勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    韓国輸出の2割は、半導体が占めている。世界の半導体市況は今、大きな調整期を迎えており、来年はマイナス4%という予測が出て来た。韓国の半導体輸出には、それだけ衝撃を受けることになる。韓国経済は、急速な金利引上げによる摩擦が増えているだけに、もう一つ厄介な荷物を抱えることになった。 

    『ハンギョレ新聞』(12月1日付)は、「世界の半導体市場、来年4%マイナス成長の見通し サムスン・SKは困惑」と題する記事を掲載した。 

    来年、世界の半導体市場がマイナス成長になるとの見方が随所から出ている。特に韓国企業の主力商品であるメモリー半導体が大きな打撃を受けると予想され、サムスン電子やSKハイニックスの実績にも悪影響が避けられないとみられる。

     

    (1)「世界半導体市場統計(WSTS)は11月29日(現地時間)、来年の世界の半導体市場規模が今年より4.1%減少した5565億ドルにとどまると見通した。昨年は26.2%の高成長をみせたが、今年は4.4%に鈍化し、来年は反対に萎縮するだろうという話だ。地域別では、米国、欧州、日本、アジア太平洋地域など世界各地域のうち、依然として新型コロナ大流行の余波で苦しむ中国が含まれたアジア太平洋地域がマイナス成長(7.5%)し、市場の不振を牽引すると予想された」

     

    「山高ければ谷深し」は、経済の常識になっている。好況の後には不況がくるという循環運動である。「景気循環論」という研究分野が成立している背景である。市場経済では不可避であるが、これを繰り返しながら経済は上昇過程を進むもの。こういうことは、頭では理解しているが、現実問題になると大慌てする。現状が、こういう事態である。

     

    (2)「WSTSは今年8月までは、今年13.9%、来年4.6%の成長を予想していたが、3ヶ月で展望を大幅に下方修正した。同機関はこのような結論を下した理由について「インフレと最終市場需要の減少により成長展望値を下げた」と説明した。これに伴い、2018年の半導体好況の翌年だった2019年以来、4年ぶりに半導体市場の規模が縮小する見込みとなった。米国のIT調査会社であるガートナーは28日、半導体市場が今年4.0%成長した後、来年は3.6%のマイナス成長になると予想した。台湾の国策研究機関である工業技術研究院も、来年の半導体市場が3.6%縮小するものとみている」

     

    来年の半導体市場が、マイナス4%で済むかどうかだ。これまでの「大好況」で設備投資が猛烈に行なわれている。新規設備が稼働すれば、市況はさらに下落するはずだ。ただ、急落すればするほど、減産が進むので回復時期を早めるという効果がある。悲観は楽観への近道である。

     

    (3)「ガートナーはまた、「現在、半導体市場はスマートフォン・パソコンなどで構成された消費者主導の市場と、企業主導の市場の間で両極化している」と説明した。消費者主導の市場は40年ぶりの最悪のインフレと金利上昇といった要因により、可処分所得が減り、人々が旅行・レジャーなどをスマートフォンやパソコンのような技術製品より優先視しているため、停滞が予想される。企業主導の市場は、経済鈍化と地政学的緊張にもかかわらず企業のインフラ強化や事業拡張計画、デジタル化戦略などに支えられ相対的には良好だとガートナーは分析した」 

    企業主導の半導体市場は相対的に良好としているが、IT関連企業は大掛かりな人員整理を進めているほどで楽観できない。非メモリー半導体市況が崩れると、半導体の停滞は長期化することになろう。

     

    (4)「半導体業界の業況不振は、サムスン電子やSKハイニックスといった韓国企業がシェア12位を占めるメモリー半導体に集中するとみられる。WSTSとガートナーは、来年のメモリー半導体市場がそれぞれ17.0%、16.2%のマイナス成長を示すとみた。メモリー半導体はすでに価格が下がっている。台湾の市場調査会社トレンドフォースによると、今年第3四半期(7~9月)のDRAMとNAND型フラッシュの平均価格は前期比でそれぞれ15%、28%下落した」 

    サムスンは、これまで強気経営で乗り切ってきた。今回も簡単に戦線縮小せずに進むと見られる。ただ、台湾のTSMCは抜群の財務内容だけに、この両社の競争が見ものであろう。

     

    (5)「ブルームバーグ通信は先月、「サムスン電子とマイクロンの半導体需要に対する警告が出たことを受け、アナリストらは2008年以降、最も速いスピードで業績展望値を下方修正せざるを得なくなった」とし、「循環的な低迷を超え、(先端技術産業をめぐる)米中間の緊張関係も半導体業界の苦悩を加重している」と伝えた」 

    米中対立で、米国が中国への半導体輸出を規制している。これまでは、中国市場が輸出先の「逃げ場」であったが、これからはそれが消えかかってきた。世界の半導体市況には、こういった中国要因を計算に入れなければならない。つまり、半導体市況回復には時間がかかるということだ。

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    ウクライナ支援ネットワーク

    米国が意外にも「緩衝役」か

    インドへ工業部品発注の苦境

    23年度予算3割強が国防費 

    ロシアのウクライナ侵攻は、すでに9ヶ月を経た。ロシアの描いた戦争計画では、開戦が2月20日で3月6日に終結という2週間の短期戦の予定であった。それが、何と9ヶ月経って「ロシア劣勢」という思いもかけない事態に落込んでいる。 

    この予想外の結果を招いた理由は、2014年にロシアがクリミア半島を奪取して以来、ウクライナ軍がNATO(北大西洋条約機構)の指導を受けて、ロシア軍への対抗方法を身に付けていたことだ。ロシア軍が、上意下達で将官の指揮命令に従い、戦場での将校判断をさせない旧式な戦闘方式であった。NATO軍は、戦場での指揮官の判断を最優先させる戦闘方式でウクライナ軍を再編成した。これが、ロシア軍を徹底的に苦境へ追込み、緒戦でロシア軍が武器・兵員の損耗を大きくさせたのだ。

     

    西側諸国は、ウクライナ軍を支援するために「コマンド・ネットワーク」を結成している。参加国は、米国・英国・フランス・カナダなど20ヶ国以上であり、まとめ役は駐欧州米軍とされる。このネットワークが、次のような業務を分担し支援しているという。

    1)軍事情報の提供

    2)ロシア軍兵器の分析

    3)武器輸送

    4)作戦の立案

    これらの4分野は、一つを欠いても戦争遂行では支障を来たす重要パーツである。 

    戦場で戦うのはウクライナ軍だが、最前線のウクライナ軍将校には前記の軍事情報がダイレクトに届くシステムになっている。こういう実態から言えば、ウクライナ軍の後ろにはNATO軍が控えているので、ロシア軍はとうてい太刀打ちできない相手であることが分かる。「99%敗北」と言っていい事態だ。「残り1%」は、ロシア軍の意思表示だけであろう。

     

    プーチン・ロシア大統領の目論見では、ウクライナ侵攻でNATOを分裂させると踏んでいた。米国もバイデン大統領は、軍事介入しないと言明している。こういう「好条件」であれば、半月でウクライナを「解放」できると見たに違いない。プーチン氏が、最大の見誤りを犯したのは、西側諸国が「民主主義の価値を守る」という信念を甘く見たことである。命に代えても「自由と民主主義を守る」という西欧市民社会の原理に気づかなかったのだ。 

    ウクライナ支援ネットワーク

    ウクライナ軍を支援する「コマンド・ネットワーク」は5月下旬、ロシア軍の兵員損耗が30%に達していることを確認したという。この損耗比率になると、部隊の戦闘機能が失われるので、「コマンド・ネットワーク」は反攻への作戦計画を立て、それに従い着々と奪回作戦を成功させてきた。ロシア軍は、西側諸国の経済制裁で半導体輸入を禁じられたので、武器・弾薬の生産が事実上ストップするという窮地に追込まれている。武器・弾薬が足りずに戦争をするという悲劇が起こっているのだ。 

    元NATO軍司令官(2012~14年)であったベン・ホッジス氏は、韓国紙『ハンギョレ新聞』(11月25日付)とのインタビューで、今後のウクライナ軍の反攻作戦の目標が、クリミア半島奪回であると明言している点に注目すべきだ。ホッジス氏は、2017年まで駐欧州米軍司令官も務めた経歴から見れば、「コマンド・ネットワーク」の判断を知りうる立場である。実は、前記のネットワークも同じ見解というのである。

     

    ここで、問題になるのはプーチン氏がこれまで発してきた言葉である。「ロシア領土が危機にさらされれば核を使用する」というものだ。クリミア半島は、前述の通りロシアに奪取された地域であるが、ロシアは「ロシア領」として宣言している。ウクライナ軍によって奪回された場合、プーチン氏がどう反応するかは気懸りな点であろう。 

    ロシアは、先にヘルソン州の併合を主張し、州の住民は「ロシア人」と明言した。だが、ロシア軍はヘルソン市から撤退後に、一度は「ロシア人」として保護すると約束した民間人を砲撃で殺害しているのだ。要するに、プーチン氏の発言はその場限りであることが明確になってきた。「行き当たりばったり」という浮遊状態になっている。 

    かつて、プーチン氏の発言はぶれず絶対に「Uターン」しないと恐れられていた。大統領就任後の言動が、それを立証しているとして、「核脅迫」はそれなりの影響力を持ったのである。だが、ウクライナ侵攻後の軍事的な劣勢によって、国際社会が見る「プーチン像」は大きく変わってきた。「核発言」が、プーチン氏の国際的な地位を陥没させているのだ。

     

    中国の習国家主席は、先の米中首脳会談や日中首脳会談でも「核使用に反対」であることを明言した。インドのモディ首相も、プーチン氏との会談で反対意思を明確にしている。こうなると、周囲の圧力でプーチン氏は、「核投下」をしないと発言せざるを得ない立場に追込まれている。プーチン氏得意の「脅迫」は著しく効かなくなっている。 

    米国は、陰に陽にロシアを説得している。米ロには、冷戦時代からの名残でホットラインが設置されている。これは、危機管理に欠かせないコミュニケーション・ツールだ。ロシアの誤解による核使用を防ぐには、重要な役割を果たしている。報道によれは、ウクライナ侵攻後一度だけ使われたという。(つづく)

     

     

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    中国共産党には、「無謬論」という独善が存在する。共産党の指導は、常に正しく間違いがないという神がかったご託宣である。習氏は、この独善に乗って中国製のワクチンが世界一と宣伝してきた。実際はその逆であって、「水のようなワクチン」と称され、発展途上国では時間が経つとともに中国製を見向きもしなかった。 

    結局、中国国民が「貧乏くじ」を引く羽目になった。世界で最後のゼロコロナで「ロックダウン」で閉じ込められているからだ。失業を余儀なくされる中国の若者が、「習近平辞めろ」と叫びたくなるのは当然であろう。

     

    米国『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「中国のワクチン・ナショナリズムは失敗」と題する社説を掲載した。 

    新型コロナウイルス感染の封じ込めを狙った中国の「ゼロコロナ」政策の破綻には、共産党が政治的な支配を必要としていることなど多くの要因がある。その支配がもたらした副産物の一つでもっと注目すべきなのは、中国政府のワクチン・ナショナリズムであり、14億人の国民に欧米製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの利用を認めないという習近平国家主席の決定だ。 

    (1)「中国は、共産党のナショナリズムに調達に関する決定を委ね、外国製ワクチンの利用を拒否した。この決定は依然として中国国民を悩ませている。科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)と中国医薬集団(シノファーム)の製品を含む中国製ワクチンは、米独のファイザー・ビオンテック製および米モデルナ製のmRNAワクチンと比べて新型コロナ感染症の予防効果がはるかに低い。シノバック製ワクチンは当初、新型コロナ感染症の発症を予防する有効性が約50%にとどまり、90%を超えるmRNAワクチンより大幅に劣っていた。とりわけ最も脆弱な人々を対象に重症化を防ぐ効果を比較すると、一層不利な状況になる」 

    中国は、自国科学陣が欧米よりも優秀という「デッチアゲ話」を国民に信じ込ませるために、大きなコストを払っている。中華思想(中国は世界一という神話)を国民に植え付けようとしているのだ。

     

    (2)「中国では何千万人もの高齢者がまだワクチンを接種していないが、これは恐らく、国産ワクチンの効果が低いといううわさが広がったからだろう。一部の国はまた、シノバック製を承認されたワクチンとして受け入れることを拒否しているほか、シノバック製を接種した人に対して、mRNAワクチンの追加接種を検討するよう推奨している。中国政府は、国産ワクチンを推奨し、ファイザー製ワクチンの安全性に疑問を投げかけるプロパガンダでこれに対抗している。中国製ワクチンが他国に輸出されていた2021年1月、中国共産党の機関紙である環球時報は、欧米製ワクチンの接種で死者が出ていることを示唆する記事と論説を掲載した」 

    誰が考えて見ても分る通り、満足なノーベル自然科学賞受賞者も出していない中国が、欧米製ワクチンを凌ぐものをつくり出せるはずがない。こういう子どもじみた競争心が、中国国民を奈落の底へ突き落としているのだ。

     

    (3)「香港ではシノバックと欧米製ワクチンの双方が利用可能だったが、いずれのワクチン接種を選択するかは、欧米製ワクチンの方が安全性が低いという中国本土系コミュニティーの間で広められた中傷的なうわさによって影響を受けた。2021年3月、中国はシノバックのワクチン接種を受けた外国人に入国を認める一方、欧米製ワクチンを接種した者の入国は認めないと発表した。習氏の積極的なナショナリズムの中心にあるのは、中国の政治システムの優位性を国民に納得させることだ。中国の指導者たちは、一部の分野で同国が依然として欧米に負けているのを認めたくないため、欧米製ワクチンを受け入れることはできないと考えたのかもしれない 

    下線のように、積極的な中国ナショナリズムの中心にあるのは、中国の共産党政治システムの優位性を国民に納得させるというプロパガンダである。中国国民は、中国共産党のまやかしを見抜いている。それは今、街頭で繰り広げられている若者の不満を聞けば分かることだ。

     

    (4)「彼らはまた、メッセンジャーRNAワクチンの技術を盗むことが可能と考えたのかもしれない。先月の英紙フィナンシャル・タイムズの報道によると、モデルナが中国へのワクチンの売り込みを目指していた際、中国政府は同社に知的財産の引き渡しを要求し、同社から技術を巻き上げようとした。モデルナがこれを拒否したのは賢明な判断だった。多くの人々は、10月の共産党大会が終わり、中国製のmRNAワクチンが導入された後、ゼロコロナ政策が解除されると予想していた」 

    中国共産党は、共産党指導の優秀性を宣伝するために、虎視眈々と他国技術を盗み出そうと狙っているのであろう。ここまで来ると、共産主義の持つ薄ぺらな非倫理的な振る舞いに仰け反るのである。とても、西側の倫理道徳とは相容れないものを感じるほかない。

     

    (5)「ドイツ政府のシュテファン・ヘベストライト首席報道官が11月28日、中国に対し、外国製のmRNAワクチンを受け入れ拒否する姿勢を見直すべきではないかと示唆した。同報道官は「パンデミックが始まって3年を経た今、恐らく欧州とドイツは、mRNAワクチンの接種で非常に良い経験を積んできたはずだと言っていいだろう」と語った。それを受け入れれば、中国共産党幹部らは自らの失敗を認めざるを得なくなる。このため彼らはそれを認めず、世界を、そして特に中国国民を再び危険にさらしている」 

    中国は、mRNAワクチンを受入れれば、自らの失敗を認めざるを得なくなる。それを恐れているに違いない。

    あじさいのたまご
       


    衣の下に鎧が見える

    先端半導体から排除

    戦狼外交止め低姿勢

    中ロ枢軸は破綻運命

     中国は、台湾統一が最大の政治課題としている。これまでは、「一国二制度」で平和統一を提案してきた。だが、その可能性が薄れると見るや、「武力統一」も厭わずと強行姿勢である。 この台湾で11月26日、中国にとって耳寄りのニュースが飛び出した。台湾与党の民進党が、地方選挙で大敗したことだ。蔡総統は、その敗北責任を負って即日、党代表を辞任した。総統職は継続する。 

    野党の国民党は、中国寄りとされる。それだけに、国民党の地方選勝利が中台接近をもたらすかである。台湾では、国政と地方政治を分けている。国政では、中国と距離を置いて民主主義を守るという傾向が強いのだ。現に、自らを「台湾人」として認識し、「中国人」意識が薄い点にそれが現れている。中国は、こういう台湾人の「中国観」を見落とすと失敗するであろう。

     

    衣の下に鎧が見える

    習近平氏が、中国国家主席3期に就任できた最大の理由は「台湾統一」目的である。武力を用いてまで統一するというのは、台湾を足掛かりに太平洋へ軍事的に進出して、米国と対抗する狙いがあるからだ。そうでなければ、台湾と平和的な関係を維持して、貿易関係を強化する方がはるかに経済的なメリットがあるはず。それを投げ捨ててまで、勝つか負けるか分からない戦争に訴えようというのは、米国と軍事覇権を賭けている証拠であろう。 

    習氏は先の米中首脳会談で、米国の覇権に挑戦する積もりはないと発言した。その一方で、台湾問題は「核心中の核心」と発言している。台湾統一には武力を用いると示唆しているのだ。中国が台湾を武力統一し、台湾を軍事基地にした後は、米国と太平洋で決戦を挑む予定が隠されている。これが、既定路線である。 

    米国は、こういう中国の野望に気づかないほど「お人好し」ではない。20~30年先を読んで「米国覇権防衛」に手を打っている国だ。米国は、習氏の「米国覇権に挑戦する積もりはない」との発言を内心、せせら笑って聞いていたことであろう。一層の警戒感を強めたはずだ。

    中国が、選択しうる進路は2つある。

    1)国際社会において、協力的姿勢で経済発展を追求する。

    2)経済規模が大きくなったので、中国中心の世界秩序を形成する。 

    現在の中国は、明らかに2)のコースである。民主化路線を捨てて、共産党へ権力を集中させ、米国へ戦いを挑む誘惑に駆られているのだ。戦前の日本が陥ったコースである。日本の場合、アジアの覇者を目指したが世界秩序を塗りかえようという、とてつもない妄想を抱くことはなかった。日本の方が、はるかに世界を知っていたのだ。 

    中国覇権論では、ロシアという権威主義国家と中ロ枢軸を組み、西側諸国へ対抗する構図を描いていたはずである。そのロシアが、ウクライナへ侵攻して軍備・兵員ともに相当の消耗を余儀なくされている。厳しい経済制裁によって、核を除けば再び軍事大国になれるかどうか疑問符がつくほどの状態になっている。

     

    米・英・カナダは、特殊チームを編成してウクライナ軍支援に全力を挙げている。機密情報もすべてウクライナ軍へ提供しているのだ。前記三ヶ国が、なぜここまで深入りしているか。ロシア軍を勝たせないことが目的である。それは、中ロ枢軸に大きな打撃を与えて、中国の世界覇権狙いを完膚なきまでに打ち崩すことだ。台湾へ侵攻し、さらに米国を軍事的に追い落とす「妄想」を抱かせない。これが目標である。 

    先端半導体から排除

    米国が、中国の覇権狙いを封じるには、最先端半導体の技術・ノウハウ・製造設備を中国へ与えないことである。半導体は戦略物資である。従来は、鉄鋼と石油であった。戦前の日本は、経済制裁で鉄鋼と石油の輸入を禁じられた。現在の中国は、すでに戦前の日本と同じ「敵国」扱いになっている。中国にとって、これがどれだけ不利であるか。計り知れないものがある。 

    中国が、前述の2つのコースのうち、1)「国際社会において、協力的姿勢で経済発展を追求する」という平和コースであれば、今回のようは「半導体封じ」という事態に遭遇する筈もなかった。習近平氏の「終身国家主席になりたい」という個人的野心が、中国にとって自業自得の結果をもたらしているのである。

     



    習氏の個人的野望は、明らかに中国の未来を「潰した」と言える。中国が、かけがえのない先端技術の半導体から締め出される損害は、軍事的発展を阻止されるだけでない。21世紀の技術進歩から除け者にされるので、生産性向上から取り残されることを意味する。AI(人工知能)・量子コンピューターなど無限の範囲に及ぶのだ。 

    米ユーラシア・グループを率いるイアン・ブレーマ氏は、極めて示唆的な発言をしていた。「中国の未来を決める重要な要素の一つは、欧米や日本が中国の次の段階にどう対処するかというさらに難しい問題だ。ウクライナ侵攻で、欧米は今のところ冷戦終結後で最も固く結束している。一方で中国はロシアへの支援を限定的ながらも続けており、西側諸国は中国の外交政策の意図に根深い疑念を抱いている」(『日本経済新聞 電子版』(2022年5月25日付) 

    この予測は半年後に、米国の対中国「半導体封じ」として現れたのである。中国の急所をズバリ突いてきたのだ。中国は今、「自立自強」という精神論を唱えている。人間が宇宙へ行く時代に、やせ我慢の精神論を説いたところで何ほどの意味があるかだ。習氏の責任回避だけが目的であろう。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-11-03

    メルマガ409号 稀代の「法螺吹き」中国の落し穴、ドイツまで包囲網参加「兵糧攻め」

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    メルマガ412号 米国の「ワナに嵌った」習近平、中華思想振りかざしても勝ち目はない

     

     

     

    あじさいのたまご
       


    皮肉なものだ。泣く子も黙る絶対的権力を握る習近平政権が、コロナウイルスに翻弄されている。国家資源をインフラと軍事に注ぎ込み、医療体制を脆弱なままにしてきた咎めである。

     

    中国国家衛生健康委員会の25日の発表によると、国内の新型コロナウイルス新規市中感染者が24日に3万2695人確認された。前日の最多記録を更新した。各都市でコロナ対策の規制が強化されている。北京市では、ほとんど自宅待機を迫られている。有効なワクチンもなく医療設備も不備な状況では、自宅待機しかないのだ。最悪である。

     

    米紙『ウォールストリートジャーナル』(11月25日付)は、「中国『ゼロコロナ』政策の報い」と題する社説を掲載した。

     

    新型コロナウイルスへの中国の対応が世界のモデルになるとみられていた頃を覚えているだろうか。西側諸国の公衆衛生の専門家たちは、感染拡大初期に実施されたロックダウン(都市封鎖)がひどい結果をもたらした後、「ウィズコロナ」政策へと移行した米国の厄介な民主的決定に代わるものとして、中国の「ゼロコロナ」政策を好意的に見ていた。そうした評価ももはやこれまでだ。

     

    (1)「新型コロナの感染が初めて確認されてから間もなく3年となる中、中国では記録的な感染者数が報告されている。1日当たりの新規感染者数は過去最高に達し、2カ月間にわたり封鎖された上海で4月に急増した際の水準を上回っている。中国全土で感染が拡大しており、複数の都市で再びロックダウンが敷かれている。ノムラは、中国の国土の5分の1以上が移動制限の対象になっていると推定している」

     

    中国は、全国民の2割を移動制限せざるを得ない事態だ。これが、GDP2位の国家が行なっている姿である。

     

    (2)「中国共産党はナショナリスト的な理由で、中国国産のワクチンより効果が高い西側諸国産のワクチンの受け入れを拒否している。長期のロックダウンが行われたことは、世界の他の地域の人々のように、ウイルスにさらされて、自然免疫を獲得した人がより少ないことを意味する」

     

    独裁体制自体が、非合理的存在である。その政権は、こともあろうに欧米製ワクチンの導入を拒否している。まことに符合した非合理的行動である。自業自得と言うほかない。

     

    (3)「中国の高齢者は、とりわけ脆弱(ぜいじゃく)だ。同国には、重病が広範囲に拡大した場合に対応できるだけの病院の収容能力や集中治療室(ICU)の病床が不足している。ある推測によると、活動が完全に再開されれば、10万人当たりのICU病床が4床を下回る国において、580万人が集中治療を必要とする状態になる可能性がある。中国の支配者の意図は不明瞭だが、ロックダウンは病気の流行を遅らせるだけで、経済や社会に大きな打撃を与えるという世界的な証拠があるにもかかわらず、同党がゼロコロナ政策へのこだわりを主張し続けるのは、これが理由かもしれない」

     

    中国のICU病床は、10万人当り4床を下回る。日本へ常時、ミサイルを向けている国が、ICU病床不足で国民を自宅に閉じ込めている。何とも、皮肉な話だ。それよりも先ず、ICU病床を増やすことだろう。

     


    (4)「習近平国家主席が抱える他の問題は政治的なものだ。独裁的な政権は、監視、強制措置、ロックダウンなど自分たちが最も得意とすることを常に実行できる。しかし、ゼロコロナ政策の打ち切りに伴って生じる痛みについて国民の支持を得るメカニズムが欠けている。民主主義は、さまざまな主張が存在する騒々しいものだが、事実に基づいて必要だと国民が考える時には、政策を変更し、適応するずっと大きな柔軟性を備えている

     

    中国のゼロコロナと民主主義国のウイズコロナ比較では、政治体制の違いを国民へ見せつけている。14億の中国国民に同情するほかない

     

    (5)「新たな一連のロックダウンによって中国経済は減速し、今年第4四半期と通年の同国の成長率は、当局者らが数字を操作しないとすれば、3%を下回るとみられている。最近、国際舞台での中国の好戦的姿勢が以前ほど目立たなくなっている。その背景には、新型コロナ対策と経済運営面での同国の苦況があるのかもしれない。しかし米国は、こうした状況が続くと思い込んではならない。新型コロナで中国が被った打撃から得られる、より大きな教訓は、ロックダウンが機能しないということであり、公衆衛生やその他すべての面で独裁体制は模範にならないということだ。独裁体制が模範になると信じた米国民は、あまりにも多過ぎた」

     

    最近の中国は突然、戦狼外交を止めて「ニーハオ」と微笑外交に転じている。下線部は、経済面での苦しさを表しているという推測だ。米国が10月、中国へ先端半導体の輸出禁止措置を決めたことから、絶望的な状態へ追込まれている結果であろう。戦前の日本は、米国などから石油とくず鉄の輸入禁止措置を受けてお手上げになった。中国は、まさにこの状態に追い込まれている。調子に乗りすぎたのだ。

     

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