勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 北朝鮮

    a0005_000022_m
       

    文政権の登場で、韓国軍の「主敵」なる言葉が削除された。韓国軍には、法的に主敵が存在しないのだ。代わって、自衛隊が「主敵」代わりにされるという、倒錯した国防意識になっている。これによって、韓国軍の緊張感が大幅に低下している。南北の軍事境界線が、北朝鮮によって簡単に飛び越えられるという異常事態を招いているのだ。

     

    新年早々から前方の鉄柵が突破された。元旦だった1日午後、江原道(カンウォンド)東部の高城(コソン)地域を担当している陸軍第22師団最前方鉄条網が、民間人(推定)1人によって破られて北朝鮮に越えられたのだ。

     


    『中央日報』(1月3日付)は、「
    越北3時間過ぎても分からなかった韓国陸軍第22師団」と題する社説を掲載した。

     

    韓国軍当局は、越北者が非武装地帯の南側鉄条網(GOP鉄柵)を越えるとき、韓国軍の監視装備で捉えられていたがこれを見逃した。監視カメラの監視兵が、録画された内容を再生する過程で鉄柵を越える姿を確認したという。韓国軍のずさんな前方警戒が再び明らかになった。

    (1)「今回の警戒に失敗した部隊の措置過程はさらに深刻だ。鉄柵越え当時、鉄柵に設置されていた科学化警戒システムの光網体系で警報が稼働し、初動措置部隊が現場に出動したという。ところが出動した部隊は鉄柵に異常がないと判断して撤収したという。毎日点検している鉄柵は小さな問題が生じても即座に把握することができる。しかも第22師団地域の鉄柵は2012年ノック亡命(注:亡命者が韓国へ入国して、民家の戸をノック)以降、2回以上鉄柵を補強している。このため越えることすら難しいが、たとえ鉄柵の上を越えたとしても毀損された跡が残るようになっている。動物などによって頻繁に起こる誤警報だと考えて見過ごしてしまった可能性がある。普段の警戒心の緩みからきた結果とみられる」

     

    北朝鮮には、韓国との間に設けられている軍事境界線など、なきに等しい存在であろう。韓国へ「亡命」して、また北朝鮮へ「帰る」という極端なケースまで発生している。こういうケースが、文政権になって激増している。韓国軍は、北朝鮮のご機嫌取りに汲汲としている文政権を見れば、真面目に職務を敢行しようという気持ちも失せるのであろう。

     


    (2)「軍の警戒の失敗は一回や二回ではない。今回突破された第22師団は2012年ノック亡命から始まり、2020年11月柵越え亡命、昨年2月にはフィンを使った水泳亡命など、毎年潜入が発生している地域だ。相次ぐ警戒の失敗で第22師団長をはじめ多くの指揮官が職務解任された。そのような敏感な地域にもかかわらず警戒にまた失敗した。いったい精神をどこに置いているのかと非常に心配になる。しかも越北者が監視装置に捉えられた後、3時間以上も分からずにいたという。そもそも警戒勤務にあたっていたのだろうか」

     

    文政権になってからの軍事境界線を突破された事件では、船で韓国領へ入りこみ、民家の電話を借りたという噓のような本当の話しまである。これが、「ノック亡命」事件である。韓国は、陸軍だけでなく海軍まで,北朝鮮への警戒感が薄れている。北朝鮮軍が、この機に乗じて軍事境界線を突破しようとすれば簡単に実現しそうな雰囲気である。韓国軍の警戒心が緩み、北朝鮮軍から自衛隊へ代わっている。この裏には、文政権の「反日」が大きな影を落としている。

     


    (3)「文在寅(ムン・ジェイン)政府で警戒の失敗が大きくなった。過去2年間、前後方を含めてこのような警戒の失敗は11回に及ぶ。三陟(サムチョク)港で「海上版」ノック亡命をはじめ、鎮海(チンヘ)や済州(チェジュ)海軍基地への侵入、首都防衛司令部防空部隊への侵犯、泰安(テアン)地域への中国人密入国などが代表的だ。文字通り深刻な水準だ。過去のどの時期にも前後方の境界線が今回の政府ほど繰り返し突破されたことはなかった」

     

    北朝鮮は、経済破綻にもかかわらずに核開発を続けている。韓国軍は、そういう不穏な北朝鮮軍へ心理的に無防備状況である。これだけ見ても、文政権が北朝鮮へどれだけ強い思い入れがあるか分るであろう。

     

    (4)「警戒の失敗原因は、韓国軍が敵のいない軍隊になっているためだ。韓国政府の南北関係改善や終戦宣言の推進などに便乗し、北朝鮮軍を敵と思わなくなっている。弱り目にたたり目で、軍が政治に振り回されて軍人事に対する外部介入がひどくなった。軍幹部は政界を意識して強い訓練や軍規の確立よりも責任の負担が少ない安全中心に運営しているのが現実だ。しかし、軍隊が本分を忘れれば安保が危うくなる。その最大の被害者は国民だ。強い軍隊に生まれ変わることを願う」

     

    下線部は、国防上において重大な目標喪失に陥っている。韓国軍の存立基盤は、対北朝鮮防衛である。そのよって立つ精神性が剥がされてしまったのだ。これに代わって、自衛隊を仮想敵にしている。この狂った意識をどのように正常化させるのか。日本は、2018年12月に起こった韓国艦艇による海上自衛隊機へのレーダー照射事件が、韓国軍への信頼感を根底から打ち崩した。韓国軍は、自衛隊にとって友軍でなく、「敵軍」になっている。レーダー照射は、ロケットによる撃墜意思表示であり、敵国機扱いした証拠である。こういう経緯から、自衛隊は韓国軍との共同演習を避けている。自衛隊は、米英豪印や独仏の軍隊のほうにはるかに強い「親和性」を感じている。 

     

     

    あじさいのたまご
       

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(10月4日付)によると、米スタンフォード大国際安全保障協力センター(CISC)の研究陣は最近、北朝鮮が毎年20個以上の核兵器を生産する能力があると推測した。2017年から昨年まで北朝鮮平山(ピョンサン)ウラン鉱山施設の衛星写真を人工知能(AI)で分析した結果だ。

     

    報告書で、北朝鮮の年間ウラン鉱生産量は約3万トンだが、ウラン粗製錬施設を年間300日稼働する場合、生産量を36万トンまで増やせるという見方を示した。これを根拠に研究陣は北朝鮮のイエローケーキ(ウラン精鉱・ウラン鉱石から不純物を取り除いた中間生産物)処理能力について、年間最大340キロの高濃縮ウランを生産できる水準だと分析した。

     


    これは毎年核兵器20個以上を作ることができる量だとWSJは伝えた。ただ、研究陣は「北朝鮮は現在、ウラン生産最大力量の10分の1から20分の1程度だけを活用している」とし、その理由を把握することが重要だと指摘した。以上は、『中央日報』(11月5日付)が報じた。

     

    北朝鮮は、年間20個の核爆弾を生産できる能力を持っている。現実には、その10分の1から20分の1程度の生産に止めているという。WSJは、なぜ生産能力一杯に操業度を上げないのか。理由を突き止めるべきとしている。それは、次の事実にありそうだ。食糧難に見舞われているのだ。

     

    『中央日報』(12月16日付)は、「国連『北朝鮮住民の4割が栄養不足』アフガンより深刻」と題する記事を掲載した。


    北朝鮮の栄養不足人口の比率がアジア太平洋地域で最も高いことが分かったと16日、『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)が国際機構報告書を引用して報じた。

    (1)「報道によると、国連傘下の食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(ユニセフ)は15日(現地時間)に公開した共同報告書「2021年アジア太平洋地域の食料安全保障と栄養」で、2018年から2020年まで北朝鮮の栄養不足人口の比率は42.2%で、アジア太平洋地域38カ国のうち最も高いと明らかにした。

     

    北朝鮮の栄養失調人口比率は40%強で、アジア太平洋地域38ヶ国の中で最悪という。アフガン以下の状態である。そのアフガンは、北朝鮮よりも「開国」されているので食糧不足の状況が伝わっている。北朝鮮は、閉鎖状況で内部事情は不明だが、アフガン以下の食糧事情とは深刻である。これでは、生産能力一杯の核爆弾をつくる余力はない。

     

    (2)「報告書は、「北朝鮮住民のうち1090万人が栄養不足に苦しんでいる」とし「これは2000年と2002年の間の820万人と比較すると、270万人も増えた」と明らかにした。北朝鮮に次いで栄養不足人口の比率が高い国はアフガニスタン(25.5%)、パプアニューギニア(24.6%)、東ティモール(22.6%)など。

     

    核爆弾をつくる力はあっても、食糧生産をしない。こういう北朝鮮を、「人道」という名で支援すべきなのか。大衆には罪はないし、悩ましい判断である。

     

    (3)「北朝鮮の栄養不足人口の比率は、食糧不足で餓死者が多数発生した「苦難の行軍(1990年後半)」以降、国際社会の支援と南北関係改善などの影響で2000年代に入って30%台に減ったが、2009年から2011年の間に42.6%に上昇して以降42%台が続いていると、報告書は説明した」

     

    食糧不足人口比率は、一貫して42%台が続いているという。国民に対しては、「気の毒」という言葉しかない。

     


    (4)「南北児童の「体型分断(身体発育格差)」も続いていることが明らかになった。報告書によると、北朝鮮内の5歳未満の児童のうち18.2%が発育不振だ。昨年の18.9%よりやや低いが、韓国(2%)など国際基準に達していない状況だ。相次ぐ自然災害で北朝鮮内の穀物生産量が減少したうえ、新型コロナ遮断のための中朝国境封鎖で乳児の栄養食など備蓄物資の搬入までが急減し、児童への栄養供給に影響を及ぼしたためと解釈される」

     

    北朝鮮は、5歳未満の児童のうち18.2%が発育不振という。韓国は2%だ。大きな違いである。

     

    (5)「これに先立ち、ユニセフは5月に発表した報告書「2021児童栄養失調推定値」で、「栄養不足による発育不振は成長と発達に致命的な結果を招く」とし「身長だけでなく頭脳の発達にも影響を及ぼすとみられる」と指摘していた。ただ、北朝鮮の5歳未満児童の消耗性疾患発病率は2.5%で、世界平均の6.7%より低かった。児童の肥満比率も1.9%と、アジア太平洋地域38カ国のうち4番目に低かった」

     

    5歳未満の児童のうち20%弱が栄養失調だが、消耗性疾患発病率は2.5%で世界平均より低いという。この謎は何か。山菜でも食べているのであろう。「核爆弾と栄養失調」。これが、北朝鮮の現実である。

    a0960_006624_m
       


    中朝を隔てる鴨緑江を渡る「吊り橋」は、中国資金で2013年に完成した。北朝鮮は、橋との接続工事をせず橋梁は未使用状態のままだ。北朝鮮が、中国へ警戒感を持っているためと説明されている。北朝鮮では、「日本は100年の敵、中国は1000年の大敵」という言葉があるほど、中国へは警戒感を滲ませていると指摘されているのだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(12月12日付)は、「米国より中国を警戒する北朝鮮」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と米中関係の悪化を口実に国内の経済統制を強め、かつては抜け道もあった中国との国境を固く閉ざしている。

     


    (1)「北朝鮮の最高指導者に就任してから今月末で10周年を迎える金氏は、厳しいロックダウン(都市封鎖)を通じて他国の外交官や人道支援活動家を追放し、社会的な締め付けも強化している。北朝鮮の国際的な孤立は中国政府の援助で支えられている。中国は北朝鮮の核・弾道ミサイルの開発を非難しつつ、あくまで金政権の温存と朝鮮半島の統一阻止を望んでいるのだ」

     

    中国は、北朝鮮を米国との緩衝地帯と位置づけており、金政権の温存と朝鮮半島の統一阻止を狙っている。韓国の文政権はこれに気付かず、南方統一を中国に働きかけている。何の効果もないのだ。韓国の「二股外交」も意味がない。中国に弄ばれているだけだ。

     

    (2)アナリストによると、北朝鮮の政府当局者は対中依存に大きな不満を抱いており、米国よりもむしろ中国を長期政権への最大の脅威と見なしている。北朝鮮問題に詳しい韓国国民大のアンドレイ・ランコフ教授は、「北朝鮮と中国がイデオロギー的に連帯しているという通説には全く根拠がない」と指摘した。「北朝鮮の防諜(ぼうちょう)担当者なら誰でも、北朝鮮を内部から破壊できる中国こそが、安全保障上最大の脅威だと認めるだろう」と指摘する」

     

    中国は、北朝鮮を内部から破壊できる工作力を持っている。米国には、そういう力はない。北朝鮮が、後述のように米国よりも中国を警戒する理由であろう。

     


    (3)「ともに共産主義を掲げる両国が反目する背景には、朝鮮戦争(1950~53年)で北朝鮮を支援した中国の役割に対する認識の相違と、その後中国による情報・分裂工作の恐れに端を発している。中国は朝鮮戦争時の恩義を認めようとしない北朝鮮にいまだに腹を立てているとアナリストは説明する。北朝鮮の歴史では、建国の父である金日成(キム・イルソン)主席が中国共産党に所属していたことを明確にしていないうえ、70ページの朝鮮戦争公式記録に中国の関与への言及はわずか3カ所しかない」

     

    北朝鮮は、朝鮮戦争公式記録で中国の支援を3カ所しか言及していない。口では、「中朝は血盟の関係」と大仰に言うものの記録にそれが現れていないのだ。

     

    (4)「中国が1992年、韓国と国交を樹立し、その見返りとして米朝の国交正常化を持ち出さなかった。これは北朝鮮にとっては重大な裏切りだった。「中国はさっさと北朝鮮を見捨ててしまった」と韓国の延世大学で中国研究を専門とするジョン・デラリー教授は話した。それ以降、北朝鮮は核兵器の開発や国内問題への介入拒否などを通じて中国に反発してきた」

     

    中国は中韓国交回復の際、米朝国交正常化の橋渡しをしなかった。北朝鮮は、これを恨んでいる。中国への不信感となっている。

     


    (5)「頓挫した共同事業もある。2012年には中国の西洋集団が南西部で開発した鉄鉱山を北朝鮮政府が接収し、中国人労働者を追放した。中国の遼寧省丹東市と北朝鮮の新義州市の間を流れる鴨緑江に架かるつり橋は、中国側の出資で13年に完工したものの、北朝鮮側の道路には接続されず未使用のまま放置されている。「北朝鮮が中国に経済を開放すれば、政権支配への手掛かりを与えることにもなる」とデラリー氏は指摘する」

     

    北朝鮮は、中国へ経済開放すればそれによって、北朝鮮政権への手がかりを与えるとして警戒する。

     

    (6)「北朝鮮は基本的な携帯電話網を整備する際、エジプトの企業を委託先に選んだ。「戦争が心配なら米国が気になるが、政権転覆やクーデターを懸念するなら中国の方がよほど心配だ」。金正恩氏は13年、中国政府と密接な関係にあったとされる叔父で実力者の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑した。17年には、中国政府の庇護を受けていた異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏をスパイ映画のごとく暗殺した」

     

    北朝鮮は、米国との戦争を警戒する。だが、日常的には政権転覆やクーデターを懸念し、中国をより警戒している。叔父の張成沢氏や兄の金正男氏を殺害したのも、中国の影響力を恐れている結果とされている。

     


    (7)「
    中国が北朝鮮を擁護するのは、数万の韓国駐留米軍と直接にらみ合わずに済む緩衝地帯としての役割を期待しているからだ。それ以外に金政権を支え続える理由はないとアナリストは断言する。中国のこの認識は金氏がトランプ前米大統領と劇場型外交を繰り広げた時期に一段と強まった。北朝鮮が米国に歩み寄り、中国の保護を切り捨てかねないとの懸念が高まったからだ。スティムソン・センターのスン氏は、「米中対立は金政権の存続にとって追い風だ。中国が金氏を見捨てる可能性はこれまでも低かったが、今では全くなくなった」との見方を示した。「しかし中国は必要最低限のことしかやらない。北朝鮮を飢えさせないが、腹いっぱいにもさせないという姿勢だ」としている」

     

    米中対立は、北朝鮮・金政権の存続にプラスである。だが、中国は最低限のことしか援助しないであろう。

     

    (8)「中朝間の陸路貿易が再開する兆しは出てきた。衛星写真で見ると、北朝鮮は国境を越えて来る鉄道貨物の消毒設備を新たに設置した。さらに、丹東市はこのほど、新義州市を結ぶつり橋の通関施設の改修工事に関わる入札を実施し、落札した企業を発表した。ランコフ氏は「中国が朝鮮半島政策で優先するのは安定、分断、非核化の3点だが、安定と分断は常に最優先事項だ」と述べた」

     

    中国は、朝鮮半島政策で「安定・分断」策を優先して行なうと見られる。こうした中国の妨害工作もあって、南北統一など実現性は期待薄であろう。韓国は、この現実を認識すれば、中朝政策の練り直しが必要になるはずだ。

    a0960_008527_m
       

    南北のホットラインが、7月28日から復活した。「春の日は絶対に来ないだろう」と言っていた北朝鮮が突然、連絡チャンネル復旧に応じた背景に何があるのか。北朝鮮の自力では乗り越え難いほど悪化した経済難と、韓国がコロナ対応のための人道的支援再開なども理由として上げられている。同時に、対話のテーブルにつくように勧めてきた米バイデン政権に対する「前向き姿勢」を示すことにもなった。ともかく、米韓朝三カ国の思惑が一致した形である。

     

    韓国の文大統領は南北連絡の復活を政治生命としてきたから、日韓関係凍結後に訪れた「朗報」であることは間違いない。ただ、北朝鮮が突然の「心変わり」を見せた裏には、経済難だけが理由ではなさそうだ。南北の交流再開には、米国の強い圧力がかかるのでそう簡単に進展するとは思えない。となると、残る理由は韓国の大統領選への影響を狙ったものと分析されている。

     

    『朝鮮日報』(7月29日付)は、「南北通信連絡線の復元に米専門家ら疑念の声『北朝鮮、韓国大統領選に影響力行使か』」と題する記事を掲載した。


    米国務省は27日(現地時間)、南北間の通信連絡線復元が報じられたことについて「米国は南北間の対話を支持し、南北通信線復元の発表を歓迎する」とコメントした。しかし一部の専門家たちは北朝鮮の意図を疑う否定的な見方を示している。

     

    (1)「米国務省のポーター副報道官はこの日行われたブリーフィングで、「これ(南北通信線の復元)は肯定的な措置であると信じる」とした上で、「外交と対話は韓半島の完全な非核化成就と恒久的平和建設に必須だ」と述べた。米ホワイトハウスのキャンベル・インド太平洋調整官もワシントンで開催された韓米同盟財団との朝食会を兼ねた懇談会後、特派員らの取材に「われわれは北朝鮮との対話と疎通を支持する」と述べた」

     

    米国にとっては、米朝間の直接対話ができないまでも、南北の対話が可能になる連絡線が復活したことは好材料にちがいない。このこと自体は、歓迎であろう。

     


    (2)「このような米国政府の公式な立場とは違い、米国の専門家らは北朝鮮の意図に懐疑的な反応を示している。かつて米国務省で対北特別代表を務めたジョセフ・ユン氏は本紙の電話取材に「今挑発を行っても米国が何かを与えるとは考えられないが、その一方で韓国の大統領選挙まであと数カ月しかないため、北朝鮮は対話に応じる考えを持ったのかもしれない」との見方を示した。ユン氏はさらに「北朝鮮は明らかに(韓国大統領選挙で)進歩陣営を支援したいはずだ。それも一つの動機となっている可能性もある」「究極的には米国との対話を望んでいるのかもしれないが、一方で深刻な経済や食糧難に直面しているためかもしれない」と指摘した」

     

    韓国の次期大統領選では、進歩派が文政権の継続政権として継げる見通しがついていない。それどころか、20代の若者が反旗を翻して政権交代を熱望する状況だ。文政権の成立では、この20代が熱烈支持であった。それが、様変りしている。

     

    最新の世論調査は、大統領選で野党候補が与党候補を引きはなしている。『聯合ニュース』(7月29日付)が、次のように報じている。

    尹氏(野党)と李在明氏(与党)、尹氏(野党)と李洛淵氏(与党)の一騎打ちとなった場合はいずれも尹氏が優勢であることが分かった。尹氏と李在明氏の対決では尹氏が40.7%、李在明氏が38.0%で、誤差範囲内の接戦となった。尹氏と李洛淵氏では尹氏が42.3%、李洛淵氏が37.2%だった。与党不利という結論である。

     


    (3)「米戦略国際問題研究所(CSIS)のスミ・テリー上級研究員も本紙の取材に「北朝鮮の経済難やコロナの状況などから考えると、北朝鮮は韓国から何か得られないか探りを入れているようだ」、「しかし制裁違反にならない範囲で文在寅(ムン・ジェイン)政権が与えることのできるものは限られている」との見方を示した。その上でテリー研究員は、「北朝鮮の経済難、(韓国の)大統領選挙の日程などから考えると、今後平和攻勢が始まると予想はしていたが、その平和攻勢が韓米連合訓練よりも前にやや早く出たことは疑問が出る」ともコメントした。テリー研究員は、「米国が韓米連合訓練を取りやめることはないだろうが、コロナを理由に規模を制限することはあり得る」と予想した」


    北朝鮮は、次期大統領が野党の保守党に移れば、現政権よりも相当にてこずる相手になる。そうならないようにするには、次善の策として文政権と対話した方が「ベター」という選択である。北朝鮮の「損得計算」で、連絡線の復活になったものと見られる。 

     

    a1320_000159_m
       

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、米誌『タイムス』アジア版の表紙写真を飾った。なかなかの「好男子」に映っており、先ずは祝意を申し上げねばならない。文氏は、2017年5月にも同誌アジア版表紙に登場しているので2回目となる。売れっ子である。

     

    今日、6月25日は朝鮮戦争が始まった日である。このタイミングで、文氏は金正恩氏を「非常に率直で国際感覚豊か」と褒めたのである。朝鮮戦争の傷跡を抱える人たちには、複雑な思いがよぎったであろう。

     

    『東亞日報』(6月25日付)は、「文大統領、『金正恩氏は非常に率直、国際感覚ある』米誌タイムの会見で語る」と題する記事を掲載した。

     


    (1)「文大統領は米タイム誌とのインタビューで、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記について、「非常に率直で意欲的であり、強い決断力を示した」と強調した。しかし同誌は、「正恩氏は叔母の夫と異母兄を冷酷に殺害し、2014年の国連人権調査委員会(COI)の歴史的な報告書によると、抹殺、拷問、強姦、飢謹長期化の惹起など『反倫理犯罪』を主導した人物」と相反する見解を示した」

     

    文氏は、北朝鮮の金正恩氏を「非常に率直で意欲的であり、強い決断力を示した」と評価したが、タイム誌は、「抹殺、拷問、強姦、飢謹長期化の惹起など『反倫理犯罪』を主導した人物」であると真逆の評価を付け加えた。

     


    文氏による金正恩評価について、韓国国内でも異論が出ている。

     

    韓国野党の大統領候補、劉承ミン(ユ・スンミン)「国民の力」元議員が24日、フェイスブックで次のように語った。『中央日報』(6月25日付)が伝えた。

     

    「北朝鮮は文大統領を『ゆでた牛の頭』『特等の馬鹿』『米国産オウム』と嘲弄したが、文大統領は金正恩を『非常に正直で、熱情的で、強い決断力を持った人』と称えた。また、『金正恩の正直、情熱、決断力はいったい誰のためのものなのか」とし『北の人民のためのものか、大韓民国の国民のためにしたことか、それとも北の核』サイルをいうのか』と皮肉った。また『正直という言葉の意味は何か』とし『文大統領は正直の意味をどう考えて金正恩が本当に正直だと話すのか』と問いただした」


    大統領府は、同誌が使った表現「honest」を国内メディアが「正直」と翻訳して報道すると、24日に「インタビューで大統領は『正直』ではなく『率直』という表現を使った」と明らかにした。

     


    「さらに、『6・25韓国戦争(朝鮮戦争)71周年を翌日に控えた今日、我々の大統領の金正恩賛歌に接し、殉国烈士の英霊に面目ない』とし『大韓民国の大統領として国と国民の自尊心を踏みにじらないことを願う』と強調した」

     

    文氏がタイム表紙を飾ったタイミングは、朝鮮戦争開戦と重なり合うだけに絶悪というのが本当だろう。文氏は、朝鮮戦争について批判すべきであった。

     

    (2)「23日(米現地時間)に公開された「文大統領が祖国を癒すための最後の試みに乗り出す」と題する記事で、文氏は正恩氏の性格を問われ、「国際的な感覚もある」と答えた。一方、同誌は、文氏の返答を紹介しつつ、「多くの北朝鮮消息筋は、正恩氏に対する文氏の変わりない擁護を錯覚と見ている」とし、韓国政府が北朝鮮人権運動を弱体化させているという指摘も紹介した」

     

    文氏は、なぜこれほどまでに金正恩氏を持ち上げるのか。無論、引き続き南北会談を開いて、南北融和の実績を上げたいという政治家の願望もあろうが、客観的に見てその可能性はゼロである。北朝鮮が、文大統領を相手にしないという意向を繰り返し発表しているからだ。

     


    結局、文氏が金正恩氏へ一方的な「親愛感」を示しているという認識しか残らない。ここで、文氏の「人を見る目」がどれだけ正しいかという「眼力」が問われるのだ。

     

    『中央日報』(6月16日付)は、「これほど多くの天下り人事はなかった」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

     

    (3)「文大統領は、世論と聴聞会を無視して任命した33人の閣僚級人事こそが天下りの典型だ。歴代のどの政権もこれほど多くの天下り人事はなかった。昨年10月の国民の力の資料によると、公共機関のトップ3人のうち1人が大統領選挙で一緒だった親文派だ。今でも350の公企業のあちこちに天下り人事が続いている。ある政治家は「任期が1年残った今が最後の機会」とし「いま任命されれば3年ほど任期が保証される」と話した。この機会をつかむために権力にコネを作ってロビー活動をし、大韓民国が病んでいる」

     

    タイム誌表紙を飾った文在寅氏は好男子である。政治家というよりも大学教授の風貌を漂わせ、「私は善人です」と言いたげな表情である。だが、その裏では「思い込み人事」を行なっている。失業救済で「3年間の任期保障」でポストを与えている。猟官運動もあるだろうが、その見分けもつかない文氏は、退任後に厳しい非難の嵐に遭遇するであろう。結論は、文在寅の眼力は曇っているのだ。

     

     

     

     

     

     

    このページのトップヘ