勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 欧州

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    中国は昨年6月、香港へ国家安全法を強引に導入して「一国二制度」を破棄した。こうした強引な中国の手法に対して、英独仏の欧州主要国も一斉に反発している。その一環として、南シナ海へ前記3ヶ国は、軍艦を派遣することになった。

     

    『中央日報』(3月1日付)は、「バイデン氏が呼んだ欧州戦闘艦が南シナ海へ、中国は強く反発」と題する記事を掲載した。

     

    欧州の戦闘艦がインド太平洋に集まっている。米国が主導するクアッド(米国・インド・オーストラリア・日本による安全保障の枠組み)に呼応しながらだ。中国は「第2のアヘン戦争」に言及しながら反発している。

     


    (1)「フランス国防省によると、先月18日(現地時間)強襲揚陸艦「トネール」とフリゲート艦が母港トゥーロンを出発した。3カ月間にわたり太平洋で作戦を遂行する予定だと、フランス国防省は明らかにした。この艦艇は南シナ海を2度航海し、5月には米国・日本と連合海上訓練も実施する。産経新聞は昨年12月、米国・フランス・日本の連合訓練は人道的支援・災害救護の目的で無人島に兵力と装備を上陸させる内容だと報じた。同紙は事実上、尖閣諸島(中国名・釣魚島)奪還作戦訓練であり、中国に強い警告メッセージを送る性格もあると分析した」

     

    フランスが、強襲揚陸艦「トネール」とフリゲート艦を西太平洋へ派遣した。5月に米国・日本と連合海上訓練を行うという。目的は、無人島に兵力と装備を上陸させる内容とされている。尖閣諸島奪還作戦の演習と見られる。中国が、尖閣諸島侵略を行っても、日米仏が共同作戦を展開するという中国への警告である。

     

    (2)「フランスは、昨年から攻撃型原子力潜水艦と支援艦を派遣し、南シナ海で哨戒作戦を展開している。フランスだけでない。英国は空母「クイーン・エリザベス」を日本に派遣する。7万トン級の「クイーン・エリザベス」は2017年に就役した最新艦艇で、垂直離着陸が可能なステルス戦闘機F-35Bを含む最大60機の航空機を搭載できる。共同通信によると、英国の空母は日本に長期駐留し、在日米軍の支援を受けながら米海軍、日本海上自衛隊と連合訓練を行う。20世紀の日英同盟を連想させるという声も出ている」

     

    英国は、7万トン級の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を日本に派遣する。日本を準母港にして長期駐留する。日米海軍との合同演習を行うなど、密接な関係を構築する。英国は、年内にTPP(環太平洋経済連携協定)加盟を済ます見通しである。名実ともに日英関係の緊密化を図る。

     


    (3)「ドイツも早ければ今年夏に、駆逐艦1隻を太平洋に展開する。ドイツ駆逐艦は韓国とオーストラリアにも向かうという。ドイツ政府は特定国を対象とするものではないと強調したが、昨年9月に「法の支配と自由な市場」を骨子とする「インド・太平洋ガイドライン」を発表した。米国が中国に圧力を加えながら使用する国際外交用語が「法の支配と自由な航海」だが、これと軌を一にする」

     

    ドイツは、中国との関係が深いものの、中国の人権弾圧には強く抗議する姿勢を見せている。

     

    (4)「中国は、こうした欧州の動きに反発している。中国国営メディアの環球時報は昨年7月、英国が空母を韓半島(朝鮮半島)と日本がある西太平洋に派遣する意思を表すと、「新たにアヘン戦争でもするつもりなのか」と批判した。専門家らは英国・フランス・ドイツなど北大西洋条約機構(NATO)核心国が、インド太平洋に戦闘艦を派遣するのには大きな意味があると分析する。米国は、クアッドを拡大したクアッド・プラスを構想している。NATOが、ここに公式的に参加すれば、クアッド・プラスは米国を中心にした世界安全保障協議体に拡張される

     

    英独仏は、NATOの核心国である。クアッドが将来、NATOと協調行動を取る可能性が出てきた。NATOは、2030年をメドに新戦略概念を発表する予定。アジアの安全保障問題をとり上げる公算が強い。そうなると、「NATO+クアッド」の世界安全保障協議体に拡張される。中国の軍拡が無駄になるのだ。

     


    (5)「経済社会研究院の申範チョル(シン・ボムチョル)外交安保センター長は、「欧州は米国の勧誘もあったが、自由主義的な国際秩序を認めない中国を牽制する必要性を感じたのだろう」とし「遠く離れた欧州も動くのに、韓国は中国を意識してあえてクアッドから遠ざかろうとしている。クアッドに加わらなければ韓国は結局、米国の『2流同盟国』に落ちる恐れがあり、中国に対するレバレッジを失う」と指摘した」

     

    「NATO+クアッド」体制が出来上がれば、韓国の「居場所」がなくなる。米国の「二流同盟国」という地位に甘んじるであろう。韓国の単眼思考が招く孤独外交である。

     

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    テイカカズラ
       


    欧州では、一斉に中国の存在に警戒の目を向け始めた。中国は、EU(欧州連合)分断を狙って中東欧17ヶ国へ接近し、中国との定期会合「17+1」を開催するまでになった。だが、今年の首脳会談では17ヶ国のうち6ヶ国が出席せず、閣僚が代理出席する事態を招いている。理由は、中国が約束した経済支援もなく、中東欧諸国からの輸出も増えないためだ。中国の大風呂敷が破綻した結果と言える。

     

    こうした背景の中、エストニアの対外情報機関が年次報告を発表し、中国を厳しく批判する内容で注目されている。それによると、中国共産党は世界支配を目論んでいるというもの。中国はこれに抗議して、内容の変更を求めたが拒否された。欧州に広がる中国警戒論の一端を示している。

     


    『大紀元』(2月20日付)は、「『北京主導の声なき世界』エストニア報告書が警告 中国の変更要求を拒否」と題する記事を掲載した。

     

    エストニアの対外情報機関が、2月12日発表の年次報告書によると、中国共産党(中共)が経済的利益の誘惑やスパイ活動、エリートとの関係構築などで海外への影響力を高めていると指摘している。欧米との対立が激化する中、中共は欧米を分断する戦略を立てているという。

     

    (1)「報告書は、中共の指導部が世界を中国の技術に依存させるという明確な目標を持っているとし、中共が投資や5Gネットワーク技術などを通じてエストニアに浸透していると警告している。特に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中国版の衛星測位システム・北斗について言及した。エストニアは、トランプ前米政権主導の「5Gクリーンネットワーク」に参加し、華為技術などの中国サプライヤーを排除している」

     

    ファーウェイの「5G」は、米国からの禁輸措置で大きな打撃を受けている。だが、中国版の衛星測位システム「北斗」を使って、世界支配を目論んでいることは疑いない。エストニアは、早くから中国の意図を見抜いてきた国である。

     


    (2)「報告書は、中共の外交政策が提唱するいわゆる「人類運命共同体」の実現は

    「北京主導の声なき世界」につながると警鐘を鳴らした。駐エストニア中国大使館は14日、「強い反対」の声明を発表し、「エストニア人民に対する中国人民の感情を傷つけた」とし、エストニア当局に報告書の内容変更を求めた。エストニアのウルマス・リンサル外相は、この要求を拒否した」

     

    一端、発表された報告書が、中国の抗議で内容を変更するはずがない。こういう点が、傲慢な証拠である。

     

    (3)「同外相はエストニア公共放送(ERR)に対し、報告書は「専門知識に基づいた安全性評価である。それは決して、中国との二国間協力を全く進めないということではない。両国の安全保障に役立つ場合はそうすることもある」と述べた。そして、「欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)は、世界における中国(共産党)の影響力の増大について議論している。(中略)エストニア政府は独自の対中政策を採用している」と付け加えた」

     

    下線部は、事実である。NATOは、中国の軍事的脅威を除去するために2030年までに新たな戦略概念を発表することになった。「中国包囲」は、こうして世界規模で始まっている。

     


    (4)「欧州の小国エストニアは、ソ連から独立した国の一つ。エストニアは長い間、隣国ロシアに神経を尖らせていたが、近年、中共の対外浸透への言及が増えているという。エストニア対外情報機関は年次報告書の中で、欧米との対立が強まる中で、「中国(共産党)の主な目的は、欧米を分断し、弱体化させることだ。中国(共産党)は、分断された欧州が弱い相手となり、米国のような強い抵抗力を持たなくなることを十分に認識している」と述べている」

     

    下線のような発想法は、2010年代後半から起こったもの。この背景には、「一帯一路」計画がある。だが、中国経済の先細りが明確になるとともに、経済支援が滞っている。中東欧諸国は、次第に中国を見限った動きを始めている。

     

    (5)「外国情報機関の責任者ミク・マラン氏は報告書の序文で、「中国(共産党)の活動は年々新たな安全保障上の懸念を高めている」とし、「中露協力は緊密化しており、関係の主導権は北京が握っている」と指摘した。北京は2012年から、中国と中東欧17カ国の経済協力の枠組み「17+1」を推進するなど、欧州の後背地で積極的に活動している。エストニアなど6カ国は2月9日、北京が召集したオンラインの「17+1」首脳会議に閣僚だけを派遣し、中共を意図的に冷遇したと見られている」

     

    金の切れ目は縁の切れ目である。中東欧と中国では、地理的にも離れている。これまで、特別の結びつきもない中東欧が、中国と関係を持つのは金銭だけである。その金銭が切れれば、元の木阿弥となって当然であろう。

     

    (6)「ルーマニア・アジア太平洋研究所(RISAP)のアンドレア・ブリンザ副主席は、米『VOA』に対して、中東欧諸国の中国への冷遇は欧州連合と米国、そして自国民へのアピールだと述べた。「『17+1』枠組みがゾンビ化しており、約束された投資が履行されず、輸入も増えていない。これに失望した一部の加盟国は脱退を考えている」と同副主席は指摘した」

     

    中東欧と中国の「17+1」枠組は、ゾンビ化している。脱退を考える国もあるというから、中国も手を広げすぎて収拾がつかなくなってきた。自業自得の面が大きい。

     

    (7)「米エンタープライズ研究所(AEI)研究員のゲーリー・シュミット氏も、『VOA』に対して「欧州各国を分断させようとする中国(共産党)の戦略はある程度の効果はあるが、中国の振る舞いに対する国際社会の反感を増幅させている」と述べた」

     

    中国の狙った中東欧と欧州の分断戦術は、見事に失敗の様相が濃くなっている。こういう流れが強まると、中国には大きな逆風になる。中国は、明らかに窮地に立たされている。

     

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