勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    テイカカズラ
       

    先のペロシ米下院議長の訪台は、中国の事前予告通りペロシ氏の搭乗機への妨害工作があったことが判明した。ただ、何らの事態も発生せずにペロシ氏は台湾へ到着した裏に、米軍機による中国機追跡を電波妨害工作で防いでいたのである。

     

    『朝鮮日報』(8月17日付)は、「米軍の電磁波妨害を受けた中国の戦闘機『ペロシ議長搭乗機の追跡に失敗』」と題する記事を掲載した。

     

    中国軍が最新の駆逐艦と戦闘機を投入し、今月2日に台湾へ向かったナンシー・ペロシ米国連邦議会下院議長の乗る飛行機を追跡しようとしたが、米軍の妨害で失敗したという。香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)が最近報じた。

     


    (1)「SCMP紙は、中国軍に近い匿名の関係者の話を引用し、「中国は殲16D(J16D)電子戦機や055型駆逐艦などを投入して、ペロシ議長を乗せた米空軍所属のボーイングC40を追跡したが、米空母機動部隊から出撃した軍用機の電子的妨害で中国側の電子戦装備がきちんと作動しなかった」と伝えた。J16戦闘機に電子戦装備を追加したJ16Dは、艦載型のJ15Dと共に中国軍の電子戦の最先鋒兵器に挙げられる。055型駆逐艦は2019年に1番艦が就役した最新型の駆逐艦で、現在は「南昌」「拉薩」「大連」の3隻を運用している。中国の軍艦の中では最先端のレーダーを搭載している」

     

    中国軍は、最新鋭の電子機器を使ってペロシ搭乗機を追跡したが、結果は電子戦装備がきちんと作動せず失敗した。米中近代戦を象徴するような話だ。中国が他国の技術を盗用して、装備だけは「金ピカ」になっても、世界最先端を行く米軍を阻むことの困難さを示している。

     

    世上では、中国軍の戦闘機や艦船の数だけ取り上げて、米軍のそれと比較して議論している。米国の戦略家エドワーク・ルトワック氏は、こういう単純な比較を嗤っている。戦争で威力を発揮するのは、戦略と同盟国の有無の2点を上げる。中国は、これらの点で米国に及ばないことを自ら証明したようなものだ。

     


    (2)「中国のある軍事専門家は、「055型駆逐艦に搭載されたレーダーの探知範囲は500キロ以上といわれるが、実際はこれに到底届かなかっただろう」とし、「探知範囲が広く、比較的新型の055型駆逐艦にあまり慣れていない乗組員のことを考慮すると、ペロシ議長の乗った飛行機の位置を特定できなかったのは驚くべきことではない」と語った。先に中国政府は、ペロシ議長が台湾を訪問したら「黙ってはいないだろう」と軍事的対応を公言し、米国は南シナ海にいた空母「ロナルド・レーガン」機動部隊を台湾南東部のフィリピン海に展開させて万一の事態に備えた」

     

    中国機は、ペロシ搭乗機を追跡して強制着陸させる目的であったのだろう。米軍が、こういう事態を招けば著しい「権威失墜」になる。これを回避するには、中国機への電波妨害工作しかない。技術面でも米軍がはるか上を行っていることが分る。

     


    (3)「今月2日から3日にかけて行われたペロシ議長の台湾訪問と、その後1週間以上も続いた中国の台湾包囲演習の過程で、米中は偵察、電子戦などの分野で「見えない戦争」を行ったものとみられる。中国のシンクタンク「南海戦略態勢感知計画」は、米軍が今月5日だけでも少なくとも7機の偵察機と早期警戒機を台湾近辺へ送り込んだと主張した。韓国を飛び立ったU2高高度偵察機も中国軍の訓練監視に動員されたという」

     

    中国軍は、電子戦で弱点を抱えていることが判明した。これは、近代戦において致命的である。電子分野では、優秀な日本技術が米軍に貢献しているとされている。日米の合作で、中国軍の横暴を防がねばならない。

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    先のペロシ米下院議長の訪台を巡って、中国では訪台阻止を目指した習近平氏の「恫喝発言」まで飛び出した。ペロシ氏は、これを無視し予定通り訪台を実現させた。韓国では、中国の主張に肩を持つコラムが登場している。「中国ベッタリ」である。

     

    台湾問題は、中国の視点で論じるのでなく、自由世界における普遍的な価値維持という歴史的な視点が必要である。香港を見れば分る通り、言論の自由は奪われ政治の選択は不可能になった。これは、「明日の台湾」でもある。こういう現実を見れば、台湾の民主主義を守るのは、自由を享受している側が国境を越えて支援すべき義務と言えるだろう。

     


    『中央日報』(8月16日付)は、「ペロシ訪台で失ったもの」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・ソンフン北京特派員である。

     

    米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪れて12日後、米国の上下院議員5人が再び台湾を訪問した。“支援射撃”だったのかもしれないが、反響は大きくなかった。エドワード・マーキー議員は民主党所属の上院外交委員会東アジア太平洋委員長だ。「今回の訪問が台湾海峡の安定と平和を増進するだろう」という彼の言葉は虚しかった。少なくとも現在の危機はペロシ議長の訪台が招いたものだからだ。

     

    (1)「今回の事態で米国は中国との名分争いで押された側面がある。中国政府は1978年の「中米関係外交樹立に関する声明」に基づき、「米国は台湾とは文化、商業、その他非公式的関係だけ維持することにした」という点を繰り返し強調した。米国権力序列3位のペロシ議長の訪台は国家次元の公式訪問であり、両国間の外交的合意違反という部分に傍点をつけたのだ」

     

    米国は、1979年に国内法として「台湾関係法」を制定している。これによれば、米国は中国の意向を忖度することなく、台湾との関係を継続できることになっている。その内容は、次のようなものだ。

     


    米合衆国が中国と外交関係を樹立するのは、台湾の未来が平和的に解決することを期待することを基礎としている。

    1)台湾に関して、米合衆国の国内法へ影響を与えずこれまで通りとする。

    )1979年以前の台湾と米合衆国との間のすべての条約、外交上の協定を維持する。

    3)台湾を諸外国の国家または政府と同様に扱う。ただし、米国における台湾外交官への外交特権は、認められない場合がある。

    4)米国在台湾協会に対して免税措置を与える。

    防衛関係

    5)平和構築関係維持の為に台湾に、あくまで台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う。

    6)米合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない。

    その他

    7)米議会は台湾関係法について、その施行および監督を行う義務がある。

     

    「台湾関係法」によれば、米議会議員が台湾を訪問する上で、何らの障害もない。この事実を、ぜひ知って欲しい。また、6)は米国の台湾防衛義務を間接的に示唆している。

     


    (2)「逆に米国は中国の主張に反論する根拠が不足した。米ホワイトハウスは三権分立に基づき、訪問するかどうかに対する判断はペロシ議長にあると避けた。ペロシ議長も台湾到着直後、「習近平主席が人権と法治を無視した」と直撃したが、合意無視という中国側の主張には反論できなかった。これは結果的に中国が台湾の主要航路と港を塞ぐ初の「封鎖訓練」に口実を提供した」

     

    ペロシ氏は、台湾関係法によって訪中できるのだ。このパラグラフは、完全に中国寄りである。

     

    (3)「威力誇示の絶頂は、中国が台湾上空を越える弾道ミサイル発射したことだった。韓国領空を北朝鮮のミサイルが越えてきたとしたらどうだったかと想像するのは難しくない。それでも台湾国防部は「大気圏の外に飛んできて領空危険がないと判断、防空警報を発令しなかった」という納得しがたい声明を出した。発射軌跡を探知した米軍も沈黙を守った。台湾海峡境界線は常時侵犯モードだ。米議員団訪問で、中国戦闘機10機がまた台湾海峡中間線を越えた。人民開放軍報は中国ステルス戦闘機J-20が台湾海峡危機線に接近不可能だった地域まで飛行していると公開した。この際境界線を曖昧にしようという勢いだ」

     

    米国が、抑制した行動を取ったのは先に行なって米中首脳電話会談で、習氏が「戦争する意思はない」と示唆した結果だ。だが、中国軍の動きを米軍は子細に傍受して分析している。米軍にとっては、またとない中国軍を観察する機会をえたのだ。早速、米国では「図上演習」が行なわれ、中国軍による兵站戦略の弱点を見抜いている。

     


    (4)「22年ぶりに出した3回目の台湾白書で中国は露骨に本音を表わした。「平和統一と一国二制度」を前面に出したが、具体的表現は「平和的手段による祖国統一が優先的選択」だった。次善は武力統一だ。一国二制度の境界は曖昧だ。以前の白書では本土が軍を台湾に駐留しないと約束し、1993年白書には台湾の「軍備維持」にまで言及したが今回はすべて消えた。台湾統一は習主席が宣言した最大の政治的課題だ。名分を作ったペロシ議長に中国はかえって感謝しているかもしれない。米国も再反撃に立ち向かう雰囲気だ。台湾海峡の対決構図はさらに鋭くなった」

    下線部は、完全に見誤った見解である。習氏が、国家主席3期目や4期目を目指すのは、台湾侵攻を目標にしているからだ。この前提に立てば、今回のペロシ訪台に対する中国軍の軍事演習は、またとない「事前詳細情報」を得る機会になった。その意味で成功だ。


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    FBI(米連邦捜査局)は8月8日、フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」から11の機密文書を押収。その中には一部の政府施設のみでアクセスできる最高機密とされる書類も含まれていたという。これらの書類が、マールアラーゴに保管されたのはトランプ氏の退任以前か、または退任以降かは明らかではない。また、こうした記録がマールアラーゴで見つかった背景や現地に持ち込まれた動機など、不明な点は多い。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月15日付)は、「トランプ氏の機密文書持ち出し、訴追されるか」と題する記事を掲載した。

     

    ドナルド・トランプ前米大統領が政府の記録文書に関する法律に違反した疑いで訴追される可能性が出てきたが、これまであまり使われてこなかった法律が鍵となるかもしれない。訴追となれば前代未聞の法廷闘争となり、有罪なら大統領選再出馬の道が絶たれかねない。

     


    (1)「米連邦捜査局(FBI)は8日、フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」を捜索した。同氏の機密文書の扱いに対する捜査の一環だったと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は伝えた。本人は自宅が捜索されたことについて「必要もないし適切でもない」と断じた。国立公文書館は今年になって、マールアラーゴから15箱分の文書を回収した。文書の移送は1月に取り決められたが、トランプ氏側との協議は2021年に始まっていたという

     

    下線部は、この問題が2021年から始まっており、すでに15箱分が回収されている。それにも関わらず、なぜ「捜査令状」が出たのか。トランプ氏側が、移送に反対したのであろう。

     

    (2)「大統領の任期終了後、文書は自動的に国立公文書館の法的管理へと移される。政府文書の不適切な扱いは、複数の刑法の対象となる。元検事らによると、トランプ氏が文書を削除したり破棄したりすることに関連した犯罪で訴追された場合、政府記録の不適切な取り扱いに関連した少なくとも一つ、もしかすると二つの法律に基づいて罰せられる可能性が最も高い。そうした法律の一つは、政府職員が機密文書を持ち去り許可されていない場所に保管することを禁止している。違反して有罪判決を受けた場合は、罰金と最長5年の禁錮刑を受ける可能性がある」

     

    トランプ氏に罪名が着せられるとすれば、二つあるという。その一つは、政府職員が機密文書を持ち去り許可されていない場所に保管することを禁止している。有罪判決を受けた場合は、罰金と最長5年の禁錮刑を受ける可能性があるという。

     


    3)「もう一つの法律では、裁判所に提出された文書や官公庁の文書を隠したり移動・破棄したりすることを禁じている。この法律に違反した場合は、罰金と最長3年の禁錮刑を受ける恐れがある。違反者は「職を剥奪され、米国でいかなる公職に就く資格も失う」。そう記されてはいるものの、トランプ氏がこの2番目の法律で訴追され、有罪となった場合、必ずしも公職の資格を失うわけではない。こう指摘するのは、ウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ・アンド・ロサーティーの弁護士、ジェシカ・ロナガン氏だ。憲法がすでに大統領職に就くことを禁じる制限を示しており、議会がこれらの規定を補足できるかは不明なためだ」

     

    もう一つは、裁判所に提出された文書や官公庁の文書を隠したり移動・破棄したりすることを禁じている。違反者は、「職を剥奪され、米国でいかなる公職に就く資格も失う」。トランプ氏が、この罪名になれば、次期大統領選への出馬が難しくなる。

     

    ロイターによれば、トランプ氏には他国のためにスパイ活動をしたり、米国の防衛関連情報を不適切に扱うことを禁じた「スパイ活動法違反」の疑いが持たれている、と指摘している。

     


    (3)「同じ頃、ヒラリー・クリントン氏は、国務長官を務めていた時に私用メールのサーバーを使って政府文書を不適切に扱ったかどうかを巡り、厳しい調査に直面していた。FBIは2016年、不起訴処分とすべきであると勧告したが、当時のジェームズ・コミー長官はクリントン氏と同僚が機密文書の扱いにおいて「極めて不注意」だった証拠があると述べた。コミー氏は、機密文書の扱いに関して法律に違反した可能性を示す証拠があるとした上で、分別のある検事ならそのようなケースは起訴しないと考えると語った」

     

    ヒラリー・クリントン氏は大統領選当時、機密文書扱いになる公用メールを、私用メールを使ったとして問題にされた。この一件が報道され、大統領選の行方を変えたとも言われている。要するに、公人は機密文書の扱いで慎重を期せということだ。この視点で言えば、トランプ氏の行動は、決して軽いものではない。

     

    (4)「同氏は、「これらの事実に基づき刑事責任を問うようなケースは見当たらない」とし、こう説明した。「起訴されたケースは全て、明らかに機密情報を意図して不適切に扱っていたり、大量の文書を暴露して意図的な不正とみられる行為を支援したり、米国への背信を示していたり、司法を妨害する取り組みだったりといったことがいくつか重なっていた」

     

    このパラグラフでは、「大した問題でない」というイメ-ジが強く出されている。だが、次のパラグラフでは、これを打ち消すような内容だ。トランプ氏支持者の反応に、気配りした記事に見える。

     


    (6)「
    FBIは、8日にトランプ氏の邸宅を捜索する上で令状が必要だった。令状を得るためには、政府は犯罪が行われたと考えられる十分な理由を示す必要があり、証拠はまだ敷地内にあると考えられる理由を示す必要もあった。法律事務所ブライアン・ケーブ・レイトン・ペイズナーのパートナーで、ブルックリン連邦検事局の元検事、アンドレイ・スペクター氏はそう指摘する。前出のロナガン氏は、捜査当局も裁判所も公的な人物の捜索が現実の世界に与える影響について認識していると指摘。「その人物が著名なほど、捜索令状については慎重になるといわれている」と述べた」

     

    下線部では、裁判所が著名人の捜索について慎重になると指摘している。それにも関わらず、捜査令状を出したのは、重大な違反行為が予想されていたことを覗わせる。

     

    『ロイター』(14日付)は、「米連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省(DHS)は、先週行ったトランプ前大統領邸宅の家宅捜索を受けて、各法執行機関に対する脅迫が増加していると警告した」と報じている。熱烈なトランプ支持者が反発しているのだ。

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    季節は真夏だが、中国経済は底冷え状態が続いている。7月の主要経済指標は軒並み予想を大きく下回り、経済の減速が鮮明になった。7月の小売売上高も前年比2.7%増と、伸び率は6月の3.1%を下回り、市場予想の5.0%には全く届かなかった。従来の小売売上高は毎月、8%前後の伸びを維持してきた。それが3%前後と3分の1に落ちているのである。惨憺たる状態である。

     

    中国半導体では、最大の需要先がスマホ向けである。消費者が、買換えを控えており「古い機種で十分」と満足している状態だ。半導体需要は落ちて当然である。パニックに陥っているという。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月15日付)は、「中国SMIC、半導体王者の楽しい時間終わり」と題する記事を掲載した。

     

    中国の半導体最大手は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による追い風を受け、数年間好調だった。現在、同社は2つの大きな問題への対応を迫られている。その問題とは、しぼむ需要と地政学的リスクの高まりだ。

     

    (1)「中国の半導体受託製造大手である中芯国際集成電路製造(SMIC)は12日、4~6月期の売上高の伸びが鈍化したことを明らかにし、今後の半導体生産が低迷する見通しを示した。SMICによると、4~6月期の売上高は前四半期比3.3%増。7~9月期はさらに0~2%に減速するとみられている。同社はここ2~3年の半導体不足で大きな恩恵を受けてきた。4~6月期の売上高は、2019年同期比で2倍以上だ」

     

    7~9月期の売上高は、4~6月期よりも減速が確実である。メモリー半導体需要が落ちているからだ。

     


    (2)「SMICの趙海軍共同最高経営責任者(CEO)は12日、業界は在庫調整の局面に入っており、スマートフォンメーカーなど一部の顧客ではパニックが生じていると述べた。業界のサプライチェーン(供給網)の一部では売り上げにブレーキがかかっているところもある。在庫が高水準となっているため、顧客が突然注文をキャンセルしているからだ。SMICは、こうした景気循環的な調整が少なくとも2023年上半期まで続くとみている。朗報は、自動車産業などからの需要が家庭用電子機器向けの受注減を補い、SMICの製造工場はフル稼働に近い状態で操業している。売上総利益も安定を維持している」

     

    スマホ業界は、厳しい状況に置かれている。受注が突然にキャンセルになるなど、これまでの下降局面で見せた現象が起こっている。少なくも、下降局面は23年上期までは続く。だが、中国経済の先行きを見れば、楽観的過ぎる印象だ。小売売上高が、前年比3%程度ではスマホの買替え需要も期待できまい。

     


    (3)「同社に差し迫っているもう一つのリスクは、中国と米国との関係悪化だ。ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことを受け、緊張はかつてないほど高まっている。トランプ前政権は2020年、SMICを規制対象企業リストに追加し、最先端半導体を作る技術の輸出を制限した。米半導体製造装置メーカーのラムリサーチとKLAは先頃行った決算発表会見で、米政府が中国企業への販売規制をさらに強化する準備を進めていることを明らかにした。国産半導体産業の確立を目指す中国にとって、SMICは重要なチェスの駒だ。だが、悪化する米中関係と迫り来る半導体不況によって、同社の業務はこれまでよりも難しくなるだろう」

     

    中国半導体は、成長のカギを米国が握っている。半導体は、戦略産業であることを考えれば、米国による輸出規制緩和など想像外である。米国は、中国を追詰める秘策を練っているからだ。

     

    (4)「SMICの売上高の多くは、より成熟した技術レベルの半導体によるものだという点を踏まえれば、差し当たっての影響は対応可能かもしれない。規制がこれまで以上に強化されたとしても安全なはずだからだ。だが、新たな輸出制限によって、SMICが商業的な観点で技術を前進させるのは困難になる恐れがある。より成熟した半導体の需要はパンデミックによって押し上げられたが、サプライチェーンの目詰まりが緩和されれば、供給は不足から過剰に転じる可能性もある。その一方で、米中関係の冷え込みは一段と現実的になっている。SMICの4~6月期の売上高の約70%は中国本土と香港からのもので、3年前(57%)から大きく拡大している。

     

    SMICも技術の成熟化は進むであろう。だが、より精密な半導体生産には、米国の技術なくして不可能である。中国は一時、「米国から学ぶものはない」と嘯いていたが、調子に乗りすぎたのだ。これから、その代償を払わされるのである。

     

     

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    FBI(米連邦捜査局)が、米国前大統領トランプ氏の私邸を強制捜査したことで、大きな注目を集めている。トランプ氏についてはこれまで、21年1月の暴徒による米議会襲撃事件や所得税脱税容疑などが話題にされてきた。

     

    当初、今回のトランプ氏の私邸への強制捜査は、前記の話題に関係していると見られ、賛否両論が飛び交ってきた。共和党は、今秋の中間選挙で結束してバイデン政権と対決するだろうという観測までされてきたのだ。FBIの捜索目的が明らかにされ、米国の安全保障リスク排除という国家レベルの問題へ発展している。

     


    『ロイター』(8月15日付)は、「トランプ氏邸宅で機密文書押収、鮮明になった安全保障リスク」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ前大統領のフロリダ州の邸宅兼高級リゾート「マールアラーゴ」を米連邦捜査局(FBI)が家宅捜査し、政府の機密文書が押収された。そのことについて安全保障の専門家からは、トランプ氏とマールアラーゴにまつわる安全保障上のリスクが、改めて鮮明になったとの声が出ている。トランプ氏には、他国のためにスパイ活動をしたり、米国の防衛関連情報を不適切に扱うことを禁じたスパイ活動法違反の疑いが持たれている」

     

    下線のように、トランプ氏には「スパイ活動法違反」容疑が持たれているという。この事件は、今後どのように進展するか分らないが、トランプ氏が次期大統領選に立候補する場合、大きな痛手になろう。「国家の安全を危うくする人物」というレッテルが貼られる危険性があるからだ。

     


    (2)「トランプ氏は大統領時代、機密情報を無造作に共有することがあった。大統領就任早々、執務室で過激派組織・イスラム国掃討作戦計画に関する高度な機密情報をロシア外相に自発的に渡したとされる。今回の家宅捜査で、米国の機密情報が流出する重大なリスクが、かつて「冬のホワイトハウス」と呼ばれ、富裕層のパーティーが開かれる開放的なリゾート施設にあったことが明らかになった。」。

     

    トランプ氏の生涯には、公的な生活がなかった。「機密情報」は、腹の中に収めておけばすんだであろう。国家は、すべて記録として残される。その違いの認識が甘かったのであろう。

     

    (3)「元司法省職員のメアリー・マッコード氏は、司法省の捜索決定が国家安全保障上の懸念を明らかにしたと指摘する。(司法省は)機密資料を保護された場所に戻すことが、明らかに非常に重大なことだと考えた。マールアラーゴ、そこにいる海外からの訪問者や外国政府・機関と関係があるとみられる人々のことを考えると、不適切な保管場所に高度な機密文書を保持することが国家安全保障上の大きな脅威を生む」と述べた。トランプ氏は、自身のソーシャルメディアで、記録は「全て機密指定解除」されており「安全な保管場所」に置かれていたと主張している。しかし、マッコード氏は「彼が退任前に、一つ一つ意識的に機密指定を解除する決定を下したというもっともな議論」は見られなかったと述べるとともに、退任後は機密指定を解除する権限がないと指摘した」

     

    トランプ氏は退任までの数週間、2020年大統領選での敗北を覆すことに気を取られていた。また、21年1月6日に発生した議会議事堂事件を巡り、自らの弾劾に賛成した共和党議員への報復について弁護士と協議しつつ最後の数日間をすごしていたという。さらにアドバイザーや元側近への恩赦に関する話し合いも行われていた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月15日付)は、こう伝えている。公文書の分類が、正しく行なわれるような雰囲気でなかったようだ。

     


    (4)「FBIの押収物は複数セットの文書、数十箱の量となった。米国の防衛に関する情報や「フランス大統領」に関する物もあり「高度な機密情報を慎重に扱うには悪夢のような環境。まさに悪夢だ」と元情報機関部員は語った。司法省は、押収した文書や写真がどこにどのように保管されていたのか、明らかにしていない」

     

    仮に、トランプ氏が立件されれば、文書の保管状態が明らかになる。驚くような状態にあったとすれば、米国の安全保障について疑問符がつく。

     

    (5)「国家安全保障分野が専門の弁護士、マーク・ザイド氏は「われわれが目にしたのは、トランプ氏があまりにもセキュリティーに無頓着で米政府以外の人間が観察・撮影できる場所で、戦争の可能性に関する機密会議を開いていたことだ」と述べた。「トランプ氏の発言を記録する装置を持つのは、誰でも簡単に発言内容を記録できた」という。安倍氏訪問時の大統領報道官、ショーン・スパイサー氏はその後、記者団に、トランプ氏がマールアラーゴの安全な部屋で北朝鮮のミサイル発射について説明を受けたと述べた」。

     

    トランプ氏は、日頃からセキュリティーに無頓着であったと指摘されている。この感覚が、機密情報の保管について注意を払わなかった背景かも知れない。

     

    (6)「2019年、マルウエアが入ったUSBを携えた中国人女性がセキュリティーチェックを通過して規制敷地内に入り、逮捕された。当時の大統領首席補佐官、ジョン・ケリー氏は、マールアラーゴでトランプ氏に接触できる人物を制限する取り組みを開始したが、トランプ氏が協力を拒否したため頓挫した(側近)という」

     

    不審な中国人女性が、トランプ氏の私邸へ侵入したのは、中国当局がこういう事実を知っていた上での行動であったかも知れない。この事件は、女性の「頭がおかしい」という妙な理由であやふやにされた。米国は、外交問題になることを避けたのだろう。

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