勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    北京の日本人ビジネスコミュニティで、重要なポジションにあるとされる50代の男性が、国内法(反スパイ法)違反容疑で拘束された。中国当局は、拘束理由を説明していない。かつて同様の容疑で拘束・逮捕され収監された人物によると、容疑内容は食事の際に北朝鮮の話を質問しただけという。その時の食事相手が、密告したと言うから、中国社会には至るところに「罠」が仕掛けられている。危険ゾーンになった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月25日付)は、「北京で50代邦人男性拘束 日系企業幹部、国内法違反で」と題する記事を掲載した。

     

    日系企業幹部の50代の日本人男性が3月、北京市で当局に拘束されたことが25日わかった。中国当局は国内法に違反したと主張している。日本政府は早期の解放を中国政府に求めている。日中関係筋が明らかにした。

     

    (1)「日本政府は、在中国日本大使館を通じて領事面会や関係者との連絡などの支援を試みている。現時点で面会はできていない。中国側は男性の拘束に至る経緯について日本側に十分に説明していないとみられる。中国は2014年以降、反スパイ法や国家安全法の制定を通じ国内の統制を強め、外国人を厳しく監視するようになった。その後、今回を除き少なくとも16人の邦人がスパイ行為に関わったとして拘束されたことが判明している」

     

    中国は2014年以降、反スパイ法や国家安全法の制定を通じ国内の統制を強めている。だが、それ以前から外国人への警戒感は極めて強かった。電話盗聴は当たり前であったのだ。日本の有力都市の上海駐在員は1990年代、盗聴前提で日本へ中国の不便な部分を伝え、現地での業務が遂行できないので引揚げると連絡した。そうしたら、上海市担当者が飛んできて直ぐに改善したという。盗聴の結果だ。

     

    日本メディアの中国特派員の苦労話も読んだことがある。中国当局から濡れ衣を着せられないように、公共交通機関では鞄を常に手に抱えて移動したという。これは、車中でうっかり居眠りでもしていると、その隙に鞄へ機密資料を忍び込ませておき、逮捕するという「汚い手」を使うからだ。驚くべき手を使って、スパイ容疑者に仕立てる凄腕なのだ。陰謀渦巻く中国で、外国人が安全に生き延びるのは極めて難しい。

     

    中国は、スパイ行為を摘発するための「反スパイ法」を改正する。現行法よりスパイ行為の定義を広げ、国家の安全や利益に関わる情報を取ったり漏らしたりする行為に幅広く網をかけるのが特徴とされる。あいまいな規定も多く、当局による恣意的な運用が懸念されるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月13日付)は、「中国、スパイ行為の対象拡大 資料やデータに幅広く網」と題する記事を掲載した。

     

    2022年12月までに2回の審議を終え、可決する段階にある。反スパイ法は14年の施行以来、初めての改正。これまで同法関連で少なくとも16人の日本人が拘束され、改正案が施行すれば取り締まりがさらに強化されそうだ。中国の公務員や国有企業職員がさらに萎縮し、外国人との交流に影響が出る事態も懸念される。

     

    (2)「改正案は、「国家安全や利益にかかわる文書、データ、資料、物品」をこっそり探ったり、提供したりする行動を「スパイ行為」と定めた。現行法は「国家機密」の提供に絞っていた。どこまでが国家の安全や利益にかかわる内容なのか定めはなく、不明確さはぬぐえない。中国で事業展開する外資系企業が競合相手となる中国国有企業の情報収集をする場合も、スパイ行為に認定されるリスクがある」

     

    問題は、「こっそり」と重要な国家の安全に関わる文書、データ、資料、物品を探り出す行為がスパイ行為とされる。こういう規定だと、メディア取材は極めて危険になる。個別取材は、スパイ行為と紙一重になるからだ。

     

    日本には中国人スパイが、1000人単位で潜伏していると言われる。だが、肝心の強力な取締法が存在しない。日本では中国にスパイを自由にやられているのだ。日本人は、中国でちょっとした言動でも収監される。余りにも不公平な扱いである。日本では、戦前の苦い経験で「スパイ取締」が、日本人の言論弾圧に利用されることを警戒している。

     

    (3)「摘発機関である国家安全当局の権限も大幅に強めた。スパイ行為の疑いがある人物の手荷物検査をできるようにした。国家の安全に危害を加える可能性がある者の出国を禁じる権限も与えた。スパイ行為の疑いがある個人や組織が利用する「電子機器や設備、プログラムやツール」も調査できるとした。会社や個人が所有するパソコンやスマホ、インストールしたアプリなどにも捜査の手が及ぶ可能性がある

    下線部は、中国によって日本企業のビジネス情報を抜き取ることに悪用される危険性が高い。これでは、もはや安心して公正なビジネスは不可能になってくる。現地駐在員の安全を考えれば、「利益より人命優先」という時代になってきた。

     

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    韓国左派は、旧徴用工賠償問題で反発し、ソウル都心で反対集会を繰り広げている。日本の謝罪がないことで、韓国の自尊心が傷つけられたという理屈である。日本は、過去40回も謝罪してきたが、それでも満足できないというのだ。

     

    経済面から見た韓国は、日本へ度重なる謝罪を要求するほど余裕ある状況にない。主力産業の半導体が、米中対立で厳しい局面に立たされているのだ。韓国は、中国で数兆円を投資してきた半導体が、今後の満足ゆく操業が不可能になったことだ。先端半導体は、10年間で5%の増産枠を認められただけだ。当然、採算悪化は間違いない。

     

    米中関係は、10年後に改善する見通しがある訳でなく、逆になる可能性の方が大きいであろう。となると、半導体は最終的に中国撤退すら起こり得る。韓国は今、それに備えた動きを始めた。日韓融和への動きである。

     

    『韓国経済新聞』(3月25日付)は、「韓日輸出規制解除の意味『ビジネス同盟復元』半導体サプライチェーン構築に役立つ」と題する日本大経済学部教授の権赫旭(クォン・ヒョクウク)氏へのインタビュー記事を掲載した。

     

    韓国は、日本から多くの素材、部品を輸入している。2019年以降の輸入規模は、再び増加に点じている。韓国は現在、米国の主導で再編されるサプライチェーンに注目しなければならない。日本による輸出手続き規制の解除は、韓国が主要プレーヤーとして参加できることを意味する、と強調する。

     

    (1)「韓国は包括的および先進的なTPP協定(CPTPP)に事実上、日本の反対で加入できなかった。今回の措置の効果が国際協定でも有効に作用して、近くCPTPPや米国主導のクアッド(日米豪印)にも参加することになるはずで、発言権を持って主要プレーヤーとして活躍することができる」

     

    韓国が、TPP参加をためらった理由は二つある。一つは、中国への遠慮である。もう一つは、日本製造業との競争に敗れることを懸念したものだ。農水産物の競争力も日本より劣っている。福島産などの海産物を未だに輸入禁止している理由だ。TPPに参加するとなれば、韓国産業は「丸裸」になる。対日貿易に限れば、韓国の輸入赤字はさらに膨らむであろう。

     

    クアッドへ参加する前に、先ず韓国海軍艦艇が行なった海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射に対して謝罪することだ。旭日旗を蛇蝎のごとく嫌う韓国が、クアッドへ参加できるだろうか。クアッドの問題は、韓国がひっくり返るほどの反対論が出るだろう。

     

    (2)「韓国は、米国と中国の間のあいまいな戦略的位置でなく、米国側でオーストラリアや日本と共に重要な軸になることを意味する。これを確実にするのが、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の回復だ。中国と対立するのではなく、中国が圧力を加えてきた場合の交渉カード、バーゲニングパワー(交渉力)が生じる。韓国が今回、日本へ先に握手の手を出したのは、米国側に立ったものと解釈できる」

     

    韓国は、長年にわたり「二股外交」を行なってきた。韓国は、ここから「足を洗い」米国の陣営に馳せ参じるというのである。これは、左派が猛烈な抵抗するだろう。左派は、親中朝ロ路線である。先ずこれを国内で解決することだ。

     

    (3)「韓国が、日本とビジネスパートナーになる場合の利益について、半導体産業を例に挙げてみよう。中国は原油の輸入よりも半導体の輸入による赤字がはるかに大きい。中国が半導体産業育成に注力する理由だ。半導体産業で頭角を現した韓国も悩みは同じだ。韓国は他国に比べて今でも製造業の比率が高いが、中国のおかげで維持されてきた側面がある。それだけ中国への依存度が高く、中国の立場に従うしかない状況もあった。これが韓国のジレンマだった」

     

    韓国の輸出トップは、中国である。対中輸出は、昨年後半からマイナスが続いている。これは、一時的な減少でなく、中国の素材生産が増えてきた結果、輸入代替が進んでいると見るべきだ。韓国は、対日貿易で赤字を出し、対中貿易で黒字を出すという構造が変わってきたのだ。

     

    (4)「米国が、中国排除政策を進めるこの時期、韓日ビジネス同盟に向かっていけば、半導体産業のサプライチェーン、次世代技術の側面で優位の競争力を確保できるとみる。世界最大半導体ファウンドリー企業TSMCと深い関係を結ぶ日本とのシナジー効果を期待できる」

     

    韓国は、日本が台湾のTSMCと密接な関係を構築していることに危機感を見せている。そこで、韓国にも「利益を分けて欲しい」というのが率直なところだ。韓国を巡る国際情勢は急変している。左派は、それを全く理解しようとしないのだ。 

     

    テイカカズラ
       

    韓国尹(ユン)政権による旧徴用工賠償解決策は、左派の猛烈な反対運動を引き起している。特に、最大野党「共に民主党」代表の李在明氏が、背任・収賄の容疑で在宅起訴になって、一段と反日運動に力を入れているところだ。

     

    韓国左派にとっても、この解決策をひっくり返しところで先行きの展望がある訳でない。日韓関係はさらに悪化し、韓国が西側諸国から外交的に孤立するリスクを高めるだけである。となると、左派はどこかで反対運動を沈静化させなければならないのだ。そのきっかけが、岸田首相の「シャトル外交」訪韓である。夏頃と予想されているが、岸田訪韓は旧徴用工賠償で大きなカギを握っている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月24日付)は、「元徴用工問題で韓国の『ちゃぶ台返し』はあるのか」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙編集委員の峯岸博氏である。

     

    韓国政府が6日に、元徴用工問題の解決策を発表してから、尹氏の初来日まで一連のイベントが終わった。日韓最大の懸案は解決策の履行に焦点が移った。日本には韓国側の「ちゃぶ台返し」を警戒する声がなお聞かれるが、果たしてどうか。

     

    (1)「尹氏が、2027年5月までの大統領の任期中に、自ら合意をほごにするとはまず考えられない。万が一、解決策が頓挫する場合があるとすれば、韓国内で反対論が沸騰して実行できなくなるか、尹氏の次の政権で葬られるかのいずれかだろう。発表直後に韓国内で実施された主な世論調査は、週刊誌「時事ジャーナル」(賛成37.%、反対59.%)、韓国ギャラップ(賛成35%、反対59%)、KBSテレビ(評価する39.%、評価しない53.%)など。いずれも反対(評価しない)が賛成(評価する)を上回っている」

     

    世論調査では、賛成論4割弱で反対論6割弱である。反対論が上回っている。理由は、日本企業が資金提供しないことと謝罪のない点を上げている。

     

    (2)「これらの数字には別の解釈も成り立つ。韓国では歴史問題について、日本=加害者、韓国=被害者という想定で「100%日本が悪い」ととらえられるのが一般的だった。韓国ギャラップの質問も「日帝(=日本帝国主義)強制動員被害を第三者が弁済する方策は韓日関係と両国の国益のため賛成」か「韓国政府の方策は日本の謝罪と賠償がなく反対」のいずれかを尋ねていた。KBSも同様だ。このような聞き方は回答にバイアスを与えかねないのに、各調査で解決策への肯定的な評価が30%台半ばから後半に達した。これは「それなりに高い数字」(日本の外務省幹部)だと受け止めることもできよう」

     

    世論調査での設問が、二者択一という反対論を誘導し易い点に注意する必要がある。設問の仕方を変えれば、反対論が減るという面もあるのだ。日本の世論調査でも同じ傾向が認められる。調査側が、反対論を多くしたい意図であれば、そういう設問になるのだ。

     

    (3)「尹政権が逆風を受けているのは間違いないが、大きな打撃になっているわけではないようだ。韓国ギャラップが10日に発表した尹氏の支持率は34%(不支持率58%)で、前週比2ポイント減にとどまった。17日発表の支持率は33%(不支持率60%)だった。韓国政府の損得勘定からみても、ちゃぶ台返しは考えにくい。もし4年後に誕生する韓国の次期政権が解決策をほごにしても、ひとえに韓国の国内問題として、自身の手で新たな対策を講じなければならなくなる」

     

    尹氏の支持率は減っているが、「激減」という状態ではない。今後、「ちゃぶ台返し」が起こるとすれば、これまで以上の日韓関係悪化を招くことは必定だ。韓国国民は、それに耐えられる覚悟があるかを問われている問題でもある。

     

    (4)「相手国の首脳に伝えた政府の解決策を、後に覆せば国際的な信用が傷つく。日韓慰安婦合意について、大統領選の最中から「再交渉が必要だ」と主張していた韓国の前大統領、文在寅(ムン・ジェイン)氏は最終的に「政府間の公式合意」だったと認めざるを得なくなった。今回の日韓首脳会談に合わせて創設が決まった両国の経済界による「未来パートナーシップ基金」には日本側も経団連などが資金を拠出する。基金の行方には不透明な部分も残るが、経済分野を中心とする共同事業や若手人材の交流を促す取り組みなどにあてられるため、韓国側がこれを否定するのは難しいだろう」

     

    両国の経済界による「未来パートナーシップ基金」は、双方が1億円を負担して両国の交流促進をはかる。若者の留学も含まれているのだ。この具体的内容がはっきりすれば、理解も深まるであろう。

     

    (5)「日本が、5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)に尹氏を招待し、その数カ月後の夏ごろに首相が訪韓するアイデアも浮上している。韓国では、24年4月の総選挙(一院制の国会議員選)に向け、事実上の選挙戦が熱を帯び始めているころだ。総選挙で尹氏を支える保守系与党が敗れれば、尹政権の求心力は一気に低下する。その先にある27年大統領選まで見据え、岸田氏は尹政権を戦略的にアシストするのか。尹政権にとっても、日韓関係の将来にとっても首相の訪韓は大きな意味を持つ」

     

    岸田首相は、「シャトル外交」で訪韓が決っている。夏頃に実現と予想される。この岸田訪韓が、どのような効果を上げるかである。両国の未来への夢を語り、韓国国民の人心を掴めるかだ。

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    ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本が3回目の世界制覇を成し遂げた。これは、スポーツの世界で起こったことだけでなく、日本全体が過去30年間「彷徨の旅」から眼を醒まして、次なるステージへ向かう予兆と見たい。

     

    日本が誇る総合商社5社は今、一斉に国内事業への再開発に向けて国内回帰している。総合商社と言えば、海外が活躍の主力舞台である。だが、地政学的リスクを考えれば、日本国内の眠れる資源の再開発こそビジネスに適うという視点だ。その一つが、洋上発電への取り組みである。すでに秋田県能代市沖合で昨年末に、大規模洋上発電が操業を開始。これから、日本国内はもとより、アジア地域への普及を目指して動き出す。英国政府も提携を申込んできたほどだ。

     

    これ以外にも昨年、日本が先端半導体製造企業「ラピダス」を設立した。周回遅れの日本半導体が一挙に、世界最先端に立つ。27年から操業開始だ。これは、日本再生の起爆剤になる。岸田政権が進める地域再生の柱は、半導体を利用した産業の振興である。総合商社は、この辺りの状況変化を読み取っているのであろう。お膳立ては整った。WBCで大谷選手をはじめとする各選手の活躍は、日本復興への手がかりになろう。

     

    米『ブルームバーグ』(3月23日付)は、「WBC制覇、日本はソフトパワーで勝ち抜け」と題するコラムを掲載した。

     

    日本の過去30年間は停滞や衰退、国際的な影響力低下というイメージで語られることが多い。しかし、大谷翔平選手がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で圧倒的な存在感を示すなどスポーツは例外だ。

     

    (1)「米国生まれのスポーツである野球の世界大会WBCで、侍ジャパンは3度目の優勝を果たした。だが、日本と同じようにトップクラスのプロ選手を送り込み真剣に大会に取り組む米国チームと、日本代表が対戦するのは、おそらく今回が初めてだっただろう。ブルージーンズやウイスキーと同様、野球もまた、日本が発祥の地を超えていくことになるのかもしれない。わずか四半世紀前に野茂英雄氏が米大リーグに挑戦してから、ロサンゼルス・エンゼルスに所属する二刀流の大谷選手を「史上最高」の野球選手とみるアナリストもいる」

     

    日米決戦は、手に汗握らせる大接戦であった。日本の勝利は、20年前には想像もできなかった。それが現実になったのだ。だが、日本選手は謙虚に振舞った。これが、さらに勝利を引き立たせた。

     

    (2)「中国の習主席がロシアのプーチン大統領と会談するタイミングで、G7サミットに招待したウクライナのゼレンスキー大統領と握手を交わしことも岸田首相にプラスに働くだろう。米国のエマニュエル駐日大使は、岸田首相が「あらゆる場所の人々のためにより明るい未来」を求めているのに対し、習主席は「自由の灯を消そうとしている」とはっきり対比させた。これも日本の役割が国際的にいかに拡大しつつあるか物語る。スポーツ分野での成功が伝えるのは、決して変わらないと不当なレッテルを貼られている日本の新しい現実だ」

     

    日本も敗戦から80年近く経ち、外交とスポーツの両面で世界から注目される存在になった。外交とスポーツは、似た側面を持つ。それは、相手国へ好印象を与えて自国の理解度を高める効果である。WBCの日本勝利は、世界中に日本の好イメージを残してくれた。スポーツ・パーソンは、外交官の役割を果たしている。

     

    (3)「中国の習近平国家主席は自国のサッカーW杯出場に加え、中国でのW杯開催、そして優勝を目標に掲げる。しかし、約10年前に示されたこうした目標のいずれも達成できていない。カタールやサウジアラビアが世界的チームを所有することで影響力を買おうとしたり、人権問題を「スポーツウォッシュ」したりすることには理由がある。スポーツは強力な外交手段であり、ソフトパワーの勝利が一段と重要になっているためだ

     

    スポーツウォッシュとは、興奮と共感と感動を呼ぶ大規模スポーツ大会のもたらすソフトパワーをテコにして、開催地に都合の悪い事実を隠そうとする行為である。北京五輪は、新疆ウイグル族の弾圧事件をもみ消す狙いも指摘された。スポーツウォッシュである。

    (4)「スポーツ分野での成功は、ただではない。過去15年で日本のスポーツ予算は倍になった。国民がより長くより健康でいられるようにすることが明確な目標で、医療費が急増する高齢化社会では必要不可欠と見なされている。そうした厳しい状況にあっても、大谷選手ら国民的ヒーローが教えるのは、日本が末期的衰退に陥っているというストーリーとは相いれない自らを信じる力だ。WBCの決勝に先立ち、大谷選手はトップに立つために米国の有名選手への憧れを1日だけ捨てようとチームメートに呼びかけた。日本に必要なのはまさにこうした姿勢だ

     

    日本では、野球の母国・米国選手への憧れが強い。だが、この米国と戦うには、憧れを一時封印して堂々と戦うことだ。大谷選手は、選手に潜む憧れを封印して戦うべく鼓舞した指揮官の発言である。日本は、一連の大谷発言から大きな勇気と指針を貰った。

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    旧徴用工賠償問題を巡る韓国の騒ぎは、韓国社会の水準を図る上ではまたとない機会を提供している。冷静に国際情勢の変化を語ることもなく、「日本憎し」という感情論一本でやり合っているからだ。

     

    日本の野党「立憲民主党」代表は、日本で尹(ユン)大統領と会談した際に、「韓国野党に話をして理解して貰いたい」と発言したという。日本の野党まで認めている旧徴用工賠償問題が、韓国では政治に利用するというもっとも醜い姿を見せている。

     

    『中央日報』(3月22日付)は、「日本野党『韓国野党に会って説得する』尹大統領『話を聞いて恥ずかしかった』」と題する記事を掲載した。

     

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、日本野党が韓日関係改善のために韓国野党を直接説得すると言及したことについて、「そのような話を聞いて恥ずかしかった」と述べたという。

    (1)「尹大統領は前日(21日)の閣議非公開発言で、訪日日程で日本最大野党の立憲民主党指導部と接見したことに言及し、このように述べたと複数の会議出席者が22日、聯合ニュースに伝えた。当時、泉健太代表は尹大統領に自身の娘が、韓国語を独学して挨拶する様子を見せて「両国間の大衆文化交流は若い世代に希望を与える」と述べ、中川正春憲法審査会会長は「近く訪韓し、韓国の野党議員らと会って未来に向けた韓日関係を共にするよう説得したい」と話したという」

     

    日本の政党関係者が、韓国左派陣営に会って旧徴用工賠償について説得をしたいというほど、韓国国内の騒ぎが大きくなっている。

     

    (2)「これについて大統領室関係者は、「日本は与野党の別なく韓日関係改善を歓迎しているが、韓国野党は反対ばかりしている」とし、「大統領が事実上、韓国野党の姿勢が恥ずかしいと言ったということ」と述べた。ただし、尹大統領が直接、李在明(イ・ジェミョン)民主党代表など野党指導部に会って訪日の成果などを説明する機会があるかは未知数だ」

     

    左派の李在明氏は、自らが刑事被告人であることから、いかに無罪になるかを考えている。それには、反日騒ぎを大きくして司法へ圧力を掛けることが、自分を救う上での最適手段と考えているであろう。文氏も大統領時代に、旧徴用工賠償で演説しており「人権は永遠」という立場で、日本企業の賠償責任論を展開して大法院(最高裁)へ圧力を掛けた。李氏が、この例をまねて反日運動を起せば、無罪になると信じているのかも知れない。ただ、李氏の罪名は、背任・収賄罪である。旧徴用工賠償とは無関係である。

     

    (3)「尹大統領はこの日、韓日両国間の反目を「塀」に例えた。尹大統領は「これまでうまく付き合って隣家がいて、水路を作る問題で互いに塀を築き始めたとする」とし「塀を壊さなければ2人とも損をするのに、そのまま放置すべきなのか」と反問した。続けて「相手が塀を壊すことばかり待つのではなく、自分が『これを見てくれ』と言って先に壊せば、隣人もその真摯さを見て一緒に壊すことになり、そうすれば再び良い関係に戻ることができるようになる」と述べた」

    尹大統領は、過去の問題で日韓がいがみ合う無益を説いている。それよりも、未来の問題解決が、日韓双方の利益になるという立場である。左派は、未来でなく過去に拘ることで、アイデンティティを守れるという立場だ。発想法が、完全に逆である。

     

    『東亞日報』(3月22日付)は、「尹大統領、『反日を叫んで利益を得ようとする勢力がいる』」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は21日、「韓国社会に排他的民族主義と反日を叫んで政治的利益を得ようとする勢力が存在する」とし、「前政権は泥沼に陥った韓日関係をそのまま放置した」と述べた。政府の第3者弁済方式による元徴用工賠償問題の解決と韓日首脳会談を「屈従外交」と主張する野党と文在寅(ムン・ジェイン)前政権を批判したのだ。尹大統領は同日、中継された閣議で約20分間、韓日関係について国民を説得する正面突破カードを選択した」

     

    韓国左派は、尹政権を揺さぶっている。政治的利益が得られるからだ。来年の総選挙で、勝ち残りたいという左派系議員が、反日を煽動しているのであろう。

    (5)「尹大統領は同日、韓日首脳会談後、初めて開かれた閣議の冒頭発言で、「私も目の前の政治的利益のために楽な道を選び、過去最悪の韓日関係を放置する大統領になる可能性もあった」と述べた。そのうえで、「昨今の厳しい国際情勢を後にして、敵対的民族主義と反日感情を刺激して政治に利用しようとすれば、大統領としての責務を放棄することになる」と韓日関係回復の正当性を強調した。今後の韓日関係の核心的な変数として浮上した日本の対応については、「日本はすでに数十回にわたって過去の問題について反省と謝罪を表明した」とし、「韓国が先制的に障害を取り除けば、きっと日本も対応してくるだろう」と述べた」

    文政権は、反日を煽動して政治的利益を得た典型例だ。ただ、国民がこの煽動に乗せられていることも事実。「付和雷同」分子が多いのだ。こういう韓国の現実を眺めると、寒々としたものを感じる。

     

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