日本政府は2月18日、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟を希望する英国の審査でルール分野の協議をほぼ終えたと発表した。データ流通や知的財産で、高いルール水準を堅持し、英国がこれをクリアしたという意味だ。今後は、最後の関税率引下げ交渉に入る。
TPPへ加盟申請している中国にとって、良い知らせではない。英国が現行TPP規定をパスした以上、中国だけに規定緩和が許されないからだ。すでに、林芳正外相は2月12日、訪問先のオーストラリアで豪州のペイン外相と会談した。中国が加盟申請するTPPについて「基本的価値を守る」ことで一致した。これは、中国が国有企業の優遇などでTPPの基準を満たしていないことを指している。日豪は、TPP加盟基準を下げないと確認したのだ。
『日本経済新聞』(2月19日付)は、「TPP ルール水準堅持 英加盟で協議 中国けん制」と題する記事を掲載した。
政府は18日、TPPへの加盟を希望する英国の審査でルール分野の協議をほぼ終えたと発表した。今後、関税交渉に入る。同日、TPP加盟国の交渉官らがオンライン形式の会合で合意した。
(1)「英国のトレベリアン国際貿易相は、「力強いTPPに加わるための画期的な節目だ。交渉のフィニッシュラインも見えてきた」とコメントした。英政府はトレベリアン氏が21日の週に日本やシンガポールなどを訪問すると発表した。市場アクセスといったTPPの残りの課題などについて話し合う見通しだ。作業部会の議長国である日本は、30日以内に関税撤廃率など市場アクセスの条件を提示するよう求めた。英国がいまの加盟国並みに高い水準の撤廃率を示せるかが焦点だ」
英国は、TPPのハイレベルの諸規定にパスしたので、後は関税撤廃率などについて30日以内に高い撤廃率を提示できれば最終合格となろう。英国がここまでこぎつけてきて、関税率撤廃で立ち往生することにはなるまい。すでに、国内で調整済と思われる。
(2)「TPPが定めるルール水準は、日中韓など15カ国が参加する東アジアの地域的な包括的経済連携よりも厳しい。中国のTPP加入を巡って、加盟国側は英国の適合審査を通じ、高いルール水準を堅持する姿勢を示した。山際大志郎経済財政・再生相は18日の記者会見で「例外なくハイスタンダードなレベルでなければ交渉は先に進まない」と強調した」
TPP加盟国側は、英国審査に当たり中国の加盟申請の扱いが頭にあったはず。仮に、中国を加盟させたい国があったとすれば、対英国の審査でも条件緩和を提案した筈だ。それがなかったことは、中国加盟を暗黙裏に「否定」していると見られる。
当の英国はTPPへ正式加盟後、中国の加盟審査を行なう側になる。その英国は、中国のTPP加盟阻止を旗印にしている。
『日本経済新聞』(21年6月29日付)は、「『中国の途上国扱い是正を』 英貿易相インタビュー要旨」と題する記事を掲載した。
(3)「中国は不透明な政府補助金や進出企業に対する強制的な技術移転政策、強制労働などの問題がある。TPPの取り決めはWTO(世界貿易機関)のルールよりも透明性の基準が高い水準にある。(TPP参加には)中国はもっと努力し、WTOルールを守る必要がある」
英国が上げる中国のTPP加盟を困難視する理由。
1)不透明な政府補助金=輸出を支援している
2)進出企業に対する強制的な技術移転政策=違法な技術窃取
3)強制労働=新疆ウイグル族への強制収容に伴う強制労働
前記の3点は、致命的な問題である。中国が、これらを是正すると約束すれば、中国経済はもとより国家としての中国が成り立たなくなろう。新疆ウイグル族問題は、他の少数民族弾圧とも絡んでいるからだ。
(4)「WTOの途上国の地位は、貿易を通じて人々を貧困から救い出すために支援を必要とする国にだけ活用されるべきだ。その点で中国は明らかに途上国ではない。WTOが創設された1995年時点では中国経済は米国の1割の規模だったが、今は状況が全く異なる」
WTOの地位で、中国が自主申告によって、途上国に止まるのは不合理としている。中国は、TPP加盟交渉の際に、このWTOにおける「途上国枠」を利用し加盟条件の引下げを要請するに違いない。英国は、この中国式策略を見抜いて、「反対」姿勢を打ち出しているのであろう。英国は、香港問題で中国から「一国二制度」を破棄された苦い経験がある。「江戸の仇は長崎で討つ」で、TPP加盟阻止に全力を挙げるはず。そのように広言しているのだ。





