日本は、世界一の高齢社会の道を突き進んでおり、灰色にみえるがそうではない。これまで貯め込んできた家計貯蓄2100兆円を、有利に運用しさえすればそれだけでも日本は潤うはずだ。時代は今や、貯めることから運用する時代へと大きく動いている。
訪米中の岸田文雄首相は21日、世界の金融関係者が集まる「ニューヨーク経済クラブ」で講演し、日本の資産運用業に新規参入するよう呼びかけた。特区創設を柱に規制改革を行い、ビジネス環境を整えると表明した。
『ブルームバーグ』(9月22日付)は、「プロ運用者を海外から呼び込みへ 首相改革案を市場関係者は歓迎
「ニューヨーク経済クラブ」で21日(日本時間22日未明)、居並ぶ米財界人を前に講演した岸田文雄首相。「30年間毎年日本経済に注目してきたが、今が最もポジティブだ」。先日、世界的に影響力のある投資家と会った際、こうした見方を伝えられたと披露した上で、「日本に投資いただくことを強く求めたい」と訴えた。
(1)「首相の講演を受けて、フィデリティ投信のデレック・ヤング社長は「政府が進める改革により、2000兆円の金融資産を持つ個人の選択肢が増え、長期的な資産運用ができる投資環境の一段の整備が進めば、新NISA(少額投資非課税制度)もより有効に活用されるだろう」と指摘。「われわれもこのような取り組みを歓迎しており、意見交換などの形で協働させていただいている」とコメントした」
岸田首相のニューヨークでの講演は、米金融関係者の日本進出をプッシュするであろう。すでにこの春頃から米企業の大物は相次いで来日していた。中国の地政学リスクから、日本への進出を急いでいたからだ。こういう流れの中で、東京の国際金融都市化への動きと相まって、日本の経済的な位置が上がっている。
(2)「首相が打ち出したのは、海外の資産運用業者の参入を促進するため、資産運用特区を創設し、英語のみで行政対応が完結できるようにする規制改革。また、日本独自の商慣習や参入障壁を是正し、新規参入者が年金基金などのアセットオーナーから運用委託を受けやすくする支援プログラム(EMP)を整備する考えも示した。国内の個人金融資産の半分以上が現預金。海外運用業者の参入や独立系の資産運用会社が増えれば業界全体のレベル向上や活性化が進む。資産運用額が増えることで国民の資産所得の拡大や企業の成長に資金が向かうことを期待する」
岸田首相は、東京の国際金融都市化を「金融特区」という具体的なイメージで呼びかけている。この下準備は、すでに東京都が具体的に行っている。國と都が一体化して、海外の資金運用専門家を日本へ集めて、2100兆円の家計資産の有効活用を進め、日本経済の地盤引上げにも寄与するという相乗効果を目指している。これは、日本経済の成長に不可欠になっている。賃上げによるフローの増加と同時に、ストックの利回り向上が目的である。
(3)「東洋大学の野崎浩成教授は、「家計のマネーが資本市場を経由し、スタートアップを含む経済成長の源泉として活用されることは、日本経済全体にとって好循環につながる」として、「岸田政権が目指す資産運用立国の目標は極めて正しい」と評価する。一方、「資産所得は必ずしも投資の果実のみを示すものではない。年金のようにある意味隠れた金融資産の存在にも目を向けるべきで、金融資本市場における広い意味でのプレーヤーの強化が不可欠だ」とも指摘。独立系運用機関の育成には時間がかかるとして、日本の運用市場で大きなシェアを握る大手金融グループの運用会社の機能強化などに焦点を当てた改革がカギになるとの見方を示す」
日本の家計を米国型に引き上げるには、ストックの利回り向上が不可欠である。それには、資産運用の専門家を幅広く育成しなければならない。その手始めに、海外の資産運用専門家の日本進出が必要である。
(4)「金融庁が4月に公表した資料によると、投資信託の設定や運用を行う投資信託委託業者は2022年に109社と、17年の100社とほぼ変わらず。日本の大手資産運用会社の多くが金融グループに属する中、人材不足などの課題を抱える。日本証券業協会の森田敏夫会長は20日の会見で、資産運用立国の実現に向けては、NISA拡充など投資商品の品ぞろえの充実とともに「プロの運用者をいかに増やしていくかが車の両輪だ」と指摘。国内でそうした人材が足りなければ、海外から呼び込むための環境整備が重要だと述べた」
日本が、資産運用立国の実現に向けて動き出すには、運用専門家が増えなければならない。その運用の元手は、すでに2100兆円もあって不足はない。これから、日本の資産運用は大きく変わりそうだ。