勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

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    日本は、世界一の高齢社会の道を突き進んでおり、灰色にみえるがそうではない。これまで貯め込んできた家計貯蓄2100兆円を、有利に運用しさえすればそれだけでも日本は潤うはずだ。時代は今や、貯めることから運用する時代へと大きく動いている。

     

    訪米中の岸田文雄首相は21日、世界の金融関係者が集まる「ニューヨーク経済クラブ」で講演し、日本の資産運用業に新規参入するよう呼びかけた。特区創設を柱に規制改革を行い、ビジネス環境を整えると表明した。

     

    『ブルームバーグ』(9月22日付)は、「プロ運用者を海外から呼び込みへ 首相改革案を市場関係者は歓迎

     

    「ニューヨーク経済クラブ」で21日(日本時間22日未明)、居並ぶ米財界人を前に講演した岸田文雄首相。「30年間毎年日本経済に注目してきたが、今が最もポジティブだ」。先日、世界的に影響力のある投資家と会った際、こうした見方を伝えられたと披露した上で、「日本に投資いただくことを強く求めたい」と訴えた。

     

    1)「首相の講演を受けて、フィデリティ投信のデレック・ヤング社長は「政府が進める改革により、2000兆円の金融資産を持つ個人の選択肢が増え、長期的な資産運用ができる投資環境の一段の整備が進めば、新NISA(少額投資非課税制度)もより有効に活用されるだろう」と指摘。「われわれもこのような取り組みを歓迎しており、意見交換などの形で協働させていただいている」とコメントした」

     

    岸田首相のニューヨークでの講演は、米金融関係者の日本進出をプッシュするであろう。すでにこの春頃から米企業の大物は相次いで来日していた。中国の地政学リスクから、日本への進出を急いでいたからだ。こういう流れの中で、東京の国際金融都市化への動きと相まって、日本の経済的な位置が上がっている。

     

    2)「首相が打ち出したのは、海外の資産運用業者の参入を促進するため、資産運用特区を創設し、英語のみで行政対応が完結できるようにする規制改革。また、日本独自の商慣習や参入障壁を是正し、新規参入者が年金基金などのアセットオーナーから運用委託を受けやすくする支援プログラム(EMP)を整備する考えも示した。国内の個人金融資産の半分以上が現預金。海外運用業者の参入や独立系の資産運用会社が増えれば業界全体のレベル向上や活性化が進む。資産運用額が増えることで国民の資産所得の拡大や企業の成長に資金が向かうことを期待する」

     

    岸田首相は、東京の国際金融都市化を「金融特区」という具体的なイメージで呼びかけている。この下準備は、すでに東京都が具体的に行っている。國と都が一体化して、海外の資金運用専門家を日本へ集めて、2100兆円の家計資産の有効活用を進め、日本経済の地盤引上げにも寄与するという相乗効果を目指している。これは、日本経済の成長に不可欠になっている。賃上げによるフローの増加と同時に、ストックの利回り向上が目的である。

     

    3)「東洋大学の野崎浩成教授は、「家計のマネーが資本市場を経由し、スタートアップを含む経済成長の源泉として活用されることは、日本経済全体にとって好循環につながる」として、「岸田政権が目指す資産運用立国の目標は極めて正しい」と評価する。一方、「資産所得は必ずしも投資の果実のみを示すものではない。年金のようにある意味隠れた金融資産の存在にも目を向けるべきで、金融資本市場における広い意味でのプレーヤーの強化が不可欠だ」とも指摘。独立系運用機関の育成には時間がかかるとして、日本の運用市場で大きなシェアを握る大手金融グループの運用会社の機能強化などに焦点を当てた改革がカギになるとの見方を示す」

     

    日本の家計を米国型に引き上げるには、ストックの利回り向上が不可欠である。それには、資産運用の専門家を幅広く育成しなければならない。その手始めに、海外の資産運用専門家の日本進出が必要である。

     

    4)「金融庁が4月に公表した資料によると、投資信託の設定や運用を行う投資信託委託業者は2022年に109社と、17年の100社とほぼ変わらず。日本の大手資産運用会社の多くが金融グループに属する中、人材不足などの課題を抱える。日本証券業協会の森田敏夫会長は20日の会見で、資産運用立国の実現に向けては、NISA拡充など投資商品の品ぞろえの充実とともに「プロの運用者をいかに増やしていくかが車の両輪だ」と指摘。国内でそうした人材が足りなければ、海外から呼び込むための環境整備が重要だと述べた」
     

    日本が、資産運用立国の実現に向けて動き出すには、運用専門家が増えなければならない。その運用の元手は、すでに2100兆円もあって不足はない。これから、日本の資産運用は大きく変わりそうだ。

     

     

     

    テイカカズラ
       


    中国は、4000年の歴史を持つ國だけに権謀術策に長けている。相手陣営を結束させないように離間を図る術まで用意している國だ。中国の福島処理水放出をめぐる理不尽な反対は、韓国の同じ反対派を後押しする意図が隠されている。韓国左派は、この中国の術に嵌まって反日運動を始めている。日韓が、一本にまとまらないようにクサビを打ち込んだ積もりになのだ。日本からみれば、中国の策謀は底が割れている。 

    『中央日報』(9月19日付)は、「韓日の対立が問題? 中国が見る韓日米協力の限界」と題するコラムを掲載した。筆者は、サゴン・クァンスク中央日報中国研究所研究員である。 

    8月に開催された米キャンプデービッド3カ国首脳会談でさらにアップグレードした韓日米関係を中国はどう見ているのだろうか。3カ国間のそれぞれ異なる利害関係のため協力は制限的であり、特に反中戦線を形成するのは容易でないという分析があり、注目を集めている。中国が自らを慰安する分析かもしれないが、韓日米3カ国協力の未来を眺める中国の思考が表れているという点で意味がある。

    (1)「中国国際問題研究院アジア太平洋研究所の項昊宇研究員は6日、中国時事誌『世界知識』への寄稿で、韓日米協力の限界として3つの事項を指摘した。1つ目は韓日間の長い凝りと不信、2つ目は米国を間に置いた韓日間の競争、3つ目は中国に対して韓日米がそれぞれ異なる利害があり、米国が意図するような反中同盟は難しいという主張だ。特に韓民族は自尊心が強く、米国が韓国に対して日本より低い待遇をする場合、韓日米の連携は大きな打撃を受けると予想した。韓日米協力に対する中国学界の視点の一部を見ることができるため、項研究員の寄稿の核心内容を要約して紹介する」 

    中国は、日韓を一本化かさせないように手練手管を使ってくるだろう。その手に乗らぬことだ。 

    (2)「キャンプデービッド首脳会談で韓日米の公式安保協約があったが、これは3カ国関係の発展が依然として制限的であることを見せている。対内外的という状況で見ると、3カ国協力に対する各国の温度差は相変わらずであり、「ミニNATO」式3カ国軍事同盟結成のための明確な計画もまだないからだ。今後、3カ国国協力は多くの制約に直面するだろう。韓日関係が改善しても、両国間には過去の問題や独島(ドクト、日本名・竹島)領有権紛争など長く累積してきた問題がいつでも浮上する可能性がある。これは長期的に韓日関係の発展に影響を及ぼす」 

    日米韓三カ国が、ミニNATOを結成するのは時間がかかる。日韓は、感情面でのもつれが大きいからだ。ただ、韓国経済が低成長率で苦しめば、左派勢力は大幅に後退するはず。現在は派手に騒いでいるが、「86世代」(1960年代生まれで80年代に学生生活を送った反日米派)が引退すれば状況も変わる。反中国が圧倒的多数を占めよう。

     

    (3)「韓国は国内政治の分裂が激しく、保守派と進歩派が激しく対立している。日本は韓国の政権が交代すれば文在寅(ムン・ジェイン)政権が朴槿恵(パク・クネ)政権当時に妥結した「慰安婦合意」を覆したのと似たことが再発しないか懸念している。韓国国民は日本の軍事大国化に対して恨が残っている。特に日本が、「北朝鮮の挑発」を口実にまた軍事的に朝鮮半島に魔の手を伸ばさないか懸念している。それで韓国国民の多数は韓日が同盟を結ぶことに同意していない」 

    「86世代」が引退すれば、左右対立の状況は変わるだろう。日米韓三カ国の結束力が強まるはずだ。 

    (4)「韓日の安保関心事が異なるだけに、日本と韓国に対する米国の態度の差は韓国の積極性に影響を及ぼしかねない。米国は、韓日米の連携に中露朝牽制という目的を付与したが、日米に比べて韓国は中露の脅威に対する認識が明確でない。韓国が日米と軍事・安保協力を強化するのは北朝鮮を防いで抑止するためであり、日米の力を借りて韓国主導の朝鮮半島統一のための環境を作ることが根本的な目的だ。しかし両国関係の地位であれ、外交的な努力であれ、米国の立場では韓米同盟よりは日米同盟がはるかに重要だ。韓民族は自尊心が強く、いつも日本と競争しようという態度が目立つ。米国が韓国と日本を公平に待遇しない場合、これは韓国人の敏感な部分に触れることになり、3カ国協力に参加する韓国の積極性に影響を与えるだろう」 

    韓国は、北朝鮮の動きしだいで日米と共同歩調を取らざるを得ない。韓国の南北統一への夢は次第に下がっている。今後、韓国の経済力は落ちるので、北朝鮮を救済する力がなくなるとみるべきだ。統一への夢は冷めるであろう。20~30代には、統一願望が極端に低下している。

    (5)「中国との利害関係も韓国・日本と米国の間には差があり、中国牽制の温度差が明確だ。米国は中国を「主要戦略的競争者」と規定したため「中国牽制」は韓日米3カ国の連携が目指す点であるのが明確だ。しかし韓日米3カ国の対中国戦略上の必要と中国に対抗する能力および動機などはそれぞれ異なる。韓日両国は依然として中国市場を非常に重要視するため、米国の対中国「デカップリング」に同調するのに矛盾の心理がある。利益は追いながらも被害は最大限に減らすために注力し、正常な経済・貿易協力に対する影響を防ごうと努力している。今後も中国牽制という議題で米国に同調する韓国・日本の歩みは選択的、制限的であるはずで、米国が韓日米の反中同盟を構築するのは決して容易ではないはずだ」 

    中国が、台湾侵攻する場合、日韓は傍観しない。そういう意味で、中国は日韓を甘くみていると大間違いである。つい10年前の中国の実力を知っている日本が、中国に怯えるようなことは決してない。中国の「お里」を知っているからだ。

     

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    中国は、日本の処理水海洋放出に対して激しく反発しているが、「諸刃の剣」になっている。中国国内の海鮮売上げが3分の1にまで減ったという情報が出てきた。中国政府が指摘するように、日本の海産物が危険ならば、海は一つで繋がっている以上、中国海産物も危険という見方が増えているのだ。

     

    『レコードチャイナ』(9月19日付)は、「山東省の港町で処理水放出後に大きな打撃 魚が売れず価格急落」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディアの『時代財経』(9月16日付)は、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出により山東省の港町が大きな影響を受けているとする記事を掲載した。

     

    (1)「記事は、8月24日に始まった同原発の処理水海洋放出の第1次放出作業が9月11日に終了し、7788トンの処理水が太平洋に排出されたと紹介。「その影響の矢面に立つのは、『海を頼りに飯を食う』人々だ」とした。そして、黄海と渤海海域では9月1日に4ヶ月の禁漁期間が終わって漁船が一斉に漁に出始めており、山東省の膠東半島にある威海市乳山口漁港では主に日帰りから1週間程度の近海漁業でサワラ、タチウオ、キグチ、エビ、シャコ、カニ、サザエなどを獲物にしているとした上で、現地の漁業関係者が「来年には処理水が海域に流れ込んで魚やエビの生育に影響を及ぼし、漁獲量が減るのではないか」と憂慮していると伝えた」

     

    中国政府の流す間違い情報が、中国地元の漁業者に大きな影響を与えている。9月に入って禁漁期間が終わり、「さあこれから」という時期だけに出鼻をくじかれた格好である。

     

    米議会では、日本の海産物がいかに無害であるかを証明するべく、福島産魚類を使った「鮨試食会」が開かれた。米連邦議会下院で18日、風評被害払拭のための日本産品PRイベントである。中国問題を扱う下院特別委員会のギャラガー委員長(共和)らの提案を受け、在米日本大使館が主催した。マコール下院外交委員長(共和)ら共和、民主両党の議員、スタッフが参加。福島県産のヒラメやスズキ、北海道産のホタテなどのすしを試食し、「日本の海産物は最高」(マコール氏)と舌鼓を打った。『時事通信』(9月19日付)が報じた。

     

    (2)「来年の漁獲量が予測できないことに対する憂慮に加え、今年の漁獲物の価格により直接的な影響が出ていると指摘。エビのほかにもアナゴを漁獲して主に日本に輸出しているという現地の漁業関係者が「仲買業者によるとアナゴの輸出需要が減少しているため、価格は下がる一方だ。以前は1尾15元(約300円)か16元(約320円)、いい時は20元(約400円)で売れたのに、今は1尾4元(約80円)か5元(約100円)でしか引き取ってもらえなくなった」と語ったことを紹介した」

     

    日本への輸出価格も暴落している。穴子は、以前は1尾15元(約300円)か16元(約320円)したものが今は、1尾4元(約80円)か5元(約100円)という

     

    (3)「さらに、憂慮は水産業チェーンの下流にも広がっており、数百の露店が並ぶ乳山の海鮮市場では9日夕方、本来であれば禁漁解除後の書き入れ時であるにもかかわらず場内が閑散としていたと紹介。ある露店主が「今日はましな方。ここ数日は誰にも会わないことも多かった。今年の来客は多くて例年の3分の1程度。海洋放出が始まってから多くの人が海産物を買いたがらなくなった。新型コロナの時よりも客が少ない」と嘆いたことを伝えた」

     

    数百の露店が並ぶ乳山の海鮮市場では、客もまばらの超閑散状態という。韓国の海鮮市場は、韓国左派の宣伝を信じずかえって賑わっている。中韓では、風評への受け取り方が大きく異なる。中国は、政府自らが危機説を煽っているからだ。

     

    『レコードチャイナ』(9月12日付)は、「日本の処理水放出に対する中国の激しい反発は『諸刃の剣』ー仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    仏国際放送局『ラジオ・フランス・アンテルナショナル』(RFI)中国語版は6日、日本の処理水海洋放出に対する中国の激しい反発は「諸刃の剣」だとし、その現象が日増しに顕著になっていると報じた。

     

    (4)「中国メディアの『新浪新聞』が8月27日に「『日本が私の収入源を断った』核汚染水(処理水)の影響で100万人の中国漁民はどこへ行くのか」と題する記事で、「あらゆる海産物への消費意欲がなくなった」「中国で漁業に従事している人は100万人を超える。彼らの将来は不確実な状態に陥っている」などとした上で、ある漁師を例に挙げ「日本政府の汚染水(処理水)海洋放出という突然の情報が、40年余り漁業に従事してきた普通の漁民の人生を狂わすことになるとは、彼も思っていなかった」と報じたことを紹介した」

     

    中国の漁業者は100万人を超える。今後の生計は、全く見通しが立たない事態になったと嘆いている。


    (5)「RFIの記事は、「日本の水産品に対する科学的根拠の全くない恐怖が中国の水産業にまで飛び火すれば、中国自身の漁業の損失は日本の水産物輸入全面禁止による損失よりも大きくなるだろう」と論じた」

     

    中国政府は、「日本憎し」で始めた反対運動が、自国民を巻き添えにしていることに気付かないようだ。戦狼外交が、自国民を犠牲にするという皮肉な結果を招いている。

     

     

     

     

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    中国から日本への福島問題をめぐる「抗議電話」は最近、沈静化してきたようである。ひところ、日本への団体客の予約キャンセルも多かったが、日本の観光業界ではすでに「脱中国シフト」へ切り替えているという。この効果によって、中国観光客の動向が大きく影響を及ぼさなくなってきたという。

     

    中国からのツアー客は、中国系ホテルに宿泊している。このため、日系ホテルは中国ツアー客が減っても影響ないというのだ。困っているのは、中国系ホテルという。中国による福島処理水への反対騒ぎは、中国資本を困らせるという皮肉な結果を招いている。

     

    『産経新聞』(9月18日付)は、「『国慶節』、観光業の〝脱中国〟契機に 処理水影響は限定的」と題する記事を掲載した。

     

    東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出による中国人観光客の回復遅れで日本の観光業界への打撃が懸念されてきたが、影響は限定的なのが実情だ。ほかの国からの観光客を確保できているためで、影響はむしろ中国企業に出ているとの指摘もある。中国では9月末に「国慶節」(建国記念日)の大型連休が始まるが、これまでの流れを教訓に中国頼みを回避しようと、業界の〝脱中国〟への転換の契機となる動きも出てきた。

     

    (1)「大阪市内のホテル関係者は、「処理水放出問題の影響はない」と口をそろえる。観光庁の7月推計で全国の客室稼働率は57.8%と新型コロナウイルス禍前の令和元年(63.3%)の9割超まで回復。大阪市内のあるホテルでは国内客や中国以外の国・地域からの予約で満室続きだ。リーガロイヤルホテル京都(京都市下京区)は中国からの予約は少ないが、国慶節の連休がある今年9、10月の稼働率は前年同期から30ポイントも急回復する見通しとなっている」

     

    全国の客室稼働率は、7月推計で57.8%と令和元年の9割超まで回復している。中国人観光客は、ツアー客が減っても富裕層は増えているという。

     

    (2)「幾度も報道される中国人客による日本旅行の大量キャンセルは、「(訪日旅行を生業にする)中国の旅行会社に出ている」(大阪観光局)。中国の旅行会社はコロナ禍前に大量の団体旅行者を日本へ連れて来たが、「受け皿は中国人が経営する店も多かった。最も影響を受けるのは中国系の企業との見方もできる」(旅行業界関係者)日本の旅行会社への影響も指摘されるが、7月の主要旅行業者の訪日客の取扱額は令和元年7月比で85.6%まで回復。取扱額全体に占める割合も約5%にすぎない。

     

    下線部は、中国ビジネスの連携プレイの「凄さ」を見せつけている。中国人ツアー客は、中国系ホテルへ宿泊させることでマージンを上げている。こうなると、日本は、騒音とゴミの迷惑を被るだけで、トータルのプラスは少ないのだ。

     

    (3)「観光業界では、脱中国にシフトする動きが出始めた。訪日旅行業のフリープラス(大阪市中央区)の男性幹部は「中国以外の国(からの集客)で忙しくさせてもらっている」と話す。「中国にも上流階級に位置づけられる知識人は、処理水放出を冷静にみる人が多い。こうした層の動向を見守りながら富裕旅行の獲得につなげたい」と特定の国に依存しない重要性も示した」

     

    日本の観光業界は、中国ビジネスの凄さに呆れており、「脱中国」へシフトしている。と言っても、中国富裕層は日本にとって大切な客層である。この人たちは、中国政府の宣伝を信じておらず、日本を堪能しているのであろう。

     

    (4)「星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路(よしはる)代表は、日本は欧米市場に注力した観光戦略にシフトすべきと指摘する。滞在日数の長い欧米客の割合が高まれば、1日当たりの客数が減りオーバーツーリズム(観光公害)緩和にもつながるとみる。大阪は、今年1~5月のアジア圏訪日客が約7割と、京都よりアジア系の観光客が多い。この点から、「大阪の魅力をどう欧米に発信するかが重要」と強調する」

     

    大阪は、アジア人に好まれている観光地である。京都よりもアジア系観光客が多いのだ。これが、観光公害をもたらしている。これを避けるには、滞在日数の長い欧米客の割合を高めることだという。観光客数の多寡を競うよりも、滞在日数の多い國の集客に努めた方がプラスになると指摘している。こういう意味では、中国人観光客はターゲットでなくなるのだ。

     

     

     

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    新型コロナウイルス流行が始まって以降、仕事に対する態度は広範にシフトが起っている。労働者が単に金銭的条件だけでなく、有給休暇やフレックスタイムなど金銭以外の報酬を求める傾向があることだ。その結果、仕事に費やす時間は減りがちで、時間内に達成できる成果も減っている。だが、長期的に見れば別の評価が出てくるであろう。働く者が満足してこそ人材が定着し、それによって生産性が上がるというメリットだ。米国では、新しい考え方が生まれている。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月13日付)は、「生産性の発揮、マジックナンバーは85%」と題する記事を掲載した。 

    あなたが今、全力を尽くしているなら、それはやりすぎかもしれない。勤勉と最大限の努力を絶対視する環境で育てられ、努力なくして成功なしと教わった人は多い。しかし一部のコーチや企業の幹部は、持てる力を発揮するには努力はほどほどにしたほうがいいという。

     

    (1)「こうしたコーチや幹部によると、全速力で走ろうとすると実際にはタイムが遅くなることを示したフィットネスの研究がある。ある運動生理学者は、これ以上無理というところまで重いウエイトを持ち上げても、その少し手前でやめたときより筋肉のつきがよくなるわけではないと指摘した。運動でも何でもそうだが、コツは85%を目標とすることだ。完璧を目指すと情けない気持ちになったり、燃え尽きたり、逆にうまくいかなくなったりすることが多い。今四半期の目標は8割達成したら成功と考えよう。仕事でも健康でも趣味でも、完璧な成功か完全な失敗しかないという二分法で考える必要はない」 

    今年の甲子園(高校野球)では、慶応高校が優勝した。「エンジョイ・ベースボール」が、選手の自主性を育て成果に結びついたという。多分、「85%練習」でなかったのか。青山学院大学陸上競技部も、学生の自主性に任せた練習している。この二つのケースは、従来の練習方式であるスパルタ式とは真逆である。 

    (2)「昔は組織の最適化を訴える上司が実際に最適化を実現することは可能だったとビジネス書の著者、グレッグ・マキューン氏は指摘する。同氏は85%の努力でなぜ最大の効果が得られるかについて文章を書いたことがある。運動生理学者でパフォーマンスについて企業の幹部やアスリートを指導するスティーブ・マグネス氏は「多くの取るに足りないことが全力を尽くすことに関わっている」と話す。一生懸命やればやるほどうまくいかず、気持ちが傷ついたり、プレッシャーにプレッシャーに負けたりすることもあるとマグネス氏は指摘する。ある程度うまくっている間にやめれば、自分の自尊心はこの瞬間とそれほど関係がないという感覚になって、実際には成功する可能性が高くなるかもしれない」 

    「85%主義」には、長く継続できるというメリットがあろう。100%主義では、大きなプレッシャーがかかる。それを避けるには、「ほどほど」ということか。昔、私の上司に「ほどほどにしておけ」とよく言っていた人がいた。今になって、その意味が分るような気がする。

     

    (3)「努力のレベルを最も効率的に成果を出せる85%に合わせれば、私たちの成長につながる可能性がある。2019年の論文では、研究者が機械学習を使って、新しいことを学ぶための理想的な難易度を見つけようとした。研究者が人間の脳を再現するように作ったニューラルネットワーク(注:生物の学習メカニズムを模倣した機械学習手法)は難易度が85%の質問を与えられたときに最大の学習効果があった。難易度が85%というのは85%の確率でニューラルネットワークが質問に正しく答えたということだ」 

    この研究の著者で、心理学と認知科学を専門とするアリゾナ大学准教授のボブ・ウィルソン氏によると、課題が難しすぎると、人間はやる気を失う。一方で「間違いをせず、100%正しければ、間違いから学ぶことはできない」と指摘している。やる気を出すのは「85%達成」であろう。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月4日付)は、「米労働者『そこまで働きたくない』、生産性に影」と題する記事を掲載した。 

    米国でリモートワークは最初の頃、「ウィンウィン」だと思われた。従業員は好きな場所で好きな時間に働くことができ、雇用主には生産性向上というメリットがあった。従業員はリモートワークが今もお気に入りだが、最近の各種調査によると生産性を押し上げる効果はなく、完全なリモートワークの場合、生産性はむしろ低下する。だが雇用主の大半は、従業員に週5日オフィスに戻るよう促すことをすでに諦めている。

     

    (4)「米国勢調査局によると、労働者の39%が在宅勤務で、その半数は週5日自宅で働いている労働者が単に金銭的条件だけでなく、有給休暇やフレックスタイムなど金銭以外の報酬を求める傾向があることだ。その結果、仕事に費やす時間は減りがちで、時間内に達成できる成果も減っている」 

    米国では、すでに「仕事を楽しみながらする」という流れができている。仕事のために家族を犠牲にするという考えを超えた。 

    (5)「労働者の幸福感は高まっているようだ。全米産業審議会(コンファレンスボード)の5月の発表によると、2022年の労働者満足度は21年から急上昇し、調査を開始した1987年以降で最高を記録した。それは労働者が仕事で得る達成感が増したのではなく、仕事に生活を消費されることが減ったからだ。調査した18項目のうち、今年の満足度アップへの寄与度が最小なのは「仕事への興味」、最大なのは「ワークライフバランス」という結果だった(賃金はその中間くらい)」 

    米国の労働者の幸福感は、22年に急上昇している。在宅勤務が広がったからだ。これは、企業にとって決して悪い話ではない。定着率を高めるからだ。

     

     

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