勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    a0070_000030_m
       

    高市首相の台湾問題発言に対して、中国が抗議をエスカレートさせている。中国人の訪日旅行や日本留学にブレーキを掛ける動きに出てきた。これら一連の動きの裏には、習近平国家主席が指示している。中国外務省は14日、孫偉東外務次官が前日夜に金杉憲治駐中国日本大使と「指示に従って会い」と明らかにしたことで習指示を示唆した。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月18日付)は、「中国が日本にけんかを売る理由」と題する記事を掲載した。

     

    中国の「戦狼」は新たな標的を見つけた。ロイター通信の報道によれば、彼らは下品な言葉を使って日本の高市早苗新首相を攻撃している。危機がエスカレートする中で、中国当局は中国人の観光客やビジネス関係者に対し、日本への渡航自粛を呼びかけた。また、日本に留学した場合に直面するとされるリスクについて注意喚起したほか、日本が領有権を主張する海域をパトロールするために沿岸警備艇を立て続けに派遣した。

     

    (1)「高市氏の「罪」は、国会での質問に対して正直かつ率直な答弁をしたことだ。これは重大な質問だ。2015年に成立した安全保障関連法では、「存立危機事態」は日本の集団的自衛権の行使につながり得る。高市氏の答弁は明快だった。その内容は、中国が武力で台湾を支配下に置こうとした場合は、安保関連法が想定する存立危機事態に当たり、そうした状況下では自衛隊が米国などの同盟国を支援することがあり得るというものだ。過去の日本の首相でこれほど明確に発言した者はいないが、日本の基本的な立場に実質的な変化はなかった。中国による台湾への攻撃は日本にとって大きな脅威となり得る」

     

    高市首相は、率直に中国による台湾への攻撃が日本にとって大きな脅威となり得ることを表明した。これは,事実である。

     

    (2)「中国の反応は、ある程度避けられないものだった。領有権を主張している国は、その主張が消えないようにするために、常に強く表明しておかなくてはならない。中国の見解では、台湾は中国の一つの省であり、中国が台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はない。日本が中国本土と台湾の紛争に介入する可能性を示唆するなら、中国は抗議せざるを得ない。さもなければ自らの主張に関して疑念があると認めることになる。同様に、米国が台湾に武器を売却するたびに、中国は自国の主張が真剣なものであり、いつかはそれを実現させる意向だということを示すために、異議を申し立てざるを得ない」

     

    中国の見解では、台湾が中国の一つの省である。中国が、台湾をどう扱おうと、他国に干渉する権利はないとしている。これは、自国本位であり武力使用は他国へ損害を与えるだけに許されない問題だ。平和裏に行われるならば、他国は介入不可能である。

     

    (3)「そうした反応が避けられなかったとしても、危機が避けられないというわけではなかった。中国は形式的な抗議をして、数週間で平常に戻ることもできただろう。中国政府は小さな騒動を大きな対立に変えることを決めた。それはなぜか。中国政府の動機をアウトサイダーが読み解くのは難しい可能性があるが、二つのことが起きているように思える」

     

    習近平氏は二つの理由から、高市発言をテコにして大騒動に持ち込む決意をしている。

     

    (4)「第一に、中国共産党には威圧という長い伝統がある。相手が国内の敵対勢力であろうと、扱いにくい外国政府であろうと、中国政府はまず直感的に相手を威圧したり、脅したりすることが多く、可能な場合には、相手に何かを強要する。これがうまくいった場合は、それでよい。うまくいかなかった場合は、いつでも、より対立的でないアプローチに変えられる」

     

    中国は、相手構わずに気にくわない国へは、直感的に相手を威圧する行動に出る。現状は、この第一回戦が始まった。

     

    (5)「第二に中国政府は、高市氏が自らの立場を完全に確立する前に同氏の力を損なうことを望んでいる。同氏は、タカ派だった安倍晋三元首相の政治手法の後継者だ。高市氏はまた、ややハト派の公明党から連立維持を拒否された後、タカ派のより小規模な日本維新の会を連立に引き入れることができた。中国は、高市氏に歯止めをかけなければ、日本の防衛力強化に向けたより多くの施策が打ち出されるのではないかと懸念している。共同通信は、高市政権が非核三原則の見直しを検討していると報じた。世界の歴史の中でも最速のペースで核武装強化を進めている中国は、近隣諸国が核兵器を持たない弱い国であってほしいと考えている」

     

    第二回戦は、日本国内に「反高市ムード」の高まることを狙っている。これは、日本国内世論へ手を突っ込む行為である。高市首相を支持する人も、そうでない人も中国の言動に賛成することは危険である。こういう言葉を使いたくないが、「利敵行為」という醜い結果になろう。

     

    (6)「中国は、高市氏の発言への同国の憤りが、日本国内の反高市勢力の活性化につながることを期待している。中国と関係を持つ企業が雇用の中心になっている地域の議員や、観光が主な収入源になっている地域の議員もいる。高市氏は、自らの手本となる人物としてマーガレット・サッチャー氏(元英首相)の名を挙げている。高市氏が元祖「鉄の女」サッチャー氏と同様に、タフで機知に富んだ鉄の女であることを期待したい」

     

    高市首相は、欧米との連携を強めるべきである。台湾の武力侵攻は、自由と民主主義に関わる重大問題である。

    あじさいのたまご
       

    李大統領は、「二枚舌外交」を鮮明にしてきた。これまで、「日米韓三カ国は安全保障の砦」としてきたが、にわかに始まった日中対立激化を背景にして、中国寄り姿勢を明らかにし始めた。尹前大統領は、北東アジア3ヶ国を「韓中日」ではなく「韓日中」と改めていた。理由は、「価値と自由の連帯を礎に米国・日本と一層緊密な協力がされている」(韓国大統領室関係者)と23年9月に説明していたものだ。

     

    李氏は、日米韓が「価値と自由の連帯を基礎にする」という基本を否定するもので、中国側へ身を寄せた方が利益になるという判断であろう。韓国の唱える日韓友好論などは、この程度のものだ。こうした転換の裏には、米国から原潜保有を認められることが韓国を強気にしているのであろう。米国には、次のような思惑がある。

     

    『ブルームバーグ』(11月17日付)は、「米海軍作戦部長、韓国原潜に中国海軍の抑止期待-地球規模の展開望む」と題する記事を掲載した。

     

    コードル米海軍作戦部長(海軍大将)は、米政府の承認を得て、韓国が新たに建造する原子力潜水艦について、主要同盟国の責任として、中国海軍力の急速な増強に対抗する目的で配備されることに期待を表明した。

     

    (1)「コードル海軍作戦部長は14日ソウルで、「潜水艦を中国の抑止に用いることは、その種の能力を巡る自然な期待と考える」と語った。原潜建造への米政府の同意を文書化したファクトシートがその数時間前に公表された。コードル氏は、「韓国にはそれらの潜水艦を世界規模で展開し、地域海軍から地球規模で活動する海軍に脱皮する責任が生じると私は思う」と述べた。原潜導入を長年目指してきた韓国にとって、米国による承認は大きな成果だが、コードル海軍大将の発言は、両国の立場の違いを浮き彫りにした。韓国側は原潜の目的は北朝鮮の抑止としている。事情に詳しい関係者によると、両国の間では潜水艦の建造場所や艦種、取引の一環として米国が無償で艦艇を受け取るかどうかを巡り意見が分かれているもようという」

     

    韓国は、日本海と黄海でのみ原潜を運用するとしているが、米海軍は「地球規模で活動する海軍に脱皮する責任が生じる」とダメ押しをしている。これは、韓国が原潜を持てば米海軍と行動を共にするという意味だ。韓国の思惑は100%崩れる。韓国は、中国へ身を寄せようとしていても、原潜を持つことで結果として、中国へ弓を引く形になろう。大変な思惑違いになってきた。

     

    『朝鮮日報』(11月17日付)は、「尹政権時代が使用した『韓日中』表記、李在明政権は『韓中日』で統一…中国に配慮か」と題する記事を掲載した。

     

    北東アジア3カ国の表記順序を「韓中日(韓国・中国・日本)」に統一することを李在明政権が決めた。尹錫悦前政権では「韓日中」と「韓中日」が混用されていた。

     

    (2)「韓国大統領室関係者は16日、「北東アジア3カ国の表記順序を韓中日に正式に統一する」とした上で「以前から韓中日だったので無用な混乱をなくすためだ」と説明した。尹錫悦前政権は発足直後「韓中日」としていたが、2023年9月のASEAN(東南アジア諸国連合)サミットから「韓日中」に変更した。その背景について尹錫悦前政権の関係者は当時「韓米日協力が進展しているため、自由民主主義の価値を共有する日本を前にする」と説明していた」

     

    韓中日は、明らかに韓国が共産主義国家を民主主義国の日本よりも重視するという意味であろう。あえて、前政権の呼称を変えたのは、中国重視という外交路線を示している。

     

    (3)「李在明政権による「韓中日」への統一は中国に配慮するためとみられる。特に14日に発表された米国との関税・安全保障に関するファクトシートに「台湾海峡の平和と安定の維持」など中国けん制と受け取られかねない文言が記載されたことも影響したようだ。中国は、日本の高市早苗首相によるいわゆる「有事に台湾海峡介入」という趣旨の発言に強く反発している」

     

    韓国が,原潜を持つこと自体が米国の中国包囲網へ加わるという意味である。それを頑ななに否定しているのは、韓国の真意がどこにあるか疑わしい。明らかなことは、最終的に日本へ対抗するという意思表示であろう。韓国が、中国包囲網に参加しないのは、原潜を持って日本へ対抗しようという狙いがあるからだ。

     

    caedf955

       

    中国の10月固定資産投資が、前年同月比約11%もの急減になった。過剰生産に根を挙げた企業が、ついに設備投資を諦めたのか。あるいは、地方政府が財源難でインフラ投資を手控えているのか不明である。いずれにしても、GDPの42%(2023年)を占める総資本形成に異変が起こっている。仮に、実勢悪を示すものであれば、今後の中国経済は経済成長率が急低下する公算が強まるであろう。最終的には、今少し様子を見る必要があろう。

     

    『ブルームバーグ』(11月17日付)は、「中国、異例の投資急減-他の指標と整合性欠き実体経済見えず」と題する記事を掲載した。

     

    中国の投資が急激に落ち込んでいる。14日発表の公式統計に基づくと、10月の固定資産投資は前年同月比で11%余り減少したと推計され、新型コロナウイルス流行初期の2020年以来最悪の落ち込みとなった。国家統計局は固定資産投資について、年初来の累計のみを公表しており、月次データは開示していない。

     

    (1)「このまま投資がさらに急減すれば、中国の国内総生産(GDP)のほぼ半分を占める活動が揺らぎ、輸出減速に苦しむ経済全体への下振れリスクを高めかねない。それにもかかわらず、エコノミストらはこの異例の投資急減を他の経済指標と整合的に説明できず、原因を把握しかねている。7月から始まった顕著な固定資産投資減少は、現時点では成長率を大きく押し下げる要因にはなっていない。別の投資指標である総資本形成は、79月(第3四半期)GDP成長率の約2割を押し上げた」

     

    顕著な固定資産投資減少は、この7月から始まっているが、GDP成長率には表れていない。この点が、「なぜか」と疑問を呼んでいる。事実は一つで、固定資産投資が減っている点だ。増えてはいないのだ。

     

    (2)「スタンダードチャータードの丁爽チーフエコノミスト(大中華圏・北アジア担当)は「投資減少には幾つか説明できる理由があるが、ここまで落ち込んだ理由は理解しがたい」と述べ、投資の重石は10~12月(第4四半期)にさらに大きくなり、「GDP成長鈍化の最も際立つ要因になる」と警告した。

     

    固定資産投資の急減が事実であれば、今後のGDP低下要因となるのは確実である。

     

    (3)「興味深いのは、投資の落ち込みが政府による反「内巻」キャンペーンの開始時期とほぼ一致している点だ。内巻とは、過剰な生産能力が激しい競争を引き起こし、企業の利益をむしばんでいく状況だ。反内巻政策は産業全体の過剰生産を抑える狙いがあるが、具体的な投資や生産能力の抑制目標は公表されておらず、その影響度は測りにくい。産業投資の抑制は過剰供給を抑える一方で、景気刺激策がない限り雇用や家計所得を圧迫する恐れもある」

     

    興味深いのは、投資の落ち込みが政府による反「内巻」キャンペーンの開始時期とほぼ一致している点と指摘されている。となれば、固定資産投資の数字を操作し、地方政府が意図的に「減らした」とみられる。

     

    (4)「国家統計局によれば、固定資産投資は物価下落に押し下げられたが、総資本形成は価格調整後の成長を反映している。統計局はブルームバーグ・ニュースに対し書面で、この2つのデータは対象範囲が異なり、固定資産投資には土地購入費や中古設備の取得費など、総資本形成に含まれない項目も入っていると伝えた」

     

    国家統計局は、固定資産投資が企業報告の「生データ」という位置づけだ。GDPの総資本形成と概念が異なるとしている。それ故、固定資産投資の急減をGDP成長率へ直結させることは、「正しくない」という指摘である。これも、一理ある説明だ。日本でもよくある例だ。

     

    (5)「ギャブカル・ドラゴノミクスの中国調査ディレクター、アンドリュー・バトソン氏は、実際の企業投資はすでに鈍化していて、今回の投資急減は実体経済へのショックではなく、報告方法の変更を反映したものかもしれないと分析している。不動産投資の悪化に加え、地方政府が隠れ債務返済や企業への未払い金の清算を優先したことで、インフラ投資も減速。さらに製造業投資の年初来伸び率は、5月時点の9%近くから10月には2.%まで急低下した。  一方、減速の兆しがほとんど見られない反内巻政策の対象となった業種もある。例えば自動車業界では投資が18%近く急増した」

     

    固定資産投資の急減の真相は、今のところ不明である。ただ、減っていることは事実であり、これが、中国経済のGDP減速へ反映されることは疑いない。落勢を強めているのだ。

     

     

     

    a0960_005041_m
       


    斜陽化の広東省成長率

    BYD成長も食い潰す

    AIやロボットも限界

    30年代1.7%成長へ

     

    中国経済は今後、どのような方向を歩むのか。世界中が注目している。肝心の中国政府自体が、確たる方針の下で進んでいるとはみえないからだ。権威主義政権を維持するには、絶えず経済成長率を高めなければ国民の信頼を失うという「脅迫観念」に苛まされている。これが、景気即効性の大きいインフラ投資や設備投資を強行させてきた理由である。だが、ここに大きな落とし穴が控えている。個人消費を犠牲にするという罠にはまったのだ。現在の中国経済が、方向感覚を失っているのは、この罠によるものである。

     

    投資優先による消費軽視の経済が、中国では改革開放(1978年)以降、実に50年弱も続いている。これが、もたらした投資と消費の壮大なギャップは、簡単に埋まるものではない。ましてや、習近平政権は15次5カ年計画(2026~30年)でもこれを継続の方針だ。言葉の上では、国民生活の充実などと言ってはいるが、「新質生産力」(AIやロボットなど)の育成を前面に掲げている。人口高齢化にともなう社会福祉重視などは「付け足し」にすぎないのだ。

     

    習近平氏が、自らの権力基盤を守るには、是が非でも経済成長率を引上げるほかない。それは、権威主義政治を維持するには絶対不可欠の手段である。まさに、中国共産党は「矛盾の再生産」の上に成り立っているひ弱な政権である。

     

    中国経済の矛盾を一目で理解するには、中国最大の省である広東省の経済状況を観察することがもっとも手短な方法である。広東省の域内経済(GRP)は、中国GDPの10.4%(2024年)を占めており、過去36年間1位を占めきた。省内には、広州市や深セン市を擁する。自動車の広州に対して、ハイテクの深センという組み合わせだ。こうして、中国経済のエンジンが、広東省であると言って差し支えない状況にある。

     

    一方、不動産バブルの原点も広東省である。中国恒大集団は、派手な不動産ビジネスを展開したが、資金繰りが続かずに「自滅」する形となった。恒大のほかに、碧桂園や万科企業という中国不動産業界を牛耳った企業も広東省が出自。今や「気息奄々」状態へ追い込まれている。バブルの発祥地だけに、その後の落ち込みは他省を上回る深手を負っている。これが、広東省経済に大きな後遺症を残しているのだ。25年上半期の東莞市(伝統産業の主産地)では、住宅価格が前年同期比58.8%も急落したほどである。

     

    これをみれば分る通り、広東省は「二つの顔」を持っている。製造業と不動産の「二頭馬車」で、中国経済を牽引してきた。だが、不動産は自滅した形であり、その後遺症によって広東省経済に深い傷跡を残している。こうして、広東省は完全に中国経済の「縮図」になった。広東省経済を分析すれば、中国の未来も解けるのである。

     

    斜陽化の広東省成長率

    ここで、広東省の域内経済(GRP)成長率と中国全体のGDP成長率の推移を見ておきたい。(表省略)

     

    中国GDPと広東省GRPの成長率を比較すると、2015~19年までは広東省が上回っている。だが、21年以降は中国GDPが上回って逆転した。理由は、不動産バブルが広東省GRPを押上げ、21年以降は不動産バブル崩壊が逆転させたことだ。広東省経済は、不動産バブルの「光と影」を100%反映している。バブル崩壊の影響が今後、強く出るであろうことを予測させるに十分だ。

     

    次は、製造業へ視点を移しておきたい。

     

    製造業付加価値は、先進製造業と伝統産業(非先進型)に分けると、24年で先進製造業は約56.7%を占めている。業種は、電子・電機、自動車、ロボット、集積回路、スマホ、新エネ車などだ。先進製造業の比率が6割弱にも達したことは、広東省が全国でも最も早く「製造業の高度化」に成功しつつある地域であることを示している。

     

    広東省のハイテク企業は、約7万5000社を数えており、1兆元(約21兆円)規模の産業クラスターが9つも形成されている。有名企業名を挙げると、ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)の通信機器、BYD(比亜迪)やOPPO (歩歩高)のEV、DJI(大疆創新)のドローンなどだ。いずれも、深センの技術革新と広州の製造基盤が合わさり、世界市場に向けて先端製品を輸出している。

     

    伝統産業の付加価値は、24年で製造業の43.3%である。業種は、繊維、家具、玩具、一般家電(扇風機など)、食品加工、建材など。地元経済の雇用維持に大きな役割を果している。有名企業は、繊維・アパレルのYISHION(以純)や南海繊維集団、陶磁器の冠珠陶瓷(GUANZHU Ceramics)、家具の紅蘋果家具(Red Apple)などだ。いずれも,輸出でブランド名が知られている。

     

    BYD成長も食い潰す

    以上で、広東省製造業の先進製造業と伝統製造業の大まかな分類と輸出状況をみてきた。問題は、広東省がファーウェイやBYDという世界的に有名な企業を抱えながら、最近の広東省GRP伸び率が全国平均を下回っている点だ。つまり、先進製造業がどれだけ成長力を付けても、広東省GRPを押上げられずに深い溝に落込んでいる現実を知ることが極めて重要である。

     

    習近平氏は、「新質生産力」と称して15次5カ年計画で、ロボットやAI(人工知能)の開発に力を注ぐことで、中国経済を浮揚させられると信じている。だが、広東省経済をみれば分るように、中国は不動産バブル崩壊という大津波によって飲み込まれているのだ。この津波跡の「ドロ沼」を片付けない限り、中国経済は浮揚できないことを広東省経済がものの見事に証明している。習氏は、この現実を直視しなければならないのだ。(つづく)

     

    この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。



    https://www.mag2.com/m/0001684526



     

    a0070_000030_m
       

    中国が,高市発言へ反発し例によって日本への威嚇を始めた。中国海軍艦艇3隻が先頃、日本の大隅海峡を通過し武力示威を行った。日清戦争直前、清国は朝鮮半島をめぐって日本へ圧力を掛けるべく、英国から最新鋭艦2隻を購入し、長崎まで回航させて威力を誇示した。その主旨は、今回と同じだ。ちなみに、清国の前記2戦艦は、日清会戦で1隻は自沈、もう1隻が日本海軍に捕獲された。中国は、こういう苦い経験を持っているのだ。それにもかかわらず、同じ振舞をしている。

     

    日本防衛省は13日、中国海軍055型駆逐艦を含む艦艇3隻が12日に鹿児島県南側海域を通り大隅海峡を通過して太平洋に移動したと発表した。香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』は11日にも同一航路で中国軍艦が移動したと報道した。防衛省によると、最初に通過した「鞍山」は排水量1万トンを超える中国の最新鋭055型駆逐艦で、現在8隻が実戦配備されている。続けて054型ミサイルフリゲートと903型補給艦が同一経路で九州南部海域を2度通過したことが確認された。以上は、『中央日報』(11月16日付)が報じた。中国は、日本へ圧力を掛けている積もりなのだろう。

     

    『レコードチャイナ』(11月16日付)は、「中国は日本への実質的対抗措置の準備ができている」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今年は中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年に当たります。このような背景下で、日本の高市早苗首相による一連の誤った言論は実に悪質なものとされています。これに対して、中国は、先日の日本側に「内政干渉を直ちにやめるよう」求めるから、「さもなければ、日本は一切の結果を負わなければならない」へと姿勢の変化を見せています。その変化は、実質的な対日対抗措置の準備ができていることを意味しています」

     

    中国は、実質的な対日対抗措置の準備ができていると言い放っている。思わせぶりな言い方である。

     

    (2)「南開大学日本研究院の専門家、丁諾舟氏は、「『一切の結果』とは国際法と国際慣例に合致するあらゆる行動を指している。まずは対抗措置について、中国は台湾に関連する問題において、これまでに十分な対抗措置の経験を積み重ねてきた。外交部の既存の対抗措置リストの約8割のケースが台湾に絡む問題で、その中には日本の政治家も少なくない。必要な場合、中国はいつでも類似の措置を取ることができる」と紹介しました」

     

    中国は、日本の政治家を入国禁止措置にするということなのだろ。米国務長官ルビオ氏も入国禁止措置を受けている身だが、外交業務には無関係だ。入国禁止などと言うのはどれだけ効果があるのか。

     

    (3)「また、丁氏によると、次の段階として、日本との経済・外交・軍事などの政府間交流を一時的に停止することも挙げられます。中国はこれまでに「一切の結果」という表現を使った場合、実際にいくつかの手段を用いたこともあります。中国は日本にとって最大の貿易相手国で、データによると、日本では多くの商品が中国からの輸入に「高度に依存」しています」

     

    中国は、レアアースの禁輸措置を言い出す積もりなのだろう。日本は、中国へ半導体素材や高速鉄道車両のバネやベアリングを禁輸措置にすれば、半導体生産や高速鉄道運行に大きな障害が出るはずだ。

     

    (4)「外交部と在日本中国大使館・領事館は11月14日夜、中国人に日本への渡航自粛を呼びかける勧告を発出しました。日本政府の誤った言動により、中日間の人的往来と交流の雰囲気が悪化しているためです。中国が外交ルートを通じて正式にこうした注意喚起を発出したことは、関連する状況が実質的な脅威につながると公式に認定されたことを意味しています。これこそが、日本政府の誤った言動が日本社会にマイナス波及効果をもたらしている具体的な表れだとみられています」

     

    台湾海峡で騒乱が起これば、日本経済へ多大な影響が出る。日本は、台湾防衛に協力するのでなく、中国軍から受ける被害を防ぐ目的で行動する権利を持つのだ。中国は、国際法上の公海である台湾海峡を封鎖する権利がない。中国は、こういう根源的な問題を抱えている以上、高市発言を非難する拠り所はないのだ。中国は、南シナ海の不法占拠など多くの国際法上の違反を冒している。日本非難もその一つとなろう。

    このページのトップヘ