勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 韓国経済ニュース時評

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    韓日議員連盟の有力議員の間で、文在寅大統領による「反日ワンマンショー」に対して危機感が出てきた。文氏は、「86世代」の思惑に突き動かされて「反日」へ大きく舵を切っている。北朝鮮の「チュチェ思想」に賛同する「86世代」は、反日をテコにして韓国全体を南北統一へ向かわせようという思惑に取り憑かれているのだろう。

     

    この「86世代」の思惑は、左傾思想の間では支持されても、広く韓国全体の支持を得られるものではない。韓日議員連盟の有力議員が、現在の文大統領の進める反日政策に危機感を持ち始めたことは確かだ。

     

    『朝鮮日報』(3月11日付け)は、「道徳主義では韓日関係解決できず、元駐日韓国大使が与野党議員に提言」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の金大中(キム・デジュン)政権時代に駐日大使を務めた崔相龍(チェ・サンヨン)高麗大名誉教授は11日、国会議員会館で開かれた討論会で、悪化の一途をたどっている日本との関係について、「道徳主義では問題解決はできない」として、『与野党が党利党略から離れ、現実的な対応策を共に講じなければならない』と促した」

     

    討論会は韓日議員連盟の会長を務める与党「共に民主党」の姜昌一(カン・チャンイル)国会議員と同党の元恵栄(ウォン・ヘヨン)議員が主催。同党の李鍾杰(イ・ジョンゴル)議員や最大野党「自由韓国党」の鄭亮碩(チョン・ヤンソク)議員、野党「民主平和党」の鄭東泳(チョン・ドンヨン)代表ら多数の与野党の重鎮が出席した。

     

    崔相龍(チェ・サンヨン)高麗大名誉教授は、道徳主義では問題解決はできないとして、与野党が党利党略から離れ、現実的な対応策を共に講じなければならない、と発言した。私は、「党利党略」という言葉に注目したい。与党が、次なる国会議員選挙で勝利を得るために、「反日問題」を利用しようとしていることへの警告と読める。これは、文氏が選んだ最悪の手段である。

     



    (2)「崔氏は、『韓日関係は独島から教科書、慰安婦問題までさまざまなものがあったが、単純だった』として、『だが、強制徴用被害者の賠償問題は北とも関連するなど、非常に複雑な問題』と強調。『三権分立によって大法院(最高裁)の判決を尊重するしかないと日本を押し切ろうとしているが、それでは問題は解決できない』との認識を示した」

     

    崔氏が重視している点は、日韓基本条約を根本的に否定する徴用工問題である。韓国大法院(最高裁判所)が、国家間で正式に締結された条約を、53年後に否定できるのかという根本的な認識問題を提示している。それは、韓国国内では有効としても、日本を強制できるものではない。韓国大法院の判決は、韓国国内で解決すべきものなのだ。文大統領は日本へ丸投げして、「日本は謙虚になれ」と道徳主義を振り回す立場にない。崔氏の主張は、こういうものであろう。

     

    (3)「崔氏はまた、1998年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相による首脳会談で署名された韓日共同宣言(日本側名称:日韓共同宣言~21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ)を取り上げ、『11項目の中心内容と43項目の行動計画で構成されているが、これらの項目は20年が過ぎた今も有効だ』として、同宣言から解決策を模索できると強調した」

     

    日韓共同宣言を読み返して見ると、金大中氏の思いが伝わってくる。当時の韓国は経済危機で苦しんでいた時期だ。経済に関する宣言では、次のような既述がある。

     

        二国間での経済政策協議をより強化するとともに、WTO、OECD、APEC等多国間の場での両国の政策協調を一層進めていくと意見が一致した

        日本によるこれまでの金融、投資、技術移転等の多岐にわたる対韓国経済支援を評価する

        小渕は韓国の経済困難の克服に向けた努力を引き続き支持する

        両首脳は、財政投融資を適切に活用した韓国に対する日本輸出入銀行による融資について基本的合意に達したことを歓迎した

     

    韓国が、日韓共同宣言を持出してきたことは、過去の苦しかった時に日本が支援してくれたことを思い起こせ、ということだろう。恩を忘れて、恨みに生きる。韓国人社会の複雑さを示している。


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    昨日3月11日は、東日本大震災から8年を迎えた日である。福島原発事故も重なり、東北地方は大きな被害を受けた。とりわけ、漁業関係者は「核」の風評被害に苦しめられてきた。韓国は、反日と反原発が重なって福島産水産物輸入を8年間も禁止措置にしている。この不法な措置が、WTO(世界貿易機関)から協定違反として二審(最終)判断が下される状況になっている。4月11日、WTOから最終通告される見通しが強まって来た。

     

    ついに、韓国もWTOの最終通告を受入れざるを得ない立場に追い込まれた。

     

    韓国は、市民団体が世論を動かす力をもっている。ただし、科学的な知見に基づくものならばいいのだが、現実は全く異なるヒステリックな集団と化している。例の米国産の狂牛肉問題では、科学的に無害が証明されてもなお輸入に反対する、手の付けられないような騒ぎを引き起こした。福島産水産物でも同じである。放射能によって陸も海もすべて汚染されている、という偽情報を流してきた。文政権が、原発反対を決めたのは、福島のウソ情報にかなり影響された結果だ。

     


    『朝鮮日報』(3月11日付け)は、「WTO敗訴濃厚の韓国、8年ぶりに福島産水産物輸入再開か」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府による福島近辺の水産物輸入禁止措置に関連、世界貿易機関(WTO)が来月11日にこの措置を「WTO協定違反」と最終判断する可能性が高いことが10日、分かった。WTOの紛争審判は二審制で、昨年2月のパネル判定(一審)に続き、今回の上訴機関判定(最終審)で韓国政府が敗訴すれば、年内にも福島近辺の水産物の輸入が8年ぶりに再開される可能性が出てくる。

     

    (1)「ソウルの外交消息筋は、『昨年4月に韓国側が提起した上訴の最終判定日をWTOでは来月11日と定め、このほど韓日政府に通知した。韓国側敗訴の可能性が高い』と語った。敗訴した場合は約3~15カ月の移行(猶予)期間を経て、これまでの輸入制限措置は解除しなければならなくなる」

     

    韓国は、すでに一審で敗訴している。二審でも科学的データを提出できず、敗訴が決定的である。なにか、「反日」騒ぎと一緒の趣である。感情論で騒いでおり、的確な反証材料がないのだ。文大統領風にいえば、「国民感情が受入れない」という情緒的なものだ。

     

    韓国政府は、2011年3月の福島原発事故直後、同地域産水産物の輸入を規制し、13年9月には福島近隣8県の水産物輸入を全面禁止する特別措置を実施した。日本は155月に「このうち水産物28種の輸入禁止などはWTO協定違反」だとして提訴、昨年2月の一審でWTOは日本に軍配を上げた。「韓国の包括的禁輸措置は必要以上に貿易制限的だ」というのが理由だった。

     


    (2)「国際外交・通商の専門家らは、二審でも韓国勝訴の可能性を低く見ている。日本産水産物の危険性についてWTOが要求するレベルの『科学的根拠』を提示できなかったからだ。韓国政府消息筋も『政府の(禁輸)措置が国際基準に比べて強力なのは事実だ』と話す」

     

    韓国は、福島産海産物に対する輸入禁止根拠を提出できなかった。それでも、輸入禁止してきた。完全な感情論である。韓国の日韓併合に対する一方的な非難とよく似ているのだ。すべて感情論にもとづく非難である。日本が日韓併合時代に、朝鮮のためどれだけ尽くしたか。それはすべて忘れ、支配されたという一点だけで日本を批判している。

     

    こうなると、日本も反論したくなる。あの「両班」(ヤンバン)という専制時代の遺物を一掃して、近代的な市民社会への基礎作りのレールを引いたのは日本である。この事実に反論できるはずがない。独立後の「漢江の奇跡」という25年にわたる高度経済成長の基礎は、日本がつくったのだ。その点では、台湾において日本が果たした役割と全く変らない。台湾は、この事実について率直に受入れている。韓国は、逆の行動をとり日本を足蹴にしている。こうなると、韓国に問題があるはず。人間としての心を持たない結果と言えよう。


    ポールオブビューティー
       

    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

    北批判を日本にすり替え

    資産差し押えに日本対抗

    半導体輸出は急激落込み

    日本へ依存する産業ロボ

     

    韓国の文大統領は、3月1日の「3・1節100周年」の演説で日本への協調を呼びかけました。一方で、日本への歴史戦争を仕掛けたと見られています。それは、日本統治下の1919年の民族独立運動(3・1節)100周年に当たり、「親日残滓一掃」を高らかに宣言したからです。政府機関、メディア、学校、市民団体などが総動員されています。

     

    例えば、学校の校歌の作詞・作曲者に「親日派」が関わっていれば、それだけで内容と無関係に改正せよと迫る強引さです。地名に親日派の名字がついていれば改名させる。韓国全土において、「日本」との関わりを示すものすべてが憎悪の対象にされています。

     

    この裏には、韓国の1人当たりの国民所得が昨年、3万ドルになったという「自信」があります。韓国は、「人口5000万人以上・1人当たり所得3万ドル以上」という、「50,30クラブ」で米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリアに続いて7カ国目になったのです。韓国が、長いこと渇望してきたものでした。これで「日本と同格」と自信をひけらかしています。

     



    北批判を日本にすり替え

    文在寅氏は、「3・1節」の大演説において、朝鮮戦争を仕掛けた北朝鮮への国民的怒りを、日本へすり替える巧妙なワナを仕掛けました。文大統領の演説では、日帝(日本帝国主義)が独立運動家に投げつけた言葉の「パルゲンイ(アカ=共産主義者)」を、一日も早く清算しなければならない「代表的な親日の残滓」と規定したのです。

     

    実は、北朝鮮が韓国を突然侵略した朝鮮戦争(1950~53年)終結後、韓国では厳しい軍事政権による統制が行なわれ、疑わしい者を「パルゲンイ」呼ばわりしたのです。韓国警察は、戦前の日本警察の流れを引き継いだので、思想犯を「パルゲンイ(アカ)」と呼んだことは想像に難くありません。その後、韓国国民は広く警察当局の「パルゲンイ=アカ」を恐れたのでしょう。

     

    文氏は、「パルゲンイ」が日帝の使った言葉で、北朝鮮と無縁であることを偽装したのです。日帝を悪者にして北朝鮮の侵略戦争を糊塗しようという巧妙な動きなのです。文政権は、朝鮮戦争による莫大な被害について完全沈黙し、日韓併合だけを糾弾しています。日韓併合では、日本の財政支出でインフラ投資を行い、近代教育制度と学校や大学を建設しました。朝鮮の近代化に寄与したのです。朝鮮戦争は、韓国国民の生命と財産を破壊しただけで、一銭のプラスもありません。

     

    その朝鮮戦争を仕掛けた北朝鮮の蛮行を隠すために、日本をことさら悪者者に仕立てています。本来、「パルゲンイ=アカ」に該当する北朝鮮を、日本にすり替えようという戦術は成功するはずがありません。韓国の良識派が見破っているからです。

     

    文氏は、徹底的に日本を「残虐国家」と規定しています。文氏が大統領に就任以来、過去に結ばれた日韓協定はすべてご破算になりました。戦時中の徴用工問題は、日韓基本条約で解決済みです。文氏は昨年8月、これをひっくり返す判決を大法院(最高裁判所)から出させる誘導演説をしているのです。大統領がそういう演説をすれば、それを斟酌するのは韓国司法です。政治に影響を受けるのが韓国司法の特色です。

     


    資産差し押え日本が対抗

    韓国の強制徴用被害者が3月7日、三菱重工業の資産に対する差し押さえ申請しました。これをきっかけに日韓関係は、重大な危機を迎えました。

     

    韓国政府は、文大統領の直接指示によって、この問題に介入しない方針を決めています。日本政府が、強硬手段に訴えればそのままにして、国内を反日に向けさせる。これによって、来年の国会議員選挙で与党有利にさせる狙いと見られます。韓国経済が失速状態になり、政権批判の声を反日で鎮める戦略でしょう。文氏の頭には、日韓関係改善意識は絶無です。

     

    菅義偉官房長官は8日の記者会見で、「そうしたこと(注:差し押え申請)が進んでいることは極めて深刻な状況だ」と発言しました。しかし、韓国政府が何らの対策もとらなければ、日本政府は、「自国民の安全や資産を保護する責務がある」という視点から行動に出ざるを得ません。

     

    日本政府は9日、韓国人元徴用工訴訟の原告側が差し押さえ済みの日本企業の資産を売却した場合、企業に実害が生じたと見なし、対抗措置を発動する方針を固めたようです。(つづく)

     

     


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    3月10日は、朴槿惠氏・前大統領の弾劾裁判の判決が出た日である。朴氏は、弾劾要求が却下されると信じていたようである。それだけ、自分自身の潔白を信じていたのであろう。熱烈な支持者は、9日に相次いで「釈放要求」のデモや署名集めを行なったという。

     

    朴氏は、国政壟断が問題として大きく取り上げられた。友人を大統領府に招き、重要事項を相談していたという信じがたい話が表面化した。大統領府という密室性がもたらした事例であろう。文政権の「86世代」も国政壟断に近い動きをしている。この点は、最後に取り上げる。

     

    国政壟断と言えば、現在の文政権でも行なわれている。支持基盤の労組と市民団体の異常な密着である。最低賃金の大幅引上げ問題は、文政権と労働組合の「密約」と見るべきだ。2年間の最低賃金の引き上げ率が、約30%はあり得ない高率である。しかも、失業率の急上昇など弊害が明らかになっても手直しもしないことは、普通の政権ではあり得ない。次期大統領が保守系になれば、このカラクリを絶対に究明すべきである。

     

    市民団体もいかがわしい動きをしている。原発反対運動を行なうために、原発事故のデタラメ情報を拡散している。それは、犯罪レベルであり、文大統領が真に受けているから滑稽ですらある。市民団体は脱原発を行なわせて、太陽光発電などで補助金を得るなど、メリットを得ている疑いが強い。韓国では、平坦地が少ないという地形の関係で、太陽光発電は不向きとされている。わざわざ、森林を伐採して太陽光発電を行い、山崩れをおこすなど、「反環境問題」を起こしているのだ。

     

    私は、文政権に大きな疑問を持っている。「100年政権」を目指すという、さらに邪悪な動きを見せている。保守派に政権を渡さない目的で、保守=親日というイメージづくりを始めているからだ。文氏が大統領に就任後、日韓関係をすべて破棄したのは、「100年政権」と深く結びついた謀略に見える。

     


    『中央日報』(3月10日付け)は、「弾劾から2年、ソウルで朴槿恵前大統領の釈放求める集会相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    朴槿恵(パク・クネ)前大統領弾劾2年を翌日に控えた9日、ソウル各地でいわゆる「太極旗集会」が開かれた。「朴槿恵大統領無罪釈放1千万国民運動本部」は、この日午後1時、ソウル駅で朴槿恵被告の釈放を要求する集会を開いた。集会参加者は太極旗や「弾劾無効」と書かれた青い風船、朴被告のイニシャルを示すハングルが書かれた赤い風船などを持って参加した。集会場面をユーチューブで生中継する人たちも目に付いた。

    「この日集会に出た大韓愛国党の趙源震(チョ・ウォンジン)代表は、「2年間闘争してきた大韓愛国党と愛国国民だけが文在寅(ムン・ジェイン)を引き下ろし新しい自由民主主義大韓民国を作ることができる。それが弾劾無効を叫んできたわれわれの希望であり望み」と話した。また「(文在寅政権が)政権を取ってから人事惨事、外交惨事、安保惨事、経済惨事、大韓民国を1年9カ月で完全に惨事の国にした」と主張した」



    韓国政治の悲劇は、左右対立が激しく「敵」意識で向かい合っていることだ。文政権が、好き勝手なことをやれるのは、大統領制の持つ独裁的権力行使が可能になっていることも大きく影響している。朴槿惠氏が、大統領任の最後に憲法改正案を出したが、真面目に議論される雰囲気でなかった。大統領の権限を外交と防衛に限定し、他はすべて議員内閣制の内閣に任せるという内容である。現行制度では、強大な大統領府と無力な内閣に分かれた二重構造になっている。

     

    この制度上の歪みを利用して、「86世代」という政治にも政策にも通じていない不思議な集団が、秘書官として乗り込み権力を笠に着て徘徊している。反日政策は、この「86世代」という学生運動家上がりの過激集団が操っている。これは、朴大統領が陥った国政壟断に匹敵する事件である、帝政ロシアの怪僧ラスプーチンは、はからずも現代の「86世代」に該当する。

     

     

     

     


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     韓国は、8人の長官(大臣)の交代人事を発表した。先の米朝会談決裂を事前に把握できなかった外交・安保のトップは、予想外にも留任となった。韓国メディアからは強い批判が浴びせられている。いずれも、実績より文大統領からの「受け」が良かった結果と見られている。

     

    韓国の外交・安保トップの能力不足問題は、日本の河野外務大臣が、米朝首脳会談直前、「進展は難しい」という情報を得ていたことを日本の国会で答弁して明らかになったことも影響している。

     

    「河野外相が8日、2回目の米朝首脳会談に関し、米国側から事前に進展は難しいという言葉を聞いていたと伝えた。NHKなどによると、河野外相はこの日の衆議院外務委員会で「(米朝首脳が)合意に至らなかったことは残念だが、事前の実務協議の段階で『なかなか進展は難しい』ということを日米で共有していた」と明らかにした。『中央日報』(3月9日付け)が伝えたもの。

     

    米朝首脳会談について、日米は情報を共有していた。だが、韓国は蚊帳の外にいたわけである。韓国は、日本以上に情報収集に動かなければならない立場であるにもかかわらず、こういう結果になった理由は何か、だ。米韓関係が冷え切っている点が第一に想像できる。米韓が共同して北朝鮮に当らなければならない局面で、韓国は南北融和に大きくカジを切ってしまい、協調関係を乱している。

     

    文大統領は、米朝首脳会談の失敗を深刻に受け止めれば、外交・安保のトップを変える人事を行なうはずだが続投させた。真意が訝られているのだ。

     


    『中央日報』(3月9日付け)は、「
    理解しがたい韓国政府の外交安保ライン人事」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「昨日の内閣改造で最も残念なのは、問題が多い外交・安保ラインに手を加えずほとんど留任させた点だ。2017年5月の文在寅(ムン・ジェイン)政権発足と同時に起用された康京和(カン・ギョンファ)外交部長官と鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は1年10カ月間の在任期間中、情報力と判断力が不足して非核化や対日関係などで少なからず外交的失敗をしたという評価を受けている。特にベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談を控え、2人は会談当日まで米国などパートナーとの情報共有が十分でなく判断を誤ったと伝えられた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は会談の結果を楽観し、文大統領が米朝首脳の署名式をテレビで見守るイベントまで準備していたという。これは2人に相当な責任がある」
     
    康京和外交部長官は、もともと外交官出身でなく、国連の通訳官であった。英語はネイティブ並みで見事である。だが、「英語の専門家」であっても外交は素人に過ぎない。常に、批判が絶えず、内閣人事のたびに更迭の噂が出る人物だ。米国要人の懐に飛び込む、情報をかき集める能力には不足があるのだろう。

     


    (2)「ワシントンの雰囲気は尋常でない。米上院の対北朝鮮政策を主導する外交委員会のガードナー東アジア・太平洋小委員長は先日、「今は北朝鮮が非核化するまで最大限の圧力を追求する時」とし『これは、平壌(ピョンヤン)の行動に変化がない中でも南北協力を熱心に追求しようとするわが友人の韓国に送るメッセージ』と述べた。北朝鮮がミサイル基地復旧の動きを見せる中で経済協力のアドバルーンをあげている韓国政府に警告したのだ」

     

    韓国政府の、南北交流事業への熱意はきわめて強い。これをテコに国内景気立て直しという「一石二鳥」を狙っている。この政治的な思惑先行が、米韓関係悪化の主因である。米国の韓国への感情は、怒りに変っている。

     

    (3)「与党はハノイ会談の決裂後、『文大統領が米朝間で仲裁者の役割をすべきだ』と声を高めてきた。しかし米国との疎通で問題点を表した外交部長官・安保室長は留任させ、制裁でなく経済協力を主張する人物を統一部長官に起用すれば、仲裁どころか平壌の誤った判断とワシントンの疑心をさらに招いて事態がこじれてしまう。韓国政府はワシントンと国際社会の一致した対北朝鮮圧力基調を直視し、対北朝鮮政策の基調を現実的に修正する必要がある」

     

    文大統領自身が、北朝鮮の核放棄の判断を間違えている。金正恩氏の発言を鵜呑みにしており、北に核放棄させることがいかに難しいか、その認識がゼロなのだ。こういう大統領の下に付く外交・安保ラインだから、この程度の「軽量人事」でお茶を濁しているのであろう。要するに、似たもの同士なのだ。

     


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