勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国安保政策を誤らせる

    台湾が中国に落ちれば?

    チャイナは瀕死の重傷へ

    中国依存への幻想を絶て

     

    韓国は、台湾問題についてほとんど沈黙を貫いてきた。中国との関係悪化を危惧した結果である。これにより、国内でも台湾問題は「対岸の火事」として捉える偏った見方を広めることになった。だが、先のペロシ米下院議長の訪台後に起こった、中国軍の台湾を取り囲む大演習によって、台湾海峡を封鎖する事態が現実化する恐れを抱かせるにいたった。

     

    台湾海峡は、韓国貿易にとって欠かせない海上交通路である。ここが、封鎖され戦争状態に陥れば、韓国の国益は大きく損ねる。こうして台湾有事は、韓国有事になり得ることを否応なく認識させたのである。

     


    これまで韓国有力メディアは、日本が台湾有事を利用し防衛力増加に動き出していると批判的トーンであった。日本は、太平洋戦争で近隣諸国を戦火に巻き込んだ反省が足りないと非難。平和憲法を維持せよと迫っていたのである。これに対して、私はドイツの例を持出し国際情勢急変の現在、日本もやむを得ない措置であると主張した。

     

    ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)の中で、防衛費が対GDP比で1%見当に止まっている。NATOの申し合わせでは、2%達成が目標である。ドイツは、2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に、これまでの消極的姿勢を改め、防衛費の2%達成を公約に掲げた。ロシアの軍事侵攻へ対抗する姿勢を明確にしたのだ。

     

    日本の防衛費増大は、ドイツと同様に対GDP比1%を2%に引上げるものだ。これについて韓国メディアは、近隣諸国の了解が必要だとしている。具体的には、韓国の了承が必要という高飛車な態度に出ている。日本の防衛費増額は、日米同盟の中で行なわれるものだ。ドイツとNATOの関係と同じである。日本が、単独で防衛費を増やすという問題でない。

     

    韓国安保政策を誤らせる

    韓国文政権は、意図的に台湾問題への言及を避けてきた。それは、本質的に「反米思想」の根強い「86世代」(1960年代生まれで80年代に学生生活を送り軍事政権と対決した50代)によって、文政権が動かされてきたことと関係する。彼らは、台湾問題が不安定な原因は米国にある、という先入観に支配されてきた。具体的には、次のようなものだった。

     

    根強い反米感情と、朝鮮半島にだけは飛び火しないことを望む「フリーライディング(ただ乗り)」への願望に支配されてきたのだ。この二つの要因は、朝鮮李朝末期の偏狭な外交感覚と瓜二つである。李朝は、ロシアへの支援を求めていたが、英米の外交方針と大きく食い違っていた。英米は、ロシアの南下を食止める策を巡らしていた。日英同盟は、そういう英米の世界戦略から生まれたものだ。

     

    李朝は、英米の世界戦略から外れた外交選択をしようとして結局、歴史は日韓併合へ流れることになった。文政権の外交戦略は、中国接近である。李朝はロシアを頼り、文政権は中国へなびいたのである。世界の大勢を読めない盲目的選択という点では、李朝も文政権も何ら変わりなかった。

     


    文政権が、中国へなびいていた証拠は、自衛問題である「三不一限」で不当は譲歩をしたことである。「三不一限」とは何かをもう一度振り返って起きたい。

     

    中国外務省は最近、韓国のTHAAD(在韓米軍の超高高度ミサイル網)配備について「韓国政府(文政権)は対外的に『三不一限』政策を宣示(広く宣布して伝える)した」と主張している。三不一限とは次のような内容だ。

    三不は:

    1)THAADを追加配備しない

    2)米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない

    3)韓米日軍事同盟に参加しない

    一限は:

    4)THAADレーダーに中国方向に遮断幕を設置するなど運用を制限する

     

    三不は、今後追加の措置はしないという意味である。一限は、すでに配備したTHAADの運用にまで中国の意向に従うもので、韓国自体が思い通りできないことを意味する。こうして、一限は三不以上に深刻な安保主権の放棄と指摘される。世界で自国の軍事装備使用について、他国から干渉されるとは前代未聞だ。文政権は、こういう異例の事態を唯々諾々と受入れる雰囲気であった。

     


    「三不一限」は、国家存立の基盤である自衛権の根幹に関わる問題である。李朝末期では、ロシアへ依存した外交であった。文政権は、中国依存という米韓同盟を結ぶ国家の安保政策としてあり得ないことを行なったのだ。先に挙げたように、文政権は「反米思想」と朝鮮半島へ飛び火しなければ、中国の言分に何でも従う敗北主義を明確にしていた。文政権の描く世界は、朝鮮半島しか視野になかったのである。

     

    台湾が中国に落ちれば?

    韓国は日本から独立後、民主主義と市場経済をベースにする国家システムによって発展した。韓国メディアの言葉を借りれば現在、「G10」(世界主要10ヶ国)になったと自画自賛するまでになっている。だが、ここで中国が台湾を軍事力で解放した場合、韓国は38度線で対峙する北朝鮮との関係が一段と厳しいものになろう。共産主義圏が拡大するのだ。

     

    台湾海峡が、中国に支配される事態となれば、貿易上で大きな障害になる。日本も全く同じ悪条件に追込まれるのだ。台湾有事は、韓国有事であり日本有事であるという論理が、ここに成立するのだ。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-08-08

    メルマガ384号 中国「台湾大演習」、戦争への意思表示 米軍に勝つ自信なく「短期決戦

    2022-08-15

    メルマガ386号 「戦争請負人」習近平、いつ台湾へ開戦するか 大軍事演習が「手の内明

     

    テイカカズラ
       

    先のペロシ米下院議長の訪台は、中国の事前予告通りペロシ氏の搭乗機への妨害工作があったことが判明した。ただ、何らの事態も発生せずにペロシ氏は台湾へ到着した裏に、米軍機による中国機追跡を電波妨害工作で防いでいたのである。

     

    『朝鮮日報』(8月17日付)は、「米軍の電磁波妨害を受けた中国の戦闘機『ペロシ議長搭乗機の追跡に失敗』」と題する記事を掲載した。

     

    中国軍が最新の駆逐艦と戦闘機を投入し、今月2日に台湾へ向かったナンシー・ペロシ米国連邦議会下院議長の乗る飛行機を追跡しようとしたが、米軍の妨害で失敗したという。香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)が最近報じた。

     


    (1)「SCMP紙は、中国軍に近い匿名の関係者の話を引用し、「中国は殲16D(J16D)電子戦機や055型駆逐艦などを投入して、ペロシ議長を乗せた米空軍所属のボーイングC40を追跡したが、米空母機動部隊から出撃した軍用機の電子的妨害で中国側の電子戦装備がきちんと作動しなかった」と伝えた。J16戦闘機に電子戦装備を追加したJ16Dは、艦載型のJ15Dと共に中国軍の電子戦の最先鋒兵器に挙げられる。055型駆逐艦は2019年に1番艦が就役した最新型の駆逐艦で、現在は「南昌」「拉薩」「大連」の3隻を運用している。中国の軍艦の中では最先端のレーダーを搭載している」

     

    中国軍は、最新鋭の電子機器を使ってペロシ搭乗機を追跡したが、結果は電子戦装備がきちんと作動せず失敗した。米中近代戦を象徴するような話だ。中国が他国の技術を盗用して、装備だけは「金ピカ」になっても、世界最先端を行く米軍を阻むことの困難さを示している。

     

    世上では、中国軍の戦闘機や艦船の数だけ取り上げて、米軍のそれと比較して議論している。米国の戦略家エドワーク・ルトワック氏は、こういう単純な比較を嗤っている。戦争で威力を発揮するのは、戦略と同盟国の有無の2点を上げる。中国は、これらの点で米国に及ばないことを自ら証明したようなものだ。

     


    (2)「中国のある軍事専門家は、「055型駆逐艦に搭載されたレーダーの探知範囲は500キロ以上といわれるが、実際はこれに到底届かなかっただろう」とし、「探知範囲が広く、比較的新型の055型駆逐艦にあまり慣れていない乗組員のことを考慮すると、ペロシ議長の乗った飛行機の位置を特定できなかったのは驚くべきことではない」と語った。先に中国政府は、ペロシ議長が台湾を訪問したら「黙ってはいないだろう」と軍事的対応を公言し、米国は南シナ海にいた空母「ロナルド・レーガン」機動部隊を台湾南東部のフィリピン海に展開させて万一の事態に備えた」

     

    中国機は、ペロシ搭乗機を追跡して強制着陸させる目的であったのだろう。米軍が、こういう事態を招けば著しい「権威失墜」になる。これを回避するには、中国機への電波妨害工作しかない。技術面でも米軍がはるか上を行っていることが分る。

     


    (3)「今月2日から3日にかけて行われたペロシ議長の台湾訪問と、その後1週間以上も続いた中国の台湾包囲演習の過程で、米中は偵察、電子戦などの分野で「見えない戦争」を行ったものとみられる。中国のシンクタンク「南海戦略態勢感知計画」は、米軍が今月5日だけでも少なくとも7機の偵察機と早期警戒機を台湾近辺へ送り込んだと主張した。韓国を飛び立ったU2高高度偵察機も中国軍の訓練監視に動員されたという」

     

    中国軍は、電子戦で弱点を抱えていることが判明した。これは、近代戦において致命的である。電子分野では、優秀な日本技術が米軍に貢献しているとされている。日米の合作で、中国軍の横暴を防がねばならない。

    あじさいのたまご
       

    米議会は、中国の妨害工作をものともせずに台湾を訪問している。8月3日、ペロシ米下院議長が訪問した。14日には、マーキー米上院議員の率いる5人の米議員団が、事前発表なしに台湾を訪問して蔡英文総統と会談した。中国軍は、ペロシ氏の訪台に反発し4日間にわたる大規模軍事演習を実施したが、15日にも再び、台湾周辺で軍事演習を実施したと発表した。

     

    中国軍は、ペロシ訪台に抗議して「力一杯」の実弾軍事演習を4日間も行なった。だが、米議会には何の痛痒も感じないどころか、強い反感を示している。「台湾政策法2022」立法府を目指し、中国へ報復する姿勢を見せている。

     

    米議会が、このように強気の対応を取っている裏には、中国が台湾侵攻作戦を行なえば、中国自身が大きな返り血を浴びる事態になるからだ。こういう、冷静な判断が垣間見える。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月16日付)は、「
    中国の台湾封鎖、半導体など世界経済への影響は」と題する記事を掲載した。

     

    台湾海峡をめぐる緊張と、中国が台湾を封鎖しようとした場合に世界経済に及ぶ可能性のある影響をまとめた。

     

    (1)「中国が台湾を封鎖すれば、世界のサプライチェーン(供給網)が寸断され、アジアで貨物運賃が上昇するだろう。値上がりはその他の地域に及ぶ恐れもある。人口約2300万人の台湾が世界のビジネスで果たす役割が非常に大きいためだ。台湾は世界の半導体供給量の約70%を占め、スマートフォン、コンピューター、自動車などの生産チェーンの重要な一部だ。また、何兆ドルもの規模の貨物を積んで東アジアを往来する船舶が通過する太平洋航路に隣接している。台湾の輸出が停止すれば、自動車や電子機器向けの半導体が不足し、インフレ圧力が高まるだろうと指摘される」

     

    台湾は、世界の半導体供給量の約70%を占めている。ここが、戦乱に巻き込まれれば大変な事態になる。世界経済は、止まってしまうのだ。中国は、そういう危機を引き起こそうと狙っている。

     


    (2)「台湾は世界最大の半導体受託製造会社、台湾積体電路製造(TSMC)の本拠地。同社はアップルやクアルコムなどの企業向けに半導体を生産している。調査会社ガートナーによると、TSMCは昨年、1000億ドル(約13兆3000億円)規模の半導体製造市場で半分以上のシェアを占めた。ボストン・コンサルティング・グループと米半導体工業会(SIA)がまとめた2021年の報告書によると、台湾の半導体サプライチェーンが1年にわたって混乱した場合、世界の電子機器メーカーは約4900億ドルの損失を被る可能性がある。さらに、台湾の半導体生産が恒久的に混乱すれば、それを穴埋めする生産能力を他の地域で構築するために少なくとも3年の年月と3500億ドルの経費が必要になるという」

     

    このパラグラフでは、台湾がいかに重要な地位を占めているかを示唆している。下線のように、中国軍によって台湾侵攻が行なわれれば、他の地域で3年の歳月と建設費3500億ドルが必要になるという。

     


    (3)「
    世界的な半導体不足や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴うサプライチェーンの混乱により、半導体産業が台湾に圧倒的に依存していることが浮き彫りになった。このため、西側主要国は既に台湾製半導体への依存によるリスクヘッジを図ろうとしていた。米国および欧州連合(EU)は、国内・域内での将来の半導体生産拡大とアジア諸国に対する競争力強化を図るため、何百億ドルもの資金を投入する方針を表明している。ジョー・バイデン大米統領が先週署名して成立した半導体補助法による補助金支給対象候補であるTSMCは現在、アリゾナ州に120億ドルの工場を建設中である。同社はまた、日本でも70億ドルの工場建設を行っている」

     

    台湾が、半導体「聖地」になっている以上、この台湾へ攻撃リスクがあれば、日米は国内生産を増やして「台湾ショック」に備えるべきだろう。

     


    (4)「国際法上の戦争行為の1つである封鎖は、すべてのヒトとモノの台湾への出入りを妨げる全面的な行動から、特定タイプの行き来や商品を対象とするもっと緩い措置まで、多様な形態を取り得る。アナリストらによれば、中国軍は、空・海軍によるパトロールを実施したり、機雷を設置したり、さらに踏み込んで空港や港湾を破壊したりする可能性もある。封鎖措置を宣言するだけでも、航空会社、海運会社は、警戒措置としての運航ルートの変更を迫られるかもしれない」

     

    台湾海峡が封鎖されれば、航空会社、海運会社は、警戒措置としての運航ルートの変更を迫られる。多大のコスト増になる。

     


    (5)「中国軍が、台湾封鎖を維持できるだけの資源を持ち合わせているかどうかは不透明だ。シンガポールのリー・クアンユー公共政策学院の客員上級研究員であるドリュー・トンプソン氏によれば、台湾封鎖の試みはどのようなものであっても、米国、日本、その他の国々による介入を招く可能性が高いという。アナリストらによれば、軍事的、地政学的コスト以外にも、中国政府に台湾封鎖の試みを躊躇させる大きな要因が1つあるという。それは中国自体が貿易、雇用面で台湾に依存しているということだ。中国政府は、自国経済に打撃を与えずに台湾経済を損なうことはできないということだ」

     

    台湾海峡は、国際法上の公海である。中国軍が公海を封鎖することは違法であり、日米豪などの関係国が実力を以て排除するのは当然の権利である。

     

    中国は、最先端のコンピューターや産業機器に必要な半導体の供給をTSMCに依存している。iPhone(アイフォーン)の組み立てで最大のシェアを持つ鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)などの台湾企業は、中国本土で民間部門の雇用に大きく貢献している。そして台湾は、中国にとって太平洋航路の戦略的出入り口の役割を担っている。そこを封鎖することは、中国にも不利益になるのだ。

     

     

     

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    先のペロシ米下院議長の訪台を巡って、中国では訪台阻止を目指した習近平氏の「恫喝発言」まで飛び出した。ペロシ氏は、これを無視し予定通り訪台を実現させた。韓国では、中国の主張に肩を持つコラムが登場している。「中国ベッタリ」である。

     

    台湾問題は、中国の視点で論じるのでなく、自由世界における普遍的な価値維持という歴史的な視点が必要である。香港を見れば分る通り、言論の自由は奪われ政治の選択は不可能になった。これは、「明日の台湾」でもある。こういう現実を見れば、台湾の民主主義を守るのは、自由を享受している側が国境を越えて支援すべき義務と言えるだろう。

     


    『中央日報』(8月16日付)は、「ペロシ訪台で失ったもの」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・ソンフン北京特派員である。

     

    米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪れて12日後、米国の上下院議員5人が再び台湾を訪問した。“支援射撃”だったのかもしれないが、反響は大きくなかった。エドワード・マーキー議員は民主党所属の上院外交委員会東アジア太平洋委員長だ。「今回の訪問が台湾海峡の安定と平和を増進するだろう」という彼の言葉は虚しかった。少なくとも現在の危機はペロシ議長の訪台が招いたものだからだ。

     

    (1)「今回の事態で米国は中国との名分争いで押された側面がある。中国政府は1978年の「中米関係外交樹立に関する声明」に基づき、「米国は台湾とは文化、商業、その他非公式的関係だけ維持することにした」という点を繰り返し強調した。米国権力序列3位のペロシ議長の訪台は国家次元の公式訪問であり、両国間の外交的合意違反という部分に傍点をつけたのだ」

     

    米国は、1979年に国内法として「台湾関係法」を制定している。これによれば、米国は中国の意向を忖度することなく、台湾との関係を継続できることになっている。その内容は、次のようなものだ。

     


    米合衆国が中国と外交関係を樹立するのは、台湾の未来が平和的に解決することを期待することを基礎としている。

    1)台湾に関して、米合衆国の国内法へ影響を与えずこれまで通りとする。

    )1979年以前の台湾と米合衆国との間のすべての条約、外交上の協定を維持する。

    3)台湾を諸外国の国家または政府と同様に扱う。ただし、米国における台湾外交官への外交特権は、認められない場合がある。

    4)米国在台湾協会に対して免税措置を与える。

    防衛関係

    5)平和構築関係維持の為に台湾に、あくまで台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う。

    6)米合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない。

    その他

    7)米議会は台湾関係法について、その施行および監督を行う義務がある。

     

    「台湾関係法」によれば、米議会議員が台湾を訪問する上で、何らの障害もない。この事実を、ぜひ知って欲しい。また、6)は米国の台湾防衛義務を間接的に示唆している。

     


    (2)「逆に米国は中国の主張に反論する根拠が不足した。米ホワイトハウスは三権分立に基づき、訪問するかどうかに対する判断はペロシ議長にあると避けた。ペロシ議長も台湾到着直後、「習近平主席が人権と法治を無視した」と直撃したが、合意無視という中国側の主張には反論できなかった。これは結果的に中国が台湾の主要航路と港を塞ぐ初の「封鎖訓練」に口実を提供した」

     

    ペロシ氏は、台湾関係法によって訪中できるのだ。このパラグラフは、完全に中国寄りである。

     

    (3)「威力誇示の絶頂は、中国が台湾上空を越える弾道ミサイル発射したことだった。韓国領空を北朝鮮のミサイルが越えてきたとしたらどうだったかと想像するのは難しくない。それでも台湾国防部は「大気圏の外に飛んできて領空危険がないと判断、防空警報を発令しなかった」という納得しがたい声明を出した。発射軌跡を探知した米軍も沈黙を守った。台湾海峡境界線は常時侵犯モードだ。米議員団訪問で、中国戦闘機10機がまた台湾海峡中間線を越えた。人民開放軍報は中国ステルス戦闘機J-20が台湾海峡危機線に接近不可能だった地域まで飛行していると公開した。この際境界線を曖昧にしようという勢いだ」

     

    米国が、抑制した行動を取ったのは先に行なって米中首脳電話会談で、習氏が「戦争する意思はない」と示唆した結果だ。だが、中国軍の動きを米軍は子細に傍受して分析している。米軍にとっては、またとない中国軍を観察する機会をえたのだ。早速、米国では「図上演習」が行なわれ、中国軍による兵站戦略の弱点を見抜いている。

     


    (4)「22年ぶりに出した3回目の台湾白書で中国は露骨に本音を表わした。「平和統一と一国二制度」を前面に出したが、具体的表現は「平和的手段による祖国統一が優先的選択」だった。次善は武力統一だ。一国二制度の境界は曖昧だ。以前の白書では本土が軍を台湾に駐留しないと約束し、1993年白書には台湾の「軍備維持」にまで言及したが今回はすべて消えた。台湾統一は習主席が宣言した最大の政治的課題だ。名分を作ったペロシ議長に中国はかえって感謝しているかもしれない。米国も再反撃に立ち向かう雰囲気だ。台湾海峡の対決構図はさらに鋭くなった」

    下線部は、完全に見誤った見解である。習氏が、国家主席3期目や4期目を目指すのは、台湾侵攻を目標にしているからだ。この前提に立てば、今回のペロシ訪台に対する中国軍の軍事演習は、またとない「事前詳細情報」を得る機会になった。その意味で成功だ。


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    中国人民銀(中央銀行)は15日、1年物中期貸出制度(MLF)の金利を0.1%引き下げた。雀の涙である。この程度の利下げ効果など期待薄である。社会全体が7月、銀行や市場から新たに調達した資金(社会融資規模)は7561億元(約15兆円)だった。前年比で3割もの減少である。市場は、2割増を見込んでいただけに事態は深刻である。

     

    このように資金需要が減ったのは、民間による資金調達意欲が大きく落込んでいることが響いている。この中で、政府が債券を発行して調達した金額は全体の53%を占めている。5割を超すのは遡れる2017年以降で初めてである。

     


    不振を極める中国経済を立て直すには、財政による支援が必要である。中国では、財政支援といえば「インフラ投資」しか行なわない。だが、先進国の行なったように、家計を直接支援する政策も検討する段階だ。

     

    『ロイター』(8月15日付)は、「中国、中央政府の財政出動急務 『出し惜しみ』は危険」と題するコラムを掲載した。

     

    何かあっても必ず「出し惜しみ」をするのは、非常に代償の大きな習慣と言える。中国経済が悪化を続けているというのに、政府はそれに歯止めをかけるために幾つかの政策的なブレーキを解除するのをためらっている。15日には、特に企業借り入れや若者の失業率など一連の指標が失望を誘う内容だったことを受け、人民銀行(中央銀行)が2つの政策金利引き下げに動いた。これは効果がないだろうが、政府はなお財政出動に消極的だ。

     

    (1)「習近平政権を悩ませている経済危機は主として低調な需要に起因している。新型コロナウイルスの集団感染に対応して各地でロックダウン(都市封鎖)を実施した結果、消費者と消費者にモノやサービスを売る企業の活動が萎縮。小売売上高や民間投資が圧迫される事態になった。不動産価格の下落も、家計の含み資産を損ないつつある」

     


    中国国家統計局が15日、7月の主要統計を発表した。前年同月と比べた増加率は工業生産が3.%、小売売上高が2.%だった。いずれも市場予想に反して、6月の伸びより縮まった。景気の停滞は、誰の目にも明らかだ。特に、小売売上高は惨憺たるものだ。平常時は8%前後の伸び率を維持していた。

     

    住宅ローンを払い続けても、肝心の住宅が手に入るか未確定という、「噓」のような本当の話が起こっている。不動産開発業者が、資金を流用してしまい建築を続けられないという、信じ難い話だ。多分、地方政府にせがまれて先行する土地購入費に化けたのであろう。中国では、メチャクチャな話がまかり通る世界である。こういう不安を取り除かなければならないが、中央政府は見て見ぬ振りをしている。

     


    (2)「
    中国では家計、企業の双方が多額の債務を背負っており、多くは消費や投資よりも恐らく今は借金返済に奔走している。だから利下げの効果は弱まるだろう。名目上の流動性は潤沢であっても、7月の企業向け人民元建て新規融資は前月比87%も減ってわずか2880億元(420億ドル)にとどまった。誰もが明日はもっと状況が悪くなると予想している中で、もはやどれだけ多く借りられるか、あるいは借金のコストに意味はない

     

    企業では、7月の新規資金需要が極端に落込んでいる。下線のように、中国経済はさらに悪化すると身構えている。金利が低下しても返済の当てがない借入れをするはずがない。最悪事態を迎えている。

     


    (3)「人民銀は依然として、「洪水のような刺激策」を発動するのを渋っている。政策担当者に言わせればそれは資産バブルと不良債権問題の元凶であり、一部の見積もりでは国内不良債権額は1兆5000億ドル超に達する。その点では実に公正な判断なのだが、現時点で政府が積極的に需要を下支えしないと、ほかにそれができる経済主体は存在しない」

     

    民間部門は、企業も個人も総崩れである。残る経済主体は政府である。と言っても、例のインフラ投資を増やすという「芸のない話」でなく最低限、家計の流動性を増やす方法を考えることだ。西側諸国が、パンデミック下で行なったような現金支給も考えるべきである。中国政府は、なぜかこれを避けている。目に見える形の財政赤字増大を忌避しているのだ。

     


    (4)「中国では通常、中央政府が景気刺激策を打ち出しても、実際の政策措置の大部分は地方政府と政策銀行、国有企業が実行するので、中央政府のバランスシートはきれいなままだ。中央政府の債務の対国内総生産(GDP)比が約20%で推移している半面、非金融セクター向け与信の対GDP比は300%近くまで切り上がっている。しかし今や多くの地方政府や国有企業は既に借金まみれであるばかりか、収入も減ってきているため、中央政府の景気刺激策代行者としては信頼が置けなくなった」

     

    中国政府は、見栄っ張りである。インフラ投資の資金は、中央政府が出さずに地方政府や国有企業に負担させている。これらは、すべて公的部門の債務として処理されるから、中央政府の財政だけ「健全」と判断されないのだ。こういう仕組みを知らないような無知なことを行なっている。

     

    (5)「中央政府が、景気刺激策の実行を「外注」すべきと考えている理由は幾つかある。シーフェアラーのニコラス・ボースト氏は、頻繁に必要となる国有企業救済という事態に備えてバランスシートをできるだけ健全に保っているのだと指摘する。とはいえ現時点で、中国共産党は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年よりも深刻な信用危機に直面しながら、それでも中央政府の財政赤字をより小幅にすることを目指し続けている」

     

    中央政府の財政赤字をより小幅に見せかけている理由は、中国共産党の正統性を国民に示したいのだろう。地方政府や国有企業に堪っている負債は、これら機関の「無能」と言う形で責任転嫁する下準備である。もう一つ考えられる理由は、戦争などの緊急事態に備えて、中央政府の赤字を減らしておく算段であろう。中国政府は、「戦争」を最大の目標にしているからだ。

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