技術が経済を牽引する時代
日本は世界のパイオニ役へ
サービス収支は大幅黒字に
盤石な技術四層体制固める
ドル円相場が揺れている。日銀が政策金利を引上げても、米国がすでに引上げているので、日米金利差が縮まらないからだ。現在の1ドル150円台は、日本経済の潜在成長力から言えば、かけ離れた「安値」であることは間違いない。しかし、日米実質金利差からはじきだされた「相場観」から動きが取れないのだ。もう一つ、高市首相の「積極的財政政策」がリフレ政策(インフレ容認)と捉えられている。かつて、「円安も良いことがある」などと言い放ったことが、リフレ論者との烙印を押されている結果であろう。
高市氏は改造内閣で、「リフレ論者」のイメージを取り去るべく、片山財政相と城内経済財政担当相への「政策指示書」において、次のような内容を強調した。「債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、日本経済の力強い成長と財政の持続可能性を両立させる」というものだ。これは、市場を強く意識した内容である。名目GDPに占める国債残高比率を引下げて、日本の国債残高が膨脹しない「歯止め策」を講じるとしている。
IMF(国際通貨基金)は、高市政策の妥当性を示している。日本の国債残高が、対名目GDP比で漸減して行くという予測を出しているのだ。債務残高対名目GDP比は、2024年の215%から、26年には206%台へと低下すると推計している。
国際機関の中で、日本の財政赤字は膨らむという予測があるわけでない。もっぱら、内外市場が財政赤字拡大を囃し立て「円売り材料」に利用している面が強い。こうみてくると、高市氏の「円安歓迎発言」がいかに不用意であったか悔やまれるのだ。
日本経済の実態は「市場の戯言」と反対に、かつて見られなかったほどの強靱さを身につけようとしている。現状において残念ながら、こういう日本経済の実力強化を認識する論調は見当たらない。ただ、目を凝らして日本経済の実態を見れば、内外市場における日本経済観は大きな修正が求められるであろう。確実な動きを始めているのだ。
技術が経済を牽引する時代
経済発展の原動力は、労働・資本・技術である。この中で、現代において最も大きな影響力を持つのは技術であろう。最新技術があれば、資本は世界中から集まるし、足りない労働力をカバーする意味で、技術こそ経済発展の原動力と言って差し支えない。以上の意味を少し具体的に取り上げると、次のようになる。
労働は、これまで経済成長の中心軸であった。現在は、次の理由で限界が明確になっている。少子高齢化で人口が増えない、労働生産性の伸びが鈍化、労働の質は教育投資に依存して急増しない、人口が増えても技術がなければ付加価値は伸びない。こういう事態に直面している。だから、労働は「補助要因」となり、経済成長の主因ではなくなってきた。
資本はいくらあっても、技術がなければ意味を持たなくなっている。つまり、資本は「技術を使うための器」にすぎない。技術がなければ、いくら投資しても収益を生まないのだ。技術があれば、世界中から資本が集まる時代環境になった。技術がある国は、資本コストが下がるので、資本は技術のない国から逃げ出す構図になった。資本は、「技術に従属する関係」になった。
結論として言えることは、技術こそが労働と資本を自由に操つれるという意味で「唯一の成長要素」となった。技術専門家が、経営者を超える報酬を取る時代になったことは、これを裏づけるものであろう。技術があれば、労働力不足を補えるので労働の量を代替し、質を補完する。資本も自動的に集まる。ここから導かれる結論は、次のようなものになる。
技術があれば、名目GDP成長率が自然に上がることだ。技術ストックが巨大な国は、景気循環と無関係に名目GDP成長率を引上げるであろう。一方、技術があれば世界中から資本が集まり金利が低下傾向を辿るであろう。結論として、名目成長率が上昇して金利が低下する、好循環過程を進む可能性が強まる。技術こそ、経済発展の原動力になるという一般論が、こうして成立するであろう。つまり、他国を圧する「技術ストック国」は、赤字財政問題から解放される。名目GDP成長率が上がって、金利が下がるからだ。
以上の枠組を提示したのは、日本がこの構造において「最強の位置」にあることを指摘する目的にほかならない。日本は労働・資本ではなく、分厚い技術ストックに支えられ今後、成長して行く国になる。日本は、「失われた30年」の間に世界をリードする技術を次々に開発している。鉱山の化学的精錬法、光電融合通信のIOWN(アイオン)、現場型フィジカルAI半導体(27年量産化)、産業用ロボットで世界の先鞭を切っている。いずれも、他国の追随が不可能という最新技術だ。財政赤字問題も自然に解消する。
化学的精錬法では、すでに中国の「レアアース覇権」を食止めることに成功した。8月から稼働している「重要鉱物特恵市場」(参加国55ヶ国)は、日本の化学的精錬法利用が前提条件で、世界各国が中国へレアアースの精鉱を売却せず、精鉱によって重要鉱物特恵市場で取引を始めている。日本は、精鉱を輸入し精錬しているのだ。このように、新技術が中国のレアアース覇権を色あせたものに変えさせるほどの威力を発揮している。当然、日本経済へ大きな「果実」(莫大な特許料収入)をもたらす。
日本は世界のパイオニア役
ここで、「技術ストック」という考えを提示したい。次のような、前提を満たす技術の集積である。技術ストックとは、「国際基準になる技術」であり、世界が使わざるを得ない技術を指す。だからこそ、特許料収入という「国際的な地代」を生む可能性を持つ。技術ストックは、単なる技術の集合ではなく、「世界が依存し、代替できず、標準として採用される技術」である。これだけ高度の技術が、ストックとして日本に蓄積されている。(つづく)
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