勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国が、GDPで日本を抜いたのは2010年。この直後の中国は、日本に対して優越感に浸っていたものだ。日本に侵略されたが、ついにその無念を晴らしたという調子であった。在日中国人エコノミストの某氏は、中国がGDPで日本を上回ったのだから、中国を尊敬しろと言い放つ騒ぎである。

     

    現在の中国には、そんな空騒ぎをした痕跡はきれいさっぱりと消えている。多くの訪日観光客が、「生の日本」を見て驚愕している。「同じアジア人でありながら、どうして日本人はルールを守る国民なのか」というものだ。

     

    これは、日本と欧州に共通な封建時代を経験している結果であろう。最近もこのブログで触れたが、世界史では日本と欧州だけが、封建時代を経験していることだ。封建時代とは、各領主の下で一定の自由が与えられた社会であり、自主的ルールが存在した。中国には、封建時代がなく、秦の始皇帝以来、ずっと専制時代のままに中国共産党政権が成立した。専制時代は、王が全土を支配したから、脱法行為が盛んで自主的ルールなど存在する余地がなかった。

     

    現在の中国人訪日観光客が、日本人のマナーの良さに舌を巻くのは、封建時代を経験せず、専制時代から一足飛びに、現代へ移行したことを表していると思う。

     

    『サーチナ』(4月22日付)は、「日本人の民度に征服され 尊敬するように、一体なぜ?」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『今日頭条』はこのほど、日本人の民度が「ドイツ人よりも高い」と紹介する記事を掲載した。

    (1)「記事はまず、「民度は学歴でもお金でもなく『一挙手一投足』から分かるものだ」と持論を展開。言い換えるとちょっとした日常に見られるということのようだ。それまで「メディアの宣伝のせい」で、日本に対して非常に悪い印象を持っていたという記事の筆者だが、クルーズ船での日本旅行で、ほんの半日日本に立ち寄っただけで、日本人の民度に「征服」され、尊敬しないわけにはいかなくなったという。そして、改めて日本旅行を計画して気付いた日本人の民度について紹介している」

     

    (2)「筆者が特に感動したというのは、日本が「人に優しい社会」であることだ。例えば、子どもや車いす利用者に優しく、エレベーターには届きやすい高さにボタンが設置され、公共のトイレには専用のトイレやおむつ替えシートがあり、空港には子どもの遊び場がある。また、喫煙者にも優しいとも指摘している。指定場所でしか喫煙できないものの、外の寒空の下で吸わなくても良いように、屋外には専用の喫煙室が設置されていると紹介。場所によっては加湿器や自販機まであるほど親切で、プライバシー保護のために目線の部分をすりガラスにするなど、利用者の立場になって設計されていると伝えた」

    読んでいただいた通りの記事で、コメントを付ける必要もない。だが、中国人女性が日本旅行で知り合った日本人と結婚して、一ヶ月で中国へ帰りたくなったという記事も紹介したい。

     


    『サーチナ』(4月19日付け)は、「日本人と結婚した中国人女性、1カ月も経たないうちに中国に帰りたくなった理由」と題する記事を掲載した。

     

    記事は、日本への旅行で偶然知り合った日本人男性と縁があって結婚に至ったという一人の中国人女性について語っている。彼女が日本で始めた結生活は、当初想像したものと全く異なり、順風満帆とはいかなかったとしている。

     

    (3)「日本で生活して初めて「旅行で訪れた際に感じた日本の清潔で心地良い環境は、全て地元住民の払う自己犠牲のうえに成り立っている」ことを知ったという。この中国人が一番苦労したのも「ごみの分別」であり、曜日ごとに決められた種類のごみを指定された時間に出すというのは決して簡単なことではないと主張した。中国にも指定のごみ捨て場はあるが、いつ、どの種類のごみを捨ても良く、分別に対しても厳しい決まりはない場合が多い。ゆえに、中国人が日本のごみの分別や回収の細かなルールを突きつけられると辟易してしまうというのも理解できるだろう」

     

    中国では、日常生活でルールを守る習慣が余りないことだ。日本では、子どもの頃からそういう訓練を受けている。中国と日本の違いは、まさにここにある。封建時代を経験した日本と経験しないままに現代を迎えた中国の差である。民度の高さ云々は、歴史の発展がもたらした一断面と言える。


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    韓国メディアでは最近、日本について憎くて気に入らないが、仲良くしないと損をする。だから、表面的にでも上手く日本と付合おう、という主張が登場している。

     

    個人の間でもそうだが、あからさまに利用してくることの分る相手と交際するのは時間の無駄である。打算のない、無私な立場で純粋に相手のことを心配してくれる人しか交流したくなくなるものだ。これは私だけの感想かも知れないが、国家間でも冒頭に挙げたような韓国式の打算はお断りしたい。

     

    『中央日報』(4月22日付け)は、「文在寅政権発の韓日関係破綻の恐怖」と題するコラムを掲載した。

     

    筆者は、同紙の李夏慶(イ・ハギョン)主筆である。主筆とは、普通は論説委員長より上の最高ポストである。この人物が、「いくら憎くて気に入らなくても、日本とうまく付き合って」と言っている。ジャーナリズムの本流から外れた議論だ。

     

    (1)「日本大使を務めた柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商部長官は日本の心理をよく把握している。韓国が1997年の通貨危機当時に国際通貨基金(IMF)行きという屈辱を経験することになった決定打は日本の短期外債の回収だったとみる。柳氏は『韓国を最もよく守るのが日本だと考えてきたニューヨーク・ロンドン・香港の金融市場は大変な事態になったとみて次々と韓国から資金を抜いた』と話した」

     (2)「 その2年前の1995年11月14日、金泳三(キム・ヨンサム)大統領と江沢民国家主席の韓中首脳会談後の記者会見での発言が禍根となった。『南京大虐殺をどう思うか』という質問に対し、江沢民は『幼かった頃に私が実際に見たが、日本はそのようなことはなかったとしらを切る』と述べた。金大統領は『日本の政治家の妄言が続いている。悪いクセを直す』と語った。日本は驚いた。大統領外交秘書官として現場にいた柳氏は『この発言がIMF行きを招いた』と振り返った」。

    1997年、韓国が通貨危機(ウォン暴落)に見舞われた際、日本が緊急支援しなかったからと日本を恨んでいる。日本は韓国を救済しなければならない義務があるわけでない。この一件で見ると、韓国の日本への甘えは相当に大きいことが分かる。金泳三大統領が、「日本の政治家の妄言が続いている。悪いクセを直す」と発言した以上、日本側は「困った時だけ頼ってくるな」と拒否するのは当然だろう。

     

    人間関係も同じだ。盆暮れの挨拶をするのは、相手との友誼を保つという印である。普段の交流もなく突然、頭を下げられても相手の依頼には応じられまい。そこには、信頼関係がないからだ。韓国の金泳三大統領は、日韓の信頼の絆を自ら切ったのだからやむを得まい。

     

    (2)「文在寅(ムン・ジェイン)政権が慰安婦合意を無力化し、強制徴用者に対する日本企業の賠償責任を認める最高裁の判決が出てから、韓日関係は悪化の一途だ。日本は『日韓協定に基づく国家間の約束を破った』と主張している。加害者である日本が被害者になるというあきれる状況を韓国が自ら招いた。通貨危機当時のように日本が韓国に致命傷を負わせる可能性を懸念する人が多い。日本はすでに慰安婦少女像設置を問題にして韓日通貨スワップ交渉を中断している状態だ」

    文在寅大統領が、第二の「金泳三」になる可能性は大きい。文氏は、経済音痴である。通貨危機が、どのようなものかもおそらく詳細に掴んでいいないと思う。向こうっ気だけは強いが、緻密な計算のできないタイプと見る。創造力がたくましければ、日本を積弊勢力呼ばわりはしまい。感情過多症に陥っている。

     

     (3)「申ガク秀(シン・ガクス)元駐日大使は両国経済を『世界バリューチェーンと部品サプライチェーンで相互依存的な関係』と説明する。許昌秀(ホ・チャンス)全国経済人連合会(全経連)会長は「韓日関係が良い時、韓国の経済は良かった」と言う。最近は何かおかしい。朴チョル熙(パク・チョルヒ)ソウル大教授は『韓国に来る投資が中国や台湾に向かう事例が生じている』と話した」

    文在寅大統領の任期中は、日本にとって韓国の「カントリー・リスク」はきわめて高くなった。一国大統領が、公然と「反日姿勢」を取る国家へ投資するはずがない。グローバル・エコノミーの現在、TPP11(環太平洋経済連携協定)へ投資するのは当然のことだ。

     

    (4)「文政権はなぜ韓日両国関係の破綻を放置するのだろうか。国内政治を狙った過剰民族主義、反日情緒が問題だ。いくら憎くて気に入らなくても、日本とうまく付き合ってこそ安倍首相を通じてトランプ大統領の米国に韓国を認めさせることができる。経済と安全保障のリスクも解消し、対北朝鮮政策での役割も確保される。今の状況は非常に危険だ」

     

    韓国は、最初から日本を利用しようとしている。ならば、それなりの心配りをするべきだろう。敗戦後、日本が韓国を利用しようと考えたことはない。地政学的なリスクが軽減されたからだ。日韓併合は、地政学的リスクを回避する目的であった。

     

    韓国は、日本を憎いとか気に入らないと思っている以上、日韓関係が改善するはずがない。日韓関係改善のカギは、韓国にある。なぜなら、日本は韓国を利用しようという意図がないからだ。


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    韓国人にとって、反日は常識である。現実には、日本の歴史をほとんど知らないままに「反日」を叫んでいるという厳しい指摘が現れた。ソウル大学教授がその主である。

     

    韓国朱子学に深く染まった韓国人である。自分たちは、高い道徳を身につけた民族である。日本はアジアの辺境にある野卑な民族だ。日本は知るに値しない国である。せいぜい豊臣秀吉と伊藤博文の二人だけ知っていればことたりるという認識であろう。こういう浅薄な歴史知識に基づいて、日本批判とはおこがましいというのだ。

     

    『朝鮮日報』(4月21日付け)は、「『克日』したければ家康について知るべし」と題する寄稿を掲載した。筆者は、朴薫(パク・フン)ソウル大学東洋史学科教授である。

     

    「克日」とは、日本を乗り越えるという意味で使われている。「反日」は、単なる感情論とすれば、「克日」は深く日本を理解し韓国も日本に負けないように努力しようというニュアンスである。このほうが、理性的な対応なので「切磋琢磨」という関係になろう。現在の文在寅政権は、単純な「反日」である。金大中・元政権は「克日」に近い存在と思われる。これは、私の感想である。朴薫教授が言っている訳でない。

     

    (1)「韓国人のように、日本に対して極めて強い関心を抱きつつも知識は貧弱というケースは、よそではなかなか見られない。ほとんど全ての面で日本相手に競争心を燃やしデリケートに反応しつつも、当の日本、とりわけ日本史についての学びはお寒い限りだ。真に『克日』したいのなら、日本の歴史を知ることが最良の道のはず。私は、口では克日・反日を語りながら日本史には少しも関心を持たない人を見ると、本当に克日を望んでいるのかと疑わしく思う」

     

    歴史の知識が必要なことは、あらゆる分野で共通している。経済なら経済史、科学なら科学史である。先ずこれを学ぶことで、対象学問の概略を知りうるからだ。かつて、算数嫌いな子どもに、数の歴史を教えたら、とたんに算数に関心を持つようになったという報告を聞いた。歴史とは、抽象論でなく具体論だから興味を持たせるのだ。

     

    韓国でも、反日から克日へ転換させるには、文在寅大統領のように「積弊=親日=保守」という政治的な立場でなく、隣国・日本を知るという戦略論に立てば認識が変るはず。金大中氏は、それをやってのけた大統領である。

     

    (2)「わずかながら韓国人に知られている歴史上の人物も、大抵は豊臣秀吉、伊藤博文のように韓国史とあしき縁がある人物だ。しかもそれすら、前者は李舜臣(イ・スンシン)、後者は安重根(アン・ジュングン)との接点部分に限られる。韓国人にとっては思うところがあろうが、豊臣秀吉は日本の近世、伊藤博文は日本の近代をそれぞれ築いた『founder』だ。新たな日本づくりが、彼らの手でなされた。壬辰(じんしん)倭乱(文禄・慶長の役)も韓国併合も、その過程で起きた

     

    歴史は、川の流れのようなものだろう。連綿として続いている。秀吉も博文もその流れの「一点」に立つに過ぎない。歴史は「通観」してこそ初めて、現代が理解できるものだ。私は、いつもそういう視点で見るように務めている。

     

    (3)「幸いなことに小説『大望』(山岡荘八、原題は『徳川家康』)のおかげで、徳川幕府を樹立した家康はまだ知名度がある。山本七平が書いた『待ちの剣:100年の残酷時代を終わらせた徳川家康』(21世紀ブックス、パク・ソンヨン訳、原題は『徳川家康』)は、「近世」という時代の性格、家康の業績が持つ歴史的意味、彼の人間的な側面や独特なリーダーシップを興味深く伝えてくれる」

     

    (4)「織田信長と豊臣秀吉の革新的政策を、家康は積極的に継承し、安定的に定着させた。政策は革新的だったが、実行の過程は老獪(ろうかい)で、遠回しだった。また家康は、あまたいる戦国武将の中でも出陣の経験が最も多い将帥の一人だった。指揮を執るだけでなく、敵陣深く入り込んで兵士のように戦った。戦闘においても政策においても、上の人間だからと後ろに引っ込んだりはせず、現場で『タフに取り組んだ』」

     

    (5)「今の日本社会のルーツは徳川時代にある。明治維新も近代化も、そのルーツの上で展開した。だから現代日本を深く理解しようと思ったら徳川時代を知るべきで、その創設者たる家康について学ばなければならない。数十年の間に私が会ってきた多くの日本人は、声を強めて『反日!』を叫ぶ人よりも、家康、坂本竜馬、東条英機について読み、知っている韓国人の方を評価し警戒した。例外なく、一様にそうだった」

     

    世界史的に言えば、欧州と日本だけが封建時代を経験した。封建制とは、天子(王様)の下に諸侯が各自領内の政治を任された政治制度である。日本が、欧米制度をスムースに導入できた背景にはこれがあった。中国や朝鮮など他国には、この封建制度がないのだ。その一つ前の専制時代であり、天子が全土を直接統治した。

     

    日韓併合は、専制政治の朝鮮を近代国家へ飛躍させようという試みである。韓国で、こういう歴史知識があれば、「反日」で凝り固まって日本を絶対に許さないとか、積弊対象にすることもないであろう。文在寅氏には、世界史の知識が欠けているのだ。お気の毒に思う。


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    日韓をめぐる「福島産海産物」輸入規制問題で、韓国が一審で敗訴した。二審では、逆に日本が敗訴するという意外な結果になった。結審後10日も経つが、韓国は敗訴覚悟でまともな資料もつくらなかったのだ。そういうデタラメな実態を究明したい。

     

    WTO(世界貿易機関)が二審で、韓国の主張を認めたのは不可解の一語である。韓国は現在、さも正義の勝利のごとき振る舞いをしているが、完全に彼らは敗訴を覚悟していた。一審の段階で日本の現地調査をしながら、その報告書も途中で執筆を中断したまま。勝ち目はないと諦めていた。それが、まさかの「勝訴」。一番、驚いたのは韓国だ。

     

    WTOは、二審でどこを見ていたのか。一審では、日本の主張を100%認めておきながら、二審では韓国に軍配を上げた。日本は、まさにペテン師に引っかけられたようなものである。多分、韓国の市民団体が「むしろ旗」で、WTO本部のあるジュネーブに乗り込んでくるのを恐れたとしかいいようのない結果だ。

     

    韓国市民団体は、「狂気」の集団である。慰安婦の少女像を世界中に設置して歩いている集団だ。反日が唯一の生きがいのようなものである。静かなジュネーブで、デモ行進しない保証はあるまい。こういうことに不慣れなWTOが、恐れをなしたとしても不思議はない。

     


    先ず、韓国が敗訴を覚悟していた状態を紹介したい。

     

    『ハンギョレ』(4月10日付け)は、「4年にわたる福島水産物紛争、危険性の立証を放置した韓国政府」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本の福島周辺の水産物の輸入をめぐって日本と貿易紛争中の韓国政府が、これら水産物の放射能の危険性を証明する基本報告書も用意せず、世界貿易機関(WTO)訴訟に対応してきたことが明らかになった。1審で敗訴した韓国政府は、12日に開かれる2審でもやはり敗訴する可能性が高いものと予想される」

     

    韓国政府は、「福島産海産物」の輸入規制が、科学的な根拠に基づかない措置であることを知っていたので、最初から「負け戦」覚悟であった。これでは、放射能の危険性を証明する基本報告書も用意できるはずがない。

     

    (2)「これまで韓国政府は、日本政府との貿易紛争後、消極的な対応で一貫してきた。まず、世界貿易機関に証拠資料として提出する報告書すら作成しなかった。政府は日本の提訴前の2014年、日本の放射能リスクと関連した報告書を作る目的で『日本の放射能安全管理民間専門委員会』を立ち上げた。民間委は同年12月と2015年1月、二回にわたって日本の現地調査まで終えたが、日本の提訴後、活動を中断した。さらに、同委員会は二回の現地調査に対する結果報告書も作成しなかった」

     

    韓国政府は、世界貿易機関に証拠資料として提出する報告書すら作成しなかった。また、日本の現地調査まで終えながら、報告書も作成しなかったのだ。日本の提示するデータに圧倒されて、もはやそれに反駁するようなデータもないので報告書作成を「放棄」したとしか思えない。

     

    (3)「これと関連して、世界貿易機関は1審の判定で『韓国政府がなぜ最終手続き(報告書の作成)を中断したのか、その理由をきちんと説明できなかった』と指摘するほどだった。しかし、昨年の1審敗訴後も韓国政府は何の後続措置もしていない。関連する政府機関も根拠資料を作成していない。例えば、日本から輸入した農水畜産物の放射能数値を検査する食薬処は、日本産食品の放射能濃度に関する分析報告書も作成していない。福島近隣の環境をモニタリングする原子力安全委員会も、訴訟の対応論理として使えるだけの分析資料は何も提出していない。原安委は、事故が発生した東京電力の内側と、近隣の大気中の放射能の数値だけを調査しただけで、土壌や海水汚染は調査しなかった」

     

    韓国政府が、なぜ最終手続き(報告書の作成)を中断したのか。WTO一審では、その理由をきちんと説明できなかったとまで指摘したのだ。韓国の「放棄試合」であったのが、二審では「勝訴」という意外な結果が出た。WTOの権威を疑われる事件だ。

     

    文大統領は、詳しい事情を知らないので「勝訴」が出た後に、次のような指示を出している。

     

    文氏は、「緻密に準備すれば貿易紛争で勝つことができるという自信を持ってほしい」と述べた。また、今後の別の紛争訴訟で参考にするためにも一審の敗訴原因と上訴審で変わった対応戦略など一審と二審を比較分析した資料を残す必要があると、検討を指示した(『中央日報』4月16日付け)という。文氏からこの指示を受けた担当部局は、さぞ困っているだろう。負け戦覚悟で資料もつくっていなかった。それが「勝訴」というのである。WTOは、インチキな結論を出したものである。



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    韓国の文在寅大統領の訪米では、トランプ大統領との実質対話が「2分」に過ぎなかった。全体の首脳会談も、116分と切り詰められた。理由は、米国が南北交流事業に反対であったからだ。

     

    トランプ氏は、5~6月に異例の連続訪日する。その際、文氏は訪韓を希望したが、明確な回答はなかったという。それだけでない。会談でトランプ氏から日韓関係改善を促されたという。文氏にとって、自らの希望は一つも叶えられないどころか、「日韓の宿題」まで出される結果になった。

     

    ホワイトハウスから発表された、トランプ大統領の訪日日程は、5月25~28日である。新天皇と最初に会見する国賓になる。また、大相撲夏場所千秋楽にトランプ氏を招く計画も伝えられており、日米関係の緊密化を象徴するような「トランプ・デイ」になりそうだ。

     

    韓国は、トランプ氏が訪韓しないことに強い不満を持っている。それが、次のような日本批判の記事になって現れた。

     

    『朝鮮日報』(4月19日付け)は、「安倍首相、今月末メラニア夫人の誕生日パーティーに出席」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本の安倍晋三首相が今月末訪米してドナルド・トランプ米大統領の妻メラニア夫人の誕生日祝賀会に出席し、トランプ大統領とゴルフまでする予定だと政治専門メディア『ポリティコ』が17日(現地時間)、報道した。トランプ大統領は5月に日本を国賓訪問し、6月に大阪で開催される主要20カ国(G20)サミットのため訪日する計画があるのにもかかわらず、あえて安倍首相がトランプ大統領の機嫌を取るため訪米するということだ。ポリティコは同日、『51日に新天皇即位式を行う時、安倍首相は時差のため疲れた状態かもしれない』として、安倍首相がトランプ大統領との関係を構築するために6700マイル(約1万800キロメートル)を飛ぶ『36時間の出張』をすることを報じた。安倍首相は26日のメラニア夫人49歳の誕生日祝賀会に出席し、その翌日にトランプ大統領とゴルフをする予定だ」

     

    この記事から伝わってくるイメージは、韓国大統領が冷遇されているのに比べ、安倍首相がトランプ大統領と密接な関係を築いていることへの「やるせない気持ち」である。また、5月にトランプ大統領が訪日するのだから、安倍首相今月末に訪米する必要はあるまい、とも言っている。ここが「安倍外交」のしたたかさなのだ。トランプ氏を国賓として迎える手前、トランプ氏の希望や会談テーマをさらに絞り込む準備と見られる。

     

    5月のトランプ訪日で発表される日米共同声明は、歴史的な内容を目指しているのであろう。安倍首相は、そのためにも詳細な打合せをしていると思われる。メラニア夫人の誕生日にわざわざ渡米するはずがない。安倍外交の「凄さ」はここにある。「将を射んとせばまず馬を射よ」である。外交も所詮,人間と人間の関係である。文在寅氏は「偏屈」で、好き嫌いがハッキリしている性格だ。そういう者に外交は不向きである。

     

    3月末にベルギー国王が訪韓した歓迎晩さん会には、韓国の経済団体・全国経済人連合会(全経連)の会長が出席した。事前に報告を受けていなかった文大統領は、晩さん会の会場で側近たちに「なぜ全経連が来ているのか」と不快感を示したという。全経連と言えば、日本の経団連である。その会長が歓迎晩餐会に出席しておかしいはずがない。「反企業主義」の文氏には、それすら我慢できないことなのだろう。韓国経済が沈没するのは当然の道行きである。

     


    (2)「同メディアは、『世界のどの指導者も日本の首相ほどトランプ大統領と近しくしようと試みた人はいないだろう』と伝えた。安倍首相は、トランプ大統領との個人的な関係を築くことこそ、米国から『外交的譲歩』を引き出す道だと信じ、この2年間で金メッキのゴルフクラブをプレゼントしたり、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦したりするなど、全力を尽してきた。日本の外交官たちはトランプ大統領が来月26日から28日まで国賓訪問で東京に来る時、どのようにすれば強い印象を与えられるかホワイトハウス関係者や学者たちの意見を集めているという」

     

    安倍首相は、国益のために東奔西走しているのだ。トランプ氏のような「気むずかし屋」を、安倍首相は友人にしてしまった。各国の首脳から,そのノウハウをよく聞かれるという。それは、誠意を見せれば相手も見せるという,単純なことなのだ。安倍首相にはそれができるが、文大統領には不可能だ。偏向した価値観=チュチェ思想に縛られている結果であろう。

     

    日本の外交官が、トランプ訪日でどのようにすれば強い印象を与えられるか。ホワイトハウス関係者や学者たちの意見を集めているという。記事では、軽蔑したような書き方だが、韓国外交部(外務省)より優れている。先に紹介した韓国大統領府がベルギー王妃への贈り物として、幼い王女・王子の韓服(韓国の伝統衣装)を準備した。ところが、外交部の資料は45年前のもので、年齢も当時のままだった。そのため、出来上がった韓服は小さすぎて、王女・王子が着られないサイズだったという。こういう韓国外交部の失敗から見れば、日本の外交官は褒められるベき行動である。卑下する必要は、さらさらないのだ。


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