勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評


    中国が奥の手を使ってきた。カナダ政府は、中国がファーウェイ副会長の逮捕に抗議してカナダ人を拘束するのでないか、と警戒していた矢先に、元外交官が拘束された。

     

    事態は新局面に入った。中国が、ここまで荒手を繰り出したのは、ファーウェイの中国における特殊な地位にあるからだ。単なる通信機メーカーでなく「軍事会社」とまで言われている。中国の秘密情報が、このファーウェイから漏れることを最も警戒している証拠だ。

     

    『ロイター』(12月12日付)は、「中国当局がカナダ元外交官を拘束 所属団体が釈放求める」と題する記事を掲載した。

     

    カナダでは今月1日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、米国の要請で逮捕された。この問題とカナダ元外交官の拘束との関連は不明だが、中国による報復措置があるのではとの懸念が上がっていた。

     

    (1)「カナダの元外交官が中国で拘束されたと、関係筋2人が11日明らかにした。元外交官が所属している団体は、速やかな釈放を求めている。拘束されたのはマイケル・コブリグ氏。現在の所属先であるシンクタンク『国際危機グループ』は、コブリグ氏が中国で拘束されたことを把握しているとの声明を発表した。同社では2017年2月から勤務し、北東アジアシニアアドバイザーを務めているという。中国外務省など当局は、問い合わせに応じていない。拘束の理由については分かっていない」

     

    中国は、もっとも拙い手を使ってしまった。カナダ政府が、中国の傍若無人な行為に屈するとは思えない。民主主義の強さを甘く見た行為である。米国が、断固として立ち上がるだろう。ファーウェイの抱える「深い闇」を徹底的に究明するはずだ。その過程で、仮にファーウェイ経営に重大な事態が生じても、「自業自得」として放置するだろう。ZTE(中興通訊)のように、倒産の淵から引き上げるような「善意の手」を差し伸べることはあるまい。この結果、中国経済には大きな障害が発生するであろう。

     

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    中国は、ファーウェイ副会長の逮捕で沸騰している。カナダ政府への威嚇は、まさに「モンスターペアレント」そのものである。この言葉は、親が自分の子どもについて、学校や教育委員会へ執拗な苦情や要求を出すという意味の「和製英語」である。

     

    中国では、この「モンスターペアレント」に似た行動が大きな問題になっている。子どもも親も、傍若無人の振る舞いをするのだ。中国政府も同じことをやっている。APEC(アジア太平洋経済協力会議)では、自国の主張を共同声明に入れさせるべくねばって、ついに声明が出せずに終わった。そして、今回のファーウェイ問題。モンスターペアレントよろしく、カナダ政府を威嚇している。

     

    『サーチナ』(12月11日付け)は、「中国にはなぜ『モンスターペアレント』など周囲を顧みない人が多いのか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『今日頭条』(12月4日付)は、中国の公共交通機関で見られる『一部の乗客の理解できない行動』について、『彼らの周囲を顧みない行動は一体何が原因なのか』と嘆く記事を掲載した。記事は、中国社会に大きな衝撃を与えた路線バスの転落事故に触れ、『走行中のバスが橋から川へ転落し、幼児を含む13人の死者が出たが、その原因が運転手と乗客の喧嘩であったことは社会に大きな衝撃を与えた』と指摘。その喧嘩も『乗客がバス停ではない場所での下車を要求し、それを運転手が拒否したこと』が原因であり、これによって運転手はハンドル操作を誤り、バスは川に転落したのだった」

    中国社会は、政府を含めて「唯我独尊」的な振る舞いが極めて多く、顰蹙(ひんしゅく)を買っている。この原因は、欧米に共通の「市民社会」の経験がなく、自己と他人の認識が不明瞭であるからだ。人間の価値基準は、保有財産の多寡にあるという極端な慣行がある。中国がGDPで世界2位になって、途端に威張り散らし始めた裏には、こういう「財貨万能」という考えがある。だから、金持ちにはへつらい、貧しい人には横柄になるのだ。

     

    欧米の市民社会では、個人の独立を認め合い、相互扶助精神が行き渡っている。これが、権力からの圧迫を跳ね返す原動力になった。過去と断絶する「真の革命」が実現した背景である。中国は、過去と断絶できず専制政治の殻が今もついている。個の認識=他者への尊敬の念がない。モンスターペアレントが発生する理由であろう。個人も政府も、相手を尊重する気持ちがないので、いつも軋轢を生んでいる。

     

    (2)「続けて、『こうしたことは中国では決して珍しいことではない』と主張し、公共の乗り物で子どもや親が周囲を顧みずに迷惑をかける行動は普通に見られると紹介、乗務員が注意しても効果がなく、頭を抱えているのが現状だと指摘した。では、こうした『周囲を顧みない行動の原因』は一体何が原因なのだろうか。記事はまず、『私的な空間と公共の場の境界が付かなくなっている』人が多いこと、また、『自分が被るデメリットが不確かな場合や明確な罰則がない場合は聞く耳を持たない人が多い』と指摘。他にも、『体制の取り決めに従うことに慣れ、自分で判断して行動できない人が多い』という要因も挙げた」

    このパラグラフでの指摘は、その通りである。

        私的な空間と公共の場の境界が付かなくなっている人とは、自己と他者の境界線が不明確であることを指す。こういう振る舞いをすれば、相手がどう思うか。その配慮がないのだ。

        自分が被るデメリットが不確かな場合や、明確な罰則がない場合は聞く耳を持たない人が多いとは、ルール(社会規範)を守ることが、お互いにメリットになるとの認識欠如である。行列を破って自分が利益を得たと思っても、相手が同じことやれば損害を被る。ルールは、社会全員が利益を平等に受けられる「知恵」である。

        体制の取り決めに従うことに慣れ、自分で判断して行動できない人が多いとは、中国に市民社会の歴史のないことの証明である。自分たちのことは、自分たちで決められない。これが、個人の自覚を奪っている。

     

    中国は、政府も個人も民主主義の欠如がもたらす坩堝の中にいる。習近平氏は、「中華再興」でなく、中国人一人一人が自由に自らの人生を決められる。そういう社会をつくることが先決だろう。習氏は、中国最大の「モンスターペアレント」だ。

     

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    中国は、ファーウェイ副会長逮捕後に予想される、米国の制裁措置を考慮し始めている。米国に決定的な証拠を握られている以上、米国政府を刺激する非難がもたらすブーメラン効果を恐れているはずだ。

     

    『ロイター』(12月11日付)は、「中国国営メディア、ファーウェイ巡る論調控え目、対米貿易交渉に配慮か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されたことについて、中国国営メディアは10日、逮捕を批判するものの、米国との貿易交渉には関連付けていない。ファーウェイの問題が、米との貿易交渉に影を落とすのを避けたいとみられる。トランプ米政権は、米の要請を受けたカナダでの孟容疑者逮捕は法執行の問題であり、中国との交渉には影響しないとの立場」

     

    日本のメディアの一部では、ファーウェイ副会長の逮捕が米中貿易協議に水を差すという見方をとっている。私は、こういう見解とは異なり一貫して、中国が米の貿易制裁強化を最も恐れているという視点だ。中国の経常収支は、赤字寸前であることが大きなブレーキになっている。

     

    (2)「一方、中国側は、外務省が厳しく非難するものの、貿易交渉を担当する商務省はコメントを差し控えている。中国共産党の機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は論説で、「現時点で中米ともに一応2つを関連付けない姿勢をみせている」と指摘。ただ、別の論説で、米国がファーウェイを排除すれば、世界のデジタル経済から孤立すると主張した。チャイナ・デーリーは、孟容疑者逮捕について、カナダが「悪魔の悪事」に手を貸さないよう希望するとの論説を掲載したが、貿易問題に結びつける論調はほとんどみられない。 中国の対外経済貿易大学の貿易の専門家、Tu Xinquan氏は、商務省がファーエイ問題に言及していないのは、貿易交渉に集中しているからだと指摘した」

     

    中国は、『人民網』でも最初からファーウェイ問題と米中貿易協議が別問題であると指摘している。この点は、私のブログでも取り上げた。ファーウェイと米国のIT企業は、広範囲な協調関係にある点を見落としてはならない。米国政府が、ファーウェイへ半導体とソフトの輸出禁止措置をとれば、ファーウェイは重大な経営危機に陥る。「中国製造2025」は瓦解するのだ。中国の将来は、米国が握っているとも言える。

     

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    中国政府は、今回のファーウェイ副会長のカナダでの逮捕に強烈な反発をしている。この抗議発言が、暴力団まがいのもので驚くのだ。いくら感情的に昂ぶっているとしても、もう少し冷静に振る舞えないのだろうか。

     

    ファーウェイ副会長は、10代の息子が米国ボストンの学校へ通っている。だが、2017年以来、米国へ渡航していないのだ。また、ファーウェイの最高幹部も、同様に米国行きを避けてきた。米国によるファーウェイの違法行為捜査を察知して、米国への渡航を回避したものと見られる。母親が、息子に会うべく米国へ渡らないのは不自然であろう。もっとも、バンクーバーに自宅を2軒持っているので、子どもを呼び寄せたと、いう理由は成り立つ。だが、まだ幼年である息子の生活環境が気にならないのか。普通の「母親像」とは異なるようである。

     

    『日本経済新聞』(12月10日付)は、「拘束続ければ重大な結果、中国、カナダに抗議
    ファーウェイ問題 副会長の釈放要求」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「カナダが米国の要請に基づいて中国・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕したことをめぐり、中国がカナダ批判を強めている。中国外務省の楽玉成次官は8日、駐中国カナダ大使を呼んで孟氏の即時釈放を要求。正当な権利が守られなければ『重大な結果を生み、すべての責任はカナダが負わなければならない』と警告した。楽氏はブランスタド駐中国米大使も9日呼び出し、孟氏の逮捕をカナダに要請したことに『強烈な抗議』を申し入れた」

     

    中国政府要人が、逮捕されたような大仰な振る舞いである。世界一の通信機メーカーの幹部といえども、孟晩舟氏は民間人である。ファーウェイが事実上、中国政府の別働隊として動いていたことを図らずも立証した騒ぎである。「重大な結果を生み、すべての責任はカナダが負わなければならない」と凄んでいる。いま少し、冷静な言動はできないのだろうか。

     

    (2)「共産党機関紙の人民日報は9日付で、孟氏の罪が確定していないのにカナダ当局が『手錠をかけ、足かせをつけた』と指摘。『過ちを正し、中国国民の権利侵害を直ちに止めなければ、重い代償を払うことになる』と強調した。国営新華社通信も孟氏の扱いを『大きな侮辱であり人格無視だ』とした。『カナダの法律に違反していないのに、米国の一方的な主張を聞いて拘束したことは法にも理にも情にもかなわない。カナダ当局に口出しの権利はない』と主張した。新華社はトルドー首相が逮捕を事前に知っていたと認めた点も『中国側に知らせることなく、中国人の感情を傷つけた』と指摘、即時に釈放しなければ『深刻な結果をもたらし、カナダがその全ての責任を負うことになる』と断じた」

     

    カナダ政府が、ファーウェイ副会長を逮捕したのは、米加両国による犯罪引き渡し条約に基づくもの。ただ、カナダで単純に逮捕して米国へ引き渡すものではない。カナダは、米国から提示された証拠に基づき、勾留の可否を判断する立場である。こういう法的な手続きを行なっているカナダに対して、威嚇・脅迫する「暴力団」のごとき言動は、厳に慎むべきだろう。中国という国家の未成熟さを痛切に感じさせられる。

     

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    11月の輸出高の伸び率は急速に鈍化した。これまで、私は機会あるごとに中国の経常収支の赤字懸念問題を取り上げてきた。その危険性が、一段と迫っているように思える。

     

    1~9月までの経常収支は、128億ドルの赤字である。この赤字分を10~12月の3ヶ月で埋めて、2018年の通年でどれだけの経常黒字を計上できるのか。あるいは、経常赤字のままなのか、瀬戸際にきている。この問題は、人民元相場動向を左右する重要な要素である。単なる数字遊びではない。先ず、この点を認識していただきたい。今後の米中貿易戦争の行方にも大きな影響を与えるはずだ。

     

    1~11月の貿易黒字は、2996億ドルである。ここから2018年の貿易黒字を推測すると、3268億ドルである。前年実績は、4195億ドルである。今年は、昨年よりも貿易黒字が927億ドルも減る計算である。これだけ、貿易黒字が減った場合、経常収支にどのような影響を与えるか。

     

    経常収支の計算では、①貿易収支、②所得収支、③サービス収支の3つが主として影響を与える。中国の場合、②と③が大赤字である。②では、中国へ進出している外資系企業が利益を上げて本国へ送金したり、特許料の支払いも嵩んでいる。③では、中国人の外国旅行が盛んで「爆買い」でカネを使っている。

     

    要するに、相当な貿易黒字を稼ぎ出さない限り、②と③の大赤字を消せない宿命を負っている。こうなると、貿易黒字の減少が経常収支に大きな蔭を落とす構造になっている。ところが、今年の貿易黒字は927億ドルも減るというのが、私の試算である。仮に、②と③に増減がなく昨年並とすれば、経常収支は1~9月の経常赤字128億ドルを消して、若干の経常黒字を出す可能性もある。だが、②と③で赤字が膨らめば、通年の経常収支は赤字転落になりかねない。極めて、微妙な局面に来ている。来年は確実に経常赤字転落である。

     

    世界のGDP2位の中国が、経常赤字になった場合、世界経済に与える衝撃を考えておくべきだ。しかもなお、貿易戦争の渦中にあるとすれば、「中国敗北」は決定的である。中国経済「不敗神話」を信じている向きがあるとすれば、早急に「改宗」を勧めたいと思う。

     

    メルマガ10号 「混迷する韓国経済、青年の5人に1人が失業へ。文在寅大統領がハマった罠とは?」が、『マネーボイス』で紹介

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