勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

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    中国商務省が3月22日発表したデータによると、1~2月の新規の対内直接投資(FDA)は前年同期比19.9%減の2151億元(約4兆5120億円)であった。ブルームバーグの試算によれば、2月の新規対内直接投資は1020億元(約2兆1400億円)で、前年同月27%減である。2月の落込み幅が大きくなっているのだ。中国経済の停滞と地政学的リスクを忌避した結果である。

     

    こうした事態を打開すべく、習近平国家主席は3月27日に米企業トップと会見する予定である。中国への対内直接投資を呼び掛けるものとみられる。

     

    『中央日報』(3月22日付)は、「『チャイナランに焦る中国』、習近平主席 米企業代表に会う」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席が来週、米グローバル企業の関係者に会う予定だという海外の報道があった。米中間の葛藤、中国経済の沈滞などで外国系資本が中国を離れる「チャイナラン」(チャイナとバンクラン=銀行取付けの合成語)が続く状況で、習近平主席が自ら外資誘致に動き出すという解釈が出ている。

     

    (1)「米『ウォールストリートジャーナル』(WSJ)は21日(現地時間)、ある消息筋を引用し、習主席が27日に保険会社チャブのエバン・グリーンバーグ最高経営責任者(CEO)、米中関係全米委員会(NCUSCR)のスティーブン・オーリンズ委員長、米中ビジネス評議会(USCBC)のクレイグ・アレン会長らに会う予定だと報じた。昨年11月、習主席がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため米サンフランシスコを訪問した当時、米中関係全米委員会と米中ビジネス評議会が夕食会を主催したことに対する後続措置だと、WSJは伝えた」

     

    習氏は、昨年11月に訪米の際に夕食会へ出席した経営者と「返礼」の意味を含めて面会するという。これをテコに、米企業の対中直接投資を増やしたい意向であろう。

     

    (2)「習主席が自らグローバル企業関係者に会うのには「チャイナラン」に対する中国当局の悩みが反映されていると解釈される。中国国家外貨管理局が先月18日に発表した「2023年国際収支」によると、23年、外国人の対中国直接投資額は300億ドル(約4兆5400億円)と、前年比で82%も減少した。ブルームバーグ通信は1993年(275億ドル)以降で最も少ないと伝えた。ピークだった2021年(3441億ドル)と比較すると10分の1にもならない」

     

    「チャイナラン」とは、言い得て妙である。中国から逃げ出す海外資本の実態を示しているからだ。ロシアのウクライナ侵攻では、西側企業は大損を被った。中国の台湾侵攻が起っても、その二の舞にならぬように事前に資本逃避しようという構えだ。習氏は、こういう西側企業をどのようにして説得するのか。まさか、いまさら「台湾侵攻しません」とも言えないだろう。この件は、沈黙するほかあるまい。

     

    (3)「原因には、不確かな投資環境が真っ先に挙げられる。中国当局は昨年、反スパイ法を改正し、対外関係法を制定しながら、外国企業の調査活動などに対してスパイ容疑で処罰、取り締まりを行っている。これに先立ち米国系ローファームが中国事業を撤収し、世論調査機関ギャラップが中国事務所を閉鎖した。在中国欧州連合(EU)商工会議所は20日(現地時間)の報告書で「不確実性と厳格な規制で中国国内の外国企業のリスクが急激に高まった」と明らかにした。報告書は「事業環境が政治化されて予測が難しく、信頼性、効率性が落ちる」と指摘した」

     

    習氏は、国内を政治的に引締める手段として「反スパイ法」を使っている。これが、海外企業にとって不気味なのだ。日本企業でも、この法律によって拘束・起訴された犠牲者が出ている。中国は、対内投資をわざわざ減少させる原因を作っている。

     

    (4)「中国当局は、外国人投資ネガティブリストを見直して、遺伝子診断や治療技術など革新分野に進出する道を開くと明らかにした。また無関税製品の比率を増やしてサービス貿易を拡大し、外国人投資家、外国企業の職員、その家族に対するビザの便宜も図ると伝えた。中国国家発展改革委員会の事務総長は今回の案について「中国が外国人投資誘致を重視し、高いレベルの投資を通じて世界経済との相互作用を強化することをもう一度立証した」と評価した」

     

    「反スパイ法」自体が存在している以上、外国人の身の安全は保障されない。中国は、こういう障害物を認識しない限り、対内直接投資が増えることはあるまい。

     

     

     

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    中国は、レジェンド(旧世代)半導体の生産拡充によって、世界シェアを高める動きに出ている。米国は、こうした中国の動きを警戒しており、すでに輸出した半導体製造設備の部品やメンテナンスの提供も米国同様に禁止するよう同盟国(日本・オランダ)へ要請した。

     

    米商務省のアラン・エステベス次官(産業安全保障担当)は21日、下院外交委員会の聴聞会で「同盟国が米国と類似した中国向けの半導体輸出統制を導入するよう説得し、米国企業と同盟国企業の間で『同等さ』を達成しようと取り組んでいる」と説明した。米国の厳しい対中姿勢をみせている。

     

    『中央日報』(3月22日付)は、「米国、同盟国の半導体装備部品『対中輸出統制も米国水準にならなければ』」と題する記事を掲載した。

     

    米国の半導体など核心技術の輸出統制を総括するアラン・エステベス米商務省産業安保次官は21日(現地時間)、対中国半導体製造装備の輸出統制はもちろん、中国にすでに輸出した装備のサービスと部品販売も統制中だと明らかにした。また、半導体装備の対中輸出統制に参加すると言ったオランダ・日本など同盟国が部品とサービスの輸出統制も米国と同じ水準になるよう牽引するという意向を明らかにした。多国間レベルの対中輸出統制戦略を示唆したものと分析される」

     

    (1)「21日(現地時間)、米下院外交委員会聴聞会を主宰したマイケル・マッコール外交委員長(共和党)は「日本・オランダが(米国と)類似の対中半導体輸出統制を適用することで合意したことは希望的だが、依然として日本・オランダが半導体製造用の部品を中国に販売しサービスすることが相当部分許容されている」と指摘した。聴聞会に出席したエステベス次官は、「我々は主要核心技術に対する広範囲な戦略的輸出統制に入った」とし、「これには軍事用・スーパーコンピュータAI(人工知能)を駆動するのに必要な先端コンピュータ半導体とこのような先端半導体生産に必要な製造装備が含まれる」と述べた。続けて、「同盟国が米国と類似した対中国半導体輸出統制を導入するよう説得し、米国企業と同盟国企業間の同等性(parity)を達成しようと努力している」と述べた」

     

    米国は、日本やオランダとともに中国へ最先端半導体製造設備の輸出規制をしている。だが、日蘭両国はすでに輸出した製造設備の部品やメンテナンスを続けているので、これも米国並みに中止するように要請された。この理由は、中国が古い設備を使って最先端半導体を作ろうとしているからだ。昨年、ファーウェイが7ナノ半導体を装着したスマホを発売したが、この半導体は古い設備を使ったものだ。米国はこういう経緯もあって、過去の製造設備でも部品とメンテンナスの提供を規制しようという狙いである。

     

    (2)「エステベス次官は、「中国に輸出された(半導体)装備のサービス問題も調べている」とし「また(半導体装備)部品も扱っている。我々は部品が中国に行くのを防ぎ、同盟国も参加させるために努力している」とした。聴聞会でアン・ワグナー共和党下院議員は「現在、米国の輸出統制システムには深刻な欠陥がある。その結果、昨年、アメリカ大陸のデータ収集のために送った偵察風船などで米国の技術が敵のプログラムに使われている」と批判した。また、エステベス次官に「マイクロチップ技術の輸出統制を強化するために同盟国およびパートナーにどんな圧力をかけているか」と質問した」

     

    中国が、半導体製造設備を入手すべくあの手この手を使っているので、米国は抜け穴塞ぎに躍起になっている。

     

    (3)「半導体装備市場を主導しているオランダや日本などは、米国の対中輸出統制戦略に参加する意思を明らかにしたが、部品やサービス販売に関する限り、低いレベルの統制政策を展開し、損害が出ているというのが米国関連企業の不満だった。米国半導体産業協会(SIA)は2月「韓国や日本、台湾、イスラエル、オランダなど競争企業は輸出統制対象にない半導体装備を中国に輸出でき、関連サービスも提供できるため米国企業が不利な条件」という意見書を米商務省産業安保局(BIS)に出した。同時に「米国と同等水準の多国間輸出統制方式を使わなければならない」と要求した」

     

    日蘭両国は、部品やメンテナスを行っている。米国は、これが結果として中国の半導体製造能力を高めると危惧している。

     

    (4)「これと関連して昨年12月、エステベス次官は韓米経済安保コンファレンスの基調演説で韓国など同盟と新しい輸出統制体制を作る方案を議論していると述べた。このような中、エステベス次官がこの日、同盟国に「米国と同等な」水準の半導体装備部品およびサービス販売統制を説得していると言ったことは、米国業界が要求した多国間輸出統制方式を使うという意味と解釈される」

     

    韓国は、中古の半導体製造設備を中国へ輸出しないと申入れている。韓国半導体が、米国への協力するものだ。

     

     

     

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    EV(電気自動車)普及促進にとって、米国政府の目標引下は痛手である。だが、技術革新の伴わないEVは、ユーザーに受入れられるはずもない。まずは、全固体電池搭載のEVが登場しない限り、本格的な普及は困難であろう。その時期は、2027年以降とみられている。 

    米国政府は3月20日、車の排出ガス規制を緩和すると発表した。2032年に新車の7割弱を電気自動車(EV)にする目標も、最も低い場合で4割弱に引き下げた。EV普及がなかなか進まない現状に普及目標を合わせたと言えよう。 

    『日本経済新聞 電子版』(3月21日付)は、「米政府、EV普及目標半減も 中国台頭で排ガス規制緩和」と題する記事を掲載した。 

    米自動車業界はEV拡大に苦戦する。大統領選を控えたバイデン政権が「票田」である業界の見直し要求に応じた格好だが、EV市場を席巻しかねない中国車への警戒も見え隠れする。

     

    (1)「米環境保護局(EPA)が20日、23年4月にまとめた規制素案を緩める最終案を公表した。軌道修正のポイントは大きく2つある。一つは規制対策の猶予だ。27〜32年の規制適用期間の前半で二酸化炭素(CO2)削減ペースを緩め、自動車メーカーが対策するための時間を延ばした。もう一つの大きな変更がEV普及目標の引き下げだ。EPAは排ガス規制達成に向けた車種構成の目標を示してきた。素案では「32年の乗用車販売のうち67%をEVとする」としてきたが、今回、これを最高で56%、最低の場合は35%に下方修正した」 

    これまで、「32年の乗用車販売のうち67%をEVとする」目標が、最高で56%、最低の場合は35%に下方修正した。EV需要が低下している現在、一律に32年67%目標は実現不可能である。 

    (2)「これまで、EVのみを数値目標で提示していたが、新たにプラグインハイブリッド車(PHV)とハイブリッド車(HV)もCO2削減に役立てられると変更した。EV比率が35%の「悲観シナリオ」の場合、PHVは36%、HVは13%、ガソリン車は17%の車種構成となる。メーカーがEV以外の電動車に注力する余地を広げた」 

    従来、EVだけがCO2削減に役立つとされてきたが、PHVやHVも脱炭素に貢献すると認められた。

     

    (3)「バイデン政権にとって苦渋の軌道修正といえる。気候変動対策は政権の看板政策で、掲げた旗は降ろせない。今回も最終年度である32年のCO2削減目標は据え置いた。半面、EV拡大に苦戦し、急速な普及目標の見直しを求めた米自動車大手「ビッグ3」などの声を無視できなかった。主要労働組合の全米自動車労組(UAW)だけでも40万人の組合員を抱える。11月の大統領選を見据え、政権は「普及を後押しするのはEVのみ」としてきた手法について、妥協せざるを得なくなった。自動車メーカーは、EV市場の減速に直面し、事業拡大が行き詰まりかねない懸念が出ている。EVは価格が低下しているが、基幹部品である電池のコストはなお大きい。充電インフラの整備も途上で、その投資コストものしかかる」 

    EVの普及目標がいくら高く掲げられても、需要を伴わなければ無意味である。かえって、現実を混乱させるだけだ。全米自動車労組(UAW)も、バイデン氏へ目標緩和を要請していた。11月の大統領選を控えて、バイデン政権がEV目標を引下げたのは当然であろう。

     

    (4)「米国の最大のライバルである中国のEV台頭も、今回の修正の背景だ。米中対立が深まり、米国は電池部材などを牛耳る中国からの自国産業のサプライチェーン(供給網)の切り離しを狙った。米国は22年に「インフレ抑制法(IRA)」を定め、電池やEVの米国生産に補助金を支給し、戦略物資の内製率の引き上げを図っている。米国だけでなく日本や韓国、欧州から米国生産の投資が相次ぎ公表され、国家主導のEV供給網の再構築が動き始めた。だが、自動車メーカーにとって中国の供給網からの切り離しは容易ではない。EV最大手のテスラですら、新型EV「サイバートラック」の電池部材を自前生産できず、急きょ中国からの調達に頼る事態になった」 

    米国はEV目標を堅持していると、最終的に中国EVの販売を助けかねない事態を招くと危惧している。中国は、電池でリチウム鉱石からの一貫生産を手掛けているので、米国製EVよりも低コストである。米国製EVが、競争力を持つのには今しばらくの時間が必要なのだ。こうなると、EV普及目標自体を引下げるほかない。 

    (5)「中国産からの脱却を条件とする米EV販売補助金の対象車種は24年1月に、23年12月末の17車種から8車種に半減した。ホンダの新型車2車種の発売もあり、いまは15車種に増えたが、なおピークに届いていない。米国に巨額投資で工場を設けても中国依存を脱却できず、販売が伸びなければ企業には負担のみ残る。米国でEV供給網が整うにはもうしばらく時間を要する。急速なEVシフトに米国の関連メーカーが対応しきれずに競争力が弱まれば、漁夫の利を得るのは中国勢だ」 

    米国は、中国製EVの進出を何としても防ぎたい立場である。中国製EVの生産コストが、政府補助金支給の影響もあって破格的な安さである。この結果、米国はもう少し時間を引き延ばして生産コスト引き下げを実現させたいのだ。

     

     

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    中国が、レガシィー半導体の生産拡充に躍起となっている。4~6兆円の国策ファンドの設立に動いている。米商務省は、「レガシー半導体」について、中国の生産動向に関する情報収集を始めた。米国企業が、中国にどれだけ半導体で依存しているかを分析する目的である。「レガシー半導体」は、最先端ではないが世界経済にとって不可欠な存在になっている。中国は、レガシィー半導体で主要供給先になると、サプライショックが起こり兼ねないからだ。 

    『日本経済新聞 電子版』(3月21日付)は、「中国、4兆円超の半導体ファンド構想 米包囲網に対抗」と題する記事を掲載した。 

    中国政府が独自の半導体サプライチェーン(供給網)の構築を急ぐ。成熟分野の製造装置を中心に投資を拡大する。過去最大の約4兆〜6兆円の国策ファンド構想が浮上しており、半導体の国内生産能力の2ケタ成長を持続させる。

     

    (1)「『(最先端ではない)主流の装置でもスマートフォン向け半導体で通常使われている7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの回路線幅に対応できる』。上海市で開催中の半導体展示会「セミコン・チャイナ」では、政府系の中国半導体装置最大手、北方華創科技集団(NAURA)のブースの映像に人が群がった。映像に映る製造装置は、米国が対中輸出を禁じる最先端の装置ではないとみられる。中芯国際集成電路製造(SMIC)は前世代の装置などを使って7ナノの半導体を製造したとされ、NAURAはSMICに協力しているとの見方も出ている」 

    中国には、「7ナノ」半導体を製造する正規の装置は存在しない。旧世代の装置を継ぎ足した職人芸で「試作」した程度で量産化は不可能とされている。 

    (2)「NAURAは習近平(シー・ジンピン)国家主席が唱えるイノベーションを通じた「新質生産力(新しい質の生産力)」を備える代表企業だ。米国の規制によって米国人技術者が去った半導体工場に大量の技術者を送り込み、稼働を支えているとみられる。23年12月期の売上高は前の期の1.4倍以上、純利益は1.5倍以上に増えた見込み。売上高で同業界の世界トップ10に入り、李強(リー・チャン)首相が視察をして高い評価を与えた。趙晋栄董事長は、20日に開かれたセミコン・チャイナの国際会議で「半導体技術の発展は製造設備のイノベーションでもある」などと指摘した。基礎研究の強化によって中国の製造装置産業を底上げする必要性を強調した」 

    NAURAは、中国半導体製造装置を製作する「希望の星」である。これが、独力でどこまで技術水準を引上げられるかだ。

     

    (3)「NAURAは、国策半導体ファンド「国家集成電路産業投資基金(大基金)」から支援を受けて成長した。大基金は15年発表のハイテク産業の育成策「中国製造2025」の議論をしながら設立され、国内の半導体サプライチェーンに投資するものだ。14年に始まった第1期は約1400億元(約2兆9000億円)、19年に始まった第2期の投資額は約2000億元に達する」 

    NAURAは、国策半導体ファンドからの投資を受けている。 

    (4)「中国メディアによると大基金はこれまで、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン向けに半導体を供給したSMICや米アップルが調達を検討したメモリー大手、長江存儲科技(YMTC)といった有力企業や工場を対象に、100以上の投資を実行してきた。出資者の収益状況は不明だが、国有企業が中心で長期的な視点で投資しているとみられる」 

    国策半導体ファンドは、これまで100以上の投資を実行している。国有企業中心である。

     

    (5)「米国との対立長期化を受け、大基金の第3期の構想が浮上する。米ブルームバーグ通信は3月上旬、大基金が第2期を上回る270億ドル(約4兆1000億円)以上の資金を地方政府や国有企業などから集めて第3期の準備を進めていると報じた。第3期は人工知能(AI)向けを軸にするとの観測もある。国の競争力を左右するのにもかかわらず中国は出遅れている。投資額は4兆〜6兆円との見方もある。投資先は開発や生産能力が足りない成熟分野を中心に、最先端の分野も含むとみられる」 

    国策半導体ファンドの資金規模は、4兆〜6兆円との見方もある。過去、このファンド資金が、汚職の温床になって高官は逮捕されている。資金が、湯水のように使えるとされる。資金管理が、ルーズなのだ。それだけに、どれだけ成果を上げられるか疑問である。 

    (6)「中国の半導体輸入額は3494億ドルで、21年のピーク時に比べて2割減少した。一方、国内の販売金額は過去最高の1兆3000億元を超えたとみられ、国内自給率も高まる。中国の生産能力は2ケタ成長が続いており、SMICは回路線幅が5ナノに対応した半導体生産の準備を進めているとされる。 

    国内自給率を高めることで、世界のレガシィー半導体の高いシェアを狙っているとみられる。目的は、海外市場の掌握にある。

     

    (7)「米国は、製造装置の輸出規制を成熟分野に拡大するなど対中包囲網を強化している。中国政府は製造装置などを重点に強化する方針だ。セミコン・チャイナでは、23年の世界全体の半導体製造装置の販売額が前年比で2%減ったのに対し、中国大陸は28%増えたと紹介された。成長する国内市場を追い風に、NAURAなどは政府の支援も得て生産能力を伸ばす。中国の製造装置の国産化率は2割程度とされる。ある中国メーカー幹部は「35年には製造装置全体として70%をめざす」と打ち明ける。半導体を巡る米中のせめぎ合いはどこに向かうのか。中国製造装置業界の成長の成否が鍵となる」 

    中国の半導体製造装置の国産化率は現在2割程度とされる。これを、35年に7割を目指すという。前途遼遠である。10年先の世界半導体状況は、大きく変わっている。製造装置がなければ、半導体製造は不可能だ。この「根っ子」の部分を米国の規制で抑えられている点が、中国の弱みである。

     

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    米国では、完全なEV(電気自動車)への切り替えを重視し、これまでHV(ハイブリッド車)販売を段階的に終了させようとする動きがみられた。だが、消費者のHV需要は逆に拡大している。この流れは、持続的と見込んだ各メーカーやサプライヤーは、HVとPHV(プラグインハイブリッド車)の増産に向けて設備増強に乗り出している。

     

    『ロイター』(3月21日付)は、米でEV販売鈍化、HV増産急ぐメーカー 設備増強も」と題する記事を掲載した。

     

    米国では電気自動車(EV)の売上高が鈍化する一方で、ハイブリッド車(HV)と外部からの充電が可能なプライグインハイブリッド車(PHV)の販売が急増している。

     

    (1)「モルガン・スタンレーによると、2月の米国におけるHV販売の伸びはEVの5倍に達した。ステランティスは、ジープ部門のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ラングラー」の全販売台数に占めるPHVの比率は2023年前半が37%だったが、後半には50%に高まったと明かした。フォード・モーターの今年12月のHV販売台数は37%近く増加し、最低価格2万5315ドル(約380万円)の小型トラック「マーベリック」がけん引。カリフォルニア州のある自動車販売店の幹部は「当店で今最も売れ筋となっているのはマーベリックのハイブリッド車タイプだ」と述べた。実際マーベリックの販売台数のおよそ半分はハイブリッド車タイプが占めており、各販売店はフォードが増産できるならもっと売れるとみている」

     

    モルガン・スタンレーによると、2月の米国におけるHV販売の伸びはEVの5倍に達する勢いである。完全にEVを出し抜いている。ユーザーが、HVがEVよりも総合的にみた脱炭素で優れていることに気づいた結果であろう。フォードでは小型トラックが、HVの牽引役になっていることは、EVにないHVの特色が評価されている証拠であろう。

     

    (2)「複数のアナリストは、大半の既存大手メーカーはEV事業で赤字を抱えており、将来の政権が方針を転換すれば、ハイブリッド車がより大きな収益を得ながらCO2削減を目指せる道になり得ると指摘した。アリックスパートナーズのグローバル自動車プラクティス部門責任者を務めるマーク・ウェークフィールド氏は「ハイブリッド車は、規制の観点からの(EV)推進熱を冷ますような政策転換が起きた場合に備えた重要なヘッジ手段だ」と述べた。オートフォーキャスト・ソリューションズ(AFS)提供のデータに基づいてロイターが計算したところでは、トヨタ自動車とフォード、ホンダが主導する北米のハイブリッド車生産台数が2025年までに全小型トラック生産に占める比率は最大20%に達し、EVの14%をしのぐ展開になってもおかしくない

     

    HVは、メーカーにとってより大きな収益を得ながら、総合的なCO2削減を目指せる道になり得ることが広く認識されてきた。北米では、トヨタ・フォード・ホンダが、HV「御三家」である。HV生産が、全小型トラック生産に占める比率は、25年までに最大20%に達し、EVの14%を上回る見通しが強まっている。

     

    (3)「米国のハイブリッド車市場で長らくリーダーの座に君臨しているトヨタも、ハイブリッド車の種類を大幅に増やす方針で、これが販売台数の相当な増加につながると見込んでいる、と同社幹部のデービッド・クリスト氏がロイターに説明した。クリスト氏は「昨年はハイブリッド車が販売台数の29%、今年これまでは37%。今年は45%に近づくだろう」と述べた。トヨタの場合、同タイプのガソリン車と比較した際のハイブリッド車の価格面での割高さは、ハイブリッド車の増産が進むとともに縮小傾向にある。クリスト氏によると、かつて1台当たりの価格差は60007000ドルだったが、今は15002000ドルになった。これにより、消費者はハイブリッド車により値ごろ感を持つようになっているという

     

    米国でトヨタHV販売台数が、全販売台数に占める比率は昨年29%、今年が45%に近づくという。この裏には、HVの価格が量産効果で引き下げられており、エンジン車との差が1500~2000ドル(約22万5000~30万円)となって割安感が出てきた感じを強めているとされる。HV人気が高まることは、当然かも知れない。

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