日英防衛協力が積極的に進められている。英国最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は、すでに母国を出港しており、日本到着は9月の見込みだ。中国と東南アジア諸国数ヵ国が、一部の領有権を争う南シナ海を経由して日本に向かう同空母打撃群は、インド、シンガポール、韓国にも寄港する予定である。
クイーン・エリザベス空母には英国海軍の駆逐艦2隻、フリゲート2隻、支援艦2隻の他、米国海軍とオランダ海軍の艦船が同行している。英国の新たな外交戦略の中核を担う新型空母2隻のうちの1隻であるクイーン・エリザベスが、空母打撃群の指揮艦となる。こうした行動は、米国との「特別な関係」を固め、北大西洋条約機構(NATO)や世界の他の国々との同盟関係を強化することを目指したものとされている。
クイーン・エリザベスのインド太平洋への航行は、NATOが将来、クアッド(日米豪印)に加わる橋渡しをする可能性を秘めている。中国にとっては、極めて警戒すべき動きであろう。NATOが加われば、中国は「袋の中のネズミ」同様の存在になる。
クイーン・エリザベスには、英国の8機の最新鋭戦闘機、ロッキード・マーチン製F35Bとともに、米海兵隊から派遣された同様の戦闘機10機が艦載されている。艦船8隻から成る今回の空母打撃群は、同国の海上軍事行動としては1982年のフォークランド紛争以来最大の規模とされている。
英国はもはや、従来型の戦争を遂行できる巨大な陸軍を必要としていない。その代わりに必要になっているのは、海外に派遣され、対立が生じている地域で同盟諸国を支援し、敵対勢力の行動を阻止するための、より小規模だが、より装備が充実した戦力としている。このように、不退転の決意の下に「クイーン・エリザベス」と空母打撃群が訪日し、中国への対抗姿勢を明確化する。
『大紀元』(8月3日付)は、「海上における日英防衛関係の強化」と題する記事を掲載した。
ベン・ウオレス英国防相と岸信夫防衛相により防衛省で開催された「日英防衛相会談」後の共同記者会見で、ウォレス国防相は、「英国空母打撃群の日本初寄港の後、英国は年末に向けて哨戒艦2隻を同地域に恒久的に展開する方針である」と発表した。現在のところ、在日英国大使館は、英国が展開する海軍艦船の事実上の母港となる港湾についての言及は避けている。
(1)「岸防衛相の発表よると、同空母打撃群の日本寄港の際にクイーン・エリザベス空母と他の駆逐艦などは、日本における複数の海上自衛隊基地と米国海軍基地に分散寄港することが決まっている。本格的な初航海でF-35Bステルス戦闘機を搭載したクイーン・エリザベス空母は、在日米海軍司令部が置かれている米海軍横須賀基地に寄港する。同基地は米軍が前方展開している唯一の米国空母「ロナルド・レーガン」の事実上の母港でもある」
米海軍横須賀基地は、米国空母「ロナルド・レーガン」の母港になっている。「クイーン・エリザベス」も横須賀基地寄港で、今後の戦略展開を起案するのであろう。
(2)「軍事司令官の代表団と共に訪日したウォレス国防相は、避難支援やテロ対策などの任務を専門とする英国海兵隊部隊「沿岸即応部隊」を最終的には展開する方針も明らかにした。これはインド太平洋地域に対する英国の関与計画が拡大していることを示すもう1つの兆候である」
英国防相は、英国海兵隊部隊「沿岸即応部隊」を最終的に展開するとしている。台湾や尖閣諸島の防衛任務にも協力するというニュアンスだ。
(3)「同国防相の発言によると、英国海軍最大の軍艦による日本寄港は一部に、日本と目標を共有する英国の「重心をインド太平洋地域に置く」という意図を顕著に示すものである。同国防相は共同記者会見で、「日英は両国共に法治に基づく国際秩序を支持し、その推進に取り組んでいる」と述べている。中国が南シナ海の紛争海域や日本が実効支配する尖閣諸島の領有権主張を高めていることで、日本もオーストラリア、フランス、東南アジア諸国などの他諸国との安保関係を拡大および深化する構えである」
英国海軍は、日本防衛に協力する一方で、日本が豪仏や東南アジア諸国などの安保にも協力するとしている。これは、中国と対抗すべく日米英仏豪と東南アジア諸国の一体的な防衛線を築くという意味に取れる。多国籍海軍による防衛構想である。事態は、ここまで進んでいるのだ。
(4)「岸防衛相は、インド太平洋地域で発生している共通の問題に取り組む上で、英国は重要な提携国であると述べた「東シナ海と南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに断固として対抗するという両国の共通の立場を確認した」と話している。ウォレス国防相は、「自国を脅かす敵対国から身を守ることが難しい諸国を防衛する」ことは、志を同じくする日英の義務であると述べている。ウォレス国防相と岸防衛相の発表によると、エンジンシステムとサブシステムに焦点を当てることで、日本の次世代FX戦闘機開発協力に関する議論をより迅速に進めることでも両国は合意している」
下線部は、台湾防衛で日英が協力する姿勢を示したものだ。中国が、台湾を恫喝すればするほど、防衛体制が固まる事態を生んでいる。中国にとって、思わざる結果を招いている。