次期大統領選で有力候補に上がっている野党「共に民主党」前代表の李在明氏は、韓国を武器輸出の「世界4大国」にすると気炎をあげている。この李氏を支援する左派メディの『ハンギョレ新聞』は、韓国の安全保障では「洞ヶ峠」を決め込む姿勢を明らかにした。米中対立に巻き込まれまいという「虫の良さ」である。
在韓米軍の主力基地は日本にある。韓国の安全保障では、日本へ多大の負担を掛けているにもかかわらず、韓国だけは「圏外に立ちたい」という身勝手さが目立つ論調を展開している。
『ハンギョレ新聞』(4月18日付)は、「日本の『一つの戦域』構想、議論さえ容認してはならない」と題する社説を掲載した。
日本の防衛相が米国に、日米が朝鮮半島・東シナ海(台湾)・南シナ海を一つの「シアター(戦域)」として把握し、この地域の友好国との軍事協力を強化すべきとする構想を伝えたと日本メディアが報じた。
(1)「この案が現実化されれば、ただでさえ緊迫している米中対立をさらに増幅させ、在韓米軍の性格の変化など韓国の安全保障にとって致命的となる影響を及ぼす議論を加速化させうる。韓国軍が台湾や南シナ海の紛争にかかわるリスクも高まる。日本は中国との無駄な対立だけを扇動する「無理な構想」はやめ、相互に共存の領域を広げる対話により多くの力を注ぐべきだ」
平和共存のためには対話が必要である。その通りである。だが、中国の一方的な領土拡張(南シナ海占拠はその一例)は、対話で止められる段階を超えている。中国のこういう意図を抑制するには、周辺国が協力して防衛体制を固める以外に道はない。南シナ海や台湾海峡が、中国の軍事力によって封鎖される事態になれば、韓国も甚大な被害を受けるのだ。空想的平和論では、事態の発生を抑制できないことに思い至るべきだろう。
(2)「朝日新聞の15日付けの報道によると、中谷元防衛相は先月30日、日本を訪れた米国のピート・ヘグセス国防長官に「日本は『ワンシアター』(一つの戦域)の考え方を持っている。日米豪、フィリピン、韓国などを一つのシアターととらえ、連携を深めていきたい」という考えを伝えた。ヘグセス国防長官は「歓迎する」と明らかにし、その後の石破茂首相との会談の場でふたたびこの話に言及し、友好国間が「連携する重要性」を強調したという」
戦術論からいえば、「ワンシアター」は当然であろう。中国から受ける被害が想定される国々が、団結して阻止に立ち上げるのは自衛権の問題である。被害を食止める権利は、国家固有の権利である。韓国も同じである。
(3)「シアター(戦域)は戦争の際に一つの作戦が実行される地域を意味する軍事用語だ。最終的には、朝鮮半島から台湾がある東シナ海に加え、中国が海域全体に対する領有権を主張している南シナ海までを「一つの戦域」とみなし、みんなで力を合わせて中国に対抗しようという主張だ。この構想が現実化されれば、「韓国防衛」を目的とする在韓米軍の性格が「対中国けん制」の方向に急激に変わることになりかねず、韓国も同じく東シナ海や南シナ海での紛争に協力を要求される可能性がある」
韓国は便益を受けたいが、その負担を回避したいという、極めて身勝手な理屈を並べている。関ヶ原の合戦で、「洞ヶ峠」を決め込んでいた故事と瓜二つの話である。韓国は、先進国になりたいとしているが、これでは他国からの尊敬は得られまい。
(4)「韓国は、すでに2023年にキャンプ・デービッドで開かれた韓米日首脳会談を通じて、「共同の利益と安全保障に影響を及ぼす地域的挑戦、挑発、そして脅威に対する対応を調整するため、各国政府が相互に迅速な形で協議する」ことを公約している。実際に、朝鮮半島と台湾が同じ戦場として結ばれることになれば、「協議」を越えて「共同対応」の義務を負う可能性がある」
中国は、台湾攻略の際に米軍の戦力を分散する意図で、北朝鮮に韓国を攻撃させるというシナリオも想定されている。こういう緊迫した状況下で、韓国は逆に侵略される側になりかねない。となれば、広域防衛体制が必要になる。韓国は、これに加わることで自らの安全を確保できるメリットも考えるべきだろう。
(5)「中国けん制を最大の目標に掲げるドナルド・トランプ政権の立場としては、これほど都合のいい話はないが、韓国と日本は東アジアで発生する事実上「すべての対立」にかかわるリスクが高まる。韓国と日本の間にも差がある。日本は平和憲法の制約のために、完全な「集団的自衛権」を行使できないが、韓国は違う。韓国の若者が戦場で血を流すことになる可能性もある。「一つの戦域」構想は議論さえ容認してはならない話だ」
日本も緊迫した事態に遭遇すれば、米軍支援に立ち上がる規程になっている。韓国は、日本との対立を理由にして、日本と共同歩調を取りたくないようだが、緊急事態下でそのような感情論を言っていられる余裕があるのか。在韓米軍の主要基地は、日本にあるのだ。朝鮮戦争時に、反日闘志の李承晩大統領(当時)が、韓国臨時政府を日本に移す案を検討していた。緊急時には、反日どころの話でなくなることを自戒すべきだろう。