勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:経済ニュース時評 > 米国経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    習氏は、自国企業の代表団を同行させない見通しという。これは、外交世界では極めて異例である。通常の外国首脳訪問では、企業代表団が同行して大型投資・大型商談、経済協力の演出を行う。これが、「外交儀礼の定番」である。

     

    今回がゼロとなれば、中国が次のように言っているのと同じであろう。中国は、経済で譲歩できないという意思表示である。投資を約束できない以上、米国企業とも協力できない立場だ。中国企業は、米国市場で投資できないので、企業代表団を随行させる意味がないというものであろう。中国の経済カード枯渇を意味する。中国は、「経済外交の武器」を失ったのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月22日付)は、「中国企業代表団、習氏訪米に同行しない見通し」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は今週の米首都ワシントン訪問に自国企業の代表団を同行させない見通しだ。複数の関係者が明らかにした。米中首脳会談に合わせて大型商談が成立するとの期待に冷や水を浴びせた。

     

    (1)「関係者の話では、習氏の訪米について説明を受けた一部の業界関係者は、中国が主要企業幹部で構成する代表団を編成し、習氏に同行させると見込んでいた。これら企業幹部はトランプ氏が主催する24日の晩さん会に、米国のテクノロジー・人工知能(AI)企業のトップたちと共に出席する見込みだった。ただ関係者によれば、習氏の訪米準備は進行中で、計画は変更される可能性がある」

     

    中国は、土壇場で企業随行団を取り止めた。随行させても、実質的な意味がなという判断である。

     

    (2)「中国企業代表団が同行しないという見込みは、世界の2大経済大国である米中の首脳会談でビジネス上の成果への期待が低いことを浮き彫りにする。政治的緊張を背景に、中国主要企業の米国での生産への投資は制限されている。この件は通常、外国企業の最高経営責任者(CEO)がワシントンを訪問する際の主要議題だ。米中関係はここ数年にわたり米国側の関税や半導体輸出規制と、中国側のレアアース(希土類)磁石輸出管理といった件を巡り緊張している」

     

    中国はなぜ、企業代表団を連れてこないのか。理由は3つ考えられる。

     

    1)中国企業は米国で投資できない

    中国主要企業の米国での投資は、制限されている。半導体・AI・通信・EVなど、中国企業は米国でほぼ活動できない状況である。代表団を連れてきても 何もできないのだ。

     

    2)中国企業は、米国のAIサーバーを買えない

    AI主権の喪失がここで効いている。NVIDIA半導体は輸入禁止、HBM(高帯域幅メモリ)も輸入禁止、先端半導体も輸入禁止、AIクラウド輸入禁止である。中国企業は、米国のAI技術を買えない。 だから、代表団を連れてきても 意味がない。

     

    3)中国企業は、国内でドル資金が枯渇している

    不動産崩壊、地方財政破綻、株式市場低迷、若者失業、資本流出が起っている。企業代表団を連れてきても、投資する外貨資金がないのだ。

     

    (3)「習氏のワシントン訪問は11年ぶり。内実に乏しいが、儀礼面では盛大なものになりそうだ。トランプ氏は、異例にもアンドルーズ統合基地に自ら出向き、習氏を迎える予定だ。米大統領夫人室の発表文によると、トランプ氏は24日、習氏夫妻のために軍関係者479人が参加する公式歓迎式典を主催する。その後、トランプ氏と習氏は首脳会談に臨み、公式晩さん会が続く」

     

    ビジネス上の成果への期待が、低いことを浮き彫りにしている。米国は、今回の企業随行団が消えたことについて、次のように判断するであろう。

     

    習近平氏は経済で譲歩できない。中国企業は米国市場に入れない、中国はAI主権を失っている。こうして、中国の経済カードは枯渇する。交渉材料がない以上、これは中国の弱さが露呈した。

     

    (4)「米政府当局者の話では、両首脳はAIとレアアースについても協議する見通し。スコット・ベッセント財務長官は20日、米中両政府が国家安全保障上のリスクをもたらすAI絡みのインシデント(事案)について警告し合う方法を協議していると述べた。習氏が2015年に米国を公式訪問した際は、中国ハイテク大手の幹部たちが同氏と共に北西部ワシントン州を訪れ、米企業の幹部陣と会談していた」

     

    両首脳は、AIとレアアースについても協議する見通しである。いずれも、「緊急性」は大きく後退した。中国の本音は、レアアースとAIを「相互交換したい」ほどであろう。

     

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    「高市―トランプ会談」は23日未明(日本時間)、米中首脳会談直前に「日米同盟の優位を世界に可視化する」極めて戦略的な一手となった。同時に、中国の外交的孤立を象徴する会談になった。米中首脳会談の直前に日米会談を入れたことは、「米国は日本を優先する」という明確な政治シグナルであるからだ。

     

    トランプ大統領は、会談で次のように語った。「日本の首相とここで同席できることを本当に誇りに思っている」。これは、外交儀礼でなく政治的メッセージである。米国の本音は、次の点に現れている。中国より日本を優先する。アジアの中心は日本である。米中会談は「儀礼」、日米会談は「実務」という転倒が起っている。米国が、日本の安全保障懸念を先に聞くのは、米国が「日本→中国」の順でアジア外交を組み立てていることを物語っている。中国にとっては、屈辱的な扱いだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月23日付)は、「トランプ氏、日米会談『誇りに思う』 高市首相『同盟の強さ示す』」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗首相は22日(日本時間23日未明)、米ニューヨークでトランプ米大統領と会談した。24日の米中首脳会談を前に、中国を巡る認識を擦り合わせる。日本側から東・南シナ海周辺での軍事活動や重要物資の輸出規制への懸念を伝える。

     

    (1)「トランプ氏は、会談の冒頭「日本の首相とここで同席できることを本当に誇りに思っている」と述べた。高市政権の支持率を常に注視していると語り「大変素晴らしい成績を残している。歴史にも名を残すことになるだろう」と話した。首相は、「アジアの安全保障環境が厳しい中で今日、ドナルドと私が会談するのは世界に向けて日米同盟の強さを示すことになる」と強調した」

     

    高市首相の発言は、「日米同盟の中心は日本」という宣言であろう。高市首相は、「今日、ドナルドと私が会談するのは世界に向けて日米同盟の強さを示すことになる」と発言した。これは、単なる外交辞令ではない。高市氏の狙いは、米中会談の前に日米同盟の優位を世界に示す。中国には、「日本が米国の最優先パートナー」と見せつけた。ASEANには、「日本がアジアの安全保障の中心」と印象づけ、台湾に安心感を与える狙いだ。日米同盟の「主役」は日本であるという構造を世界に示したとも言えよう。

     

    (2)「(高市氏は)人工知能(AI)や半導体、重要鉱物などを例示して、「日米間の経済安保の協力が進んでいる」と訴えた。「たくさんのイシューを話したい」と呼びかけた。両首脳の会談は首相がワシントンを訪問した3月以来、半年ぶりとなる。高市政権は習近平国家主席が国賓訪米するのに先立つ形での日米首脳会談の実現を探ってきた。日本政府はトランプ氏が11月の中間選挙をにらみ、米国製品の輸出拡大などと引き換えに、台湾や東・南シナ海を巡る中国側の主張に譲歩する動きを警戒する。日本の懸念を直接伝え、米中首脳会談での米側の対応に反映させたい考えだ」

     

    日本は、ラピダスの「2ナノ半導体」やレアアースの化学的精錬法で西側諸国全体の安全保障強化に寄与する。米国にとっては、強力な「援軍」である。高市氏は、トランプ氏に対して日本がいかに西側諸国全体の経済底上げに貢献しているかを説明するであろう。

     

    (3)「米国にとっては、米中首脳会談に先んじて日本との首脳会談を実施することで、アジア太平洋を重視している立場を東南アジア諸国連合(ASEAN)など国際社会に印象づける狙いがある。首相は、中国による台湾海峡周辺を含む東・南シナ海などでの軍事力強化と、重要物資の輸出規制を通じた経済安全保障上の圧力を議題として取り上げる見通しだ。2025年に沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域で中国海警船が確認された日数は357日に上り、過去最多を更新した」

     

    トランプ発言は、高市氏に対して「大変素晴らしい成績を残している。歴史にも名を残すことになるだろう」という政治的メッセージである。これは異例の賛辞である。外交的意味は次のようなものだ。

     

    高市政権を強く支持する、日本の安全保障政策を全面的に後押しする、米中会談で日本の懸念を反映する、日本の対中強硬姿勢を評価する。トランプ氏は、高市首相を「アジアの同盟の中心」として扱っている。習近平氏にとっては、「出鼻をくじかれた」思いであろう。

     

    (4)「首相は、経済安保面で中国がレアアース(希土類)など重要物資の輸出規制を強めている問題を提起する方向だ。首相は、日本の産業やサプライチェーン(供給網)への影響を説明し、安定調達に向けた日米連携を訴えるとみられる。両首脳は日米同盟の強化についても意見を交わす見込みだ。首相は対米投資が米国内の雇用創出につながると訴え、同盟への日本の貢献を強調する構えだ」

     

    日本の対米5500億ドル投資は、具体的なプロジェクト選定を進めている。韓国の対米直接投資3500億ドルが、大きく遅れていることからみて、日本が積極的に協力していることは明らかだ。

     

    中国は、習氏の訪米と同時に、企業代表団を連れてこられないほど弱体化している。その直前に日米会談が入り、 トランプ氏が高市氏を称賛し、日本の懸念が米中会談の議題になる。これは、中国にとって外交的敗北である。中国が、日米首脳会談から受け取るメッセージは、次のようなものであろう。

     

    米国は、日本を優先する。日本は、米中会談に影響力を持つようになっている。中国は、議題設定権を失った。中国は、レアアースなど経済カードを失った。中国は、AI主権を失った。中国は、気付いたら日本がアジアの主役になって来たという衝撃であろう。

     

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    現在、米韓関係が極度の「ギクシャク」した状況にある。問題の本質は、韓国政府が外交諸問題を決めずに「宙ぶらりん」状況にしているからだ。対米投資の発表延期、ホルムズ海峡派兵の決定不能、原潜協議の停滞など、米国が求める案件を前に進められない状態である。この結果、米国は「韓国は約束を守らない国」という不信感を強めている。これは、韓国外交にとって致命的な評価になる。

     

    対米関係悪化の背景は、韓国政府内部の意思決定が崩れているからだ。通商派vs安保派で意見が割れている。経済を優先する通商派は、対米投資に慎重である。安保を優先する安保派は、原潜・原子力再処理・作戦統制権返還を進めたいという立場だ。この両者の対立が激しく、米国との約束が履行できない状況だ。

     

    見方を変えると次のようになる。自主派vs同盟派になる。自主派は、民主党系で「米中均衡外交」である。同盟派は、「安米経米(安保も経済も米国)」を主張する。政権内部では、この両派が対立するので方向性が揺れ、米国に対して一貫した政策が出せないのだ。

     

    この対立は本来、李大統領が調整すべきである。現実は、放棄している。国内の政治的圧力を逃れて、「外遊三昧」である。昨年6月、大統領就任以来、外遊が次第に増えている。とくに、26年に入ってからは「大型化」した。このパターンは、文在寅氏と酷似している。李氏は、外遊して国内政治のプレッシャーから逃れているとみられる。高市首相とは、逆パターンだ。

     

    韓国の両派対立は、朝鮮李朝末期に日本派vs中国派vs露西亜派と「三派鼎立」状況であった。現代韓国では、日本派が安保派、中国・露西亜派が通商派になっている感じだ。

     

    『中央日報』(9月21日付)は、「成果なく終わった韓米外相会談、相手の立場で考えるのが同盟だ」と題する社説を掲載した。・

     

    7カ月ぶりに行われた18日(米国現地時間)の韓米外相会談は成果なく終了した。李在明(イ・ジェミョン)大統領が18日の記者会見で対米投資プロジェクトやホルムズ海峡派兵など主要な韓米間の懸案について示した立場を見ると、予想されたことだった。李大統領は記者会見で対米投資の「商業的合理性」を繰り返し強調した。派兵要求については「戦争に関与・介入する派兵はない」と一線を画した。こうした状況で両国の外相が会談し、合意を導き出すのは不可能だった。

     

    (1)「これまでの韓米間の交渉の推移を見ると、果たして同盟国同士の交渉なのかと疑問を抱く。米国は投資と派兵の要求に応じないことを理由に、韓国の安全保障能力強化に寄与する原子力潜水艦の建造や、ウラン濃縮・再処理の許可に向けた後続協議について事実上、怠業に近い姿勢を見せており、連合軍事演習の縮小を一方的に通告した。韓国は他の同盟国が早期に終えた対米投資を迅速に進められず、「あまりにも遅い交渉者」という不満を招いている」

     

    韓国は、「同盟」の持つ深い意味をどこまで理解しているか。これが、根本的な疑問点である。韓国は、絶えず国益を前面に出す。だが、安全保障で米国に守られているという認識が希薄である。米国が、自国利益に基づき韓国へ駐留しているとしても、それをあからさまにする韓国の姿勢も問題であろう。こういう安全保障問題は、「あうんの呼吸」が肝心である。韓国は、こういう微妙な芸当が出来ない国である。

     

    (2)「最大の争点に浮上したホルムズ海峡派兵についても米国の圧力と世論の間で結論を出せずにいる。李大統領が戦争・戦闘に介入しないと明言した点は、交渉の余地を狭め、戦略的あいまい性の余地をなくした側面がある。青海(チョンヘ)部隊の派遣など海峡の護衛に貢献する案が検討されているが、ミサイルやドローンが飛び交う現場の状況では戦闘と非戦闘の境界が不明確にならざるを得ない」

     

    韓国のホルムズ海峡に対する基本姿勢は、尊重されるべきだ。韓国が、国際法に基づき説明すべきで、感情論を含めた対応は避けるべきであろう。仮に、日本を例に出して交渉したりすることは避けるべきだ。

     

    (3)「韓米間の状況とは対照的に、高市早苗首相は22日、ニューヨークで首脳会談を推進中だ。2日後に行われる米中首脳会談で日本の国益を侵害する合意がないように事前調整するという。李大統領も国連総会に出席する予定だが、まだ首脳会談の話は出ていない。昨年10月に韓米首脳が合意した通商・安保共同ファクトシートは「相互ウィンウィン」という趣旨での合意だった。両国は同盟の未来を見据える長期的な視野と、相手の立場で考える姿勢で、合意を実行するための妥協点を見いだす必要がある」

     

    「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」という言葉がある。韓国は、安全保障を託している米国に対して、こういう自らを投げ出すような行動をとったことがあるだろうか。常に肩肘張って「国益論」を振りかざす韓国は、米国にとって安全保障によって守る価値があるかどう疑念を持たせるであろう。ここが、韓国がもっとも欠けている点であろう。

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    米国のアンソロピックやオープンAIが人工知能(AI)開発の減速を呼びかけるのは暴走への歯止めだけが理由ではないはず。いずれAIが資本を食い潰してしまう事態が想定され始めたのであろう。AI産業は、追加投資に比べ追加収益はそれほど大きくならないという「収穫逓減の法則」に直面し始めている。26年が、AIブームの終焉になる可能性が強まってきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、「AIバブルはこうして終わる 金利高と収穫逓減『死の交差』」と題する記事を掲載した。

     

    投資した資金が、どれだけ効果的に利益を稼いでいるかを示すのは、投下資本利益率(ROIC)、いわば資本が稼ぐ力である。米国でハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)に区分される5社(アルファベットとマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、メタ、オラクル)は、2023年7〜9月期の95%をピークに、26年4〜6月期は13%まで低下した。追加で100ドル資本を投入すると以前は95ドルの追加利益を得られたが、いまは13ドルしか得られないという意味だ。

     

    (1)「売上高営業利益率(営業利益/売上高)が改善しても、投下資本利益率(営業利益/投下資本)が下がることは普通にある。利益を増やすには莫大な投資を必要とするケースだ。AI株投資でいまみるべきは、ビジネスの採算性より資本の生産性だ。米半導体大手エヌビディアも似たり寄ったりだ。QUICK・ファクトセットによれば同社のPER(株価収益率)は足元で16倍を割り込み、約12年ぶりの水準に低下した。それは、資本効率の悪化と不可分であり必ずしも「割安の証明」ではない」

     

    AIは今や、ソフトウェア産業でなく、巨大な設備投資を必要とする「重工業」になった。ソフトウェアは、一度作れば追加費用はほぼゼロ、利用者が増えるほど利益が逓増という「逓増型産業」である。しかし、生成AIは逆になった。性能向上で、追加投資が指数的に増える。その結果、資本効率(ROIC)が急低下する。つまり、AIは「資本を食う産業」に変質した。

     

    (2)「問題はこの先で、より重要なのは金利との関係だ。金利上昇でAI産業の収穫逓減は一気に表面化する。加重平均資本コスト(WACC)を使って開明してみよう。WACCとは株主や銀行といったお金の出し手が資金提供先に要求する平均利回りをいう。ハイパースケーラーの稼ぐ力に相当するROICとWACCの差、つまりお金の出し手にとっての「利ざや」は23年7〜9月期に80%以上あった。ところがその後、収穫逓減が資本利益率を押し下げる一方、長期金利の上昇が資本コストを押し上げ、直近は3%を割り込んだとみられる」

     

    ROICとWACCの差は、23年7〜9月期に80%以上あった。直近は、3%を割り込んだとみられる。これは、AIブームの終焉が接近している証拠だ。

     

    (3)「株主は投資先が稼ぐ利益が期待より少なければ株式を手放すだろう。新たに株式を買おうと考える人も追加利益に見合わない設備投資を続けていると判断して敬遠するはずだ。当然、時価総額は減少する。これこそ生成AI誕生以来の最大の試練だ。資本利益率が資本コストを下回る交差点はAIバブルの崩壊につながる「死の交差点(デッドクロス)」にほかならない。前例は22年1〜3月期にある」

     

    資本利益率が、資本コストを下回る交差点は、AIバブルの崩壊につながる。その時期は接近しつつある。年内にその時期を迎える。

     

    (4)「経営者は承知のはずだ。しかし、死の交差点が宿命的である事情が3つある。1つ目は競争に勝ち残るには巨額投資をやめられない「囚人のジレンマ」。2つ目は長期金利の制御の難しさ。3つ目は投資を続ければ死の交差点を越え、減速すれば半導体や同製造装置など「ツルハシ」に需要ショックを引き起こす「悪魔の選択」――という事情だ。金利上昇はみずから招いた副作用という面もある。ハイパースケーラー5社のドル建て社債の発行総額は26年1〜8月が1570億ドル(約24兆円)。すでに昨年1年間の1.7倍に達した。30〜50年といった超長期資金の奪い合いが目立つ」

     

    ハイパースケーラー5社のドル建て社債の発行総額は、26年1〜8月ですでに昨年1年間の1.7倍に達している。これは当然、金利高の影響を受ける。資本コストを押し上げるのだ。AIブーム「消滅」の舞台装置が、自ずと整い始めた。

     

    (5)「AIの収穫逓減は企業同士が投資や与信供与、購買契約を通じて資金をやり取りする循環的取引にも原因の一端がある。国際決済銀行(BIS)はそうした資金供給が過剰投資を生み、金融不安や深刻な不況の可能性を高めると警告している。例えばマイクロソフトは、同社が約25%の株式を保有するオープンAIとの取引で26年6月期に241億ドルの売上高を計上した。オープンAIの売上高の約6割がマイクロソフトに還流しているとの見方がある。オープンAIは連結対象外なので売上高は内部取引として消去されない。アンソロピックとアマゾンの間にも同じような相互依存契約がある」

     

    AI企業のROICは、95%(2023年)→13%(2026)まで急落している。WACC(資本コスト)は、金利上昇で高止まりする。ROIC<WACCとなった以上、AIは投資するほど損をする産業になる。この関係式が成立する状況下では、新規投資は終わる。今まさに、その局面に向っている。

     

    (6)「収穫逓減に陥った株式は本来、長期保有に向かない。アンソロピックやオープンAIの新規株式公開(IPO)時の想定時価総額は兆ドル単位といわれる。しかし一般企業や個人など純粋な外部への売上高を前提にバリュエーション(企業価値評価)をはじけばどうか。バベルの塔を彷彿(ほうふつ)とさせないか。AIの成長神話をうのみにはできない」

     

    現状では、アンソロピックが2026年10月に駆け込み上場。OpenAIが、2026年末〜2027年にかけて上場(ただし市場環境次第)という見通しである。AIブームの終焉と重なりあう形になるのか、興味深い。

     

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    トヨタ型ロボットの衝撃

    現代自との生産性を比較

    人型とは逆発想で成功へ

    日米独の順序で世界普及

    クラウドAIは情報特化

     

    世界のAI(人工知能)業界は、際限ない開発競争に危機感を募らせ始めている。米AI新興企業アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は、ハッキリと危機感を吐露し始めた。AI企業は、人類に壊滅的な影響を及ぼしかねない脅威に対処するため、開発ペースを落とし安全策を講じるべきだと呼びかけた。この提言には、ライバル他社のトップであるサム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏も賛意を示している。

     

    AI企業トップの危機感は、現在のクラウドAIの行き詰まりを物語っている。大量の電力消費を伴うだけに、無際限な発展はあり得ないからだ。これらの矛盾は、クラウドに代る分散型情報処理の登場を促すことに気づき始めたことでもあろう。時代は、まさに転換期に向っている。クラウド型から分散型への主役交代である。

     

    AIブームの自粛論が、業界内部で登場したことは重要な変化である。これは、開発競争激化の反面で、収益頭打ち現象が始まっていることへの経営的危機感の表明である。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によると、2023年から26年半ばまで、米国AI企業が巨大投資を続ける一方で、中国のAI新興企業はその1割に止まっている。

     

    米国AIは、中国AIに比べて投資規模に見合った収益を上げているかと言えば、中国AIの方が収益的に上回り始めている。米国AIは、莫大な先行投資を行っているものの、空回りし始めていることに気づき始めたのだ。先に挙げた危機論には、経営的側面も影響している。現行のクラウド型は、収益的にも限界へ向っているという危機感である。

     

    トヨタ型ロボットの衝撃

    こういうAI経営「曲がり角」で、衝撃的なニュースが重なった。トヨタ自動車とトヨタグループ各社は2028年以降、年間1兆円をかけて世界の工場で改装工事や建て替えを計画している。工場の更新に合わせてトヨタ本体は15万台、グループ各社が25万台のロボットを導入する。合計40万台になる。生産現場で、本格的な「ロボ導入」の幕開けになる。これは、世界的な産業革新の「号砲」である。

     

    トヨタ型ロボットは、いわゆる「人型ロボット」(ヒューマノイド)と呼ばれているものと異なる。形そのものが、人型でないからだ。二足歩行ではなく車輪、指は二本、可動域は最小限である。目的は、「人間と同じ動作」でなく、「生産ラインの汎用性」を実現することにある。トヨタは、「人間の代替」ではなく、「TPS(トヨタ生産方式)の延長線上の道具」としてロボットを位置づけている。

     

    TPSとは、トヨタ独自の生産方式の総称である。具体的には、生産現場のムダを徹底的に減らす生産管理・経営の仕組みだ。目的は、「高品質・低コスト・短納期」を同時に実現することにある。このTPSの原則から言えば、トヨタ型ロボットは、あえて「人型ロボット」のように形そのものも人型である必要性はない。トヨタ型ロボットは、人型ロボットと一線を画している。

     

    トヨタ型ロボットと人型ロボット(米国型)は、設計思想が180度も異なっている。トヨタ型は、人的機能を「必要最小限」にしている。米国型は、「できるだけ人間に摸す」と希望をつないでいる。トヨタ型の「必要最小限」は、AIが人間の脳に代替するような半導体製造そのものが不可能という仮定に基づいている。トヨタ型は、そういう半導体制約条件の中から出発している。これは、TPSの原則から導かれる結論である。

     

    トヨタ型は、身体機能の再現を「必要十分」に簡素化し、AI側の性能を最大化することにある。既述の通り、車輪移動、二指、最小可動域に加えて、危険動作を排除、ベテラン(匠)データで模倣学習させるという、分散AIによる「リアルタイム制御」である。身体を簡素化することで、AI動作が安定し、安全規格を上回るので故障率が減って、現場での生産性が飛躍的に上昇するという仕組みである。

     

    人型は、「人間と同じ身体を再現する」という思想から始まっている。二足歩行、5本指、30〜50自由度、人間と同じ可動域、人間と同じ作業代替を目的にする。これは、構造的に完成が極めて難しい課題である。ロボットの自由度が増えるほど、転倒予測や衝突回避が指数関数的に複雑化する。これは、AIが強化されても実現が困難とされている。

     

    人型ロボットと人間が協働する場合、人間の側で不規則行動を取る可能性が大きく、危険の本質は「接触」にある。米国が理想とする「人間と協働する人型ロボットの安全性」は、半導体の進化では絶対に到達できない問題である。それは、人間側の危険要因が「消えない構造」であるからだ。

     

    上記の要因から、人型ロボットの安全規格がいくら高度になっても、人間側の不規則行動によって人型ロボットは「物理的に合格」が得られない。この結果、保険料が跳ね上がることや、故障の増加で現場への導入が遅れる。学習データが、膨大すぎることも問題だ。人間の動作を模倣するには、多関節、多接触、多工程の膨大なデータが必要である。

     

    人型は、2ナノ半導体の出荷によって可動域は広がり、人型の動作はより滑らかになるであろう。だが、経済性・安全性の視点から言えば、現場採用は限定される。大量導入には、「身体機能の複雑さ×安全規格×保険×故障率」が大きな壁になる。これは、半導体の進化では解決しえない問題である。人型は、人々の夢をかき立てる。だが、現場導入では難題が多すぎるのだ。トヨタ型は、こういう現実導入の壁の高さを十二分に考慮した「現実解決型」である。

     

    現代自との生産性を比較

    ここで、同じ自動車業界でロボットを活用している韓国現代自動車の米国工場の現状と、トヨタ型ロボットの違いを見ておきたい。

     

    現代自動車が、米国工場で導入しているロボットの生産性は、トヨタ型フィジカルAIに比べて明確に劣っている。理由は、「身体設計」、「学習環境」、「安全規格」、「改善文化」の4点が構造的に違うためである。(つづく)

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