勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 北朝鮮

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    北朝鮮は、これまでの例であれば米新政権の発足後に派手な徴発行為を行なってきた。今回は、なぜか抑制気味である。北朝鮮国内で、何か過去にない「異常事態」が持ち上がっていることを覗わせる。実は、瀕死の事態が起こっているのだ。

     

    ロシア国営RIAノーボスチ通信が21日(現地時間)報じたところでは、北朝鮮の新型コロナウイルス感染症検疫のため、最後まで北朝鮮に残っていた人道国際機関職員が撤収した。

    ロシア外務省の国際機関局長ピョートル・イリイチョフ氏が、RIAノーボスチ通信とのインタビューで、次のように語っている。『中央日報』(4月22日付)から引用。

     

    「北朝鮮の国境閉鎖により、人道主義的国際機関は、職員を交替させる能力を失い、人道的支援物資の供給も遮断された。昨年8月以降、北朝鮮はたった1つのコンテナも受け取ることができなかった。物資が途絶えたことから倉庫が空になり、燃料供給も中断されて人道主義的機関の期待効果が実質的に無効化された」。燃料不足で、援助した食糧を食べることもできないという意味だろう。



    『中央日報』(4月23日付)は、「見たところ普通だが危ない北朝鮮、3つのドミノ」と題するコラムを掲載した。筆者は、ジョン・エバラード元平壌駐在英国大使である。

    (1)「北朝鮮専門家たちは、4月7~8日の北朝鮮労働党第6次セポ秘書大会での金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の演説に非常に驚いた。執権後初めての公式演説で「もう二度と1990年代の苦難の行軍に戻らない」と約束した彼が、今回は「苦難の行軍を決心した」と明らかにしたからだ。正恩氏は現状況を「極難の状態」と表現して「理念的結束」の強化を促した。演説内容と語調から推察すると、北朝鮮首脳部は食糧不足などの経済問題と新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)、北朝鮮の理念的結束の弛緩を懸念していることが明らかだった」

     

    北朝鮮は、次の3つの危機に直面している。

     

    1)食糧不足などの経済問題
    2)新型コロナウイルス感染症

    3)理念的結束の弛緩

     

    前記のうち1)と2)はこれまでも報じられてきた。3)の理念的結束の弛緩は、チュチェ思想という北朝鮮の民族思想が揺らぐ事態が起こっていると指摘している。まさしく、建国思想の揺らぎであり、北朝鮮最大の危機である。文政権はチュチェ思想を信じているが、北朝鮮民衆は貧困ゆえに「花より団子」を欲しがっている事態に直面している。



    (2)「今月14日、ロシア大使のタス通信インタビューによると、現在北朝鮮は1990年代末の状況ほどは厳しくはない。しかし深刻な問題がある。ロシア大使館によると、北朝鮮は医薬品をほぼ手に入れることはできず、肥料工場団地は運営中断状態にあるようだ。公式・非公式貿易は大幅に減り、海外北朝鮮労働者の送金額も急激に減少した」

    北朝鮮は、経済制裁によって医薬品が手に入らない状態である。貿易も闇貿易も含めて大幅に減っている。

     

    (3)「北朝鮮に肥料がないなら、今年の収穫量は深刻で、これは飢謹につながるおそれがある。北朝鮮は新型コロナの拡大を極度に警戒している。ロシア大使の発言によると、歩道まで殺菌している。現在では北朝鮮の徹底した孤立戦略がコロナ拡大を防いでいるようだ。しかしウイルスが流入する場合、とりわけそれが変種株なら、北朝鮮の貧弱な医療体系ではほぼ耐えることができないほどのスピードで拡大する可能性がある。北朝鮮のワクチン確保も順調でない」

     

    肥料不足で食糧生産が細っている。一方で、歩道まで殺菌するという異常事態だ。医薬品不足で、コロナ感染を極度に恐れている結果だ。ワクチン確保も困難を極めている。文政権は、こういう事態を見て支援を訴えているが、北は肝心の核にしがみついている。

     

    以上は、1)と2)の問題である。次が、3)の理念的結束の弛緩である。



    (4)「秘書大会で最も驚いた事実は北朝鮮当局が理念的結束の弛緩を懸念している点だった。初めてのことだ。どの国の政府でも党員の忠誠心弱化は心配するべき問題だが、北朝鮮は理念で固く団結しているだけに理念体系にひびが入れば手の施しようがなくなる。北朝鮮外部からはその程度について推し量ることはできないが、正恩氏が直接この問題に言及したという事実が状況の深刻性を暗示している」


    正恩氏が直接、理念の結束が弛緩していると言及した事実が、状況の深刻性を浮き彫りにしている。

     

    (5)「北朝鮮の経済、新型コロナ状況、理念的結束問題は相互依存的だ。例えば、ウイルス拡大問題を解決するには、経済的安定と忠誠にあふれた正直な幹部が必要だ。経済が崩壊すれば1990年代のように食料を手に入れようとする人民の移動を統制できなくなり、ワクチンプログラムを管理することも不可能になる。理念的結束が弱まった幹部は、自分の家族のためにワクチンを盗んだり売ったりする可能性も出てくる。腐敗は、すでに北朝鮮で大きな問題で、理念的結束の崩壊は状況を悪化させるだけだろう」

     

    北朝鮮は、貧困とコロナ禍が重なって、極度の緊張状態に陥っている。こうなると当然、北朝鮮労働党の理念的結束が揺らぐ事態を招く。



    (6)「3つのうちどれか1つでも大きくなれば、一瞬で北朝鮮政権を混乱に陥れることができる。問題が1つでも大きくなれば他の2つもドミノ倒しのように連鎖して問題が大きくなる。外から見る分には普通のようだが、内部は足元がおぼつかない北朝鮮の現状況が、突然、あるいはたった数週間のうちに悪化する可能性を認知しなければならない。災難は予告なしに近づいてくるものだ。中国は北朝鮮が中国に妥当な態度を取る時だけ支援するという立場を北朝鮮に知らせた。もう唇亡歯寒(お互いに助け合う)の関係ではなく取引外交の関係だ

    前記3つのドミノのうち一つでも倒れれば、北朝鮮は「終わり」になる。中国は、北朝鮮を犠牲にして、米国と取引に出るかもしれない。想定外の事態が起こっても不思議はない。

    (7)「筆者は、以前も北朝鮮の突然の変化の危険について何回も言及してきた。危険はますます大きくなっている。正恩氏が現状況を率直に認めている以上、われわれ皆が北朝鮮の状況を注目しなければならない」

    北朝鮮危機が、雪だるま式に膨らんでいる。最大の警戒感を持つべきである。

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    文大統領は、北朝鮮からいくら罵倒されようと、じっと「我慢の子」を演じている。北朝鮮が望むことをすれば、必ず平和がやってくると認識しているためだ。文氏が、北朝鮮の望みを聞き入れてこそ、平和がやってくるという根拠のない理想主義に傾いているのは限界を超えている。韓国識者から大きな批判を浴びている理由だ。

     

    『東亞日報』(3月17日付)は、「韓米合同軍事演習の縮小に対する北朝鮮の返事は『生まれつきの馬鹿』」と題する記事を掲載した。


    (1)「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が16日、韓米合同軍事演習を非難し、「3年前の暖かい春の日に戻ることは容易ではないだろう」と述べた。与正氏は、文在寅(ムン・ジェイン)政府に対して、「生まれつきの馬鹿」、「狂犬」と暴言を吐き、「任期の末期に入った南朝鮮当局の行く末は非常に苦痛で平坦ではないだろう」と警告した。また、「初めから面倒な仕事をつくらない方がよい」とし、バイデン米政権を激しく批判した」

    北朝鮮の度を超した罵詈雑言には、聞き流しているだけでは韓国としての立場がないはずだ。一言、たしなめる警告ぐらいを発することも必要である。北朝鮮が、こういう下品な発言をするときは、韓国へのSOSを発している印とも言われる。だが、絶対に応じてはダメだろう。自制しようという動機が働かなくなるからだ。



    (2)「政府は今回の韓米合同軍事演習を野外起動なく防衛的性格のコンピュータシミュレーション訓練に縮小して実施したが、与正氏はこれを評価するどころか嘲弄で応えたのだ。にもかかわらず、政府高官は、「南北首脳が板門店(パンムンジョム)宣言と平壌(ピョンヤン)宣言を確認することが目標」とし、南北首脳会談を再び推進する意向を明らかにした。相次ぐ北朝鮮の「対南叩き」と警告にもかかわらず未練を捨てることができないのは、政府が夢と理想に酔い浸って現実感覚を失ったのではないかという疑念を抱かせる

     

    文政権は、北朝鮮からどのような悪口雑言を言われても、下僕のように振る舞っている。やはり毅然としたところを見せる必要があるのだ。こんな状況で、仮に南北交渉を始めても、対等な話合いは不可能であろう。

     

    韓国は、こういう暴力団並の北朝鮮と交流する意義があるだろうか。バラ色の幻想から抜け出さなければならない。韓国が、損害を受けるだけである。



    (3)「与正氏が米国務、国防長官の訪韓の前日に談話を出したのは北朝鮮のお決まりの手だ。与正氏は昨年12月、米国務副長官の訪韓に合わせて談話を出したが、北朝鮮に少しでも有利な局面を作ろうとしたのだ。与正氏が、「今後の南朝鮮当局の態度と行動に注目する」とし、9・19南北軍事合意を破棄する可能性まで取り上げたのは、文政権が米国に制裁緩和を説得してほしいという圧力であり、バイデン政権もこれに対して進展した立場を示すよう求めることに相違ない。これは、新型コロナ禍と貿易封鎖による北朝鮮の苦痛がそれだけ深刻という意味でもある」

     

    韓国政府は北朝鮮のご機嫌取りをすぐにやめるべきだ。北朝鮮の対南非難と無茶な主張がますます水準を高める悪循環に陥ることになる。金与正氏の非難にタイミングを合わせて対北朝鮮ビラ法が制定されたのがその事例だ。韓国当局を圧迫すれば自分たちが望む結果を得られるという誤ったシグナルを北朝鮮に与えることになり、はるかに深刻な誤判断を呼びかねない。これは、『中央日報』(3月17日付)の社説である。韓国が、北朝鮮の言うままに動くことは、戦争誘発への危機を招き兼ねない。絶対に、応じてはならないのだ。

     


    (4)「北朝鮮の韓米への激しい対応は受け入れられないが、北朝鮮の圧迫術策に振り回されてはならない。何より重要なことは、長期間停滞した米朝間の非核化対話を再開することであり、今回の韓米の会談では、この糸口を見出すことに議論が集中されなければならないだろう。北朝鮮も対話のムードづくりを台無しにする軽薄な発言を控えなければならない。このような行動は、米政権交代後も微弱ながら継続してきた米朝間の信頼の紐を弱めることになるだけだ」

     

    北朝鮮は、韓国を言葉の暴力で威圧しようとしているが、こういう卑劣な手段を止めるには、米韓が一体化することである。現状は、北朝鮮をめぐって隙間風が吹いている。北朝鮮は、この隙を突いてくるのだ。もはや、政治体制も完全に異なっており、同じ民族と言えないほどの変化が起こっている。韓国が、北朝鮮を甘やかすことは「百害あって一利なし」という極限状況になっている。

     

     

     

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    韓国与党議員は、軍隊の演習まで北朝鮮へご機嫌伺いする属国的な行動を取っている。38度線の向こうには、北朝鮮軍が虎視眈々と韓国を狙っているのだ。この敵に対して、いかに防御するかという趣旨の米韓軍合同演習について、韓国与党議員35名が連名で「延期要請」を大統領に提出したという。

     

    与党議員は、国家の安全保障にどのように考えているのか。北朝鮮は、韓国を攻撃する核やミサイルなどを日夜開発している。その相手に対して行う米韓軍合同演習を中止せよと要請するのは、常識を外れているとしか言いようがない。

     


    『朝鮮日報』(2月27日付)は、「敵が嫌がるから軍の訓練をやめようという国、韓国のほかにあるか」と題する社説を掲載した。

     

    韓国の与党系国会議員35人が、「北朝鮮が反発するから」という理由で、来月に予定されている韓米合同演習を延期せよと要求した。これらの議員は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長まで自ら乗り出して強力に反発している」として、「韓半島の対話の局面作りとコロナ防疫のため、韓米合同演習の延期を求める」と主張した。この世の中に、敵が嫌がるから軍事演習をやめようという国は韓国のほかにはないだろう。

     

    (1)「金正恩は先月の労働党大会で、36回も核に言及した。韓国を攻撃する戦術核や原子力潜水艦、極超音速兵器の開発も公言した。軍事パレードでは、韓国を狙った新兵器を続々と披露した。そんな金正恩が要求しているという理由で、韓米合同演習を延期しようというのだ。北朝鮮の労働党が言っていることを、韓国の与党議員らが堂々と声明まで出して主張している」

     

    北の金正恩氏は、国内経済の疲弊を隠すべく韓国を攻撃する兵器開発を喧伝している。北朝鮮が、韓国を威圧する姿勢を強めているのに対して、韓国は卑屈になって揉み手をしているのだ。何とも不思議な構図で。

     


    (2)「韓米合同演習は、北朝鮮を攻撃するためのものではない。北朝鮮の脅威を防御するためのものだ。国家代表サッカーチームでも練習しなかったら町のサッカーチームと化してしまうように、軍隊もそうだ。ところが3大韓米合同演習は、2018年のトランプ・金正恩「シンガポール・ショー」以降、全て中断された。連隊級以下の小規模な訓練も、実弾を一度も使わないコンピューターゲームとして行われた。北朝鮮の顔色をうかがって演習の名前も付けられずにいる。海外で開かれる多国籍対潜水艦演習にも参加しなかった。その間に、北朝鮮の核と軍事力は休むことなく増強された」

     

    韓国は、北朝鮮の言動に恐れおののいている。「主人」は北朝鮮であり、韓国は「下僕」の地位にある。韓国が、ここまで卑屈になっているのは、文政権の思想的母国が北朝鮮であるからだ。北の「チュチェ思想」に被れており、南北統一が朝鮮民族最高の幸せという感覚に囚われているのである。韓国の自由と民主主義は、二の次になっている。

     

    (3)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓米合同演習中断問題を北朝鮮と協議できると言った。金正恩が「合同演習を中止しろ」と言ったことに対する回答だった。敵の脅威に対する防御訓練を、敵と協議したいというのだ。初歩的な警戒任務一つも遂行できない韓国軍は、北朝鮮が新型ミサイルを撃つと「脅威ではない」と言ったり、韓米合同演習を延期しても対応態勢に問題はないと言ったりしている」

     

    韓国へ恐怖を与えている北朝鮮に対して、その防御のための米韓合同演習を実施してよいかを問い合わせる。漫画のような話である。

     


    (4)「訓練しない軍隊は、軍隊ではない。訓練なき同盟は抜け殻だ。米国防総省は「韓半島以上に演習が重要な場所はない」と言った。韓国政府・与党は、こうした声に耳を塞ぎ、今や「金正恩が怒るから訓練をやめよう」という声明まで出している。金正恩を怒らせる根本的な問題は韓米合同演習ではなく、韓国の存在自体と韓国の繁栄だ。金正恩がやれと言ったら何でもやるこの政権が何をしでかすか分からないという恐怖を抱く」

     

    韓国進歩派は、完全に腑抜けになっている。北朝鮮と交流したいというただ、それだけの理由で、国家の基本である安全保障を忘れている。韓国は、国家の体裁をなさなくなっている。こういう国家は崩れるのが早いであろう。朝鮮李朝の末期を想起させるのだ。

    次の記事もご参考に。

    2021-02-08

    メルマガ230号 米のインド太平洋戦略から韓国脱落、文在寅「空想外交」の破綻

    2021-02-25

    メルマガ235号 バイデンから引導渡された韓国、日米へ協力せず同盟国の「外様」へ格下

     





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    文政権は、北朝鮮を「主敵」の地位から外した。これが、韓国軍の士気低下を招いている。38度線の向こうに、韓国を侵略した北朝鮮軍が大量の武器で今なお存在しながら、これを主敵と見ないと言うのだ。こういう「言い逃れ」が、韓国軍の北朝鮮軍への警戒心を弛緩させている。

     

    具体的には、従来になく脱北者が38度線を簡単に越えていることだ。脱北者が、北朝鮮軍であったならば、ゾッとする思いであろう。韓国軍の士気低下が著しく進んでいる証拠であろう。文大統領は就任後、国民に対して良いことを何もしない大統領である。

     

    『朝鮮日報』(2月24日付)は、「現在韓国軍は内部崩壊の状態にある」と題する社説を掲載した。

     

    今月16日にある北朝鮮男性が東海岸を通じて帰順したが、これはほぼ崩壊状態にある韓国軍の実情を赤裸々に示す出来事だった。韓国軍合同参謀本部が23日に発表した内容によると、この北朝鮮男性が韓国側の海岸を歩いて南に移動する際、監視カメラに10回も撮影されていたが、韓国軍はその8回目まで事態を全く把握できていなかった。前方の監視カメラでは2回にわたり警告灯と警告音が作動したが、監視兵は特に理由もなく風が原因の誤作動と勝手に判断してこれを無視した。幹部は電話中だった。最初から警戒をしていなかったのだ。任務を遂行しない部隊はここだけだろうか。決してそんなことはないだろう。

     


    問題の北朝鮮男性は5~6キロの距離を3時間以上かけて歩き、民間人統制ライン付近まで南下したが、最初に識別されてから師団長に報告されるまで34分もかかった。武装した敵軍が侵入していればどうなっていただろう。北朝鮮男性は海岸に設置されている鉄柵下の排水路に入り込んだ。ところが現場の部隊はこの排水路の存在そのものをこれまで知らなかったという。

     

    (1)「地形や地雷の危険性などから把握が難しかったと言い訳している。兵士が自ら担当する地域の中で、「行きにくくて危険」という理由で行ったことがない場所があるというのだ。昨年7月にはある脱北民が西海の鉄柵下にある排水路を通って越北したが、この時も合同参謀本部は現場の部隊全体に排水路の確認を指示した。ところが今回問題となった師団は問題の排水路を確認もせず、「問題なし」と報告していた。合同参謀本部の命令さえ聞き流しているのだ。これではもはや軍隊とは言えない」

     

    このパラグラフで印されている事実は、韓国軍がサラリーマン化している証拠である。文政権は、北朝鮮が主敵でないと宣言している以上、敵でない北朝鮮へ鋭敏に対応するはずがない。問題の根源は、文政権にある。

     

    (2)「合同参謀本部は「事態を深刻に認識している」とした上で「根本的な対策にあたる」と約束した。古いレコードが回っているような感覚だ。昨年の脱北民越北事件でも合同参謀本部議長は国会で「事態を深刻に認識している」として「根本的な対策にあたる」と誓った。「厳正な対処」「厳しい調査」「責任を痛感」などの言葉も、問題が発生するたびにオウムのように繰り返されているが、これらがわずか1回でも守られたことはない。今やこの種の言葉を聞くと国民はもちろん、兵士たちでさえ内心苦笑いをしていることだろう」

     

    北朝鮮軍が主敵でない以上、警戒心が弛緩するのは当然のこと。間違いの元は、北朝鮮に対する主敵の看板を降ろしたことにある。

     

    (3)「このように初歩的な警戒さえできない軍隊が、戦時作戦統制権(注:統帥権)の移管を急いでいる。核兵器を保有する北朝鮮と全面戦争が起こった場合、核抑止力を全く持たない韓国軍が核抑止力を持つ米軍を指揮するというのだ。これに米国が同意するだろうか。このようなナンセンスについては驚くべきことに韓国軍が先頭に立っている。軍人でありながら国を守ることをせず、国内の政治宣伝に没頭する大統領にこびを売っているのだ」

     

    精神的に言えば、韓国軍は北朝鮮軍に対して「腑抜け」状態になっている。こういう軍隊は、「インド太平洋戦略」のクアッド(日米豪印)に加えても、足手まといになるだけだろう。在韓米軍が韓国軍に統帥権を与えても、機能しないことは明白である。むしろ、弊害だけが出てきて、北朝鮮軍に敗北する最悪状態を招くに違いない。

     


    (4)「最も重要な韓米合同軍事演習は、すでにコンピュータ・ゲームのように変わってしまった。政権が行う南北ショーと平和ショーにより、韓国軍は事実上、精神的な武装解除に向かっており、今では「軍事力ではなく対話で国を守る」「韓米訓練については北と協議する」とまで言い出した。元在韓米軍司令官は現状について「このままでは北朝鮮に服属する」と指摘したが、この警告を誰が聞き流せるだろうか」

     

    文政権の国防意識は、ゼロ以下であろう。「軍事力ではなく対話で国を守る」などという話は、童話の世界である。自衛権は、国家存立の基本概念である。それさえ捨てて、北朝鮮と統一したいという文政権の存在に嘆息するほかない。

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    文政権は、これまで北朝鮮の属国のように振る舞って話題となってきた。文大統領が、訪欧の際に北朝鮮を説明して歩いたこと。北朝鮮へ原子力発電所を建設しようとしたこと。北朝鮮が非難する韓国政府閣僚を更迭する、などだ。

     

    これに加えて新たに分かったのは、脱北の元政府高官や大学教授などに職業を斡旋せず、アルバイト稼業で生活させ冷遇していることだ。文政権は、鉄のカーテで覆われている北朝鮮情報を聞き出さず、北朝鮮のご機嫌取りをしているのである。北朝鮮の情報収集は、韓国政府の基本業務のはずだが、これすら放棄している。真意は、南北統一のためには「雑音」に耳を塞ぎたいのだろう。

     

    『朝鮮日報』(2月23日付)は、「金正恩に代わり文大統領が行う 高官クラス脱北者の完全封鎖」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「かつて北朝鮮政府関係者だった脱北民たちが文在寅(ムン・ジェイン)政権の仕打ちによって生活苦にあえいでいるという。2年前に帰順(脱北)したリュ・ヒョンウ元クウェート駐在北朝鮮代理大使やチョ・ソンギル元イタリア駐在北朝鮮代理大使らは今もまだ明確な職場がない。前政権までは元政府関係者や専門職だった脱北民らは国家情報院、あるいはそれに関係する研究所などに勤務することができた。米中央情報局(CIA)でさえ把握できていない北朝鮮の極秘情報を数多く知り、北朝鮮に対する内側からの見方などを提供してきたからだ」

     

    文政権は、北朝鮮に与えてきた「主敵」という位置を取り消した。代わって、日本が「主敵」とされている。こういう倒錯した情勢認識で、韓国は北朝鮮への防備が完全に緩んでいる。北朝鮮の脱北民が、やすやすと38度線を越えてきているのに気づかない例が跡を絶たないのだ。こういう状況だから、文政権は北朝鮮の末端情報に関心を持つはずがない。

     


    (2)「リュ元大使は、「韓国政府から研究院などへの就職要請はなかったのか」との質問に「全くなかった」と伝えた。国家情報院関係の研究院などは、元北朝鮮政府関係者だった脱北民を新たに採用していない。研究院の顧問を退職した元脱北民も生活苦を訴えている。この脱北民は故ファン・ジャンヨプ元秘書と共に脱北した人物だ」

     

    脱北の元北朝鮮高官について、韓国政府は情報収集もしないという。金正恩氏の発言の信憑性を調べるためにも元北朝鮮高官の握る情報は貴重なはずだ。そういう機会さえ放棄していることは、北朝鮮へ向けた最大の「好意」であろう。

     

    (3)「北朝鮮で検事だったある脱北民は、包装のアルバイトをしている。韓国法務部や統一部(いずれも省に相当)などにとっては北朝鮮の元検事以上に北朝鮮の検察について詳しい人物はいない。ある脱北外交官の妻はコンビニでアルバイトをしており、北朝鮮で大学教授だった脱北民は日雇い労働をしている。彼らは特別な待遇は望んでおらず、ただ北朝鮮に関する情報や自らの経験を韓国社会に提供し、活用してもらえる機会を求めているだけだ

     

    文政権得意の「人権論」から言えば、生命の危険を冒してまで脱北してきた人たちを、それなりに遇するのは義務のはずだ。文政権は、中国や北朝鮮の人権無視を非難する国連声明に賛同したことがない。文在寅の人権論は、味方の中朝にはルーズであり、敵の日本には徴用工や慰安婦の問題で畳みかけてくる「選択的人権論」である。要するに、まやかしなのだ。

     


    (4)「
    韓国政府は、「元高官だった脱北民への冷遇はない」と主張しているが、これはうそだ。元北朝鮮政府高官の脱北民が代表を務める団体への支援はすでに中断しており、事務所に対する監査も行われた。ある脱北民は、「かつて韓国軍や地方自治体から要請のあった安保関連の講演も今はほぼなくなった」と伝えた。収入源が遮断されたのだ。かつて北朝鮮外交官だった太永浩(テ・ヨンホ)議員に対し、元青瓦台(韓国大統領府)行政官の民主党所属議員は「変質者が暴れている」と侮辱した。これが彼らの本音だ。北朝鮮政権がかつて政府高官だった脱北民たちを攻撃する際に使う言葉がまさにこの「変質」と「背信」だ」

     

    韓国与党は、脱北者を敵視している。金正恩氏を神格化しているので、その統治から逃れてきた者は許せないという立場であろう。

     

    (5)「北朝鮮の元海外駐在官による入国は2013年には8人だったのが14年に18人、15年には20人にまで増えていた。これは国家情報院が当時報告していた内容であり、彼らの多くは北朝鮮のエリートたちだ。ところが最近はこの種の亡命が一気に減少したという。コロナの影響により海外で勤務する北朝鮮関係者の数そのものも減っているが、同時に「韓国に行けば生活苦にあえぐ」という話も伝え聞いているはずだ」

     

    北朝鮮の元高官の脱北者数は、文政権になって一気に減少しているという。冷遇している結果であろう。

     


    (6)「文在寅政権による元高官クラス脱北民に対する冷遇は、北朝鮮の高官たちに「韓国に来るな」というシグナルを送るものであり、脱北を最初から阻止する行為に他ならない。これは金正恩(キム・ジョンウン)兄妹が最も望んでいることだ。元高官クラス脱北民への冷遇は北朝鮮暴力集団の生存を助け、彼らの人倫に反する犯罪の幇助(ほうじょ)につながる。文在寅政権の親北行為はこのようなところにまで及んでいるのだ」

     

    文政権は、南北統一が夢である。この夢を実現する上で、脱北者の存在は統一の正統性を疑わせることになる。韓国の国民が、脱北するほど嫌な北朝鮮と統一するのは「ご免」という世論形成を恐れているのだろう。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-02-04

    メルマガ229号 文在寅の異常な「北朝鮮愛」 暴かれた原発贈与プランに世論沸騰

     

     

     

     

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