日英関係は、急速に関係を深めている。次世代戦闘機開発では、日英伊三カ国が共同開発に取組む。戦闘機は、数十年の寿命があるだけにその間の安定した外交関係が基本になる。つまり、日英はこれから安定的関係によって国際関係に寄与することを予告しているのだ。この日英に米国が加わる。世界外交で、日本の役割の高まりを期待できそうだ。
日英は、ビジネスでも密接な関係構築を目指している。その一つが洋上風力発電事業である。英国は、この分野で世界をリードしているが、日本との協調で洋上風力発電事業を世界へ普及させる計画を立て、日本へ呼びかけてきた。
『日本経済新聞 電子版』(4月14日付)は、「洋上風力発電、英日は理想的パートナー 駐日英大使寄稿」と題する記事を掲載した。
英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が日本経済新聞に寄稿した。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」達成に向けて、英国と日本が洋上風力発電で連携できると主張している。
(1)「英国のシャップス・エネルギー安全保障・ネットゼロ相が(15〜16日に札幌市で開かれる)主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合に参加する。シャップス氏は3月末、エネルギー安全保障の強化、エネルギーの転換に伴う経済的機会の獲得、2050年までにネットゼロを達成するための戦略パッケージ「パワーリングアップ・ブリテン」を発表した。グリーントランスフォーメーション(GX)を掲げる日本もネットゼロへの移行がもたらす経済的機会を認識しているだろう」
日本は、福島原発事故によって温暖化ガス問題で出遅れてしまった。このギャップを埋めるには、洋上風力発電も一つの選択肢である。すでに、秋田県能代沖で三菱商事が参入して本格的な取組みが始まっている。他の総合商社も参入意向を見せているので、意外に早く軌道に乗る可能性が出てきた。
(2)「3月には、英国の洋上風力発電会社20社が東京で開催されたアジア最大の風力発電展に参加し、日本でのチャンスに熱意を示した。国際エネルギー機関(IEA)は洋上風力(による発電)だけで、現在の日本の電力需要の9倍を賄うことができると推定している。世界風力会議(GWEC)は、日本の潜在力を着床式洋上風力で128ギガワット、浮体式洋上風力で424ギガワットと数値化している。参考までに、日本最大の石炭火力発電所である碧南火力発電所(愛知県碧南市)の出力は4.1ギガワットである」
IEAは、洋上風力発電だけで日本の必要とする電力の9倍も賄えると試算している。世界風力会議(GWEC)は、日本の潜在力を着床式洋上風力で128ギガワット、浮体式洋上風力で424ギガワットと数値化しているという。これは、すごいことだ。総合商社5社のトップは、日本の内需を掘り起こせば大変な「宝の山」になると指摘している。過去30年間、日本経済は彷徨してきたが、ついに再起のチャンス到来の感もある。開発資金は、国内で膨大なゼロ金利の貯蓄が眠っている。これの活性化にもつながるのだ。
(3)「英国は、多くの洋上風力発電機を設置している。急速な普及により、14年には1メガワット時あたり150ポンド(約2万5000円)だった洋上風力発電の電力価格は、22年にはわずか37.35ポンド(約6224円)にまで下がった。洋上風力発電(の普及)により、石炭火力発電を段階的に廃止する。12年に石炭火力は国内電力発電の40%を賄っていたが、現在は1%未満で、24年には石炭の使用を完全にやめる予定だ。国連は30年までにすべての先進国に対して石炭の使用を廃止するよう求めている」
洋上風力発電のコストは、急速に下がっている。14年には1メガワット時あたり約2万5000円が、22年には約6224円と4分の1にまで低下した。十分に商業ベースに乗る。
(4)「私たちが心配しなければならないのは、温暖化ガスの排出だけではない。化石燃料の輸入は、敵国となりうる他国に翻弄され、地政学的なショックにさらされることにもつながる。ロシアのプーチン大統領によるウクライナへの侵攻は、燃料やエネルギー価格の高騰とインフレを招いた。自国産のエネルギーへの投資でこうしたリスクは軽減できる。英日は日本の洋上風力発電の潜在力を引き出すための理想的なパートナーだ」
エネルギーの地政学リスクを避けるためにも、洋上風力発電による自前のエネルギーはベストの選択だ。純粋の国産エネルギーである。英国は、洋上風力発電の先進国である。日本は、このノウハウを習得すれば比較的短期間に、エネルギー問題解決へのヒントを得られる。