韓国政府は、米国が原潜保有を承認したことが、どういう意味であるかを全く理解していないようである。黄海と日本海の警備だけが任務と解釈しているからだ。米国が、核拡散防止条約という壁を乗り越えて韓国へ原潜保有を認めるのは、米国の世界戦略の一端を担うという意味である。韓国は、驚くほど国際情勢への認識を欠いている。
『ハンギョレ新聞』(11月18日付)は、「韓国に対中・対ロ前哨基地の役割を求める在韓米軍司令官」と題する社説を掲載した。
ザビエル・ブランソン在韓米軍司令官が17日、中国とロシアの脅威への対抗における朝鮮半島の地政学的重要性を強調し、(韓国に)事実上米国の覇権維持のための「前哨基地」になることを求めた。さらに韓米日の三角軍事協力を越えて韓国・日本・フィリピンが手を携えた時の利点も強調した。
(1)「米国から見ると朝鮮半島は、中国の下に位置した「軍事基地」のように見えるかもしれないが、ここは5千万人を越える同盟国市民の大切な生活の場だ。ブランソン司令官は「軍事的効率性」だけを掲げて同盟国に無理な役割を押し付けようとする言動をやめ、韓米の政治指導者たちが下す決定を後押しする本来の役割に忠実であることを望む」
ブランソン在韓米軍司令官は、国連軍司令官であるはずだ。韓国が、自主性を強調するならば、国連軍の手を借りずに韓国軍だけで防衛すべきである。集団安全保障の中で現在、韓国の安全が維持されているという「恩恵」を考えるべきだ。
(2)「ブランソン司令官はこの日、在韓米軍のホームページに掲載した文章で、東アジアの地図を(従来の北が上になっている図の方向を)東を上にしてみると、朝鮮半島と関連した「全く異なる戦略的地形があらわれる」とし、「在韓米軍は遠距離で増員を必要とする待機戦力ではなく、米軍が危機状況や有事の際に突破しなければならない防衛線の内側にすでに配置された戦力であることが明らかになる」と主張した」
韓国が、集団安全保障の一員という位置づけになれば、ブランソン司令官の発言は当然である。
(3)「ソウルと平壌(ピョンヤン)、北京、ウラジオストクまでの距離を列挙し、「韓国はロシアの北方からの脅威に対応すると同時に、韓中間の海域(西海)で中国の活動に対応しようとする西欧に接近性を提供する」、「北京の視点から見ると、烏山(オサン)空軍基地に配置された米軍戦力は遠距離戦略ではなく、中国周辺で直ちに効果を発揮する隣接した戦力」だと綴った。朝鮮半島を米国の軍事的便宜によっていくらでも使える「発進基地」にすべきという主張だ。さらに、韓国・日本・フィリピンの間に「戦略三角形」を描く必要があるとし「3国協力を強化することで、米国が利益を得ることができる」と指摘した」
韓国が、米軍=国連軍によって安全が保障されている現状から言えば、朝鮮半島を米国の軍事的便宜によっていくらでも使える「発進基地」にすべきという主張は当然である。朝鮮戦争は現在、法的に「休戦状態」である。国連軍が、韓国でいかなる布陣を敷こうが自由であるのだ。ただし、日本やフィリピンが、米国の利益のために一方的な立場に立たされることはない。日本の場合、日米安全保障条約に縛られるからだ。
(4)「韓国は1950年初め、米国の防衛線である「アチソンライン」から除外されたため、朝鮮戦争という凄惨な悲劇を経験した。朝鮮半島の戦略的重要性を強調し、同じ過ちを防ごうとするブランソン司令官の善意を受け入れるとしても、今回の発言は一介の軍人が口にするレベルをはるかに越えたものだ。ブランソン司令官の提言が現実化すれば、朝鮮半島は在韓米軍の「発進基地」に転落し、中ロの報復攻撃に耐えなければならない」
ブランソン司令官は、国連軍司令官である。一介の軍人ではない。韓国を軍事的に防衛している最高司令官である。
(5)「韓国軍の活動範囲も南シナ海まで一気に拡大される。このような話はブランソン司令官にとっては斬新な「戦略的提案」かもしれないが、我々にとっては生死にかかわる問題だ。あえて地図を逆さまにしなくても、朝鮮半島はあまりにも戦略的に敏感な地域であるため、韓国人としては慎重にならざるを得ない」
朝鮮戦争の当事者は、米国・国連軍・韓国vs中国・北朝鮮である。米国が中国へ対抗すべく南シナ海まで「戦域」を拡大することは、国連軍という立場にたてば可能だ。このように、韓国は、米軍の広い庇護下にあることを認識することだ。現在が、「休戦下」という異常状態にあることを再確認する必要がある。そうなれば、韓国が原潜を持つことの意味が明らかになる。米軍=国連軍という視点にならざるを得ないのだ。それが嫌ならば、原潜を持つべきではない。



