクを回避することが狙いだ。

     

    (1)「中国企業がシンガポールに拠点を置くのは、今に始まったことではない。しかし、銀行幹部らによると、西側諸国が中国企業への監視を一段と強化する中、中国本土の企業が持ち株会社をシンガポールに設置して将来のリスクに備えようとする動きが現在、「激しく」なっているという。こうした行動に出ている中国企業の正確な数は不明だ。というのも、シンガポールは公式統計で、同地に新たに設立した企業の国籍を明らかにしていないからだ。しかし、ある弁護士は自らの事務所の内部調査で、500社を超える中国企業が2022年、シンガポールに会社を設立したことが分かったと述べており、専門家によると、これは過去数年の数字を超えているという」

     

    世界が中国企業へ監視の目を強めている中で、シンガポールへ本社を移す中国企業が増えている。習氏が描く「中華復興」は、すでに世界から警戒されている証拠だ。

     

    (2)「シンガポールの別の経営コンサルタント会社が、データを元に計算したところによると、富裕層の資産運用を担う「ファミリーオフィス」を含め、その数は400社だという。同社も前述の弁護士と同様、取り扱いに配慮が必要な情報であるため、匿名を希望した。アナリストらは、ファミリーオフィスの多くが中国からで、その数は、今年末までに1000をはるかに超えるとみている。20年末には400だった」

     

    中国からシンガポールへ移転するのは企業だけでない。中国の富裕層までが、将来の財産没収リスクを回避すべく、資産をシンガポールへ移している。

     

    (3)「シンガポールはこの傾向の恩恵を受け、世界の金融と資本の流れの中心として一層強みを発揮する見通しだ。グローバル金融センター指数によると、9月には、香港を追い越して、アジア最大の金融の中心地となり、ニューヨーク、ロンドンに次いで世界第3位につけた。シンガポールは、ネットワーク作りや取引形成の上でも中国より優位にある。中国では渡航規制が厳しく、新型コロナウイルス回避のためのロックダウン(都市封鎖)が続いているため、企業幹部にとって重要な出張は限られている」

     

    シンガポールは、「脱中国ムード」に乗って潤っている。グローバル金融センターも、香港が中国支配を受けて脱落し、シンガポールが世界3位に浮上している。

     

    (4)「世界展開している未公開株式投資会社のある幹部は、「我々はこの傾向を『シンガポール洗浄』と呼んでいる。その企業を投資家に紹介する際に、シンガポールに住所がある、または本社があるとなれば、投資に売り込む条件を満たす材料となる。シンガポールに上場しているというだけでも良い」と述べた。この傾向は加速している。西側の消費者に人気のあるファッション企業SHEINは今年、シンガポール支社を大幅に拡充した。EV生産のスタートアップ企業であるNIOは、欧州市場に進出した後、米市場への参入を計画している。同社はすでに、ニューヨークと香港に上場しているにもかかわらず、今年5月にシンガポール株式市場に上場した」

     

    資本市場の世界でも、シンガポールに本社があるというだけで安心感を持って貰えるという。中国は落ちぶれたものだ。異次元の世界にみられているのであろう。シンガポール市場への上場も「箔」がつくというのである。

     

    (5)「シンガポールの大手法律事務所デントンズ・ロダイクのシニア・パートナー、キア・メン・ロー氏は、以前は多くの企業が香港を選んだものだと話す。しかしシンガポールと並ぶ金融センターである香港への締め付けを中国政府が強化する中、代替地としてシンガポールを選ぶのは当然の成り行きだと同氏は述べた。ロー氏は、中国企業がシンガポールの企業と合併、または買収して合弁企業を作り、シンガポールの経営陣や従業員を取り込み、さらに、シンガポール人を取締役会に加える例をよく見るという」

     

    シンガポールは、完全に香港に取って代わる地位についた。香港の地盤沈下が確実に進んでいるのだ。

     

    (6)「米ナスダックに上場している国際金融サービス企業、ストーンXCEO、グレッグ・カリニコス氏は「シンガポールにとって未来は明るいが、同国はこの傾向を適切に取り扱わなければならない。シンガポール政府はシンガポールにとっての好機を最大限に利用しようとしており、正しい方向に進んでいる」と述べた。同氏は、シンガポールの司法制度が世界の投資家を安心させているとみている。「シンガポールの会社と聞くだけで(投資家は)信頼できる」と同氏は言う」

     

    投資家は、シンガポールの会社と聞いただけで安心するという。シンガポールの司法制度が、世界の投資家を安心させているのだ。この伝で言えば、中国の司法制度が世界の投資家から信頼されていないので、中国企業まで信頼されない事態となっている。

     

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