勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    トランプ米政権は、キューバの体制転換を目指している。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』が報じた。年末までに共産党政権を追放する取引をまとめられるよう、政権内部の協力者を探しているという。米政府は、ベネズエラのマドゥロ大統領を失脚させたことで勢いづいている。トランプ政権は、キューバ経済が崩壊の瀬戸際にあると分析している。この機会に、共産党政権を追放して昨年12月に掲げた、「西半球戦略」を完成させる意向とされている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月22日付)は、「米、年内にキューバの体制転換目指す」と題する記事を掲載した。

     

    複数の政府高官は、共産主義政権を打倒するための具体的な計画はまだまとまっていないとした。だがマドゥロ氏の拘束や、その後の同氏の側近らによる譲歩が、キューバへの対応の青写真になると予想。さらに同国に対する警告になっているとみている。キューバでは約70年にわたり、共産党政権が支配を続けている。

     

    (1)「トランプ氏は、11日のソーシャルメディアへの投稿で、「彼らには取引することを強く勧める。手遅れになる前に」と述べ、キューバには「石油も資金も」渡らないとしていた。米政府当局者によれば、当局はマイアミと米首都ワシントンでキューバ亡命者や市民団体と協議。現政権内部で情勢を理解し、米国との取引を望む人物を特定することに注力している」

     

    トランプ氏はすでに、キューバに対して米国との取引に応じるように通告している。米政府当局者は、キューバ現政権打倒後の人事まで検討しているという。

     

    (2)「米国は公にはキューバに対し軍事力を行使すると脅してはいない。だが複数のトランプ政権当局者は、マドゥロ氏拘束につながった大胆な急襲作戦に触れ、キューバ政府はこれを暗黙の脅威と受け止めるべきだとしている。事情に詳しい複数の関係者によれば、米情報機関はキューバで基本的な物資や医薬品が慢性的に不足しており、頻繁な停電に悩まされているなど、経済は厳しい状況にあるとみている」

     

    キューバは、基本的な物資や医薬品が慢性的に不足しており、頻繁な停電に悩まされている。経済は厳しい状況にある。

     

    (3)「キューバの命運は長い間、ベネズエラとの関係に大きく影響されてきた。1999年にチャベス氏がベネズエラで政権を握った直後から始まったベネズエラ産石油の供給は、キューバ経済の柱となっていた。米政府は、キューバの電力を支えてきた石油を遮断することで同国の体制を弱体化させる意向だと米高官たちは述べている。複数のエコノミストによると、キューバは数週間以内に石油が枯渇し、経済が完全に停止する可能性がある。トランプ政権はまた、キューバにとって最も重要な外貨収入の源である海外医療派遣プログラムにも目を向けており、ビザ(査証)禁止措置などで同プログラムを促進したとされるキューバ政府および外国当局者を標的にしている」

     

    キューバは、ベネズエラの石油供給に依存している。米政府は、キューバの電力を支えてきた石油を遮断して、同国の体制を弱体化させる意向とされる。キューバは、数週間以内に石油が枯渇し、経済が完全に停止する可能性がある。

     

    (4)「当局者らによると、キューバの共産主義体制を打倒することは西半球を再構築する国家安全保障戦略の決定的な試金石になるとみている。国務省は声明で、キューバが「民主的政府によって適切に運営され、敵対勢力の軍事・情報機関の受け入れを拒否する」ことが、米国の国家安全保障上の利益になるとした。一方でトランプ政権の一部当局者は、同氏がこれまでの体制転換のあり方を否定していると言及。そのためベネズエラへの対応と同様に、ホワイトハウスは交渉による解決を模索していると示しつつ、圧力を強化していく可能性があると政府高官は述べた」

     

    米国は、キューバの共産主義体制を打倒することで、西半球を再構築する国家安全保障戦略の決定的な勝利としている。

     

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    トランプ米大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランド領有に反対する欧州諸国に追加関税を課すとしていた方針を撤回するとともに、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明し、同地の将来について北大西洋条約機構(NATO)と大枠の合意に達したと明らかにした。外電では、グリーンランドに米軍基地を増設することで合意した模様だ。将来、中ロのグリーンランド進出を阻止するというトランプ氏の願望が叶うようだ。

     

    『ロイター』(1月22日付)は、「トランプ氏、グリーンランド『大枠合意』 武力行使否定・関税撤回」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランド領有に反対する欧州諸国に追加関税を課すとしていた方針を撤回するとともに、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明し、同地の将来について北大西洋条約機構(NATO)と大枠の合意に達したと明らかにした。

     

    (1)「トランプ氏はスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に出席。NATO同盟を揺るがし、新たな世界貿易戦争につながりかねないと懸念された過去数週間の強硬な姿勢を後退させた。トランプ氏はNATOが北極圏におけるロシアと中国の野望を阻止しながら、「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムと重要鉱物へのアクセスに関する自身の要求を満たす新たな協定を結ぶことができると述べた。ダボスでNATOのルッテ事務総長と会談後、記者団に対し、「誰もが満足する合意だ。これは長期的な合意、究極の長期合意だ。特に安全保障と鉱物資源に関して、誰もが非常に有利な立場になる」と語った」

     

    「大山鳴動して鼠一匹」とは、今回のような騒ぎを表現するに相応しい諺だ。同じ仲間同士の揉め事は、話せば分るのだろう。互いに頭を冷やした結果だ。NATOが、米国の要求を受入れ、形式的には「名」を取り、米国が「実」を取る妥協の成果であろう。

     

    (2)「NATOの報道官は、北極圏のNATO加盟7カ国が集団的な安全保障の確保に向けて協力すると明らかにした。「グリーンランドにロシアと中国が経済的にも軍事的にも足場を築くことがないよう、デンマーク、グリーンランド、米国の間で交渉が進められる」と語った。トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に、グリーンランドの将来についてNATOと大枠の合意に達したと投稿。「この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税は発動しない」と述べた。ただ、合意内容の詳細は明らかにしていない」

     

    トランプ外交には、「TACO」なる別名が付けられている。TACOとは、「Trump Always Chickens Out」(トランプはいつも尻込みして退く)の4語の頭文字をとったもの。初めにハッタリを掛けて相手を驚かせ、その後に後退するというパターンである。それでも、しっかりと成果を握ることで、譲歩し側もなんとなく「得をした気持ちになる」不思議な交渉術である。

     

    (3)「デンマークは、この問題はソーシャルメディア上ではなく、非公式の外交ルートを通じて処理されるべきだと指摘した。デンマークのラスムセン外相は公共放送DRに対し、「われわれにとって極めて重要なのは、(デンマーク)王国の一体性と主権、そしてグリーンランドの人々の自決権を尊重した上で、この問題を終わらせることだ」と述べた。ラスムセン氏は、ルッテ氏と協議したと述べたが、合意内容の詳細については明らかにしなかった」

     

    デンマークもグリーンランドも、譲歩した割にはすべてを失わなかったという安堵感が窺える。

     

    (4)「トランプ氏は、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィットコフ特使にさらなる協議に参加するよう指示したと述べた。トランプ氏はダボス会議での演説で、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明した。武力行使の可能性を金融市場が嫌気していたことを認め、姿勢を後退させた。「私が武力を行使すると考えられていたようだが、武力を行使する必要はない」とし、「武力は使いたくないし、使わない」と強調した。トランプ氏はこれまで度々、強硬な姿勢を打ち出した後に態度を軟化させてきた」

     

    NATO同盟国同士が、武力を使うなど想像もできない事態だ。最初からトランプ氏の「脅し」であった。それは分っていながら、「ことによると」という危惧の念が晴れたことは良かった。内輪揉めしている時間はない。中ロが、何を仕掛けてくるか分らないだけに、付け入る余地を与えてはならないのだろう。

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    米国は中国の脆弱性見抜く

    中国没落は歴史的な大事件

    チャイナ武器に固有の欠陥

    人民解放軍は国内用の軍隊

     

    26年の暦が動き始めた1月2日~3日にかけ、米軍特殊部隊がベネズエラ大統領を拘束する前代未聞の事件が持ち上がった。ベネズエラ大統領は、数時間前まで中国特使と会見していた。この席で、両国は永遠のパートナーシップを謳い上げる友好関係を誓い合っていたのだ。中国は、ベネズエラとの関係強化を通じ、中南米における強力な経済基盤構築の足がかりにする意図であった。

     

    米国はなぜ、中国と特殊な関係にあるベネズエラへ特殊部隊を派遣したのか。直接的な理由は、米国への麻薬持ち込みを遮断することだったが、同時に西半球まで触手を伸してきた中国への警告であった。米国は昨年12月、2025 年の国家安全保障戦略を発表した。次のような「宣言」を発していたのだ。西半球(南北アメリカ)では、米国の国益最優先を貫くこと。そのためには、中ロの影響力を排除して、米国覇権を再構築する。こういう、冷戦後最大級になる米国の戦略転換を発表していたのである。

     

    中国は、こうした米国の世界覇権再構築構想を甘くみていた。事前に、米軍のベネズエラ急襲情報を把握できなかっただけでなく、ベネズエラと永遠のパートナーシップを誓い合うミスまで冒してしまった。米国が、すでに西半球における米国益を中ロ勢力から守る姿勢を宣言していたのだ。それだけに、中国が米国の軍事行動を予測できなかったのは、国際情報戦での立後れをも示したと言えよう。

     

    米国の世界覇権再構築構想はまた、インド太平洋おける地域覇権も維持する姿勢をハッキリさせている。台湾は、中国の設定する「第一列島線」の要と位置づけているからだ。中国国内では、米国が西半球の国益重視であれば、インド太平洋では米国益を中国へ「譲渡」するという淡い期待を寄せる者もいる。世界覇権の主要な舞台はインド太平洋にある。米国が、この肝心の地域を「手放す」ことなどあり得ない妄想である。そうでなければ、ネズエラを急襲して中国のメンツへ泥を塗る「荒技」を繰り出すはずもないのだ。

     

    米国は中国の脆弱性見抜く

    米国が、世界覇権再構築構想を樹立したのは、中国の経済力がもはや回復不能の重態にあることを強く認識した結果である。すでに、IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)が、中国の潜在成長率はこれから「釣瓶落とし」の状況になると発表している。その要因は、「労働力減少・資本蓄積減少・生産性低下」にあることを明確にしている。同時に、生産性にからむ技術力の停滞が、軍事力の低迷に直結する視点から、米国は中国の軍事力が自国に遠く及ばないと自信を深めた結果と想像できるのだ。

     

    米軍が、世界最強の軍隊として中国軍を抑制した最新実例は、中国製のベネズエラ防空網破壊である。米軍は、事前準備によって中国製防空網を無力化して制空権を100%確保した。米軍に一人の犠牲者も出なかったのは、米軍の「電子戦」が中国製の防空網の盲点を突いたからだ。電子戦は、一国の科学力の総合を意味している。中国が、いくら戦艦をつくっても「電子戦」という現代の「神経戦」では、米国にとうてい及ばないことを立証した。それが、ベネズエラ急襲の結果である。

     

    以上、中国の潜在成長率見通しと中国軍の装備について概略をみてきたが、これから具体的に、先ず中国の長期潜在成長率見通しをみたい。OECDは次のように予測する。

     

    年  代      潜 在 成 長 率

    2020年代         3~4%台にとどまる

    2030年代     2%台から1%台へ低下

    2040年前後    1%割れ(0%台)

    2050〜60年代  0%前後

    2070年代     マイナス成長へ突入

     

    上記のデータをみると、20年代はまだ現状よりも弱含んでいる感じに止まる。だが、30年代に入ると、2%台が1%台へ低下する。これは、現在の日本経済並みの成長率である。40年代へ入ると1%割れになる。50~60年代が0%前後。70年代にはついにマイナス成長へ落込むのだ。歴史上でも巨大経済が、マイナス成長を落込む姿はみたことがないほど希有な事態が到来する。これは、中国が権威主義政治体制を継続することの不可避的事態というべき現象である。「中華再興」どころか、「中華滅亡」である。

     

    習近平氏は、「中国式社会主義」が中国の未来を約束するとしている。だが、結果は真逆になる。理由は、市場経済が原則の西側諸国の経済運営において「禁じ手」とされる政策が、中国では政府主導で率先して行われる結果だ。中国共産党は、指導力維持という政治目的を完遂すべく民間経済活動へ極度の干渉をしている。これが、経済活動を萎縮させるのだ。

     

    中国共産党が信奉するマルクス経済学では、経済の「下部構造」が、政治の「上部構造」へ影響すると位置づけている。中国共産党はこの下部構造→上部構造という位置関係を強引に逆転させている。つまり、政治が経済を支配しているのである。習氏は、経済がもっとも発展成長しやすい状況にマッチした政治を容認しないのだ。こうして、習氏の強力な権威主義が経済を窒息させている。この被害が、国民へ幅広くしわ寄せされるのだ。(つづく)

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    米国のグリーンランド買収事案が、話題を呼んでいる。冷静に考えると、グリーンランドは、米国領土へ編入さたほうが、世界の地政学的判断においてプラスになるだろう。ただ、国民感情論が絡んで問題が複雑化している。

     

    地政学的に見れば、グリーンランドが米国の勢力圏に完全に組み込まれることは、米国・NATO・世界秩序にとって「戦略的プラス」と評価される。これが、中ロの「枢軸」勢力を押しとどめられるからだ。米国の戦略家は、グリーンランドを「北極の航空・ミサイル防衛の要」と位置づけているという。この枢要な地域が、中ロの手に渡ることになれば西側諸国に安全保障に重大な障害となろう。米国の軍事力は、西側諸国の「公共財」的な性格を持っている。欧州は、こういう地政学的な視点と国民感情の接点をどうするか。そういう建設的な思考が必要であろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月18日付)は、「グリーンランド巡り欧州苦悶、米と対決か妥協か 貿易で報復論も浮上」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドを取得するまで欧州8カ国からの輸入品に追加関税をかける方針を表明したことを受け、欧州諸国は一斉に反発した。対抗措置も検討する。米国との関係悪化はウクライナ支援などに響きかねず、難しい判断を迫られる

     

    (1)「欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、17日の声明で「関税は欧米の関係を損ない、危険な悪循環を作り出すリスクがある。欧州は団結・協調し、主権の維持に取り組む」と強調した。スウェーデンのクリステション首相は、同日の声明で「私たちは脅迫されるわけにはいかない。同盟国のために立ち上がる」と主張。EUに加えて非加盟国の英国、ノルウェーとも共同の対応を協議していると明かした」

     

    トランプ氏が、グリーンランドを取得するまで欧州8カ国に関税を掛ける、と言いだしたことがEUへの感情的ヒートアップさせた大きな要因である。ただ、トランプ氏は「喧嘩を売って」仲良くなるという流儀だから、関税引上げは「挨拶代わり」とも言える。

     

    (2)「EU加盟国は18日、大使級の緊急会合を開き、対応策を話し合う。19日には北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長がブリュッセルでデンマーク国防相、グリーンランド外相と会合を開く。米国は、中国とロシアを抑止する安全保障とレアアース(希土類)を含む鉱物資源の確保を狙い、グリーンランド取得にこだわる。今回は米国の方針に賛同しない第三国にも圧力の対象を広げ、米国に同調するよう促した格好で一段ギアを上げた。就任後から「ディール(取引)」の武器に使ってきた関税を再び持ち出し、世界最大の米国市場を武器に経済面で揺さぶる」

     

    NATOは、トランプ式流儀を熟知しているはず。売られた喧嘩をすぐに買うのでなく、トランプ氏の真意を聞くのも必要だ。「長屋の旦那」的な面も多いだけに、落とし所を探すことだ。

     

    (3)「欧州側は、トランプ氏の強硬路線に困惑を隠さない。欧州の有志国が今回、グリーンランドに派兵したのは「北極圏の警戒・監視強化」という名目だ。そもそもグリーンランドにはすでに米軍基地がある。トランプ氏の理屈に沿い、中ロの脅威に備えるためにグリーンランドに兵を送ったことを理由に、NATOの同盟国から関税をかけられる。欧州各国はトランプ氏がグリーンランドを欲するのは安保目的ではないのではないかと疑う」

     

    話合いもせずに、相手の腹の内を探っていても時間の無駄である。膝つき合わせて話せば妥協点もあるはずだ。

     

    (4)「米国の次の一手として取り沙汰されるのが軍事力の活用だ。武力による併合も辞さないと脅すものの、交渉カードとして欧州側にとっての急所はNATOになる。トランプ氏の1期目にはNATO離脱論も浮上した。米議会は、2024会計年度(23年10月〜24年9月)の国防権限法で、大統領がNATO離脱を決める前に議会と協議するよう義務付けた。ただ、米軍の最高司令官の大統領が「事実上の離脱」を模索し、ロシアという脅威にさらされる欧州から譲歩を引き出そうとするのはあり得る」

     

    EUやNATOは、米国がグリーンランドを買収したら、中ロの拡張主義をどこまで押しとどめられるか、地政学的な分析と話合いが必要だ。感情論でぶつかり合っても、中ロを喜ばせるだけだろう。

     

    (5)「第1次政権当時の高官らの間では、離脱論が再浮上する可能性がささやかれてきた。トランプ氏は14日、自身のSNSに「米国の膨大な軍事力なしでNATOは効果的な戦力や抑止力は持ちえない」と警告した。米国のNATO離脱は、欧州にとって最も避けたいシナリオだ。将来のロシアからの侵攻に備えたNATOの欧州防衛態勢は、米軍に大きく依存する。NATO欧州連合軍最高司令官も伝統的に米国人が就く。ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援も、米国に頼る状況が続く。米国がウクライナ支援から手を引けば、欧州におけるロシアの脅威はさらに増す」

     

    NATOが、ロシアという潜在的な強敵に対抗するには、米軍の後押しがなければ不可能だ。感情論だけで押し通せないところに悩みがある。となれば、解決案は自ずと出てくるはずだ。

     

    (6)「それでも欧州側は、グリーンランドを巡り、米国に妥協するのは難しい。米国への売却や譲渡を決められるのはデンマークやグリーンランドであり、双方とも「売り物ではない」と明確に否定する。EUやNATOなどの枠組みで調整できるものではない。デンマークのフレデリクセン首相は、米国がNATOの同盟国から領土を強引に奪い取る事態になれば、事実上のNATO崩壊になると警告する。欧州では米国に反発する世論も高まりつつある。グリーンランドとデンマークでは17日、米政権に対する抗議デモが開かれた。欧州の首脳も米国に対し弱腰の姿勢ばかりを見せられない」

     

    ここは、デンマークとグリーンランドの大局観を待つほかない。世界の民主主義を守るにはどうするか。そういう視点の議論が必要であろう。

     

     

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    トランプ米大統領は16日、デンマーク自治領グリーンランドを米政府が取得する計画を支持しない国に追加関税を課す可能性に言及した。目標の実現へ関税引き上げをちらつかせ、経済力を武器に米国の領有に反対する欧州などに翻意を迫る狙いがある。

     

    この戦略は昨年12月、米国が2025 年の国家安全保障戦略を発表したが、西半球(南北アメリカ)では、米国の最優先利益を貫くことを宣言した。そのためには、中ロの影響力を排除して、米国覇権を再構築するというもの。冷戦後最大級の戦略転換を意味している。突飛にみえるグリーンランド買収事案には、西半球からの中ロ勢力の一掃という地政学的意味合いが込められている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月17日付)は、「トランプ氏、グリーンランド取得『反対国に関税上げも』 欧州に圧力」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は、ホワイトハウスでの会合で「(米国による)グリーンランドの提案に従わない国には関税を課すかもしれない。グリーンランドは国家安全保障のために必要だからだ」と述べた。その後、記者団に「北大西洋条約機構(NATO)とグリーンランド問題で協議中だ」と明かした。「我々が手に入れなければ、国家安保に大きな穴が開く」と語り、全米防衛システム「ゴールデンドーム」構想とも連動していると唱えた」

     

    中国は、「近北極国家」を自称し、北極圏への影響力拡大を図っている。ロシアも北極圏における軍事・資源開発を強化中。米国はこれに対抗するため、グリーンランドを含む北極圏の支配権強化を模索していると考えられる。この米国の意図が、単なる領土拡張とみなされている。また、レアアース資源確保という説も流されている。トランプ氏は、全米防衛システム「ゴールデンドーム」構想と連動していると、安全保障政策を強調している。

     

    (2)「トランプ氏は、領有へ軍事行動も選択肢だと主張するほか、グリーンランド取得の申し出をデンマークが拒めば、関税を課すと示唆したこともあった。米国の方針に賛同しない第三国にも圧力の対象を広げ、米国に同調するよう促した。デンマークのラスムセン外相、グリーンランド自治政府のモッツフェルト外相は14日、米ワシントンのホワイトハウスで米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官と会談した。米国へのグリーンランド売却を拒否する考えを直接伝えた」

     

    デンマーク政府とグリーンランド自治政府は、米国の買収提案を拒否する旨をホワイトハウスへ通告した。これで引き下がるトランプ氏ではない。これから、本格的な攻防戦が繰り広げられるであろう。純粋な意味での安全保障政策となれば、関連国が知恵を出すべき問題であろう。

     

    (3)「デンマーク政府は14日、グリーンランドやその周辺に展開する部隊を増強し、演習も実施すると発表した。NATO加盟国とも調整を進めており、欧州ではデンマーク支援に回る国が目立つ。フランスはデンマークの要請を受けグリーンランドに仏軍を派遣するほか、2月にグリーンランドに領事館を新設する計画だ。スウェーデンも自国軍の将校らを送ると表明した。ドイツやノルウェーの軍関係者も加わる。米CNNテレビが912日に全米で実施した世論調査によると、米国によるグリーンランド領有への賛成は25%だった。トランプ氏が率いる共和党の支持層に限っても賛否が5割で拮抗し、無党派層の8割が反対した」

     

    NATO加盟国が、グリーンランドをめぐる管理で協議するという。グリーンランドの地政学的重要性から言って、当然であろう。円満解決を望みたいが、米国の世界覇権再構築という強烈な意図とNATOの意識をどのように調整するかだ。

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