欧米と中国の間で、「人権戦争」が始まった。中国は、人権問題を政治化したと反発している。両者の間には、「人権」に関して超えがたい溝のあることを知らしめた。中国には、主権在民思想が存在せず、支配者が人民をいかに扱うか全ての権利を持つ専制主義思想に立っていることを図らずも「告白」したに等しい。
EU(欧州連合)は、中国による新疆ウイグル族への人権弾圧非難に対し、中国が欧州議会の議員5人、オランダ、ベルギーなどの国会議員を含む個人10人と4団体を制裁した。これに対して、EUの主要5ヶ国が一斉に中国大使を召還して抗議する事態となった。
ブリンケン米国務長官は3月24日の演説で、中国の人権問題をめぐる米欧と中国の対立について「我々は主張を曲げずに結束することが極めて重要だ」と強調した。中国に譲歩すれば「いじめ行為が機能するとのメッセージを送る恐れがある」と指摘し、中国による制裁に屈しないよう欧州に訴えた。『日本経済新聞 電子版』(3月25日付)が伝えた。
『大紀元』(3月24日付)は、「EU5カ国、中国大使を相次ぎ召喚 北京の報復制裁に抗議」と題する記事を掲載した。
欧州連合(EU)が新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐり、中国当局者に対する制裁措置を発表したことを受け、中国政府は直ちに報復として、EU諸国に対して制裁を科した。 フランス、ドイツ、ベルギー、デンマーク、オランダなどは23日から、次々と中国大使を召喚して抗議した。
(1)「中国の制裁リストには欧州議会の議員5人、オランダ、ベルギーなどの国会議員を含む個人10人と4団体が含まれている。制裁対象となった団体はEU理事会政治・安全保障委員会、欧州議会人権小委員会、ドイツのシンクタンク「メルカートア中国問題研究所」、デンマークの「民主主義の同盟」などの4団体で、いずれも中国を批判したことがある。オランダは23日、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツは24日、中国大使を召喚して抗議を行った」
中国は、居丈高になってEU各国へ臨んでいる。だが、EUとの投資協定は、欧州議会で審議棚上げ措置を受けた。中国が、人権弾圧を中止するか、それに見合う措置を講じない限り、打開の道はなくなった。「飛んで火に入る夏の虫」という皮肉な事態を招いている。
(2)「ベルギーの『Knack』誌によると、同国のソフィー・ウィルメス外相は22日、中国当局によるEUの団体や欧州議会議員に対する制裁措置に強く反対すると表明した、と報じた」
(3)「ドイツ外務省も中国の吳懇大使を召喚したことを発表した。ドイツ政府は「中国による欧州議員、科学者、政治機関、非政府組織に対する制裁は、欧中関係を不必要に緊張させた」と中国を批判した」
ドイツは、中国と経済関係が最も密接である。EU・中国の投資協定も推進役はドイツであった。そのドイツを怒らせたのだ。ドイツと並んで推進役を務めたフランスは、国内事情で、投資協定反対に回るという事情になっている。投資協定の先行きは不透明である。
中国は、投資問題でEUから締め出されれば、有力投資先を失う事態になる。こういう切迫した事情を抱えながら「強気」に出て大失敗である。
(4)「デンマークも中国大使を召喚したと同国外務省が明かした。制裁対象には、元デンマーク首相で前北大西洋条約機構(NATO)事務総長のアナス・フォー・ラスムセン氏が設立した民主主義の同盟も含まれている。デンマーク外務省によると、中国大使に対して、デンマークは中国のこのような行動に不満であると告げた。デンマークのコフォズ外相は、「EUの制裁対象は、深刻な人権侵害に直接責任を負う中国当局者だけだ」とし、「中国の制裁は、EUのそれとは同じものではない」と強調した」
(5)「ルドリアン仏外相が22日、ツイッターに「中国大使館の発言や、選挙で選ばれた欧州の当局者や研究者、外交官に対する措置は許容できない」と投稿し、「このメッセージをしっかりと再確認するため盧沙野・駐仏中国大使を呼び出した」と投稿した」
フランス外相は、「選挙で選ばれた欧州当局者」と強調して、これに対する報復措置を許与できないと皮肉な批判をしている。中国では国民に選挙権も与えられず、選挙制度すら存在しないからだ。中国は、「やぶ蛇」という結果を招いた。