中国企業の不況は深刻な事態に陥っている。ドイツの先進ロボット企業と合弁契約を結んだものの、資金不足で必要な投資ができず、これを不服としてドイツ企業が契約を解除して撤退した。中国にとっては、後味の悪い結果だ。
『レコードチャイナ』(2月26日付)は、「ドイツの先進ロボット企業 中国との合弁解消し生産拠点をドイツに戻すー独メディア」と題する記事を掲載した。
独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ 中国語版サイト』(2月22日付)は、ドイツのロボット企業が中国企業との合弁をやめ、生産拠点を中国からドイツに戻すと報じた。
(1)「記事は、ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州に本社を置くスタートアップ企業Neura Roboticsが先日、現在ロボット4機種を生産している中国工場を引き払い、すべてドイツ国内で生産する意向を示したと紹介。創業者が、「ドイツにはエネルギー価格の高止まりなど多くの問題があるが、転ばぬ先の杖ということで生産拠点を自国に戻すことにした」と理由を説明するとともに、「ドイツ製品の品質は今なお世界で広く認められているので、ドイツでの生産には自信を持っている」と語ったことを伝えた」
ドイツの先端ロボット技術が、中国へ流れることに疑問も多かった。それが、今回の契約違反で解除となった。ドイツでは、胸をなで下ろしているであろう。
(2)「同社は、中国広東省深セン市のロボット会社との合弁により運営していたものの、中国側が約束していた投資がしっかりと行われないなど双方の提携が順調に進まなかったことを理由に合弁を解消し、西側企業を新たな株主に迎えたとした。記事によると、同社は先進的な感覚機能を備え、世界で初めて人工知能(AI)とロボット技術を融合した認知機能付き協働ロボット「Maria」を生産しているという。同社の新たな株主となったHVキャピタルのグルーナー氏は、生産拠点をドイツに戻すことについて「ドイツの技術の自主性や世界市場における競争力を高めることにつながる」と歓迎の姿勢を示している」
協働ロボット「Maria」は、世界で初めて人工知能(AI)とロボット技術を融合した、認知機能付き協働ロボットである。中国は、AI半導体製造が米国の輸出規制によって困難ゆえに、合弁事業への融資を渋ったのであろう。
(3)「記事は、ドイツの多くの中小企業が中国とのビジネス縮小、あるいは中国市場から撤退を模索していることが最新データで明らかになったと指摘。在中国ドイツ商工会議所が1月に実施した調査では、中国市場から撤退した、あるいは撤退を検討しているドイツ企業の割合が9%と4年前の2倍以上に増え、44%の在中国ドイツ企業が地政学の変化やサプライチェーン問題など起こりうるリスクへの対策を講じたと回答する結果が出たと紹介した」
ドイツ企業は、徐々に中国からの撤退を始めている。今のところはまだ、大きな流れでないが、中国の少子高齢化の進行とともに中国の魅力は低下する。
『ロイター』(1月25日付)は、「中国市場から撤退もしくは撤退検討の独企業が増加ー商工会議所」と題する記事を掲載した。
在中国ドイツ商工会議所の調査によると、中国市場で事業を展開しているドイツ企業のうち、同市場からの撤退を「進めている」もしくは「検討している」企業が占める比率は9%となり、4年前の4%から2倍強に上昇した。調査は昨年9月5日から10月6日にかけて566社を対象に実施した。
(4)「ドイツ企業が中国市場で直面する地元企業との競争激化、不公平な市場参入条件、経済的逆風、地政学リスクといった試練が浮き彫りになった。調査では、中国事業の売却を進めているドイツ企業は全体の約2%、売却を検討している企業は7%を占めた。さらに全体の44%は、中国に依存しないサプライチェーン(供給網)を構築するなど、中国での事業運営に関連したリスクへの対応策を講じている。また中国経済が下振れ方向の軌道に直面していると答えたドイツ企業は全体の約86%を占めた。だが大半の企業は、こうした状況は一時的であり、向こう1─3年で景気は回復すると予想した」
ドイツ企業は、売却を進めている企業が2%。検討中は7%もある。実に、9%が撤退構えである。さらに41%は、中国に依存しないサプライチェーンを構築するとしている。ドイツ企業の「中国熱」は完全に冷めてしまった。
(5)「中国では新型コロナウイルスのパンデミックからの回復の足取りが想定よりも弱いことが判明。不動産危機の深刻化やデフレリスクの増大、需要の低迷により、今年の見通しが不透明になっている。それでも回答社の約54%は、競争力を維持するため投資を増やす方針を示した」
54%の企業は、競争力を付ける投資を行うという。全体からみれば半分である。ドイツ企業は、中国に対して「半身」の構えである。変われば変わったものだ。