中国は、レアアースなど重要鉱物でダンピング輸出を行い、海外のライバル企業を淘汰してきた。米国が、これに対抗すべく重要鉱物の価格をめざして価格下限制度を構築することになった。これに、日本など50ヶ国超が署名した。価格下限制は、最低価格を設定して重要鉱物の買取り・販売をするもの。生産国と需要国が参加することで、世界市場とは異なる米国中心の一大マーケットが形成される。
中国は、この影響を最も強く受けるので、ダンピング輸出が不可能になるほか、国内の過剰設備が一挙に表面化するという事態となろう。これまでのように「レアアース主権」などと言える状況が、しだいに消えていくことになる。
『ロイター』(2月4日付)は、「米、重要鉱物価格の下限設定制度を構築へ=副大統領」と題する記事を掲載した。
(1)「バンス米副大統領は4日、ワシントンで開催された重要鉱物のサプライチェーン強化に向けた初の閣僚級会合で、米国は重要鉱物価格の下限を設定するシステムの構築を目指すと表明した。さらに、米国が重要鉱物に関する貿易圏の形成を提案しており、多くの国がすでにこの計画に署名していると明らかにした。同会合は米国が主催し、日本など50カ国以上が参加した」
世界の重要鉱物市場は事実上、中国の支配下にある。レアアース(希土類)など戦略物資は、中国の差配のままに動かされるという状況だ。今回の国際的な重要鉱物価格の下限制度を設けることで、西側諸国だけで市場を構成して需給の安定を図ることになった。これは、中国の「恣意的行動」に枠が嵌められるという大きな状況変化が生まれる。
米国は、レアアース・リチウム・ニッケル・グラファイトなどの重要鉱物の国際価格に「最低価格」を設定する制度を作る方針だ。市場価格が暴落しても、一定価格で買い支えるので、生産国が安定して採掘・精製を続けられるようになる。中国の「低価格輸出による市場支配」を抑制する狙いだ。米副大統領は、この制度を軸に「重要鉱物の貿易ブロック」を形成する構想も示した。
なぜ、「最低価格下限」が必要なのか。米国は次の問題意識を持っている。中国が重要鉱物市場を支配することで、価格を意図的に下げ、他国の採算を悪化させるからだ。結果として、中国以外の鉱山・精製企業が撤退させられてきた。
中国経済は今後、どのような影響が及ぶのか。中国の「価格支配力」が弱まることが期待されている。中国は現在、重要鉱物の多くで圧倒的なシェアを持っている。レアアース精製で世界の約9割。グラファイトは、世界の7割以上。太陽光パネル用素材で世界の8割前後のシェアを占める。これは、「低価格で市場を席巻し、他国の産業を撤退させる」という戦略に立っている。
米国が、これから「価格下限」を設定するとどうなるか。中国が仮に価格を下げてきても、米国・同盟国の企業は最低価格制に守られて撤退しない点が重要だ。中国の「価格攻勢」が効かなくなるので、中国の市場支配力が徐々に低下する。つまり、中国の価格戦略が無効化される方向になることだ。こうして、中国の輸出産業である重要鉱物の価格に「利益圧迫」が起きるであろう。
要約すると、次のようになろう。価格下限制度が導入されると、中国は「安売り」で市場を奪えなくなる。つまり、価格競争力が低下するので利益率が悪化する。過剰生産が処理できなくなる結果、中国の鉱物産業は薄利多売による世界シェア維持が不可能になるのだ。
特に影響が大きいのは、レアアース、グラファイト、太陽光パネル素材、電池素材(リチウム・ニッケル)などである。これらは、中国の輸出産業の柱である。利益圧迫は、中国経済全体に波及するであろう。このように、米国の重要鉱物の最低価格制とブロック化は、これまでの中国一強体制を突き崩す可能性が強まる。大転換点に差し掛かった。




