勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 英国経済ニュース

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    日英防衛協力が積極的に進められている。英国最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は、すでに母国を出港しており、日本到着は9月の見込みだ。中国と東南アジア諸国数ヵ国が、一部の領有権を争う南シナ海を経由して日本に向かう同空母打撃群は、インド、シンガポール、韓国にも寄港する予定である。

     

    クイーン・エリザベス空母には英国海軍の駆逐艦2隻、フリゲート2隻、支援艦2隻の他、米国海軍とオランダ海軍の艦船が同行している。英国の新たな外交戦略の中核を担う新型空母2隻のうちの1隻であるクイーン・エリザベスが、空母打撃群の指揮艦となる。こうした行動は、米国との「特別な関係」を固め、北大西洋条約機構(NATO)や世界の他の国々との同盟関係を強化することを目指したものとされている。

     


    クイーン・エリザベスのインド太平洋への航行は、NATOが将来、クアッド(日米豪印)に加わる橋渡しをする可能性を秘めている。中国にとっては、極めて警戒すべき動きであろう。NATOが加われば、中国は「袋の中のネズミ」同様の存在になる。

     

    クイーン・エリザベスには、英国の8機の最新鋭戦闘機、ロッキード・マーチン製F35Bとともに、米海兵隊から派遣された同様の戦闘機10機が艦載されている。艦船8隻から成る今回の空母打撃群は、同国の海上軍事行動としては1982年のフォークランド紛争以来最大の規模とされている。

     

    英国はもはや、従来型の戦争を遂行できる巨大な陸軍を必要としていない。その代わりに必要になっているのは、海外に派遣され、対立が生じている地域で同盟諸国を支援し、敵対勢力の行動を阻止するための、より小規模だが、より装備が充実した戦力としている。このように、不退転の決意の下に「クイーン・エリザベス」と空母打撃群が訪日し、中国への対抗姿勢を明確化する。

     


    『大紀元』(8月3日付)は、「海上における日英防衛関係の強化」と題する記事を掲載した。

     

    ベン・ウオレス英国防相と岸信夫防衛相により防衛省で開催された「日英防衛相会談」後の共同記者会見で、ウォレス国防相は、「英国空母打撃群の日本初寄港の後、英国は年末に向けて哨戒艦2隻を同地域に恒久的に展開する方針である」と発表した。現在のところ、在日英国大使館は、英国が展開する海軍艦船の事実上の母港となる港湾についての言及は避けている。

     

    (1)「岸防衛相の発表よると、同空母打撃群の日本寄港の際にクイーン・エリザベス空母と他の駆逐艦などは、日本における複数の海上自衛隊基地と米国海軍基地に分散寄港することが決まっている。本格的な初航海でF-35Bステルス戦闘機を搭載したクイーン・エリザベス空母は、在日米海軍司令部が置かれている米海軍横須賀基地に寄港する。同基地は米軍が前方展開している唯一の米国空母「ロナルド・レーガン」の事実上の母港でもある」

     

    米海軍横須賀基地は、米国空母「ロナルド・レーガン」の母港になっている。「クイーン・エリザベス」も横須賀基地寄港で、今後の戦略展開を起案するのであろう。

     

    (2)「軍事司令官の代表団と共に訪日したウォレス国防相は、避難支援やテロ対策などの任務を専門とする英国海兵隊部隊「沿岸即応部隊」を最終的には展開する方針も明らかにした。これはインド太平洋地域に対する英国の関与計画が拡大していることを示すもう1つの兆候である」

     

    英国防相は、英国海兵隊部隊「沿岸即応部隊」を最終的に展開するとしている。台湾や尖閣諸島の防衛任務にも協力するというニュアンスだ。

     

    (3)「同国防相の発言によると、英国海軍最大の軍艦による日本寄港は一部に、日本と目標を共有する英国の「重心をインド太平洋地域に置く」という意図を顕著に示すものである。同国防相は共同記者会見で、「日英は両国共に法治に基づく国際秩序を支持し、その推進に取り組んでいる」と述べている。中国が南シナ海の紛争海域や日本が実効支配する尖閣諸島の領有権主張を高めていることで、日本もオーストラリア、フランス、東南アジア諸国などの他諸国との安保関係を拡大および深化する構えである」

     

    英国海軍は、日本防衛に協力する一方で、日本が豪仏や東南アジア諸国などの安保にも協力するとしている。これは、中国と対抗すべく日米英仏豪と東南アジア諸国の一体的な防衛線を築くという意味に取れる。多国籍海軍による防衛構想である。事態は、ここまで進んでいるのだ。

     

    (4)「岸防衛相は、インド太平洋地域で発生している共通の問題に取り組む上で、英国は重要な提携国であると述べた「東シナ海と南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに断固として対抗するという両国の共通の立場を確認した」と話している。ウォレス国防相は、「自国を脅かす敵対国から身を守ることが難しい諸国を防衛する」ことは、志を同じくする日英の義務であると述べている。ウォレス国防相と岸防衛相の発表によると、エンジンシステムとサブシステムに焦点を当てることで、日本の次世代FX戦闘機開発協力に関する議論をより迅速に進めることでも両国は合意している」

     

    下線部は、台湾防衛で日英が協力する姿勢を示したものだ。中国が、台湾を恫喝すればするほど、防衛体制が固まる事態を生んでいる。中国にとって、思わざる結果を招いている。

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    英国は、中国が一方的に中英協定を破棄して香港の「一国二制度」を踏みにじったことで、アジア安保に積極的に関わる方針へ転換している。具体的には英艦2隻をインド太平洋地域へ常駐させると発表した。これによって、「打倒中国」という英国の軍事戦略が明確にされた。これで、英国の「クアッド」(日米豪印)参加の可能性が一段と高まってきた。

     

    『大紀元』(7月21日付)は、「日英防衛相会談、英はインド太平洋地域に2軍艦を常駐と発表」と題する記事を掲載した。

     

    岸信夫防衛相は7月20日、訪日中の英ウォレス防衛相と日英防衛相会談を行った。公表によれば、双方は英空母打撃群が日本に寄港し、自衛隊と共同訓練を実施することは、日英防衛協力が「新たな段階」に入ったことを確認した。さらに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現には、英国の関与は「強固で不可逆的」であるとの認識を共有した。

     


    (1)「英国側の発表によると、インド太平洋地域に英国海軍の軍艦2隻を常時配備させることを表明した。これに先がけて英国防省が発表した声明によれば、英海軍リバー級洋上巡視船「HMSスペイ」と「HMSタマー」が、8月下旬からインド太平洋地域に配備され、オーストラリアや日本、シンガポールとの共同活動に加わるという」

     

    英国海軍の軍艦2隻が、インド太平洋地域に常時配備されることになった。英海軍リバー級洋上巡視船「HMSスペイ」と「HMSタマー」である。日本・豪州・シンガポールとの共同活動に加わるという。これは、事実上の共同防衛軍の役割を果たす。

     

    これら英艦2隻は、日豪シンガポールを「母港」にして、活動するのであろう。これが将来、NATO(北大西洋条約機構)との結びつき強化のきっかけになる。

     


    (2)「防衛省によると、英空母打撃群の訪日時の寄港は9月で、英空母「クイーン・エリザベス」が在日米軍横須賀基地に、その他の英・米・オランダの艦船による随伴艦は、海上自衛隊の横須賀(神奈川県)、舞鶴(京都府)、呉(広島県)の各基地、そして、在日米軍佐世保海軍施設などにそれぞれ寄港する。両大臣は、東シナ海や南シナ海をめぐる情勢について、「力による一方的な現状の試みや緊張を高めるいかなる行為に強く反対する」との意思を改めて表明した。そして、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序、特に国連海洋法条約が重要との認識を一致させた」

     

    英空母「クイーン・エリザベス」が在日米軍横須賀基地に寄港するのは、将来の常駐に備えた一環と見られる。横須賀基地では、空母の点検のほか艦載機の修理も可能という見方があった。米艦とオランダ艦も随伴していることから、多国籍軍隊との共同演習を常態化させる目的であろう。これに、海上自衛隊が加わるのだ。

     

    『大紀元』(7月21日付)は、「英国の重点はインド太平洋に、英空母打撃群は関係国と連携深めると題する記事を掲載した。

     

    過去数十年の間で最大の空母打撃群を英国が展開した。このことは、復活した英国海軍が米国や欧州の同盟諸国、インド太平洋地域の提携諸国と協力を図りながら世界規模で展開できる有数の力を留めていることを表すものである。

     

    (3)「2021年5月、英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核として構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」が「オペレーション・フォルティス」の一環として北大西洋の港を出港した。英国空母打撃群は2021年12月まで2万6000海里を航行し同年後半には日本にも寄港すると発表されている。それまでに南シナ海を含むインド太平洋海域を航行する予定である。今回の展開により、国連海洋法条約に規定される「航行の自由」の推進に取り組む英国とその同盟諸国の姿勢をインド太平洋地域の提携諸国に示すことができる」

     

    今回の「クイーン・エリザベス」を中核として構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」が、英国とその同盟諸国の姿勢をインド太平洋地域の提携諸国に示すことができる、としている。これは、英国のみならず同盟国の防衛姿勢をインド太平洋地域諸国に示すデモンストレーションと位置づけているのだ。中国への対抗示唆であることは言うまでもない。

     

    (4)「英国政府は2021年3月、世界的な英国外交に係る今後10年の方針を包括的にまとめた「統合レビュー」を公表した。同方針に概説される通り、英国国防省は今回の展開を軍事、貿易、外交の「重心」をインド太平洋地域に置くという英国の意図を実質的に実証する、と記されている。英国のインド太平洋防衛の取り組みに関しては、同国はすでにオーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールと「5ヶ国防衛取極(FPDA)」を締結している」

     

    英国は、今後10年の国防姿勢をインド太平洋地域に置くことを明確にしている。英国はすでに、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールと「5ヶ国防衛取極(FPDA)」を結んでいる。

     


    (5)「英国空母打撃群21には英国海軍のフリゲート2隻、駆逐艦2隻、潜水艦1隻の他、米国海軍の駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」とオランダ海軍のフリゲート「エヴァーツェン」が含まれている。クイーン・エリザベス空母には英国空軍のF-35BライトニングII戦闘機8機と共に、米国海兵隊に所属する同戦闘機10機が搭載されている。米海兵隊公式ウェブサイトに掲載された記事によると、クイーン・エリザベス空母に乗船した米国上級将校のサイモン・ドラン大佐は、「今回の展開は世界規模で展開できる米英軍の能力と両軍の優れた相互運用性を象徴するものである」とし、「英国は最も堅固かつ有能な同盟国の1つであり、今回の展開により北大西洋条約機構(NATO)同盟国の抑止・防御力が強化される」と述べている

     

    英国空母打撃群21は、世界規模で展開できる米英軍の力量を示している。これは、NATO軍の活動の一環であるとしている。つまり、米英軍はNATOの一翼を担うと同時にインド太平洋戦略にも寄与することを明確にした。NATOは将来、インド太平洋戦略と関わることを示唆しているのだ。中国にとっては、思わぬ伏兵の展開が始まっていることを忘れてはなるまい。

     

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    英国のTPP(環太平洋経済連携協定)加入は、年内の見通しが強くなっている。英国は、自由貿易の国ゆえにTPP参加にとって格別の障害が見当たらないからだ。英国の年内加入説は、年初から指摘されてきたところでもある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「英貿易相『TPP加盟合意』22年中に、中国の参加に難色」と題する記事を掲載した。

     

    英国のトラス国際貿易相は日本経済新聞のインタビューで、環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟交渉について「2022年中に結論を出すことを希望している」と語った。TPP参加に関心を示す中国に対しては世界貿易機関(WTO)などの国際貿易ルールに従う努力が必要だと述べ、現状ではTPP参加国が加盟を受け入れることに難色を示した。

     

    中国は、香港への「国家安全法」導入によって、英中で取り決めた「一国二制度」を破棄した。これが、中国への不信感を強め、怒りへとなっている。かつての「大英帝国」である。その沽券に傷をつけられたのだ。中英関係が、急速に冷却化したのは当然であろう。英国が、中国に対して「裏切られた」という感情を持っている以上、中国がTPPへ参加したいと言っても断固、拒否する姿勢を強めるのは当然だ。英国は、「目には目を」の報復精神に燃えている。

     

    (1)「20年末に欧州連合(EU)を完全離脱した英国は21年2月にTPP参加を申請し、6月22日から加盟交渉を正式に始めた。TPP参加をEU離脱後の目玉政策に位置づけている。TPP交渉では関税などの市場アクセス分野では加盟11カ国と国ごとに個別交渉する。英国内では畜産品や農産品の市場開放を警戒する声が農業関係者から上がる。トラス氏は、「TPP加盟国のオーストラリアと2国間の自由貿易協定(FTA)の合意にこぎ着けた。TPPでも市場アクセス交渉はうまくいくと思う」と述べ、交渉が行き詰まるような展開にはならないとの見通しを示した」

     

    英国は、すでに豪州とのFTA交渉で合意にこぎつけている。日本は、日英友好で固く結びついているので、英国のTPP加入を促進する役割を果たすであろう。

     


    (2)「TPP参加には中国も関心を示すが、TPPは加盟の条件として国有企業の改革や幅広い品目での関税撤廃を求めている。トラス氏は「不透明な政府補助金や進出企業への技術移転強制、(新疆ウイグル自治区の)強制労働などの問題がある」と中国が抱える課題を指摘した。「中国はもっと努力する必要がある」とも語り、WTOなどの国際貿易ルールに従わない限りTPP参加は難しいとの見解を示した。英国が正式にTPP加盟国となれば、中国の加盟申請を審査する立場になる」

     

    英国が強硬路線にカジを切るのは、ジョンソン政権を支える与党・保守党内の対中懐疑派が勢いを増している点が大きい。特に伝統的に人権を重んじる保守派にとっては、香港の自治の侵害やウイグル族の強制労働が疑われる問題は容認できない。英議会では政府提出の貿易法案に、特定民族の破壊行為があると認定された国との貿易や投資の協定を結びにくくする修正を加えようとする動きが活発化している。

     

    上院は、2月上旬の貿易法案の審議で「英国の高等裁判所に、民族破壊行為があったかを判断する役割を与え、『あった』と認定された場合、議会で当該国との通商政策について議論する」という趣旨の修正を加えた。議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いだ。

     


    (3)「10月に英国で開くG7貿易相会合はWTO改革が主要な議題になる。WTOは途上国に国内産業の保護を認めたり、先進国の市場に農産品や工業製品を安く輸出できたりする特権を与えている。途上国かどうかの認定は自己申告制で、中国など一部新興国が途上国の地位を返上しない問題が起きている。トラス氏は中国経済が米国の1割程度の規模だったWTO創設当時とは状況が全く違うと指摘した。「WTOの途上国の地位は貿易を通じて人々を貧困から救い出すために支援を必要とする国にだけ活用されるべきだ」とも強調し、中国の扱いの是正が必要だとの考えをみせた」

     

    トラス氏は10月に対面で開く予定のG7貿易相会合の議長も務める。WTO改革が主要な議題になる予定だ。WTOは、途上国に国内産業の保護を認めたり、先進国の市場に農産品や工業製品を安く輸出できたりする特権を与えている。途上国かどうかの認定は、自己申告制である。改めて、中国を途上国と認めるかどうかを議論する。英国は、徹底的に「中国シフト」を敷いている。

     

     

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    現在の世界的なテーマは、二酸化炭素の排出量を減らすことである。二酸化炭素は、人間の経済活動と密接な関係を持っていることはいうまでもない。一方、新型コロナウイルスの感染を減らすには、「人流」を減らすことが重要だと叫ばれている。この両者の共通点は、人間が蟄居していることが最善という結論に落ち着く。

     

    冒頭から、いささか荒唐無稽な話題を持ち出したのは、「脱炭素」が人間の数と比例しているという議論が出てきたので、この考えを吟味する必要を感じたたからだ。私の結論を先に言えば、合計特殊出生率が置換率「2.08」を割り込むと15年後に、その社会は経済活動に変調を来たすことを忘れてはならない。その結果、社会保障制度がガタガタになって、脱炭素も十分に行なわれない危機に直面することを覚悟すべきということだ。

     


    『日本経済新聞』(6月24日付)は、「人口減少のプラス面に着目を」と題する記事を掲載した。筆者は、エネルギー移行委員会議長 アデア・ターナー氏である。2008~13年英金融サービス機構(FSA)長官。民間企業が立ち上げたエネルギー移行委員会(ETC)で現職。

     

    5月に発表された中国の2020年実施の国勢調査は、人口がほとんど伸びていないことを示した。中国の1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.3と、(通常は約2.1とされる)人口置換水準(人口の国際移動がないと仮定し、一定の死亡率の下で現在の人口規模を維持するための合計特殊出生率の水準)を大きく下回った。こうした現象は先進国も同様だ。

     

    (1)「1990年ごろから2000年代にかけ米国の出生率が2を上回る水準に戻った当時、「古い欧州」と比較した米国のダイナミズムや「社会的信頼感」の高まりを理由に挙げる識者もいた。実際には、増加は移民によるものといえた。はるかに高い出生率が維持されているのは、アフリカや中東に集中するより貧しい国だけだ。女性が十分な教育を受け、いつ子どもを持つかどうかを自由に選択できるようになった国の出生率は、置換水準を下回ることになる。こうした状況が広がれば、世界の人口はいずれ減少するだろう」

     

    昨年7月、英医学誌『ランセット』に掲載された論文によれば、2100年の世界人口は88億人となり、現時点で国連が算出した予測よりも21億人少なくなる。合計特殊出生率の低下と人口の高齢化により、世界の勢力図が一新されると予測している。21世紀の終わりまでに195か国中183か国で、移民の流入が無い場合に、人口維持に必要な数値(注:2.08)を下回るという。


    (2)「幅広くみられる、型にはまった見方は、人口の減少は悪いことに違いないというものだ。人口が安定した後に減少すれば、絶対的な経済成長率は低下するかもしれない。だが繁栄と経済的機会にとって重要なのは、国民1人当たりの所得だろう。教育を受けた女性が、「経済ナショナリスト」の気分を良くするために子供を産むのは嫌だと思うのは、非常に望ましいことだ。人口の安定や減少が国民1人当たりの経済成長を脅かすという議論は誇張されており、間違っているケースもある

     

    日本を例に取れば分かるが、合計特殊出生率の低下に伴う総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)比率の減少は、潜在的成長率を引下げる要因である。つまり、全体の労働力人口が減れば、経済成長率が低下して、1人当たりGDPも上昇しにくい状況が生まれる。

     

    この筆者が最も見落としている点は、人間の数が減れば供給と需要が減って、その相互作用である経済成長率に響くことである。日本でも出生率低下を喜んでいた向きがいた。「通勤電車の混雑度が緩和される」という類いである。今、振り返って見れば、社会保障面で大きな穴が開くことに気付かなかったのである。経済活動は、供給と需要の二要因から構成されることを忘れては困る。人間の数が減れば、需要減に見舞われるのだ。

     


    (3)「人口が増加しなくなると、退職者1人当たりを支える現役労働者が減り、国内総生産(GDP)に占める医療費の比率が上昇するのは確かだ。しかし上昇分は、人口増加を支えるためのインフラや住宅への投資の必要性が低下することで減殺される。無駄をなくし、ハイテクなどへの支出を増やせば、人口が減少しても繁栄を続けられる」

     

    人口減によってインフラ投資や住宅投資が減ることは、需要を減らすことである。供給はロボットの多用で一定水準を維持できても、ロボットは消費しないから供給と需要の不均衡をもたらして、経済活動は停滞せざるを得ないのだ。よって、急激な人口減は経済活動のバランスを崩して不況を招く大きな要因である。

     

    (4)「世界の人口が安定し、やがて減少に転じた場合、気候変動を回避するための温暖化ガスの排出削減が容易になる。労働力の縮小は、企業の自動化の誘因となり、実質賃金は上昇する。一般市民にとっては、絶対的な経済成長よりも賃金増加のほうが重要だ。技術によって自動化される仕事が増えれば、より大きな問題は、潜在的な労働者の数が多すぎることで少なすぎることではない

     

    このパラグラフでも、同じ誤解を繰返している。ロボットや機械化は生産性を上げるが、需要がゼロという重要な点を忘れている。経済は、供給と需要の均衡によって発展する。賃金の増加も生産性の増加に見合ったものでなければ、アンバランスになって不況になる。韓国の文政権が陥った実例がこれだ。全体のGDPが増えないで、1人当たりのGDPが増えると言う魔術はない。全体のGDPが増えるのは、供給と需要がマッチしている結果である。

     


    (5)「複数の調査によると、出生率が低い国では多くの家族がもっと子どもを持ちたいと考えるが、高い不動産価格や託児所の不足などが障害になっている。政策立案者は、夫婦が理想とする数の子どもを持つことをできる限り可能にするような対策を検討すべきだ。しかし改善をはかっても、長期的には人口が減少していく。世界中で早く人口が減ったほうが、人々にとってよい結果をもたらすだろう

     

    下線部は、明らかに二酸化炭素を減らす上での前提条件である。だが、二酸化炭素を減らすには、究極の脱炭素として水素発電がある。科学の力による脱炭素が不可欠である。今後の人口減は、英医学誌『ランセット』に掲載された論文のように、確実に進行する。超高齢社会における福祉問題が、これからの重要問題になるだろう。脱炭素は、科学研究の成果も不可欠である。単に、人口減のみに期待を繋ぐ訳にはいかないだろう。

     

     

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    中国企業は、海外の主要国の大学へ研究資金を提供して、研究成果を手にする「鵜匠」の役割を行なっている。すでに米国やカナダでは、こういう中国企業による資金提供の危険性が周知徹底化されているが、ようやく英国でも始まった。

     

    カナダでは、アルバータ州政府が州内の主要大学が中国と関わりのある研究協力を一時停止すると発表した。国家安全保障上の理由および人権侵害への加担を避けるためだとしている。カナダの大学と中国の間には多くの共同研究プロジェクトが展開している。「中国はカナダの大学と協力を通じてカナダの重要な戦略的技術を盗み出し、国家に深刻な脅威をもたらす」とカナダの情報セキュリティ専門家は以前から警告してきた。

     


    『大紀元』(6月11日付)は、「英20大学、ファーウェイなど中国企業から巨額の資金支援 学問の自由への懸念高まる」と題する記事を掲載した。

     

    英国のトップ20大学が、華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国企業から巨額の資金を受けていたと英メディアが報じた。英政界で懸念が広がっている。

     

    (1)「英紙『デイリー・テレグラフ』(6月8日付)によると、英議会中国研究グループ(CRG)の調査で、2015年以降、中国共産党政権と直接つながりを持つ中国企業が、英国の大学に研究資金を提供していたとわかった。たとえば、インペリアル・カレッジ・ロンドンは2015年以降、ビッグデータ研究や工学部のプロジェクトへ資金支援として中国軍と密接な関係があるとされるファーウェイから350万~1450万ポンド(約5億3821万~約22億4875万円)の資金を受け取っていた」

     

    中国企業は、英国の主要大学へ研究資金を提供して大きな見返りを得てきた。中国の最先端研究部門には、こういう隠れ蓑が用意されていた。

     


    (2)「同大学は2016年以来、ファーウェイの他にも、中国石油化工(シノペックグループ)からも少なくとも1000万ポンド(約15億3751万円)、中国航空工業集団 (AVIC)から少なくとも650万ポンド(約9億9938万円)の資金援助を受け取っていた。両社はいずれも中国の国営企業である」

     

    中国企業は、自国研究陣では得られない質の高い研究成果を取り込んできた。

     

    (3)「ファーウェイは2015年以降、ランカスター大学に半導体、コンピューティング、機械学習などの研究のために110万ポンド(約1億6912万円)、ヨーク大学にも「非公開」の研究プロジェクトのために89万ポンド(約1億3878万円)の資金を提供していたことがわかった。ブリストル大学、エクセター大学、ヘリオット・ワット大学は、「敏感な問題」という理由で、受け取った資金の詳細の公表を拒否した。これらの資金提供は、学術の独立への懸念を引き起こした」

     

    中国企業は、半導体やAI(人工知能)などの研究成果を手にしてきた。受け取った資金の詳細の公表を拒否している大学もある。いずれ、法律によって開示させられるだろう。

     


    (4)「CRGを率いる下院のトマス・タジェンダット外交特別委員会委員長は、「英大学が資金を追求すれば、学術的自由が損われる可能性がある」と警告した。同委員長はデイリー・テレグラフ紙に対し、「誰がボスで、誰が最終的な決定権を持っているのか知る必要がある」と指摘した」

     

    中国企業が、英国の大学の研究成果を利用していることを自覚するように促している。

     

    (5)「中国によるスパイ活動や知的財産権の窃盗を懸念した英国政府は、昨年10月1日から国家安全保障に関連する科学分野の審査を開始し、保護対象を拡大した。また、中国人留学生のビザ制限を強化し、航空宇宙、人工知能、サイバーセキュリティなど防衛科学に関連する分野の中国人留学生の受け入れを制限した。政府の調査を受け、インペリアル・カレッジ・ロンドンの広報担当者は、「資金提供者が我々の独立したオープンで透明性のある研究の干渉を許さない。我々は学術的独立性を確保するために強力な措置を講じている」と述べた」

     

    下線部は、米国と同じ中国人留学生の制限である。米国では、中国人留学生が軍籍を隠して留学するケースがあり、摘発されている。

     

    『大紀元』(5月29日付)は、「カナダ・アルバータ州政府、大学に中国との協力停止を要求 安保上などの懸念で」と題する記事を掲載した。

     

    カナダ・アルバータ州のニコライデス高等教育大臣は声明の中で、「カナダの知的財産権が盗まれている可能性や、中国との研究提携が中国の軍事・諜報機関に悪用される可能性」に対して懸念を示した。

     

    (6)「カナダ・アルバータ州では、「州の大学研究は主に納税者からの資金によって賄われている。それが中国に悪用され、カナダとカナダの同盟国に損害を与えたり、あるいは中国政府による自国民への人権侵害のために利用されたりすれば、これは全く容認できないことだ」とした。同氏は」「今回の措置はあくまでも中国政府に対する予防的措置であり、中国人民を標的にするものではない」と強調した」

     

    中国への厳しい警戒感が滲み出ている。ほとんど「敵視」していると言っても良いほどだ。

     


    (7)「カナダ紙『グローブ・アンド・メール』は、アルバータの大学と中国は、ナノ、生化学、人工知能などの戦略的プロジェクトに関わる多くの研究を共同で行っていると報じた。その多くはカナダで開発された技術の商業化に関する研究だが、主導権は中国にあると指摘した」。

     

    ここでも、中国はナノ、生化学、人工知能などの戦略的プロジェクトを狙っている。中国が研究資金を提供しているので、研究成果は中国へ持ち去られている。カナダの大学は、研究の下請け的な役割に成り下がっている。

     

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