今年、73歳になる習近平中国国家主席は、後継者も決めずに「猪突猛進」している。異論を封じ込め、側近で指導部を固めるため、かつてスターリンや毛沢東が用いたような独裁的な手法を駆使している。後継者を決めた途端に、権力の座が揺らぐという過去の実態から、習氏は14億人の国民の運命を一人で担って驀進を続ける。それが、吉と出るか凶と出るか。いずれ、歴史が判断を下すだろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月10日付)は、「習氏の独裁手法、スターリンと毛沢東に倣う」と題する記事を掲載した。
習氏は自らの側近を含む数十人の高官を粛清し、個人崇拝の拡大を主導し、絶対的な忠誠を求めてきた。目標は、中国の運命を長年にわたって自ら決定し、国力を拡大し、軍事力と経済力で米国に並ぶことだ。中国共産党の最高指導者として14年目を迎えた73歳の習氏は、毛沢東時代の後に一人支配体制への回帰を防ぐために設けられたルールを廃止してきた。
(1)「こうした強権的な手法にはリスクが伴う。議論を封じ、恐怖の雰囲気を醸成することで、習氏は政策立案をより恣意(しい)的なものにし、誤りを修正しにくくしている。また、明確な後継者計画がないため、スターリンや毛と同じ運命をたどるリスクも抱えている。両者とも在任中の死去が権力闘争を招き、最終的に彼らの政治的構想は崩壊した。スターリンと毛は、絶対的権力を固める過程でライバルを排除し、反対意見を封じた。どちらも大規模な粛清を主導し、数百万人の官僚・知識人・一般市民を投獄・強制労働・死に追いやった」
強権的手法は、一般的に政策の修正を阻むものだ。中国は今、この最も悪い面が出ている。習氏は、過去の経済政策も全て取り仕切ってきた。不動産バブル崩壊は、習氏の責任に帰せられる。習氏は、これを回避しており、何事もなかったように振舞っている。中国経済が、失速した根因はここにある。
(2)「毛は悲惨な文化大革命を発動し、熱狂的な若者を動員して反革命分子とされた人々を攻撃させ、暴力と社会的混乱を引き起こした。習氏はそのような狂信主義を避けつつも、毛時代以来見られなかった速度と規模で高官を粛清してきた。腐敗と政治的異論に関する絶え間ない摘発は、官僚に習氏への忠誠心を示すよう迫り、誰も習氏の権威を損なえないようにすることを目的としている」
習氏の絶え間ない摘発は、自己の権力を確立するための「日常行為」となっている。頭角を現す人物は、習氏の地位を脅かす危険があるとして粛清される。豊臣秀吉と同じ心境なのだろう。
(3)「習氏は2022年に党最高指導者として3期目を開始して以降、粛清を強化している。エリート集団である党政治局の現職委員3人を6カ月以内に相次いで失脚させた。この階級の粛清としては1976年以来最大規模だ。ほかに国防相や外相、農業農村相が解任されたほか、軍の司令官や地方指導者、金融規制当局者、国有企業幹部も同様の処分を受けた」
習氏が、人民解放軍の飽くなき粛清を続けている理由は、習氏への反抗心を抱かせないようにする「脅迫行為」だ。粛清を続けて、習氏の言いなりになる「腑(ふ)抜け」にさせたいのだろう。恐るべきことを始めたものである。
(4)「習氏は毛時代の慣行に倣い、自らが主宰する年次会議で政治局員に自己批判と相互批判を求め、習指導部への忠誠心を含む基準で各自の実績を審査している。共産主義指導者は「成功すれば成功するほど、敵は自分を恐れ、打倒しようと団結する。だからこそ、より多くの粛清が必要になる」。ソ連と毛時代の中国における権力闘争を研究してきたアメリカン大学の歴史家ジョセフ・トリジアン氏はこう述べた。「均衡点は存在しない。敵は次々と現れ続ける」。毛以来最長となる党指導者としての在任期間を誇る習氏は、2027年に党総書記として4期目(任期5年)を目指し、翌年には国家主席として続投する構えを見せている」
「自己批判と相互批判」は、組織から異分子を取り除くローラーのような役割をする。21世紀の今も、こういう暗黒時代の手法が使われていることに驚かざるを得ない。西側諸国にとって、この異質な国は警戒すべき存在であろう。
(5)「中国政府はかつて、5カ年計画の策定にあたって世界銀行や米経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏といった外国の機関や専門家に意見を求めていた。しかし習氏はそうした助言を拒んでいる。習氏は、計画策定プロセスも厳しく管理している。最新の5カ年計画では、信頼する代理人の李強首相により実務的な役割を与えた。米シンクタンク「アジア・ソサエティ政策研究所」の分析によると、習氏の顧問たちが計画を起草する際、下位の官僚や外部の専門家からの提案を受け入れることが減っている。その結果、習氏はこれまでのところ、経済に重くのしかかる持続的なデフレと戦うために消費を拡大する必要があることを示す兆候を無視し続けている」
習氏は、経済の専門家ではない。その習氏が、五カ年計画をリードしている。聞いただけで、身の毛のよだつ話だ。ジェット機が、技術未熟なパイロットの手で操縦されているようなものである。
(6)「習氏は、党員と政府職員の行動を細かく規定する規則と施行の広範なシステムを構築してきた。習政権は、毛後の歴代指導者をはるかに上回るペースで、職務と行動に関する党規則を制定または改定してきた。これらの規則を施行するため、習氏は党の最高内部監視機関である中央規律検査委員会(CCDI)に権限を与え、1億人の党員を精査し、その忠誠心を監視させている」
習氏の権力を支えているものは、人民解放軍とこの中央規律検査委員会である。党員を監視してコントロールしているのだ。こうやって、習氏の「終身国家主席」を演出し続けるのであろう。一番、不幸せなのは国民である。




