勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 英国経済ニュース

    a0001_001089_m
       


    日英関係は、急速に関係を深めている。次世代戦闘機開発では、日英伊三カ国が共同開発に取組む。戦闘機は、数十年の寿命があるだけにその間の安定した外交関係が基本になる。つまり、日英はこれから安定的関係によって国際関係に寄与することを予告しているのだ。この日英に米国が加わる。世界外交で、日本の役割の高まりを期待できそうだ。

     

    日英は、ビジネスでも密接な関係構築を目指している。その一つが洋上風力発電事業である。英国は、この分野で世界をリードしているが、日本との協調で洋上風力発電事業を世界へ普及させる計画を立て、日本へ呼びかけてきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月14日付)は、「洋上風力発電、英日は理想的パートナー 駐日英大使寄稿」と題する記事を掲載した。

     

    英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が日本経済新聞に寄稿した。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」達成に向けて、英国と日本が洋上風力発電で連携できると主張している。

     

    (1)「英国のシャップス・エネルギー安全保障・ネットゼロ相が(15〜16日に札幌市で開かれる)主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合に参加する。シャップス氏は3月末、エネルギー安全保障の強化、エネルギーの転換に伴う経済的機会の獲得、2050年までにネットゼロを達成するための戦略パッケージ「パワーリングアップ・ブリテン」を発表した。グリーントランスフォーメーション(GX)を掲げる日本もネットゼロへの移行がもたらす経済的機会を認識しているだろう」

     

    日本は、福島原発事故によって温暖化ガス問題で出遅れてしまった。このギャップを埋めるには、洋上風力発電も一つの選択肢である。すでに、秋田県能代沖で三菱商事が参入して本格的な取組みが始まっている。他の総合商社も参入意向を見せているので、意外に早く軌道に乗る可能性が出てきた。

     

    (2)「3月には、英国の洋上風力発電会社20社が東京で開催されたアジア最大の風力発電展に参加し、日本でのチャンスに熱意を示した。国際エネルギー機関(IEA)は洋上風力(による発電)だけで、現在の日本の電力需要の9倍を賄うことができると推定している。世界風力会議(GWEC)は、日本の潜在力を着床式洋上風力で128ギガワット、浮体式洋上風力で424ギガワットと数値化している。参考までに、日本最大の石炭火力発電所である碧南火力発電所(愛知県碧南市)の出力は4.1ギガワットである」

     

    IEAは、洋上風力発電だけで日本の必要とする電力の9倍も賄えると試算している。世界風力会議(GWEC)は、日本の潜在力を着床式洋上風力で128ギガワット、浮体式洋上風力で424ギガワットと数値化しているという。これは、すごいことだ。総合商社5社のトップは、日本の内需を掘り起こせば大変な「宝の山」になると指摘している。過去30年間、日本経済は彷徨してきたが、ついに再起のチャンス到来の感もある。開発資金は、国内で膨大なゼロ金利の貯蓄が眠っている。これの活性化にもつながるのだ。

     

    (3)「英国は、多くの洋上風力発電機を設置している。急速な普及により、14年には1メガワット時あたり150ポンド(約2万5000円)だった洋上風力発電の電力価格は、22年にはわずか37.35ポンド(約6224円)にまで下がった。洋上風力発電(の普及)により、石炭火力発電を段階的に廃止する。12年に石炭火力は国内電力発電の40%を賄っていたが、現在は1%未満で、24年には石炭の使用を完全にやめる予定だ。国連は30年までにすべての先進国に対して石炭の使用を廃止するよう求めている」

     

    洋上風力発電のコストは、急速に下がっている。14年には1メガワット時あたり約2万5000円が、22年には約6224円と4分の1にまで低下した。十分に商業ベースに乗る。

     

    (4)「私たちが心配しなければならないのは、温暖化ガスの排出だけではない。化石燃料の輸入は、敵国となりうる他国に翻弄され、地政学的なショックにさらされることにもつながる。ロシアのプーチン大統領によるウクライナへの侵攻は、燃料やエネルギー価格の高騰とインフレを招いた。自国産のエネルギーへの投資でこうしたリスクは軽減できる。英日は日本の洋上風力発電の潜在力を引き出すための理想的なパートナーだ」

     

    エネルギーの地政学リスクを避けるためにも、洋上風力発電による自前のエネルギーはベストの選択だ。純粋の国産エネルギーである。英国は、洋上風力発電の先進国である。日本は、このノウハウを習得すれば比較的短期間に、エネルギー問題解決へのヒントを得られる。

     

     

     

    a0960_006618_m
       

    日本と英国が、連携強化に向かっている。EU(欧州連合)を脱退した英国は、アジアで新たなパートナーである日本との関係強化に乗り出す。日本は、米国との関係を保ちつつ、欧州での基盤づくりが不可欠だ。こうした両国の共通利益の上で、100年前の「日英同盟」再現を目指している。

     

    日英同盟は、1902~23年まで継続した。日本は、英国の議院内閣制を導入しており、政治の「手本」としてきた国である。互いに皇室制度を維持しており、共通点は多い。この日英が欧州とアジアで協調する。防衛面では、「準同盟国」の位置になっているのだ。

     

    『日本経済新聞』(11月21日付)は、「太平洋シフトで貿易拡大」と題する記事を掲載した。筆者は、 英貴族院議員・子爵 ヒュー・トレンチャード卿である。

     

    日英関係はこの10年ほどでかなり緊密になっており、「第2の日英同盟」ととらえていい。日露戦争や第1次世界大戦時の日英同盟は軍事同盟だったが、今日の日英の連携は安全保障のみならず、通商や投資など幅広い分野に及んでいる。

     

    (1)「欧州連合(EU)離脱後の英国は自由貿易を支持し、法や条約を順守する国家としてインド太平洋地域への関与を強めている。この地域には英国の歴史的な影響力がなお残り、オーストラリアやマレーシア、シンガポールなどの友好国も多い。なかでも多くの価値観を共有し、ともに議会制民主主義国家である日本との連携は極めて重要だ」

     

    英国は、アジアに多くの植民地を持っていた。それが、第二次世界大戦後に独立している。だが、現在も英国連邦を形成しているので、アジアへの回帰はごく自然なものだ。

     

    (2)「日英の安全保障協力はさらに拡大するだろう。2021年は英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本に寄港した。22年春の日英首脳会談では(自衛隊と英軍が共同訓練をしやすくする)円滑化協定で大筋合意した英国がイタリアと進めている次期戦闘機の共同開発に、日本が真剣に参加を検討しているのは非常に喜ばしい。1905年に(日本海海戦で)ロシア艦隊を破った日本の艦船の多くは英国で建造された。今回は、日本がコンソーシアム(共同体)に参画して英国とともに次期戦闘機を開発することになるだろう」

     

    自衛隊と英軍の「円滑化協定」は、共同演習を可能にする。日本は、英国と防衛面で協調行動が可能になるメリットが大きい。次期戦闘機開発では、英国・イタリアの三ヶ国が協力体制を組む。2035年に自衛隊への配備を目指すが、英伊の両国の販路を使い販売を考えている。

     

    日本は、防衛費の対GDP比2%(現在1%)と大幅な拡大を目指す。ただ、日本の装備品コスト高が続けば財政を圧迫する。そこで、共同開発・生産する次期戦闘機では、英国やイタリアの販路を通じて販売する方針だ。共同開発は、日本にとってもメリットが大きい。

     

    (3)「環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟は英国にとって重要な機会となる。TPP11カ国プラス英国は(英離脱後の)EUに並ぶ巨大な自由貿易圏であり、その成長力はEUをはるかにしのぐ。TPP加盟が英国とEUの貿易に与える影響も軽微とみられており、英国の貿易や投資に大きな利益をもたらす。もともと米国が日本をパートナーとして主導してきたのがTPPだ。(米国の離脱がなければ)英国が加盟しても発言権は非常に小さかったと思う。日本は英国の加盟申請を積極的に受け止めてくれており、英国もTPPの将来に重要な役割を果たす用意がある。TPP11カ国のうち6カ国は英連邦(コモンウェルス)のメンバーであり、英国のコモンロー(判例法)を受け継ぐ国も多い」

     

    英国は、近くTPP加盟が正式に決定の見込みである。かねてから、英国はTPP加入後、中国を加盟させないという強い態度を表明してきた。中国には、香港で一国二制度破棄という「煮え湯を飲まされた」だけに、強い反感を持っており、「中国絶対拒否」という姿勢だ。

     

    (4)「英国はほんの数年前まで、中国が民主主義や自由貿易システムと協調するだろうと考えていた。中国との貿易機会は最大化したいが、香港での(民主化運動を抑圧した)国家安全維持法の施行などをふまえ、現在は中国への懸念を強めている。ウクライナ侵攻で英国はロシアに対する制裁を主導してきた立場にある」

     

    このパラグラフでは、中国の「裏切り行為」を非難している。

     

    (5)「今の英国は、ミドルパワーと言うべきなのだろう。人口は日本のほぼ半分であり、国内総生産(GDP)規模も小さい。だからといって、英国の経済力を無視できるものと考えるのは誤りだ。EUの規制に拘束されなくなり、これからは金融サービスなどで競争力を発揮できるだろう。(文化や価値観で他国に影響力を及ぼす)ソフトパワーも英国の強みだと考える。EU離脱後の英国では首相交代が相次いでいる。特に対外政策では、保守党としてスナク新政権をしっかり支えることが極めて重要になる」

     

    英国のソフトパワーは健在である。金融や情報では、圧倒的な優位性を持っている。さすがは、かつての覇権国である。日本は、英国から多くのことを学ぶ機会ができた。

     

     

    a0960_008707_m
       

    ロシアのラヴロフ外相が、ウクライナ戦争で核を使用すると臭わせている問題は、どこまで信憑性があるのか。英国の見解を見ておきたい。

     

    ロシアの独立系の世論調査機関「レバダセンター」によると、侵攻前、60%台で推移していたプーチン支持率は先月(3月)、83%にまで上昇した。圧倒的な高さである。国民からこれだけ高い負託を受けている以上、プーチン大統領は「フリーハンド」を得ているに等しく、ウクライナ戦争収拾は自らの決断で可能となる理由だろう。

     


    「ジョンソン首相はトークTVのインタビューで、たとえウクライナでロシア軍の戦況がこれまで以上に不利になったとしても、ロシア政府が核兵器を使うとは思わないと述べた。ジョンソン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の国内支持基盤は「圧倒的」で、「ロシアのメディアは、見る限りまったく(戦争の実態を)分かっていない」ため、プーチン氏が姿勢を和らげて撤退するだけの「政治的な余地」は十分あるという見方を示した」(『BBC』(4月27日付)

     

    ロシア国内では、官営メディアだけが許されており、政府の意向と異なる報道は禁じられている。このことは、ロシア国民がウクライナの真実を知らされていないという大きなマイナスがあるものの、ロシアが核戦争に訴えるように追い込まれない点ではプラスという複雑な面を持っている。現在のモスクワ市内が、どのような状況にあるかをBBC記者がレポートした。

     


    『BBC』(4月27日付)は、「『私が知っていたロシアはもうない』、変わるモスクワをBBCロシア編集長が紹介」と題する記事を掲載した。

     

    私はソヴィエト連邦時代のこの国を経験している。ソ連崩壊後のロシアでずっと暮らした。そして世界最大の国は今また、姿を変えた。「特別軍事作戦のロシア」をご案内しよう。

     

    (1)「スーパーへ向かうために車に乗り込む。いつもの習慣でラジオをつける。周波数はFM91.2メガヘルツ(MHz)に合わさっている。かつてこれは、ラジオ局「モスクワのこだま」の周波数だった。「モスクワのこだま」は、ロシアのラジオ局の中で私の一番のお気に入りだった。信頼できるニュースと情報を発信する媒体だった。しかしこの数週間で、この国の独立系メディアはすべて活動停止か廃止に追い込まれた。FM91.2MHzで現在放送しているのは、国営のラジオ・スプートニクだ。ここはウクライナへの軍事侵攻を支持している」

     


    ロシアでは、国営メディアしか許されない。これは、戦時中の日本人が「大本営発表」を唯一の情報源としていた状況と良く似ている。日本国民は、表だって戦争反対を唱えることもなかった。仮に、そういう発言をすれば「非国民」扱いで村八分になった。現在の、ロシアも同じ状況だ。だから、政府の方針をそのまま受入れるであろう。国内動向から見て、「核戦争」になるような反プーチン・ムードは存在しないのだ。これが、皮肉にも核戦争を防ぐ役割をするのかも知れない。

     

    (2)「ガーデン・リングを運転していると、劇場の前を通る。この劇場は建物の表に、巨大な「Z」の文字を立てている。ラテン文字の「Z」はロシアの軍事作戦のシンボルだ。ほかにも、ロシア鉄道の本部前にも「Z」がある。運転しながらトラックを追い越すと、車の側面に「Z」のシールが貼ってあった。この数週間というもの、クレムリン(ロシア政府)を批判する人たちの玄関にも、この「Z」が次々と落書きされている

     

    「Z」マークは、至る所に氾濫している。国民の意識をコントロールしているのだ。

     


    (3)「スーパーに入ると、棚には商品がそろっている。パニック買いで3月に起きた砂糖不足は、解消されたようだ。しかし、商品の種類は前に比べると少ないように思う。そしてこの2カ月で、物の値段は一気に上がった。ショッピングセンターの外で、ナデズダさんという医者と雑談を始めた。「一番つらいのは、ウクライナで起きていることの真相を知りたがらない社会に暮らしていることだ。みんなローンの支払いや借金の支払いを心配するのに、忙しすぎる。自分の周りで何が起きているのかには興味がないんだ。でもウクライナで起きているのはひどいことだと思う。自分がロシア人なのが恥ずかしい」という」

     

    ロシア国民は、兄弟国ウクライナ国民の犠牲を全く知らないで、別世界で生きている。知識人にとっては耐えがたいことであろう。

     


    (4)「私が最後に向かったのは、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したソ連の戦いをたたえる巨大な戦争博物館だ。甚大な人命の損失を伴う大勝利だった。この博物館は現在、ウクライナにおけるナチスに関する展示をしている。ロシア軍はいま「ウクライナをナチスから解放している」のだという、ロシア政府による虚偽の主張を、固めるのに役立つ。私がいるここは「特別軍事作戦のロシア」。オーウェル的な平行宇宙だ。侵略は解放で、軍事侵攻は自衛で、批判者は裏切り者なのだ。私がこの30年間かかわってきたロシアは、もうなくなってしまった。そんな感じがする」

     

    モスクワの戦争博物館は、ウクライナ戦争の士気を高める展示を行なっている。こういう展示物が、プーチン支持率を高めている上で役立っている。それによって、核戦争の危機を未然に防ぐとしたら、何とも複雑な思いがするのだ。

    a0070_000030_m
       


    英国のジョンソン首相は、ウクライナの首都キーウを9日、電撃訪問してゼレンスキー大統領と会談し、追加支援を約束した。ロシアによる軍事侵攻が始まって以来、主要7カ国(G7)の首脳がキーウを訪れるのは初めて。首脳会談後に英首相官邸は、英国がウクライナに装甲車120台と対艦ミサイルシステムなどを供与すると発表した。『BBC』(4月10日付)が発表した。

     

    英政府は8日、首相のキーウ訪問に先立って1億ポンド(約160億円)相当の武器供与を発表。ジョンソン氏は官邸での記者会見で、スターストリーク対空ミサイルシステムと対戦車ミサイル800基が、追加供与に含まれると説明していた。首脳会談後、前記のように装甲車120台と対艦ミサイルシステムの供与を発表したので、ウクライナは対空と対艦の両ミサイルシステムを保持することになった。これは、ウクライナの防衛力強化に大きく寄与するはずだ。

     


    とりわけ重要なのは、対艦ミサイルシステムである。ロシア軍が、ウクライナ東部ドンバス地方や南部のマリウポリへの攻撃に歯止めをかける可能性を持つからだ。ウクライナ軍は3月24日、ロシアに占拠されたアゾフ海に面する都市ベルジャンシクの港に停泊していたロシア海軍の複数の艦船を攻撃。これが、ロシア艦船の動きを止めたのである。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月8日付)は、「ウクライナ軍の露艦船奇襲、プーチン戦略に歯止め」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍は3月、南部の港湾都市でロシア艦船に奇襲攻撃をしかけ、ロシアの重要な軍事的優位性を排除した。東部ドンバス地方の支配地域を拡大するというロシアの攻撃計画に歯止めをかける可能性があると、ウクライナの軍事アナリストや米当局者はみている。

     


    (1)「ウクライナと米国の当局者によると、ウクライナ軍は3月24日、ロシアに占拠されたアゾフ海に面する都市ベルジャンシクの港に停泊していたロシア海軍の複数の艦船を攻撃。ロシア艦隊に対する最初の大規模な攻撃だったという。攻撃から数時間後、ロシア艦隊は港を離れた。これにより、ロシア軍は地上部隊への支援やウクライナ各都市への攻撃が困難になった。「後方支援にとって大きな打撃だ」。米欧州海軍を指揮した退役大将のジェームズ・フォッゴ氏はこう語る」

     

    アゾフ海は、クリミア半島とウクライナ・ロシアに囲まれた海である。ロシア軍にとってアゾフ海を制圧すれば、ウクライナ東部へ大量の武器弾薬を容易に送り込めるという兵站機能を果たせることが分る。ウクライナは、このアゾフ海に無防備に停泊したロシア艦船を攻撃し1隻を沈没させたほか、港湾施設にも損害を与えた。

     


    英国が、対艦ミサイルシステムをウクライナへ供与した意味は大きい。常時、ロシア艦船を狙い撃ちできるようになれば、ロシア海軍は恐ろしくてアゾフ海へ寄りつけないであろう。これは、南部の都市マリウポリへの兵站機能を弱体化させるので、ロシア攻撃を足止めさせる可能性が出てくるであろう。

     

    (2)「ロシア軍は港湾都市を攻撃の重点に置き、ウクライナ侵攻後まもなく掌握したベルジャンシクもその一つだった。東部マリウポリなど戦略的に重要な都市への攻撃の主な拠点だ。ロシア軍はすぐさま港に南部で戦う地上部隊に送る支援物資を運んだ。ロシア軍はウクライナの貨物船などを港から追い出し、ウクライナ東部へ移動する部隊を援護するための多連装ロケット発射機を積んだ自軍の艦船を停泊させた。ベルジャンシクの港に停泊していたこれら艦船の防備は甘かった」

     

    ロシア海軍はウクライナを甘く見ており、ベルジャンシクの港に停泊していたロシア艦船の防備は警戒ゼロの状態であった。ウクライナ軍は、ここへ一撃を加えて一隻を撃沈した。

     


    (3)「ロシアはこの10年近く、ウクライナ海軍に対して大きな優位を保っていた。2014年にクリミア半島を占拠する中で、セバストポリの港に駐留していたウクライナ海軍の大半を掌握し、破壊して、黒海全域にまでその影響力を拡大した。さらには2月24日の侵攻を控え、ロシアは自国の海軍の大半を遠く離れたバルト海からウクライナ沿岸へはるばる移動させた」

     

    ロシアは、2014年にクリミア半島を占拠し、セバストポリの港に駐留していたウクライナ海軍艦船の大半を破壊した。以来、ウクライナ海軍はなきも等しい存在になった。これをいいことにしてロシア海軍は、わざわざバルト海からウクライナ沿岸へはるばる移動させていた。この虚を突いたのが、先のウクライナの一撃である。

     

    (4)「軍事アナリストによると、アゾフ海岸沖で活動する艦船が、南部マリウポリに対するロシアの攻撃に参加し、ウクライナ軍に防衛される恐れもほとんどなく同市に向かって砲撃した。また、近くの地上部隊向けの物資を搭載するなどしていた。アゾフ海はロシア・クリミア間で最速の補給ルートでもある。ウクライナ軍がこの2地点を結ぶ鉄道を2014年に破壊したためだ」

     

    アゾフ海を我が物顔で占拠してきたロシア海軍にとっては、先の一撃が極めて大きい意味を持った。英国が供与する対艦ミサイルシステムは、さらに大きな威力を持つであろう。

     


    (5)「ベルジャンシクの港への攻撃から先週までに、ロシアは3隻を残してアゾフ海から全ての艦船を引き揚げており、ウクライナ南部にいるロシア軍部隊への補給能力を低下させている。米国防省の高官が明らかにした。ベルジャンシクへの攻撃はロシアの海軍が陸軍を支援する能力に幅広く影響を及ぼす可能性がある。破壊されたベルジャンシクの港は、何週間も立ち入り禁止となったため、当地とオデッサ近郊に部隊を送り込むロシア軍の能力は損なわれた。ウクライナの防衛・海事アナリスト、アンドリー・クリメンコ氏は「部隊を上陸させる能力が弱まるだろう」と指摘する」

     

    下線部のように、ウクライナ軍によるベルジャンシクへの攻撃が、ロシア軍の東部や南部への攻撃のスピードを遅らせたという。英国が供与する対艦ミサイルシステムは、ロシア海軍に新たな脅威を与えることになれば、南部マリウポリへの砲撃を控える可能性もあろう。

     

     

    a0960_008407_m
       

    中国は、先進国から総スカンを浴びている中で、懲りずに宣伝活動に力を入れている。英国で「中国宣伝マン」として学生を募集しているという。奨励金は、約7000ポンド(約108万円)。これをエサにして、やがてスパイへ仕立てようという狙いであろう。

     

    英国の大学生が、中国の手先になって働くだろうか。だが、高額な奨励金は魅力である。どこまでも「金で釣ろう」という中国式募集法である。

     

    『大紀元』(6月18日付)は、「中国国営CGTN、英でインフルエンサーなどを募集 プロパガンダ強化で」と題する記事を掲載した。

     

    英紙『タイムズ』(6月16日付)によると、中国当局は対外プロパガンダを強化する目的で中国メディア、グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)を通じて、英国の大学生やインフルエンサー(大きな影響力を持つ人物)を集めている。英国政府は今年2月、中国国営中央テレビ(CCTV)傘下会社、CGTNの同国内での放送免許を取り消した。

     


    (1)「CGTNはSNS上で中国共産党を擁護する大学生らに約7000ポンド(約108万円)ほどの高額な奨励金を与え、プロフェッショナル・ジャーナリズム・トレーニングという研修に参加させている。さらに、大学生らやインフルエンサーをCGTNのパートタイムの従業員、または正社員として採用している」

     

    日本では、SNSへ「中国は素晴らしい国」などと投稿すれば、確実に大騒ぎとなる。炎上は間違いない。尖閣諸島をめぐる領海侵犯ニュースが、頻繁に登場しているからだ。その点、欧州では地政学的にそのようなニュースの出ることがない。中国が、宣伝するには絶好の舞台かも知れない。

     

    (2)「同報道では、CGTNが今年4月、メディア・チャレンジャーズとのイベントを開始した。このイベントで、同社は全世界から英語を使って報道を行うキャスター、写真記者、SNS上のキーオピニオンリーダー(KOL)などを募集した。これらの人たちは、中国当局を支持する論調を展開するだけでなく、欧米各国で中国当局に批判的な報道に反論する役割も担うという」

     

    中国は、こういう宣伝活動を活発化させる裏には、若者を集めて将来のスパイ要員へ育て上げる計画であろう。若者は純粋である。金を貰い、中国旅行でもさせて貰えば、簡単に「中国フアン」になるのかも知れない。それが、人生転落の落とし穴になるのだが。

     

    (3)「タイムズ紙は、リーズ大学とマンチェスター大学を含む複数の英国大学の学生がこの活動に参加したと伝えた。学生のなかで少なくとも2人は中国籍ではない。CGTNは同公式ウェブサイトで、活動に参加した学生のインタビュー映像を公開している。その中の1人は応募動機について「欧米社会の中国に対する偏見を正すためだ」と語り、中国文化を宣伝する旅動画を作っていきたいとアピールした」

     

    日本には、こういう中国賛美の学生はいるのだろうか。余りにも裏の裏まで分かっている以上、シンパになる若者は少ないに違いない。現に、若者の政党支持は自民党である。高度経済成長時代には見られなかった現象である。

     


    (4)「在香港イギリス領事館の元職員、鄭文傑(サイモン・チェン)氏は、中国当局の対外プロパガンダ機関が英国の大学に影響力を浸透させたことについて「想定内のことだ」と大紀元に語った。「中国当局は莫大な資金を使って、中国人留学生や外国籍の人々を引き付けようとしている。外国籍の人々は中国共産党に好感を持っているか、あるいは左派の人だろう」と同氏は述べた。鄭氏は、香港で大規模な抗議デモが起きた2019年8月、中国当局に拘束され、広東省深セン市に連行された。同氏は拘束中、当局から激しい尋問と拷問を受けた。その後、同年11月に英国に亡命した」

     

    中国が、莫大な資金を使って中国シンパを増やそうとしているが、そういう資金を恵まれない中国農村分の奨学金に使うべきだ。義務教育でも個人負担のある現状は、共産主義との趣旨にもとることなのだ。こういう宣伝費用は、必ず無駄金になる。世界覇権などお笑い種である。

     


    (5)「同氏は、中国当局は、SNS上で影響力を持っている若者、特に外国籍のインフルエンサーがプロパガンダ工作に最適だと認識していると指摘した。「中国共産党は英語で党を賛美することに価値を見出している」という。香港出身でリバプール大学助教授を務めるマイク(仮名)氏は、中国人留学生は留学生メンバーだけのグループを作り、さらに非民主主義国からの留学生を勧誘していたとした。同氏は、中国当局は留学生を通じて大学内で影響力を拡大していると懸念した。「授業で共産党政権を批判する発言をしたら、すぐに反論される」という」

     

    中国では、英語で中国共産党を賛美するのが有効と考えている。だが、民主主義国において中国を批判するのは常識である。民主主義国が、独裁を賛美できるはずがないからだ。よって、中国批判へ反論するのは不可能に違いない。一方、非民主主義国での中国批判は困難であろう。政治体制そのものが、非民主主義であるためだ。結局、民主主義国での中国賛美活動は、何の効果もないであろう。プロパガンダは無駄金である。

     

    このページのトップヘ