勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    人型ロボットに格段の困難

    補助金へ群がる新興企業群

    余剰人員抱え市場開拓困難

    日本は人型ロボット不可欠

     

    中国では、人型ロボット人気が過熱状態にある。ネット上に氾濫するのは、ロボットがダンスを踊ったり、マラソンを走ったり、家事をこなしたりする動画である。市民はこれによって、中国が世界最先端の「人型ロボット国」と信じているほどだ。習近平国家主席には、国民を喜ばせるまたとないニュースとなっている。

     

    政府の15次五カ年計画(2026~30年)では、ロボティクス(人間生活に役立つロボット研究)を中国経済の新たな成長エンジンに位置付けている。25年のロイター報道によると、当局は24年以降、人型ロボット開発支援に少なくとも200億ドル(約3兆2000億円)を拠出している。政府は、人型ロボットをEV(電気自動車)に次ぐ成長産業へ育てる計画だ。この政府の熱気を受けて、新興ロボット企業が続々と名乗りを上げ、証券市場で資金調達を始めている。

     

    人型ロボットに関わる動画の氾濫は、投資家に夢を持たせている。新興企業が、これを資金調達に利用していることは明らかだ。公式推計によると、知能ロボティクス分野の登録企業は、24年末時点で45万社を超える。4年前の3倍以上に膨らんだ。6月時点で、人型ロボット関連の新興企業約50社が、香港での新規株式公開(IPO)計画を提出した。この一連の動きから、中国がロボット大国として台頭する、と憶測を生むまでになっている。

     

    人型ロボット分野の登録企業が、45万社を超えているのは明らかに「バブル」である。儲かりそうだということで、ロボットと無関係な企業が名乗り出ている結果とみられる。半導体企業の勃興時でも、無関係な不動産業や極端な例では理髪業までが「半導体」へ群がった。この伝で言えば、人型ロボットでもこういう無関係な筋が、投機的な意味で名前を出して、補助金に与ろうということであろう。

     

    見落としていけないケースは、既存の産業ロボット企業が、人型ロボットへ名乗り出ないという現実だ。これこそ、中国での人型ロボット製品化がいかに困難であるか。また、収益見通がつかないかを示唆している。結論として、現状では人型ロボット需要が見込めないのだ。この裏には、中国の不規則な産業発展構造の歪みが災いしている。全産業が、「不完全雇用」状態にあるので、人型ロボットの導入が必然的に失業者を生むのだ。この点についての詳細な説明は後で行う。極めて重要なポイントである。

     

    この点で、日本とは事情が大きく異なっている。日本は、各産業が完全雇用による「人手不足」状態にある。これに加えて、企業データが完備している。人型ロボットを導入できる基盤が整っているのだ。日中では、このように人型ロボット需要の違いが明確である。人型ロボットについて、中国を日本と同列に論じるのは間違いである。日本は、中国からみれば異次元の世界である。

     

    人型ロボットに格段の困難

    中国は、新規事業において半導体産業で何とか成功させた。この調子で資金さえつぎ込めば、人型ロボットも成功すると思い込んでいる。両者は、全く別の技術体系である。人型ロボット製造は、高度の部品企業群の存在が不可欠である。中国には、精密な部品企業が存在しないのだ。中国政府は、全くこれに気付かずにいる。

     

    半導体は、極端に言えば 資本・設備・人材を大量投入すれば、一定レベルまで到達できる産業である。設備投資の巨大化(数兆円)が前提である。工程は、標準化されている。設計は、米国依存でも製品化できる。こうした背景によって、政府が巨額補助金を出せばキャッチアップは可能である。中国は、こういう半導体の「資本集約型モデル」の強みを生かして成功の域へこぎつけた。

     

    ロボットは、半導体と違って資本を大量投入すれば、成功できる産業でない点が大いに異なる。ロボットは、「現場 ・ 精密機械・ 制御・ 社会実装」の統合が必要である。さらに、必要な技術分野の特許は、すでに日米欧が先行取得している。後発の中国が、先発国の特許網を潜り抜けることはかなり困難である。こういう技術面での制約が大きいのだ。

     

    例えば、精密機械加工では、日本・ドイツが圧倒的地位にある。サーボ・減速機は、日本が世界シェアの60%を占めている。制御工学は、日本・米国が支配している。データによる現場改善は、日本の独壇場である。安全規格・社会実装は、欧米・日本が強みを発揮している。さらに加えれば、中国企業は長期的な製品への信頼性で苦闘している。「メード・イン・チャイナ」の人型ロボットは、信頼性の面で海外販路が絶望的である。

     

    こうして ロボットは「文化・現場・制度・技術」が全部揃わないと成立しない産業である。半導体のように「資金を大量に投入すれば追いつく」構造でないのだ。半導体は、設備を購入すれば製造できるが、 ロボットは 減速機・精密加工・制御 が基盤になる。 この分野は、日本が世界トップであり、中国も日本へ依存しているのだ。

     

    中国の人型ロボット企業は、ほとんど新興企業で補助金依存である。これでは、長期の信頼性試験や社会実装ができず、これが根本的な弱点になる。こうして、「飛んだり跳ねたりする」こと以外に、社会的訴求できない悩みを抱えている。メディアは、この限界を無視して、話題性だけを追って持ち上げているのだ。

     

    日本の人型ロボットは、既存の産業ロボット企業が蓄積した技術を基盤にして開発している。中国は、既存企業が参入しないという全く「アベコベ」現象である。

     

    中国の産業ロボット企業は、人型ロボットが「儲からない」ことを知っている。産業用ロボットが、すでに激しい価格競争で利益率の低下に見舞われているからだ。また、人型ロボットの技術的難易度が高いことや、耐久性の低いことも熟知している。加えて、生産コストが高いこと、実用化時期の遠いことも知っている。こうして、既存企業は総合的にみて人型ロボットの「採算が困難」と判断しているのだ。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526



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    中国各地で猛烈な嵐による甚大な被害が出ており、これまでに多くの犠牲者が出ている。数十の河川が氾濫したほか、貯水池のダムが決壊。救助隊による生存者の捜索活動が続けられている。当局は8日も悪天候が続くと警告している。

     

    『AFP=時事』(7月8日付)は、「中国で猛烈な嵐 ダム決壊、竜巻、土砂崩れ各地で甚大な被害」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「地方当局の発表によると、中国南部の広西チワン族自治区では台風10号(アジア名:メイサーク)による猛烈な雨と深刻な洪水により6人が死亡、少なくとも13万人が避難した。当局は、同自治区および隣接する広東省では8日も雨が降り続くと警告している。 国営メディアの報道によると、広西チワン族自治区では40の河川や水路の堤防が決壊し、約5200ヘクタールの農地に被害が出た」

     

    近年は、洪水だけでなく竜巻・土砂崩れ・強風被害が同時期に発生している。被害範囲は、南部(広西・広東)から中部(湖北)、さらに北西部(甘粛)まで、中国のほぼ半分の地域で災害が発生している。中国は、ダムの数が世界最多で、老朽化も問題になっている。 今年は、「複数のダムが決壊・危機的状況」と報じられており、これは通常年より深刻な状況である。

     

    (2)「中国国営中央テレビ(CCTV)が、公開した映像には決壊したダムから泥水が激流となって押し寄せる様子や、ライフジャケットを着用した救助隊員がゴムボートで出動する様子が確認できた。 国営新華社通信は、当局により食料やレインコート、ゴムボートなどの追加の災害救助物資が現地に送られていると報じた。洪水・干ばつ対策当局によると、広西チワン族自治区における洪水制御の緊急対応レベルは、上から2番目に高い水準に維持されているという」

     

    異常気象の被害が拡大している背景は、「極端降雨の増加」である。地球温暖化で大気中の水蒸気量が増えると、「降るときに一気に降る」極端豪雨が増えることが世界的に確認されている。中国気象局も近年、豪雨の頻度増加や台風の強度上昇、竜巻の発生件数増加 を公式に指摘している。

     

    地形的な脆弱性が被害を大きくしている。中国南部は山地が多く、豪雨による土砂崩れ、河川氾濫によって平地の都市が浸水 する構造的な弱点が表れている。広西チワン族自治区では、40の河川・水路の堤防が決壊した 。また、都市化の急速な進行も被害を大きくしている。中国は過去20年で都市人口が爆発的に増えた。その結果、河川の遊水地が減少、コンクリート化で雨水が浸透しない。下水容量が追いつかないなどの問題が顕在化し、洪水が起きやすくなっている。

     

    これに加えて、インフラの老朽化が目立っている。中国には約9万基のダムがあり、その多くは1950〜70年代に建設されたもの。老朽化したダムが、豪雨に耐えられず決壊リスクを高めている。日本では余り聞かない中小ダム決壊は、中国インフラの泣き所になっている。

     

    過去に大量に建設されたダム・堤防・水路が現在、設計寿命に近づきつつある。気候条件が当時より厳しくなっているため、「想定外の負荷」にさらされている。このため、更新・補強を行わなければならないが、地方政府の財政は赤字状態である。補強には莫大な投資が必要で、地方財政の制約が安全性に影響する深刻な事態だ。ハッキリ言えば、資金難によってこれらの補強工事は後回しにされよう。被害は、増えるばかりだ。

     

    (3)「李国英水利相は、同自治区では9日早朝に洪水のピークが予想されると指摘。その上で、「断続的な豪雨の影響と、高水位での洪水通過が長期化していることにより、被災地域の貯水池や堤防の安全性は厳しい試練に直面している」と付け加えた。 新華社によると、中部・湖北省でも6日夜遅くに発生した激しい雷雨と強風により、11人が死亡、331人が負傷。1人が行方不明となっており、4800棟の家屋が損壊、さらに22棟が倒壊した。一部地域では竜巻も報告された。 CCTVによると、習近平国家主席は7日、救助隊に対し「全力を尽くして」緊急救助活動を組織するよう指示した。 これとは別に、中国北西部の甘粛省宕昌県で土砂崩れが発生。国営メディアは8日、33人が巻き込まれ、21人が死亡したと報じた」

     

    中国の中小ダムは、既述の通り1950〜70年代に一気に造られたが、その後の安全管理で不十分な面がみられる。1954〜2021年、中国で記録されたダム事故は3000件超で、洪水による越流・構造欠陥が主因とされている。主な危険要因は、近年の全国データ解析では、浸透・漏水と構造安全性の問題(ひび割れ・基礎・盛土の安定性など) が最も顕著なハザードとされている。これから本格化する異常気象への備えは、完全に後手へ回っている。

     

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    中国からの訪日客は、個人客が主体である。中国政府の「反日発言」にも関わらず、日本を訪ねてくれる中国人は、相当の「教養人」であろう。普通の市民は、政府の宣伝に乗せられるが、それを押して「敢行」するのは、一般大衆レベルと異なるに違いない。こういう層こそ、日本理解の軸として大切にすべき人達である。この人達の象徴的な話が、日本の「香り」だという。日本社会が、商品でも良い香りを求めていることに、「先進国の空気」を感じ取るのであろう。

     

    「香り」は、文化レベルの高さを示す「最終段階の美意識」の一つとされている。衣食住が整った社会が、次に求めるのが「香り・空気・気配」といった「環境の質」である。中国人旅行者が、日本で「良い香り」に感心するのは、単なる嗜好ではなく、文化の成熟度の違いを直感的に感じ取っているからに違いない。

     

    『レコードチャイナ』(7月7日付)は、「『日本はもうこんなレベルに達した』と感嘆、中国ネットで反響」と題する記事を掲載した。

     

    中国のSNS『小紅書』(RED)に4日、「日本はもうこんなレベルに達した」との投稿があり、反響を呼んだ。

     

    (1)「投稿者は、「(中国では)国内のたくさんの臭い人に頭を悩ませている時、日本はもう『良い香りの濃淡』を気にするレベルにまで達している」と感嘆した様子でつづり、日本で見かけたポスターの写真をアップ。ポスターには「知ってください!その香り、困っている人もいます」と書かれており、柔軟剤などの香りによって体調不良になったり、気分が悪くなったりする人もいるとして、香り付きの製品を使用する場合は周囲の人に配慮するよう呼び掛ける内容になっている」

     

    日本の香り文化は、「無香の美学」が基本である。中国人が驚くのは、「強い香り」ではなく ほのかな清潔感である。日本の香り文化は、香水で主張するのではなく、石鹸、洗濯、木の香り、畳、お茶、湯気 など、生活そのものが香りになる構造である。これは、世界的に見ても珍しい存在とされる。

     

    香りは、「社会の清潔度」の指標でもある。日本の街はゴミが少ない、トイレが清潔である。これらは、公共空間が整っている結果であり、空気そのものが匂わない構造になっている。中国人旅行者が最も驚く点で、「日本は空気がきれい」、「街が匂わない」という感想が非常に多く寄せられている。香りは、文化+衛生+秩序の総合結果と言えそうだ。

     

    (2)「投稿者は、「(これを見て)数日前に見たSNSの書き込みを思い出した。それは『日本に来てからとても良い香りの洗剤を買ったけど、その香りをかいでいたら頭がくらくらしてきた』というもの。でも、少なくとも臭くはないでしょ!」とし、「ほかのことはさておき、潔癖な人にとって日本は(訪れる先として)最も優れた選択肢であるとしか言えない」とつづっている」

     

    人間社会は、衣食住の次は香りを求めるようだ。これは、文化史的にも理屈が通っている。 衣食住は、生存にかかわる。そこが、清潔であることが衛生上も良いという結論だ。香りは、美意識の問題に発展する。そこで、 空気・気配が穏やかであることが、精神文化にも好影響を及ぼすことになる。その意味で、日本は美意識の最終段階に近い。

     

    中国は今、衣食住が向上し、清潔さは都市部で改善している。香り文化は、発展途上という段階であろう。だからこそ、日本で「香り」に感心する基盤が生まれているのだ。なぜ、中国人は日本の香りに敏感なのか。理由は3つ考えられる。

     

    1)都市の匂いの違い(衛生・排気・湿度)

    中国の都市は人口密度が高く、匂いが混在しやすい。 日本は都市でも匂いが少ない。

    2)日本人の「匂いに対する配慮」が極端に高い

    体臭ケア、洗濯、消臭、靴のケア、部屋の換気 。これらが日常的に行われている。

     

    3)香りが、「他者への礼儀」とされる文化

    日本では 「匂いで他人を不快にさせない」という価値観が強い。これは中国文化にはあまりないことだ。

     

    総括すれば、香りが文化の成熟度を示す「最後の美意識」と言えよう。 香りは、「余裕」がないと成立しない文化要素である。衣食住は、生存のための文化。 香りは、生存の後に来る「余剰の美学」である。空間を整える、清潔を保つ、人に不快を与えない、季節や場に合わせる。こうした行為は、社会の秩序・衛生・美意識が揃って初めて成立することだ。日本は、これが極めて高いレベルに達したということであろう。

     

    (3)「これに、他のユーザーからは「良いことだね。社会が発展している証拠」「これ私もそう。ある香りをかぐと吐き気をもよおす」「このポスターすごく良いと思う。においに敏感な人にとっては本当に気持ち悪くなって、頭痛がしてくる」「日本で出掛けた時、外国人が多い場所では(香りが)すごくにおう。片頭痛持ちはそのままあの世行き」といった声が上がった。また、「なぜ柔軟剤がやり玉に?香水の方が問題だろう」「香水のにおいなら分かるけど、柔軟剤のにおいで頭痛や吐き気って。それはもう病院に行った方がいいと思う」との意見も見られた」

     

    ここには、いろいろの反応が聞かれて興味深い。香りに対する反応は、いろいろあろうが、さわやかない香りは、健康そのものである。

     

     

     

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    中国が、苦しい弁明をしている。日本に対して、地域の安全を乱すとして非難している中国が6日、南太平洋の島嶼国近海へ潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射した。中国外務省は、「今回の発射試験は中国軍の定例的な訓練活動だ。特定の国家や目標を標的としていない」と語った。「中国は自衛のための核戦略を堅持し、自らの核戦力を常に国家安全保障の必要最低水準にとどめてきた」と主張した。

     

    中国は、「自国だけは別」という論理を振りかざしている。日本批判を続けている一方で、中国は潜水艦発射弾道ミサイルの発射である。日本とは「桁違いの」軍事行動である。着弾地点になった島嶼国は、発射に反対の意向を表明している。島嶼国は、これで中国へ背を向け米豪へ接近するという外交姿勢を強めるであろう。

     

    『ロイター』(7月7日付)は、「豪ソロモン諸島、関係深化で一致 中国のミサイル発射を批判」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアのアルバニージー首相とソロモン諸島のワレ新首相は7日、ソロモン諸島の首都ホニアラで首脳会談を行った。2国間関係を深化させることで一致するとともに、中国が太平洋で原子力潜水艦から弾道ミサイルの発射実験を行ったことを批判した。アルバニージー氏は会談後の共同記者会見で、太平洋の平和と安全を損なう恐れのある行動を望まないと述べた。

     

    (1)「アルバニージー氏は、「これが地域を不安定化させる中国による挑発的な行為であることは疑いない」と語った。中国は試射の48時間前までに通告するという標準的な手順を踏まなかったと指摘した上で、ミサイルが原子力潜水艦から発射されたことこそが「真の懸念」との認識を示した。ワレ氏は「(中国は)ソロモン諸島の良き友人だが、これは友人がするようなことではない」と批判した。「中国であれ米国であれ、これ以上どの国にも太平洋諸島地域でICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験をしてほしくない。この点が重要だ。友人であるならわれわれを脅かさないでほしい」と述べた」

     

    ソロモン諸島は、「太平洋島嶼国の中で地理的・戦略的に最重要の一角」であり、人口規模こそ大きくないものの、地域安全保障の文脈では影響力のある国として扱われている。 今回、中国のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)実験への反対表明は、太平洋島嶼国の中でも特に重い意味を持っている。

     

    ソロモン諸島は、 地理的に「太平洋の要衝」にあたる。南太平洋の中心に位置し、オーストラリアの北側に広がる群島国家だ。第二次世界大戦では、日本のガダルカナル戦の舞台でもあり、海洋交通路の要衝として歴史的に重要な位置を占めている。中国・米国・豪州が影響力を競う「第二列島線」に近く、軍事的価値が極めて高い。人口は、約70万人と少ないが、EEZ(排他的経済水域)は日本の国土面積の約20倍 で、 海洋資源・海域管理の観点で地域の発言力が大きい。

     

    (2)「ソロモン諸島は、2022年に中国と安全保障協定を締結し、太平洋諸国の中で中国と最も緊密な関係にあるとみられてきた。5月に就任したワレ氏は、先月のオーストラリア公式訪問中、同国と包括的な条約の交渉を進めるとともに、中国との安全保障協定を見直す意向を示していた。両首脳は新たな包括的条約の交渉を継続することで合意した。アルバニージー氏は可能な限り速やかに交渉を加速させたいとし、ソロモン諸島との包括的な条約や取り決めの締結を目指していると述べた。「内容を重視しており、急いで質を犠牲にするつもりはないが、これまで非常に建設的な議論ができた」と語った。ワレ氏は「協議すべきことは多く、今後の活発な対話を期待している」と述べた」

     

    ソロモン諸島は、2022年に中国と安全保障協定を締結した。しかし2024〜2026年に豪州との関係を再強化 というように、どちら側にも大きく振れ得る国で、地域外交のバランスを左右します。ソロモン諸島は、太平洋諸国の中で中国と最も緊密な関係にあるとみられてきた 。その国が、中国のミサイル発射実験に対して反対した。中国は、完全に目算が狂った形だ。

     

    (3)「アルバニージー氏は、太平洋歴訪の一環としてホニアラを訪れているが、Xに「オーストラリアとソロモン諸島はパートナーシップを強化している」と投稿した。「オーストラリアの安全保障は太平洋から始まる。われわれは常に隣国のために駆けつける」と記した。オーストラリアは6日にフィジーと相互防衛同盟を締結した。先月はバヌアツと開発・安全保障協定に調印した」

     

    中国が、このタイミングでミサイル発射実験をした理由は何か。 日米への威嚇・牽制が目的である。日本の防衛力増強(反撃能力、南西諸島防衛)と米軍のプレゼンス増加(グアム・フィリピン・日本)への対抗であろう。こうした流れに対し、中国は 「我々は第二列島線まで射程に収めている」 というメッセージを送るために、SLBMやICBMの試験を行ったと分析されている。また、 国内向けの示威(政権の統治正当性)もある。中国は経済減速・失業増加・地方財政危機など、国内の不満が高まる局面で 軍事力の誇示を「統治の安定化」に使う傾向がある。この調子では、さらなる試射も行うであろう。


    あじさいのたまご
       

    ロシア経済が、危機に向っている。ロイターが入手した、欧州のある国の情報機関の報告書は、ロシアの金融機関が戦時経済負担の多くを背負っているため、同国は「爆発的な」銀行危機に陥るリスクがあると警告している。ロシアの銀行の状況を欧州当局者に伝えるためにここ数週間で作成されたこの2ページの文書は、西側によるさらなる規制に対するロシアの銀行の脆弱性を概説したものだ。『ロイター』(7月6日付)が、すっぱ抜いた。

     

    ロシアの銀行は、ウクライナへの全面侵攻以降に科された制裁をおおむね乗り切ってきた。だが、融資の焦げ付きと家計債務の増加による不良債権が、銀行の「爆発的」な経営リスクを生み出している。政府は、この事態を隠蔽しているが、大規模な銀行危機リスクをいつまで隠し通すことは不可能と判断されている。 ウクライナとの戦争費用が国庫を圧迫する一方、企業は銀行への依存度を高めているので、銀行へ戦時経済リスクの全てがしわ寄せされている。これ以上の不良債権を背負いきれない、ギリギリの段階へ向っている。

     

    カナダのカーニー首相は、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の場で受けた米CNNテレビによるインタビューの中で、「我が国とドイツ、英国、フランスはいずれも潮目が変わったとの見方で一致している。(中略)(ロシアの)プーチン大統領は敗北するだろう」と述べた。これは、『フィナンシャル・タイムズ』(7月6日付)が報じている。

     

    カーニン氏は、「プーチン氏が黙って敗北を受け入れると見る向きはほとんどない。そのため西側諸国の政策立案者たちは、この夏に戦況がさらに激化する事態を想定し、警戒を強めている」としている。ある関係者は、「我々全員が抱いている疑問は、プーチン氏は次にどう出てくるのかという点だ」と語る。ロシアは、明らかに文字通りの「手負い熊」になっている。

     

    欧州情報機関が、ロシア経済を「爆発的危機」と判断するのは、次の構造分析による。

     

    1)ロシア銀行の外貨資産が急減

    経済制裁により、欧州銀行との取引停止。SWIFT排除(米銀との取引禁止)、外貨建て資産の凍結 が進み、ロシア銀行は外貨流動性を失っている。

     

    2)ロシア国内の銀行は「戦時財政」に組み込まれた

    ロシア政府は、銀行に対し軍需企業への融資拡大、国債の強制引受を行わせている。これは、銀行の健全性を損なう典型的なパターンである

     

    3)不良債権の急増

    ロシアGDPは、制裁下でも一見安定しているように見えるが、 実際には軍需・補助金で「見かけ上の成長」を作っているだけで、 民間企業の倒産が増えている。不良債権は統計に出ない形で積み上がっている。

     

    4) 地方銀行の破綻が増加

    ロシアでは地方銀行の破綻が増えているが、政府が情報を隠蔽している。

     

    以上のように、間もなく4年半に及ぶウクライナ戦争で、民間経済が大きな傷口を広げている。それが、金融機関の不良債権となって積み上がっている。

     

    ロシア政府が、危機を隠せなくなる「引き金」はなにか。

     

    1 )原油価格の急落

    ロシア経済は原油依存である。 原油価格が下がると、銀行の外貨収入が一気に減る構造になっている。

     

    2)軍事費の過剰負担

    ロシアは、GDPの約7%を軍事費に投入しており、 銀行が国債を強制的に買わされている。戦時中の日本が、これと同じであった。

     

    3)欧州の追加制裁

    欧州は、さらにロシア銀行の「抜け穴」を塞ぐ制裁を検討している。これらが重なると、 ロシア銀行の資金繰りが、一気に逼迫して経営破綻する可能性が強まる。

     

    これらを総合すると、 欧州情報機関の「爆発的危機」という表現は、政治的誇張ではなく、構造的に十分起こり得る状況にある。ただし、現時点では 事実が隠されているので公式統計では「危機はまだ表面化していない」。現実は、「危機8合目」と言って差し支えない状況に追い込まれている。欧州情報機関は、「ロシア銀行危機は、戦争継続能力の限界を示す」 と分析している。

     

    ロシアが経済破綻に陥った場合、中国はどういう立場に追い込まれるか。米中ロ三角関係に変化が起こる。現在は、 米 vs 中+ロ(ただしロは弱いが「ノイズ」として機能)。ロシア自壊後は、米 vs 中(ロは「問題国家」だが、戦略的重みは低下)となる。中国は。米国の「前線に立たされる」立場になり、 ロシアの影に隠れる余地がなくなる。結果として、米中対立は、「より直接的」になるであろう。中国は、ロシアを盾にできず、自国の経済・軍事・技術の弱点がそのまま米国の「標的」にされる。中国は、米国とアジア周辺諸国(日本・豪州・フィリピン・インド)によって取り囲まれる形になる。こういう、状況下でも日本威圧を繰り返す余力があるだろうか。

     

     

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