英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は、米財務省が7月31日に円相場に介入し、円を直接買い入れることで円を下支えしたと報じた。円が、約40年ぶり安値近辺で低迷する中、米政府が日本とともに円を支えるために介入するのは2011年以来となる。もっとも、日本国内では協調介入が実施された過去局面のような「危機的な状況ではない」とする見方もある。だが、40年ぶりの円安は米国にとってもインフレ「輸入」という面もあり、日本と協調行動を取ったとみるのが順当であろう。
日米協調介入は、日本単独の介入とは次元が異なり、介入資金が豊富になるので投機筋を追い払うには強力な武器になる。今回は、米連邦準備理事会(FRB)が常設する「海外・国際通貨当局(FIMA)レポファシリティー」が利用される可能性が出ている。FIMAは、日本が保有する米国債を担保に、7日間の短期融資するもので繰返し利用が可能である。投機筋は、この日米政府の強い介入姿勢で、早晩、投機から撤退するとの観測が強まっている。日米政府を相手の投機戦では歩が悪いからだ。
『ロイター』(8月1日付)は、「米財務省が円下支えで市場介入=FT」と題する記事を掲載した。
FTによると、ニューヨーク連銀がゴールドマン・サックスおよびモルガン・スタンレーを通じ、財務省に代わってユーロを売却し円を購入した。購入した円の金額は示されていない。報道が事実であれば、米財務省が円を直接支えるのは東日本大震災後の主要7カ国(G7)による協調介入以来のこと。
(1)「米財務省は31日朝、複数の銀行に対して31日に円相場に介入する可能性があるとして「今後の措置に備える」よう通知した。情報筋がロイターに明らかにした。メリーランド州キャンプデービッドで開かれた閣議中に撮影されたベセント米財務長官のメモ帳を写したロイターの写真からは、同氏が50億~100億ドル相当の日本円購入を検討していたことが判明した。閣議が公式取材に開放されていた時間帯にベセント氏の肩越しに撮影された写真のメモ帳には、アンダーラインを引いた「To Do」の文字と、その下に「Buy Japanese Yen (JPY) $5-10
bil.(日本円を購入、50億─100億ドル)」と書かれていた」
米財務長官のメモ帳を写したロイターの写真から、ベセント氏が50億~100億ドル相当の日本円購入を検討していたことが判明した。これによって、日米協調介入の実態が明らかになった。米財務省が、「円を直接買った」意味は、円安が中国に利益を与えることや、アジアの金融不安を誘発することを懸念した。また、円安が米国へインフレを輸入し、米国債の売却圧力を高めることを回避する狙いも込められている。
円安が、米国の国益にも反するという最終判断を固めたものだ。これは、単なる為替介入ではなく、日米による国際金融レジームの転換をはかったとみるべきであろう。円安を食止めることが、国際金融の安定に資するということだ。
(2)「米財務省による介入観測が伝わったことで、31日の円は今週付けた40年ぶり近い安値から上昇し、特に午後遅くの取引で目立った動きとなった。LSEGのデータによると、ドルは米東部時間午後4時14分(日本時間1日午前5時14分)ごろの約158.9円から、午後5時(日本時間1日午前6時)直前には157.6円付近へと約0.8%下落した。日銀が、31日公表したデータによると、政府・日銀が30日に実施した円買い介入の規模は6.4兆円~9.6兆円規模だったとの見方があり、円安阻止に向けた繰り返しの取り組みを示唆している。日経新聞が1日報じたところによると、日本の通貨当局は31日のニューヨーク時間にも再び介入した」
円相場は、157円台で小不動している。日銀のこれまでの円相場に対する鈍い姿勢が、「円安容認レジーム」と受け取られて投機筋を力づけてきた。だが、日米協調介入によってこういう誤った観念が一層される。願ってもない円高へのチャンスが巡ってきた。
(3)「米財務省当局者のコメントは得られていないが、財務省は、大規模介入に向けた日本の資金力の限界を巡る市場の懸念を和らげる狙いとみられる投稿を交流サイト(SNS)「X」に掲載。日本の通貨当局は「市場の流動性ニーズへ対応する幅広い手段を有している」と表明した。「秩序ある市場機能を支えるため、必要に応じて利用可能な手段を用いる用意を引き続き整えている」とし、その手段には米連邦準備理事会(FRB)が常設する「海外・国際通貨当局(FIMA)レポファシリティー」の利用の可能性も含まれると指摘した。FIMAレポファシリティーは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時の市場安定化を目的として2020年に導入された制度で、日本は米国債の直接売却を回避しながらドル流動性を調達することが可能となる。介入資金の調達圧力を和らげる効果が期待される」
米国が、日本の資金力の限界を補完したことが、これまでの介入と大きく異なる。日本の資金力の限界への懸念を和らげるため、米財務省が「幅広い手段を有している」とSNSで発信した。FIMAレポの利用可能性を示唆しており、米国債を売却せずにドル流動性を確保できる便宜を図っている。要するに、日本は「実弾(ドル)の手当を心配することなく介入可能」という建前が明らかになった。これは、介入効果を高める上で極めて重要である。投機筋が怯むからだ。



