ドル=円相場は150円で推移(2日午後18時30分)している。これからどう動くか。12月のドル相場は、過去10年で8回も安値になっているという。「トランプ・トレード」でドル買いは盛り上がったが、次第に熱気も冷めつつある。
『ブルームバーグ』(12月2日付)は、「ドルにとって危険な12月、トランプ氏投稿や金利決定で乱高下も」と題する記事を掲載した。
ドル強気派は、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利によって勢い付いているが、12月は歴史的にドルにとって不利な月だ。
(1)「11月5日の選挙以来、ドルは約2%上昇しているが、季節的にここから先は不利な状況となる可能性が高い。過去10年のうち8回、ドルは12月に下落している。その多くはポートフォリオのリバランスフロー(注:投資ポートフォリオの資産配分を元の目標に戻す)や、いわゆる「サンタラリー」(注:米国で年末の5営業日から新年の第2営業日にかけ株価が上昇しやすい現象)のようなリスク志向でドルを売る動きが要因だった」
例年、12月はドル売りの季節である。リバランスフローや「サンタラリー」が背景にあると指摘する。
(2)「今年は、例年よりも大幅かつ急激な変動が起こる可能性が高い。トランプ次期米大統領のソーシャルメディアへの投稿が、市場とトレーダーを動揺させるリスクがあるほか、主要9中央銀行の政策決定や大量の重要経済データ発表が予定されているためだ。ネガティブなサプライズの匂いが漂うだけで、究極の避難通貨への殺到が起こり「ドル売り」というシナリオがなくなる可能性もある。「しっかりつかまっていた方がいい」と言うみずほ銀行の経済・戦略責任者、ビシュヌ・バラサン氏(シンガポール在勤)は、12月は「通常はリスク志向でドルを売るという動きになるが、トランプ氏が政権を握るとなると、どうなるか分からない」と話した」
今年の12月は例年の季節変動に加えて、トランプ氏の「不規則発言」が加わっている。これが、ドル相場へ与える影響も大きい。
(3)「ニューヨークから東京まで、世界の投資家が今後4年間の外国為替市場のトレンドを予測しようとする中で、米大統領選挙以降、為替のボラティリティーは急上昇している。議論の中心は、トランプ大統領の下でのドルの行方だ。米国でインフレが加速し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが複雑になることが予想される」
今後4年間、外国為替市場はトランプ氏の政策が与える影響を基に、トレンド予測を展開している。ドル高かドル安かである。
(4)「最近の市場の動きは、ドル取引の難しさを浮き彫りにした。ブルームバーグのドル指数は9月まで3カ月連続で下落した後、上昇に転じた。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス・グループ、シティグループは、トランプ氏が計画する関税が米国の物価上昇を招くととともに、他の国・地域経済に打撃を与えることで、ドルが今後も強くなると予想している。チャールズ・シュワブの債券戦略責任者、キャシー・ジョーンズ氏は「結論から言えば、何かが変わるまでは、ドルにとって最も抵抗の少ない道は上昇だ」とした上で、「2025年のドルの鍵となるのは関税政策だろう」と述べた」
トランプ氏の計画する関税が、米国の物価上昇を招くととともに、他の国・地域経済に打撃を与えることで、ドルが今後も強くなると予想スルグープがある。
(5)「モルガン・スタンレーは、投資家の焦点が貿易リスクからFRBの利下げへと移るにつれ、ドルの強さは年末までにピークに達し、25年にかけて弱まっていくとみている。ニューバーガー・バーマンのシニアポートフォリオマネジャー、ウーゴ・ランチオーニ氏(ミラノ在勤)も同様の見方だ。「当社はドルに対してわずかながらポジティブなポジションを保有しているが、ドル高が進んでいるためポジションを縮小している」と述べ、「ドルは底固めの時期に入る可能性がある。実際、市場はかなりロング(信用買い)な状態だ」と語った。商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、資産運用会社はドルに対して16年以来の強気ポジションを組んでおり、利益確定によってドルが下落する可能性がある」
モルガン・スタンレーは、ドルの強さは年末までにピークに達し、25年にかけて弱まっていくとみている。また、資産運用会社はドルに対して16年以来の強気ポジションを組んでおり、利益確定によってドルが下落する可能性がある、としている。
ドル相場は、これまで以上に大きく変動する可能性が高いという。今後、半年間の予想変動率は、過去18カ月で最も高い水準で推移している。これは、ドル相場が波乱含みであることを示している。要注意である。