勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 英国経済ニュース

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    日本と英国が、連携強化に向かっている。EU(欧州連合)を脱退した英国は、アジアで新たなパートナーである日本との関係強化に乗り出す。日本は、米国との関係を保ちつつ、欧州での基盤づくりが不可欠だ。こうした両国の共通利益の上で、100年前の「日英同盟」再現を目指している。

     

    日英同盟は、1902~23年まで継続した。日本は、英国の議院内閣制を導入しており、政治の「手本」としてきた国である。互いに皇室制度を維持しており、共通点は多い。この日英が欧州とアジアで協調する。防衛面では、「準同盟国」の位置になっているのだ。

     

    『日本経済新聞』(11月21日付)は、「太平洋シフトで貿易拡大」と題する記事を掲載した。筆者は、 英貴族院議員・子爵 ヒュー・トレンチャード卿である。

     

    日英関係はこの10年ほどでかなり緊密になっており、「第2の日英同盟」ととらえていい。日露戦争や第1次世界大戦時の日英同盟は軍事同盟だったが、今日の日英の連携は安全保障のみならず、通商や投資など幅広い分野に及んでいる。

     

    (1)「欧州連合(EU)離脱後の英国は自由貿易を支持し、法や条約を順守する国家としてインド太平洋地域への関与を強めている。この地域には英国の歴史的な影響力がなお残り、オーストラリアやマレーシア、シンガポールなどの友好国も多い。なかでも多くの価値観を共有し、ともに議会制民主主義国家である日本との連携は極めて重要だ」

     

    英国は、アジアに多くの植民地を持っていた。それが、第二次世界大戦後に独立している。だが、現在も英国連邦を形成しているので、アジアへの回帰はごく自然なものだ。

     

    (2)「日英の安全保障協力はさらに拡大するだろう。2021年は英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本に寄港した。22年春の日英首脳会談では(自衛隊と英軍が共同訓練をしやすくする)円滑化協定で大筋合意した英国がイタリアと進めている次期戦闘機の共同開発に、日本が真剣に参加を検討しているのは非常に喜ばしい。1905年に(日本海海戦で)ロシア艦隊を破った日本の艦船の多くは英国で建造された。今回は、日本がコンソーシアム(共同体)に参画して英国とともに次期戦闘機を開発することになるだろう」

     

    自衛隊と英軍の「円滑化協定」は、共同演習を可能にする。日本は、英国と防衛面で協調行動が可能になるメリットが大きい。次期戦闘機開発では、英国・イタリアの三ヶ国が協力体制を組む。2035年に自衛隊への配備を目指すが、英伊の両国の販路を使い販売を考えている。

     

    日本は、防衛費の対GDP比2%(現在1%)と大幅な拡大を目指す。ただ、日本の装備品コスト高が続けば財政を圧迫する。そこで、共同開発・生産する次期戦闘機では、英国やイタリアの販路を通じて販売する方針だ。共同開発は、日本にとってもメリットが大きい。

     

    (3)「環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟は英国にとって重要な機会となる。TPP11カ国プラス英国は(英離脱後の)EUに並ぶ巨大な自由貿易圏であり、その成長力はEUをはるかにしのぐ。TPP加盟が英国とEUの貿易に与える影響も軽微とみられており、英国の貿易や投資に大きな利益をもたらす。もともと米国が日本をパートナーとして主導してきたのがTPPだ。(米国の離脱がなければ)英国が加盟しても発言権は非常に小さかったと思う。日本は英国の加盟申請を積極的に受け止めてくれており、英国もTPPの将来に重要な役割を果たす用意がある。TPP11カ国のうち6カ国は英連邦(コモンウェルス)のメンバーであり、英国のコモンロー(判例法)を受け継ぐ国も多い」

     

    英国は、近くTPP加盟が正式に決定の見込みである。かねてから、英国はTPP加入後、中国を加盟させないという強い態度を表明してきた。中国には、香港で一国二制度破棄という「煮え湯を飲まされた」だけに、強い反感を持っており、「中国絶対拒否」という姿勢だ。

     

    (4)「英国はほんの数年前まで、中国が民主主義や自由貿易システムと協調するだろうと考えていた。中国との貿易機会は最大化したいが、香港での(民主化運動を抑圧した)国家安全維持法の施行などをふまえ、現在は中国への懸念を強めている。ウクライナ侵攻で英国はロシアに対する制裁を主導してきた立場にある」

     

    このパラグラフでは、中国の「裏切り行為」を非難している。

     

    (5)「今の英国は、ミドルパワーと言うべきなのだろう。人口は日本のほぼ半分であり、国内総生産(GDP)規模も小さい。だからといって、英国の経済力を無視できるものと考えるのは誤りだ。EUの規制に拘束されなくなり、これからは金融サービスなどで競争力を発揮できるだろう。(文化や価値観で他国に影響力を及ぼす)ソフトパワーも英国の強みだと考える。EU離脱後の英国では首相交代が相次いでいる。特に対外政策では、保守党としてスナク新政権をしっかり支えることが極めて重要になる」

     

    英国のソフトパワーは健在である。金融や情報では、圧倒的な優位性を持っている。さすがは、かつての覇権国である。日本は、英国から多くのことを学ぶ機会ができた。

     

     

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    ロシアのラヴロフ外相が、ウクライナ戦争で核を使用すると臭わせている問題は、どこまで信憑性があるのか。英国の見解を見ておきたい。

     

    ロシアの独立系の世論調査機関「レバダセンター」によると、侵攻前、60%台で推移していたプーチン支持率は先月(3月)、83%にまで上昇した。圧倒的な高さである。国民からこれだけ高い負託を受けている以上、プーチン大統領は「フリーハンド」を得ているに等しく、ウクライナ戦争収拾は自らの決断で可能となる理由だろう。

     


    「ジョンソン首相はトークTVのインタビューで、たとえウクライナでロシア軍の戦況がこれまで以上に不利になったとしても、ロシア政府が核兵器を使うとは思わないと述べた。ジョンソン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の国内支持基盤は「圧倒的」で、「ロシアのメディアは、見る限りまったく(戦争の実態を)分かっていない」ため、プーチン氏が姿勢を和らげて撤退するだけの「政治的な余地」は十分あるという見方を示した」(『BBC』(4月27日付)

     

    ロシア国内では、官営メディアだけが許されており、政府の意向と異なる報道は禁じられている。このことは、ロシア国民がウクライナの真実を知らされていないという大きなマイナスがあるものの、ロシアが核戦争に訴えるように追い込まれない点ではプラスという複雑な面を持っている。現在のモスクワ市内が、どのような状況にあるかをBBC記者がレポートした。

     


    『BBC』(4月27日付)は、「『私が知っていたロシアはもうない』、変わるモスクワをBBCロシア編集長が紹介」と題する記事を掲載した。

     

    私はソヴィエト連邦時代のこの国を経験している。ソ連崩壊後のロシアでずっと暮らした。そして世界最大の国は今また、姿を変えた。「特別軍事作戦のロシア」をご案内しよう。

     

    (1)「スーパーへ向かうために車に乗り込む。いつもの習慣でラジオをつける。周波数はFM91.2メガヘルツ(MHz)に合わさっている。かつてこれは、ラジオ局「モスクワのこだま」の周波数だった。「モスクワのこだま」は、ロシアのラジオ局の中で私の一番のお気に入りだった。信頼できるニュースと情報を発信する媒体だった。しかしこの数週間で、この国の独立系メディアはすべて活動停止か廃止に追い込まれた。FM91.2MHzで現在放送しているのは、国営のラジオ・スプートニクだ。ここはウクライナへの軍事侵攻を支持している」

     


    ロシアでは、国営メディアしか許されない。これは、戦時中の日本人が「大本営発表」を唯一の情報源としていた状況と良く似ている。日本国民は、表だって戦争反対を唱えることもなかった。仮に、そういう発言をすれば「非国民」扱いで村八分になった。現在の、ロシアも同じ状況だ。だから、政府の方針をそのまま受入れるであろう。国内動向から見て、「核戦争」になるような反プーチン・ムードは存在しないのだ。これが、皮肉にも核戦争を防ぐ役割をするのかも知れない。

     

    (2)「ガーデン・リングを運転していると、劇場の前を通る。この劇場は建物の表に、巨大な「Z」の文字を立てている。ラテン文字の「Z」はロシアの軍事作戦のシンボルだ。ほかにも、ロシア鉄道の本部前にも「Z」がある。運転しながらトラックを追い越すと、車の側面に「Z」のシールが貼ってあった。この数週間というもの、クレムリン(ロシア政府)を批判する人たちの玄関にも、この「Z」が次々と落書きされている

     

    「Z」マークは、至る所に氾濫している。国民の意識をコントロールしているのだ。

     


    (3)「スーパーに入ると、棚には商品がそろっている。パニック買いで3月に起きた砂糖不足は、解消されたようだ。しかし、商品の種類は前に比べると少ないように思う。そしてこの2カ月で、物の値段は一気に上がった。ショッピングセンターの外で、ナデズダさんという医者と雑談を始めた。「一番つらいのは、ウクライナで起きていることの真相を知りたがらない社会に暮らしていることだ。みんなローンの支払いや借金の支払いを心配するのに、忙しすぎる。自分の周りで何が起きているのかには興味がないんだ。でもウクライナで起きているのはひどいことだと思う。自分がロシア人なのが恥ずかしい」という」

     

    ロシア国民は、兄弟国ウクライナ国民の犠牲を全く知らないで、別世界で生きている。知識人にとっては耐えがたいことであろう。

     


    (4)「私が最後に向かったのは、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したソ連の戦いをたたえる巨大な戦争博物館だ。甚大な人命の損失を伴う大勝利だった。この博物館は現在、ウクライナにおけるナチスに関する展示をしている。ロシア軍はいま「ウクライナをナチスから解放している」のだという、ロシア政府による虚偽の主張を、固めるのに役立つ。私がいるここは「特別軍事作戦のロシア」。オーウェル的な平行宇宙だ。侵略は解放で、軍事侵攻は自衛で、批判者は裏切り者なのだ。私がこの30年間かかわってきたロシアは、もうなくなってしまった。そんな感じがする」

     

    モスクワの戦争博物館は、ウクライナ戦争の士気を高める展示を行なっている。こういう展示物が、プーチン支持率を高めている上で役立っている。それによって、核戦争の危機を未然に防ぐとしたら、何とも複雑な思いがするのだ。

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    英国のジョンソン首相は、ウクライナの首都キーウを9日、電撃訪問してゼレンスキー大統領と会談し、追加支援を約束した。ロシアによる軍事侵攻が始まって以来、主要7カ国(G7)の首脳がキーウを訪れるのは初めて。首脳会談後に英首相官邸は、英国がウクライナに装甲車120台と対艦ミサイルシステムなどを供与すると発表した。『BBC』(4月10日付)が発表した。

     

    英政府は8日、首相のキーウ訪問に先立って1億ポンド(約160億円)相当の武器供与を発表。ジョンソン氏は官邸での記者会見で、スターストリーク対空ミサイルシステムと対戦車ミサイル800基が、追加供与に含まれると説明していた。首脳会談後、前記のように装甲車120台と対艦ミサイルシステムの供与を発表したので、ウクライナは対空と対艦の両ミサイルシステムを保持することになった。これは、ウクライナの防衛力強化に大きく寄与するはずだ。

     


    とりわけ重要なのは、対艦ミサイルシステムである。ロシア軍が、ウクライナ東部ドンバス地方や南部のマリウポリへの攻撃に歯止めをかける可能性を持つからだ。ウクライナ軍は3月24日、ロシアに占拠されたアゾフ海に面する都市ベルジャンシクの港に停泊していたロシア海軍の複数の艦船を攻撃。これが、ロシア艦船の動きを止めたのである。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月8日付)は、「ウクライナ軍の露艦船奇襲、プーチン戦略に歯止め」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍は3月、南部の港湾都市でロシア艦船に奇襲攻撃をしかけ、ロシアの重要な軍事的優位性を排除した。東部ドンバス地方の支配地域を拡大するというロシアの攻撃計画に歯止めをかける可能性があると、ウクライナの軍事アナリストや米当局者はみている。

     


    (1)「ウクライナと米国の当局者によると、ウクライナ軍は3月24日、ロシアに占拠されたアゾフ海に面する都市ベルジャンシクの港に停泊していたロシア海軍の複数の艦船を攻撃。ロシア艦隊に対する最初の大規模な攻撃だったという。攻撃から数時間後、ロシア艦隊は港を離れた。これにより、ロシア軍は地上部隊への支援やウクライナ各都市への攻撃が困難になった。「後方支援にとって大きな打撃だ」。米欧州海軍を指揮した退役大将のジェームズ・フォッゴ氏はこう語る」

     

    アゾフ海は、クリミア半島とウクライナ・ロシアに囲まれた海である。ロシア軍にとってアゾフ海を制圧すれば、ウクライナ東部へ大量の武器弾薬を容易に送り込めるという兵站機能を果たせることが分る。ウクライナは、このアゾフ海に無防備に停泊したロシア艦船を攻撃し1隻を沈没させたほか、港湾施設にも損害を与えた。

     


    英国が、対艦ミサイルシステムをウクライナへ供与した意味は大きい。常時、ロシア艦船を狙い撃ちできるようになれば、ロシア海軍は恐ろしくてアゾフ海へ寄りつけないであろう。これは、南部の都市マリウポリへの兵站機能を弱体化させるので、ロシア攻撃を足止めさせる可能性が出てくるであろう。

     

    (2)「ロシア軍は港湾都市を攻撃の重点に置き、ウクライナ侵攻後まもなく掌握したベルジャンシクもその一つだった。東部マリウポリなど戦略的に重要な都市への攻撃の主な拠点だ。ロシア軍はすぐさま港に南部で戦う地上部隊に送る支援物資を運んだ。ロシア軍はウクライナの貨物船などを港から追い出し、ウクライナ東部へ移動する部隊を援護するための多連装ロケット発射機を積んだ自軍の艦船を停泊させた。ベルジャンシクの港に停泊していたこれら艦船の防備は甘かった」

     

    ロシア海軍はウクライナを甘く見ており、ベルジャンシクの港に停泊していたロシア艦船の防備は警戒ゼロの状態であった。ウクライナ軍は、ここへ一撃を加えて一隻を撃沈した。

     


    (3)「ロシアはこの10年近く、ウクライナ海軍に対して大きな優位を保っていた。2014年にクリミア半島を占拠する中で、セバストポリの港に駐留していたウクライナ海軍の大半を掌握し、破壊して、黒海全域にまでその影響力を拡大した。さらには2月24日の侵攻を控え、ロシアは自国の海軍の大半を遠く離れたバルト海からウクライナ沿岸へはるばる移動させた」

     

    ロシアは、2014年にクリミア半島を占拠し、セバストポリの港に駐留していたウクライナ海軍艦船の大半を破壊した。以来、ウクライナ海軍はなきも等しい存在になった。これをいいことにしてロシア海軍は、わざわざバルト海からウクライナ沿岸へはるばる移動させていた。この虚を突いたのが、先のウクライナの一撃である。

     

    (4)「軍事アナリストによると、アゾフ海岸沖で活動する艦船が、南部マリウポリに対するロシアの攻撃に参加し、ウクライナ軍に防衛される恐れもほとんどなく同市に向かって砲撃した。また、近くの地上部隊向けの物資を搭載するなどしていた。アゾフ海はロシア・クリミア間で最速の補給ルートでもある。ウクライナ軍がこの2地点を結ぶ鉄道を2014年に破壊したためだ」

     

    アゾフ海を我が物顔で占拠してきたロシア海軍にとっては、先の一撃が極めて大きい意味を持った。英国が供与する対艦ミサイルシステムは、さらに大きな威力を持つであろう。

     


    (5)「ベルジャンシクの港への攻撃から先週までに、ロシアは3隻を残してアゾフ海から全ての艦船を引き揚げており、ウクライナ南部にいるロシア軍部隊への補給能力を低下させている。米国防省の高官が明らかにした。ベルジャンシクへの攻撃はロシアの海軍が陸軍を支援する能力に幅広く影響を及ぼす可能性がある。破壊されたベルジャンシクの港は、何週間も立ち入り禁止となったため、当地とオデッサ近郊に部隊を送り込むロシア軍の能力は損なわれた。ウクライナの防衛・海事アナリスト、アンドリー・クリメンコ氏は「部隊を上陸させる能力が弱まるだろう」と指摘する」

     

    下線部のように、ウクライナ軍によるベルジャンシクへの攻撃が、ロシア軍の東部や南部への攻撃のスピードを遅らせたという。英国が供与する対艦ミサイルシステムは、ロシア海軍に新たな脅威を与えることになれば、南部マリウポリへの砲撃を控える可能性もあろう。

     

     

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    中国は、先進国から総スカンを浴びている中で、懲りずに宣伝活動に力を入れている。英国で「中国宣伝マン」として学生を募集しているという。奨励金は、約7000ポンド(約108万円)。これをエサにして、やがてスパイへ仕立てようという狙いであろう。

     

    英国の大学生が、中国の手先になって働くだろうか。だが、高額な奨励金は魅力である。どこまでも「金で釣ろう」という中国式募集法である。

     

    『大紀元』(6月18日付)は、「中国国営CGTN、英でインフルエンサーなどを募集 プロパガンダ強化で」と題する記事を掲載した。

     

    英紙『タイムズ』(6月16日付)によると、中国当局は対外プロパガンダを強化する目的で中国メディア、グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)を通じて、英国の大学生やインフルエンサー(大きな影響力を持つ人物)を集めている。英国政府は今年2月、中国国営中央テレビ(CCTV)傘下会社、CGTNの同国内での放送免許を取り消した。

     


    (1)「CGTNはSNS上で中国共産党を擁護する大学生らに約7000ポンド(約108万円)ほどの高額な奨励金を与え、プロフェッショナル・ジャーナリズム・トレーニングという研修に参加させている。さらに、大学生らやインフルエンサーをCGTNのパートタイムの従業員、または正社員として採用している」

     

    日本では、SNSへ「中国は素晴らしい国」などと投稿すれば、確実に大騒ぎとなる。炎上は間違いない。尖閣諸島をめぐる領海侵犯ニュースが、頻繁に登場しているからだ。その点、欧州では地政学的にそのようなニュースの出ることがない。中国が、宣伝するには絶好の舞台かも知れない。

     

    (2)「同報道では、CGTNが今年4月、メディア・チャレンジャーズとのイベントを開始した。このイベントで、同社は全世界から英語を使って報道を行うキャスター、写真記者、SNS上のキーオピニオンリーダー(KOL)などを募集した。これらの人たちは、中国当局を支持する論調を展開するだけでなく、欧米各国で中国当局に批判的な報道に反論する役割も担うという」

     

    中国は、こういう宣伝活動を活発化させる裏には、若者を集めて将来のスパイ要員へ育て上げる計画であろう。若者は純粋である。金を貰い、中国旅行でもさせて貰えば、簡単に「中国フアン」になるのかも知れない。それが、人生転落の落とし穴になるのだが。

     

    (3)「タイムズ紙は、リーズ大学とマンチェスター大学を含む複数の英国大学の学生がこの活動に参加したと伝えた。学生のなかで少なくとも2人は中国籍ではない。CGTNは同公式ウェブサイトで、活動に参加した学生のインタビュー映像を公開している。その中の1人は応募動機について「欧米社会の中国に対する偏見を正すためだ」と語り、中国文化を宣伝する旅動画を作っていきたいとアピールした」

     

    日本には、こういう中国賛美の学生はいるのだろうか。余りにも裏の裏まで分かっている以上、シンパになる若者は少ないに違いない。現に、若者の政党支持は自民党である。高度経済成長時代には見られなかった現象である。

     


    (4)「在香港イギリス領事館の元職員、鄭文傑(サイモン・チェン)氏は、中国当局の対外プロパガンダ機関が英国の大学に影響力を浸透させたことについて「想定内のことだ」と大紀元に語った。「中国当局は莫大な資金を使って、中国人留学生や外国籍の人々を引き付けようとしている。外国籍の人々は中国共産党に好感を持っているか、あるいは左派の人だろう」と同氏は述べた。鄭氏は、香港で大規模な抗議デモが起きた2019年8月、中国当局に拘束され、広東省深セン市に連行された。同氏は拘束中、当局から激しい尋問と拷問を受けた。その後、同年11月に英国に亡命した」

     

    中国が、莫大な資金を使って中国シンパを増やそうとしているが、そういう資金を恵まれない中国農村分の奨学金に使うべきだ。義務教育でも個人負担のある現状は、共産主義との趣旨にもとることなのだ。こういう宣伝費用は、必ず無駄金になる。世界覇権などお笑い種である。

     


    (5)「同氏は、中国当局は、SNS上で影響力を持っている若者、特に外国籍のインフルエンサーがプロパガンダ工作に最適だと認識していると指摘した。「中国共産党は英語で党を賛美することに価値を見出している」という。香港出身でリバプール大学助教授を務めるマイク(仮名)氏は、中国人留学生は留学生メンバーだけのグループを作り、さらに非民主主義国からの留学生を勧誘していたとした。同氏は、中国当局は留学生を通じて大学内で影響力を拡大していると懸念した。「授業で共産党政権を批判する発言をしたら、すぐに反論される」という」

     

    中国では、英語で中国共産党を賛美するのが有効と考えている。だが、民主主義国において中国を批判するのは常識である。民主主義国が、独裁を賛美できるはずがないからだ。よって、中国批判へ反論するのは不可能に違いない。一方、非民主主義国での中国批判は困難であろう。政治体制そのものが、非民主主義であるためだ。結局、民主主義国での中国賛美活動は、何の効果もないであろう。プロパガンダは無駄金である。

     

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    韓国は、日本が海外で注目されることにジェラシイを感じている。未だに日本を「戦犯国」と言って憚らない国である。韓国の日本に対する劣等感が、どれだけ強いか良く表わしている。気の毒にも思うが、つける薬はない。この際、大いに焼き餅を焼いて貰い、外交とは何かという重要なことを学んで欲しいものだ。日本が、米英からどれだけ高い評価を受けているか、韓国メディアが認めている。

     

    『中央日報』(3月7日付)は、「『ウイグル集団レイプ』中国叩く英国、日本と近づく理由」と題する記事を掲載した。

     

    1902年、2つの島国が手を握りました。産業革命の先頭走者で強大な海軍力を基に全世界を令した大英帝国、そして英国のように帝国になることを夢見た日本が同盟を結んだのです。20世紀の北東アジアの地図を揺るがし、韓半島(朝鮮半島)の運命にも決定的な影響を及ぼした日英同盟です。



    (1)「この両国の最近の動きが尋常でありません。米国を輪に密着する姿はあたかも120年前の状況が再現されているようだという話も出ています。20世紀初めに覇権国の英国が日本と手を握ったのは、ロシアの膨張を警戒してのものでした。最近の密着もやはり覇権国の米国が中国の崛起を防ぐために同盟間の結束を強化する過程で起きています」

     

    日本が、英米と外交的に協調するのは、世界情勢の変化によるものだ。世界覇権へ挑戦する国が新たに現れれば、主義主張を同じくする国が同盟を結んで対抗するのは当然のことである。日本が、そういう歴史の流れに沿って動いているだけである。

     

    (2)「日米同盟は、第2次大戦以降続いた北東アジアの地政学の定数でした。ここに早くに日本との同盟関係を清算した英国まで、どんどん日本に視線を転じている姿は注目されます。2015年の英国のEU離脱決定前から英国は日本をアジアで最も近い安保協力国と指し示しておりその後だんだん密着してきました」

     

    日英が友好関係を結んでいるのは、日本の皇室と英国王室の関係、日本の政治制度が議員内閣制で英国から導入したという関係もある。皇室と王室が長い流れで結ばれていることが、日英関係を落ち着かせるのであろう。

     


    (3)「先月初めに英国と日本は外務・防衛閣僚会合(2+2)を開き、今年インド太平洋地域で日米英3カ国合同演習をすることにしました。英国はこの演習に向け2017年に建造した最新鋭空母で英国海軍最大級艦艇の「クイーンエリザベス」(全長280メートル・満載トン数6万5000トン)を日本近海に長期派遣することにしました」

     

    英国は、EUを離脱して成長発展力のあるアジアを基盤にして新たな貿易関係を発展させる決意だ。それが、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟である。年内には加盟が実現する見込みである。こういう背景の下に、安全保障でも日英一体化を目指している。英国は、かつてのアジア植民地を失ったものの、TPPと安全保障で再飛躍を目指している。

     

    (4)「英国の空母が北東アジア近海で長期間任務を遂行するのは異例です。これまでこの地域には米国と周辺国以外の国の空母が長期間とどまったことがないためです。国立外交院のチョン・ヘウォン教授は「四方を海に囲まれた英国がアジアに目を向ける時に日本と密着しなければならない理由の中には、日本の地政学的な位置、すなわち空母を長期間派遣する時に停泊と支援が容易だという要素もある」と説明しました。

    英国が、アジアとりわけ日本と密接な関係を築くことは、日英両国のプラスである。英国は欧州で、独仏と並ぶ三大国家である。NATO(北大西洋条約機構)では、大きな発言権を持っている。将来、「アジア版NATO」を結成する場合、大きな役割を果たしてくれるという期待が日本側にある。日本は、先の先まで読んでいる。

     


    (5)「興味深いのは、こうした様相がいわゆる「アングロスフィア」復活の動きとともに進んでいるということです。アングロスフィアは英語を使い似た文化的価値観を共有する圏域を称します。英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどです。情報機密を共有するいわゆる「ファイブ・アイズ」を構成する国々です。これらの国をひとつにまとめさせる契機は中国の浮上です。覇権国の米国が新興覇権を夢見る中国を牽制するのは別の見方をすれば当然に見えます。ここに英国もEU離脱後にアジアに目を向け対中牽制の先鋒に乗り出しています」

     

    日本が、「アングロスフィア」に迎えられようとしている。この背景には、英国が日本を推薦していることが挙げられる。日英は、既述のとおり皇室と議員内閣制の二点で共通項を持っている。皇室尊重では保守的だが、議院内閣制では民意を即刻反映する政治システムである。伝統的だが、新しいことに即応するというダイナミズムを持つ点で、日英は似通った面があるのだろう。

     

    (6)「アングロスフィア諸国が約束でもしたかのように日本と密着しています。北東アジアで中国と対立点を立てられる国であるためです。あたかも120年前に英国がロシアを牽制する馬を探している時に日本がすでにロシアとの戦争を準備していたという状況を連想させます。国立外交院のキム・ハングォン教授は「中国に積極的に対抗してきた前歴も反中戦線を構築しようとする米国と英国に『信頼感』を与える要因だろう」と評価しました」

     

    日本には、「脱亜入欧」という背伸びをした時期もある。これは、日本が開国に当たり欧米から不利な条件で条約を押し付けられたことへの反発である。欧米と同じ土俵に立つべく採用したのが、「脱亜入欧」なのだ。以来、これが日本近代化のバックボーンになった。「アングロスフィア諸国」と、同じ価値観を持つようになった理由である。明治維新以来、実に153年の歳月を経て、「アングロスフィア諸国」の仲間として認められるようになった。感無量である。



    (7)「これらの国の結束はまず「情報同盟」として現れる可能性があります。「ファイブ・アイズ」に日本を参加させるべきという声が出ているためです。昨年12月に米戦略国際問題研究所(CSIS)は日本が含まれた「シックス・アイズ」の構築に向けワシントンと東京が真剣に努力を傾けるべき時だと提言する報告書を発表しました。別の見方をすれば、「血縁同盟」と見ることもできるアングロサクソン族を基盤とする国の会合に日本が公式参加する可能性を排除することはできない雰囲気ということでしょう」

     

    日本が、「血縁同盟」と見られるアングロサクソン族を基盤とする「ファイブ・アイズ」に、公式参加する可能性が高まっていることは、極めて名誉なことである。日本の安全保障の基盤がそれだけ固まっていることを証明している。この信頼をインド太平洋戦略に生かしていくべきだろう。

     

    次の記事もご参考に。

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