勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    初の開催となった11日の日米比首脳会談では、海洋安全保障や経済面での協力が前面に打ち出された。中国は、東シナ海や南シナ海での海洋進出に拍車をかけ、経済的な威圧も強めている、日米比三カ国は、結束してこれを抑止しようとするものだ。

     

    昨年11月、岸田首相はフィリピンのマルコス大統領と会談した。日本政府による装備品提供などの新たな枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」や、自衛隊とフィリピン軍の相互往来をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」など安全保障分野での連携が中心テーマとなった。こうして日比両国は、すでに安全保障で固く結び合っている。

     

    『毎日新聞』(4月12日付)は、「日米比首脳会談、バイデン政権が熱望『格子状の同盟』で中国に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    初の開催となった11日の日米比首脳会談は、海洋安全保障や経済面での協力が前面に打ち出された。

     

    (1)「バイデン米大統領は11日の会談冒頭で、「フィリピンの航空機、艦船、軍が南シナ海で攻撃されれば、相互防衛条約(の防衛義務)を発動する」と、フィリピンが実効支配する南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンドトーマス礁)で威圧を強める中国に警告した。左右に座る日比首脳に視線を送りながら「米国の防衛義務は強固だ」とも強調した。

     

    中国は、フィリピン船へ放水するなど、嫌がらせを続けている。米国が、こういう形で中国へ警告すれば、少しは自粛するであろう。フィリピンは、米国の強い後ろ盾を得て安堵しているに違いない。

     

    (2)「今回の会談は、米国の強い意向で実現した。本来なら国賓待遇の首脳の訪問中に他国の首脳を招くことはない。米国は、2022年に発足したマルコス比政権がドゥテルテ前政権の中国寄りの姿勢を一転させ、米比の安保協力を進めたことを評価。11月の大統領選が近づくと外交に割ける余力が減ることから、岸田首相の訪米に合わせた「歴史的な3カ国首脳会談」(バイデン氏)にこぎ着けた」

     

    フィリピンは、岸田首相が国賓で招待されている中で、あえて三カ国首脳会談へ臨んだのは、それなりの決意を秘めている結果であろう。体裁に拘らず、日本との関係強化を選んだに違いない。メンツよりも国益選択である。

     

    (3)「バイデン政権は、米国を中心に同盟国がつながる「ハブ・アンド・スポーク」の2国間型の同盟関係から、同盟国同士が関係を強化してネットワーク化する「格子状」の同盟関係に進化させようとしている。会談直前の7日には「海上協同活動(MCA)」と称し、南シナ海で自衛隊と米、比、オーストラリア海軍による共同訓練を実施。中国の威圧に対抗するために米比が23年に再開した合同パトロールの拡大版となった。南シナ海で中国の攻撃的な行動が強まる中、フィリピンは日豪などとそれぞれ安保協力を強化してきた。近年はより大きな枠組みに昇華すべきだとの声が出ており、シンクタンク「ストラトベースADR研究所」のビクター・マンヒット代表は「バイデン政権の『格子状』の同盟関係は、比側が求める未来図とも一致した」と説明する」

     

    フィリピンは、中国に裏切られた関係にある。中国から甘くみられたのだ。それだけに、多国間との協定を縦横無尽に結んで、フィリピンの安全保障を維持する戦術に転じている。中国は、周辺国がこのように「格子状」で重層的な安保体制を取っていることをどのように捉えているのか。寡聞にして聞かないのだ。

     

    (4)「フィリピンでは、中国との経済関係が弱まるとの見方が強まっている。このため、マルコス氏は今回の会談について「経済安全保障の促進にとっても重要だ」と強調し、インフラなど安保以外の分野での連携も確認した。首脳会談で合意したフィリピンの首都マニラの南北を結ぶ「ルソン経済回廊」の整備は、米軍撤退(1992年)前に基地があったスービックやクラークをつなぐインフラの建設が目玉だ。マルコス政権は、スービックとクラークを結ぶ鉄道建設で中国の支援を断った経緯があり、日米が中国の「穴」を埋めることで存在感を高める狙いもあるとみられる」

     

    フィリピンは、安保体制の強化だけでなく、経済面での日米比の関係強化を求めている。フィリピンの「ルソン経済回廊」の整備で日米が協力する。また、その見返りにフィリピンからニッケルの提供を受ける。EV(電気自動車)生産には、不可欠なレアメタルである。

     

    (5)「電気自動車の電池に欠かせない希少金属のニッケルについても、インドネシアに次ぐ世界2位の生産国であるフィリピンをつなぐサプライチェーン(供給網)を構築する。中国が東南アジアでニッケル獲得の動きを強める中、3ヶ国の連携で安定供給の強化を図る考えだ」

     

    フィリピンが、世界2位のニッケル埋蔵量であることは強みである。これは、日米比をつなぐ貴重な素材だ。

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    米マイクロソフト(MS)は9日、日本における人工知能(AI)インフラの強化を目指し、今後2年間で29億ドル(約4400億円)を投資すると発表した。MSによる日本への投資額としては過去最大である。発表資料によると、AIとロボット工学に特化したラボを日本に開設し、サイバーセキュリティー分野で日本政府との協力関係を深める計画だ。

     

    MSが、日本で4400億円という巨額投資を行う背景はなにか。それは、有望市場であることだ。独スタティスタによると、生成AIの世界市場は年平均約2割のペースで成長し、30年には約30兆円となる見通し。日本は米国、中国に続く規模で、ロボット関連のほか生成AIを活用した日本発のサービス開発で生まれる国内のデータセンター需要を取り込む。MSにとっても十分に採算に乗る見通しであろう。

     

    AIは企業の生産性向上に貢献する一方で、様々な産業で人間から仕事を奪う可能性が指摘されている。マイクロソフトは、今後3年で非正規雇用を含む国内300万人を対象にAIの活用スキルを学べる教育プログラムを提供し、転職やキャリアアップを後押しする。

     

    『日本経済新聞』(4月10日付)は、「『日本の競争力はAI導入が左右』、マイクロソフト・スミス社長 支援拠点を都内に設立」と題する記事を掲載した。

     

    (1)米マイクロソフトが、日本で約4400億円を投じて生成AI(人工知能)の計算基盤となるデータセンターを整備する。日本経済新聞社の単独取材に応じたブラッド・スミス社長は、「人口が高齢化し減少する中、持続的な経済成長にとってAIは不可欠な要素だ」と述べ、「日本経済の競争力はAI導入にかかっている」と強調した」

     

    先進国の中で、最も早く労働力人口が減少するのは日本である。これをロボットとAIでカバーできれば、2026年以降も潜在成長率1%を維持できるという試算が出ている。日本にとっては、真剣勝負で臨むべきテーマである。

     

    (2)「米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、生成AIが生み出す経済的価値は世界で年2.6兆~4.4兆ドル(約390兆~670兆円)に達すると見込まれている。AIの開発や運用に使うデータセンターや半導体の確保は国家の産業競争力を左右するようになっている。競合する米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はサウジアラビア、米グーグルは英国などでそれぞれデータセンターの立ち上げを計画している。スミス氏は、「世界各国の政府にとってローカルのインフラを含むAIの導入が国家の優先事項になっている」と説明した」

     

    AIについては、いろいろと欠陥が指摘されている。だが、労働力不足を緩和するには不可欠である。弊害問題は、AIの利用法を誤った場合であろう。

     

    (3)「日本におけるAIの導入を支援するため、マイクロソフトは新たな研究施設を東京都内に設置する。スミス氏は、「日本が強みを発揮するためにはロボット開発にAIを導入していくことが重要だ」と話し、労働生産性を高める自動化技術を大学と共同で研究する構想を明らかにした日本政府とはサイバーセキュリティー分野でも連携する。スミス氏は「サイバー攻撃は国家の脅威になっている。特に中国やロシアによるランサムウエア(身代金要求型ウイルス)が活発化している」と述べ、「大手ハイテク企業と政府が緊密に連携していくことが必要だ」と訴えた」

     

    少子高齢化は、日本だけの問題ではない。今のところ日本で顕著だが、先進国とアジアなど発展途上国でも兆候が見えている。となると、日本が少子高齢化をAIとロボットで克服できれば、他国に取っても福音となろう。

     

    (4)「24年は米大統領選をはじめ、世界各地で重要選挙が相次ぐ。生成AIの急速な普及は、偽情報の拡散による世論の分断といったリスクも抱える。欧州連合(EU)の欧州議会は3月にAIに関する世界初の包括的な法規制案を可決した。日本は23年に主要7カ国(G7)がAIのルールを話し合う「広島AIプロセス」を主導した。スミス社長は、「日本政府は世界の舞台でリーダーシップを発揮している。米国や英国、カナダ、EUを結びつける上で非常な影響力を持っている」と話し、各国に協調を促す日本の役割に期待感を示した」

     

    AIは、利用法をあやまらなければ、社会にプラスとなる。一方では、これを悪用する政治勢力も存在する。ニセ情報をいかに排除するか。これもAIの利用しだいだ。

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    AI(人工知能)普及がもたらす最大の悩みは、消費電力量が膨大であることだ。データの計算や保存を行うデータセンターを新設する企業が相次ぎ、日本では2050年に4割弱も増えるとの予測が出ているほどだ。こうした悩みを解決するのが、NTTが開発した光半導体を使った次世代通信(6G)「IWON」である。日本初の技術開発である。 

    NTTが、米サンフランシスコで現地時間10~11日に開いた技術イベントで、IWONの実証実験成功が公開された。英国では約89キロメートル、米国では約4キロメートル離れたデータセンターを1000分の1秒以内というわずかな時間差でつなぎ、一つのインフラのように運用できたと公開した。 

    今回の日米首脳会談では、「日米企業は、IOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めて。6Gの切り札として国際標準化へ向けた動きが活発化する。 

    『日本経済新聞』(4月13日付)は、「NTT、光技術で世界標準へ 次世代通信『IOWN』実証成功 『iモード』教訓 米で布石」と題する記事を掲載した。 

    NTTが、光技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」で世界市場を狙う。離れた場所にあるデータセンターをつなぐ実証に英国と米国でそれぞれ成功した。NTTが米サンフランシスコで現地時間1011日に開いた技術イベント会場には独自開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi(つづみ)」やセキュリティー関連の展示が並んだ。IOWNは会場の目立つ場所に展示ブースを構え、英国と米国での実証実験の結果も発表した。

     

    (1)「生成AI(人工知能)のデータ処理を担うデータセンターの重要性は急速に高まる。ただ、都市部で設置を増やすにはスペースの制約があった。複数のデータセンターをつないで遅延がない運用ができれば、設置場所の選択肢が郊外に広がる。NTTが2019年5月に構想を表明したIOWN。得意とする光通信技術を応用し、少ない電力で大容量のデータのやり取りを可能にする。2030年以降には現在のインターネットと比べて消費電力を100分の1まで減らせると見込む。段階的に商用化を進めている」 

    NTTは、半導体内の電子処理を電気信号から光に置き換える「光電融合技術」を開発し、大幅な消費電力の削減を実現させるメドがついた。すでに製品化へ向けて動き出している。演算用の半導体を手掛けるインテルや、記憶用の半導体を手掛けるSKハイニックスと必要な技術の擦り合わせなどで協力を要請した。NTTは、この技術を核にして次世代通信基盤「IOWN」の実用化に成功した。 

    IWONは、2028年度に伝送容量125倍を処理し、32年度に電力消費100分の1削減を達成できると見込んでいる。つまり、現在よりも125倍のデータ伝送を1%の電力消費で行うのだ。夢の実現である。 

    (2)「NTTは、IOWN構想推進で米国を重視した。20年1月にソニーグループ、米インテルと国際団体「IOWNグローバルフォーラム」を設立。拠点は日本でなく米国に置いた。インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO、当時)や米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOらビッグネームと会い、次々と提携をまとめた。なぜ米国なのか。IOWNの優位性を売り込んでも「米国には米国の優れたサービスがあるという議論になってしまう。だから最初に仲間に引き込んだ」(NTT澤田会長)」 

    IWONは、国際標準化することで世界通信市場を席巻できる。それには、米国の力を借りるほかない。米国を仲間に引き入れることだ。

     

    (3)「沢田氏は、「ハードウエアのメーカーでないNTTにとって、IOWNをいかに製品やサービスに応用できるかが重要だ。テック大手のGAFAMについても「ライバルであり、お客さんでもある」と語る。「日本に閉じこもらず、世界標準にする」。澤田氏がこの目標を掲げる背景にはiモード(注:携帯電話でのメールのやりとり)の苦い経験がある。iモードは自社技術を押しつけようとして海外に普及しなかった。IOWNでは初期段階から海外企業を含めた仲間づくりに力を注いできた」 

    NTTは,iモードが世界標準になれなかった理由として、海外での「仲間づくり」に失敗したことを挙げる。これを教訓に、IWONは米国という最大の仲間をつくり、「6G」の骨格を担う。 

    (4)「道のりは半ばだ。グローバルフォーラムの参加企業は約140社まで広がったが半分は国内勢。残る半分のうち米企業は数社にとどまる。研究開発の成果の開示義務を課すNTT法が足かせになっている。だが、そのNTT法は転機を迎えている。改正案が4月5日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。オープンイノベーションを探るうえでの障壁は取り払われる見通しだ」 

    NTTは、オープンイノベーションによって世界中から研究に参加できる仕組みをとっている。これが、IWONの改良に繋がり世界へ普及させる基盤になるからだ。 

    (5)「NTTはパートナー拡大の布石を打ち始めている。米国に拠点を置く研究機関「NTTリサーチ」を通じて米ハーバード大に最大170万ドル(約2億6000万円)を寄付することも技術イベントで発表した。優秀な研究者が集まるトップ大学との関係を深める。今回の日米首脳会談では「日米企業はIOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めてという」 

    NTTは、ハーバード大学へ最大170万ドルを寄付して、IWONの研究普及を目指す。米国企業が、よく行う手段である。日本企業がこれに倣ったものだ。今回の日米首脳会談の政府間の文書でIWON普及への文言が入った。大きな前進である。

     

    次の記事もご参考に。

    2024-04-11

    メルマガ557号 日本経済「再飛躍」は確実、水素エネルギーと光半導体の2技術「国際標

     

     

     

     

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    日本は戦後、太平洋戦争開戦の贖罪から外交面で一歩も二歩も引き下がる姿勢をとり続けてきた。それが、逆に中国の領土拡張的な動きを押し上げる逆効果をもたらした。中国が、二言目には日本の太平洋戦争責任に言及することにあらわれている。その日本が、西側陣営の核の一つとして中国への抑止力として立ち上がる。日本は、太平洋戦争で甚大な被害を与えたフィリピンの「僚友」として、ともに中国抑止へ動き出した。

     

    『日本経済新聞』(4月12日付)は、「日米比、原発・半導体で供給網 初の首脳会談 中国に『深刻な懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    日米フィリピン3カ国の首脳は4月11日(日本時間12日午前)、ホワイトハウスで会談した。エネルギーや半導体など重要物資について中国に依存しすぎないサプライチェーン(供給網)をつくる。南シナ海における「中国の危険で攻撃的な行動に深刻な懸念」を共同文書に盛り込んだ。


    (1)「岸田文雄首相、バイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領が参加した。日米比3カ国による首脳会談は初めて。首相は会談の冒頭で「国際秩序の維持・強化に向けて同盟国・同志国との重層的な協力が重要だ」と指摘した。「インド太平洋地域の平和と繁栄のために日米比の協力のさらなる強化を確認したい」と期待を示した。日米はオーストラリアや韓国、インドといった同志国との3カ国や4カ国の枠組みを活用して国際秩序を維持する戦略を描く。フィリピンは南シナ海で中国の覇権主義と向き合う。11日の3ヶ国会談はこれまで日米比の協力の柱だった安全保障に限らず、経済面での結びつきを強めた」

     

    中国は、みすみすフィリピンを西側陣営へ追いやる結果になった。中国が約束したフィリピンへの経済援助を空手形にしたからだ。中国は、フィリピンを属国のように扱い、外交的に大きな損害を被っている。「一寸の虫にも五分の魂」を忘れた中国の振舞が、フィリピンの逆襲を招くことになった。中国は、防衛面で大きなしくじりになったのだ。

     

    (2)「中国が、経済力を背景に影響力を行使する威圧に「強い反対」を表明し、日米でフィリピンを支援しながら「強靱(きょうじん)で信頼性のある多様な供給網」をつくるとした。半導体の供給網確保へ人材を育成する。フィリピンの学生が日米の主要大学で高い水準の研修を受けられるようにする。電気自動車(EV)の電池に欠かせないニッケルを念頭にフィリピンを含めた重要鉱物の安定した供給網づくりを進める」

     

    フィリピンの工業化には、日本の広範な支援が不可欠である。人材教育のために、日米はフィリピン留学生を受入れる。工業化促進には、先ず人材養成が必要だ。フィリピンはニッケル資源保有で世界2位である。日米にとっては、貴重な資源国である。

     

    (3)「民生用の原子力に関する知識を持つ人材育成で協調する。フィリピンではIHIや日揮ホールディングスなどが出資する米新興企業のニュースケール・パワーが次世代原発「小型モジュール原子炉(SMR)」の建設を計画する。日米でフィリピンの港湾や鉄道などのインフラ整備を後押しする。首都マニラを含む地域に「ルソン経済回廊」を立ち上げる」

     

    「ルソン経済回廊」とは、ルソン島にあるスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ地域で、港湾、鉄道、クリーンエネルギー、半導体の供給網(サプライチェーン)関連のインフラを整備する。また、フィリピンの情報インフラを整備するため、オープン無線アクセス・ネットワークの技術普及支援にも乗り出す。

     

    (4)「海洋安全保障をめぐっては南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島のアユンギン礁近くで中国船がフィリピンの船舶に衝突したり、放水銃を使ったりして緊張が高まっている。

    日米がフィリピン沿岸警備隊の能力向上を支援する。今後1年以内に3カ国の海上保安機関がインド太平洋地域で共同訓練を実施する。中国が民兵や民間船を使って南シナ海の実効支配を進める「グレーゾーン戦術」に結束して対処し、抑止力を高める」

     

    中国船が、フィリピン船に向って放水するなど、無謀行為を行っている。中国の主張する南シナ海領有権は、国際仲裁裁判所から100%否定されている。中国が、南シナ海で居座っているのだ。

     

    (5)「海上防衛の協力も深める。オーストラリアを含めた日米豪比4カ国で7日に南シナ海で海上自衛隊と各国海軍による本格的な訓練を初めて実施している。共同文書では台湾海峡の平和と安定の重要性を共有した。海洋をめぐる協力を促進する協議の枠組みをつくる。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での力による一方的な現状変更の試みに反対した」

     

    マルコス政権による中国への厳しい対応は、国内世論が好意的に受け止めている。民間調査会社が23年末にまとめた全国世論調査で、南シナ海への対応を評価すると答えた人は58%にも上った。「外交を通じて領有権をさらに主張すべきだ」との意見は、7割を占めている。

     

     

     

     

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    台湾のTSMCは、今や世界一の業績を誇る半導体企業である。筑波市に半導体研究所を設けており、日本の半導体製造装置や素材企業が参加している。最先端半導体には、日本企業の協力が不可欠であるからだ。その日本が、国策半導体企業ラピダスを設立してTSMCが手がけようとする「2ナノ」(10億分の1メートル)の最先端半導体へ進出する。これに、半ばショックを受けているのがTSMCだという話が持ち上がった。 

    『東洋経済オンライン』(4月11日付)は、「TSMCが日本の補助金よりも欲した“2つの取引先”」と題する記事を掲載した。 

    今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト林宏文氏が、『TSMC世界を動かすヒミツ』を発刊した。以下は林氏とのインタビューである。

     

    (1)「TSMCが、日本で工場を建設する意義や目的は、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べている。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っている。もう1つの重要な顧客は、アップルだ。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費するが、それを供給しているのはソニーグループだ」 

    TSMCは、トヨタとソニーの顧客を得たくて日本へ進出したと指摘している。ならば、熊本第一工場だけで済んだはずだ。それが、第二工場進出を既に発表している。第四工場まで九州へ建設するのは、日本の半導体製造の適地性を認識した結果であろう。トヨタとソニーは、「入り口」に過ぎない。 

    (2)「TSMCが、米国をより重視してきたのは当然だ。その姿勢に、変化が生じているのではないかと感じている。TSMCの経営陣は当初、米国のアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、米国政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束したからだ。今となっては、米国政府はTSMCの有力ライバルであるインテルに、より大規模な支援を行うことが明らかになっている。TSMCの米国新工場の建設はいろいろの要因で遅れている」 

    TSMCは当初、米国を高く評価していたが、しだいに熱が冷めている。米国政府が、TSMCの有力ライバルであるインテル支援に傾いているからだ。この反動で、TSMCは日本へ軸足を移していることは間違いない。日本の「物づくり文化」を頻りと絶賛しているからだ。

     

    (3)「日本が半導体産業を振興すること自体に成功のチャンスがあると思う。半導体製造装置において、日本は米国、オランダと並ぶ最重要国です。多くの半導体材料でも、日本企業がトップシェアを掌握している。これは日本企業が長期的なR&D(研究開発)を重視してきた成果だ。息の長いR&D重視姿勢は、台湾よりも日本が顕著だ。製造装置や材料の強みがさらに増す政策であれば、日本にとって大きな価値があると思う」 

    日本の半導体製造の潜在的な能力は、台湾や韓国をはるかに凌いでいる。製造装置・素材・生産とワンセット揃っているのは、世界で日本だけだ。 

    (4)「ラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがある。日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選んだ。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがある。しかし失敗に終わった。企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきだ。その企業はUMC(聯華電子)である。UMCはTSMC同様、台湾政府の支援で生まれた。UMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離された。UMCが、IBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと考えられる」 

    IBMは、「2ナノ」で試験生産に成功している。ただの「特許」ではない。ましてや、日本は「一を聞いて十を知る」潜在的な半導体製造能力を持っている。台湾のUMCと同列に扱われては困るのだ。日本は、大学を始め研究機関参加の「オールジャパン」で取組んでいる。

     

    (5)「IBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? ラピダスはどうやって学ぶのだろうか」 

    日本は、天才的な物づくりノウハウを持っている。日本を見くびっては困る。半導体で言えば、台湾も韓国も日本の後発国である。 

    (6)「トヨタは、ハイブリッドカーや水素カーを世界に普及させる夢を抱いている。そのために先端半導体が不可欠だ。自動車産業の強みをどう伸ばすかが重要で、そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」 

    TSMCは、トヨタやソニーの半導体を全て受注したいのだ。それは、ビジネス動機である。日本の産業政策としては、TSMCに半導体の製造付加価値を全て吸い上げられていたのでは、国家経済が発展しないのだ。日本は、半導体植民地にならない。

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