習氏は、自国企業の代表団を同行させない見通しという。これは、外交世界では極めて異例である。通常の外国首脳訪問では、企業代表団が同行して大型投資・大型商談、経済協力の演出を行う。これが、「外交儀礼の定番」である。
今回がゼロとなれば、中国が次のように言っているのと同じであろう。中国は、経済で譲歩できないという意思表示である。投資を約束できない以上、米国企業とも協力できない立場だ。中国企業は、米国市場で投資できないので、企業代表団を随行させる意味がないというものであろう。中国の経済カード枯渇を意味する。中国は、「経済外交の武器」を失ったのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月22日付)は、「中国企業代表団、習氏訪米に同行しない見通し」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席は今週の米首都ワシントン訪問に自国企業の代表団を同行させない見通しだ。複数の関係者が明らかにした。米中首脳会談に合わせて大型商談が成立するとの期待に冷や水を浴びせた。
(1)「関係者の話では、習氏の訪米について説明を受けた一部の業界関係者は、中国が主要企業幹部で構成する代表団を編成し、習氏に同行させると見込んでいた。これら企業幹部はトランプ氏が主催する24日の晩さん会に、米国のテクノロジー・人工知能(AI)企業のトップたちと共に出席する見込みだった。ただ関係者によれば、習氏の訪米準備は進行中で、計画は変更される可能性がある」
中国は、土壇場で企業随行団を取り止めた。随行させても、実質的な意味がなという判断である。
(2)「中国企業代表団が同行しないという見込みは、世界の2大経済大国である米中の首脳会談でビジネス上の成果への期待が低いことを浮き彫りにする。政治的緊張を背景に、中国主要企業の米国での生産への投資は制限されている。この件は通常、外国企業の最高経営責任者(CEO)がワシントンを訪問する際の主要議題だ。米中関係はここ数年にわたり米国側の関税や半導体輸出規制と、中国側のレアアース(希土類)磁石輸出管理といった件を巡り緊張している」
中国はなぜ、企業代表団を連れてこないのか。理由は3つ考えられる。
1)中国企業は米国で投資できない
中国主要企業の米国での投資は、制限されている。半導体・AI・通信・EVなど、中国企業は米国でほぼ活動できない状況である。代表団を連れてきても
何もできないのだ。
2)中国企業は、米国のAIサーバーを買えない
AI主権の喪失がここで効いている。NVIDIA半導体は輸入禁止、HBM(高帯域幅メモリ)も輸入禁止、先端半導体も輸入禁止、AIクラウド輸入禁止である。中国企業は、米国のAI技術を買えない。
だから、代表団を連れてきても 意味がない。
3)中国企業は、国内でドル資金が枯渇している
不動産崩壊、地方財政破綻、株式市場低迷、若者失業、資本流出が起っている。企業代表団を連れてきても、投資する外貨資金がないのだ。
(3)「習氏のワシントン訪問は11年ぶり。内実に乏しいが、儀礼面では盛大なものになりそうだ。トランプ氏は、異例にもアンドルーズ統合基地に自ら出向き、習氏を迎える予定だ。米大統領夫人室の発表文によると、トランプ氏は24日、習氏夫妻のために軍関係者479人が参加する公式歓迎式典を主催する。その後、トランプ氏と習氏は首脳会談に臨み、公式晩さん会が続く」
ビジネス上の成果への期待が、低いことを浮き彫りにしている。米国は、今回の企業随行団が消えたことについて、次のように判断するであろう。
習近平氏は経済で譲歩できない。中国企業は米国市場に入れない、中国はAI主権を失っている。こうして、中国の経済カードは枯渇する。交渉材料がない以上、これは中国の弱さが露呈した。
(4)「米政府当局者の話では、両首脳はAIとレアアースについても協議する見通し。スコット・ベッセント財務長官は20日、米中両政府が国家安全保障上のリスクをもたらすAI絡みのインシデント(事案)について警告し合う方法を協議していると述べた。習氏が2015年に米国を公式訪問した際は、中国ハイテク大手の幹部たちが同氏と共に北西部ワシントン州を訪れ、米企業の幹部陣と会談していた」
両首脳は、AIとレアアースについても協議する見通しである。いずれも、「緊急性」は大きく後退した。中国の本音は、レアアースとAIを「相互交換したい」ほどであろう。




