勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    経済政策の名にも値しない

    IMFが指南する韓国経済

    中国経済と一蓮托生の世界

     

    韓国の文政権は、国内経済不振の突破口として南北交流事業計画に大きな期待をかけて来ました。昨年9月、南北首脳による「平壌共同宣言」の一項目に、開城工業団地と金剛山観光の開発を入れたほどです。しかし、先の米朝首脳会談は物別れに終わりました。米国の核全面放棄要求と北朝鮮の段階的核放棄が噛み合わなかったのです。

     

    その後、北朝鮮は米朝交渉放棄のスタンスを見せて米国を揺さぶっています。この結末によって、韓国経済は影響を受けることが分ってきました。韓国は、米朝首脳会談が成功するという前提で、国内経済立て直しを図っていたのです。これは、韓国大統領府の特別補佐官が、米国の外交専門誌に寄稿して判明しました。

     

    韓国政府が、北朝鮮側に沿った核放棄案に賛成してきた裏には、南北交流事業をテコにした国内経済打開策があったのです。だが、南北交流事業と言ってもシンボル的な意味合いしかありません。開城工業団地と金剛山観光の再開が軌道に乗ったとしても、利益は北朝鮮を潤すだけで、韓国にはほとんどメリットはありません。ただ、前記の事業を足場に他の事業を拡張するとしても、北朝鮮は外貨が乏しいという事情があります。ビジネスは、投下資金を回収してこそ利益が確定するものです。その回収メドが立たないビジネスは、慈善事業と変わりありません。



    ここで、北朝鮮の経済状況を見ておきます。

     

    2017年の輸出は、前年比で40%減少しました。その結果、GDPはマイナス3.5%と推測されています。18年の輸出は同88%減少した結果、GDPはマイナス5%を記録したという分析が出ています。外貨準備高の正確な金額は分かりません。

     

    これまでは、年間の貿易規模が60~70億ドルと推定されているので、外貨準備高は70億ドルを超えることはないと見られます。50億ドル前後ではないかとの推定が多数のようです。北朝鮮は、すでに前述のように経済制裁強化で17~18年の貿易赤字によって30億ドルを使い果たしたとすれば、残りはわずか20億ドル程度に過ぎず、「通貨危機」が起るという予想もあるほどです。

     

    こういう北朝鮮の外貨事情から見て、南北交流事業が軌道に乗ったとしても「慈善事業」の域を出ることはなかったでしょう。要するに、文政権が期待を賭けるような効果は、投下資金の回収という意味まで含めれば、最初からなかったと言えます。


     

    経済政策の名にも値しない

    このように、文政権の経済政策には確実性という点で、きわめて怪しいものが紛れ込んでいるのです。その中でも最大の失策は、最低賃金の大幅引上げです。毎回、この話が出てきますので読者は、「またあの話か」と食傷気味と思います。この最賃引き上げによって、韓国経済は破綻の淵に追い込まれているのです。まさに、「政策不況」の到来です。

     

    経済政策は、合理的ものでなければ所期の成果が上がりません。文政権は、最賃の大幅引上げが合理的なものと錯覚したのですが、この背景に、儒教との深い関わりがあると見ています。ぜひ、この点の文化的背景を理解していただきたいのです。

     

    私は、数年かけてまとめた『中国の経済的発展と社会的限界』(2016年)を私家版として出しました。中国経済について、その背後にある社会思想や社会構造という視点で分析したものです。結論を言えば、儒教思想とそれに基づく社会の支配構造が、中国経済の発展を阻止するだろうという内容です。

     

    私の考える「中国経済論」は、韓国にもそのまま当てはまります。韓国は李朝(1392~1910)によって統治されました。国教は、儒教の朱子学です。道徳主義に基づいて他を非難攻撃するという過激な思想です。現在の韓国は、国内での争いや対外的な排外行動に、この朱子学の特色がよく現れています。「反日」「排日」は朱子学の教えですからどうにもなりません。日本は諦めるしか道がないのです。しかし、韓国に「やられっぱなし」では愉快でないのも事実。やはり、日本が教育的意味で「お灸」を据える時期が来ていると思います。

     

    韓国が儒教であることから、経済活動に対して論理的な関心を持たないという特色があります。儒教は「寡欲」と「無欲」を教えるだけで、正統な経済活動に伴う経済倫理が存在しないのです。支配者にとって、これほど都合のいい教えはありません。「欲望を持つな」ということは、経済的な不満を禁じます。利益の概念を否定する儒教には、経済倫理が成立する余地がないのです。

     

    文在寅氏は、典型的な朱子学の立場を踏襲していると見られます。以下にその理由をあげます。(つづく)


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    中国企業は、一段の景況悪化に怯えている。世界有数の取引信用保険会社であるフランスのコファス(coface)は18日、中国企業の支払い動向調査を発表した。過剰債務が、雪崩現象となって企業の資金繰りを圧迫している様子が分るであろう。銀行は必死で新規融資先の開拓に乗り出している。しかし、信用不安を伴うなかで、企業選別は不可避である。融資は伸び悩んで当然だ。

     

    銀行の信用創造は、マネーサプライM2の伸び率に表れている。このM2の伸び率が、GDPの名目成長率を下回るようになるのは2017年の6月以降だ。信用創造能力が低下した証拠だ。この頃から、銀行の貸出が厳しくなったであろう。

     

    銀行が貸出に慎重になったのは、返済が滞り始めた結果である。中国企業は、この時点で資金繰りに苦しむようになったはずだ。すでに、33ヶ月もこの状態が続いている。こうして長期の資金繰り難で、企業が「内部崩壊」の段階へ向かっていることは確実である。

     

    中国は、この緊迫する事態において貿易戦争へ突入した。米国に対して勝てるはずがなかった。習近平氏が、無謀な「貿易戦争」を始めたことになる。このため、右派も左派も「習近平批判」一色というのはうなずける。

     

    『大紀元』(3月20日付け)は、「中国企業の半数以上、今年経済状況がさらに悪化 ―コファス調査」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界有数の取引信用保険会社であるフランスのコファス(coface)は18日、中国企業の支払い動向調査を発表した。調査対象となった中国企業1500社の約6割にあたる885社が、2019年の中国経済は2018年と比べて一段と悪化するとの見方を示した。コファスが2003年に調査を開始して以来、中国企業は最も悲観的な見通しとなった」

     

    調査対象企業の約60%が、今年の中国経済は一段と悪化するとの予想である。資金繰り悪化が原因だ。金融引き締めによるものでなく、「信用収縮」のもたらした自律的現象である。

     


    (2)「香港メディア『東網』などによると、コファスの調査では、59%の中国企業が2019年の経済成長率は改善する可能性が低いとの見方を示した。62%の企業が2018年に取引先の支払い遅延に見舞われたと答えた。40%の中国企業は2018年に支払い遅延の金額が増えたとした。コファスは、景気低迷、信用縮小、債務不履行(デフォルト)の増加が原因で、多くの中国企業のキャッシュフローが悪化し、支払いが困難になっていると指摘した。自動車、交通、建設、エネルギーの各分野の企業は、事業を維持するために、支払期間をより長くした。企業の平均支払期間は2017年の76日間から、2018年の86日間に拡大した」

     

    取引信用保険会社のコファスは、景気低迷、信用縮小、債務不履行(デフォルト)の増加が原因で、多くの中国企業のキャッシュフローが悪化し、支払いが困難になっていると指摘した。キャッシュフローの悪化は、企業生存の「基盤」そのものの破壊を意味している。中国経済が、これまで辿って来た「放縦」に対して、最後の精算を迫っている。これが、バブル崩壊に伴う断末魔そのものなのだ。日本企業もこの苦しみを経験させられた。

     


    (3)「コファスのエコノミスト、カルロス・カサノヴァ氏は、中国経済が高度成長期を経た今、構造的試練に向き合わざるをえない局面を迎えたとの見解を示した。経済失速に伴い、中国企業の資金難と債務償還の圧力が強まりつつある

     

    習近平氏は、こういう断末魔現象を、側近から知らされなかっただろうか。もっとも、習氏の側近は、民族主義者が多いので、暗い話を歓迎しなかったであろう。中国は高度成長期を終えて、中成長からもう一段下へ降りようとしている。過剰債務の処理が、この低成長期で最大の課題になる。世界覇権挑戦など、あり得ない夢を見ていたと言うほかない。


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    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル 電子版(WSJ)』(3月20日付け)は、米中通商協議は4月中に合意見通しと報じた。

     

    2月末にも合意間近のように思える時期はあった。米側の交渉担当者らは、トランプ氏と習近平国家主席による3月末までの首脳会談で合意がまとまる可能性について、楽観的見方を示していた。こうした行程表は、ハノイでの米朝首脳会談決裂を中国側の交渉担当者らが目の当たりにしたことで崩れた。中国側は、トランプ氏が習氏に対し、受け入れるか拒むかという二者択一を突きつけることを懸念し、首脳会談前に合意内容を確定させる必要があるとの結論に至った。

     

    双方は英語の文章をベースに交渉を行っており、それを中国語に訳す必要があることで遅れが生じている。また、交渉の進展に詳しい関係者によると、劉氏の権限が限定的なため、合意条項について習氏ら共産党幹部に承認を取る必要もあるという。以上は、WSJの報道による。

     

    中国経済の現状は、本欄で詳細に報じているように金融状態が緊迫の度を加えている。中国人民銀行(中央銀行)金融安定局の王景武局長が18日、「国内金融セクターの『灰色のサイ』のリスク(顕著であるにもかかわらず看過されているリスク)の高まり」を警告するほどの事態だ。通常、中央銀行は不安心理を煽るような言動を控えるもの。だが、あえて警告を発して、米中通商協議の妥結を急がせている面もあろう。中国の完敗である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月20日付け)は、「米中貿易協議は来週再開、4月中の合意目指す」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中は来週から貿易協議の新ラウンドを開始する計画だ。トランプ政権の複数の関係者によると、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表とスティーブン・ムニューシン財務長官は3月25日の週に北京を訪問し、中国の劉鶴副首相と会談する見通し。交渉期間は不明だ。翌週には劉副首相が首都ワシントンを訪れる計画という。観測筋によると、交渉は大詰めを迎えており、両国は予定より1カ月遅れに当たる4月中の合意を目指している」

     

    米中首脳会談は、署名の儀式に終わるよう問題点はすべて実務協議で終わらせる方針だ。それ故、合意に向け時間がかかっている。

     


    (2)「両国は、米国の対中輸出の大幅拡大、中国側の知的財産保護強化、米企業に対する技術移転の圧力廃止、中国企業への補助金削減などを網羅した包括的合意を目指している。しかし両国間にはまだ、合意に強制力を持たせる方法や、米中それぞれが昨年導入した追加関税を引き下げていくペースなど、解決すべき重要な問題が残されている。
    ドナルド・トランプ米大統領は先週、内容が不十分と判断した場合には、合意を見送ると言明した。しかし、交渉状況に詳しい関係者によれば、舞台裏ではライトハイザー代表に対し、交渉をまとめるよう圧力をかけている」

     

    中国が、先の全国人民代表大会(全人大)で決定した「外商投資法」は、行政機関による外国企業を対象とした技術移転の強要禁止を盛り込んだほか、知的財産権の侵害行為に対する法的責任の追及が採決の直前に加えられるなど、米国の要求に沿った内容となっている。だが、抜け穴も指摘されており、米国としては鵜呑みにできない点が多いという。

     


    「ライトハイザー氏は、米国の優先事項については公に語っていない。それは、約束違の際に米国が課す関税に対し、少なくとも一定の状況においては報復措置を講じないと中国に約束させることだ。中国政府はこの要求に応じていない。もう一つの大きな問題は、現在かけられている関税を双方が撤廃するペースだ。米国は中国の対応が一定の節目に達した後、徐々に関税を撤回したいと思っている。一方で中国政府は関税が直ちに撤回されることを望んでいる」

     

    米中通商協議は、米国上位で進められている。中国はひたすら、軽減措置を願い出るという無様な形になっている。米国は、中国が約束違反の場合に関税を科すが、中国は報復措置を取らないよう迫っている。完全な「降伏文書」の調印を迫られているようなものだ。習近平氏の「豪語」はどこへ消えたか。中国では、右派も左派も「習近平批判」が渦巻いているという。2期10年の任期となる2022年に、「習続投」になるか微妙と言われ始めている。経済の実態が急激に悪化しているからだ。


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    中国人民銀行は、中国の中央銀行である。日本でいえば、日本銀行だ。その中央銀行の人民銀行幹部が、禁句発言した。中国経済は、綱渡り状況にある。私は、もともと金融論を中心に学んできた身である。金融と聞けば条件反射で身構える習性ができあがっている。それだけに、中央銀行幹部発言の重みを十分に認識している積もりである。

     

    『ロイター』(3月19日付け)は、「中国金融セクター、灰色のサイのリスク高まるー人民銀行幹部」と題する記事を掲載した。

     

    中国人民銀行(中央銀行)金融安定局の王景武局長は18日、国内金融セクターの『灰色のサイ』のリスク(顕著であるにもかかわらず看過されているリスク)が高まっているとし、当局はリスク抑制への取り組みを強化していくと述べた。人民銀行の刊行物「中国金融」で見解を示した。

     

    (1)「米国との貿易戦争の影響で景気が減速するなか、中国当局者からは『灰色のサイ』について警告する発言が出ている。王局長は、『われわれは、世界経済が中長期的に再びリセッションに陥るリスクに十分注意を払い、新たな経済・金融危機につながるようなじわじわとした動きを警戒する必要がある』と述べた」

     

    「灰色のサイ」という言葉が、経済用語として頻繁に使われるようになってきた。誰でもデータの変化を気付いていても、それが最終的にもたらす破壊力の大きさを認識しない「鈍感」さえの警告である。モノの動きは誰でも気付く。だが、通貨の増減がもたらす影響を無視しがちである。経済現象の理解に鈍感なのは、身の破滅につながる。

     


    (2)「中国の金融市場は『外的ショックに非常に敏感』とし、地方政府の隠れ債務リスク、債券デフォルトのリスク、不動産市場のリスクが、金融リスクを引き起こす可能性があると指摘。一部の金融持ち株会社や地方金融機関のリスクが表面化し、ネット金融、特にP2P業者のリスクを解消する必要があるとした。人民元や外貨準備の安定がそがれる圧力がかかっているとの認識を示した。また政府が、株式・債券・為替市場の監視を強化すると述べた」

     

    中国は、過剰債務の重圧ゆえに「外的ショックに対して非常に敏感」である。ラクダは、最後に乗せた藁一本で背骨が折れる、という諺がある。背負う荷物の重さが、限界を超えると軽い藁一本でも背骨が折れるのは、まさに過剰債務にあえぐ中国経済に当てはまる。

     

    具体的には、次の三つのリスクである。

        地方政府の隠れ債務リスク

        債券デフォルトのリスク

        不動産市場のリスク


    上記の3つのリスクは空前絶後である。日本のバブルでは、不動産市場リスクだけであった。中国のバブルでは、①と②が控えている。中国バブルが空前絶後と言われるのは、3つのリスクを同時に抱えているからである。こう見てくると、中国経済自体が「灰色のサイ」という印象である。中国経済がひっくり返ると想像する人は少ない。だが、ひっくり返ったならば、世界を揺るがす。そのリスクは、日一日と大きくなっているのだ。

     

    米格付大手S&Pグローバル・レーティングスは、昨年10月、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとの調査報告を発表した。これによると、2017年中国の公的債務総規模は国内総生産(GDP)の60%を占めた。S&Pは、中国の債務問題について「巨大な信用リスクを伴っている」と警鐘を鳴らした。

     

    (3)「格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは18日発表したリポートによると、中国のシャドーバンキング(影の銀行)セクターは、2018年に4兆3000億元(6410億ドル)減少し、年末時点で61兆3000億元と2016年末に当局が取り締まりに乗り出して以来の最低を記録した。当局の取り締まりが功を奏したといえるが、一方で、多くの中小企業が資金調達に苦しむ事態となった。ムーディーズのアジア太平洋地域の格付け責任者マイケル・テイラー氏は、『政策の優先事項は成長の維持とデレバレッジ(債務削減)の緩和にシフトしているが、当局は金融のシステミックリスクを懸念しているため、シドーバンキングの与信が急回復するとは思わない』と述べた」

     

    中国経済は、金融を緩和してもすでに「流動性のワナ」(金利のワナ)に落込んでいる。バブルの燃えかすはあちこちに残っている。金融緩和しても、実物投資(設備投資)に回る可能性は少ない。不動産投機か株式投機に流れ、さらなる危機をもたらすだけだ。もはや、打つ手はない。


    メルマガ34号 「文政権、労組と結託し南北統一準備、反日をテコに使う危険性」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

    https://www.mag2.com/p/money/646458




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    米中貿易戦争の理由の一つは、大幅な貿易不均衡問題である。米国が一方的な赤字になっているからだ。米国は、この貿易不均衡の是正を求めている。米国から大量の製品を輸入せよという要求である。

     

    国際貿易は本来、多角的なものである。二国間で輸出入を均衡させるべきではない。だが、米中間では米国が多年にわたり圧倒的な赤字を背負い込んでいる。これが問題になっている。中国はこれを逆手にとって、米国から大量の半導体輸入計画を持ち出した。これを見た米国半導体業界は、逆に警戒して「ノー」と拒否。大量の注文に対して、米国が拒否する理由とは?

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月19日付け)は、「米中通商協議、米半導体業界は中国の大量購入案を拒否」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米半導体業界はトランプ米政権に対し、中国との通商交渉で米半導体の輸入拡大を合意案に盛り込まないよう伝えた。米当局者は米国からおよそ1兆ドル(110兆円)相当を輸入するよう中国に要求しているが、半導体業界は自主的にその枠組みに入ることを拒否した。米国の生産コストは極めて高いため、中国に対し強制的な購入枠を設ければ、米半導体メーカーは事実上、中国での新規工場建設を余儀なくされ、中国に生産をコントロールされる事態に陥りかねないという」

     

    米国政府は、中国に対して1兆ドルの輸入増加を要求している。中国は、これに応える形で大量の半導体輸入計画を提出した。これが、「クセ球」なのだ。中国が米国の半導体輸入枠を設定すれば、米国半導体企業はそれに縛られる。生産コストの高い米国半導体輸出で採算を取るには、否応なく中国での生産を迫られる。これが、技術漏洩につながる危険性を伴うのだ。中国の持出す話は眉唾、というわけで米国半導体業界は拒否している。

     



    (2)「米半導体メーカーはまた、中国の競合勢を利することにもなり、米企業の中国依存度を高めてしまうと主張している。米半導体工業会(SIA)のジョン・ニューファー会長は『数字が何であれ、中国による米国産半導体の購入は、市場原理に基づく環境に中国国家の影響を高めるというリスクから目を背けさせるためのものだ』と指摘。『商業上の成功は政府の命令ではなく、市場によって決まるべきだ』と述べた」

     

    米国半導体業界の説明は見事だ。「商業上の成功は政府の命令ではなく、市場によって決まるべきだ」という当たり、資本主義経済の本質を言い当てている。さすがは、資本主義経済の母国である。中国のワナには引っかからない。そういう賢明さを見せている。

     

    (3)「業界関係者によると、中国は向こう6年に300億ドル相当の米国産半導体を購入することを提案した。これは米国の対中半導体輸出を事実上、倍増させる規模だ。中国は当初、向こう6年で2000億ドルとしていたが、これを引き下げた。米半導体業界は中国への工場移転なしで実現はあり得ないとして2000億ドルの案を拒否していた」

     

    中国は、当初、向こう6年で2000億ドルの米国産半導体を購入することを提案。米国が拒否すると今度は、同期間で300億ドルへ引下げてきた。2000億ドルと聞けば、普通なら舞い上がる金額である。米国半導体業界は、非現実的な案として拒否。さらに、300億ドルと7分の1に下げ、誘い水にした。これも拒否されたのだ。

     


    (4)「先月、米商務省と中国国家発展改革委員会(NDRC)が、中国による巨額購入案の取りまとめを再び目指す中で、米半導体の購入拡大案が再び浮上。中国は向こう6年で300億ドルまで水準を引き下げた経緯がある。3月初旬、米半導体業界は新たな提案も拒否した。中国は輸入拡大を確実にするには、割当枠のような制度をまとめる必要があり、米業界関係者の間では、後に中国企業への発注に枠組みが利用
    されかねないとの指摘が出ていた。あるトランプ政権関係者は、交渉責任者を務めるロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は『業界が望まないものは支持しない』と述べた」。

     

    中国の巧妙さは、下線を引いた部分にある。「輸入拡大を確実にするには、割当枠のような制度をまとめる必要がある」と、さも中国の誠意を示すかのような振りをして、米国半導体業界を中国市場に縛り付け、懸案の「中国製造2025」を米国の手で実現させるという魂胆であった。中国は、米国に負けた振りをして米国に勝とう、としたのだろう。その手に乗らぬ米国半導体業界は、見事な眼力というべきだ。


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