勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

    a0070_000030_m
       


    技術が経済を牽引する時代

    日本は世界のパイオニ役へ

    サービス収支は大幅黒字に

    盤石な技術四層体制固める

     

    ドル円相場が揺れている。日銀が政策金利を引上げても、米国がすでに引上げているので、日米金利差が縮まらないからだ。現在の1ドル150円台は、日本経済の潜在成長力から言えば、かけ離れた「安値」であることは間違いない。しかし、日米実質金利差からはじきだされた「相場観」から動きが取れないのだ。もう一つ、高市首相の「積極的財政政策」がリフレ政策(インフレ容認)と捉えられている。かつて、「円安も良いことがある」などと言い放ったことが、リフレ論者との烙印を押されている結果であろう。

     

    高市氏は改造内閣で、「リフレ論者」のイメージを取り去るべく、片山財政相と城内経済財政担当相への「政策指示書」において、次のような内容を強調した。「債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、日本経済の力強い成長と財政の持続可能性を両立させる」というものだ。これは、市場を強く意識した内容である。名目GDPに占める国債残高比率を引下げて、日本の国債残高が膨脹しない「歯止め策」を講じるとしている。

     

    IMF(国際通貨基金)は、高市政策の妥当性を示している。日本の国債残高が、対名目GDP比で漸減して行くという予測を出しているのだ。債務残高対名目GDP比は、2024年の215%から、26年には206%台へと低下すると推計している。

     

    国際機関の中で、日本の財政赤字は膨らむという予測があるわけでない。もっぱら、内外市場が財政赤字拡大を囃し立て「円売り材料」に利用している面が強い。こうみてくると、高市氏の「円安歓迎発言」がいかに不用意であったか悔やまれるのだ。

     

    日本経済の実態は「市場の戯言」と反対に、かつて見られなかったほどの強靱さを身につけようとしている。現状において残念ながら、こういう日本経済の実力強化を認識する論調は見当たらない。ただ、目を凝らして日本経済の実態を見れば、内外市場における日本経済観は大きな修正が求められるであろう。確実な動きを始めているのだ。

     

    技術が経済を牽引する時代

    経済発展の原動力は、労働・資本・技術である。この中で、現代において最も大きな影響力を持つのは技術であろう。最新技術があれば、資本は世界中から集まるし、足りない労働力をカバーする意味で、技術こそ経済発展の原動力と言って差し支えない。以上の意味を少し具体的に取り上げると、次のようになる。

     

    労働は、これまで経済成長の中心軸であった。現在は、次の理由で限界が明確になっている。少子高齢化で人口が増えない、労働生産性の伸びが鈍化、労働の質は教育投資に依存して急増しない、人口が増えても技術がなければ付加価値は伸びない。こういう事態に直面している。だから、労働は「補助要因」となり、経済成長の主因ではなくなってきた。

     

    資本はいくらあっても、技術がなければ意味を持たなくなっている。つまり、資本は「技術を使うための器」にすぎない。技術がなければ、いくら投資しても収益を生まないのだ。技術があれば、世界中から資本が集まる時代環境になった。技術がある国は、資本コストが下がるので、資本は技術のない国から逃げ出す構図になった。資本は、「技術に従属する関係」になった。

     

    結論として言えることは、技術こそが労働と資本を自由に操つれるという意味で「唯一の成長要素」となった。技術専門家が、経営者を超える報酬を取る時代になったことは、これを裏づけるものであろう。技術があれば、労働力不足を補えるので労働の量を代替し、質を補完する。資本も自動的に集まる。ここから導かれる結論は、次のようなものになる。

     

    技術があれば、名目GDP成長率が自然に上がることだ。技術ストックが巨大な国は、景気循環と無関係に名目GDP成長率を引上げるであろう。一方、技術があれば世界中から資本が集まり金利が低下傾向を辿るであろう。結論として、名目成長率が上昇して金利が低下する、好循環過程を進む可能性が強まる。技術こそ、経済発展の原動力になるという一般論が、こうして成立するであろう。つまり、他国を圧する「技術ストック国」は、赤字財政問題から解放される。名目GDP成長率が上がって、金利が下がるからだ。

     

    以上の枠組を提示したのは、日本がこの構造において「最強の位置」にあることを指摘する目的にほかならない。日本は労働・資本ではなく、分厚い技術ストックに支えられ今後、成長して行く国になる。日本は、「失われた30年」の間に世界をリードする技術を次々に開発している。鉱山の化学的精錬法、光電融合通信のIOWN(アイオン)、現場型フィジカルAI半導体(27年量産化)、産業用ロボットで世界の先鞭を切っている。いずれも、他国の追随が不可能という最新技術だ。財政赤字問題も自然に解消する。

     

    化学的精錬法では、すでに中国の「レアアース覇権」を食止めることに成功した。8月から稼働している「重要鉱物特恵市場」(参加国55ヶ国)は、日本の化学的精錬法利用が前提条件で、世界各国が中国へレアアースの精鉱を売却せず、精鉱によって重要鉱物特恵市場で取引を始めている。日本は、精鉱を輸入し精錬しているのだ。このように、新技術が中国のレアアース覇権を色あせたものに変えさせるほどの威力を発揮している。当然、日本経済へ大きな「果実」(莫大な特許料収入)をもたらす。

     

    日本は世界のパイオニア役

    ここで、「技術ストック」という考えを提示したい。次のような、前提を満たす技術の集積である。技術ストックとは、「国際基準になる技術」であり、世界が使わざるを得ない技術を指す。だからこそ、特許料収入という「国際的な地代」を生む可能性を持つ。技術ストックは、単なる技術の集合ではなく、「世界が依存し、代替できず、標準として採用される技術」である。これだけ高度の技術が、ストックとして日本に蓄積されている。(つづく)

     

    この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

    https://www.mag2.com/m/0001684526


    a0001_001078_m
       

    岩屋毅前外相は29日、北京で中国の何立峰(ハァ・リーファン)副首相と会談した。中国は高市早苗首相と距離をとる「非高市勢力」と対話し、高市政権に強硬姿勢を修正するよう揺さぶりをかけているとみられる。岩屋氏は28日、王毅(ワン・イー)外相とも会談している。こうして中国は岩屋氏と副首相と外相が会談するという厚遇ぶりを見せた。

     

    中国が、岩屋氏に対して「外相+副首相」という二段階の厚遇を示したのは、外交的に見れば日本への「焦りのシグナル」として読むのが妥当だ。通常、中国が日本の前閣僚に会う場合は、外務次官級、共産党対外部の部長級か、せいぜい外相単独レベルですある。今回は、外相(外交のトップ)と副首相(党・政府の中枢)という「二重の格上げ」を行っている。これは外交儀礼上、「日本に対して急いで関係改善のメッセージを送りたい」という意思表示である。

     

    中国はなぜ、日本に急接近しているのか(構造的理由)。米中関係の停滞である。先の米中首脳会談は派手なものだったが実り少なかったので、中国は日本へ接近を始めたのだ。米国は、半導体封鎖、AI封鎖、投資規制、同盟網の強化を進めており、中国は「出口」を探しており,その出口が日本である。日本へ接近すれば「なんとかなる」という甘えだ。

     

    先の高市首相とトランプ大統領の会談が、中国にとって「日米の結束が強すぎる」という衝撃であった。そのため中国は、日本の「周辺」に働きかけて揺さぶりをかける必要がある。岩屋前外相への厚遇はその一環だ。中国は外交で焦ると、次の行動を取る。格上げした面会、過剰な礼遇、「友好」「協力」を強調、日本側の「非政府系」や「元閣僚」に接近する。日本国内の親中派ネットワークを活性化させる。今回の岩屋前外相への対応は、このパターンに完全に一致している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月30日付)は、「岩屋毅前外相、中国副首相と会談 中国は『非高市勢力』と対話」と題する記事を掲載した。

     

    何副首相は、高市首相の台湾有事を巡る国会答弁を念頭に「誤った言動を克服し、両国の経済・貿易関係の発展を推し進められると確信している」と語った。

     

    (1)「何氏は中日間の貿易について、「今後も発展と成長の勢いは強く、阻むことのできない」ものだと強調した。一方で「日本の一部政治家が軍国主義を正当化しようとし、台湾問題で中国側のボトムラインに挑もうとしている」と批判した。岩屋氏は「厳しい状況にある日中関係の改善のために最善の努力をしたい」と述べた。岩屋氏は、日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長として中国を訪れている。何氏は経済政策を担当しており、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制などを議論したとみられる。岩屋氏は30日まで滞在を予定する」

     

    中国は、振り上げた拳の下げどころに困っている。中国が、日本を必要としていることは明らかだ。技術的に行き詰まっているからだ。日本は、レアアース問題も半ば解決した。これから中国は、レアアース最大の輸出先日本を失うのだ。自業自得である。

     

    (2)「岩屋氏は28日に王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相と会談した。香港フェニックステレビが伝えた。王氏は会談で「国貿促が重要な時期に中日関係の改善と発展に力を発揮すると信じている」と語った。木原稔官房長官は29日の記者会見で日中関係について「幅広い分野での重層的な意思疎通が重要だ」と述べた。政府高官は同日、記者団に「少しずつ良い傾向になっている」と発言した。外相会談を通じ首脳会談につなげる段取りに触れた。夏に入って国会議員の訪中が相次いでいる。8月下旬に公明党系の議員が主導し超党派で中国を訪れた。日中友好議員連盟は9月13〜15日、当選回数の少ない議員を中心に超党派の訪中団を送った」

     

    中国は、勝手に日本へ言い掛かりを付けている以上、日本が「下手に」出る必要はない。別に会談しなくても困る問題はない以上、毅然としているべきだ。「物欲しそう」な素振りもみせてはならい。

     

    (3)「3つのグループに共通するのは首相と距離を置く議員が関与している点だ。岩屋氏は中国との対話を重視する。内政では高市政権が進めた国旗損壊罪の関連法の採決で退席した。日中友好議連は自民党の森山裕前幹事長が会長を務める。森山氏は首相の肝煎り政策である消費税減税に慎重な立場をとる。公明党は25年10月、高市氏が自民党総裁に就くと26年続いた連立を離脱した」

     

    日本は、外交問題を政争の具にしてはならない。同じ与党内で、高市政権を困らせるために中国へ接近することは恥ずべき行為だ。

     

    (4)「中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が、岩屋氏を厚遇したのは高市政権を揺さぶっているとの見方がある。首相と距離を置き、中国に融和的な国会議員とは対話する思惑が浮かび上がる。岩屋氏の訪中には対中貿易に関わる民間企業の経営者も同行した。日本政府内にも28日の会談は「民間とやりとりすることで日本向けに高市政権が間違っているというメッセージを出したいのではないか」との見方が出る」

     

    安全保障問題は、国家存立の基盤である。これに関わる問題で、中国と妥協できるはずがない。台湾有事は、日本有事である。この原則を曲げてはならない。

    (5)「習指導部にとって中国広東省深圳市で11月に開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を見据えた準備の側面もある。議長国の中国が、APECメンバーの日本を招かなければ国際社会からの批判は避けられない。日中関係筋は、「日本と対立したままだと中国は高市首相を招待しづらい。少しずつ関係改善へと動く必要がある」とみる。高市政権は中国との対話にオープンだとの立場を示すものの、両政府のハイレベルな協議は正式に実現していない。茂木敏充外相は7月に国際会議の合間に王氏と短く会話したと明らかにしたが、中国は否定した。

     

    中国は、APEC首脳会議で日本を除外できるだろうか。できるなら、やらせて見れば良い。これこそ中国が大恥をかく場面だ。

     

    a0070_000030_m
       

    文部科学省は臨床現場で使いやすいiPS細胞を開発する。これまで適用が難しかった脳梗塞や慢性腎不全といった疾患の治療にも対応できるようにし、製造にかかるコストも低減する。「次世代iPS細胞(iPS細胞2.0)」と位置づけ、文科省は2027年度概算要求に56億円を盛り込んだ。

     

    日本は、「臓器を製造できる国」へ向かい始めた。これは、IWON・半導体・ロボット・化学的精錬法に続く第5の基幹産業になる。脳・腎臓・肺など、従来は再生医療が困難だった臓器がiPS細胞2.0で製造可能になるという意味だ。医療、産業、国家戦略、国際競争のすべてを変える重要な第一歩になる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月28日付)は、「臓器作りやすい『iPS細胞2.0』開発へ 脳梗塞や慢性腎不全に効果期待」と題する記事を掲載した。

     

    文科省は、「次世代iPS細胞(iPS細胞2.0)」と位置づけ、2027年度概算要求に56億円を盛り込んだ。

     

    (1)「27年度に細胞の製法を完成させることをめざす。京都大学iPS細胞研究財団に生産ラインを設置し、28年度から研究用途などで配布を始める。30年度に量産体制を整える構想だ。iPS細胞は、山中伸弥・京都大学教授が06年に発見した。皮膚などの細胞に特定の遺伝子を導入し、培養することで作製する。得られた細胞はあらゆる組織や臓器の細胞に成長する。ただ、現在の細胞の製法では目的とする細胞に成長する割合が低かったり、品質が安定しなかったりする課題がある。大脳皮質や腎臓の細胞など複雑な臓器を対象とする疾患には事実上適用できなかった」

     

    iPS細胞は、山中伸弥・京都大学教授が06年に発見し、すでに20年の歳月が経った。この間の基礎研究が実って、27年度に生産ラインを設置し、30年度に量産体制を整える構想だ。高市政権は、技術開発に積極的であるので開発を後押しするであろう。

     

    従来のiPS細胞の弱点は、大脳皮質など複雑な構造が作れない、腎臓・肺などの臓器は事実上不可能、成長の安定性が低い、コストが高すぎる(5千万〜数億円)と障害が多すぎた。これを一挙に突破しようという狙いだ。

     

    (2)「こうした弱点を克服するため、京大iPS細胞研究所はiPS細胞の製法の改良に取り組んできた。これまでの研究により、培養条件を変えて細胞を受精卵の初期段階に近い状態に戻すことで、目的とする細胞に成長する能力が高まると分かってきた。この手法を応用すれば、臓器の複雑な構造を再現できる。例えば、脳で高度な情報処理を担う大脳皮質と呼ばれる薄い層を作りやすくなった。細胞から大脳皮質を模したミニ臓器(オルガノイド)を作製し患者に投与すれば、脳梗塞による運動機能の低下を改善できる可能性がある。脳梗塞で治療を受けている患者は130万人いる」

     

    脳梗塞による運動機能の低下に悩む患者は、約130万人もいる。慢性腎不全(透析)患者が、約35万人。肺気腫患者は、約500万人規模である。これらの患者だけで、約665万人にも達する。これまでの既存医療では、改善が困難な人々が救われるとなると、これに勝る福音はない。同時に、「巨大市場」となって、日本経済をも「救う」ことになる。iPS細胞2.0は、この巨大人口を丸ごと「健康体」へ変えるのだ。結果的に、医療費の節減という効果も出る。日本にとって、これほどの朗報はないであろう。

     

    (3)「腎臓や肺も、次世代iPS細胞で作れる可能性がある。腎臓の機能が徐々に失われて人工透析が必要になる慢性腎不全や肺の中の肺胞が壊れて呼吸しづらくなる肺気腫といった疾患への適用が期待される。細胞の製造コストを下げる狙いもある。現在は細胞を患者に届けるまでに1件当たり5000万〜数億円単位の費用がかかる。医療を普及させるには将来的に数百万円に抑える必要がある。達成には次世代iPS細胞の実用化が不可欠とされる」

     

    コストは将来、数百万円程度に抑えられるという。これは、「難病」として患者へ特別救済される制度を作るべきだ。救われる命がありながら、高い治療費で手術を受けられないとなれば大問題になる。患者が健康体になることで、どれだけトータルの治療費が軽減されるか分からないからだ。

     

    (4)「iPS細胞の発見から20年がたち、第1世代のiPS細胞の医療応用が本格的に始まりつつある。住友ファーマのパーキンソン病向け治療薬と大阪大学発のクオリプスが開発した心不全向けの心筋細胞シートの2製品が3月、iPS細胞を活用した再生医療製品として世界で初めて条件・期限付きで薬事承認された。パナソニックホールディングス(HD)は細胞を全自動で培養できる装置を開発した。次世代iPS細胞の培養の方法は第1世代と重なる部分も多く、装置の改良で対応できる可能性がある」

     

    「iPS細胞2.0」は、日本が世界標準を握る可能性がある技術領域である。理由は、次の通りだ。iPS細胞は日本発、製造技術も日本、自動培養装置も日本、臓器構造再現技術も日本、量産体制も日本が構築できるからだ。iPS細胞2.0は、日本が「世界の臓器産業」を主導できる唯一の領域である。

     

    (5)「7月に閣議決定した「日本成長戦略」ではiPS細胞による再生医療は日本の強みと位置づけられた。ただ、足元では米国や中国も研究に注力しており、先行優位性を保てるかは不確かだ。山中教授は「米中と競うにはオールジャパン体制を維持できるかが大切だ」と強調する。次世代iPS細胞の早期の普及が競争力を左右する」

     

    iPS細胞2.0は、日本が臓器製造の世界標準を握る可能性を持つ技術であり、再生医療・産業・国家戦略の三領域を同時に変える。中国は、国際研究へ参加しにくいという制度構造上の問題で、この領域へ参入できないであろう。民主主義陣営の技術連合(米欧日)が、生命科学の主導権を握る。これは、日本にとってIWON・半導体・ロボット・化学的精錬法に続く第5の基幹技術になる可能性が高い。

     

    a0960_008417_m
       

    中国は「巨大市場」だが、日本企業にとって安心して企業活動できる市場ではなくなってきた。市場価値は急速に劣化している。理由は山ほどある。反スパイ法(情報リスク)、景気停滞(需要リスク)、トランプ関税(輸出リスク)、米中対立(地政学リスク)などだ。中国は、「世界の工場」ではなく、「世界最大のリスク市場」になっている。

     

    こうした結果、次のような異変が起っている。日本企業の中国進出数は26年現在、2012年ピーク比で約3割減である。地域別では、上海進出企業が2年で3割減、北京は5割減、遼寧省も3割減だ。

     

    『日本テレビ』(9月28日付)は、「日本企業の『中国離れ』進む ピーク時から約3割減『製造拠点』から『巨大市場』へと認識変化」と題する記事を掲載した。

     

    中国に進出する日本企業の数が2010年の調査開始以降、最も少なくなったことが帝国データバンクの調査で分かりました。

     

    (1)「帝国データバンクによりますと、ことし6月時点で中国に進出する日本企業の数は1万118社でした。2010年の調査開始以降、最多だった2012年の1万4394社から約3割減少したということです。中国に進出する企業の約86%を「製造業」「卸売業」「サービス業」で占めていますが、いずれも2024年から2026年にかけて減少しています。また、日本企業の中国ビジネスの最大集積地である「上海市」に進出する企業は3961社で、2022年と比べると約3割減少し、「遼寧省」でも3割超の減少、「北京市」では5割減となっているということです」

     

    中国は、「巨大市場」である、人口は14億人、都市中間層は3〜4億人、自動車販売は世界最大、高級品消費は世界最大級である。確かに、量だけ見れば巨大市場であるが、これは「潜在市場」であって「実効市場」ではない。中国は「市場としての価値」を急速に失っている。

     

    第一は、消費者の購買力が急速な低下である。不動産価格の崩落、若者の失業率上昇、貯蓄率の急上昇、消費の「縮み志向」である。こうして、巨大市場は「巨大節約市場」に変質してしまった。

    第二は、政治リスクが市場価値を破壊である。反スパイ法、外資への恣意的規制、データ規制、反日ナショナリズムの周期的高まりである。こうして市場に参入しても、撤退リスクが常に存在する。

     

    第三は、利益の回収が難しいことだ。資本規制、配当制限、現地法人への圧力などだ。利益を出しても、本社へ送金できない。市場としての価値は「利益回収可能性」で決まる。 中国は、ここが急速に悪化している。

     

    (2)「この背景について、帝国データバンクは「近年の日中関係の悪化に加え、中国国内の景気停滞、レアアースの輸出制限といった経済的威圧行為、改正反スパイ法など、カントリーリスクが高まっていることや、東南アジア諸国や日本国内に拠点を移設、分散させるサプライチェーンの再編の動きも目立つ」などと分析、中国が「世界の工場」から「世界最大級のマーケット」としての性格を強めているとして、中国市場の「見極め」が進んでいる可能性があるとしています。また、米中対立の影響も出ており、「中国の現地法人ではトランプ関税の影響により受注が減少しており、日本および現地を含めた企業業績に影響が出ると考えている」と回答した企業もあったということです」

     

    日本企業は、「中国リスク」を回避すべく、東南アジア諸国や日本国内に拠点を移設、サプライチェーンの分散再編を始めている。中国は、もはや「世界の工場」の資格を失った。

     

    (3)「今後の見通しについて帝国データバンクは、当面は「中国リスク」を前提とした対中ビジネスをおこなうものの、中長期的には中国市場への依存度を引き下げる目的で「中国撤退」の動きが強まる可能性もあるとしています」

     

    日本企業は、ASEAN(東南アジア諸国連合)への移転に関心をよせている。日本が、「POWER Ashia」(100億ドル)によって、エネルギー環境改善に着手している。これによって、エネルギー不安は改善される。

     

     

     

     

     

    a1320_000159_m
       


    世界のレアアースは、「戦国時代」である。これまで、中国は覇権を握ってきたが、急速にその地位を失いつつある。メディアは、この現実に気付かずに相変わらず「中国覇権」に固執した記事を流し続けている。今回の米中首脳会談でも、レアアースは格別の話題にならなくなった。日本の開発した化学的精錬法が、世界各地で普及し始めており、中国覇権を崩しつつあるのだ。

     

    これまで「親中国」的な言動をしてきたブラジルが、化学的精錬法に惹かれて日本と重要鉱物で取引する方向を明確にし始めた。中南米は、米州開発銀行の斡旋で、鉱山国は一斉に日本と取引する方向へ舵をきっているが、ブラジルはその一番手となった。こうして、中国のレアアース覇権喪失は時間の問題になっている。メディアは、公式発表しない限り新たな動きを認識できず、古い認識でレアアース記事を書いている。

     

    『レコードチャイナ』(9月27日付)は、「米国、レアアース国産化を急ぐも中国依存続く=供給網再構築に課題―シンガポールメディア」と題する記事を掲載した。

     

    シンガポール紙『聯合早報』(9月24日付)は、米国がレアアースの採掘・加工施設の自前構築を急いでいるものの、2030年代の相当長期間にわたり中国に依存し続けるとの見方が出ていることを報じた。

     

    (1)「記事は、ロイター通信が鉱物コンサルティング会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスのデータを引用して伝えた情報を紹介。第2次トランプ政権発足後、米国で最も多用される2種類のレアアースの生産量は3倍以上に増加したものの、国内需要の42%を満たすにとどまっており、5年後も需要の4分の1近くを輸入に頼らざるを得ない状況が続くとした。そして、ホワイトハウスが以前掲げていた、27年1月までに中国産レアアースの輸入を全面的に禁止する目標は達成がほぼ不可能と見られていることを伝えた」

     

    27年1月までに中国産レアアースの輸入を全面的に禁止する目標は、実現不可能としても、その方向に向っていることは事実だ。つまり、中国レアアース覇権喪失は時間の問題になっている。米国が、相変わらずレアアースで苦しんでいれば、今回の米中首脳会談で大きなテーマになるはずである。だが、そうならなかったのは、もはやレアアースが「中国の独占物」でなくなった証拠である。

     

    (2)「その上で、オランダの金融大手INGアナリストである張可可(ココ・ジャン)氏が、米国は中国に代わる世界最大のレアアース供給国を目指すのではなく、地政学的な動揺の時期に戦略的産業を守るための実効性のある代替サプライチェーンを確立することこそが現実的な目標であると指摘したことを紹介している。記事はまた、米国が重希土類の加工能力不足という問題を抱えていることも指摘。過去数十年間にわたり採掘や加工を中国に依存し自前の産業構築を放棄してきたツケが回り、軍事用途に不可欠な重希土類の精製能力を短期間で再建することは極めて難しい状況にあると論じた」

     

    米州開発銀行斡旋で、中南米の鉱山国は一括して日本と取引する方向である。正式決定は26~27年とされている。中でも、もっとも影響力の大きいブラジルが、すでに日本との取引へ舵を切った。これにより、精鉱を日本へ輸出する。ブラジルは、重要鉱物の供給国である。ニッケル、銅、レアアース、リチウムなどの鉱物で、日本企業(住友・三菱・JOGMEC)が権益拡大の方向である。これによって、「脱中国」と宣言するわけでないが、日本接近は明瞭である。米国も間接的「潤う」形になる。

     

    (3)「一方で、米国内のレアアース企業によるサプライチェーン再建の動きも出始めていることにも言及。米MPマテリアルズが今月初め、ゼネラル・モーターズ(GM)に対し自社製磁石の納入を開始したほか、USAレアアースもブラジルの鉱山やフランスの加工工場を買収したと伝えた。さらに、新興企業エヌス・サイクルはスイスの資源大手グレンコアと10億米ドル(約1590億円)の供給契約を締結するなど、加工能力の構築に向けた取り組みが進められていることを紹介した」

     

    米国の鉱山会社が、他国の買収に積極的になったのは、日本の化学的精錬法を利用可能になった結果である。

     

    (4)「記事は最後に、中国が昨年、輸出規制の実施を11月10日まで延期することに同意し、今回の首脳会談でも規制延期が協議される可能性があるとしつつ、中国が依然として強力な規制カードを握っていることを指摘。米中会談で対立が激化して中国が禁輸措置に踏み切った場合、米国の製造業が広い打撃を受けるリスクが残されているとした」

     

    中国は、レアアースの輸出先上位5位までが全て西側諸国で9割を占めている。この市場を失えば、中国のレアアース業界は倒産である。西側諸国は、8月から「重要鉱物特恵市場」を稼働させている。鉱山国から長期(5~10年)契約によって安定価格で購入する。ただし、化学的精錬法の採用が条件である。こうして中国は、確実にレアアース・シェアを失う構造になっている。世界のメディアがこの現実を認識すれば、従来通りの「中国レアアース覇権論」など書けなくなるであろう。

    このページのトップヘ