勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    韓国には、いまだに事大主義がはびこっている。朝鮮の宗主国であった中国のくびきから解き放たれずに恐れているからが。習氏が、米中首脳会談で日本の「新軍国主義」を非難して激怒したという『フィナンシャル・タイムズ』の記事が、韓国では現実味を持って受け取られている。これは、中国の経済実態がどれだけ空洞化しているか、という現実を棚上げした恐怖論である。

     

    中国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の主要3ヶ国(インドネシア・ベトナム・フィリピン)からも離反され、日本と同盟に次ぐ順位である「包括的戦略的パートナーシップ」を結ぶほどだ。「遠交近攻」政策の失敗であり、米国へは休戦である「建設的戦略的安定関係」を提案するほど追い込まれている。この中国が、行き場のない鬱積の中で日本非難によって「心の安定」を保っているのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(5月27日付)は、「『プランB』なき日本とどのように協力していくのか」と題する記事を掲載した。

     

    先月10日に英国「フィナンシャル・タイムズ」に掲載された「トランプ大統領に『No』と言えない日本』という記事を何度も読み返した。この記事は、「中国の台頭」と「北朝鮮の核武装」という2つの大きな安全保障上の脅威に直面している日本が、トランプ大統領の2期目就任後に直面している「戦略的苦境」について述べたものだ。

     

    (1)「予測不能な」トランプ大統領の登場により、米国は少なくとも今後3年間は「信頼できない」国のままだが、日本に「プランB」は存在しない。代替案なき日本は、「トランプ大統領の機嫌を取ろうとすればするほど、(そのことをよりよく知る米国から)ますます惨めな扱いを受けざるを得ない」ことになる。このもどかしい現実こそ、「『No』と言えない日本」を襲っている「国難」の正体だと言える。この「不幸な構図」は韓国にもそのまま当てはまるが、韓国と日本の間には決定的な違いがある。長い歴史を通じて形成されてきた両国の「中国観」だ」

     

    米国は、レアアースを初めとして日本の協力を得なければならないことが増えている。米国覇権は、極論すれば太平洋を抑えていることで成り立っている。こういう現実を考えたことがあるだろうか。ASEANは、米中両陣営に挟まれているが、日本という「緩衝材」によって米国側へ結び付いているのだ。この意味で、日本は米国の死命を制するほど重要なポッジションを握っている。米国従属ではない。

     

    (2)「昔から「中華秩序」と呼ばれる国際秩序を受け入れて生きてきた韓国人は、中国のことを真っ向勝負するのは難しい「大国」だと考えている。対して日本は中華秩序の外で生きてきたし、明治維新(1868)で富国強兵を成し遂げ、清を打ち破り、独自の地域覇権秩序を築いた(1895)という強烈な歴史的経験がある。そのため、日本にとって中国中心の地域秩序を受け入れるということは、自らの長年の「アイデンティティー」と日清戦争以降の国家的「成功」の否定を同時に意味する。国の骨格が折れない限り、到底受け入れられないだろう」

     

    日本は、遣唐使時代(8~9世紀)を除いて中国大陸との政治的関係はゼロである。これは、日本が中国を危険視して敬遠した結果である。中国へは、何らの恐怖感もなく冷静に観察する立場である。中国を恐れおののく「事大主義」とは無縁である。

     

    テイカカズラ

     

       

    (3)「興味深いのは、日本は厚かましい侵略戦争を繰り広げた結果、無惨に敗北したにもかかわらず、東アジアの戦後国際秩序が彼らに有利な方向へと再編されたことだ。現在この秩序を維持しているのは米国、つまり「米日同盟の力」だ。したがって、韓国人が「米中どちらにつくのか」との問いを「道具的」に受け取るとすれば、日本人は生死にかかわる「存在論的」追及だと感じる。まさにこの点で、韓日の「中国観」は根本的に異なる」

     

    日本が、敗戦にもかかわらず世界秩序の中で地位を得てきたのは、欧州で言えばドイツと同じ立場だ。科学技術の担い手として米国が手放さかった結果である。日本が、米国の庇護を受けたというよりも、米国の敵方へ回るときの恐ろしさを認識していたものだ。日本の再軍備を徹底的に阻止する行動を取ったのは、日本恐怖症とも言える。それは、太平洋戦争における日本軍の戦い方から会得したものである。米国は、日米戦争で日本の本当の姿を見たのだ。

     

    (4)「振り返ってみると、「中国の台頭」がはじまった2010年以降、日本の外交は「米国を助けて(!)」現在の秩序を何とか維持しようという凄絶な死闘いだったと言える。国内の反発世論を抑えつけながら「集団的自衛権」の限定的な行使に向けた立法作業を完了(20142015)し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という「中国けん制」のためのグローバル戦略を打ち出し(2016)、防衛費を国内総生産(GDP)の2%にまで引き上げることを誓った(2022)のに続き、韓米日3角軍事協力への第一歩を踏み出すことに成功した(2023)。それを足がかりとして本格的に中国に圧力をかけようとした瞬間、第2期トランプ政権が登場したわけだ」

     

    このパラグラフは、余りにも皮相的である。自衛権は、国家固有の権利である。ただ、日本には太平洋戦争を始めたという道義的責任がある。それゆえ、集団的自衛権の中での再軍備である。これは、ASEANを安心させると同時に、中国への対抗勢力の中心になって貰いたいという願望とも交錯している。日本が武器輸出制限を解除したことを一番、歓迎しているのはASEANとNATO(北大西洋条約機構)である。日本の評価は、敗戦80年で根本的に変わったのだ。

     

    (5)「日本の高市首相は、3月の首脳会談でトランプ大統領の懐に飛び込むという行為と、「世界に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」という露骨なへつらいを交えつつ、米中の「戦略的接近」の阻止に最善を尽くしたが、実現できなかった。トランプ大統領と中国の習近平国家主席は今月14日に北京で会談し、両大国が今後「建設的戦略的安定関係」を築いていくことで合意した。習主席は会談で「高市の日本」に対する激しい怒りをあらわにしたという」

     

    外交辞令という言葉通り、相手国を不快にさせない発言は常識である。そういう片言隻句を捉えて批判するのはお門違いである。中国の提案した「建設的戦略的安定関係」は、「国共合作」の類いである。中国共産党が苦境に立たされたとき、国民党(蒋介石)と休戦したあの策略である。米国は、同意しなかった。底意を見抜いているからだ。習氏は、ここまで追い込まれている。この鬱憤を日本へ向けているだけである。

     

    (6)「14日の北京首脳会談を機として米中関係が本格的な「G2の時代」に足を踏み入れるかはまだ分からないが、日本外交が「袋小路」に迷い込んでしまったことは明らかなように思える。高市首相が今のような答えのない対中強硬策を維持すれば、「改憲などの保守アジェンダを推進するために、中国との関係を意図的に悪いままにしている」(田中均元外務審議官の6日の指摘)という非難が説得力を得ていく」

     

    日本外交は、ますます本領発揮である。それは、徳川家康型の外交戦略である。声高に叫ばず、相手の動きに合せて行けるゆとりがある。それは、世界を動かす技術を握っているからだ。重要鉱物に不可欠な化学的精錬法、次世代通信網「6G」の光電融合通信「IOWN」(アイオン)、クラウド不要の現場フィジカルAI半導体の3種だ。産業革命以降の「第6次技術革新」の主要部分は、日本一国が握ったのである。日本は、何ら臆せず静かに自由と民主主義を守る旗手として進めるのだ。

     

     

     

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    日本は、「レアアース弱体国」と思い込んでいる向きが圧倒的である。それは、精錬法で「技術革命」が起っていることに気付かないメディアの責任でもあろう。日本が開発した化学的精錬法は、中国の採用している物理的精錬法に比べて雲泥の差がある。低コスト・無公害という大きなメリットがあるのだ。

     

    化学的精錬法では、放射性物質(主にトリウム・ウラン)を「溶液中で分離・濃縮し、最終的に固化して管理可能な形にする」のが基本である。 一方で 物理的精錬法は放射性物質をほぼそのまま残渣として抱え込むため、処理コストが高く、環境負荷も大きい。 この違いが、いま世界が化学的精錬法へ移行している最大の理由である。

     

    ASEAN(東南アジア諸国連合)のベトナム・インドネシア・フィリピンが、化学的精錬法採用に動いており、日本と同盟に次ぐ高位の「包括的戦略的パートナーシップ」を結ぶほかに、TPP(環太平洋経済連携協定)へ既加盟(ベトナム)ないし加盟申請(インドネシア・フィリピン)するという風向きにさせた大きな要因である。こういう実態を認めれば、化学的精錬法への理解が進むであろう。

     

    『毎日新聞エコノミスト・オンライン』(5月26日付)は、「中国1強『レアアース』供給多様化で日本が存在感増す理由」と題する記事を掲載した。筆者は、清水孝太郎三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済・産業ユニット長 主席研究員である。

     

    レアアースの鉱石生産で世界の7割、分離・精製や金属還元といった中間工程では9割のシェアを握る中国。急速にシェアを伸ばしたのは1980年代後半からだった。

     

    (1)「希土類の世界市場は年間40万トン弱に過ぎず、鉄や銅と比べると非常に少量である。そのため、新たな鉱山が一つ稼働するだけですぐに供給過剰となってしまい、値崩れしやすい市場構造にある。新規の希土類鉱山の開発プロジェクトの中には、採算を取れる見込みが立たずに中止してしまったものも多数存在する。現在では希土類鉱石の世界生産に占める中国のシェアは7割弱まで低下したが、分離・精製や金属還元といった中間工程では、依然として中国が圧倒的な地位を維持している」

     

    レアアースの世界市場は、年間40万トン規模である。過剰生産になれば市況は暴落する。この8月から西側諸国が「重要鉱物特恵市場」を稼働させる。市況が暴落しても、一定価格で買い取るシステムだ。中国の市況操作を防ぐ意味である。55ヶ国が参加する。

     

    (2)「中国が希土類のサプライチェーンで強い影響力を有する背景として、「イオン吸着鉱」という放射性物質をほとんど含まない鉱床が大規模に存在すること、中間工程で大量に消費する有機溶媒や電力の利用が容易であること、高温で危険な作業を伴う金属還元プロセスの業務に応じる作業員を確保しやすいこと、自国内に世界最大の希土類市場を抱えていること──などが挙げられるだろう」

     

    中国は、①「イオン吸着鉱」は、乱獲が祟って数年以内に資源枯渇の見込みである。②と③は、物理的精錬法を指している。物理的精錬法は、次のような特色を持っている。

    初期投資:低い設備が簡単(破砕・焼成・比重選鉱)

    運転コスト:中〜高 放射性残渣の管理・保管が重い

    外部不経済:非常に高い環境汚染・地下水汚染・住民被害

    総合コスト:実は高い中国が安く見えるのは環境コストを無視しているためだ。

    日本が開発した化学的精錬法では、上記の問題は起らない。

     

    (3)「中国に依存しない希土類サプライチェーンの構築には、新規鉱山開発に加えて、技術革新、また新たな設備投資や制度構築も重要な柱である。例えば、豪州のライナス社は、日本政府や双日の資金援助を受けて希土類の採掘や分離・精製を進め、23年からは希土類鉱石中に数%しか含まれない重希土類を効率的に分離する事業にも取り組んでいる。また、ベトナムでは信越化学工業や昭和電工(現レゾナック)など、日系資本による金属還元工場も建設された。こうした取り組みが功を奏して、小規模ではあるが、徐々に中国以外で希土類サプライチェーンが構築されつつある」

     

    このパラグラフは、全て化学的精錬法を指している。次のような特色をもっている。

    初期投資:高い 溶媒抽出設備、排水処理、放射性沈殿物の固化設備が必要

    運転コスト:低〜中放射性物質を早期に除去するため、後工程がクリーン

    外部不経済:極めて低い → ESG基準に完全適合

    総合コスト:中程度長期的には物理的精錬法より安定・低リスクが見込める。

     

    (4)「希土類のサプライチェーン強靭化に際して課題となるのが、中国産の希土類に劣後するコスト競争力である。採掘や中間工程におけるコスト上昇分をどのように吸収し、また需要家へコスト転嫁していくかが残された問題である。希土類の必要量自体は自動車や家電などの製品全体から見ればごくわずかであり、仮にコスト上昇分をその価格へ転嫁したとしても、最終製品価格への影響は限定的であるとみる向きもある」

     

    このパラグラフは、実態を見誤っている。化学的精錬法が物理的精錬法を上回っていることは、世界各地で採用への動きが始まっていることでわかる。「重要鉱物特恵市場」へ出荷するレアアースなどは、化学的精錬法であることが条件になっている。

     

    (5)「希土類は地球上に豊富に存在していることから、鉱石採掘で問題となる放射性物質の安定処理とコスト転嫁の問題さえ解決できれば、中長期的には中国依存からの脱却も十分に可能と考えられる。希土類サプライチェーンの強靭化は、経済安全保障の観点からも重要である。中国は希土類を自国の国益を最大化させるための手段として位置づけ、輸出管理のみならず、国際標準化などや市場ルール形成の場にも積極的に関与している。日本や欧米諸国は、持続可能性に配慮した新たなサプライチェーンを構築することで、省エネ・省資源に取り組みつつ、中国に対する独自性の確立を目指している」

     

    このパラグラフの指摘は、すでに化学的精錬法によって解決できることが立証されている。心配はご無用になっている。

     

     

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    韓国には、いまだに事大主義がはびこっている。朝鮮の宗主国であった中国のくびきから解き放たれずに恐れているからが。習氏が、米中首脳会談で日本の「新軍国主義」を非難して激怒したという『フィナンシャル・タイムズ』の記事が、韓国では現実味を持って受け取られている。これは、中国の経済実態がどれだけ空洞化しているか、という現実を棚上げした恐怖論である。

     

    中国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の主要3ヶ国(インドネシア・ベトナム・フィリピン)からも離反され、日本と同盟に次ぐ順位である「包括的戦略的パートナーシップ」を結ぶほどだ。「遠交近攻」政策の失敗であり、米国へは休戦である「建設的戦略的安定関係」を提案するほど追い込まれている。この中国が、行き場のない鬱積の中で日本非難によって「心の安定」を保っているのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(5月27日付)は、「『プランB』なき日本とどのように協力していくのか」と題する記事を掲載した。

     

    先月10日に英国「フィナンシャル・タイムズ」に掲載された「トランプ大統領に『No』と言えない日本』という記事を何度も読み返した。この記事は、「中国の台頭」と「北朝鮮の核武装」という2つの大きな安全保障上の脅威に直面している日本が、トランプ大統領の2期目就任後に直面している「戦略的苦境」について述べたものだ。

     

    (1)「予測不能な」トランプ大統領の登場により、米国は少なくとも今後3年間は「信頼できない」国のままだが、日本に「プランB」は存在しない。代替案なき日本は、「トランプ大統領の機嫌を取ろうとすればするほど、(そのことをよりよく知る米国から)ますます惨めな扱いを受けざるを得ない」ことになる。このもどかしい現実こそ、「『No』と言えない日本」を襲っている「国難」の正体だと言える。この「不幸な構図」は韓国にもそのまま当てはまるが、韓国と日本の間には決定的な違いがある。長い歴史を通じて形成されてきた両国の「中国観」だ」

     

    米国は、レアアースを初めとして日本の協力を得なければならないことが増えている。米国覇権は、極論すれば太平洋を抑えていることで成り立っている。こういう現実を考えたことがあるだろうか。ASEANは、米中両陣営に挟まれているが、日本という「緩衝材」によって米国側へ結び付いているのだ。この意味で、日本は米国の死命を制するほど重要なポッジションを握っている。米国従属ではない。

     

    (2)「昔から「中華秩序」と呼ばれる国際秩序を受け入れて生きてきた韓国人は、中国のことを真っ向勝負するのは難しい「大国」だと考えている。対して日本は中華秩序の外で生きてきたし、明治維新(1868)で富国強兵を成し遂げ、清を打ち破り、独自の地域覇権秩序を築いた(1895)という強烈な歴史的経験がある。そのため、日本にとって中国中心の地域秩序を受け入れるということは、自らの長年の「アイデンティティー」と日清戦争以降の国家的「成功」の否定を同時に意味する。国の骨格が折れない限り、到底受け入れられないだろう」

     

    日本は、遣唐使時代(8~9世紀)を除いて中国大陸との政治的関係はゼロである。これは、日本が中国を危険視して敬遠した結果である。中国へは、何らの恐怖感もなく冷静に観察する立場である。中国を恐れおののく「事大主義」とは無縁である。

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、今や何をやっても許されるという傲慢さを身につけてしまったようだ。TPP加盟国でないにも関わらず、蘇州で22日開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせ、TPP加盟国の会議を開いたというのだ。逸脱行為も甚だしいと批判の声が出ている。

     

    『時事通信』(5月25日付)は、「非加盟の中国がTPP行事 『無断開催』に困惑広がる」と題する記事を掲載した。

     

    中国・蘇州で22日開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせ、中国が非加盟の「包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP)」に関する行事を主催したことが同日、分かった。事前承認など正規の手続きを踏んでおらず、加盟各国は困惑。APEC議長国の立場を利用した形で、中国が目指す共同声明採択にも悪影響が及びかねない

     

    (1)「行事は、日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)も参加する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」との対話として開催した。CPTPP加盟国の一部は不参加などの対応を取ったもようだ。米国が保護主義に傾く中、高水準の貿易自由化を求める多国間協定として存在感を増すCPTPP入りの正当性を得ることなどが、中国の狙いとみられる。中国は2021年に加入申請したが、交渉入りしていない。今回の行事開催について加盟国の一部では「無断開催」との反発が出ており、全会一致を原則とするCPTPPの運営に反する行為として将来的な加入交渉に影響する可能性もある」。

     

    中国が、TPP(CPTPP)の制度空間を「乗っ取ろうとした」極めて異例の動きである。2026年のAPEC議長国は中国である。その立場を利用し、APECの場で TPPの行事を主催するという「制度の混同」を意図的に起こしているものだ。これは、国際制度論でいう 「制度ハイジャック」 に近い行動といえよう。TPPは、新規加盟や、公式行事、枠組み変更 などすべて全会一致が原則である。非加盟国が勝手に行事を主催するのは、 制度の根幹を揺るがす行為である。

     

    加盟国が、中国主催の行事に参加すると、中国が「TPPの一員のように振る舞う」もので、国際社会で既成事実が作られる恐れが出てくる。加盟国が、中国の加入に反対しにくくなるという指摘もされている。 制度の乗っ取りにつながるのだ。

     

    (2)「APEC貿易相会合では、米国やロシア、台湾を含む加盟21カ国・地域内の貿易自由化を目指す「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」も議論する見通し。中国は、CPTPPなど巨大自由貿易協定(FTA)の拡張による実現を共同声明に盛り込みたい意向とみられるが、アジア太平洋地域の貿易自由化で主導権を握ろうとする中国への警戒感が広がっており、採択できるか不透明だ」

     

    日本は、TPPの基準を守る「門番」である。中国の加入に最も慎重である。日本は、ASEAN+UAEの拡大戦略を主導中である。それだけに、中国の「無断開催」は、日本の制度外交への挑戦でもある。 これは、「中国の焦り」の表れでもある。

     

    中国は、TPP加盟が進まない一方で、ASEANが日本側に傾きつつあることにあせっている。インドネシア・フィリピン・UAEが日本推薦で加入が前進中である。RCEPも期待ほど機能していない現状で、 中国は制度空間で日本に押されている。その焦りが、 今回の「無断開催」という強引な行動につながったとみられる。

     

    中国は、「制度の外側から制度を操作する」戦略を好む。今回の行動はまさにその典型。ルールを守らず、既成事実を作り、外側から制度を歪め、内側に入り込むものだ。これは、南シナ海占拠の「九段線」と同じ構造である。中国は、ルールを守らず「超法規的」行動が許されるはずがない。「まず既成事実を作り、後から正当化する」、中国外交パターンがTPPにも現れたと言えよう。

     

    中国は、TPP非加盟のままTPPの制度空間に入り込もうとした。 加盟国に無断で行事を主催し、加入の正当性を演出しようとしたものである。 日本を含む加盟国は強く警戒している。これは、単なるニュースでなく、TPPをめぐる「制度戦争」の一幕である。 

     

     

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