勝又壽良のワールドビュー

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    あじさいのたまご
       

    昨日、韓国国会は歴史的な決定を下した。最大野党「共に民主党」代表の李在明氏が、検察からの逮捕状請求を承認されたことだ。「共に民主党」は、国会で最大議席(163人)を占めている。それにもかかわらず、逮捕状請求を承認する議員が賛成・棄権・無効を含めて39人も出たことで、韓国に健全な民主主義を守ろうとする良識ある人たちの存在を見せつけた。

     

    韓国の裁判所は、国会の逮捕状請求の承認を受けて逮捕が正当であるか否かを精査して最終決定する。検察は、これまで李氏に関わった疑惑事件で複数の犠牲者が出ていることから、逮捕が犠牲者を出さない上で必要としている。結果がどうなるかは即断を避けたい。ただ、韓国左派勢力の受けた打撃は図り知れない。結論を先に言えば今後、その勢力は衰えていくものとみられる。文政権が冒した失敗は、左派陣営からも批判されていた。その上、さらにこういう疑惑に関わったとなれば、国民の支持は低下するであろう。

     

    『中央日報』(9月22日付)は、「逮捕同意案が可決、回復難しい政治的な傷を負った韓国野党代表」と題する社説を掲載した。

     

    韓国国会が昨日、最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する逮捕同意案を通過させた。賛成149人、反対136人、棄権6人、無効4人という投票結果を見ると、民主党からも少なくとも29人の議員が賛成票を投じたと推定される。李代表個人の防弾用の私党になるのか、それとも正道を歩む公党になるのかを選択すべきという国民の要求に、これ以上背を向けるのは難しかったとみられる。

     

    (1)「民主党議員の大多数の約130人は反対票を投じ、逮捕同意案は定足数わずか1票超えでかろうじて可決した。彼らは李代表を守るために、いや正確には自分たちの公認権を守るために不逮捕特権を守った議員たちだ。ほとんどが親李在明系の彼らの主導の下、民主党は今年に入って不正疑惑で令状が請求された議員の逮捕同意案を4回連続で否決し、「防弾政党」という汚名を自ら招いた。一方、地方選挙公認関連の資金授受容疑で請求されたハ・ヨンジェ「国民の力」議員逮捕案は可決した。民主党は今からでも自党の議員の拘束を阻止するために逮捕同意案の否決を乱発した過ちについて国民に謝罪し、常識と公正の政治をしなければいけない」

     

    民主党は、露骨に「身びいき」を行った、自派議員の逮捕状請求には反対投票する一方、与党議員の逮捕状請求は承認したのだ。公平でないことは明らかだ。韓国左派の未成熟な政治行動は、こういう面で顕著に現れていた。

     

    (2)「李代表逮捕同意案の可決で民主党の政治的負担は大きくなった。特に、6月の国会代表演説で不逮捕特権放棄を約束しながらも、同意案表決の前日に民主党議員に堂々と否決を要請した李代表のリーダーシップは回復が難しい傷を負った。「状況によって手のひらを返すように言葉を変える約束不履行の口だけの政治家」という烙印は、李代表本人はもちろん、民主党にも大きな鎖になっていくはずだ。逮捕同意案の可決を契機に、非李在明系は李代表の退陣を要求し、李代表と親李在明系はこれに「獄中公認も辞さない」として対抗することも考えられる。総選挙を半年後に控えた状況で分党の可能性まで排除できない深刻な内紛に向かう可能性が高まったのだ」

     

    李氏は、これまでの多くの疑惑において逮捕を絶対に回避したい一念で、相手や第三者になすりつけて逃げおおせてきた。不利になると泣いて同情を乞う戦術もとってきた。今回のハンガーストライキは、その集大成である。

     

    ここで、重大なことを指摘したい。李氏は、権力欲旺盛な「86世代」の一員であることだ。「86世代」とは、1960年代生まれで80年代に学生時代を送った人たちだ。韓国経済の高度成長の成果を最初に浴しながら、「反日米・親中朝ロ」を露骨に運動してきた層である。思想行動が極めてアンバランスである。最近は、20~30代が忌避し始めていた。

     

    こういう時期に引き起こした問題である。「86世代」への潜在的な批判が、一気に表面化するリスクを含んでいる。演技たっぷりなハンガーストライキは、もはや若者の批判の目から逃れることはできないだろう。

     

    (3)「民主党が生きる道は一つしかない。李代表は逮捕同意案の可決を謙虚に受け止め、令状審査に誠実に臨まなければいけない。本人が主張するように検察の捜査が根拠のない政治捜査であるのが事実なら、裁判所も同じ判断を下すのではないだろうか。半面、令状が発付されれば民主党は裁判所の判断を尊重し、リーダーシップ革新と再整備に入るべきだろう。内紛を防いで総選挙で勝利するには李代表本人が去就に勇断を下すしかない。国民の信望を集める良心的な大きな人物へと党のリーダーシップを改革し、換骨奪胎の誠意を見せることだけが民主党の代案だ」

     

    今回の事態で、韓国左派の運命は決まるであろう。常識と良識を備えた左派でなければ、国民の支持は得られるはずがない。韓国で、「86世代」がリーダーシップを握れる時代は終わるであろう。

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    韓国国会は21日、最大野党「共に民主党」代表の李在明氏の逮捕状請求に同意した。票決では、賛成が反対を規定でわずか1票上回る(票数では3票差)というきわどいものであった。「共に民主党」は、国会では最大の議席で過半数を占めている。だが、党内から大量の造反者が出て、逮捕状請求に同意という事態になった。検察は、この結果をもって裁判所へ正式に逮捕状を請求する。裁判所は、過去の例でみると逮捕状請求の2割を棄却している。今回の逮捕状請求が受け入れられるかは、結果を待たなければならない。 

    『聯合ニュース』(9月21日付)は、「韓国国会、最大野党代表の逮捕同意案を僅差で可決ー党内から『造反』」と題する記事を掲載した。 

    韓国国会は21日、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する逮捕同意案を賛成多数で可決した。現職の国会議員である李氏は、会期中に国会の同意なしに逮捕・拘束されない不逮捕特権を持つが、同意案の可決により逮捕状発付の是非を判断する裁判所の令状審査が実施されることになる。

     

    (1)「この日の国会本会議で採決が行われた李氏の逮捕同意案は、賛成149人、反対136人、棄権6人、無効4人で可決された。採決には在籍議員(298人)のうち295人が参加した。逮捕同意案が可決されるためには、出席議員の過半数(148人)の賛成が必要だが、今回の採決では賛成票が必要数をわずかに1票上回った。与党「国民の力」所属議員110人に同意案に賛成する意向を示していた野党「正義党」の6人、「時代転換」の1人、「韓国の希望」の1人、与党系の無所属議員2人が賛成したと仮定する場合、民主党で29人が賛成したと推定される」 

    下線のように、民主党から29人が逮捕に賛成票を投じた。棄権6人と無効4人の計10人が、間接的な逮捕賛成に回っている。合計で39人が党の方針と異なる造反者となった。前回2月の逮捕状請求では、賛成が16人、棄権と無効は計20人であった。結局、36人の造反者が出た計算になる。今回と前回を比較すれば、造反者が3人増えた計算になる。 

    造反者は、来年4月の総選挙で党から「公認」されないリスクを感じながらも、李氏の余りに破天荒な振舞に拒絶感を示したものである。李氏は、異なる罪名で2回も国会へ逮捕状請求の承認を求められた異例の存在だ。どう弁護しても、公党の代表に相応しくないことは明白である。日本では、考えられない韓国の政治風土と言うほかない。

     

    (2)「同意案の可決を受け、国民の力の首席報道官は「民主党は国民に贖罪(しょくざい)すべきだ」とする論評を出した。共に民主党は論評を出さなかったが、同党の院内報道官は記者団に「執行部が議員たちに対し複数にわたって否決を訴えたが、違う結果が出て残念だ」と述べた」 

    「共に民主党」は、自党に不利な事態であるので沈黙している。あれだけ、騒ぎ回っていたのがウソのような状態だ。今後の党運営を考えると言葉も出ないのであろう。 

    (3)「李氏を巡っては、ソウル近郊の城南市長だった時期の都市開発事業を巡る背任容疑や、京畿道知事時代に下着メーカー大手・サンバンウルグループを通じ巨額資金を北朝鮮側に不正に渡した疑惑に絡む容疑で検察が逮捕状を請求していた。検察は、今年2月にも別の疑惑を巡り李氏の逮捕状を請求したが、この時は僅差で逮捕同意案が否決された。検察は3月下旬に李氏を在宅起訴した」 

    李氏は、先の大統領選挙運動中に微妙な演説をした。落選すれば逮捕されて刑務所へ送られると涙ながらに語ったのだ。是が非でも、逮捕を免れたいという一心であったことは間違いない。そのために、用意周到に準備してきた。ハンストも、国会へ逮捕状請求が出る日まで計算していたと報じられている。

     

    李在明氏は20日、自身に対する逮捕同意案の国会採決を巡り、フェイスブックに「明らかに違法で不当な今回の逮捕同意案の可決は、(政権の意向に沿った)政治検察の工作捜査に翼を与えるもの。検察独裁の暴走機関車を国会の前で止めてほしい」と書き込んだ。逮捕同意案の国会本会議での採決を21日に控え、党内に否決を呼び掛けたものと受け止められる。 

    李氏は6月19日、自ら国会議員の「不逮捕特権」を放棄すると宣言を出した。この事実と重ね合わせると、20日のフェイスブックでの発言は大きく後退している。検察の手が身近に迫ってきて、「SOS」を発したのであろう。 

    韓国政治は、これから激動期を迎えるであろう。左派が、どのように対抗するかである。だが、李氏の北朝鮮への送金事件は「重罪」である。金大中・元大統領も、現代財閥に資金を提供させて北朝鮮代表の金正日と会談した例がある。李氏は、この前例に倣って下着メーカーに資金を送らせたとみられている。だが、当時の李氏は知事にすぎない。韓国を代表するポストではなかった。大統領選挙を有利に運ぶための戦術に使おうとしたのだろう。 

    韓国左派にとって、「李在明逮捕」が現実化すれば致命的である。左派勢力が大きく後退する契機になるだろう。李氏は、紛れもなく「86世代」の一員である。貧しい家庭から身を起こして権力の頂点を目指してきたが、危ない橋ばかりを歩いてきた。その咎めが出たのだろうか。

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    現在、断食中の最大野党代表・李在明氏は当時、京畿道知事として民間企業からの請託を受け、これと引き換えに北朝鮮へ800万ドル(約11億8280万円)の送金をさせたとする疑惑で、検察から逮捕状請求が国会へ出されている。

     

    李氏は、なぜ自らが受け取らない「第三者贈賄」に関与したのか。それは、李氏が韓国大統領選に立候補する上で、北朝鮮の金正恩氏と会談できれば大きな得点になるとみた結果とされている。北朝鮮への送金は、最悪で「終身刑」も科される事件である。李氏にとっては、断食をすることで、なんとか逃回りたいという思惑があると指摘されている。

     

    『中央日報』(9月20日付)は、「韓国検察、野党代表 北朝鮮への不法送金は安保脅威下で重大犯罪『無期懲役宣告も可能』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国検察が最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の北朝鮮への不法送金容疑に対して「国際安全保障を脅かす重大な犯罪」と強調したことが確認された。

     

    (1)「19日、中央日報が入手した拘束令状請求書によると、ソウル中央地検反腐敗捜査第1部(部長オム・ヒジュン)は、「被疑者(李代表)がキム・ソンテ元サンバンウル会長を通じて北朝鮮に支給した800万ドル(現レートで約11億8280万円)は、韓半島(朝鮮半島)の安全保障を脅かす軍事費用として使われているか、使われる可能性を排除することはできない」とし、「被疑者は北朝鮮最大の境界地である京畿道(キョンギド)の首長として、このような南北関係の特殊性について十分承知しているにもかかわらず、私益追求のためにキム・ソンテに北朝鮮側に100億ウォン(約11億円)を超える巨額を支給させた」と指摘した。そのうえで「これは大韓民国の実定法および対朝制裁の違反を超えて国際安全保障までもを脅かす極めて重大な犯罪」と付け加えた」

     

    検察は、「公務員が職務に関連して不正な請託を受け、本人でない第三者に賄賂を提供」すれば成立するという「第三者賄賂提供罪」を適用した。サンバンウルの関係者は、すでに800万ドル(約11億円)の資金準備過程と送金経路などに関連し、検察に具体的な資料提供と供述をして捜査に協力してきた。証拠は、すべて検察が確保している上に、当時の副知事が李氏に送金の顛末を報告したという証言も得ている。こうなると、李氏に逃げ場はなくなったことになる。せいぜい、断食闘争ぐらいしかなかったであろう。

     

    (2)「143ページに達する拘束令状請求書には、李代表が京畿道から不法流出した文書を使って検察捜査を妨害したという内容も記されていた。検察が提示した流出文書は▽国際大会説明要求公文書(京畿道⇔アジア太平洋平和交流協会)▽道知事の訪朝招待要請公文書(京畿道→北朝鮮)▽国連対朝制裁免除の現況▽南北平和協力事業目録▽国連対朝制裁免除および期間延長進行状況--など5件だ。検察は「被疑者が京畿知事在任時期に秘書官として勤務して現在は民主党代表秘書室に勤務している者を通じて京畿道公文書を不法な方法を通じて受け取った」とし「受け取った公文書を通じて責任をイ・ファヨン(元京畿道平和副知事)ら他の京畿道公務員に転嫁する一方、自身は関連がないという辯訴を作るために事前に緻密に準備した」と記した」

     

    李氏は、捜査妨害して罪を副知事(当時)に押しつける算段をしていたと証拠を揃えられている。検察は、李氏が法廷で逃回っても、証拠によって退路を断つ戦術まで組み立てられている。

     

    (3)「検察は、李代表と彼の側近・支持勢力がこの事件の共犯など重要参考人に危害を加えることができる点も拘束必要性の一つとして言及した。検察は「被疑者に不利な陳述や証言をした関連者を裏切り者扱いして非難し、不利な陳述を翻意させるように懐柔や圧迫を加える様子、被疑者が関わった大庄洞(テジャンドン)事件や城南(ソンナム)FC事件などの関係公務員たちが自殺する様子、被疑者が容疑を否認して一抹の責任感もなく下級者に責任を転嫁したり関係を否定したりする冷酷な様子などを理由に、多くの下級公務員が人事・経済・生活上の各種不利益や報復を受けるのではないだろうかと恐れている状況」と指摘した」

     

    李氏の事件にまつわる関係者では、すでに複数の人物が命を絶っている。不利な陳述を翻意させるように懐柔や圧迫を加えてきた実態まで暴かれている。李氏の犯罪の「総集編」のような記述がされているのだ。こういう人物が、韓国大統領を目指してきたのだ。背筋の凍るようなおぞましい事件だ。

     

    (4)「検察は、李代表に「11年以上36年6月以下の懲役または無期懲役が宣告されるべき」と主張した」

     

    李氏は、最悪で無期懲役が宣告される可能性もあるという。

     

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    韓国検察は18日、民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表に対し、2回目の逮捕状請求を行った。19日間の断食中だった李代表は同日、健康悪化を理由に病院に搬送された。民主党は「残忍な令状請求」だとして、定期国会日程の中断を宣言したほど。しかし、18日頃に李代表へ逮捕状が請求されることはあらかじめ分っていたことだ。

     

    検察は、今月12日の事情聴取が最後だと発表した。これから1週間前後で逮捕状を請求するのがこれまでの慣行である。李代表は、弁護士出身であるので、検察が事情聴取で出頭要求した翌日にハンストを始めたほど。逮捕状が、請求された日を想定していたとみられる。演出力満点である。

     

    9月21日には、李氏の逮捕状請求案が国会へ出される予定である。最大野党「共に民主党」は、逮捕状請求に対してどう対応するか。こういう緊迫した状況下で文前大統領がついにマイクを握って演説した。現政権への批判である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月19日付)は、「韓国、野党代表逮捕案で攻防 前大統領が退任後初演説」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府は19日、最大野党「共に民主党」の李在明代表の逮捕同意案を国会に提出した。北朝鮮に不法送金した疑いなどで検察が逮捕状を請求していた。同日には野党系の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が退任後初めて公の場で演説し政権批判に加勢した。与野党の攻防が激しさを増す。

     

    (1)「2024年4月に控える総選挙(国会議員選)は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の中間評価の機会となる。与野党は無党派層の票争奪を意識し、全面対決の様相を呈する。尹政権は李氏の汚職疑惑や北朝鮮とのつながりをあぶり出す戦術を採る。検察による逮捕状請求は2月に続き2回目。都市開発事業を巡る背任容疑と、大手衣料企業による北朝鮮への800万ドル(約12億円)の送金に関与した容疑がかかる」

     

    李氏は、2月に続き2回目の逮捕状請求である。最大野党代表として、この上ない不名誉なことだ。「不徳のいたすところ」で済む話ではない。北朝鮮への不法送金は、韓国左派の一断面をみせている。民族主義グループとして北朝鮮とは気脈を通じているのだ。

     

    (2)「韓国では、国会開会中の国会議員逮捕には国会の同意が必要になる。国会は野党が過半数を握るため、逮捕同意案の可決には野党議員の造反が必要になる。2月の採決時は野党から賛成者や棄権者が出て賛成が反対を1票上回ったが、賛成が出席議員の過半数に達せず否決された。政権・与党は、逮捕同意案が否決されたとしても野党代表の疑惑を世論に印象づけられる。野党のせいで逮捕に踏み切れず、国会がまひしていると訴える算段だ」

     

    最大野党「共に民主党」は、李氏の逮捕状請求を拒否すれば後味の悪いことになろう。李氏をかばった形になるからだ。前回の逮捕状請求では「共に民主党」から36人が賛成したが、トータルでは規定より1名足らずで逮捕できなかった。今回はどうなるか。

     

    (3)「一方、野党は尹政権の批判を強める。文前大統領はソウル市内で演説し「安保は保守政権が上手だ、経済は保守政権が良い、という捏造(ねつぞう)された神話から抜け出すときが来た」と訴えた。李氏は尹政権の強権に抵抗するとして8月末からハンガーストライキ(断食闘争、ハンスト)を始め、19日目の9月18日に病院に搬送された。文氏は演説の前に病院に李氏を見舞った。共に民主党によると文氏は李氏にハンストの中断を求めた。野党は18日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相の解任決議案を国会に提出した。李氏の逮捕同意案とともに21日にも国会で同時に採決される見通しだ」

     

    文前大統領も必死だ。大統領辞任の際は、「国民から忘れられた存在になりたい」としていたが、どうしてどうして。マイクを握って現政権批判を行った。鑑査院が、文政権時代の高官ら22名を統計改ざん容疑で検察へ告発したので堪り兼ねたのであろう。

     

    元統計庁長の兪京濬(ユ・キョンジュン)「国民の力」議員は18日、中央日報との電話で「文政権は、過去20年間上昇していた韓銀の労働分配率とは異なる『下落推移の労働分配率』を主張し、これを基盤にでたらめな所得主導成長を前面に出した」と批判。「韓銀が統計作成機関として過去5年間この問題に沈黙したのは職務放棄だ」と批判した。

    労働分配率は、「分子」の賃金を「分母」の付加価値で割った値である。文政権では、この分母に、「減価償却費」を加えて分母を大きく見せかけて、労働分配率を低く算出させたという。こういうルール違反の計算式を強要して、最低賃金大幅引上げの根拠に使った。

     

    (4)「現状では与野党とも支持層の広がりに欠く。世論調査会社の韓国ギャラップによる9月第2週の調査で与党の支持率は33%、野党は32%で拮抗する。年初の与党35%、野党33%から顕著な変化はみられない」 

     

    世論は、与野党の対立に嫌気がさしている。最大野党が、手を替え品を替えて政権批判をしても、自らの支持率は上がらないというジレンマに立たされている。

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    韓国最大野党「共に民主党」代表の李在明氏は、大統領の国政刷新と内閣改造、福島処理水海洋投棄反対の立場表明などを要求。8月30日から断食闘争に入っていたが、19日目となる9月18日午前に病院に搬送された。 

    李氏が断食に入った理由は、国会で議論すべきことがらである。政府が、野党の要求を入れないから断食闘争するとは、政治家としての本質を弁えない行動と言うべきだ。もっともこの背景には、自らへの逮捕状請求を忌避する目的が主でないかという指摘も出ている。断食をして国民の同情を集め、逮捕を免れるというもの。百戦錬磨の李氏だけに、その動機についてはいろいろと分析されている。 

    『朝鮮日報』(9月18日付)は、「韓国最大野党代表、ハンスト19日目 対峙激化の中 野党『尹政権、内閣総辞職せよ』」 

    韓国の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が17日でハンガーストライキ開始から19日目を迎えた中、同党は早ければ18日、ハン・ドクス首相の解任建議案を国会に提出することにした。民主党は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の内閣総辞職も要求するなど、「対政府全面闘争」を宣言した。大統領室は民主党の要求に対し、「破れかぶれの闘争の被害者は結局国民」だと反論するなど、出口の見えない「強対強」の政局が続いている。

     

    (1)「民主党は17日午前と午後の2回にわたり最高委員会議を開き、イ・ジェミョン代表のハンスト中止案と対政府闘争計画について議論した。最高委員会は大統領室糾弾声明を出し、「尹錫悦政権が結者解之(自分が起こした問題は自分で解決しなければならない)しなければ、民主党は国会が持つ権限に基づき、現在の状況を正していく」とし、ハン・ドクス首相の解任と内閣総辞職を重ねて求めた。民主党のパク・ソンジュン報道担当は「18日、ハン首相の解任建議案を国会に提出する可能性が高い」と説明した」 

    「共に民主党」は、首相退任と内閣総辞職を求めている。これが、ハンストの目的の一つである。だが、こういう「実力行使」で内閣を替えさせることなどできるはずがない。ハンストをやれば内閣が総辞職するという悪例を作ってはいけないのだ。 

    (2)「これに先立ち、民主党は前日、国会で5時間にわたり緊急議員総会を開いた後、「尹錫悦政権の暴政と検察独裁に立ち向かい、総力を挙げて戦っていく」とし、尹錫悦政権の全面的な国政刷新と内閣総辞職およびハン・ドクス首相解任建議案の即時提出▽不当な政治捜査・野党弾圧などに立ち向かうこと▽違法を働いた検事に対する弾劾手続きの推進▽市民社会を含むすべての勢力と国民抗争などが盛り込まれた決議文を発表した」 

    韓国最大野党は、国会で最大議席を持っている。その政党が、ハンストを行って騒いでいるのだ。政治をオモチャにしていると言って差し支えない。

     

    (3)「民主党はこれと共に、イ代表に議員全員の意思を伝え、ハンガーストライキの中止を改めて求めた。しかし、イ代表はハンガーストライキを続ける意思を曲げなかった。民主党指導部は同日午後には「直ちにハンガーストライキを中止し、入院すべき」という医療スタッフの診断を受け、救急車を待機させ緊急入院するようイ代表を説得したが、イ代表は入院を頑なに拒んだ」 

    ハンストは、スタンドプレイである。李氏は、検察の逮捕状請求が近いことを知っており、それを忌避する目的であることは間違いない。 

    (4)「民主党の対政府闘争決議に対し、与党は「突拍子もないこと」だと一蹴した。大統領室高官は同日、「野党のハン・ドクス首相の解任建議案決議、内閣総辞職の要求」に対する大統領室の立場を問うハンギョレの質問に「皆の力を結集しても足りない時に、破れかぶれの闘争を展開するとは、被害者は結局国民であろう」と答えた。検察がイ代表に対する拘束令状を請求した場合、逮捕同意案処理をめぐる民主党内の論議と、その後イ代表が拘束されるかどうかによって、政局の不確実性はさらに高まるものとみられる」 

    李氏は、次の逮捕状請求の際は、国会議員の不逮捕特権を使わないと明言している。この発言によれば、国会での逮捕状許諾の可能性が高まる。「共に民主党」」内部では、前回36名が逮捕状請求に賛成したのだ。

     

    『聯合ニュース』(9月18日)「韓国検察、再び最大野党代表の逮捕状請求=市長時代の背任容疑など」と題する記事を掲載した。 

    韓国のソウル中央地検は18日、ソウル近郊の城南市長時代の都市開発疑惑や下着メーカー大手・サンバンウルグループが北朝鮮側に巨額資金を不正に渡した疑惑に絡み、背任や偽証教唆、外国為替取引法違反容疑などで最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の逮捕状を請求した。 

    (5)「検察は2月、別の疑惑を巡る容疑で李氏の逮捕状を請求したが、国会で逮捕同意案が否決された。国会議員の李氏には不逮捕特権があり、会期中は国会の同意が必要だ。李氏は城南市長だった2014~15年、同市の柏ヒョン洞の土地開発事業で民間業者にさまざまな便宜を図り、事業から排除された城南都市開発公社に200億ウォン(約22億円)相当の被害を与えた疑いが持たれている。また、京畿道知事時代の2019~20年には李華泳(イ・ファヨン)元京畿道平和副知事を通じサンバンウルのキム・ソンテ元会長に対し、李氏の訪朝費用など計800万ドル(約12億円)を北朝鮮に送金させた疑いもある」 

    今回の逮捕状請求には、二つの事件がからんでいる。城南市への損害事件と、北朝鮮への送金疑惑である。国会で逮捕状請求が認められなければ、在宅起訴になろう。

     

     

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