昨日のブログで、中国の経常収支赤字問題を取り上げた。すなわち、今年1~3月期の経常収支が341億ドルの赤字であった。2001年4~6月期以来のことだが、一過性の問題でないとも指摘した。
経常収支の問題は、為替相場に影響を与える。今日も、人民元相場の動向がメディアで注目されよう。ただ、当面は人民元の売り投機がどう動くのか。中国政府が介入するのか。そういう市場動向が焦点になって、経常収支構造といったところまで話が進むものではない。ただ、中国の為替相場の根底には、この問題が常に意識されるだろう。
中国政府は、外貨準備高をデンと3兆1000億ドル台も積み上げているが、その目的は何かだ。私は、一種の見せ金の役割を果たしていると睨んでいる。発展途上国を羨ましがらせる。そういう戦術に使っているであろう。外貨準備高の役割は、当面の輸入決済資金があれば、それで充分というもの。為替投機の懸念がなければ、それ以上でも、それ以下でもない。
1~3月期の経常収支が、季節要因も絡んで赤字になったように、盤石なものではない。理由は昨日も触れたが、サービス収支が大赤字であることだ。中国人は一斉に海外旅行に出て、「爆買い」で大金を使い果たしてくる。今後の所得上昇を計算に入れれば、中国人観光客はさらに増えてゆくに相違ない。こうなると、経常収支はいつもサービス収支に脅かされるのだ。
肝心の輸出は、米中貿易戦争で騒ぎが大きくなっている。だが、純輸出(輸出-輸入)がGDPへの寄与度で見ると、「劣等生」である。その、実態を見ておきたい。
純輸出のGDP寄与度 経常収支の対GDP比
2011年 -0.8% 1.81%
12年 0.2% 2.51%
13年 -0.1% 1.54%
14年 0.3% 2.24%
15年 -0.1% 2.71%
16年 -0.6% 1.80%
17年 0.6% 1.37%
18年 -0.7%(1~6月) 1.18%(IMF予測)
17年だけは0.6%も寄与してGDP押上げ効果があった。最近では例外的なものだ。純輸出のGDP寄与度で、マイナスが常態化しているのは、加工貿易という弱点を抱えていることに理由がある。輸出金額は多いが、部材や部品を輸入して製品に組み立て輸出するので、付加価値は少ないのだ。要するに、中国の輸出金額は2兆2633億ドルと世界1(2009年以来)と多いものの、GDP押し上げ効果は小さいという意外な結果が出ている。
なぜ、こういうチグハグナことが起こっているのか。それは、前述の通り加工貿易で付加価値率が低いこと。生産性が伸びない結果である。2008年のリーマンショック後、過剰設備を抱えており、これが生産性の頭を抑える要因になっている。こう見てくると、中国の過剰設備問題は「業」となっており、経常収支構造を脆弱なものにさせていることが分る。
中国経済は、図体だけ大きいが経常収支面で「持病」に悩まされている。これを隠すために、鬼面人を驚かすような外貨準備高を積み上げ、カムフラージュしているに違いない。なんと言っても、「権謀術数」の国だ。何を企んでいるかは分らない。
以上の点を総合すると、中国の最大の弱点が人民元相場にある。未だに、管理型変動相場制と資本移動の規制を続けている理由は、全て脆弱な経常収支構造を隠蔽せざるを得ない事情にある。管理型変動相場制や資本規制は、いつまでも続けられない。必ず、正常化する時期が来る。その時は、主要国と話合わざるを得ないのだ。人民元が追い詰められる前に、話合いに入るべきだろう。





