勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国政府は、大学でマルクス主義を専攻した学生の就職を後押している。企業側も、政府の要望に応えれば後々、便宜を受けられると期待し、採用しているという。一般学生には、超狭き門の就職地獄だが、マルクス・ボーイには「マルクス様々」という御利益を受けられるご時世だ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月29日付)は、「中国でマルクス主義専攻の大卒者に求人殺到」と題する記事を掲載した。

     

    中国の労働市場が近年で最悪の状況にあるなか、同国の大卒者は就職先を見つけるのに苦労している。しかし、マルクス主義の学位を持っていれば話は別だ。

     


    (1)「マルクス主義は、中国の支配的な思想であるにもかかわらず、過去何十年もの間、学生にはなじみが薄い専攻科目だった。しかし、習近平国家主席の下で復活を遂げつつある。今年、異例の3期目を目指す習氏は、中国共産党の幹部に「初心を忘れずに」と説いている。大卒者向け就職情報サイト「応届生」によると、今年は採用のピークである46月にマルクス主義の学位を条件にする求人が前年同期に比べて20%増加した。マルクス主義の専門家は、政府省庁から民間複合企業まで、様々な雇用主から引く手あまただ」

     

    中国は、マルクスの世界だ。150年も昔の学説にしがみつく。何とも不思議な感覚で政権運営している。凡そ、イノベーションと無縁のこの経済理論で、14億人の国民を食わせるというのだ。マルクスの伝道師は、マルクス専攻学生である。去年に比べて、求人は20%も増えている。引く手あまたという。

     


    (2)「アナリストらは、マルクス主義を学んだ大学卒業生に対する人気は習氏が進める思想教育の強化が影響していると説明する。中国は米国への対抗意識を強めており、ロシアのウクライナ侵攻から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応まで、米中両国は全く異なるアプローチをとっている。米ニューヨーク市立大学の夏明教授(政治学)は「マルクス主義専攻の目的は、国民全体を洗脳する思想警察を養成することだ」と指摘する」

     

    マルクス主義専攻生への求人増加は、習氏が進める思想教育の強化が影響しているという。身近に、「マルクスの先生」がいれば、マルクス主義の浸透に役立つという狙いからだ。

     


    (3)「河南省にある大学でマルクス主義を学ぶ3年間の修士課程のカリキュラムには「思想教育の原理と方法」 という単位が含まれるほか、学生たちは習氏の教育に関する演説について18時間学習する。習氏が2012年後半に政権を取るまでの30年間は1978年に鄧小平氏が打ち出した改革開放の時代で、思想として正しいかどうかよりも経済的な繁栄が重視され、マルクス主義の学科は苦戦を強いられた。しかし、習氏は「共同富裕(ともに豊かになる)」を重視する方針を打ち出して民間複合企業への規制を強化し、世界で最も不平等な社会の一つである中国において貧富の差を縮小し、思想をより厳しく取り締まる「新しい時代」を統治したい考えを表明している」

     

    「共同富裕」は、税制改革で実現できる。習氏は、それを避けてマルクス主義で押し通す計画である。これは、マルクスにとってはなはだ迷惑な話だ。マルクスは平等を説いている。それならば、富める者が税金を多く負担するのが筋である。習氏は、共産党員の負担を避けて、大衆に負担させようというマルクスの教えと逆のことを始めている。

     


    (4)「習政権は、国家資本主義体制下での労働者虐待についてマルクス主義による分析を使って厳しく批判する若者らを弾圧している。一方で、中国の共産主義体制がなぜ欧米より優れているかを一般国民に教育する上で重要な役割を担っている教師らを積極的に求めている。共産党が国家主席の任期を2期までとした制約を撤廃した18年、中国の教育省は各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求める通達を出した。それを受けてまもなく、マルクス主義教員の獲得競争が起こった。大学の「思想と政治」担当教員の数はその後の4年間で3分の2増えた」

     

    習氏の狙うマルクス主義は、空理空論の世界を目指す手段である。習氏の「終身皇帝」への布石でもある。誰も、習氏の国家主席3選に反対できないように細工を施す。それが、マルクス主義の布教であるのだ。各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求めている。中国は、これでますます西側世界と断絶しようとしている。

     


    (5)「マルクス主義の学位は不況に強いようだ。若者の失業率は現在18.4%と歴史的な高水準にあり、他の学科を専攻した大卒者の就職は厳しくなっている。しかし、「応届生」のサイトでマルクス主義の教師の募集要項をみると、給与や手当が従来人気のあった経営学などの専攻に追いついてきている。陝西省では都市労働者の平均年収は5万2000元(約106万円)だ。同省にある西安科技大学では、マルクス主義の博士号習得者には20万元の年俸に加えて2万元の契約金と無料の住居を提供している。「マルクス主義を専攻した学生にとって、今がゴールデンタイムだ 」と同大学のある関係者は語った」

     

    マルクス主義専攻生は、給与も桁違いに良くなる。まさにマルクス主義の伝道師の役割を担うのだ。

     

    (6)「中国の電子商取引(EC)最大手アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏や不動産大手中国恒大集団の創業者である許家印氏などテクノロジーや不動産の起業家に対する締め付けを受け、民間企業もマルクス主義を専攻した大卒者を採用し、共産党への忠誠をアピールしようとしている。上海に近い浙江省寧波で工作機械工場を経営するデビッド・トン氏は「党の考えを代弁する人が我が社で働いてくれるのはありがたい。政府からの信頼が高まるからだ」と語った」

     

    時代遅れのマルクス主義を広めて、一党独裁を確固たる制度へ育てる積もりだ。いずれ、中国経済破綻の際に、マルクス主義がヤリ玉に上げられる。それまでは、我が世の春を謳歌するのだろう。

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    中国は、中ロ枢軸を形成して欧米へ対抗する姿勢を見せたことから、NATO(北大西洋条約機構)が「体制上の挑戦国」と位置づけ、世界包囲網形成へ着手した。中国にとっては、経済的にも取引範囲を狭められることから、失うものの余りにも大きいことに愕然としているはずだ。

     

    主要7カ国(G7)首脳が、中国に対しロシアへの影響力を活用しロシアによるウクライナ侵攻を阻止するよう要請したことに対して、挑戦的な姿勢を取った。中国外務省の趙立堅報道官は、29日の定例会見で「G7は世界の人口の10%を占めるに過ぎず、世界を代表する権利も、自分たちの価値や基準を世界に適用すべきと考える権利もない」と述べたのだ。こういう傲慢な姿勢が、中国をジリジリと追い込んで行くだろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「NATO『中国は体制上の挑戦』、戦略概念で初言及」と題する記事を掲載した。

     

    北大西洋条約機構(NATO)は29日、今後10年の指針となる新たな「戦略概念」を採択するとともに、首脳宣言を発表した。NATOの戦略概念として初めて中国に言及。中国が「体制上の挑戦」を突きつけていると明記した。

     

    (1)「2010年に採択した戦略概念はロシアとの関係を「戦略的パートナーシップ」と呼ぶ一方、中国には触れていなかった。新しい戦略概念はロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義。ウクライナに侵攻し、NATOと対立を深める現状を反映した。中国について、核兵器の開発に加え偽情報を拡散したり、重要インフラ取得やサプライチェーン(供給網)を支配したりしようとしていると分析。宇宙やサイバー、北極海など海洋で、軍事的経済的な影響力を強めていると主張した。中ロが、ルールに基づく秩序を破壊しようとしていることは「我々の価値と利益に反している」と強調した」

     

    中国が、NATOから警戒される存在になった背景に、ロシアのウクライナ侵攻へ精神的な支援を送っていることがある。侵略行為を是認する中国は、自らも侵攻するであろうと疑われたのだ。

     


    中国海軍が北極海にまで出没する事態に、欧州各国も神経を尖らせている。さらに、一帯一路による途上国への債務漬けによって、担保として港を取り上げるなど大胆な振る舞いを始めている。これは、「第二のロシア」として領土拡張に動く前哨戦と見られたのだ。NATOは、中ロ枢軸として一括して警戒対象に加えた。

     

    中国が、受ける経済的打撃は極めて大きい。米中関係が悪化しているだけに、欧州とは良好な関係維持を願ってきた。その最後の望みを絶たれたのだ。中国は、技術的にもEUに大きく依存してきた。EU関係の悪化は打撃である。日本とはすでに溝が深まっている。中国は今後ますます、ロシアとの関係を深めて袋小路に嵌り込むのだろう。

     

    中国は歴史上、一度も覇権を求めたことがないと主張している。現実には、南シナ海の他国所有の島嶼を占領して軍事基地をつくっており、言行不一致の面が多多あるのだ。最近は、空母3隻態勢にして、「侵攻作戦」への準備に余念がない。先進国で、中国の発言に信頼を置く国はあるだろうか。

     


    (2)「ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、「中国の威圧的な政策は、我々の利益、安全、価値に挑んでいる」と戦略概念と同様の表現で訴えた。中ロの位置づけを大きく変えたことで、米欧の軍事同盟であるNATOは歴史的な転換点を迎えた。首脳会議には、日本などアジア太平洋の4カ国を招いた。戦略概念はインド太平洋地域の情勢が「欧州・大西洋に直接影響することを考えると、同地域は重要だ」として、対話と協力を深める方針を明記した」

     

    中国が、空母3隻態勢にしたことも警戒感を深めている、戦術的には、潜水艦とミサイルの好餌とされているが、軍事的弱小国には脅威であろう。中国は、余りにも無神経である。国内対策で軍事力を強化して「強い中国」を演出している。それが、対外的には危険な存在に映ってきたのだ。現実は「張り子の虎」だが、NATOは本物の虎と見たのだ。自業自得と言うべきだ。

     

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    中国は、人口増加だけをテコにして経済大国へのし上がった国である。これは、科学技術の発展を置き去りにした「模倣経済」のもたらしたものである。習氏は、国民に向かって根拠もなく「中華の夢」を煽った手前、欧米製のワクチンを導入できず、ゼロコロナ政策しか選択できない苦境に立たされている。

     

    『ブルームバーグ』(6月29日付)は、「習主席、ゼロコロナ政策は中国にとって最も経済的かつ効果的」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は6月28日、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策は中国にとって最も経済的かつ効果的であり、中国はコロナを根絶する目標を達成することができると表明した。

     

    (1)「国営新華社通信によると、習主席は最初のコロナ禍に見舞われた湖北省武漢市を同日訪れた。今回の発言で、中国がロックダウン(都市封鎖)や大規模検査を軸とするコロナ対応を撤回する計画がないことが明確になった。28日に渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方もあったが、習氏の発言はこうした期待に水を差すことになりそうだ」

     


    中国本土株の指標CSI300指数は29日、前日比1.5%安で終了した。28日は、渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方が広がり、前日比1%高で引けたものの帳消しになった。29日の香港市場では、中国のテクノロジー企業から成るハンセンテック指数が3.3%安で引け、悲観ムードに覆われている。中国経済の先行きの不安観を高めた結果である。

     

    コロナウイルスは、次々と新種が登場して感染力を高めている。中国製ワクチンでは、とうてい予防が不可能であり、米欧製ワクチン「mRNA」でなければ対抗不可能とされている。新種のコロナウイルスでも「mRNA」であれば、簡単に対抗可能とされている。こういう高度のワクチは、中国では製造できない状況が続いている。だから、ゼロコロナで都市封鎖して逃げ回っているだけだ。

     


    (2)「新華社によれば、習主席は「中国の人口基盤は大きい。『集団免疫』や『寝そべり』政策を採用すれば、その結果は想像を絶する」と説明。「一時的に経済発展に多少の影響があったとしても、高齢者や子供など人民の生命の安全や身体の健康を損ねるようなことがあってはならない」と述べた。また、中国の発展は独立性と自主性、安全性を高める必要があるとも指摘。科学技術の「命綱」は自国の手でしっかりと握り続けなければならないと言明した」

     

    習氏は、矛楯したことを言っている。「集団免疫」と「寝そべり」は無関係であり、これを並列しているところに習氏の恐怖感が期せずして現れている感じだ。

     


    「集団免疫」は、「ウイズコロナ」によって感染者が増えても、治療態勢が完備していればおのずから達成できる道である。中国では、治療態勢が不備であり、一度感染者が急増すれば、医療崩壊を起す危険性を高めるのだ。そこで、次善の策として感染者そのものを増やさないゼロコロナ対策を取らざるを得ない事情にある。苦し紛れの逃げ道であって、自慢すべきことでなく恥ずべきことなのだ。

     

    寝そべり」は、習氏の強引な政策に対して若者が絶望感のあまり、就職しない・結婚しないという形を変えた政府への抵抗運動である。習氏は、こういう表面的な現象だけを見ており、それが奥深いところで中国共産党への絶望感であることが分らないのであろう。「集団免疫」が実現できる社会環境であれば、「寝そべり」は生まれないのだ。

     

    習氏は、科学技術の「命綱」を自国の手でしっかりと握り続けなければならないと主張している。これも苦し紛れの発言だ。自国だけで有効なワクチンを開発できなければ、人命に関わるだけに米欧からの導入を躊躇してはならない。習氏は、自国ワクチンを自慢し過ぎて、今さら米欧製ワクチンを導入できないというジレンマに立たされている。それを、言葉巧みにカムフラージュしているだけだ。

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    中国が、3隻目の空母「福建」の進水式を行なった。実際に就役するのは数年後とみられている。空母は、「金食い虫」と言われるほど維持費に高い費用がかかる。そういう「高コスト」空母をさらに増やした理由はなにかだ。

     

    空母は、遠距離での戦闘に使われる。「移動する基地」と言われる理由のように、本国から遠く離れた場所での戦闘に不可欠である。だが、台湾は中国と「目と鼻」という至近距離である。空母を台湾侵攻作戦に使うとしても、相手国から潜水艦やミサイルで攻撃される危険性が極めて高くなる。そういうリスクを冒してまで、空母を建艦するのは別の目的とみられる。近隣国への威嚇用だ。潜水艦を持たない国には、中国の潜水艦は恐怖の的。中国は、そこへ付け入る計画であろう。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月27日付)は、「なぜ今どき空母?『ポスト米国』見据える中国の不可解な3隻目『福建』」と題する記事を掲載した。

     

    中国は6月17日、3隻目の航空母艦を進水させた(純国産としては2隻目)。真にグローバルな機動力を備えた軍事大国を目指す中国政府の決意を見せつけるものだが、そこにはアメリカの誇る世界最強の空母艦隊と対等に張り合いたいという願望も透けて見える。

     

    (1)「アメリカの軍事的優位を支えてきたのは海軍力であり、海軍力の要は空母艦隊だ。しかし今、中国は「うちのほうが巨大で高性能な空母を造れるぞ」と言いたいらしい。だが、まだ無理だ。「福建」と名付けられたこの空母(狭い海峡を隔てて台湾と向き合う省の名であるのが不気味だ)が、既存の2隻より高性能なのは確かだ。今までの2隻は小さく、艦載機の発進にはスキーのジャンプ台のように反り上がった甲板を使っていた。しかし福建には、アメリカの最新鋭空母ジェラルド・フォードと同様に電磁式カタパルトが採用されている」

     


    初めて電磁式カタパルト(艦載機押出し装置)を装備するが、大変に電力を消費する。そういう電力多消費のカタパルトが、通常動力の空母には不適当というのが軍事専門家の意見だ。台湾侵攻目的であれば、戦闘機は中国本土の基地から飛び立つ方が効率的である。中国の本当の狙いは何か、だ。

     

    (3)「福建は、原子力空母ではない。だから補給なしの航続距離は限られる。しかも進水したばかりで、実戦仕様にまで高めるには何年もかかる。一方でアメリカには福建級の空母がたくさんあり、どれも福建以上の戦闘能力を備えている。第2次大戦時のミッドウェー海戦のように、空母を中心とした艦隊の激突が21世紀に再現される可能性は低い。今や攻撃の主役は潜水艦や対艦ミサイルであり、空母はその標的になりやすい」

     

    中国空母が、台湾海峡で作戦行動するケースを考えると、その前に米国の原子力潜水艦攻撃で沈没させられているとみられる。中国海軍は、近代戦を戦った経験がゼロだ。米海軍は、世界の海軍で古い歴史と豊富な実戦経験がある。米中海戦で、中国海軍の劣勢は免れないとされる。米海軍の総合戦略は、中国の比でないのだ。

     


    (4)「そもそも冷戦終結後のアメリカが空母を実戦で使ったのは、海からの攻撃に無防備な国(イラクやリビア)に対してだけだ。中国の意図も同じだろう。中国は巨大空母を弱小国に対する威圧や懲罰に使いたいのであり、アメリカと戦うつもりではない。もちろん、現時点で中国が太平洋に空母艦隊を出そうとすれば、どこかでアメリカの安全保障ネットワークに引っ掛かる」

     

    中国は、ロシア軍の戦略を採用している。ロシア軍が、ウクライナ軍にてこずっていることから分るように、中国軍が米軍と戦えばその帰趨は明らか。日清戦争に次いで「二連敗」を喫しよう。

     


    (5)「アジア太平洋に張り巡らしたアメリカの安全保障ネットワークが、ほころんできたらどうか。現に中国は南シナ海で、ほとんど誰にも邪魔されずに人工島を造ってきた。
    つまり中国は、アジアにおけるアメリカの軍事的存在感が今よりも低下する時代を見据え、「アメリカ以後」のアジア太平洋で周辺国を威圧するために福建のような空母を必要としている。ただし、空母艦隊だけでアジアの海を支配するのは無理だ。太平洋は広い。いくら中国の軍事的リソースが豊富でもカバーし切れない」

     

    「ポスト・アメリカ」という想定は非現実的である。米中経済の比較では、中国が先に衰退過程へ入ることになる。人口動態から見て、中国の衰退は不可避なのだ。となると、中国が空母を建艦しても「お飾り」程度の役割しか果たさないであろう。周辺国への威嚇目的である。

     


    (6)「そもそも中国が力を入れてきたのは、自らが太平洋における覇を唱えるための戦力ではなく、アメリカの覇権を阻止し、後退させるための戦力だ。そのために対艦攻撃能力を向上させ、潜水艦をはじめ、超低空飛行ミサイルを搭載した航空機、小型の高速艇、航行中の船舶を標的にできる弾道ミサイルなどの配備を進めてきた。こうなると、米軍の艦艇も容易には中国の沿岸部に近づけない。中国が、軍事面でアジアの海洋大国になるのを全面的に阻止するのはコストもリスクも高すぎる。空母は中国のパワーの象徴ではあるが、だからといって、中国が必然的にアジア海域を支配するようになるとは限らないのだ

     

    中国海軍は、世界覇権を目指す戦略に基づくものでなく、米軍を中国沿岸部に近づけない目的としている。ならば、空母は不必要となろう。矛楯した戦術になるのだ。あわよくば、世界覇権を狙うという戦略の飛躍も隠されている。ここに、落し穴があるのだ。

     

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    中国の高利貸し手法による融資は、発展途上国の財政を悪化させている。こうした被害拡大を防ぐべく、G7(先進7ヶ国)が6000億ドルの融資で健全なインフラ投資を支援することになった。遅ればせながら、中国の野望を食止める防壁がまた一つ増える。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月28日付)は、「G7、中国の一帯一路に対抗し 途上国などに6千億ドル投資」と題する記事を掲載した。

     

    米国をはじめとする主要7カ国(G7)が中国の一帯一路事業に対抗し、開発途上国のインフラに6000億ドルを投資すると発表した」

     


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    「ドイツ南部バイエルン州エルマウ城で開かれている主要7カ国首脳会議に出席した米国のジョー・バイデン大統領は26日(現地時間)、米国がアジアやアフリカなどの途上国と中進国のインフラ開発に5年間2000億ドルを投入する計画だと明らかにした。さらに、他のG7構成国と欧州諸国まで含めた投資目標額は6000億ドルだとし、このような内容の「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」の発足を宣言した」

     

    今後5年間で、米国が2000億ドル、他のG7やEU(欧州連合)まで含めれば、合計6000億ドルのインフラ投資を支援する。中国の高利で担保を必要とする「商業的融資」と区別した、受益国本位のインフラ投資支援だ。中国は、自国利益の視点から融資先を選んでおり、受益国の利益を無視した融資である。

     


    (2)「バイデン大統領は、「途上国はパンデミックのようなグローバルな衝撃を乗り越えていくのに必要な基盤がない場合が多い」として、「これは単に人道主義の面で懸念すべきことではなく、我々皆の経済と安全保障の面での懸念事項だ」と述べた。また「我々は世界各地の主なインフラ投資で、各国とその市民により良い選択肢を提供している」とし、「透明性やパートナーシップ、労働と環境保護」を追求すると明らかにした。「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」は気候変化と清浄エネルギー▽安全で開放的なインターネットと情報システム▽性平等と公正性▽保健インフラの改善を4大軸としている」

     

    下線部で、融資の目的を明らかにしている。西側諸国にとっての安全保障に資するという視点が強調されている。これは同時に、中国が狙っている地域でもあり、先手を打って中国の進出を食止める狙いである。中国の「一帯一路」は、中国の国益確保が前面に出ている。

     


    (3)「ホワイトハウスは説明資料で、同事業の財源は政府資金と民間投資から作られると明らかにした。 ホワイトハウスは、米国機関が参加する初期事業として、アンゴラの太陽電池パネル事業やセネガルのワクチン製造施設、シンガポールから東アフリカを経てフランスにつながる通信網、インド農村投資ファンドなどを挙げた」

     

    具体的なプロジェクトも上げられている。中国が手がけられないようなプロジェクトが入っている。ワクチン製造施設や通信網、農村投資ファンドなど民間資金も導入した大掛かりなものが予想される。中国の一帯一路プロジェクトでは、橋・空港・トンネル・港湾・建物といった土木事業が主体である。これよりもはるかに高度な内容のプロジェクトが見込まれる。

     


    (4)「『グローバル・インフラ投資パートナーシップ』は、ユーラシア各地を鉄道や道路、港湾と5世代(5G)通信網で自国と連結する中国の一帯一路に対応する事業だ。米政府高官はブリーフィングで「(一帯一路事業として)支援を受け、いわゆる投資を受ける国々は数年後、借金がさらに増えたことに気づく」とし、「その投資というのはその国の人々に届かない」と主張した。また、米国などが参加した事業は負債を増やす方式にはならないとも述べた」

     

    中国の「債務漬け融資」は、実に巧妙な形で行なわれている。先ず政治家を賄賂で抱き込み、過剰な融資で返済不能にさせ、担保を取り上げる「悪徳商法」そのものだ。こういう悪例から見れば、今回の先進国のインフラ投資支援は、受益国本位の投資内容になっている。

     


    (5)「主要7カ国の首脳は同日、ウクライナへの支援やロシアへの圧迫強化策についても話し合った。参加国の首脳らは、ロシア産の金の輸入禁止も発表する予定だ。ロシアの最大輸入源である石油に価格上限制を適用することも議論されている。購買者がカルテルを形成し、ロシア産石油価格を制限しようという内容だ。ウクライナ戦争で悪化した食糧とエネルギー供給、インフレへの対処も主要テーマとなっている」

     

    G7首脳は27日、ロシアとの戦闘が続くウクライナへの支持を長期的に継続する姿勢を強調した。G7首脳は、将来の平和的解決はウクライナの決断次第との考えを示しつつ、ウクライナが緊急に必要とする軍装備品などの供給で協力を継続する方針を示したものだ。G7内では、ウクライナ支援について温度差のあることが伝えられていたが、最終的に「支援継続」「和平はウクライナの決めること」と決定した。ウクライナ側は、「この冬までに和平を考える」としている。

     

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