勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    a0960_008532_m
       

    中国経済は、3年間のパンデミック下の苦境に加え、本格化する不動産不況の重圧に喘いでいる。生活実感に近い名目GDPは、4~6月期に4.0%増で、実質成長率4.7%を下回る「名実逆転」が5四半期連続している。デフレ圧力の根強さを示しているのだ。こういう状況で、地方政府は住宅販売不振で土地売却収入が急減し、歳入に大きな穴が開いている。 

    そこで編み出したのが、市民への罰金取り立てである。この罰金が、市の歳入で3割も占める異常な事態が起こっている。強気を鳴らす習近平氏が、こういう事態を認識しているのか疑わしい。 

    『毎日新聞』(7月15日付)は、「中国の地方財政は罰金頼み? 税収の3割占める街に不満『悪循環だ』」と題する記事を掲載した。 

    中国経済の低迷が続く中、中国各地で罰金の徴収が増えている。背景にあるのが地方政府の深刻な財政難だ。「罰金の街」として有名になった東北部・遼寧省盤錦市を歩いてみた。

     

    (1)「郊外の高速鉄道の駅から乗車したタクシーの男性運転手(42)に罰金の話題を振ると、苦笑しながら「実は先月も交通違反で罰金200元を払ったばかりだ」と教えてくれた。客を拾うためUターンした場所が運悪く禁止区域だったという。市内に張り巡らされた監視カメラで撮影された写真とともに違反通知が届いた。「反論しても良いことは何もないからすぐに支払った。ただこの不景気の中で、罰金で一日の稼ぎの大半を持って行かれるのは本当に痛い」とため息をついた」 

    タクシー運転手は、Uターン禁止区域へ入ったために罰金200元(約4400円)を科された。1日の稼ぎの大半である。 

    (2)「盤錦市は、2021年に29億7672万元(約655億円)もの罰金を徴収して全国的にも有名になった。市の税収の27.9%にも相当する規模で、市民1人あたり年間約5万円の罰金を支払っている計算となる。渤海の最北端に面するこの都市は、石油を産出する「油城」として1970年代以降、急速に発展したが、90年代半ばをピークに産出量は減少。資源枯渇型都市から脱却するため産業転換を進めている最中に新型コロナウイルス禍が直撃した。現在も税収はコロナ前の水準に回復していない」 

    盤錦市は、2021年税収の27.9%を市民への罰金で補っている。典型的な「警察監視都市」である。

     

    (3)「罰金収入の割合が高いのは盤錦市だけではない。中国メディアの報道では黒竜江省七台河市、内モンゴル自治区オルドス市、広西チワン族自治区梧州市などは、盤錦市を超える割合の罰金収入とも指摘される。罰金による増収は市民の反発を招くため、データを公表していない都市も多く、詳細を確認することは難しい状況だが、国家統計局の統計で地方財政全体の推移を確認すると、税収は伸び悩んでいる一方で、罰金収入は右肩上がりとなっている。罰金収入が地方都市の重要な財源となっていることは明らかだ」 

    地方財政の歳入は、伸び悩んでいる。だが、罰金収入は右肩上がりで重要な財源になっている。哀しい現実だ。タコが自分の足を食っているような現象である。 

    (4)「中国では3年間のゼロコロナ政策により防疫コストがかさみ、多くの地方政府の財政状況が悪化した。そこを不動産不況が直撃した。地方政府にとって財源の柱の一つだった土地使用権の売却収入が激減。景気低迷により税収全体も減っている。そのため地方政府が企業に対して数十年前の未納税を請求するといったケースも相次いでいる。中国政法大財税法研究センターの施正文主任は経済紙『第一財経』の取材に「近年は地方財政収支の矛盾が拡大し、一部の地域では『増収のための罰金』『利益追求のための罰金』となっている」と指摘する」 

    地方政府は、「増収のための罰金」や「利益追求のための罰金」という世も末のことを始めている。こういう不条理の積み重ねが、政権への信頼度を低めている。

     

    (5)「実際に中国国内のSNS(ネット交流サービス)では、「増収のための罰金」と思われるケースが話題になっている。「知人から買い取ったセロリを転売して14元(約300円)の利益を得た農家に対して地方政府が残留農薬を理由に10万元(約220万円)の罰金を言い渡した」「耳かき店を無認可で営業したとして22万元(約480万円)の罰金を命じた」といった事例だ。これに対しては、SNS上でも「罰金が高すぎる」「職権の乱用だ」などと当局の対応を批判する声が相次いだ」 

    下線部は、地方政府が常識を疑う振舞をしている。これは、間違えば「革命への導火線」になり得る事態だ。 

    (6)「中央政府も、罰金に対する市民の不満については懸念を深めているようだ。今年2月、国務院(政府)は「罰金の決定は国民の感情を十分に考慮し、法的原則に準拠している必要がある」などと通知。最高検も今月8日、「高額な罰金を科すことは法律の精神に合致せず、行政処罰は『過重罰』を避けなければならない」とする見解を示し、過度な罰金の徴収を控えるよう改めて指示した。しかし、これが抜本的な解決につながるか不透明な状況だ」 

    中央政府も、「罰金問題」へ頭を悩ませている。地方政府への財源移譲を増やすしか、問題は解決しないであろう。もう一つ、内需回復への政策転換である。

     

     

     

    a0960_008417_m
       


    中国の住宅価格は、6月も下落し続けている。政府は、小出しの対策を打っているが、全く需要増に結びつかない状況だ。6月の小売売上高は、前年同月比2%増と落込んでいる。市場予想の3.4%増をあざけわらうような状態だ。消費の中核である中産階級が、長引く不況で打撃を受けている影響である。 

    数字を見ているだけでは、消費不況の実態は分らない。近年、人口が急増した四川省成都市では、どのような状況であるか。成都の人口は、2023年末時点で2140万人。この20年で倍増し、首都・北京の2185万人とほぼ肩を並べている。その急成長する成都の現状のレポートである。 

    『毎日新聞』(7月15日付)は、「人影まばら、閉店目立つ商業施設 中国経済のけん引役 成都の“異変”」と題する記事を掲載した。 

    中国の景況感が依然としてさえない。背景にあるのが、これまで経済成長をけん引してきた個人消費の低迷だ。中国でも指折りの消費都市として知られる四川省成都市で実態を探った。市中心部にある繁華街「春熙路」には大型商業施設が集積し、火鍋など四川料理の店や露店などが立ち並ぶ。週末の夜に訪ねると歩道は若者や親子連れ、観光客などであふれていた。

     

    (1)「中国の人口が22年から減少に転じる中、周辺地域からの人口流入が今なお続き、中国を象徴する消費地とされる。しかし、成都といえど、国内消費の低迷と無縁ではいられない。春熙路に面する大型施設内では、あちらこちらで「異変」が生じていた。ショッピングモール「尚都広場」では、婦人服店が並ぶ13階に客はほとんどおらず、閉鎖した店舗も目立つ。10階を超えるビルの4階以上は照明が消され、エスカレーターも止められていた。春熙路にあった伊勢丹とイトーヨーカ堂の店舗はいずれも22年末に閉店し、現在は現地資本の商業施設となっているが、やはり人影はまばらだ」 

    人口増加中の成都市の有力モールが、超閑散状態に追込まれている。10階を超えるビルの4階以上は照明が消され、エスカレーターも止めるほどの消費不振だ。習近平氏の耳には入らない情報であろう。 

    (2)「春熙路以外の大型施設にも足を運んだ。市の南部に22年に開業したショッピングモール「成都SKP」は欧州の高級ブランド店が集積する中国屈指の高級モールと話題になったが、今は閑古鳥が鳴く。なぜか。市内の商業関係者は「飲食店はにぎわっても、モノが売れない。成都は他地域より消費が旺盛な地域なのに、節約志向が年々強まっている」と打ち明ける。「値下げセールで客数が一時的に増えても、イベントが終われば厳しくなる。消費が良くなる気配が見えない」と指摘する」 

    値下げセールで一時的に客数が増えても、イベントが終われば減る。かつての日本が喫した苦杯である。

     

    (3)「成都では23年末以降、新たに4カ所の大型商業施設がオープンした。過去の建設計画を止められない当局や民間の悪癖が過当競争に拍車をかけている状況だ。春熙路の商業関係者は「地元政府は大型施設の閉鎖を嫌う。無理をして営業している施設は多い」と吐き捨てるように言った。消費低迷の傷は確実に広がっている」 

    計画経済の弱点は、市場動向にお構えなく当初計画を推進することだ。過剰投資が分っていても止められないのだ。 

    (4)「中国の消費が低迷している元凶は、不動産不況の長期化にある。右肩上がりだった住宅価格が急落したことで、資産価格上昇に浮かれていた消費者心理が一気に冷え込んだ。中国当局は5月中旬、地方政府が売れ残った住宅在庫を買い取るなどの新たな不動産不況対策を発表した。成都市も4月末、住宅購入制限を撤廃し、不動産市場のテコ入れを図るが、目に見えた効果は上がっていないのが実情だ」 

    消費低迷の原因が、不動産不況にあることは自明である。だが、習氏は断固として救済する姿勢をみせずにいる。バブルを起こしたのは、不動産開発業者という認識を変えないのだ。だから、財政支援をしないというスタンスである。本音は、財政赤字の拡大で習氏の統治能力を問われることを恐れているのだろう。

     

    (5)「不動産仲介業者のサイトを見ると、成都市南部の新築マンション価格は1平方メートル当たり2万4000元(約48万円)前後。しかし、成都SKPに近いマンション展示場を訪れると、男性営業員が「以前より70万元値引きした部屋があります」と耳打ちした。展示場を出ると、別の不動産会社の女性営業員が近づいてきて「うちは1平方メートルあたり1万7000元。お得だよ」と勧誘してきた。展示場の来場者は少なくないが、マンションの「安売り」でつなぎとめているのが実態のようだ」 

    マンションは、投売りしても買い手がつかない状態だ。価格が、安定しないから「底値」を確認できない結果である。 

    (6)「平均可処分所得は23年4~6月期以降、前年同期比6%前後で増え続けている。成長率を上回る高い所得増を実現していることになる。ただ、中国人民銀行(中央銀行)が四半期ごとに行う預金者2万人を対象にしたアンケート調査の結果は正反対だ。23年4~6月期以降を見ると、収入が「増えた」との回答より「減った」との回答が多い。24年1~4月期の個人所得税の税収も、前年同期比7%減に沈む。国際金融筋は「可処分所得が増えているのは低所得者が中心。実際には消費の中心となる中間層以上の所得環境は厳しい状況だ」と分析する」 

    中国では、広範囲に賃下げが行われている。銀行マンは5割削減が普通である。他産業も同様だ。中間層以上が,長期不況の被害者である。

    テイカカズラ
       

    中国国家統計局は、4~6月期のGDP統計を発表した。前年同期比で5%を割り込み4.7%成長であった。今回は、記者会見を開かずにWebで一方的に発表することになったが、理由を説明しなかった。15日から「3中全会」が開催されるので、記者会見で中国経済の不振ぶりを質問されることを忌避したのだろう。都合の悪いことには、「口を閉ざす」ということだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月15日付)は、「中国GDP4.7%増、46月実質 生産・輸出がけん引」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国国家統計局が15日発表した2024年4〜6月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.%増えた。13月の5.%増より伸びは縮小した。生産や輸出が全体をけん引した。46月の前年同期比増加率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予測の平均(5.%)を下回った。季節要因をならした前期比の伸び率は0.%と、13月(1.%)から鈍化した。

     

    4~6月期は、前年同期比4.7%増で目標の「5%前後」を下回った。前期比では、0.7%増である。これは、年率換算で2.83%になる。西側諸国の発表するGDP成長率は、前期比の年率換算である。この成長率が3%を割ったことは、中国経済が不動産バブル崩壊後の需要喪失に直面していることを示している。

     

    (2)「国家統計局は同日、GDPの発表に際して定例となっている記者会見を開かなかった。統計データをホームページ上でのみ公表した。理由は説明していないが、中国共産党が15日から北京で開く党の重要会議である第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が影響した可能性がある」

     

    現下の経済状況は、まさに「急減速」状態になっている。これにもかかわらず、3中全会では「中国式現代化の実践」などと悠長なことを言っていられるだろうか。足元の経済的な困難事態を放置して、将来展望を議論しても説得力はないのだ。景気停滞の主因は、不動産バブル崩壊の処理に有効な策を講じていないことだ。不安心理が充満している。

     

    『ブルームバーグ』(7月15日付)は、「中国の住宅価格、6月も下落 最近の不動産支援策は改善に寄与せず」と題する記事を掲載した。

     

    中国の住宅価格は6月も下落し、デベロッパーや経済に打撃を与えている不動産不況を食い止めることが政策担当者にとっての課題であることが浮き彫りになった。

     

    (3)「国家統計局が15日発表したデータによると、70都市の新築住宅価格(政府支援住宅を除く)は、6月に前月比0.67%下落。5月は0.71%下げ、2014年10月以来の大幅な落ち込みとなっていた。6月の中古住宅価格は前月比0.85%下落。前月は1%下落していた。こうした数字は、5月に発表された当局の救済策が不動産市場のセンチメント改善にほとんど寄与していないことを示す新たな証拠だ」

     

    中国指導部は、不動産バブル崩壊後の処理について地方政府と金融監督当局の責任に帰しており、財政支出の拡大による救済策を講じずに放置している。製造業へは手厚い補助金を出しながら、住宅問題は「見殺し」に等しい冷遇ぶりだ。

     

    (4)「15日開幕する中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で、より積極的な対策が打ち出されるとはほとんど予想されていない。デベロッパーや住宅所有者が住宅を売却するために大幅な値引きに頼る中、価格圧力は続く公算が大きい。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、クリスティ・フン氏とモニカ・シー氏は最近のリポートで、「新築・中古住宅の過剰在庫が、さらなる価格下落への圧力となっている」と分析した」

     

    国民の不安心理を煽っているのは、不動産価格の低迷である。持ち家評価も日々落込んでいる中で、家計の紐は一段と厳しくなっているのだ。中国指導部は、こういう微妙な消費者の心理を読めずに、「中国式現代化」などとちぐはぐなことを言っている。

    a0001_002230_m
       

    大型経済対策は期待薄

    人口急減で負担が急増

    住宅在庫は6千万戸も

    空虚な「中国式現代化」

     

    中国共産党の「3中全会」が7月15~18日に開催される。3中全会は、習近平政権3期目の政策課題が審議される重要な会議だ。過去の3中全会では、改革開放のように中国史の流れを変えた重大改革措置が発表されてきた。今回は、どのような決定がされるのか世界の関心が集まっている。

     

    3中全会は、各期の政権発足翌年に開催されるのが慣例である。普通であれば、2023年秋に開かれるはずだった。それが、今年にずれ込んだ理由はいくつかある。中国経済の不振と、政治的混乱の頻発である。この二つの要因が、習近平中国国家主席を悩ませたのであろう。具体的に言えば、経済不振では不動産バブル崩壊後の不良債権激増である。政治混乱では昨年夏、秦剛外相と李尚福国防相が相次いで解任された一件だ。

     

    大型経済対策は期待薄

    習氏は、これら問題が「解決した」として、今回の3中全会開催を決めたのであろう。だが、政治的混乱は決着がついたとしても、経済不振はそのまま持ち込まれている。今回の3中全会で、多くの関心が経済問題に集まる理由である。一部は、大々的な景気浮揚策を期待しているが、その可能性は低いとみられる。

     

    中国の李強首相が最近、「中国に現在必要なのは“固本培元”(根を固めて精を育てる)」と述べたことだ。李氏は、中国経済はこの数年間コロナ事態で重病にかかり、現在は回復段階にある。「この時期に劇薬を使ってはいけないというのが中医理論」としている。ここでは、劇薬とか中医理論という言葉を比喩的に使っているが、李首相の本音は次のように理解すべきであろう。

     

    「劇薬」とは、財政支出の拡大である。まさに、西側経済学であるケインズ流の経済政策の実行だ。「中医理論」とは、漢方医療である。李氏が、これらの言葉の中で示唆しているのは、不動産バブル崩壊後の経済回復策は、財政支出の拡大に依存することなく、時間をかける漢方医療を用いるというのであろう。

     

    この漢方医療とは、習近平氏が好んで用いる「中国式現代化」を指している。この言葉は、現代化=西欧化を拒否して、中国式=社会主義による現代化である。今回の3中全会の主題は、「全面的な改革深化と中国式現代化の推進」だ。改めて、これに注目する必要があろう。習近平氏が、今回の3中全会を通じて成し遂げようとするものは、社会主義的改革を全面的に深化させ、中国式の現代化を達成することにある。

     

    習氏の頭には、富裕層への「強制課税案」が浮上しているであろう。これを実行して、地方財政赤字を穴埋めさせたい。「中国式現代化」構想では、こういう思惑が絡んでも不思議はない。富裕層は、すでにこれを見越しており、出国を急いでいる。

     

    今回の3中全会の主題に添って考えれば、目先の景気回復は「些末」なことになる。あくまでも、習氏の理想とする「中国式現代化」路線に従い、10年、20年先を見据えた「中華再興」への青写真であることを明白にしている。問題は、10~20年先の中国経済に期待が賭けられるのかだ。

     

    人口急減で負担が急増

    習近平氏の壮大な夢に水をかけるようで申し訳ないが、中国にはそういう時間的ゆとりがなくなっている。中国人口が、これから急速に減少するという最新の国連人口予測が発表された。それによると、中国人口は2100年に半減(正確には56%減)するのだ。その予測結果を示したい。

     

    国連による人口予測

         2024年   2054年   2100年

    中国  14.19億人  12.15億人  6.33億人

    米国   3.45億人   3.84億人  4.21億人

    出所:国連「世界人口推計」(2024年版)

     

    中国人口が、これから一貫して減り続けることは高齢者が増え続けるという意味である。生産性が低下する中で、社会保障費がウナギ登りに増える。一方の米国は、移民増加という最大の「人口プール」を抱えており、人口問題は自由自在に操作できる強みを持っている。中国へ移民したい人は存在しないが、米国へ移民したい人々は今日もメキシコ国境へ殺到している。米国の自由で豊かであるというイメージが、世界の移民を集めているのだ。

     

    中国の強みであった人口世界一は、すでにインドに取って代わられた。これからは、一転して人口減という逆回転に遭遇する。中国は、この中で生き延びなければならない運命になった。米国と対決して、世界覇権を目指す客観的な条件は全て剥落したと言ってよい。

     

    中国では、高齢者介護保険制度が、未だ整っていないのだ。習氏は、個々の家庭で高齢者の面倒をみるようにと発言している。その一方では、軍備を拡大して「台湾侵攻」に備えるというアベコベのことに国力を消耗させている。台湾侵攻が成功すれば、習氏の個人的名誉になるが、国力を疲弊させて国民生活の豊かさは犠牲になる。台湾侵攻が失敗すれば、習氏は不名誉のどん底に突き落とされる。いずれにしても、台湾侵攻は中国へいい結果をもたらさないのだ。(つづく)

     

    この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

    a0005_000022_m
       

    北朝鮮と中国との関係がギクシャクしている。中国政府は、外貨稼ぎのため北朝鮮から派遣されている労働者全員に対して、帰国を求めたことを韓国政府が把握したと報じられた。中国は、最近の北朝鮮がロシアと密着していることをけん制しているとみられる。中ロ朝関係は、中ロが北朝鮮を巡って互いに勢力争いを展開している状態が明らかである。中ロ関係も一枚めくると、こういう微妙な状態にある。

     

    『朝鮮日報』(7月14日付)は、「2年にわたる水面下の中朝対立が爆発、中国にむげにされロシアに抱き込まれた北朝鮮」と題する記事を掲載した。

     

    中朝関係が尋常でない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記と習近平国家主席が、2018年に中国・大連で一緒に散策したことを記念するために設置された「足跡の銅板」まで無くなった。中国側が、銅板の上にアスファルトを敷いて足跡を消してしまった。朝中首脳の友好の象徴物が除去されるというのは類例がない。

     

    (1)「今年1月の台湾総統選挙は、中国の最大の関心事だった。中国が嫌う親米・独立傾向の候補が当選したにもかかわらず、北朝鮮は中国の立場を支持する声明すら出さなかった。中国と日本で同じ時期に強い地震が発生し、どちらも大きな被害が生じた。通常なら、北朝鮮は中国に慰労の電文を送らなければならない。しかし金正恩は日本にだけ「岸田閣下」で始まる電文を送った。少し前には、北朝鮮が、朝鮮中央テレビの海外向け放送に使う衛星を中国からロシアに変えてしまうという「事件」もあった」

     

    北朝鮮の金正恩氏が1月、「岸田閣下」と最上段の敬意を表した「能登地震」へのお見舞い電文を送って日本を驚かせた。これは、中国への意趣返しが込められていた。中朝関係にヒビが入っていたのである。

     

    (2)「昨年7月、北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードで、ロシアはプーチンに最も近い側近の一人、ショイグ国防相(当時)を派遣した。ロシアが北朝鮮の軍事パレードに特使を送るのは異例だ。10年前の停戦60周年のときも、高官クラスの派遣は行われなかった。反面、中国の特使は李鴻忠政治局委員だった。最高指導部の常務委員(7人)を派遣するに値する行事なのに、委員(25人)を派遣したのだ。金正恩は、あからさまにロシア特使ばかりを歓待した。2022年から積もり積もってきた朝中対立が表面化したのだ」

     

    北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードでは、金正恩氏がロシアのショイグ国防相(当時)を優遇し、中国特使の李鴻忠政治局委員を冷遇したのは報道写真で明らかであった。金氏がショイグ氏に熱心に説明している一方で、李氏はこれより離れて一人でパレードを見ていたのだ。

     

    (3)「習近平は12年に政権を樹立した直後から、金正恩のことを良く思っていなかった。北朝鮮の核の暴走が北東アジアの均衡を揺るがす、と考えたのだ。北朝鮮の挑発は、米軍を中国の鼻先に呼び込む口実となる。14年に、中国の指導者として初めて、北朝鮮より先に韓国を訪問することで金正恩に警告のメッセージを送った。金正恩は15年、北京に牡丹峰楽団を派遣したが、中国の最高位クラスが観覧しないとなるや公演直前に楽団を呼び戻し、感情的ないさかいを起こした」

     

    習氏と金氏の関係は、ウマが合わない印象である。互いに、「突っ張り」あっている感じだ。金氏には、「直系一族」という誇りがあるのだろう。

     

    (4)「朝中は不信の歴史が深い。中国は、北朝鮮が触発した衝突に振り回されることを警戒する。6・25(韓国戦争)が代表的だ。北朝鮮によるロシア砲弾支援は「バタフライ・エフェクト」を呼びかねない、と懸念している。ウクライナ戦争の長期化で世界経済が動揺したり、朝中ロ結束の様子が韓米日軍事協力を強化させたりすることは、中国にとって不利だ」

     

    中国にとっては、日に日に包囲網が作られている感じだろう。最近は、NATO(北大西洋条約機構)が、日韓豪NZ(ニュージーランド)と密接な関係を深めてきた。北朝鮮のロシア支援もこうした包囲網づくりへのテコになっている。

     

    (5)「中国は、北朝鮮に「ロシアとの武器取引を自制せよ」というシグナルを送っただろう。しかし北朝鮮は、逆にロシアと軍事同盟まで復活させた。朝中同盟よりも包括的だ。金正恩は今年4月、朝中修好75周年を迎えて中国の趙楽際常務委員(序列3位)の訪朝を待っていた。09年の修好60周年のとき、温家宝首相が工場建設などプレゼントを用意して訪朝した記憶を思い出しただろう。ところが趙楽際は手ぶらだった。金正恩はプーチンの方にいっそう傾き、朝中関係はさらによじれた。反面、中国は、自分たちの「畑」である北東アジアに米国はもちろんロシアが割り込むことも嫌う」

     

    金氏は、経済的な苦境に立っている。何でもいいから支援が欲しい心境だ。中国は、何もくれないが、ロシアはお土産を持たせてくれる。こうして、北朝鮮はロシアへ傾斜しているのだろう。中国は、この余波を受けているという不満が重なっている。中ロ朝の関係は、決して盤石なものでない。

    このページのトップヘ