勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

    a0960_008532_m
       

    韓国の民主主義が、文字通りの危機に直面している。大統領選に立候補している「共に民主党」候補の李在明氏は、自らの選挙違反事件で下された高裁再審判決(事実上の有罪)を不満として、「最高裁をクリーンにする」と威嚇している。あってはならない発言を行い、司法府の独立性を脅かしている。李氏が大統領に当選すれば、最高裁人事は「左派」で占められよう。これで、韓国の民主主義が消える。

     

    『中央日報』(5月16日付)は、「共に民主党の李在明候補『法廷はクリーンであるべき』…司法府激浪を予告」と題する記事を掲載した。

     

    これまで司法府に対する党内の強硬論と距離を置いた共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)大統領選候補が15日、最前線に立った。李候補はこの日、慶尚南道河東郡(ハドングン)での演説で「司法府の最高責任は大法院(最高裁)にある」とし「きれいな手で(判決)しなければいけない」と述べた。前日の演説でも「内乱首魁だけでなく2、3次内乱を起こそうとする者をすべて捜し出して法廷に立たせるべきだ。法廷はクリーンでなければいけない」と話していた。

     

    (1)「李候補の発言は、当選すれば司法府を全面的な改革対象にするという意志が込められている。民主党が言う司法府大改造の内容は、これまで民主党がしてきた「司法府圧力」法案に反映されている。民主党は前日、国会法制司法委員会全体会議で虚偽事実公表罪の構成要件から「行為」を削除する選挙法改正案を通過させた。改正案が発効すれば李候補を選挙法で処罰する法条項自体が消える。法制司法委員会は7日には、大統領に当選した被告人の刑事裁判公判手続きを任期中に停止する内容の刑事訴訟法改正案も通過させた」

     

    最大野党が委員会で、大統領に当選した被告人の刑事裁判公判手続きを任期中に停止する内容の刑事訴訟法改正案も通過させた。李候補は、大統領に当選すれば、ひとまず「安泰」だ。

     

    (2)「政界では、李候補が大統領選挙で勝利する場合、民主党が直ちに国会本会議でこの2つの改正案から強行処理するという見方が出ている。民主党の関係者は「国民が結局、李候補に軍配を上げたことになり、法案処理の名分になる」と述べた。李候補の破棄差し戻し審裁判所は民主党の「裁判官弾劾」圧力の中、当初15日に予定していた最初の選挙法公判期日を大統領選挙後の6月18日に延期した。改正案が本会議を通過すれば李候補は「免訴(法条項廃止で処罰できない)」判決を受ける道が開かれる」

     

    李候補の当選後、国会はすぐに「李在明免訴」の法案を成立させる見通しだ。軍事政権並みの権力行使である。

     

    (3)「法制司法委員会に14日に上程された法案は、次の通りだ。▼大法院長含む計14人の最高裁判事数を最大100人まで増やす裁判所組織法改正案▼大法院の判決を憲法訴訟対象に新たに含める憲法裁判所法改正案▼曹喜大大法院長を捜査する「特別検査法」は「大統領退任後に再開される李候補の司法リスクまでも防ぐ法案」(法律家出身の元非李在明派議員)という評価を受ける」

     

    国会の法制司法委員会は、最高裁判事数を現在の14人から最大100人まで増やすとしている。登用される判事はすべて左派系になるはず。「お手盛り」裁判官に、左派に有利な判決を出させる準備だ。李氏の選挙違反事件で高裁差戻し判決を出した最高裁長官は、「特別検査法」で捜査するとしている。司法の独立性が、土足で踏みにじられる暴挙であり、韓国の民主主義は「死」を迎えるであろう。

     

    (4)「最高裁の判事数を最大100人まで増やす場合、親民主党性向の最高裁判事を多数任命して退任後の無罪の可能性を高めることができる。それでも有罪が確定する場合、その3審判決に対して「李在明政権」で進歩優位に再編される憲法裁判所でもう一度判断を受けようという「4審制」を意図したのが憲法裁法改正案という解釈だ。「曹喜大特検法」は13日、金容民(キム・ヨンミン)院内政策首席副代表が発議した「法歪曲罪」とも結びつく。改正案は、判事が法理を歪曲して誤った判決をする場合10年以下の懲役とする」

     

    「共に民主党」は、民主主義の殻を残しながら左派独裁政権を築こうという野心に燃えている。民主国の裁判は、「3審制」(地裁・高裁・最高裁)だが、韓国は「4審制」にして左派の無罪を勝ち取る体制を目指している。判事が誤った判決をする場合、10年以下の懲役にするという「脅し」まで付けている。ここまで来ると、韓国は完全な「左派独裁」に陥る。

     

    (5)「国民の力は激しく批判した。国民の力の金文洙(キム・ムンス)大統領候補はこの日、緊急記者会見を開き、民主党の司法府圧力法案を「李在明セルフ免罪5大悪法」とし「世界史上このような独裁者がいただろうか。法を変えて生きるという、世界で唯一の人物が李在明」と述べた」

     

    少数与党「国民の力」は、危機感を募らせている。国民が、これをどう受止めるかだ。これでも李氏が大統領に当選するならば、韓国は政治も経済も「死」を迎えるであろう。それほど危険は内容である。

     

    (6)「民主党の一部からも慎重論が提起された。李明博(イ・ミョンバク)政権で法制処長を務めた李石淵(イ・ソクヨン)民主党共同選挙対策委員長は、ラジオ番組で「私は大法院長に対する特検法、弾劾、聴聞会は一つの政治攻勢とみて、党内からこうした主張は出てこないと思った」と話した。柳寅泰(ユ・インテ)元国会事務総長もラジオ番組で「司法府に対する圧力がむしろ票を減らしていると考える」と述べた」

     

    民主党内部からも異論が出ている。李在明氏の側近たちには、こういう「正論」が響かないであろう。

    テイカカズラ
       

    米国トランプ政権は、相互関税を押しつけて米国の慢性的貿易赤字を減らす「荒技」を繰り出している。同盟国の日本へも遠慮会釈ない対応だ。この米国にも「弱点」を抱えている。商船の造船能力が、世界の1%しかないという「超危機状態」である。米海軍の軍艦建艦能力に事欠く事態になった。そこで、日韓の造船業界へ協力を求めざるを得ない事態へ追い込まれている。米国は、日韓への相互関税で「鬼の目にも涙」という「慈悲」をみせるかどうか。

     

    『毎日新聞 電子版』(5月15日付)は、「トランプ政権、日韓との造船協力は焦り 韓国は『関税カード』に」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権が、アジア太平洋地域で増強を続ける中国の海軍力への対抗も見据え、衰退した自国の造船業の復興を目指している。商船建造量で世界一の中国はシェアで50%を超えており、米国は同盟国である2位・韓国と3位・日本に協力を強く求めている。韓国側はこの造船業というカードを武器に、米側から譲歩を引き出そうとしている。

     

    (1)「アジア太平洋地域で覇権を争う米中は、海軍力でも競争を続ける。米国の悩みは、軍艦建造の基礎となる自国の造船業が衰退して久しいことだ。日本船主協会が英調査会社クラークソン・リサーチのデータなどに基づき作成した資料によると、商船建造量のシェアは23年、①中国(50.9%)②韓国(28.4%)③日本(15.4%)。一方、1970年代まで造船大国だった米国では、補助金の大幅削減や米国内でのコスト増、労働者不足などが影響し、現在のシェアは1%に満たない」

     

    世界造船能力で,中国は51%も占める。米国はゼロに等しい1%だ。これは、米国が軍艦建艦において不利であることを示している。このギャップを埋めるのが、日韓(合計で43.8%)の存在である。

     

    (2)「米中海軍の艦船数は、22年時点で中国が351隻と、米国の294隻をすでに上回る。中国軍の艦船数は30年には420隻を超える見通し。空母の数や、技術面を含めた海軍の総合力では米国が上回るものの、その差は急速に縮んでいる。米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のマシュー・フナイオレ上級研究員は3月に発表した論文で「大型船の建造力は軍事力の中核をなし、米中の競争が最も激しい太平洋で特に当てはまる。造船業の成功で中国は急激に海軍を増強させた。米国とその同盟国が中国をけん制する能力は低下している」と指摘した。中国との覇権争いを見据え、トランプ政権はその基礎となる造船業の復活を重視している」

     

    米国の造船業の衰退は、海軍力に影響する。米国は今のうちに、日韓造船業界を取り込まないと大変な事態になりかねない。

     

    (3)「トランプ氏は、49日には「米国の海洋支配の回復」と題した大統領令に署名。軍用を含む造船業の復活を国家安全保障上の重要政策と位置づけ、同盟国との連携強化や規制緩和の推進などを盛り込んだ。ホワイトハウスには「造船局」を新たに設置した。米海軍は艦艇の規模を54年までに390隻に増やす計画だ。だが設備の老朽化などに悩む米国の造船業を急に復活させ、中国の圧倒的な新造船建造能力に対抗するのは不可能だ。そこでトランプ政権が協力を働きかけるのが、軍艦も含めた造船業で高い技術と経験を誇る日韓だ」

     

    米海軍は、艦艇規模を54年までに390隻に増やす計画だ。日韓の協力が不可欠である。

     

    (4)「ジョン・フェラン米海軍長官は4月30日、韓悳洙(ハンドクス)大統領代行(当時)とソウルで会談し、「米海軍の即応態勢を強化し、米国の造船産業を再建するには、米韓の造船部門での協力を一層強化する必要がある」と訴えた。韓国政府は、造船を自動車や半導体などと並ぶ主力産業と位置づけて多額の補助金を投入してきた。韓国国防省の朴鎮浩(パクジンホ)・政策諮問委員によると、過去10年で3000隻の商船と軍艦を建造。英国など海外への軍艦輸出の実績も豊富だ」

     

    韓国は、過去10年で3000隻の商船と軍艦を建造した。米海軍が、韓国へ注目するのは当然だ。

     

    (5)「トランプ政権が目指す「米国内での造船業の復興」を見据え、韓国企業は米国内での拠点づくりも進めている。ハンファオーシャンは、米フィラデルフィアの造船会社を24年に買収した。HD現代重工業も、米空母などを手がける米ハンティントン・インガルス・インダストリーズと4月に業務提携を結んだ。米国は、国内法で軍艦の海外での建造を禁じる。だが、両社は将来的には子会社や提携先を通じた米艦船の建造受注も見据える」

     

    韓国造船界は、米国へ進出している。米艦船の建造受注も見据えた動きである。

     

    (6)「韓国は、こうした優位性を誇る造船業での対米協力を、米国との関税協議の際にセットで議論し、交渉を有利に運ぼうとしている。韓国は米国から25%の関税を課される見通しで、自動車産業などの打撃は計り知れない。4月24日にワシントンで開かれた米韓の閣僚級協議では、関税問題と造船などの産業協力を組み合わせた「パッケージ合意」を目指すことで一致した。造船を巡る日米韓の協力に、中国は神経をとがらせる。中国政府関係者は「協力が中国に対して向けられたものであれば強く反対する。不公正な競争をもたらしたり、縄張りを作るものになったりすることにも強く反対する」と警戒する」

     

    日本は、韓国の動きに合せて米国への協力体制を固める必要がある。これによって、「パーケージ合意」をまとめ関税引下げを図らなければならない。

     

     

    テイカカズラ
       

    韓国は、未だに年功序列賃金と終身雇用制度を守っている。これが、企業の賃金総額を肥大化させるので、新規採用を止める企業が続出している。労働市場流動化をもたらす能率給制度への切り替えは、戦闘的な労組によって遮られているのだ。これを側面から支援する左派陣営によって、ますます年功序列賃金の泥沼に嵌まり込んでいる。欧米流の賃金体系によって、企業は必要とする労働力を随時、雇用できる柔軟性が不可欠である。これが結局、雇用増に結びつくが、労組や左派は頭から拒否している。

    『ハンギョレ新聞』(5月14日付)は、「関税戦争、内需・雇用沈滞…新政権は最初から『道険し』」

    今年、韓国経済が0.8%の成長に止まるだろうという韓国開発研究院(KDI)の予測は、来月初めに発足する新政府にとって険しい道が待っていることを意味する。大規模な国政課題の第一歩を踏み出すべき政権初期から、景気管理という厳しい課題を抱えることになったからだ。景気上昇局面で執権を始めた文在寅(ムン・ジェイン)や尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の時とは異なる様相だ。


    (1)「韓国開発研究院が14日に発表した「修正経済展望」は、韓国経済が収縮局面に入っていることを如実に示している。今年の成長率(0.8%)が昨年(2.0%)の半分に及ばず、来年も1.6%にとどまると同研究院は見込んだ。韓国経済が1%を下回る成長に止まるのは、2000年以降グローバル金融危機(2009年は0.8%)とコロナ危機(2020年はマイナス0.7%)の2度だけだ。ドナルド・トランプ米政府の関税戦争が、輸出中心の韓国経済を強打した影響は大きいが、長期化する内需不振は異例水準の低成長の原因を外部に求めることを難しくする」

    企業は、終身雇用制度と年功序列賃金によって年々、賃金総額が増え続ける構造になっている。これは、能力給の普及が進めば、労働市場の流動化と転職が拡大するので、大きく改善されるはず。それが、右派によって阻まれているのだ。


    (2)「特に目を引く部分は働き口の展望だ。研究院は、今年の雇用は前年より9万件増に止まり、来年(7万件)には増加幅がさらに小さくなるだろうと見込んだ。2023年は33万件、昨年も16万件の働き口が増加した点を念頭に置けば、働き口成長の鈍化速度が非常に速い。働き口は家計の所得と消費に直接影響を及ぼし、急激な働き口鈍化は社会安全網に対する需要増大につながり政府財政に負担として作用する。今年(1.7%)はもちろん、来年(1.8%)にも消費者物価上昇率が適正水準の2.0%を下回るという見通しも、収縮中の韓国経済のもう一つの断面だ」

    新規雇用件数増の推移は下記の通りだ。
    2023年 33万件増
      24年 16万件増
      25年  9万件増
      26年  7万件増
    出所:KDI

    この新規雇用件数増の推移をみれば、韓国経済は明らかに行き詰まっている。この制度的原因がどこにあるかを解決しなければ、韓国経済は「自滅」するほかないという厳しさに直面している。


    (3)「これは、過去に文在寅政府と尹錫悦政府が政権を始めた時とは違う景気の流れだ。文在寅政府は、グローバル金融危機やその後の欧州債務危機などの影響で、長期低成長に陥っていた韓国経済が伸び始めた2017年に発足した。尹錫悦政府もまた、新型コロナウイルス感染症の大流行が終わりかけていた2022年に執権を始めた。景気が底を通過した時期にスタートしたため、「所得主導成長」(文在寅政府)と「健全財政」(尹錫悦政府)というそれなりの国政課題を推進できた」

    この記事も事態の本質が,どこにあるかが分っていないようだ。

    (4)「景気が低迷しているが、政権獲得を夢見る主要政党の大統領候補側は、これといった公約や政策案を出していない。最近公開した10大公約にも景気振興に役立つほどの「財政戦略」や「働き口公約」は含まれなかった。新政権発足後、少なくとも1ヶ月余りかかる内閣人選などを念頭に置けば、「景気対策の空白期」が長くなる恐れもある」

    韓国はユン政権以来、最大野党「共に民主党」によって政策は空白を余儀なくされている。それほど、与野党の対立が激しい國である。今後も,対立が続くであろう。


    (5)「このような理由から、来週に予定されている韓国銀行金融通貨委員会の会議に対する注目度が高まっている。政界と政府が「大統領選挙」と「大統領罷免」で足止めされている状況で、韓銀の通貨政策だけに頼るほかはないためだ。市場では基準金利引き下げの可能性が高いと見ている。家計負債の増加傾向が異常な流れを見せていないうえ、ウォン-ドル為替レートも昨年末と年明けに比べて安定傾向を見せているためだ」

    市場では,利下げ要請が強くなっている。韓銀は、現状をどのように判断するか、だ。

    (6)「韓国銀行のイ・チャンヨン総裁も最近、「金利を十分に引き下げることもできる」と述べた。野村證券のパク・ジョンウ エコノミストも「関税不安の他にも韓国経済の大きな問題は内需があまりにも不振だという点」とし、「新政府が追加補正予算を編成し、韓銀の基準金利引き下げ効果が現れれば下半期には景気が多少改善されることもありうる」と話した」

    金利を下げても、財政支出を増やしても、韓国経済は制度的に行き詰まり状態に陥っている。この改革の方がはるかに重要だが、その気配はない。

    次の記事をご参考に。
    2025-05-12メルマガ668号 世界の囁き「韓国終末論」、進歩派が司法権まで蹂躙「間近にきたゼロ成


    あじさいのたまご
       

    韓国政界は泥沼状態にあるが、また一つ汚点が加わった。与党「国民の力」(保守派)の大統領候補として党大会で正式に選ばれた金文洙(キム・ムンス)氏は、党幹部によって前首相韓悳洙(ハン・ドクス)氏の支持が高いとして候補者の座を降ろされた。だが、党大会では金氏の支持率が高い結果、再び金氏が大統領候補になるというめまぐるしい事態だ。他の国では、みられないよう混乱した事態になっている。

    『中央日報』(5月12日付)は、「保守革新の課題を示した韓国政党『国民の力』単一化騒動」と題する社説を掲載した。

    韓国与党「国民の力」指導部が強行しようとした大統領候補交代が一昨日(10日)午後11時20分ごろ党員投票の否決で取りやめになり、金文洙(キム・ムンス)氏が候補に確定した。しかし今回の候補単一化過程で国民の力が見せた形態は民主主義政党とは信じられないほど非常識だった。


    (1)「10日午前2時30分ごろ、李亮寿(イ・ヤンス)党選管委員長の名義で候補登録申請公告を出したが、登録期間が午前3時から4時までわずか1時間だった。提出しなければならない書類は「最近5年間の候補・配偶者の所得税・財産税および総合不動産税納付実績証明書および滞納証明書」「候補の犯罪経歴回報書」など32件に達した。窓口は「国会本館228号」だ。午前3時から1時間で32件の書類の発給を受けて作成し、国会に提出することが果たして可能なことなのだろうか。党内で「このあきれた状況は誰のためのものなのか」〔裵賢鎮(ペ・ヒョンジン)議員〕という非難があふれたのは当然だった」

    大統領選に立候補するには、「候補の犯罪経歴回報書」も提出するという。李在明氏は、5つの被告人であることを提出しているのだ。


    (2)「拙速公告の後、韓悳洙(ハン・ドクス)候補が唯一登録したが、韓氏と指導部の間に「仕組んで打つ花札賭博」という皮肉だけが出てきた。その直後、党非常対策委員会が大統領候補を韓氏に交代する内容を議決したが、この日午前10時から午後9時まで行われた党員投票で指導部の予想とは違って案件が否決されて結局寸劇で終わってしまった」

    韓前首相への大統領候補一本化は、党員投票で否決された。もはや、大統領選での勝敗を度外視している選択とみられる。

    (3)「韓国政党政治歴史にもう一つの大きな汚点を残した今回の事態を経て、保守政党の革新が喫緊の課題であることが露呈した。大統領選挙勝利が有力な状況で権力争奪戦が起きたのであれば理解できなくもないが、いま国民の力は派閥を超えて力を合わせても勝利が難しい局面だ。このドタバタ劇の理由が大統領選挙以降の党権争いのためという分析が出ている理由だ。大統領選挙が1カ月も残されていない時点で内部争いに没頭する政党に存在の意味はあるのか」

    韓国の次期大統領選は、韓国の運命を左右するほど大きな意味を持っている。李在明(左派)氏が大統領に当選すれば、経済政策は一段と労組寄りになるであろう。これは、韓国経済にとって極めて高いリスクをはらむことになる。潜在成長率が低下するのだ。


    (4)「(保守派は)戒厳事態に対して心からの謝罪をし、中道層の攻略に乗り出しても勝利が難しいというのに、民心から遠ざかる道だけを進んでいる。このような渦中でこのような事態の発生源を提供した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は、「候補予備選は激烈な論争と陣痛があったが、相変らず健康であるところを見せた」というコメントをSNSに投稿した。国民の力を助けようというのか、火事が起きている家をあおろうとしているのか分からない状況だ」

    国民の力は、政党としてすでに信頼を失っている。その上、大統領候補者選びで二転三転して、「醜悪さ」をみせてしまった。最悪状態である。

    (5)「辛うじて公式大統領候補に登録した金氏も、予備選の過程で22回も出した韓氏との単一化の約束を破った点で今回の事態の責任は大きい。昨日、権寧世(クォン・ヨンセ)非常対策委員長が辞任したが、議員の間で院内指導部の総辞職を要求する声が出るなど余震が続いている。国民の力は、これ以上醜態を見せずに一応当面の選挙準備に力を尽くすことが保守支持者に対する道理ではないだろうか。選挙結果とは無関係に、今回の候補決定過程で露呈した問題は国民の力の大手術が避けられないことを雄弁に物語っている」

    金氏は、大統領予備選の過程で22回も出した韓氏との単一化の約束を、最後は破るという後味の悪い結果になった。誰も約束を守らないのは、「共に民主党」の大統領候補李在明氏と何ら変わらないのだ。金氏が、予備選中に約束していたのならば、大統領候補を韓氏に一本化して、自らは首相候補になるくらいの度量をみせるべきであった。それが、正式な大統領候補になって目が眩み、前言を翻したのだ。



    テイカカズラ
       

    ドイツが韓国終末論流す
    左右両派の飽くなき対立
    左派が司法権侵害を主張
    李氏政権で終末論へ拍車

    韓国政治は、危険な状況にある。縄張り争いがエスカレートしているからだ。相手を排除する負のエネルギーが充満している結果、最後の砦になる司法までが争いに巻き込まれている。「コップの中の嵐」と言えなくもないが、確実に韓国の対外的信頼度を低下させている。

    米国は、こうした韓国に対して冷めた目で眺めている。韓国が、「内乱のような事態」になっていると突き放しているのだ。これは、韓国最大野党「共に民主党」が、権謀術策を用いて韓国政治を操っていることへ疑念を強めている結果だ。米国は今後、米韓同盟を維持し続ける上で、大きな障害の発生を意識し始めているのであろう。米国も、「呆れ果てた」という状況なのだ。米国が、韓国へ愛想を尽かし始めたのは文政権時代からである。米韓は、対中戦略で足並みを揃えようとしたが、満足すべき結果を得られなかったのだ。


    米国が、韓国へ疑念を持ち始めている矢先に、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の「非常厳戒」に伴う弾劾が起こった。この非常厳戒の裏には、国会の過半数を占める最大野党「共に民主党」が、閣僚の弾劾を連発して行政を麻痺させる緊急事態の発生があった。これが、非常厳戒を引き起したものであろう。尹前大統領だけが、責められる事件ではないのだ。根の深い騒動である。

    韓国政治は、今なお混乱の極にある。次期大統領選挙を巡っても、「共に民主党」候補となった李在明氏は、5つの罪名を背負った「被告」の身である。とりわけ重大なのは、選挙違反事件だ。最高裁で高裁差戻し判決によって、事実上の「有罪」が濃厚となるや、「共に民主党」は猛烈な勢いで最高裁長官の弾劾を始めると警告する事態になった。司法権を無視する、一種のクーデターのような騒ぎを起こして圧力を加えた。

    「共に民主党」は、進歩派を名乗る政党である。その政党が、司法権までを「簒奪」するごとき動きをみせ、李氏の当選を働きかける状況は、「騒乱」とさえ言えるほど常軌を逸した行動である。目的のために手段を選ばない振舞は、決して看過されるべきではない。


    ドイツが韓国終末論流す
    韓国は最近、世界の登録者数が2380万人にのぼるドイツのユーチューブチャンネルで、「韓国は終わった」と15分にわたって報じられた。「韓国の少子化は、経済・社会・文化・軍事のすべての面で韓国を崩壊させるはずで、すでにいかなるものも状況を好転させることはできない」という極めて悲観的内容だ。この裏にあるのは、政治的不安定な事態である。韓国社会を表すキーワードは、「対立」の二文字である。それは、思想(政治)的対立・年代別対立・性別対立と分類できるが、最大の対立は政治である。

    この政治的対立を軸に、年代別対立と性別対立が絡みあうという複雑な対立模様を描いている。こうした対立は突然、浮上したわけではない。朝鮮李朝時代から存在したが、過去の低い経済成長レベルでは「我慢」していた。それが、一人当たり名目GDPが、3万ドルを超えた2014年(朴槿恵大統領時代)頃から紛争が目立ってきた。「もはや、我慢せずに暴れ回る」というものになったのである。

    韓国終末論の根拠は、合計特殊出生率(一人の女性が出産する子ども数)の急低下にある。これが、「1」を割ったのが2018年の「0.98」である。世界ワースト・ワンを記録したのだ。人口が、横ばいを維持する合計特殊出生率は「2.08」とされる。韓国は現在、このレベルの半分以下という絶望的な状況にある。これだけ、社会状況が混乱している証拠でもある。


    この状況が、2024年には「0.75」へとさらに低下している。出生率の急低下は多分に、性別対立を反映している。韓国は、儒教による「男尊女卑」の気風が今なお強く残っている国だ。男子は、育児など家事を手伝わない習慣がある。世界の合計特殊出生率をみると、男性の育児協力度合いが高い国では、出生率低下が緩やかである。韓国の夫は、ほとんど育児や家事に協力しないとされている。

    韓国企業には、女性の結婚や出産を歓迎しないムードがある。30年前の日本と同じ雰囲気だ。これが、女性の非婚化を促す力になっている。一方で、下記の通り女性の高等教育進学率が、男性を上回っている。これでは、女性の非婚・非出産の比率が高まり、自らのキャリアを優先させて当然という姿が想像できるであろう。

       大   学   大 学 院
    男性 62.32%   5.24%
    女性 67.28%   7.07%
    2020年 OECD調べ

    こういう状況をみながら、韓国株投資を推奨した投資家がいた。ジム・ロジャーズ氏だ。「日本株売り・韓国株買い」を大々的に吹聴して歩いたのだ。ロジャーズ氏は、ウォーレン・バフェット氏が日本商社株へ大量投資して大きな投資戦果をあげたのと対照的な結果になった。ロジャーズ氏の予測を裏切って、韓国経済が終末論を囁かれる事態を迎えているのである。

    左右両派の飽くなき対立
    尹前大統領支持者の間では、韓国で不正選挙が行われたという「陰謀論」が、フェイクニュースとして流れている。これは、韓国社会が深い「不信の溝」に落込んでいる証拠とみなされている。右派(保守)と左派(進歩)に分かれて、断絶状態にあるからだ。互いに自らの「陣営」だけに閉じ籠もり、都合の良い情報だけを信じるという末期的状態に陥っている。(つづく)

    この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

    https://www.mag2.com/m/0001684526



    このページのトップヘ