勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓国の政策金利は現在、3.5%である。21年7月までは0.5%であったが、高物価抑制で引上げられてきた。これに最も苦しんでいるのが低所得者である。政府の庶民金融商品「ヘッサルローン15」は、低所得者がヤミ金融に走らぬようにという「救済融資」を目的にしている。その金利が、なんと「15.9%」だ。日本の感覚から言えば、これこそ「ヤミ金融」並みである。

     

    韓国の資本蓄積が、いかに低レベルであるかを証明する話である。少しでも政策金利を引上げると低所得者へは低い信用度で高金利となって跳ね返るのだ。日本は、政策的意図で事実上1999年からゼロ金利である。この日韓の差は、資本蓄積の厚みの差を示すものだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(3月17日付)は、「韓国『物価高・高金利ショック』庶民向け融資の延滞率が一斉急騰」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で高金利・高物価が持続しているため低信用庶民層家計の借金負担が加重されていることが分かった。政府が庶民の高金利負担を減らすために供給する各種の庶民金融商品の延滞率が昨年急騰したことが明らかになった。

     

    (1)「17日、国会政務委員会所属の改革新党ヤン・ジョンスク議員室が金融監督院と庶民金融振興院から受け取った資料によれば、信用等級が低い庶民のための政策金融商品「ヘッサル(陽光)ローン15」の昨年の代位弁済率が21.3%となり、2022年(15.5%)より5.8ポイント急騰したことが分かった。代位弁済とは、融資を受けた借主が元金を返済できなかった時、庶民金融振興院などの政策機関が銀行に対し代わりに弁済することを意味する。ヘッサルローン15の代位弁済率が20%台に跳ね上がったのは昨年が初めてだ」

     

    庶民のための政策金融商品「ヘッサル(陽光)ローン15」は、年利15.9%である。これだけの高金利は、日本でも払えぬ高利である。代位弁済が急増しているのは当然であろう。政府が、代わって金融機関へ支払っているのだ。

     

    (2)「特に、ヘッサルローン15は闇金融に頼らざるを得ない低信用者が正常な経済生活を継続できるように、相対的に高い年15.9%の金利で政策資金を融資する庶民金融商品だ。この商品の延滞率が高くなっていることは、低信用庶民層の償還能力が限界状況に達し、再び私債市場などに追い込まれる可能性が高くなっているという意味だ」

     

    低所得者で「ヘッサルローン」を延滞する状態では、後はヤミ金融へ行く以外の道はなくなる。悲劇が、待っているような事態だ。

     

    (3)「ヘッサルローン15のみならず、他の庶民金融商品も一斉に延滞率が上昇したことが分かった。満34歳以下の青年層を対象にした「ヘッサルローンユース」の代位弁済率は2022年(4.8%)の2倍水準である9.4%に急騰し、低信用勤労所得者のための「勤労者ヘッサルローン」の代位弁済率も2022年の10.4%から昨年は12.1%に上がった。低所得・低信用者の中で償還能力が相対的に良好で第1金融圏に移れるよう支援する「ヘッサルローンバンク」の代位弁済率は8.4%で前年(1.1%)より7.3ポイント急騰した」

     

    韓国経済の根本的問題は、金融構造が脆弱であることだ。ウォン安が頻繁に起こっており、そのたびに「日本との通貨スワップ」が叫ばれてきた。この問題は現在、日韓の友好ムードで「日韓通貨スワップ協定」が結ばれて解決した。だが、庶民は不況のたびごとに大揺れである。

     

    (4)「この他にも医療費・食事代など、それこそ急にお金が必要な脆弱階層に最大100万ウォン(約11万円)を当日貸すマイクロクレジット商品「小額生計費貸出」の昨年の延滞率は11.7%だった。信用評点下位10%の最低信用者のための最低信用者特例保証の代位弁済率も14.5%となった」

     

    マイクロクレジットは、当日貸しだけに高金利を取るのであろう。ここでも、延滞率は11.7%にも及んでいる。

     

    (5)「年齢帯に分けてみると、20代以下の青年層の代位弁済率が最も高いことが分かった。まだ資産形成ができていない青年層の償還能力が最も脆弱なわけだ。2018年以後6年間、これら庶民金融商品の支援を受けた人は計287万人で、貸出総額は19兆9000億ウォン(約2.2兆円)と集計された。このうち約10%に該当する1兆9922億ウォンが延滞され、昨年末基準で未回収金は1兆8058億ウォン(約2000億円)に達した。ヤン・ジョンスク議員は「高金利・高物価が持続し、家計負債負担に押しつぶされた庶民層の苦痛が政策金融商品の延滞率増加に現れている」とし「庶民用政策金融商品の金利適用に勤労所得増加率を連動させるなど金利設計方式を全面再検討しなければならない」と話した」

     

    20代以下の青年層は、代位弁済率が最も高いという。住宅ローンを目一杯借りて、返済余力がなくなっている結果であろう。オール借金漬けの韓国の若者は、未来に夢を失い結婚や出産から遠ざかっている。この矛盾を解決するにはどうすべきか。過去においても、矛盾を抱えながら解決せず先送りしてきたのだ。

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    韓国から中国への直接投資額が昨年、約30年ぶりの大きな減少となった。米国が同盟国に対し対中依存を減らすよう働きかけており、中韓の経済的な結び付きが弱まっていることが裏付けられた。

     

    韓国企画財政省が、15日発表した韓国企業による2023年の対中直接投資は、前年比78.1%減の18億7000万ドル(約2800億円)になった。中韓が、国交を正常化した1992年以来初めてである。中国は、韓国の対外直接投資先トップ5から外れた。

     

    中国国家外貨管理局が、2月発表した2023年の国際収支によると、外資企業の中国投資は30年ぶりの低水準で、330億ドル(5兆円弱)にとどまった。韓国の対中直接投資の減少は、こういう流れの一環である。中国は、景気の停滞で工場新設など新規投資が細る一方、中国事業の縮小や撤退も出ている。中国当局が、強化するスパイ摘発への懸念や米国の対中規制をうけ、外資の中国離れが進んでいる。

     

    『ハンギョレ新聞』(3月16日付)は、「韓国企業の中国への直接投資が78%減、韓国の海外投資額トップ5カ国から脱落」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「企画財政部が3月15日発表した「2023年の海外直接投資額」によると、昨年の韓国企業による海外への直接投資額は633億8000万ドルで、前年(815億1000万ドル)と比べて22.2%減少した。総投資額から持ち株の売却や清算などによる回収金額を除いた純投資額も、前年に比べて20.6%減の514億3000万ドルを記録した。2018年(518億1000万ドル)以降での最低値だ」

     

    韓国左派にとって、韓国の対中直接投資が減少したことはショックであろう。これまで、「経済は中国、安保は米国」と使い分けて、中国接近の大義名分にしてきたからだ。その経済関係で、中韓が希薄になることは耐えられないはずだ。

     

    (2)「中国地域への直接投資額は、78.1%もの大幅減の18億7000万ドルを記録した。韓国企業の国別海外直接投資額で、中国の順位は7位に下落。2002年(11億6000万ドル)以降で最も少ない金額である。中国が、韓国企業の海外直接投資額の上位5カ国から押し出されたのは1992年以降で初。中国の景気低迷で、企業が中国への投資を先送り・取消したことが大きく影響した。これは世界的な現象でもある。23年の中国への海外からの直接投資額は、前年(1802億ドル)に比べて81.7%の大幅減となる330億ドルにとどまった。1993年以来の最低値だ」

     

    米国の対中半導体規制によって、韓国の半導体2社は中国での設備投資を抑制している。これも、韓国の対中投資を大きく減らした要因であろう。この状態は、今後とも継続される。韓国の対中投資は、構造的に減少過程へ入ったとみられる。

     

    (3)「韓国企業の直接投資額が最も多かったのは、米国市場で277億2000万ドル。次いでケイマン諸島(61億7000万ドル)、ルクセンブルク(49億5000万ドル)、カナダ(36億ドル)の順だった。業種別に見ると、256億6000万ドルを記録した金融保険業の直接投資額が最も多く、次いで不動産業(42億4000万ドル)、鉱業(33億8000万ドル)、卸・小売業(25億5000万ドル)の順だった」

     

    韓国の対米投資は、対中投資が減った分が米国へ「オン」されている。半導体・EV・電池などの先端技術投資が米国へ集中しているのだ。米中「デリスク」によって、西側諸国の直接投資は確実に中国から米国へシフトしている。

     

    (4)「企画財政部の関係者は、海外への直接投資の減少について「米国の金利が2001年以降での最高値を記録するなど、グローバルな高金利基調が続いた中、中国の景気後退や欧州の地政学的なリスクなどが作用した結果だと解釈される」と指摘した」

     

    世界の対外投資の流れは、これから大きく変わってゆく。「脱中国」が、鮮明になるであろう。中国が、「世界の工場」と言われたのは過去の話だ。今後は、地政学リスクが大きき立ちはだかり、一国での集中生産体制は消える。分散型で、サプライショックを回避するのだ。

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    連合は15日、2024年春季労使交渉の第1回回答の集計結果を公表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は平均5.28%で、前年の同時点を1.48ポイントも上回った。過去の最終集計と比較すると5.66%だった1991年以来33年ぶりに5%を超えた。

     

    韓国はこうした、日本の高賃上げに対して「羨望」の眼差しを向けている。文政権では、「最低賃金の大幅引き上げ」という官製賃上げをテコに、経済成長率のかさ上げを図ったが大失敗した。最賃の引上げに応じない経営者には処罰が与えられることから、零細企業は一斉に従業員解雇策に出たのだ。これが、内需を冷やすという逆効果を招き失敗した。それだけに、日本の高賃金引上げがうらやましいようである。

     

    『東亜日報』(3月15日付)は、「日本はどうやって『所得主導成長論』の悲劇を回避できたか」と題する記事を掲載した。

     

    大企業の労使賃金交渉が真っ最中の日本経済界で、最近最も多く聞こえてくる単語は「満額回答」だ。韓国にはない漢字語だ。労組が出した賃金引き上げの要求案を、会社側が100%受け入れるという意味だ。労組の要求案を一銭も削らないので、交渉と言えることもない。大企業の賃金交渉を「春闘」と呼ぶが、「戦う」の字をつけるのがおかしいほど、平和で和気あいあいとしている。

     

    1)「史上初の日経指数4万円台の突破で、「失われた30年」の鉄の蓋を開けた日本は、今や約30年間凍りついていた王の厚い氷を破っている。主要大手企業の賃金上昇率を見れば、景気回復という言葉が足りないほどだ。日本製鉄は14.2%、神戸製鋼は12.8%、イオンは6.4%、パナソニックは5.5%。日本金属労組傘下企業の85%以上が労組の要求案をそのまま受け入れるか、むしろそれ以上に引き上げた」

     

    日本の主要製造業の85%以上が、満額回答というかってない賃上げへの理解をみせた。背後には、労働力不足という深刻な事態が迫っており、人材確保という色彩が強い。

     

    2)「日本企業の賃金引き上げは、一夜にしてなされたわけではない。2012年末に政権を握った安倍晋三元首相がその翌年、3本の矢(金融緩和、財政拡大、成長戦略)を柱にした経済政策「アベノミクス」にさかのぼる。政府と中央銀行が資金を供給して企業に投資を増やし、賃金を引き上げるよう要請した。2010年代から登場したいわゆる「官製春闘」だ。それでも、賃金引上げ率は毎年2%をなかなか越えられなかった。中小企業はさらに低かった。一度落ちたデフレ(景気低迷の中での物価下落)の沼がどれほど深いかをうかがわせた」

     

    日本企業は過去30年、満足な賃上げもしないで利益剰余金(内部留保)を貯め込んで満足してきた。それが、急激な人手不足によって目を覚まされ「高賃金」へと舵を切った背景である。さらに、人件費引上げ発表が、株価を押し上げるプラス効果のあることに気づいたのだ。

     

    3)「それにもかかわらず、日本政府は、少なくとも企業の腕を捻ることはなかった。首相が直接出て、賃金引き上げを要請したが、答えない企業を無理に圧迫はしなかった。大手と中小企業との賃金格差が広がるとして、最低賃金を10%以上無理に引き上げることも、政策方向性を無理に変えることもなかった。ただ、規制緩和を積極的に進めた。東京都心の随所の容積率や高度制限、建ぺい率などの規制を緩和し、建設景気が蘇った。自国企業はもちろん、台湾のTSMCのような企業にも数兆ウォン台の補助金を与え、日本列島全体に半導体工場への投資熱気を吹き込んだ。円安の長期化による輸出競争力の強化は、企業業績の改善へとつながった。そのように10年を粘り強くしがみつくと、株価が上がり賃金引き上げが本格化した」

     

    このパラグラフでは、表面的なことに焦点を合わせているが、労働力不足への対応が高賃金引上げを実現させた。これを実現するには、持続的な設備投資が必要である。こうして、日本経済は賃金引上げを軸とする構造改善に踏み出したのだ。

     

    4)「日本が資金を供給し規制を緩和する時、韓国は最低賃金の引き上げと大企業の規制を選んだ。2018年は16.4%、2019年は10.9%を引き上げ。所得主導成長論を根拠に、最低賃金を上げた当時、「このまま韓国の最低賃金が日本を越えてしまえば、小規模自営業者は打撃を受けるだろう」という主張は無視された。その結果、韓国は経済危機でもないのに働き口の増加幅が10万件を下回る「雇用ショック」を体験した。半導体工場の増設は、水や電気供給の許認可を決める地方自治体の規制に阻まれる。住民の苦情や地域の宿願、選挙公約などを理由に、適法な許可さえ与えない。

     

    韓国の最低賃金の大幅引上げは大失敗であった。最賃引上げが、失業者を増やすという逆効果を招いたからだ。

     

    5)「10年以上、「デフレ脱出」の政策目標に向かって走っていった日本は、ついに「30年ぶりの最大賃金引き上げ」という成績表を受け取った。近い将来「マイナス金利解除」を発表する可能性も高い。乾いたタオルが破れるまで絞り出してばかりいた日本経済の雰囲気は、このように変わりつつある。隣国はあんなふうに走っているのに、私たちは選挙を控えても「経済を立て直す」というスローガンさえなかなか目にできない」

     

    日銀のマイナス金利撤廃も目前である。日本経済が、ようやく正常化する入り口に立っている。

     

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    韓国経済は、1%台成長が定着し始めており、先ず中小企業が「売上半減」という厳しい影響を受けている。工業団地では、「売買・賃貸」というビラが貼られた工場が増えており、韓国経済の行く手に暗い影がさしている。

     

    『中央日報』(3月11日付)は、「『仕事半減』、倒れる韓国中小企業 もう売れるのは工場だけ」と題する記事を掲載した。

     

    京畿道安山(キョンギド・アンサン)の半月始華(パンウォル・シファ)工業団地。工業団地入口に会社の表札が傾きさびついた鉄扉を閉めた鋳物工場が目に入った。人の気配がなく放置された建物のそばには接近を遮断する赤いテープが張られていた。工場が密集した路地に入ると「売買・賃貸」などの張り紙が貼られた空き事業所が多くあった。

     

    (1)「近くを通りかかった中小企業労働者のAさんは、「以前より仕事も減り、工業団地の活力も落ちた」と話した。電力機器企業代表のBさんは「輸出する企業はまだましだが、内需だけの企業は仕事が以前より30~40%以上減った。肌で感じられるほど工業団地内で廃業する企業が増えている。食事をする人が減ったので食堂など周辺の商圏も萎縮するほど」と話した。他の地域も大きく異なりはしない。慶尚南道昌原(キョンサンナムド・チャンウォン)で加工用ツールなどを生産するソンサンツールズのイ・インス代表は「工業団地から出て行く人はいても、新たに製造業者を創業して入ってくる人はない。既存の企業も新規投資をほとんどしなくなっている」と話した」

     

    韓国経済の不振は、工業団地の中小企業の経営悪化に現れている。撤退企業はあっても、新規参入する中小企業はないのだ。韓国経済は、構造変化が起こって現実を見せつけている。

     

    (2)「内需・輸出不振の中で費用圧迫の「三重苦」に製造業の根幹である中小企業が揺れている。これらの景気指標は悪化の一途をたどっている。中小企業銀行によると、中小企業景気同行総合指数は生産・出荷下落などで1月まで6カ月連続で前月比下落傾向だ。コロナ禍初期の2020年1~6月以降で最も長い下落を続けている。現在の中小企業の景気状況を示す同行指数循環変動値も1月に入り0.25ポイント下落の99.44を記録した。6カ月連続の下り坂だ。昨年12月に11カ月ぶりに100ポイントを割ったが、今年に入り景気がさらに悪化したのだ」

     

    韓国中小企業は、内需・輸出の不振とコスト高の「三重苦」に直面している。対中輸出の減少と高物価・高金利の重圧に晒されているのだ。これでは、立ち上がる力もなくなるであろう。

     

    (3)「金型業者社長のCさんは、「大企業からの下請け量が1~2年前より半分は減った。率直に通貨危機当時ほど大変だ。下半期以降も景気が良くなるだろうという期待はほとんどない」と話した。ここには高物価と高金利の長期化にともなう内需不振が大きく作用した。内需依存度が高い中小企業は国内消費推移に敏感な方だ。ところが昨年下半期に入り3%を超える消費者物価上昇率が続く中で消費不振が明確になった。今年も暗雲が立ち込めているのは同じだ。韓国銀行は今年の民間消費成長見通しを既存の1.9%から1.6%に下方修正した。中小企業中央会の先月の調査によると、経営上の問題として「内需不振」を挙げる中小企業が61.6%で最も多かった

     

    中小企業の6割が、内需不振を挙げている。輸出減が内需停滞を招いている。対中輸出は、ここ数年の回復が困難である以上、韓国中小企業に逃げ場がなくなっている。

     

    (4)「内需不振を埋める中小企業の輸出は、2年連続で減っている。中小ベンチャー企業部によると2022年の輸出額は前年比0.9%減少し、昨年も2.3%減った。2022年まで増えたが昨年マイナス成長した輸出より減少傾向が長い。中小企業は昨年、最大市場である中国への輸出が10.5%減って大きな打撃を受けた。年末から半導体を中心に輸出実績が回復しているが、大企業中心の温もりがまだ中小企業全般に広がるには力不足だ」

     

    半導体輸出は、増勢に転じている。だが、中小企業とは余りにも業態が違い過ぎて、プラスの影響が出るのはかなり後のことになろう。

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    韓国は、最近の日経平均株高騰と日本経済の動向を切り離して眺めている。株価は、経済を映す鏡という事実に背を向けているのだ。元来、「反日」が基本路線であるから、「隣の芝生は青い」という心境とほど遠い。隣の不幸は、蜜の味なのだ。

     

    韓国が日本経済へ疑心を持っているのは、昨年10~12月GDP統計速報が、前期比マイナス0.4%であったことだ。昨年7~9月期も前期比マイナスであったから、2期連続のマイナス成長で日本経済「離陸」が困難という印象を強めている。

     

    GDP統計速報が発表された後、公表された財務省の法人企業統計季報では、昨年10~12月期の設備投資が11期連続増加であり、特に、前年同期比で16.%増と予想を上回る伸びとなった。これが、10~12月期GDP確報に反映され、マイナス成長がプラス成長に転じる可能性を高めている。韓国が、シビアにみるほど日本経済は「ヤワ」ではない。

     

    『中央日報』(3月10日付)は、「『日経平均4万円時代』を契機に見た日本経済、物価高騰し賃金上がって笑うが根本的体質改善は未知数」と題する記事を掲載した。

     

    円安による企業の輸出増加とともに賃上げも続き、1990年代のバブル崩壊以降日本経済を長期沈滞に陥れた初期要因がひとつふたつと解消されていると分析される。しかし一方では超えなければならない山はまだ少なくないとし、中途半端な期待感は警戒しなければならないという声も出ている。

     

    (1)「日本の実質賃金は、賃金とともに物価が上昇したので22カ月連続で下落した。しかし物価だけ上がった韓国と違い、物価と賃金が同時に上がり日本経済に好循環効果が現れていると分析される。韓国銀行は、2024年の見通し報告書で「2024年に日本の民間消費は物価上昇鈍化と賃上げにより緩やかに改善されるだろう」と予想している」

     

    昨年の賃上げが、円安による輸入物価上昇で帳消しにされた形である。今年は、昨年以上の賃上げ率は確実である。今年は、実質賃金がマイナスという事態は解消されるであろう。

     

    (2)「賃金が上がり企業投資が増え、昨年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率(速報値)は1.9%を記録し、25年ぶりに韓国の成長率(1.4%)を上回った。しかし最近のこうした日本経済の肯定的変化が着実に続き根本的な体質改善につながるかは未知数だ。昨年10-12月期の日本の実質GDP成長率は前四半期比でマイナスを記録した。ロイター通信はこれに対しクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストの話として、「世界的な成長鈍化と国内需要不振などで1-3月期に日本経済が再び萎縮するリスクがある」と予想した」

     

    日本経済「復興」のカギは、賃上げ率の高さに関わっている。これが持続するには、賃上げが価格転嫁されやすい状況を作り出すことにある。公正取引委員会は、「下請法」をフルに生かして、親会社による「下請け虐め」防止に全力を挙げている。日産が、社名を公表されて下請け虐めしてことが天下に晒された。これは、「一罰百戒」であろう。

     

    (3)「少子超高齢化などで日本の労働生産性が、最低水準に落ち込んでいることも専門家らが日本経済を楽観できない原因だ。2022年の日本の時間当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)38カ国中30位で、1970年以降で最低値を記録した。これにより1980年代まで4%台だった日本の潜在成長率は2023年には0.25%まで落ちた」

     

    日本は現在、潜在成長率を1%まで引上げる努力をしている。賃金引上げを価格転嫁する形で名目経済成長率が高まれば、潜在成長率は自然に上がってゆく。高い賃上げ率が、設備投資を刺激するので、潜在成長率が低いままでいるはずがないのだ。

     

    (4)「この問題を克服するために日本政府は、高強度の少子超高齢化対策を施行中だが、まだこれといった成果を出せずにいる。厚生労働省によると、昨年の日本の出生数(速報値)は前年より5.1%減少した75万8631人と集計された。昨年まで8年連続で減少し過去最低値を記録した。産業研究院のキム・ジュヨン研究委員は「日本政府は『もう(生産人口不足の)現実を直視しなければならない』として労働人口増大に死活をかけている。日本は外国人労働者のうち高賃金人材だけでなく低賃金労働者まで定着してキャリアを積めるように誘導している」と伝えた。ただ淑明(スンミョン)女子大学のシン・セドン教授は「今後日本経済がどれだけ回復し、どれだけ続くかがカギ」としながらも、「日本経済が回復するというのは逆に韓国経済が危機という意味なので(日本経済回復を)見守っているばかりではならない」と説明した。

     

    韓国は、他人事のように日本の合計特殊出生率の低下を指摘している。韓国は、合計特殊出生率で世界ワーストワンである。2022年の日韓の合計特殊出生率は、日本が1.26、韓国が0.81(23年は0.72)である。韓国は、日本のことをあれこれ指摘する前に、自国の厳しい現実を認識すべきであろう。

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