中国の25年GDP成長率は5.0%と、政府目標の「5%前後」を達成した形である。立役者は、輸出の急増である。トランプ政権復帰を見込んで、駆け込み輸出が増えた結果である。トランプ氏は、「中国へ最大60%関税をかける」と発言しただけに、これを忌避するために輸出を繰上げたものだ。
中国税関総署が13日発表した2024年の貿易黒字は前年比21%増の9920億ドル(約156兆30000億円)。輸出が過去最高を記録する一方、輸入が伸び悩んだことが背景にある。輸出は昨年、ほぼ毎月増加し、年間ベースで新型コロナウイルス流行期の22年に付けた従来の最高記録を上回った。長引く住宅危機と消費低迷で苦戦している中国経済が、力強い外需によって支えられた。25年は、こうした輸出下支えが「トランプ・リスク」にさらされている。
『ブルームバーグ』(1月17日付け)は、「中国経済、25年は米追加関税が成長率の脅威にー昨年の目標達成でも」と題する記事を掲載した。
中国の2024年のGDP成長率は5%と、5%前後に設定されていた政府目標を達成した。当局が昨年後半に講じた土壇場での刺激策に加え、堅調だった輸出の後押しで景気が押し上げられた。だが、トランプ次期米大統領は対中関税を引き上げる考えを示唆しており、中国経済にとって主要な成長のけん引役である輸出の勢いが奪われる恐れもある。
(1)「17日発表された24年のGDPは前年比5%増加。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値(4.9%増)をやや上回った。習近平国家主席は昨年末に24年のGDP成長率目標を達成するとの見通しを示していた。昨年10~12月のGDPは前年同期比5.4%増と、6四半期ぶりの高い伸び。市場予想の5%増を上回った。前期比では1.6%増と回復ぶりが顕著で、伸び率としては23年1~3月以来の大きさだった」
昨年10~12月のGDPが、前年同期比5.4%増と6四半期ぶりの高い伸びをみせたのは、輸出の駆け込み需要であろう。昨年12月の輸出は、前年同月比で約11%増の3360億ドルと、月間ベースで21年12月に次ぐ過去2番目の高水準を記録した。
(2)「BNPパリバの中国担当チーフエコノミスト、ジャクリーン・ロン氏は、「昨年の中国経済にとって最大の明るい材料は輸出で、特に価格要因を除くと非常に堅調だった」と指摘。「これは今年最大の問題が米国の関税になることも意味する」と話す。トランプ次期米政権の発足を控え、共産党指導部は今年に金融緩和を進め、公的支出を拡大する方針を示している。トランプ次期大統領は中国製品に最大60%の関税を賦課する考えを示唆しており、対中貿易に大きな打撃となる可能性がある。こうした状況はグローバル企業に出荷の前倒しを促し、昨年の成長率を押し上げた」
企業は、トランプ氏の最大60%関税を回避すべく、繰上げ輸出を行った。これが、24年のGDP成長率を押上げたとみられる。
(3)「中国のGDP成長率目標は、これまでほとんどの場合で達成されており、これについては疑問視されることが多い。だが、昨年9月下旬からの当局の政策転換が長引く不動産不況や物価低迷による逆風に対抗するのに寄与したことを示唆する幅広いデータもある。24年12月の工業生産は前年同月比6.2%増と予想を上回り、昨年4月以来の高い伸びとなった。内需の動向はまちまちだ。失業率は昨年8月以来の上昇となり、不動産販売も引き続き低調だったが、消費は刺激策による後押しを受けたカテゴリーで持ち直しの兆しを見せた」
昨年12月の工業生産が、前年同月比6.2%増と予想を上回り、昨年4月以来の高い伸びとなった。これは、輸出急増に支えられている。
(4)「マッコーリー・グループの中国経済責任者、胡偉俊氏は「輸出受注の前倒しが確かに寄与したが、輸出だけでなく、消費にも改善が見られた。これは主に購入補助金による成果だ」と語る。モルガン・スタンレーの邢自強氏率いるエコノミストチームは、年間成長率の持ち直しの約60%は消費と製造業投資を促進する政策によるもので、残りは出荷の前倒しによるものだと推計した」
消費は、購入補助金が支えた。製造業投資増は、企業の過当競争を反映したもので、この跳ね返りが25年GDPを押下げるであろう。
(5)「消費の喚起を最優先課題とする中国当局が、年内に拡充する方針を示している消費財の下取りプログラムにとって、こうした改善は良い兆しとなる。ブルームバーグが公式データを基に計算したところ、中国の24年の名目GDP成長率は4.2%だった。20年以降で最も小さな伸びにとどまり、物価低迷による影響を反映した。GDPデフレーターは2年連続のマイナスとなった」
24年の名目GDP成長率は4.2%だった。20年以降で最も小さな伸びにとどまり、GDPデフレーターは2年連続のマイナスとなった。名目成長率が、実質成長率を下回る「名実逆転」が起こっている。要するに、デフレ経済下にあるのだ。