勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 日本経済ニュース時評

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    無敵を誇ってきた米国トランプ大統領は、米最高裁によって相互関税へ「憲法違反」の判決を下された。米国民主主義が、健在であることを示して世界中を安堵させたであろう。一方、この「どさくさ」に紛れて、韓国では3500億ドル対米投資について、再検討の声も上がっている。だが、日本経済の将来を考えると、対米5500億ドル投資は日本への重大な「保険」にもなる。一時的な事態で、日本が損得を考えることは無謀である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月21付)は、「対米投資の『前提』揺らぐ 米関税違憲、日本政府は合意履行を維持」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権が各国・地域にかけた相互関税に違憲判決が出たことで、5500億ドル(約85兆円)の対米投融資を約束した日米関税合意の前提は揺らぐ。もっとも自動車など分野別関税は判決の対象外で、日本政府は合意の履行に向けた対応を続ける姿勢だ。

     

    (1)「米国は、日本に15%の相互関税を課していた。米連邦最高裁の違憲判決を受けてトランプ米大統領は別の法律を根拠に各国からの輸入品に10%の新たな関税をかける方針を示した。日本政府は判決を冷静に受け止める。経済官庁幹部は「違憲判決が出てもトランプ氏が別の手段で関税を課し続けることは想定の範囲内だ」と説明する。亜細亜大学の久野新教授は「多くの日本企業はトランプ政権による不安定な関税政策を織り込み済みで、大きな混乱は生じないだろう」とみる」

     

    前提となる相互関税が崩れても、日本が約束を破棄する選択肢はない。今回の最高裁判断には含まれていない、自動車への15%追加関税が重くのしかかっているからだ。見直し姿勢を見せれば、「米側から自動車関税を100%にするブーメランが返ってきかねない」(政府関係者)ためだという。

     

    日米合意では、相互関税を15%にするとともに、本来の関税率が15%未満の品目は一律15%で、15%以上の品目は上乗せがない仕組みになっている。今回の判決で、この措置も白紙となりかねないため、米国の代替措置が10%となっても、現状の関税率より大きい品目が出てくる可能性がある。このため日本政府は、21日未明に米側に昨年7月の合意を守り、悪影響が出ないよう求める考えを伝えた。『毎日新聞 電子版』(2月21日付)が報じた。

     

    (2)「日米関税交渉で、日本は主要産業である自動車業界の負担軽減に重点を置いた。2025年7月の日米合意では5500億ドルの対米投融資と引き換えに自動車関税や相互関税を引き下げることで折り合った。自動車などの分野別関税は相互関税と根拠法が異なり、判決後も残る。政府内からは「対米投融資を継続することは変わらない」との声があがる。日米両政府は、17日(米国時間)に第1弾の投融資計画としてガス火力発電、人工ダイヤモンド製造、米国産原油の輸出インフラの3案件を発表したばかりだ。第2弾、第3弾の協議も水面下で進んでいる」

     

    日本の対米投融資には、新たな意味合いも強まっている。日米両政府は今月18日、第1弾として3事業で計5.5兆円の計画を進めることを決定した。中国を念頭に置いた、経済安全保障での日米連携強化の狙いがある。日本政府としては、対中関係の悪化が続く中で対米関係を積極的に進めたいのだ。

     

    (3)「日米合意に疑義を呈することは、トランプ氏の逆鱗に触れるリスクを伴う。米通商代表部(USTR)元幹部で米アジア・グループのデビッド・ボーリング氏は、「もし日本政府が再交渉を求めれば、トランプ氏は間違いなく自動車関税の引き上げを持ち出してくるだろう」と指摘する」

     

    外交は、「正論」だけを考えて行うものではない。複眼的「リアリズム思考」が不可欠である。国益を守るということは、リアリズム思考があって初めて可能になるのだろう。

     

     

     

     

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    連邦最高裁は20日、トランプ大統領が非常事態権限に基づいて発動した広範な関税措置を違法とする判断を下した。最高裁は、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、議会の承認なく関税を発動することは、大統領権限を逸脱しているという下級審の判断を支持。同法が、関税措置を発動する権限を与えているというトランプ政権の主張は、議会の権限を侵害し、法的原則に違反すると判断した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「トランプ相互関税は『違憲』 米最高裁が判決、還付は明示せず」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ関税の合憲性が争われた訴訟で米連邦最高裁は20日、相互関税など一連の関税を課す権限はトランプ米大統領にはないとする判決を出した。米憲法では関税を課す権限を連邦議会に与えていることを重視した。政権は看板政策の修正を余儀なくされ、企業の事業戦略にも影響を与える可能性が高い。

     

    (1)「判決は最高裁のロバーツ長官が書いた。既に徴収済みの関税を還付すべきかどうかについては明確に判断を示さなかった。9人の最高裁判事のうち6人が判決を支持し、カバノー判事ら3人が反対意見を出した。一連の裁判は、米国内の中小企業や民主党系知事の州が原告となり、2025年春にトランプ政権を相手取って提訴した。一審と二審では原告側が勝訴し、政権側が上告した」

     

    2025年以降に支払われた関税について、企業が還付を求める訴訟を次々と提起している。コストコや川崎重工、アルコアなどが代表的な原告で、最大で1000億ドル(約15兆円)規模の返金が発生する可能性も指摘されている。

     

    関税撤廃により輸入コストが下がり、企業収益が改善するとの期待から、株式市場では一部銘柄に買い戻しの動きが出ている。一方で、返金による財政負担や政策の不透明感から、金利や為替市場では不安定な動きも見られる。判決の影響範囲や対象期間の解釈をめぐり、今後の政権・議会・裁判所の対応に左右される。実際の還付には、数か月〜数年を要する可能性も指摘されている。

     

     

    (2)「トランプ氏は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、連邦議会の承認なく関税を発動した。裁判ではこの点が法の趣旨を超えた大統領権限の逸脱に当たるかどうかが争点になっていた。最高裁は20日の判決で、IEEPAは「大統領に関税を課す権限を与えていない」と判示した。25年11月5日に最高裁が開いた口頭弁論では、ロバーツ氏ら保守派の判事も「関税は議会の中核的な権限」などと指摘し、保守派・リベラル派を問わず各判事からトランプ関税への疑義が相次いだ」

     

    これまでの一審や二審で、憲法違反という判決が出ていたので、最高裁判決も違憲が予想されていた。トランプ氏にショックなのは、保守派とされる裁判官が違憲論へ傾いたことだ。米国民主主義の健全性が立証された形だ。

     

    (3)「IEEPAには、「大統領は関税を発動できる」とは書かれていない。20日の判決文でロバーツ長官は、これまで最高裁は議会が「重大な結果をもたらす権限」を大統領に与える際には、法律にその旨を明記しなければならないという考え方を堅持してきたと述べた。そのうえでロバーツ氏は、この最高裁の考え方は、トランプ関税のように財政問題に関わるケースでは「特に強く適用される」と明言した。ロバーツ氏はこれまでの審理でも、本来議会が権限を持つ関税を大統領権限で発動するには、あらかじめ議会が大統領に明示的に権限を委任するべきだとしていた」

     

    議会が決定権をもつ関税について、大統領権限で発動するには、議会が大統領に明示的に権限を委任するべきだと明らかにした。この点で、トランプ氏は議会に諮らず一方的に行った。こうした、手続き論の過ちが指摘された。

     

    (4)「米税関・国境取締局(CBP)の集計よると、今回違憲とされた関税について徴収済みの額は25年12月14日時点で1200億ドル(約19兆円)を超えている。このうち相互関税は817億ドルで最も大きく、中国に対するフェンタニル関税が378億ドルと続く。トランプ政権は敗訴しても、法的根拠を別の法律に差し替えて同様の徴税を続ける姿勢だ。同政権が視野に入れる選択肢は、徴収するお金の名目を関税から、貿易の許認可料(ライセンス料)に切り替える案だ。ほかにも50%を上限に関税を発動できる「1930年関税法338条」や、深刻な国際収支の赤字発生時に全輸入品に150日間限定で最大15%をかけられる「1974年通商法122条」などが候補として挙がる」

     

    トランプ政権は敗訴したが、法的根拠を別の法律に差し替えて、今後も同様の徴税を続ける姿勢とされる。その場合、再び訴訟問題へ発展しよう。

     

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    中国は、2025年鋼材輸出量が10年ぶりに過去最高を更新した。一方、輸出価格は5年半ぶりの安値圏に沈むというチグハグな状況だ。ダンピング輸出がもたらした結果である。日本を含む各国が、アンチダンピング(反不当廉売、AD)をはじめ関税障壁で自国市場保護を行っている。中国は、関税対象外となる品目の輸出を増やすなど手を替え品を替え「超安値輸出」を行ってきた。この結果、中国企業自体が赤字になるという皮肉な事態を招いており、限界にぶつかっている。

     

    『ブルームバーグ』(2月20日付)は、「日本製鉄CFO、アジア鋼材市況底打ちも-中国勢の大量輸出は限界に」と題する記事を掲載した。

     

    アジアの鋼材市況低迷を引き起こしている中国の鉄鋼メーカーによる輸出拡大は限界に来ているのではないか-。そんな期待を寄せるのは日本製鉄の岩井尚彦最高財務責任者(CFO)だ。

     

    (1)「岩井氏は、18日に都内で行ったインタビューで、中国からの鋼材輸出拡大を受けた市況悪化により中国勢も損益が厳しくなっていることに加え、各国が通商措置を発動しているため「出口がだんだんなくなっている」との見方を示した。中国からの鋼材輸出に今後「ブレーキがかかるということであれば、アジアの鋼材市況が底を打つ可能性がある」と続けた」

     

    各国の反ダンピング措置によって、中国の安値輸出も限界に向っているという。

     

    (2)「中国は、不動産市況悪化の影響で国内需要が低迷している。中国勢が大量の鋼材輸出を続けている理由だ。中国税関当局によると、2025年の鋼材輸出は前年比7.5%増の1億1902万トンと過去最高となった。それによる市況悪化が日本製鉄の業績にも影を落としており、動向に神経をとがらせている」

     

    中国の調査会社マイスチールによると、代表的な鉄鋼製品であるホットコイルの輸出価格は1トン450ドル前後と24年末比約1割安い。25年11月には440ドルと新型コロナ禍で経済活動が停滞した20年6月以来の安値をつけた。安値鋼材は、日本にも流入している。日本鉄鋼連盟によると、25年の中国からの普通鋼鋼材の輸入量は93万トン。前年からは0.%減ったものの、23年比では2割多い。

     

    各国は、中国の安値鋼材から自国産業を守る対策を打つが、今のところ効果が出ているとは言いがたい。中国を対象としたAD調査件数は24年に世界で30件と前年の10倍に急増。25年も23件と高水準が続いた。AD措置は不当に安い価格での輸入品に関税を課す。それでも中国の輸出量は増え輸出価格は下がっている。

     

    (3)「日本製鉄を巡っては、米鉄鋼大手のUSスチール買収資金として調達した約2兆円のブリッジローン(つなぎ融資)が6月に期限を迎えることから、今後の資金調達についても注目を集めている。日本製鉄が最大5000億円の転換社債の発行を検討しているとのロイターの報道について、岩井氏は「何もまだ決まっていることはない」と改めて述べた。岩井氏は、円建てハイブリッドローンなどで調達した資金で返済を進めたことでブリッジローンの残額は約1兆3000億円まで減ったと話す。ブリッジローン期限に向け、金利を含めた市場環境や資本・負債の構成などを踏まえつつ、最適な形での資金調達を検討しているという。増資を行う場合は1株当たり純利益(EPS)を希薄化させない範囲で行うとの方針は変わっていないとも述べた」

     

    日鉄は、USスチールの合併にともない一時的に債務が増えている。これも、10年後を見据えた世界鉄鋼業ナンバー・ワンを目指す「陣痛」のようなものだ。

     

    (4)「USスチール買収に伴い日本製鉄の有利子負債は増加しており、財務の健全性の改善は急務だ。日本製鉄によると、有利子負債は25年12月時点で5兆2618億円と同年3月から倍増している。中長期的な成長投資も控える中、資金捻出や財務の健全性確保の観点から政策保有株を含めた資産圧縮は「優先度が高い」と岩井氏は語る。これまでの段階的な売却により政策保有株は25年3月までに約4400億円に減少しており、市場での流通性を踏まえると、実質的に残る対象は約3000億円相当となっているという。岩井氏はこの部分についても継続的に売却が可能かどうか検討を進めていくと述べた。

     

    日鉄は、政策保有株を含めた資産圧縮で資金を捻出する。高度経済成長期以降、日鉄は日本鉄鋼業の「総元締め」格として経営不振企業の株式を購入して支援してきた。日鉄の信用が不振企業を支えたのだ。今や、時代は大きく変りそういう必要性も薄れている。政策保有株は整理対象になっている。

     

    あじさいのたまご
       

    当時、共に民主党代表だった李在明(イ・ジェミョン)大統領は、福島原発処理水を「毒物」と呼んで、福島産水産物の輸入を禁止している。その李大統領が先日の訪日で、日本産水産物の輸入再開の意向を示したという。日本の処理水放出は現在も行われており、何も変わっていないのに、なぜ「毒物」を「輸入再開」するという劇的な逆転が起こったのか。韓国の「屁理屈」に批判の声が出ている。

     

    『朝鮮日報』(2月15日付)は、「処理水を『毒物』と言っていた李在明大統領が日本産水産物の輸入を突然再開?」と題する寄稿を掲載した。筆者は、張富丞(チャン・ブスン)関西外国語大学外国語学部教授である。

     

    1月28日に行われた韓国国会外交統一委員会の会議で、趙顕(チョ・ヒョン)外交長官の答弁を聞いて当惑した。質問は金碩基(キム・ソッキ)委員長がした。日本の処理水放出は現在も行われており、何も変わっていないのに、なぜ「毒物」を「輸入再開」するという劇的な逆転が起こったのか、説明してほしいというものだった。

     

    (1)「趙顕長官の回答は奇妙だった。「以前はモニタリング・システムが整っていなかったが、今はしっかりとモニタリングしているため、状況が異なる」というのだ。だが、これは事実ではない。当時も現在も韓国原子力安全技術院で徹底的にモニタリングを行っており、韓国原子力安全委員会でも毎日ブリーフィングをしている。趙顕長官は「処理水放出は当時の最善の代案ではなかったが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が日本に堂々と要求できなかったため、尹政権の覚醒を促したものだった」と述べた。これはつじつまが合わない主張だ。趙顕長官の主張通りなら、李大統領は日本に行って放出方式を最善のものに改善するよう要求すべきだが、なぜ突然、日本産水産物を輸入再開することにしたのだろうか?」

     

    非科学的な発言は、あとあと辻褄が合わず困ったことになる。その生きた例がこれだ。

     

    (2)「この問題を国内政治に利用したこと自体が失策だった。その理由はいくつかある。第一に、科学的根拠がないからだ。2023年に既に韓国国内はもちろん、世界的にもほとんどの専門家たちが「放出が人体に与える影響は微々たるものだ」と言っていた。筆者が当時、カナダ・米国・ニュージーランド・オーストラリアなど、韓国よりも処理水が先に到達する国々で海洋安全を担当する政府機関のホームページを調べた結果、すべて「健康に害はない」と書かれていた」

     

    韓国は、今回の事件のほかに米国の狂牛病牛肉でも誤った判断をして、世界の笑い物になった。科学知識のレベルが極めて低いのだ。それを左派が悪用する。これに乗せられる民衆も問題である。

     

    (3)「第二に、李在明政権は自己矛盾に陥っているからだ。処理水が「毒物」であるならば、李大統領は就任してすぐに日本観光を禁止すべきだった。福島は年間約3000億円相当の農水産物を生産している。これらの農水産物の一部は、日本を訪れる数百万人の韓国人の胃袋に入っている。韓国人の体に「毒物」が入っているのに、李在明政権はなぜこれを放置しているのだろうか? さらに、東海(日本名:日本海)で操業している韓国漁船は約50006000隻で、太平洋で操業中の韓国の遠洋漁船は約200隻だ。韓国政府はなぜこれらの漁船に操業禁止を命じないのだろうか? 日本人が捕った魚は危険だと言って輸入禁止にしておきながら、同じ海で操業する韓国の漁師が捕った魚からは魔法のように放射能が自然に除去されるということだろうか?」

     

    韓国左は、どうにもならないほど科学レベルの低いことで扇動する。一つには、迷信である「風水」を今以て信じる風潮が強い国である。ついこの間まで、大学に「風水学科」があったほどである。

     

    (4)「第三に、国際社会の常識に反するからだ。2011年の福島原発事故後、世界各国が日本産水産物の輸入規制を行ったが、現在ではほぼすべて規制を撤廃している。現在、日本産水産物の輸入規制を行っている国は中国、ロシア、そして韓国だけだ。韓国は、福島産農産物も輸入禁止にしているが、福島県の農産物輸出は急増している。2011年の原発事故直後に90%減少した農産物輸出は、2017年から急増(213トン)に転じ、事故発生前の2010年の水準(153トン)を突破した。そして、2024年には898トンを輸出して、なんと前年(453トン)の約2倍にまで伸びている。世界中で福島産農水産物を積極的に輸入しているのに、中国・ロシア・韓国だけが禁止しているのだ」

     

    世界は、科学を信じている。福島農産物輸出は、順調に増えているのだ。

     

    (5)「第四に、李大統領の「毒物」発言は、日本が民主国家であることを無視した行為だったからだ。日本は処理水を釜山沖で放出しているわけではない。自分たちの海で放出している。その水が「毒物」ならば、誰が最初に被害を受けるのだろうか? 民主国家の政府が自国民の健康に害を及ぼす行動をこのように公然と行えば、それは相手にする価値もない「失敗国家」だ。そのような「失敗国家」に行って首脳会談をした李大統領は何をしようとしていたのだろうか?」

     

    日本政府は、微に入り細にいる説明をしたが韓国と中国の政府だけが首を横に振った。

     

     

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    日本株は、衆議院選挙を受けて史上最高値更新まで急上昇し、歴史的な高水準に達している。市場に広がる強気ムードに対して、短期的な上昇余地は限定的との警戒論も出始めた。肝心の上場企業の純利益は増加に転じている。2026年3月期は、従来予想の前期比2%減から一転1%増となり、5年連続で過去最高を更新する見通しという。AI(人工知能)投資などの需要に加え、非中核事業の売却など資本効率改革により、利益率が最高水準に高まるのが理由だ。

     

    『ブルームバーグ』(2月19日付)は、「日本株に高値警戒感、数年先の増益・成長を織り込んでいるとの指摘も」と題する記事を掲載した。

     

    ブルームバーグのデータによると、株価を1株当たり予想純利益(EPS)で割った予想株価収益率(PER)は、東証株価指数(TOPIX)で18倍に迫る。新型コロナウイルス禍や世界金融危機といった異常時を除くと2007年以来の高水準だ。TOPIXの目標水準を引き上げたストラテジストは、こうした高いバリュエーションが続くという前提に立っている。

     

    (1)「発表が先週一巡した25年10~12月期の企業決算はおおむね良好とはいえ、現時点で市場関係者は26年度で10%前後の増益を想定している。「TOPIXは26年度どころか、27年度業績予想まで織り込まないと説明できない水準まで上昇している」とみずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは指摘する。PERは、27年EPSで16倍超と従来のレンジ12~16倍を上回る」

     

    PERは、27年EPSで16倍超と従来のレンジ12~16倍を上回っている。過去の「失われた30年」を尺度にみれば、買われすぎというイメージであろう。

     

    (2)「こうした割高感は、テクノロジー関連株の比重が高い日経平均株価ではさらに顕著だ。日経平均の予想PERは24.3倍と、高い成長期待から世界の主要株価指数の中で最もバリュエーションが高いナスダック総合指数の24.9倍とほぼ並ぶ水準にまで上昇した。日本株ロングショート戦略のヘッジファンド、RFMの西村光彦最高経営責任者(CEO)は市場ではさまざまな理由をつけて高いプレミアムを正当化する議論が出ているとした上で「個別企業を見ている私のような立場からすると、2年先の業績を見にいったとしても許容できるのは日経平均で5万8500円程度が限度だ」と述べる。西村氏のファンドは、日本株相場の変動そのものにはパフォーマンスが影響を受けにくいマーケットニュートラル戦略を採っているが、「投資家の間でも高値警戒感が強いようだ」と言う」

     

    過去の適正尺度からみれば、日経平均で5万8500円程度が限度論も出てくる。

     

    (3)「衆議院選挙での自民党の圧勝を受け、過去に選挙で大勝した後に海外投資家の日本株買いが増えた経験則から、海外投資家の日本株買いへの期待感が市場では強まっている。特にグローバルな投資家の間では、米国に集中している投資先を多様化する際の受け皿として、比較的市場規模の大きい日本株が注目されている。選挙結果を受けてゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガンの各社はすべて日本株の見通しを上方修正した。その前提は高バリュエーションの継続だ」

     

    海外投資家は、日本の過去の相場推移をみることはあるまい。「自民党大勝」という一点で、資金投入している。

     

    (4)「ゴールドマンは、当時の小泉純一郎首相が05年のいわゆる郵政解散後の選挙で大勝した後につけたTOPIX予想PERのピーク19倍を念頭に、予想PERが18.9倍まで拡大すると予想、TOPIXは半年後に4400まで上昇するとの見通しを示した。目標株価を引き上げたモルガン・スタンレーとJPモルガンは、いずれも前提となる予想PERは17倍だ。もちろん、日本経済がデフレ基調からインフレ基調に移行したとみられる現在、過去の基準を当てはめる必要はなく、コーポレートガバナンス(企業統治)改革に伴う株主還元強化や利益率改善を考慮すれば現在の株価収益率は必ずしも割高とはいえない、という議論はある」

     

    不動産バブル崩壊の始末が付いていない05年のいわゆる郵政解散後の選挙後と、今回の自民党大勝では、環境が全く異なっている。現在は、日本経済の将来性を「買う」という視点の大転換が控えている。

     

    (5)「それを差し引いても、日本株には短期的に過熱のサインが増えている。TOPIXの水準は200日移動平均線を21%も上回る。過去には移動平均を15%上回ると相場が調整していることが多いことから、すでに危険水域といえる。株式時価総額と国内総生産(GDP)との対比でも株価の割高感は目立つ。東証プライム市場の時価総額は先日1300兆円を突破し、10~12月期の名目GDP669兆円の2倍に近い水準にまで膨れ上がっている」

     

    過去の相場推移から言えば、現状は明らかに「買われすぎ」の警戒ゾーンへ入っている。

     

    (6)「住友生命保険の村田正行バランスファンド運用部長は、過去の名目GDPと株価の時価総額の回帰分析に基づくと、現在の株価と整合的な名目GDPの水準は720兆円前後で、市場は3年程度先までの経済成長を織り込んでしまっている、と分析。「バブルであるとか、市場が大崩れするとは思わないが、少しスピード違反で巡航速度までの調整はあり得る」と語っている」

     

    高度経済成長期の1961~65年までは株価はほぼ2倍でその後、いわゆる「証券不況」を経験。高度経済成長期は、「量的成長」であった。今回は、技術発展を軸とする「質的成長」である。日本経済の新たな飛躍をどこまで評価するかがポイントになる。過去の例に引っ張られすぎことは問題。ある程度の楽観論も許されるであろう。

     

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