勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国の輸出先(2020年)では、日本が3位と上位にある。この日本企業が、中国からの調達(輸入)を見直すとするのが9割にも達した。代わって、日本での調達は5割という高率である。もともと、日本で供給されていたが、コストの関係で中国輸入に切り変えたもの。だが、経済安全保障を考えると、日本からの調達に戻した方が安全ということだ。コスト面でも採算が合うようになってきたのであろう。 

    米中デカップリングは、日本企業の調達先変更まで波及している。中国にとっては、輸出3位の日本が「母国回帰」だけに文句の言いようもない。「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という心境だろうか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月1日付)は、「中国調達『下げる』5割、代替先9割日本 100社に聞く」と題する記事を掲載した。 

    米中対立の激化などを受けて企業が部品などの調達で中国に頼らないサプライチェーン(供給網)の構築を急ぎ始めた。日本経済新聞の主要製造業100社への調査で、5割の企業が中国比率を下げると回答した。円安もあり代替先として9割が日本を挙げた。台湾有事や「ゼロコロナ」政策で中国リスクが高まっている。供給網の機能不全を回避するため、企業が備えを本格化しつつある。国内の製造業に中国の供給網について11月中旬にアンケートを実施した。79社から回答を得た」 

    (1)「中国から部品などを調達するうえで半年前に比べてリスクが高まったと考える企業は78%に達した。世界生産における中国からの調達比率を下げるとした企業は53%あった。業種別では機械が60%、自動車と化学が57%、電機の55%が引き下げると回答した。理由として「台湾有事への懸念」が80%(複数回答)で最多だった。新型コロナウイルスを都市封鎖など通じて封じ込める「ゼロコロナ」政策への懸念も67%の企業が挙げた。OKIは2020年以降、ATMやプリンターの生産を中国からベトナムなどに移した。現在も一部の部品を中国から調達しているが「将来は全て中国以外から調達する」(同社)方針だ」 

    日本企業には、「台湾有事への懸念」が80%もあり、これを理由に中国での調達見直しに着手する。機械60%、自動車と化学57%、電機55%が、それぞれ中国調達を引き下げる。パンデミックで日本企業も大きな痛手を経験しているので、「台湾有事」で二の舞いを演じれば、笑い者にされることは疑いない。同情はされないのだ。

     

    (2)「中国からの現在の調達比率は「5~20%未満」が最も多く34%を占めた。これが5年後には28%まで低下する。逆に「5%未満」とするのは11ポイント増えて33%まで高まる」 

    中国からの調達比率は、5~20%未満が3分の1もある。最低限の「5%未満」も3分の1だ。この程度の依存率であれば、万一の際も穴を埋められるという見通しがあるのだろう。だが、「5%未満」であれば、いっそのこと「ゼロ」にすればよいと思うが、購買は「競わせる」という原則を生かしていると見られる。 

    (3)「国連貿易開発会議によると、世界各国の中国からの輸入額の合計は21年で3.3兆ドル(460兆円)ある。日本の場合、輸入額に占める中国比率は26%に達する。内閣府によれば特定の国からの輸入額が5割を超える製品は2627品目あり、うちパソコン用電子部品や繊維など1133品目が中国からの輸入だ。調査でも中国への依存度が8割超の部品などがあると答えた企業は38%あった。座席回りなど自動車の内装部品や、クエン酸など食品の原料が8割を超えている。安定調達に向けた対策として「代替調達先の選定」(43%、複数回答)や「代替部品への設計変更」(32%)を進める企業が多い」 

    中国への依存度が、8割超の企業は38%もある。これは、首を中国に預けるようなハイリスク行為であろう。理由はいろいろあるにせよ、国際情勢の急変に備えることが急務だろう。

     

    (4)「中国に替わる新たな調達先では86%(複数回答)の企業が日本を挙げた。タイ(76%)などの東南アジアを上回る。円安に加え、賃金の上昇が緩やかなことから海外生産よりも相対的に国内生産の方がコストを抑えられるとみているようだ。DMG森精機は工作機械に使う鋳物部品の調達先を日本に変更した。キリンホールディングスもクエン酸についてタイなどからの購入を含め調達先の分散を検討する。パナソニックは掃除機などの生産の一部を中国から日本に切り替えた。部材の多くも国産にする」 

    中国依存体制の是正は、日本の産業構造を守るという意味もある。これまでは、グローバル経済で海外立地が主流であった。それが、一変して経済安全保障という時代だ。中国が原因であり、中国の経済成長分がそれだけ消えることを意味する。

     

    (5)「一方、製品の販売など中国での事業活動を今後も拡大するとした企業は30%に達した。「現状維持」も34%あり、縮小するとしたのは6%にとどまった。中国内で売る製品の部品などの調達については中国製を増やすとした企業が26%で、「現状維持」も50%あった。日米欧は、半導体などの重要物資で中国への依存を下げることを急いでいる。企業も台湾有事などが起きれば中国で事業を続けるか選択を迫られる。平時は、中国での事業を伸ばしながら、中国とそれ以外の地域で供給網を分けて整備し、有事に備える動きが鮮明になりつつある」 

    中国事業を伸ばすのは、中国国内市場向けであれば当然であろう。ただ、台湾有事で日本が不幸にも中国と交戦する事態となれば、中国に没収されるリスクを計算しておくべきだ。

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    日本には、韓国と外国人観光客数数を競争しているという認識はない。韓国が、勝手に日本と「競争心」を燃やしている。パンデミック終了後だけに、海外旅行客の動向に関心が持たれる。韓国は、日本に遅れてはならぬと必死の形相だ。 

    10月のデータでは、日本が49万8600人で、前月比で2.4倍もの増加であった。韓国は、28万9590人で、前月比73.%増。このデータには、チェジュ(済州)島から入国した外国人の数が除外されているという。これを含めれば、30万人台になったであろう。

     

    韓国紙『WOWKOREA』(11月29日付)は、「日韓間で熱を帯び始めた、外国人観光客の獲得競争」と題する記事を掲載した。 

    韓国経済新聞は11月19日、10月の外国人入国者が韓国と日本共に大幅に増加した中、両国の間で外国人観光客の獲得競争が激化していると伝えた。こうした中、韓国の文化体育観光部(部は省に相当)は韓国観光公社と共に、現在サッカーのワールドカップ(W杯)が開催されているカタールの首都ドーハで、韓国観光のPRキャンペーンを展開。外国人観光客の取り込みに余念がない。 

    (1)「韓国法務部出入国・外国人政策本部によると、先月に韓国を訪問した外国人は28万9590人で、前月(16万6568人)比73.%増えた。韓国経済新聞は「この数字には団体観光客と(南部のリゾート地)チェジュ(済州)島から入国した外国人の数が除外されている。それだけに、実際に韓国を訪問した外国人の数はこれよりはるかに多いというのが観光業界の分析だ」と伝えている。一方、日本政府観光局によると、10月に日本を訪問した外国人観光客は49万8600人で、前月(20万6500人)比2.4倍も増加した」 

    10月の外国人観光客数は、日本が前月比2.4倍、韓国は73.9%であった。増加率では、日本が韓国の3.2倍という急増ぶりである。日本と韓国では、地理的条件が全く違うので、単純比較は難しいであろう。日本は列島で、韓国が半島である。

     

    (2)「日本政府は10月11日から短期滞在ビザ(査証)の免除や外国人の個人旅行の受け入れを再開。日本政府は韓国人に対するビザ免除措置を2020年3月9日から一時停止していたが、約2年7か月ぶりに再びビザなしで日本に入国できるようになった。これまで15万人としていた日本への入国者数の上限も撤廃したほか、入国者は日本到着時の新型コロナ検査と入国時の待機も原則必要なくなった」 

    日本は、10月からビザなし旅行を受入れるようになった。これが、外国人観光客を急増させたのであろう。 

    (3)「韓国経済新聞は、10月の両国のこうした状況に「この1か月間、両国の観光客誘致の『成績』は優劣をつけにくいほど良かった。ドル高の影響で、米国など海外旅行客の集客に有利な条件が整ったことが両国に好影響をもたらした」と分析した上で、「日韓両国は、相手国に先を越されぬよう、特化した観光商品の開発に全力を傾けるなど、熾烈(しれつ)な競争を繰り広げそうだ」と伝えた」 

    日韓は、地理的条件と観光資源が全く異なるゆえに、無駄な競争は意味ないであろう。それよりも、外国人に日韓両国を旅行して貰うアイデアを出すべきだ。まさに、競争よりも協調である。日韓二ヶ国回って貰えれば「割引価格」を適用するという工夫である。「客回し」である。

     

    (4)「同紙は、「外国人観光客を取り逃さないために両国が繰り出したカードは『ラグジュアリー商品』だ」とし、「観光の魅力度を高め、客単価を最大限高めるという戦略だ」と解説した。同紙によると、11月1日にはプライベート機に乗って米国から観光客46人が韓国を訪れた。国籍は様々で、元高級官僚や会社経営者などという。韓国のほか、ベトナムやトルコなど計7か国を訪問する旅行商品で、価格は約2200万円。韓国観光公社のユ・ジュンホ観光商品室長は同紙の取材に「富裕層の観光客の支出は一般の観光客より4倍以上多い」と話した」 

    富裕層のプライベート機による海外旅行もあることに驚かされる。これは、アイデアさえ出せば、日本の旅行会社でも実現可能だ。

     

    (4)「文化体育観光部は、カタールでのW杯開催に合わせて、首都ドーハの中心部に大会組織委員会が運営する特設会場に韓国観光広報館を設置した。聯合ニュースによると、広報館では人工知能(AI)による肌診断や韓国スタイルのメ-キャップをバーチャルで試せる医療・ウエルネスプログラム、ハングルのカリグラフィー(西洋書道)をはじめとする伝統文化プログラムを準備した。K-POPダンスゲームなども体験できるという」 

    韓国は、カタールでのW杯開催に合わせて展示館を設置した。韓国チームの成績が良ければ、韓国への旅行客が増えるであろう。

     

    (5)「日本政府観光局も、客単価と付加価値の高いアドベンチャー体験型旅行商品の開発に力を入れている。ウインターシーズンを迎え、スキーなどのレジャー活動を楽しみたいと考えている旅行者を積極的に取り入れたい考えだ。両国の外国人観光客の獲得競争は、今後、ますます熱を帯びることになりそうだ」 

    海外旅行客の増加は、「輸出」と同じでドルを稼ぐことになる。20年1月の新型コロナ発生する前の日本は、2019年に年間2000万人へ達した。20年以降は、パンデミックで見る影もない状態だ。これを再び盛り返すには、どうするかである。韓国と競争するだけでは意味がない。

     

     

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    韓国メディアが、カタールW杯初戦で日本が優勝候補とされるドイツを破ったことに高い評価を与えている。ノーベル賞で、日本人学者が授賞する以外には見せない日本への激賞ぶりだ。 

    『朝鮮日報』(11月25日付)は、「カタールW杯、日本サッカー 欧州に学んで欧州を超えた」と題する記事を掲載した。 

    日本の森保一監督が23日、2022年国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)カタール大会グループリーグ第1戦でドイツに21で勝つという波乱を巻き起こした後、「ドイツの皆さんは日本のサッカーの発展に大きく貢献してくれた。ドイツに学びながら日本の良さを発揮したい」と話した。背景を知らないと、まるでドイツをからかっているようにも聞こえるが、日本が過去十数年間、どのように代表チームを作ってきたのかを知れば、おのずとうなずけるだろう。

     

    (1)「日本には「和魂洋才」という言葉がある。「日本固有の精神(和魂)」と「西洋の技術(洋才)」を結び付けるという意味で、19世紀に近代化が始まった日本が掲げたスローガンだ。約150年過ぎた今も日本を説明するキーワードの一つになっている。日本サッカー協会は2005年、「JAPAN’sWay(日本の道)」というプロジェクトを始動させると発表した。目標は2050年までにW杯で優勝することとした。最も神経を使ったのはユース育成だった。始動期(5-8歳)、成長期(9-12歳)、挑戦期(13-17歳)、成熟期(18-21歳)と年齢を細かく分け、体系的なプログラムを導入した」 

    明治維新で、日本が欧米から科学・技術・制度・兵法などすべてを学んだ。それが、近代日本の基礎をつくった。サッカーもこれと同じ道を歩んできた。

     

    (2)「そのためには、何よりも欧州で先進のサッカーを学ぶことが最も重要だと判断した。同協会はユースクラブを運営する日本のプロサッカーリーグ「Jリーグ」と緊密に協議し、若い有望選手をできるだけ早く欧州に行かせた。2007年にオランダのチームに入った本田圭佑(36)を筆頭に、多くの有望選手が欧州に行った。このように欧州に行って今もプレーしている選手たちが今回のW杯代表最終メンバー26人のうち19人いる」  

    今回のW杯代表最終メンバー26人のうち、19人は欧州でプレーしている選手である。W杯の試合は、普段通りの雰囲気で戦える点で有利であろう。

     

    (3)「日本はさらに、近くドイツ・デュッセルドルフに「欧州進出前哨基地」を作るという計画を持っている。韓国の坡州NFC(韓国代表トレーニングセンター)のようにトレーニングから回復まで、すべての施設が完備されている所だ。欧州でプレーする日本の選手たちがここに随時集まり、共にトレーニングをして調整を行うことになる」 

    欧州には、日本サッカー協会から派遣されている駐在員がいる。この駐在員が、欧州サッカーの現況を日本へ伝えると同時に、選手送り込みの役割も果たしているのであろう。サッカーも情報戦だ。 

    (4)「その一方で、代表チームの司令塔には、日本でのみ選手・監督を務めた森保一監督を2018年から据えている。田嶋幸三日本サッカー協会会長は「日本の長所を生かして『日本らしさ』を出すことが必要だ」と理由を説明した。森保監督は速いパス回しで前進するサッカーをする。1人のスター選手のパワーではなく、11人が自分の役割を果たし、歯車のように動く典型的な「日本スタイル」を追求するのだ。普段から「日本を代表するということに誇りを感じる」としばしば言っている森保監督らしく、戦術も日本的な情緒に合わせてきた。成績不振のたびに日本国内で否定的な世論が高まり、辞任要求にさいなまれたこともあったが、協会との強い信頼のもと、しっかりと組織力を固めてきた」 

    森保一監督の人柄の良さは、地元長崎の人たちが異口同音に語っている。特に、人とのつながりを大事にしている。メンバー26人の心を一つにしており、「この監督のためには死んでも良い」というぐらいに結集しているという。

     




    (5)「ドイツ戦の前半では一方的に攻められ、先制ゴールまで許した。この状況に対して森保監督は後半に入りDFを4人から3人に減らし、その代わりMFを4人から5人に増やして中盤で人数的に優位にすることで勝負に出た。結局、交代出場したMF堂安律=独SCフライブルク=と浅野拓磨=独VfLボーフム=がそれぞれ同点ゴールと決勝ゴールを入れた。日本だけで指導力を磨いた森保監督が後半に投入したドイツ・ブンデスリーガの日本人選手2人が連続ゴールを決め、ドイツを破ったのだ。この試合が現在の日本のサッカーを象徴的に示していると評されている」 

    試合後半で、DFとMFの人数を入れ換えたのは、OB選手すら予想もできない戦術であったという。まさに、状況判断で戦術を変える柔軟性が森保一監督の真骨頂とされる。すでに、試合ごとのメンバーと戦術が出来上がっているとも言われる。今後も、世界のサッカー界を驚かす試合運びが見られるであろう。

     

     

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    中国は、インドネシアで日本が進めていた高速鉄道建設計画を落札寸前に横取りした。今度は逆のケースで、カリマンタン島で建設計画を立てていた水力発電所建設(総事業費2.5兆円)で住友商事が主導権を握った。インドネシア政府は、インフラ投資で中国の影響力の強まることを警戒してきたので、住商参加を歓迎している。

     

    『日本経済新聞』(11月23日付)は、「住商、インドネシアで水力発電『東南ア最大級』2.5兆円計画に参加 中国依存見直しで日本に秋波」と題する記事を掲載した。

     

    東南アジア最大級となる水力発電所の計画がインドネシアのカリマンタン島で進んでいる。中国が重要視する一大プロジェクトに住友商事が参加することが10月に決まった。日本企業が入り込めた背景には、インフラ開発の中国依存を引き下げたいインドネシア政府の思惑がある。日本は中国がインドネシアで先行する状況に危機感を募らせており、住商の参画が追撃のきっかけになる可能性がある。

     

    (1)「水力発電所を建設する北カリマンタン州はマレーシアと国境を接する。うっそうと樹木が生い茂る山の間を縫うように流れるカヤン川の上流に、今回の予定地がある。住商は10月6日、エネルギーの地場企業、カヤン・ハイドロ・エナジー(KHE)が事業主体を務める北カリマンタン州のカヤン水力発電所の建設に向け、同社と提携する覚書を交わした。インドネシア政府も喜びをにじませる。ジョコ大統領は今月14日、バリ島で開いた岸田文雄首相との首脳会談で、住商のカヤン水力発電所への投資を歓迎する意向を示した」

     

    計画ではカリマンタン島北部を流れるカヤン川に5つのダムを設けて発電所を建設する。KHEによると、2026年に最初のダム、35年に5つすべての完成を想定し、総事業費は178億ドル(約2兆5000億円)に上る大規模プロジェクトだ。総出力は9000メガワットと東南アジア最大級の水力発電所になる見通しだ。インドネシア側は、日本の参加を喜んでいる。最後まで頼りになるのは日本であるからだ。インドネシアは、高速鉄道建設で中国の甘言に乗せられて、日本を裏切った。今度は、逆のケースである。

     

    (2)「水力発電所の計画は08年からスタートした。中国国有企業である中国電力建設と現地のパートナーであるKHEがカヤン川の水力発電の事業化調査に着手。険しい地形や規制などにより、プロジェクトは難航した。規制当局の州政府の分割も重なり、自然への影響調査やダム建設の許可をクリアするのに10年かかったという。中国の広域経済圏構想「一帯一路」にも組み込まれる重要事業だ。大幅に遅れながらも環境がようやく整い、これからという時に住商が参加した。KHEのスルヤリ社長は、10月の調印式で「住商が入ることで、当初計画のスケジュールで確定したい」と述べた」

     

    中国が、最も重視していたこのプロジェクトが、土壇場で日本に取られた形だ。高速鉄道建設では、日本が建設予定地の測量まで済ませていた。中国は、この測量図を使って応札したのだ。モラルゼロの行為をした。今回の一件で、中国へ「天罰」が下った形である。

     

    (3)「日本の大手商社の参加で、推進力が高まることは間違いない。狙いはそれだけではない。底流にはインフラ開発での中国傾斜を見直そうとするジョコ政権の思惑もあるからだ。南シナ海の自国領ナトゥナ諸島の周辺では、中国と権益をめぐる対立を抱えている。中国に過度に依存すれば、痛手を被った高速鉄道の二の舞いになったり、対立して報復を受けたりしたとき、甚大な影響を被りかねない。リスクを分散する一手として、日本企業の参画を模索したもようだ」

     

    中国の過去の振る舞いで、インドネシア政府の信頼を裏切ってきた。それが今回、日本の逆転受注に結びついた要因である。日本の誠実な姿勢が買われたのであろう。

     

    (4)「カリマンタン島で進むのはこの水力発電だけではない。インドネシア政府は脱炭素化に関連する産業の育成を成長のテコと位置づける。温暖化ガスの排出量を60年までに実質ゼロにする目標も掲げた。同じ北カリマンタン州に建設を進めている環境に配慮した「グリーン工業団地」は、この発電所に密接に関連するプロジェクトだ。工業団地は電気自動車(EV)向けの電池の工場やアルミニウムの製錬所などの集積を目指すものだ。中国の習近平国家主席は7月下旬のジョコ氏との首脳会談で工業団地への協力を明言。いわば国策に近く、中国とインドネシアの合弁会社がテナントとして多く入居する」

     

    この発電所に密接に関連するプロジェクトとして、「グリーン工業団地」計画がある。発電所建設で、住商が登場したので工業団地の勢力図が変わる可能性が出てきたという。インドネシア側幹部は、「水力発電事業に他の日本企業を誘致し、潜在的にはグリーン工業団地にも参加してもらいたい」と語る。インドネシアも日本企業誘致に「色気」を見せているのだ。 

     

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    日本と英国が、連携強化に向かっている。EU(欧州連合)を脱退した英国は、アジアで新たなパートナーである日本との関係強化に乗り出す。日本は、米国との関係を保ちつつ、欧州での基盤づくりが不可欠だ。こうした両国の共通利益の上で、100年前の「日英同盟」再現を目指している。

     

    日英同盟は、1902~23年まで継続した。日本は、英国の議院内閣制を導入しており、政治の「手本」としてきた国である。互いに皇室制度を維持しており、共通点は多い。この日英が欧州とアジアで協調する。防衛面では、「準同盟国」の位置になっているのだ。

     

    『日本経済新聞』(11月21日付)は、「太平洋シフトで貿易拡大」と題する記事を掲載した。筆者は、 英貴族院議員・子爵 ヒュー・トレンチャード卿である。

     

    日英関係はこの10年ほどでかなり緊密になっており、「第2の日英同盟」ととらえていい。日露戦争や第1次世界大戦時の日英同盟は軍事同盟だったが、今日の日英の連携は安全保障のみならず、通商や投資など幅広い分野に及んでいる。

     

    (1)「欧州連合(EU)離脱後の英国は自由貿易を支持し、法や条約を順守する国家としてインド太平洋地域への関与を強めている。この地域には英国の歴史的な影響力がなお残り、オーストラリアやマレーシア、シンガポールなどの友好国も多い。なかでも多くの価値観を共有し、ともに議会制民主主義国家である日本との連携は極めて重要だ」

     

    英国は、アジアに多くの植民地を持っていた。それが、第二次世界大戦後に独立している。だが、現在も英国連邦を形成しているので、アジアへの回帰はごく自然なものだ。

     

    (2)「日英の安全保障協力はさらに拡大するだろう。2021年は英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本に寄港した。22年春の日英首脳会談では(自衛隊と英軍が共同訓練をしやすくする)円滑化協定で大筋合意した英国がイタリアと進めている次期戦闘機の共同開発に、日本が真剣に参加を検討しているのは非常に喜ばしい。1905年に(日本海海戦で)ロシア艦隊を破った日本の艦船の多くは英国で建造された。今回は、日本がコンソーシアム(共同体)に参画して英国とともに次期戦闘機を開発することになるだろう」

     

    自衛隊と英軍の「円滑化協定」は、共同演習を可能にする。日本は、英国と防衛面で協調行動が可能になるメリットが大きい。次期戦闘機開発では、英国・イタリアの三ヶ国が協力体制を組む。2035年に自衛隊への配備を目指すが、英伊の両国の販路を使い販売を考えている。

     

    日本は、防衛費の対GDP比2%(現在1%)と大幅な拡大を目指す。ただ、日本の装備品コスト高が続けば財政を圧迫する。そこで、共同開発・生産する次期戦闘機では、英国やイタリアの販路を通じて販売する方針だ。共同開発は、日本にとってもメリットが大きい。

     

    (3)「環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟は英国にとって重要な機会となる。TPP11カ国プラス英国は(英離脱後の)EUに並ぶ巨大な自由貿易圏であり、その成長力はEUをはるかにしのぐ。TPP加盟が英国とEUの貿易に与える影響も軽微とみられており、英国の貿易や投資に大きな利益をもたらす。もともと米国が日本をパートナーとして主導してきたのがTPPだ。(米国の離脱がなければ)英国が加盟しても発言権は非常に小さかったと思う。日本は英国の加盟申請を積極的に受け止めてくれており、英国もTPPの将来に重要な役割を果たす用意がある。TPP11カ国のうち6カ国は英連邦(コモンウェルス)のメンバーであり、英国のコモンロー(判例法)を受け継ぐ国も多い」

     

    英国は、近くTPP加盟が正式に決定の見込みである。かねてから、英国はTPP加入後、中国を加盟させないという強い態度を表明してきた。中国には、香港で一国二制度破棄という「煮え湯を飲まされた」だけに、強い反感を持っており、「中国絶対拒否」という姿勢だ。

     

    (4)「英国はほんの数年前まで、中国が民主主義や自由貿易システムと協調するだろうと考えていた。中国との貿易機会は最大化したいが、香港での(民主化運動を抑圧した)国家安全維持法の施行などをふまえ、現在は中国への懸念を強めている。ウクライナ侵攻で英国はロシアに対する制裁を主導してきた立場にある」

     

    このパラグラフでは、中国の「裏切り行為」を非難している。

     

    (5)「今の英国は、ミドルパワーと言うべきなのだろう。人口は日本のほぼ半分であり、国内総生産(GDP)規模も小さい。だからといって、英国の経済力を無視できるものと考えるのは誤りだ。EUの規制に拘束されなくなり、これからは金融サービスなどで競争力を発揮できるだろう。(文化や価値観で他国に影響力を及ぼす)ソフトパワーも英国の強みだと考える。EU離脱後の英国では首相交代が相次いでいる。特に対外政策では、保守党としてスナク新政権をしっかり支えることが極めて重要になる」

     

    英国のソフトパワーは健在である。金融や情報では、圧倒的な優位性を持っている。さすがは、かつての覇権国である。日本は、英国から多くのことを学ぶ機会ができた。

     

     

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