勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の文大統領は、任期最後の閣議で「日本に対抗して誰も揺るがせない国をつくった」と自画自賛した。最後の最後まで、「反日大統領」であることを国民に向けて明らかにしたのだ。次期政権が、日本との関係改善に動いていることをけん制したのであろう。

     

    文氏は、ロシアのプーチン大統領に似た心理状態のように見受けられる。プーチン氏は、ウクライナを毛嫌いして、ついに軍事侵攻にまで暴走した。文氏も、韓国に国力があれば日本へ攻め込みたい心境であったに違いない。ここまで、日本を嫌った心底には、深い日本への劣等感があるはずだ。それが、こういう「反日発言」になったのであろう。

     


    『朝鮮日報』(5月3日付)は、「文大統領が任期5年を評価『日本に対抗し“誰も揺るがせない国”をつくった』」

     

    (1)「退任を控えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領が5月3日に行われた国務会議(閣議に相当)で、これまでの5年を振り返り「わが政府の5年は、国家的危機を、汎(はん)政府的な力量を総動員して克服した時間だった」として「日本の不当な輸出規制に対抗し、素材・部品・装置分野での自立の道を歩みながら『誰も揺るがせない国』の土台を確実に築いた」と述べた。

     

    文氏は、「日本の不当な輸出規制に対抗し」としている。発端は、韓国裁判所による旧徴用工に対する日本企業への賠償支払い判決であった。この案件は、文氏が判決直前に「人権に時効はない」と演説して、裁判所へ無形の圧力をかけるという政治的意図に基づいていた。徴用工問題は、日韓基本条約(1965年)で解決済みである。それを蒸し返して、文大統領は日本へ一矢報いたかったのだ。

     


    文氏は、「日本は加害者、韓国は被害者である。加害者の日本が、韓国に批判されても言い訳することはできない筈」という強い信念を持ち続けている。刑事裁判の被告と原告の立場を堅持して、日本へ立ち向かったのである。この狭量さが、日韓関係を破綻に追いやった。裁判所という舞台を借りて、日韓基本条約で解決済みの問題を蒸返しさせたのだ。

     

    判決は、この文大統領の期待に見事に応えた。日韓基本条約での無償3億ドルの名目は「経済協力金」である。「賠償」という文言がない以上、日本企業が支払う義務がある、としたのだ。日韓基本条約では、徴用工を意味する文言が入っている。こういう韓国の「三百代言」的な判決に日本が応じる訳がない。これが、日韓紛争の原点である。

     


    文氏が学生時代を送った1980年代は、反日・反米闘争が盛んであった。文氏は、火炎瓶闘争に参加している。そのときの日本嫌いが終生、文氏の脳裏を離れなかった。政治的に成長しなかった大統領と言っても良いだろう。

     

    日本は、この問題で韓国政府へ再三にわたり話合いを申し入れたが、ことごとく無視して取り合う姿勢を見せなかった。文氏の頭は、「原告・被告」の関係であった。日韓関係という外交関係を棚上げしていたのだ。

     

    ここで日本は、「政経分離」という視点から「政経不分離」へ舵を切った。韓国への半導体主要3素材の輸出手続きの厳格化である。韓国を「ホワイト国」指定から外したのだ。これまでの「一括輸出承認制」を止めて、「個別輸出承認制」へ切り変えた。

     

    日本が指定している「ホワイト国」は、すべて親日国である。紛議が起こっても、すぐに話合いで解決できる国ばかりである。ここへ、「反日」の韓国が紛れ込んでいた。どういう事情で韓国を「ホワイト国」へ加えたのか分らないが、あれだけ騒ぎを起す韓国を「ホワイト国」へ加えたこと自体が間違いである。

     

    韓国はこの事態に対し、「輸出禁止」と騒ぎ立てた。実態は、「輸出手続きの厳格化」であり、「輸出禁止」ではない。現に、韓国の必要とする量はすべて輸出承認されているからだ。韓国は、こういう実情を知りながら「反日不買運動」を始めた。「NO 安倍」「NO JAPAN」という幟をつくって、ソウルの繁華街へ押し立てた。文大統領は、「二度と日本には負けない」と強硬演説をした。

     

    日本が、韓国に行なった「政経不分離」は、韓国の「反日ムード」を鎮める役割を果たしている。韓国は、「世界で唯一、日本をバカにできる国」という間違った観念を持っている。韓国が何をやろうとも、日本の「政経分離」で実害はなく、安心して反日を行なってきた背景だ。だが、日本の「政経不分離」政策によって、韓国の政治的な不条理な問題へは、経済的損失の伴うことを通告したのである。この効果は今後、永遠に廃ることなく生き続けるであろう。こうやって、韓国へ歯止めをかけたのである。

     


    文氏は冒頭の国務会議で、「素材・部品・装置分野での自立の道を歩みながら『誰も揺るがせない国』の土台を確実に築いた」と発言している。これは、全くのウソである。試みに、日本が前記の3部品の輸出禁止を行なったらどうなるか。韓国の半導体産業は、操業停止に追い込まれる。韓国経済は暗闇になるのだ。

     

    そういう重大な関係を持つ日本に対して、言いたい放題という姿勢は、決して褒められたものでない。そこには,自ずとブレーキがかかるべきである。文氏は、率先してそのブレーキを外して、日本批判を拡大した大統領である。一国の元首が行なうべき姿勢ではなかった。反日を国内政治に利用したと批判される理由である。

     

    日本にとっては、「鬼門」であった文在寅大統領との付き合いが、ようやく終わろうとしている。新政権の日韓融和姿勢に期待したいが、日本は「政経不分離」というブレーキを忘れてはならない。そういう毅然としたもの底に持つことで、自制した外交が成立するからだ。 

     

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    韓国の文大統領が、あと1週間で退任する。文氏は、記者会見も開かずに退任するようだが、インタビュー記事で好き勝手なことを言っている。日韓関係悪化で、悪いのは日本という調子だ。「日本の右傾化が日韓関係を悪化させた」というのである。開いた口が塞がらないとはこのことを言うのであろう。もはや、怒りも通りこして「愚かな人だ」と哀れみを感じるだけである。

     

    文政権支持メディア『ハンギョレ新聞』は最近、外交問題で「脱文在寅」を掲げている。これまで、社内で言いたくても言えなかったが、文氏の退任寸前で文外交を正面から批判している感じである。

     


    『ハンギョレ新聞』(4月30日付)は、「韓国外交は何をすべきか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・ミンヒ論説委員である。

     

    (1)「韓国は今、世界で最も難しい外交を展開しなければならない国の一つだ。韓中国交正常化以後30年間、韓国外交は「安保は米国、経済は中国、北朝鮮の核問題は米中と協力して解決していく」という枠組みの中で行われてきた。しかし、米中覇権競争とロシアのウクライナ侵攻が世界を「分断」したことで、その枠組みは崩れ落ちている。安保と経済が一つに絡み合っているのに、経済は中国依存度が高すぎるうえ、北朝鮮の核の脅威も危険度が増している。難題を解決する容易な道はないだろう」

     

    このパラグラフは、韓国外交の置かれている地位が複雑であることを示している。だが、欧州をモデルに考えれば、回答は出てくるだろう。ウクライナは,NATO(北大西洋条約機構)へ参加したいと言ったばかりに、ロシアに侵略され不条理な目に遭わされている。だが、これまで中立を標榜してきた北欧二国のスウェーデンとフィンランドは、ウクライナの悲劇を見て、NATO加盟を近々のうちに決めそうだ。最終的な安全保障は、大きな同盟の枠に入ることで確実になる。

     


    (2)「対中国包囲網の最前線に立つことなく、国際社会と協力し、国際秩序の変化に積極的に対応していく指導者の慎重な言動がいつになく求められる。ところが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は4月14日、『ワシントンポスト』紙とのインタビューで、中国に対してより強い政治的立場を持つためには、米国との軍事同盟を強化しなければならないとし、「中国は北朝鮮と同盟であり、北朝鮮は我々の主敵だ」と述べた。「北朝鮮の同盟である中国も主敵」という意味とも取れる、次期大統領の発言としては断定的すぎる内容だ」

     

    尹次期大統領は、はっきりと米国との軍事同盟を強化しなければならないと言っている。これが正解のはずだ。スウェーデンとフィンランドが、NATOへ加盟したいのは、外交的に白黒をはっきりっせることである。現在のような「乱世」での「中立」は、安全保障上において賢明な策でなくなった。誰も支援してくれないからだ。

     


    (3)「有罪と無罪を白黒論理で問う検事の物言いだ。外交安保の重さを十分に把握していない。「対北朝鮮先制攻撃」や「THAAD(高高度防衛ミサイル)追加配備」といった厳重な問題を、前任者を攻撃するための国内政治問題として消費している。ある外交専門家は、「尹次期大統領がこれまでやってきた言動通りに外交をすると、1年以内に大きな危機が訪れるだろう」と懸念した。5月21日、就任から11日後という超高速で開かれるジョー・バイデン米大統領との首脳会談で、尹次期大統領が韓国と米国の国益をきちんと区分できるかどうかが心配だ」

     

    このパラグラフは、取り越し苦労の印象が強い。例えば、日本を見るが良い。中国批判をしても、中国が日本へ報復できないのだ。韓国は、旗幟を鮮明にしないで「低姿勢」であるから韓国を軽んじて振り回すのであろう。韓国は、「本籍」(米韓同盟)をはっきりさせて行動すれば、中国と言えども手を出せない筈である。

     


    (4)「保守陣営を代弁する尹次期大統領の白黒論理の危うさはさることながら、進歩陣営の中にも別の白黒論理が存在する。ロシアのウクライナ侵攻の責任が「NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を押し進め、安全保障をめぐるロシアの懸念を無視した米国」にあると主張し、「NATO加盟を推進して戦場になったウクライナ政府の外交的無能さ」を嘲弄する人々がいる。今回の戦争をきっかけに米国が主導してきた自由主義国際秩序とドル覇権が崩壊すれば、中国とロシアが主導する代案的な国際秩序が訪れると「期待する」人も少なくない」

     

    文政権外交は、「負け犬根性」であった。だから、日本を見ればやかましく吠え立てていた。そうしなければ、精神的なバランスが取れなかったに違いない。日本が、最大の迷惑を被った国であろう。

     


    (5)「中国とロシアの首脳会談が開かれるたびに「多極体制」と「国際秩序の民主化」という用語が登場した。米国の一極体制を揺さぶり、米国、中国、ロシアなどの大国が勢力圏を分け、それぞれ周辺の弱小国を統制する新しい帝国的秩序を目指してきたのだ。中ロは、国家主導資本主義の効率を極大化し、市民社会や民間の自主性を徹底的に遮断し、国家の命令に絶対服従する国家主義を実現している。現在、ウクライナでロシアが行っている殺戮と破壊、「ゼロコロナ」政策に基づいて数千万人を「閉じ込められる」中国の統制と監視システムは、彼らが代案ではないことを如実に示している」

     

    常識人が、中ロ国内の現状をみれば、強権体質の国家と親しくはなりたくないであろう。ところが、文政権にはそれが魅力的に映っていた。文政権も可能であれば、そういう内政をやりたかったのであろう。嫌悪感でなく、憧れていたはずである。文政権の本質は、反民主主義政治を志向していたと見るべきだろう。

     


    (6)「韓国社会の進歩勢力の一部が、抑圧される人々の苦痛を減らし、不平等と貧困の問題を解決しようと実際に努力するよりも、「民族主義と反米」を掲げて「進歩主義の鮮明性」を主張するという落とし穴にはまっているのではないか。ロシアの侵攻を止め、朝鮮半島と台湾をはじめ東アジアで戦争を防ぎ、平和を守るために、韓国が国際社会とともに果たすべき役割は少なくない」

     

    韓国進歩派の「民族主義と反米」は、頭の中だけでこねくり回した産物である。「反日」もその延長である。過去の歴史問題に固執して、未来を見なかった集団なのだ。韓国が、こういう朝鮮時代を懐かしむ「懐古主義的」外交から抜け出せなければ、日本にとって韓国を相手にする時間は無駄になろう。

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    韓国では5月10日、新政権が誕生する。現政権の「中ロ寄り」スタンスが、「日米寄り」へ切り替わる。中国が、焦りと警戒観を滲ませている理由である。中国はこれまで、文政権に「圧力」を加えれば、かなり操縦することができた。ユン政権では、保守政権らしい「気骨」を示して行くと見られる。それだけに、対応に苦慮するのであろう。

     

    ロシアのウクライナ侵攻で浮かび上がったのは、中ロ朝三カ国の濃密な「友誼性」である。この三カ国は、韓国を侵略した国々だ。中朝は、ロシアのウクライナ侵攻に反対姿勢を見せず、精神的な支援を送っている国である。

     


    韓国が、「第二のウクライナ」になるのを防ぐには、安全保障で新たな取り組みが必要になった。北欧の中立国フィンランドとスウェーデンが、NATO(北大西洋条約機構)へ加盟したいと動いているのが現実世界である。世界情勢は、急変しているのだ

     

    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「『クアッド』へとつながる韓米の連携強化に不安か、中国による韓国けん制が本格化」と題する記事を掲載した。

     

    米国のジョー・バイデン大統領の韓日歴訪スケジュールが確定する中、中国のけん制が本格化しつつある。韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任直後に開かれる韓米首脳会談で、韓国と米国の絆が強まるだろうという予想に加えて、中国けん制のための連合体「クアッド」に韓国が漸進的に加入する可能性まで取り上げられ、不満に思っている中国の胸の内がうかがえる、と解釈されている。

     


    (1)「中国外交部(省に相当。以下同じ)の汪文斌報道官は4月28日の定例ブリーフィングで、バイデン大統領の韓日歴訪についての論評を要求されると、「閉鎖的かつ排他的な小グループを作って地域国家間の相互信頼と協力を害してはならない」と返答した。続いて、米国・豪州・日本・インドの対中連合体「クアッド」について「古い冷戦的思考で満ちている」とし、「軍事的対決の色彩が濃く、時代的潮流にも逆行し、支持を得ることはないだろう」と評した」

     

    中国は、ロシアの兄弟国ウクライナを軍事侵攻したが非難しなかった。これは、韓国には衝撃的である。文政権も、この事態を半ば容認したい雰囲気であったが、米国の強い圧力で翻意した。こういう付和雷同政権と異なり、次期政権は民主主義国の一員という認識に立っている。

     


    (2)「バイデン大統領の東アジア歴訪中に行われる韓米、米日首脳会談とクアッド首脳会談は中国を意識したものである-との見方を隠さなかったのだ。特に、尹次期大統領が候補時代に「加入したい」と公約したクアッドに対する中国外交当局の言及は、韓国の次期政権に対するけん制とも解釈される」

     

    中国は、ロシアと共同で米国中心の世界秩序に挑戦しようとしている。韓国が、そういう中ロの夢の実現に協力するかどうか。それが、最終的に問われている。中ロの目指すものは、中国の言うところの「冷戦思考」による行動である。

     


    (3)「中国の国営メディアや専門家らも最近、韓国の戦略的自主性に言及して韓国を圧迫している。中国国営の英字メディア「グローバル・タイムス」は4月27日、黒竜江省社会科学院北東アジア研究所長の話を引用し、岸田文雄首相が韓国側の使節団と会った席で「韓米日3国の戦略的提携」を強調したことをめぐって「岸田発言は韓国をクアッドに引き入れ、ロシアとウクライナの問題で協力を引き出すためのもの」と主張した」

     

    ロシアは、兄弟国を侵略している国である。そういうロシアに対して支持する中国も、同じ侵略思考の強い国であることを図らずも証明することになった。中国が、ロシア同様に警戒されるのは致し方ないこと。ヨーロッパの中国観を見れば、それが明瞭である。

     

    (4)「中国国際問題研究院アジア太平洋研究所の項昊宇・招聘研究員も同日、「環球時報」への寄稿記事で「韓国が米国の対中抑制および対北圧迫の戦略に引き込まれることになれば、韓国は戦略的自主性を喪失し、米国が繰り広げる対中競争における『碁石』へと転落するだろう」「THAAD(高高度防衛ミサイル)を教訓にすべき」とし、対外戦略的自主性および独立性を持ってこそ韓国は独自の影響力を高められる、と主張した」

     

    韓国は、朝鮮戦争で一度は地図から消されかねないところまで追詰められた国である。それが、米軍や国連軍の血によって守られたのだ。こういう経緯から言えば、韓国が安全保障政策で米国と共同歩調を取るのは自然である。フィンランドやスウェーデンが、中立を捨ててNATOへ加盟したい。そう言い出すほど、国際環境が急変している。

     

    中国が、韓国のクアッド入りを阻止したければ、自らロシアを説得して休戦させる努力をすることだ。それをしないで、韓国にクアッドへ参加するなと迫るのは横暴そのものだ。

     


    (5)「中国の外交関係者が、韓国を訪れてメッセージを伝えるだろう、との見方も出ている。まず劉暁明・中国政府韓半島事務特別代表が、5月3日に韓国外交部の魯圭悳(ノ・ギュドク)韓半島平和交渉本部長と協議するため訪韓する。その訪韓中に大統領職引き継ぎ委員会関係者との会談も進めると伝えられている。また、5月10日の韓国大統領就任式に出席する中国の訪韓団の顔ぶれにも関心が集まっている。重量感のある顔ぶれで、次の尹錫悦政権に中国側の立場を訴えて説得するものと予測されている」

     

    中国は、自国の野望実現のため周辺国を「隷属」させたいのだ。ウクライナを侵攻するロシアの姿勢と、全く同じである。文政権は、これを喜々として受入れてきた。文外交の間違いはここにあった。

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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、あと2週間で大統領府を離れる。大統領就任演説では、国民統合を第一に掲げ、「経済大統領」として雇用問題解決に取り組むとも宣言した。現実は、すべてあべこべの結果になった。国内では、保守派を親日派として追詰める、李承晩初代大統領のような振る舞いであった。賃上げでは、労働組合の言いなりになって、大幅引上げをして雇用構造を破壊した。

     

    要するに、業績として残るようなことは一つもなかった。これほど、強い先入観に支配された大統領はいなかったのである。だが、文氏にはまだ救いの道がある。離任に際して、自己の業績を自慢するのでなく、自らの至らなかった点を国民へ率直に詫びることである。就任に際して国民へ約束し、できなかったことを謝罪するのだ。

     


    これが、これからの韓国政界での相互不信による対立を除去する上で、大きな影響を残すであろう。次期政権が、文政権を報復するという疑念を捨てるためにも、文氏が率直に国民へ詫びれば、韓国の融合化にプラスとなるのは間違いない。

     

    『中央日報』(4月26日付)は、「文大統領が退任前にやるべきこと」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のコ・ヒョンゴン論説主幹である。

     

    韓国の文在寅大統領は朴槿恵(パク・クネ)政権の途中下車で大統領をただで拾ったようなものだ。ろうそく集会の勢いに乗って80%を超える圧倒的な支持でスタートした。その気があれば報復の悪循環を断つこともできた。尊敬される指導者として歴史に残る絶好の機会だった。弾劾で傷ついた国民はネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領のような和解のリーダーシップを期待した。

     


    (1)「マンデラは600年間にわたり黒人を弾圧した白人政権を許した。自身に終身刑を求刑した検事を大統領官邸に招いて接待した。マンデラは27年間も獄中生活を送り、ひどい拷問を受けた。文大統領はマンデラの道を選ばなかった。就任演説では「真の国民統合の始まり」と言った。インクも乾く前に積弊清算という名の政治報復に執着した。剣を握ると恐れるものはなかった。国民全員の指導者でなく「陣営のボス」のようだった。すべてのことが理念化、政治化された。経済・社会・外交政策までが政治スローガンに変質した」

     

    文氏の後継政権は、保守派である。これまで進歩派政権は連続2期続いた。国民が、文政権の失敗に懲りて2期連続を認めなかった。それほど、酷い政権であったのだ。対立する相手には、すべて報復するという専制政治スタイルだ。権力行使を100%愉しんだのである。

     


    (2)「所得主導成長、不動産、脱原発、正規職化、韓半島平和プロセス、韓日関係、司法改革など主要政策が次々と失敗した。問題が生じても中道に修正しなかった。過ちを認めなかった。最低賃金引き上げで自営業者が苦痛を受け、雇用が減ると「所得主導成長をさらに強化する」と答えた。「常に自主をする」として「一人飯」で鍛えた自分だけの世界、特有の我執を固守した。「反対の意見が出ればさらに強行するのが文大統領のスタイル」といった親文派の言葉通りだった」

     

    人権派弁護士として名を売った文氏は、この評判に有頂天であった。何をやっても許されるという錯覚に陥ったまま、目を覚まさなかったのである。「反対の意見が出ればさらに強行するのが文大統領のスタイル」とは、恐れ入る。もともと、政治家になるべき人間でなかったのだ。

     


    (3)「政策の失敗もそうだが、文大統領が最も大きな過ちは(敵・見方の)組分けだった。2019年のチョ・グク元法務長官事態(注:チョ氏をめぐる犯罪捜査)は国を真っ二つに分裂させた。国民の心の中に相手に対する憎悪を植え付けた。文大統領は争いをやめなかった。「国論分裂とは考えない」と言った。数カ月後「チョ・グク元長官に心の借りを作った」と話した。チョ・グクに怒った半分の国民は眼中にないような発言だった。(文氏は)同じ陣営の人たち(の犯罪には寛容で)多数を赦免した。半面、李明博(イ・ミョンバク)元大統領、朴槿恵(パク・クネ)前大統領と財界人には厳格な基準を突きつけた」

     

    文大統領は、保守派の大統領二人を強引に刑務所へ送った。李氏の場合は、最初から刑務所へ入れる目的で捜査させた。朴氏は、歴代大統領が行なってきた大企業からの寄付金集めを、特別に「賄賂」と認定させた。贈収賄は、最も裁判が難しいとされる。証拠がなければ犯罪性を立証できないのだ。それにも関わらず、強引に有罪判決へ誘導させた。

     


    文氏が、こういう「悪行」を行なってきたから、自分も同じ扱いをされると極端に警戒している。それが、検察庁解体という前代未聞のことに走った。一人の大統領が、自分の身を守るために検察庁を潰すとは凄い権力濫用である。

     

    (4)「文在寅政権が残り2週間となった。終盤まで40%支持率を維持した。組分けで自分たちの勢力を結集したからだった。国民は政治的内戦の真ん中に立たされている。3月の大統領選挙直後、文大統領は尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領に「葛藤を解消して統合しなければいけない」と話した。執権中に常に分裂を助長してきた彼が言う言葉ではないようだ。強靭なメンタルを持っているのか、何を間違ったのか分からないのか」

     

    文氏は、徹底的に味方を守り、敵対者を追放する手段に出た。習近平氏やプーチン氏と手法は同じである。

     


    (5)「退任後に、「現実政治に関与せず平凡に暮らしたい」と言ったが、それだけでは足りない。退任前に国が分裂したことを素直に謝り、国民の心中の凝りをなくすことを望む。これが(国論)統合にプラスになり、本人にも薬になるだろう。大統合赦免も検討するに値する」

    文氏の権力濫用には、ぜひとも法の裁きを受けさせたい。ただ、現職大統領が前任者を獄窓に繋ぐのは、忍びないことでもある。この悪弊を絶つには、冒頭のマンデラ氏の見せた寛容な態度が必要だ。ユン次期大統領は、文氏を許すほかない。その前提として、文氏は大統領離任の際、国民へ謝罪して許しを請うべきだろう。




    韓国次期政権は4月24日、日本政府との政策協議団を派遣した。日韓関係改善へ向けて動き出したもの。28日まで5日間の滞日予定である。岸田首相への親書を携えており、大統領就任式へ招待するという。

    政策協議団は訪日中、岸田首相に続き、安倍晋三元首相、菅義偉前首相を相次いで表敬訪問する予定だ。また十倉雅和経団連会長と武田良太日韓議員連盟幹事長、泉健太立憲民主党代表ら政財界主要人物と幅広く面談する。林芳正外相とは25日に夕食をともにする。

     


    『中央日報』(4月25日付)は、「『韓日の誤解を解こう』、韓国次期大統領 就任式に岸田首相招待」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が冷え込んだ韓日関係に突破口を見出すために日本の岸田文雄首相を大統領就任式に招待するカードを出した。就任式の出席を名分として2年以上断絶していた韓日首脳間の疎通チャネルを復元しようということだ。

    (1)「韓日政策協議代表団は、5月10日大統領就任式の招待内容を記した尹氏の親書を岸田首相に手渡す予定だ。代表団の団長である鄭鎭碩(チョン・ジンソク)国会副議長は、「最悪の状態で放置されてきた韓日関係を改善して正常化することが我々の国益に符合するという認識を尹氏は持っている」とし、「韓日間の密度ある対話を始めたい」と明らかにした。続いて岸田首相の大統領就任式の出席について「通常、各国首脳の出席はその国が決める」としつつも「最終決定事項はまだ受け取っていないが、世界各国のどの首脳も出席意志を送って下されば最善の礼節を守って迎える準備をしている」と答えた」

     

    日本の首相が韓国大統領就任式へ出席するとなれば、2008年2月李明博(イ・ミョンバク)元大統領就任式に福田康夫首相が出席して以来、14年ぶりとなる。



    (2)「大統領職引き継ぎ委員会は岸田首相が就任式に出席する場合、2年以上中断されていた韓日首脳間の疎通が復活されるとみている。通常、新しい大統領は就任式に出席した各国首脳と会談して祝賀使節団に面会する「就任式外交」を行う。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の場合、2013年2月25日に韓印首脳会談に続いて麻生太郎当時日本副首相と面会した。翌日には韓加、韓豪首脳会談に臨んだ」

     

    韓国次期政権は、対日関係で文政権との違いを強く打ち出したいところだ。米韓関係の緊密化には、日韓関係改善がポイントになっている。米国は、日米韓三ヶ国の連携強化がインド太平洋戦略の重要な結節点になると見ているからだ。

     

    『ブルームバーグ』(4月24日付)は、「文政権下で冷え切った日韓関係、尹大統領就任で高まる改善期待」と題する記事を掲載した。

     

    ここ数年悪化の一途をたどっていた日韓関係に転機が訪れそうだ。韓国の尹錫悦次期大統領は日本に歩み寄る姿勢を見せている。

     

    (3)「韓国の代表団が24日から5日間の日程で日本を訪問する。5月10日に大統領に就任予定の尹氏は、文在寅政権下で悪化した日韓関係の修復に意欲を示している。尹氏はすでに米国に代表団を派遣しており、中国にも就任前に送る予定だ。共に米国の同盟国である日韓の関係改善は、バイデン政権にとっても歓迎すべき展開となる公算が大きい。米国は、中国と北朝鮮が突きつける安全保障上の脅威に対抗し、中国の干渉を受けることなく半導体など主要製品のサプライチェーンを確保するために日韓に協力を求めている」

     

    経済が、安全保障と重要な絡みを持つ現在、日韓は半導体などの主要製品の供給面で大きな役割を担っている。米国は、日韓関係の改善を強く期待しているが、従来のように日本へ圧力をかけることを避けている。日韓関係悪化の理由が、韓国側にあることを熟知しているからだ。韓国の姿勢が改まるのをじっと待っていたのである。

     

    (4)「保守系最大野党「国民の力」の尹氏は外交でタカ派姿勢を取る意向を示しており、これは岸田文雄政権が取り組む安全保障上の優先課題とも一部合致するだろう。地域での脅威が高まる中、ロシアのウクライナ侵攻は日韓両国に米国への依存を再認識させており、新政権の誕生は日韓関係正常化への機会をもたらす可能性がある。明知大学校のシン・ユル教授(政治学)は、韓国の安全保障には米国が不可欠であり、日本との関係修復も必要だと尹氏は認識していると指摘。「問題は歴史認識と安全保障のどちらを優先するかだ。選挙戦での公約と当選後の行動を踏まえると、尹氏は後者を優先する可能性が高い」と述べた」

     

    韓国の安全保障には、米国のほかに日本の協力が不可欠である。韓国次期政権は、こういう認識に立っている。文政権は、米韓関係を大事にするが、日本は「主敵」という信じ難い姿勢であった。その意味で、韓国次期政権は対日関係のスタンスが大きく変わる。

     


    (5)「もっとも、親日的と受け止めたられた過去2人の保守系大統領は国民から批判され、支持率の低下や政策の停滞を招いており、関係改善が円滑に進むかどうかは見通しにくい。歴代大統領の中でも支持率が低く、議会の過半数を革新系が占める中で就任する尹氏にはいかなる失敗も許されない」

     

    韓国の最新世論調査では、日本への認識が変わってきた。親日ではないが、日本の存在を必要とするという変化である。この流れが、次期政権の登場によってどこまで深まるかだ。

     



     

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