勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

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    ソニーグループは1月、テレビ事業の主導権を中国のTCLエレクトロニクス・ホールディングスに委ねると発表した。2027年以降、TCLが製造するテレビが「ブラビア」というブランド名を引き継ぐ。ホームエンターテインメント事業で提携するソニーとTCLは、TCLの技術を用いる合弁事業を設立する。TCLが合弁会社の株式過半数を保有する。

     

    戦後の日本経済を牽引した「二頭馬車」は、家電(特にTV)と自動車であった。そのTVで世界市場を切り開いたソニーが、祖業とも言うべきTVから事実上の撤退である。ただ、TCLと合弁でブランド名を残す。こうしたソニーの決断を「利益構造の強化」として、歓迎するという見方もある。ソニーは、コンテンツ事業へ特化して行くからだ。

     

    『ブルームバーグ』(2月2日付)は、「ソニーのテレビ離れは進化の象徴、歓迎しよう」と題する記事を掲載した。

     

    ソニー製品はかつて、最先端の代名詞だった。テレビのブランドも、重厚なブラウン管の「トリニトロン」から薄型の「ブラビア」へと進化。今もなおプレミア感でユーザーを引き付けている。2027年以降、TCLが製造するテレビがブラビアというブランド名を引き継ぐ。

     

    (1)「確かに、一つの時代の終わりを告げる出来事かもしれない。だが、ソニーなど日本の家電メーカー全体がスイッチを切ったわけではない。チャンネルを変えただけだ。1970年代、ソニーはRCAやマグナボックスといった米国の家電メーカーを市場から押し出した企業群の先頭に立っていた。ソニーは優れたテクノロジーと、後にアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏に影響を与えることになる洗練された工業デザインを融合させた。その本質は、「It’s a Sony」というソニーのスローガンそのものだった」

     

    ソニーは、米国の消費者に米国企業と思われるほど浸透していた。このブランド力を生かして、ソニーはコンテンツ事業へ転換している。消費者にとっては、「チャンネルを変えただけ」かも知れない。

     

    (2)「長い間、それだけで消費者には十分だった。今でも一部の人々にとって、ソニーのテレビや日本製品全般は、他では再現できない品質と結び付いている。だが、少なくともテレビに関しては、その認識はおおむね時代遅れだ。ソニーは長年パネル製造に関与しておらず、2011年に韓国のサムスン電子との合弁事業の持ち分を手放した。ソニーのテレビ事業は10年にわたって赤字が続いた後、14年に分社化された。現在のブラビア上位モデルは、韓国製ディスプレーにソニーがソフトウエアを加えたものだ」

     

    TV組立ては、労働集約型事業である。自動車と異なって、作業の自動化が困難な分野である。そうとなると、競争力の決め手は賃金の安さとなる。日本の賃金では、競争力を維持できなくなったことは疑いない。中国が、登場するのは自然の流れであった。

     

    (3)「日本メーカーは次々とこの分野から撤退した。日本のテレビ産業衰退は、バブル崩壊後の典型的な失策と見なされた。確かに、各社はタイミングを読み違え、誤った技術への投資を重ね、自ら首を絞めた面がある。パナソニックホールディングスはプラズマに全力を注ぎ、シャープも市場が崩落する直前に液晶パネル生産へと大きくかじを切った。こうした誤算は、避けられなかった流れを早めただけかもしれない。テレビの価格はここ数十年で、ほぼ他のどの製品よりも急速に下落し、1980年以降99%下がった(同じ程度値下がりしたのはパソコンくらいだろう)」

     

    テレビの価格はここ数十年で、1980年以降99%も下がったという。パソコンも同じだ。賃金の安さが決定的な価格競争力を決める構造だ。

     

    (4)「日本の経済学者、赤松要(1896~1974)は1930年代、産業が経済発展の段階に応じて国から国へ移っていくとする「雁行形態論」を提唱した。サムスンとLGエレクトロニクスという韓国の2社が最初にテレビの寡占を崩したが、やがて同じことが韓国勢に起きるかもしれない。依然として、テレビ製造世界一のサムスンにTCLが急接近している。有機ELのプレミアムデバイスで強みを持つLGは最近、同社が最後まで持っていた大型液晶工場を売却した。買い手は誰あろうTCLだ。中国勢のテレビ製造支配が目前に迫っているようにも見えるが、将来的にはインドやベトナムとの競争に揺さぶられる可能性もある」

     

    赤松要氏の「雁行形態論」は有名である。産業は、雁が並んで飛ぶように、国際伝播することをモデル化したもの。輸入から始まって、次は国内代替生産に移行するという内容だ。米国→日本→韓国→中国→インド・ベトナムという流れが想定されるのだ。

     

     

     

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    日本は、世界のウナギ消費の6~7割を占めている。世界は、水産資源保護で稚魚の乱獲に厳しい目を向ける時代だ。こうした中で、日本の水産庁が稚魚から養殖する一貫態勢を構築した。26年には、「完全日本産ウナギ」が食卓へお目見えするという。コメ作りより高収入が見込めることから、休耕田や廃校を利用しAI(人工知能)を活用した完全養殖ウナギ時代が目前に来ている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月1日付)は、「ウナギ完全養殖、民間参入で育て 人工ふ化で『かば焼』26年夏食卓へ」と題する記事を掲載した。

     

    ウナギの完全養殖技術が向上し、商業化に向けた取り組みが本格的に始まる。水産庁は2025年度補正予算で、ウナギの人工種苗研究と社会実装の加速に向け新たに独立した予算、7億円を充てた。知的財産の国外流出を防ぎながら、民間事業者に技術移転を進める。今夏には人工ふ化のウナギを使ったかば焼きも、初めて試験販売される見込みだ。

     

    水産庁は補正予算で「ウナギ安定供給緊急総合対策」を打ち出し、7億円を計上した。現在ウナギは100%天然で採捕した稚魚を養殖しており、輸入依存度も高い。この状況から脱却するため「人工種苗の早期の社会実装」(水産庁)に本腰を入れる。水産庁所管の国立研究開発法人である水産研究・教育機構(横浜市)が開発した完全養殖技術を民間へ普及する。意欲ある企業が量産試験を実施する場合の、水槽などの設備導入や専門家の派遣による技術指導の経費を支援する。

     

    (1)「機構のウナギ研究拠点では、採卵や飼育の現場を案内し、12週間の研修も可能。「ウナギの完全養殖は日本の様々な技術、人との出会いのおかげで進化した。幅広い企業の挑戦を歓迎している」(シラスウナギ生産部の風藤行紀部長)。機構は2010年、世界初のニホンウナギの完全養殖に成功した」

     

    春先には必ず、ウナギ稚魚の密漁問題が起る。稚児からの養殖が実現したので、こういう法に触れる事態も減るだろう。

     

    (2)「人工種苗の生産費は16年度には1匹4万円と高額だったが、ヤンマーホールディングスや不二製油など民間の協力を得ながら、より安定的に量産する技術を磨いてきた。24年度には同1800円、25年度には一段と下がり、2年後の27年度には「1匹1000円を確実に下回る」(風藤部長)見通しだ。経費の大部分は水温調節の光熱費や給餌・掃除の人件費のため、温泉の熱や廃熱などを活用し「23〜25度の水を安定供給できる場所なら、より低コストを実現できるだろう」(同)」

     

    人工稚魚には、23〜25度の水が安定供給される環境が必要。生育コストの大半が、この分野という。そこで、温泉があって廃校や休耕田があれば、これを利用して「100%ウナギ養殖」が可能になる。あるいは、稚魚を一括して生産して各地の養鰻業者へ卸すという道もあろう。

     

    (3)「26年は販売面でも大きな進展がありそうだ。現在、ウナギ養殖は天然資源を守るため国の許可制で、飼育していい稚魚の上限数も決まっている。完全養殖のウナギは天然資源への負荷がないが、現在は販売や養殖のルールが整っていない。水産庁は制度面の見直しを検討している。ウナギ養殖大手、山田水産(大分県佐伯市)は環境が整い次第、今夏にも人工ふ化したウナギをかば焼きなどにし、消費者に試験販売することを目指している。実現すれば、世界初だ」

     

    生産が軌道に乗って、利益が出るという見通しが立てば、必ず手を上げる人は出てくる。これまでは、稚魚を購入して養殖してきたが稚魚価格が乱高下してきた。例えば、1kg=数十万〜100万円超も変動した。それが、稚魚の国産化で価格が安定することは、消費者にとっても大きな朗報である。値下がり期待ができるからだ。

     

    (4)「同社は機構の研究者が開発した技術が、民間の養殖事業者の手でも再現できるか、検証するため協力してきた。専門の担当者や施設を置き、採卵や人工授精、ふ化などで一定のノウハウを習得、24年以降年1万匹以上の人工種苗を安定生産している。食味も通常のウナギと遜色なく「自信を持って提供できる」(加藤尚武取締役)という。26年の丑(うし)の日商戦を目標に直営店や電子商取引(EC)サイトで販売し、消費者の声を聞きながら一段の食味向上や量産も検討していく」

     

    26年の「土用の丑の日」には、100%人工養殖ウナギが食卓へ並ぶという。

     

    (5)「ウナギの完全養殖は東洋水産や近畿大学もそれぞれ独自の技術で成功している。制度が整えば商業目的で養殖や販売もできるようになる。25年、ワシントン条約締約国会議でウナギを国際取引の規制の対象にするか議論された。今回は否決されたが、世界最大の消費国である日本に世界から厳しい目があることに変わりない。ウナギは生態に謎が多く、完全養殖は魚介類の中で最難関のひとつとされてきた。60年以上多くの研究者がバトンをつなぎ、悲願の商業化まであと一歩のところまでこぎつけている」

     

    ウナギの完全養殖は、東洋水産や近畿大学もそれぞれ独自の技術で成功している。条件は揃った。時代は、100%人工養殖ウナギへ動き出す。

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    内閣府は2日、小笠原諸島・南鳥島沖の水深約6000メートルの海底からレアアース(希土類)泥の吸上げに成功したと発表した。深海での作業は、世界初の「快挙」である。一般報道では、「採掘に成功した」が、「コストが極めて高い」という懸念を報じている。正確なコスト計算はまだされていないが、憶測で中国よりも「何十倍も高い」と喧伝する騒ぎを引き起している。これまで、レアアース不足が問題視されてきた。試掘に成功した現在は、「コストが高い」と言いたい放題の報道となっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月2日付)は、「南鳥島沖レアアース泥、技術・採算性検証 内閣府が引き揚げ成功発表」と題する記事を掲載した。

     

    探査船「ちきゅう」は112日に清水港(静岡市)を出航した後、117日に南鳥島沖の試掘予定海域に到着した。探査船から「揚泥管」という長さ約10メートルのパイプ約600本をつなぎ、水深約6000メートルの海底に降ろした。海底に採鉱機を設置し、泥と海水を混ぜて懸濁液にした後、揚泥管を通して回収した。1月30日から回収作業を実施し、21日未明に最初のレアアース泥の揚泥を確認した。

     

    (1)「南鳥島沖では、ジスプロシウムやネオジム、ガドリニウムなどの6種類以上のレアアースを高濃度で含む泥が見つかっている。このうちジスプロシウムやネオジム、サマリウムはEVを動かすモーター用などの高性能磁石に使い、イットリウムは発光ダイオード(LED)や医療機器向け超電導体の材料になる。ガドリニウムは原子炉を制御するシステムなどに使う。

     

    今回、初の海底6000メートルという深海からの採取に成功した最大の要因は、日本製鉄の「高張力鋼」が成功へ導いたとみられる。深海6000メートルの揚泥パイプは、次の条件を満たす必要があるとされる。

    1)水圧600気圧に耐える

    2)自重で座屈しない

    3)泥の流体圧力に耐える

    4)船の揺れ・振動に耐える

    5)長時間の連続運転に耐える

    これらの条件を満たすには、高張力鋼を主材とする鋼管が必要である。それが、高張力鋼とされる。日本の鉄鋼技術が成功へ導いたとも言えよう。

     

    (2)「今回の試験採掘は内閣府の大型研究開発プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環で実施されている。SIPは今回の結果を踏まえ、2027年2月に大規模な実証試験を計画する。1日あたり350トンの泥の回収能力を実証する。27年の試験開始までに、南鳥島に泥から海水を抜く脱水処理をする施設を建設する予定だ。持ち帰った泥からレアアースを精製して、28年度以降の産業化へ向けた知見を蓄える」

     

    試掘は、27年1月からだ。それまでに、南鳥島に泥から海水を抜く脱水処理施設を建設する。海底から吸い上げた泥から水を抜いて団子状に固めて本土の精錬過程へ持ち込む。

     

    (3)「レアアースは、世界の生産量の7割を中国が占める。日本も24年時点で63%を中国から調達しており、南鳥島沖で採掘できれば、経済安全保障上の利点が大きい。ただ、産業化に向けた課題は多い。大きな課題の1つは掘削と精製の技術の確立だ。掘削について、泥水の状態で海底から引き揚げるときには石油開発の分野の技術を応用する。海底に置いた採鉱機を遠隔操作でパイプに接続するなど、深海底でのリモート操作が難しいとされる。資源エネルギー工学が専門の九州大学の山田泰広教授は「深海底での重量物の複雑なオペレーションも技術的に難しい」と話す」

     

    掘削と精製の技術は、まだ確立されないとしているが、今回の掘削によってその技術は確立した。精錬は、化学的精錬法を採用する。すでに実用化されているのだ。いわゆる「都市鉱山」技術を生かしたもので、中国のレアアース精錬が引き起しているような環境破壊にはならない。インドで採用されており、広く海外へ普及する兆候をみせている。南鳥島でも日本技術の生んだ化学的精錬法が採用される。泥であるので鉱石の破砕の必要もない。AI化で無人作業が見込まれている。精錬コストは安いはずだ。

     

    (5)「採算性が低くても、自国でレアアースを生産できる技術を持つこと自体に、経済安全保障上の意味があるとの見方もある。石井氏は、「資源を把握し、採れる技術を確立する。緊急事態のための供給ルートを確保することが、経済安全保障で求められている」と強調する。海洋鉱物資源の商業開発に関する国際ルールはまだない。開発を進めるには国際的な理解を得る必要もある。国連組織の国際海底機構(ISA)は資源や生態系の保護を踏まえて海底の開発に関わる規則の策定を目指している。ISAのレティシア・レイス・デ・カルヴァーリョ事務局長は25年11月に来日し、SIPや外務省などを公式訪問した。ISAは今回の調査について、探査船「ちきゅう」を「最高水準の装備だ。日本の基礎的な科学研究と技術は、南鳥島沖の試験を確実に進めるだろう」と評価している」

     

    報道陣は、海底6000メートルからの泥吸い上げであるので、「高コスト」というイメージが染みこんでいる。こういう先入観で「高コスト」報道を繰返している。だが、現実には、次のような試算がされている。

     

    具体的な採掘コストの推定値は、次のようなものだ。

    採掘コスト(泥の吸引・揚泥)は、約2~3万円(トン当たり)

    精錬コスト(レアアース分離)は、約4~6万円(トン当たり)

    合計コストは、         約6~9万円(約400~600ドル)

     

    南鳥島の泥は、1トンあたりのレアアース含有価値が1000〜33000ドルと推定される。つまり、十分に黒字化できるという結論になる。28年以降は、技術の成熟によって生産コストがさらに下がると見込まれている。中国の生産コストは、環境軽視で数千円〜1万円台 とされるため、南鳥島のコストは4〜10倍になる計算だ。これは、南鳥島の品位が中国鉱山の20倍以上という大きな前提を忘れた「盲目的」計算である。現に、南鳥島は、1トンあたり1000〜33000ドルの価値が見込まれている。報道陣には、冷静な評価をお願いしたい理由だ。

     

     

     

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    脱中国で別市場を構築

    世界市況攪乱する魔手

    化学的精錬法が頂点へ

    日本が世界覇権を握る

     

    レアアース(希土類)は、「脱炭素」の切り札である。これから、激化する異常気象への対応策として、脱炭素が重要なカギを握る。それには、レアアースが不可欠だ。現在、中国が世界のレアアース生産で7割を占める。こうして、中国は世界に向けて「レアアース主権」を主張するほど、強気姿勢をみせている。この尊大ぶりも、これから長く続かない岐路にさしかかっている。中国がピンチを迎え、日本が圧勝するのだ。

    その吉兆として、南鳥島のレアアース試験採掘に成功した
    松本洋平文部科学相が2月1日、「南鳥島の水深6000メートルから揚泥することに成功したと一報があった」と自身のX(旧ツイッター)に投稿した。日本技術の勝利である。世界のレアアース舞台は、静かに回り始めた。こうした背景を、これから縷々とみていきたい。

     

    中国は現在、「レアアース帝国」として振る舞っている。だが、この基盤はあと2~3年で突き崩されるようとしている。その胎動が、すでに始まっているのだ。それは、次のように要約できる。

     

    1)米国が、同盟国を中心にレアアースの安定供給市場を組織化する。中国は、すでに他国のレアアース開発を妨害すべく、安値輸出を始めている。米国は、これを各国協調で阻止すべく価格安定メカニズムを構築する。今週、ワシントンで外相数十人が会議を開く。

     

    2)日本のレアアース製錬技術の「化学的精錬」が、小規模鉱山でも低コストで生産できるメドをつけ、インドが導入した。さらに、他国へ普及する見通しである。これまで採算に乗らなかった世界の小規模鉱山が、一斉に稼働化される可能性が強まっている。

     

    3)日本の南鳥島レアアース採掘が、28年ごろから商業生産へ着手する。これも、中国のレアアース生産コストに比べて安いので、十分に対抗可能である。6000メートルの深海資源であるので「高コスト」予想が強い。だが、科学技術の進歩ですでに解決した。

     

    世界のレアアース事情は、日本の開発した化学的精錬法と南鳥島のレアアース採掘によって、中国優位の構図が大きく塗り替えられる公算が強くなってきた。ハッキリ言えば、レアアースで「日本の時代」がくることは間違いない。

     

    脱中国で別市場を構築

    米国は今週、ワシントンで開く同盟国の外相数十人との会合で、レアアースの精錬・採掘事業を保護する「価格メカニズム」に関し、同盟国との合意形成をめざす予定である。中国は現在、過去に例のない安値攻勢を始めている。狙いは、新規の鉱山開発を妨害することだ。中国は、レアアースの安値市況によって、ライバル国のレアアース開発を防ぐ意図である。米国は、これに対抗する手段として生産コストを補う「価格メカニズム」を確立して、レアアースの安定的供給を確保する戦略を練っている。

     

    レアアースは、中国の支配力が強い。米国が、関税を賦課しても第三国経由での安値流入を防ぎきれないという悩みを抱える。こうして、中国の価格優位性を削ぐには、中国を排除した市場を創出し、レアアースの採算を保証する仕組みが不可欠という結論だ。米国主導で、「西側レアアース市場」が生まれる可能性が出てきた。これにより、西側諸国は中国の安値攻勢を防げる態勢を敷く。仮に、中国が超ダンピング輸出してきた場合でも、加盟国が資金を出し合い補助するシステムができあがるのだ。

     

    ここで、米国が腹案としている「西側レアアース市場」とはどういう内容か。米国は、各国が下記の4項目に合意することで、外交レベルの国際枠組みへの制度化をめざしている。一種の条約的な扱いであろう。それだけに、強固な仕組みになる。

     

    1)レアアースの最低価格(フロア価格)を設定する。

    2)市場価格が最低価格を下回れば、政府・基金がその差額を補填する。

    3)同盟国が、中国以外からの長期購入を契約する。

    4)米国・豪州・日本・欧州などで「非中国サプライチェーン」を構築する。

     

    これは、単なる産業政策ではなく、中国依存からの脱却を目指す地政学的プロジェクトになる。中国にとっては、極めて痛手だ。中国のレアアース輸出先が別途、「西側レアアース市場」をつくって、最低価格制に守られた需要と供給を調整する機構を設立すれば、中国は手出しができなくなる。中国は現在、日本へレアアース輸出規制を掛けているが、日本は「西側レアアース市場」でレアアースの供給を受けられるとなれば、その影響力はぐっと軽減される。中国は、振り上げた拳のおろしどころに困る事態となろう。

     

    世界市況攪乱する魔手

    中国はなぜ、破格の値下げをして世界市場を混乱させてきたのか。それは、レアアースの世界精錬能力の90%を握っているからだ。1980年代までは、米国が最大のレアアース生産国であった。それが、現在のようにレアアース弱小国へ転落したのは、精錬過程において環境破壊を起こすことで撤退したものだ。中国は、環境破壊への関心度が低く、世界中のレアアース鉱石をかき集めて現在の地位へのし上がった。環境破壊という、大きな代償を払った結果でもある。

     

    中国は、レアアースの膨大な在庫も抱えている。国家戦略としてレアアースの20〜40%の値下げ輸出が可能とされている。赤字覚悟によって、ライバル国のレアアース生産を淘汰し、中国の相対的な競争力強化を図ってきた。このダンピング輸出は、前述の「西側レアアース市場」創設によってブロックされることになろう。西側レアアース市場は、最低価格制を敷くことでこれを下回る「中国価格」には、補填金が支払われるので、超安値の中国製レアアースを購入する必要がないのだ。

     

    中国が、西側レアアース市場設立で大きな痛手になることは確実である。レアアース生産国は、最低価格制によって生産コストの目標が立つ。これまで、持てる資源であるレアアースを開発したくても、中国の安値攻勢で経営が成り立たないことで諦めるほかなかった。それが、西側レアアース市場では最低価格制で購入してくれることで、生産計画のメドが立つことになる。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526


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    農林水産省によると、農業を主な職業とする基幹的農業従事者数は2025年の速報値で102万人。15年前と比べて半減した。平均年齢も67.6歳と高止まりしている。産業としての農業を維持するには、自動運転などによる作業負担の軽減が不可欠だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月2日付)は、「自動運転、日本の農家を救う クボタや井関が無人機など続々投入」と題する記事を掲載した。

     

    「令和のコメ騒動」などをきっかけに、農家の減少や高齢化といった日本の農業が抱える課題が改めて浮上した。打開策の一つが、自動運転で作業負担を軽くするスマート農機だ。クボタ井関農機などが関連製品の販売を伸ばしている。運転を補助するシステムの出荷台数は10年間で15倍に増えた。世界との競争を見据え、完全自動運転の開発も進む。

     

    (1)「国内では農機の自動運転を3つのレベルに区分している。自動操舵技術によって運転者を支える農機は一番下の「レベル1」に定義される。全地球測位システム(GPS)で位置情報を把握し、適切なルートでの走行を補助する。農業の現場ではいま、こうした自動運転のニーズが高まっている。背景にあるのは、担い手の不足や高齢化だ」

     

    国内では、農機の自動運転を3つのレベルに区分する。一番下の「レベル1」は、自動操舵技術によって運転者を支える農機である。高齢者でも操作が可能だ。

     

    (2)「レベル1の農機の活用は着実に広がっている。北海道農政部によると、ハンドルを自動制御するシステムの全国の出荷台数は24年に7490台で、10年前と比べて15倍に増えた。耕地が広くて機能を発揮しやすい北海道に限れば「全トラクターの2割程度まで普及している」(農政部)。農機各社も新製品の投入に動く。井関は25年12月、コンバイン(収穫機)の新製品を発表した。レベル1に相当する商品で、稲刈りの際に自動で直進し続けられる。従来は2300万円前後の大型機にしかなかった機能を、1500万円前後の機種に搭載した。26年11月に発売予定だ」

     

    レベル1は、北海道に限れば「全トラクターの2割程度まで普及している」という。身近な存在だ。

     

    (3)「国内最大手のクボタでは、25年の自動運転対応の農機販売台数が、運転手が乗らずに近くで監視する「レベル2」を含めて前年比約50%増の約300台となった。24年に投入した世界初の無人運転のコンバインなどの出荷が伸びた。クボタは「レベル3」に相当する遠隔監視型の無人農機も開発中で「数年内の実用化を目指す」(同社)。ヤンマーホールディングス傘下で農機を手がけるヤンマーアグリも、無人トラクターの遠隔操作技術の研究開発を進めており、25年7月に初公開した。ただ、無人農機が交通ルールを守って農地間の公道を走るには安全性の確保などで課題が残されている。実現に向け、各社の検証が進む」

     

    運転手が乗らずに近くで監視する「レベル2」は、24年に投入した世界初の無人運転のコンバインなどの出荷が伸びている。「レベル3」は、遠隔監視型の無人農機である。クボタは、「数年内の実用化を目指す」としている。

     

    (4)「井関によると、世界では自動運転について統一的なレベルの定義はなく、各国のメーカーが国際標準化機構(ISO)規格などに基づいて開発を進めている。米欧や中国などは所有者あたりの耕地面積が広く、自動運転も効果を発揮しやすい。東南アジアなど海外展開を進めている日本の各社にとっても、今後は自動運転の農機開発が競争力を左右しそうだ」

     

    世界では、自動運転について統一的なレベルの定義はない。未だ、実用化段階に達していないのだ。今後は、自動運転の農機開発が競争力を左右しそうである。

     

    (5)「スマート農機の開発の機運は国を超えて広がる。1月に米ラスベガスで開かれたテクノロジー見本市「CES」では、米農機最大手のディアがコーン畑などで使うコンバインの最新機種を披露した。作業者は運転席に座っている必要があるが、収穫の速度を自動で調整し、収穫物の品質に応じて自動でより分ける。「収穫時の効率が25%高まり、作業日数の短縮につながる」。コンバイン技術を担当するマネジャーのジュリアン・サンチェス氏はこう説明する。既に2000台以上が稼働したという。ディアは30年までの完全自動運転の実現を掲げる」

     

    米農機最大手のディアは、30年までの完全自動運転の実現を掲げている。日本企業も、これに対応しなければならない。

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