中国で、急速に普及する自動運転タクシーの安全性が、問われる事態が起きた。湖北省武漢市で3月31日夜、完全自動運転の無人タクシーが突然、路上で相次いで停車し、渋滞や事故を引き起こした。地元警察は「初期判断では、システム障害が引き起こした」としており、けが人は出ていないという。
武漢で100台以上のロボタクシーが同時に停止し、道路の真ん中で立ち往生した。すべて「システム故障」が原因と警察が説明しているという。乗客は車内に取り残され、数時間動けなかったケースもあった。一部は、高速道路や立体道路上で停止し、交通混乱や軽微な事故も発生した。これは、中国で初めての大規模ロボタクシー停止事故である。
『毎日新聞』(4月2日付)は、「中国 無人タクシーの突然停車が相次ぎ交通混乱 システム障害か」と題する記事を掲載した。
(1)「中国メディアによると、問題が発生したのは中国IT大手の百度(バイドゥ)が運営する自動運転タクシー「蘿蔔快跑(アポロ・ゴー)」の車両。31日午後9時ごろ、武漢市の路上で停車する事態が多数発生。市内各地で渋滞を引き起こし、後続の車が避けきれずに追突する事故も起きたという。高架道路の複数車線の真ん中で車両が立ち往生し、乗客が降りられなくなったケースもあった。一部メディアは、停車した車両は100台を超えると伝えた。この会社は、武漢市内で1000台以上の無人タクシーを運営しているとされる」
中国では、若者失業者が17%前後と高水準である。仕事がなくて「フード・ディリバリー」で生計を立てている人々が多いのだ。こういう失業社会が、米国と張り合って無人タクシーへ進出すること自体、社会的意味はないであろう。主客転倒である。
ロボタクシーの「一斉停止」は、成熟していないAIシステムの典型的リスクとされている。専門家は、「大規模AIシステムには、新しい種類のリスクがある」と指摘する。つまり、個別の車の故障ではなく、システム全体の同期的エラーが起きたことだ。中国政府が、「実証より実装を優先」しているのは事実だ。中国は、自動運転を国家戦略として推進し、
実証段階を短縮して早期商用化を進めてきた。そのスピードが、今回のような「システム全体の停止」を招いたといえよう。
(2)「国内の交流サイト(SNS)では、「誰が責任を取るのか」、「無人運転はやはり怖い」「便利でも安全性をおろそかにしてはならない」との不安の声が上がった。一方で、「対応が迅速で幸いけが人はなかった。今回を教訓により改善していけばいい」、「理性的かつ我慢強く自動運転サービスを見守るべきだ」との意見もあった」
制度が未整備の国ほど、技術トラブルが社会問題化しやすい波乱の芽を含んでいる。それは、事故時の責任の曖昧さが原因である。AIの誤判断か、センサー故障か、地図データの誤りか、運行管理の不備かなど原因が考えられる。この結果、どこまでがメーカー責任か、運行者責任かが決まっていないのだろう。こうして、社会受容性が問われる事態になる。事故が起きると、まず高齢者・子供の安全確保が課題になる。
(3)「自動運転タクシーは、米国と中国が世界をリードしているが、米国でも最近、無人タクシーが立ち往生するトラブルが起きた。ロイター通信によると、2025年12月、米アルファベット傘下の「ウェイモ」が運行する無人タクシーがカリフォルニア州サンフランシスコ市の交差点で相次いで停車し、渋滞を引き起こした。市内の大規模停電によって信号機が作動しなくなったことが影響した可能性があるという」
中国が、米国と競争していること自体がナンセンスである。中国自体は、「世界最強」と錯覚しているが実態は脆弱そのものである。中国のように、失業率が高い社会の目指すべきことは、雇用吸収力の向上である。無人タクシーは、全くの逆走である。ところが中国政府は、AI、自動運転、ロボタクシー、ロボット化を「国家戦略」として急速に推進している。これは、雇用吸収より「技術覇権」を優先する「メンツ重視」の構図である。言葉が過ぎるかもしれないが、「身丈」に合わない目的を目指しているのだ。




