勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

    テイカカズラ
       


    ドイツのメルケル氏は昨年末、16年間務めた首相を退いた。その直後に起こったロシアのウクライナ侵攻で、メルケル氏の親ロ政策が批判の矢面に立たされている。ドイツのエネルギー政策が、ロシアへ依存しすぎていたからだ。

     

    メルケル首相が退任した時点で、ロシアからの輸入がドイツのガス消費量の55%、石炭消費量の50%、石油消費量の35%以上を占めるまでになった。ドイツはロシア産ガスの世界最大の買い手であり、ロシアのエネルギーへの依存度はEU内でも屈指となっていた。

     


    ドイツが、ここまでエネルギーでロシア依存を強めた狙いは二つある。第一は、安いエネルギーを確保して、ドイツ産業の国際競争力をつけること。第二は、貿易を通してロシアの民主化を促進することにあった。メルケル氏は、旧西独生まれだが、父親が牧師で東独へ移り住んだ経緯から、ロシアの民主化に関心を持っていた。

     

    こうした、メルケル氏の政治目的は、ウクライナ侵攻で裏切られる結果になった。政治が結果であるとすれば、メルケル氏は自身への批判を甘受せざるを得ない立場だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月9日付)は、「メルケル前独首相に後悔の念なし」と題する社説を掲載した。

     

    ドイツのアンゲラ・メルケル前首相ほど、その外交政策のレガシーに対する評価が急速かつ徹底的に落ちた例は極めて少ない。メルケル氏は、ドイツ政府を率いた16年間、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の帝国主義的野心を抑えることができると考え、その過程で、プーチン氏のエネルギーをめぐる脅迫に対してドイツと欧州全体を脆弱(ぜいじゃく)にした。

     


    (1)「メルケル氏に後悔の念はあまりない。それは、昨年の辞任以来初めて公の場に姿を現す主要な機会となった際の発言から明らかだ。メルケル氏は7日、首都ベルリンにあるベルリーナー・アンサンブル劇場で、「私は自分を責めていない。私は悪事を防ぐ方向で取り組もうとしていた。また、外交が成功しないからと言って、それが間違っていたということにはならない。したがって、『あれは間違っていた』と言うべき理由が分からない。よって、私は謝罪しない」と聴衆に述べた」

     

    メルケル氏は、苦しい弁解をしている。「外交が成功しないからと言って、それが間違っていたということにはならない」と開き直った印象すら与えている。16年間の首相在任が、緊張感を奪ったかも知れない。メルケル氏が、プーチン氏の真の目的を把握できなかったとすれば、間違っていたことになる。その点、ポーランドはロシアの真意を見抜いていた。

     


    (2)「メルケル氏は、ロシアのウクライナ侵攻を非難した上で、貿易を通じたロシア関与政策でプーチン氏の行動を変えられるという「幻想に屈したことは一度もない。私は(そこまで)世間知らずではなかった」と述べた。しかし、もしそうなら同氏はなぜ、2021年になっても、ロシアからドイツに天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の完成をあれほど強く求めたのか」

     

    メルケル氏は、米国の反対を押し切って「ノルドストリーム2」の早期完成を求めていた。プーチン氏は、ウクライナ侵攻で欧州が一枚岩にならず分裂すると踏んでいた裏に、ドイツのエネルギー政策でロシア依存の大きいことを拠り所にした。

     

    (3)「2021年には、プーチン氏がウクライナとの国境近くに軍を集結させていた。メルケル氏は、任期終盤の政治的資本の一部を使い、同パイプラインに対する米国の反対を撤回するようジョー・バイデン大統領を説得した。メルケル氏の後任の首相となったオラフ・ショルツ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻後にパイプライン計画の承認作業を停止した」

     

    メルケル氏は、ロシアがウクライナ国境近くに軍を集結させていた事態を看過した。メルケル氏は、プチー氏に直談判できるほど、親和関係が存在していたのだ。結果は失敗したにせよ、メルケル氏の眼力が鈍っていたことは間違いない。

     

    (4)「政府首脳というものは、難しい決断を下さなければならず、その時々の既知の事実に基づいて下す決断が、時として誤りとなることは避けられない。しかしメルケル氏は、プーチン氏による2014年のクリミア半島併合、ウクライナ東部地域侵略の後でさえ、プーチン氏への融和姿勢にこだわり続けた。メルケル氏は、原発の段階的閉鎖を進め、国内総生産(GDP)の2%相当の資金を国防に振り向けるという北大西洋条約機構(NATO)への約束の順守を拒むことで、ドイツをより脆弱にした」

     

    メルケル氏は、トランプ大統領(当時)と犬猿の仲だった。それだけに、プーチン氏へ傾いたのであろう。米独の対立は、一時的なもの。同盟関係を強固にしておくべきだった。

     


    (5)「プーチン氏は、今年キーウ(キエフ)の攻略を試みても欧州の反発は限定的だと考えていたが、メルケル氏の失策がその一因になったとの見方は否定し難い。米通信社ブルームバーグの報道によれば、ショルツ氏は現在、ウクライナ情勢とプーチン氏への対応について、メルケル氏の助言を求めているという。ショルツ氏がその助言に頼らないことを期待したい。謝罪するか否かにかかわらず、メルケル氏は、欧州の自由の理念を損なったのだから」

     

    下線部は、重要な示唆である。プーチン氏が、NATOは一枚岩でないと誤解していた裏には、米独の対立を過大評価したのであろう。同盟内では、対立もほどほどにしておかないと、今回のような誤解=侵攻をもたらすという危険性を生む。

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    中国政府による新疆ウイグル族弾圧は、ドイツ政府の対中政策を大きく揺さぶっている。ナチスのユダヤ人弾圧という暗い過去を持つドイツとして、中国政府へ毅然として対応することで、歴史への警鐘を鳴らしたいのであろう。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月3日付)は、「ドイツ『脱中国』鮮明、VWの投資保証拒否」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツ政府は、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の中国での投資に対する保証の更新を拒否した。このことは、国際関係において政治より貿易を長らく優先させてきた同国が転換点を迎えていることを示している。ドイツ政府がVWの申請を拒否した背景には、中国政府によるイスラム教徒の少数民族ウイグル族の扱いがある。中国はドイツにとって最大の貿易相手国だが、この動きは中国を含む権威主義政権に対して一段と厳しい姿勢で臨むとするドイツ新政府の約束に沿うものだ。

     


    (1)「この決定は公式に発表されたものではないが、事情に詳しい複数の人物が確認している。ドイツ企業が中国での活動をやめる可能性は低いとみられるが、事業のリスクは高まる。中国に投資するドイツ企業への支援と、中国政府によるウイグル族の扱いとをドイツ政府が関連付けたのは初めて。ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候保護相は「ウイグルに対する強制労働と虐待を前にして、われわれは新疆でのいかなるプロジェクトにも保証を提供することはできない」と述べている」

     

    ハーベック経済・気候保護相は、非人道的行為を行なっている中国で、経済活動を行なうドイツ企業にいかなる保証も与えない、とした。これは、これまでのドイツ企業への「投資保証」に撤回を意味する。厳しい環境になった。

     


    (2)「VWのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は1日、地元テレビ局とのインタビューで、今後も中国が世界にとって経済成長の主な原動力と同社は考えており、中国と新疆の工場に注力していくとの考えを示した。「われわれは現地で強制労働を行っておらず、わが社の基準に従って活動していると保証できる。この地域でプラスの貢献をしている。だからこそわれわれは問題視していない」とディース氏は語った」

     

    中国のような権威主義国家で行なう投資に、ドイツ政府の保証がつかなくなると、政治的リスクはいやが上にも高まる。慎重にならざるを得ないのだ。

     


    (3)「企業は、外国での政変によって事業や資産を失った場合の政府保証を申請することができる。そうした保証の大半は何年も、中国で活動する企業に提供されてきた。ロシアのウクライナ侵攻後の2月にそうしたように、政府が保証の提供をやめるなら、企業は自らリスクを負って外国で活動しなければならなくなり、そうした国々への投資を抑制しかねないとエコノミストは指摘する」

     

    このパラグラフは、重要な点を指摘している。いわゆる「カントリー・リスク」の問題である。中国で万一騒乱が起こっても、ドイツ政府の「保証」があれば、なんなくクリア可能だ。ドイツ政府は今後、中国投資での「保証」をつけない方針に切り替わる。

     


    (4)「ドイツ政府は、中国への戦略的・経済的な依存脱却を目指し、関係の見直しを図っている。この新アプローチの下で、政府は企業に対して国外進出先を多様化させ、巨大な中国市場への依存を減らすよう促している。これにより、国外事業に積極的な欧州企業の投資先が、中国の対抗勢力とみられている米国に一段と振り向けられるようになる可能性がある。調査会社ロジウム・グループのアナリスト、ノア・バーキン氏は、「ハーベック氏の決定は重大だ。なぜなら、こうした保証がVWにとって極めて重要だというだけでなく、政府が対中投資について以前よりもかなり懐疑的に見ているからだ」と述べた」

     

    欧州企業の対外投資先は、中国から米国へ振り向けられる公算が強まった。中国の評価が下がったのだ。

     


    (5)「習近平国家主席の下、国内では権威主義的、国外では攻撃的な姿勢を強める中国に対して西側の懸念が高まる一方、多くのドイツ企業は依然として中国を最も有望な市場と見なしている。ドイツの自動車産業を担うVW、BMW、メルセデス・ベンツ・グループの大手3社に加え、サプライヤーの多くは、年間売上高の4割、利益の相当な割合を中国から得ている。こうした中国への依存は、コロナ禍の2年間で見られたように政治的・経済的混乱が起きた場合、これら企業ばかりかドイツ経済全体を危機にさらすことになるとエコノミストは指摘する。中国のロックダウン(都市封鎖)で世界のサプライチェーン(供給網)はまひし、ドイツの工場を直撃した」

     

    中国への過度の依存が、危機を招くことはロックダウンによって証明済である。そこへ持ち上がった新疆ウイグル族弾圧事件の全貌が判明したことで、中国のカントリーリスクは無視できないものになった。

     


    (6)「アナレーナ・ベアボック外相と専門家は、新たな中国戦略を具体化するため、シンクタンクとワークショップを開いてきた。外相は5月初めには、中国で大規模に事業を展開する大手各社のCEOと会談している。ベアボック氏は必要なら数年内に中国から完全に脱却できるか尋ねたと、協議に詳しいある人物は明かしたウイグル抑圧を示す証拠が相次いで明るみに出ており、中国脱却への世論の支持は固まりつつある。人権団体「共産主義犠牲者記念財団」は先月、強制収容所に入れられているウイグル族の画像を含む、中国警察当局による弾圧とみられる関連資料を公表した。ベアボック氏はこの資料に言及し、独立かつ透明性のある調査を求めた」

     

    ベアボック外相は、下線のように数年内にドイツ企業が数年内に中国から完全撤退できるか聞いている。この動きは重要だ。中国政府の新疆ウイグル族弾圧は、大きな波紋を呼びそうである。

     

    (7)「オラフ・ショルツ首相が所属する社会民主党(SPD)の共同党首ラース・クリングバイル氏は5月初め、ウクライナ戦争を考慮するなら、ドイツは中国に対して「態度を変え、もっと批判的になる」必要があると述べた。ショルツ氏は5月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で行った演説で、中国を政治的に孤立させないようくぎを刺した上で、こう語った。『新疆で見られるように、人権が侵害されているときにわれわれは見ないふりをすることなどできない』」

     

    ドイツ首相は、ウクライナ侵攻と新疆ウイグル族弾圧が、同等の重みを持つとしている。中国にとって、厄介な問題になってきたと言うべきだろう。

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    ドイツは、これまで「親ロ政策」を基調としてきた。ショルツ首相も、その流れを引継いだが、先のプーチン大統領との会談で完全に認識を変えたという。会談中、延々とロシアの主張を繰返し、シュルツ氏の発言に耳を貸さなかったのだ。

     

    その上のウクライナ侵攻である。シュルツ氏は、「プーチンは、ロシア帝国を築きたがっている」とし、「プーチンのような戦争をあおる者と一線を引くために、われわれが力を奮い立たせることができるかどうか」が、現在直面している主要な問題だと、珍しく感情をあらわにして語ったという。

     


    ドイツが、プーチンのロシアへ強い警戒心を強めた結果、防衛費の増額・ロシア産エネルギー依存度への引下げなど、「脱ロシア」を鮮明にしている。第二次世界大戦後のドイツ外交が大きな転換点を迎えた。プーチン氏は、友人・ドイツを失ったのである。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「ドイツの支えを失ったロシア」と題する社説を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対して行った血塗られた攻撃は多くの人々を驚かせたが、最もはっきりと目を覚ますことになったのは恐らくドイツだろう。ロシアのウクライナ侵攻は、ドイツの国防・外交政策にとって神の啓示のような変化をもたらした。

     


    (1)「ドイツのオラフ・ショルツ首相は2月26日、1000基の対戦車兵器、500基の地対空ミサイル「スティンガー」をウクライナに「できる限り早急に」送ることを明らかにした。これは、致死的な兵器を他国に供給しないという第2次世界大戦後の独政府の政策を反転させる対応だ。ドイツはまた、国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの一部銀行を排除する制裁措置について、数週間にわたった反対姿勢を覆して容認することに同意した。SWIFTからの排除に消極的だった態度を最初に変えたのはイタリアとフランスであり、それが最後に残った消極派の主要国ドイツを動かす役目を果たした」

     

    ドイツは、ウクライナへ武器を供与する。これまでのルールを変えたもので、「プーチン戦争」でウクライナが勝利を得るように後押しする。

     


    (2)「ドイツのこの決定は、ショルツ首相が2月27日に議会で行った演説につながった。この中でショルツ氏は、ドイツの安全保障・国防政策にとって1945年以降で最も劇的な見直しを発表した。独政府は、何十年も続いてきたロシア政府との協商関係から離れ、北大西洋条約機構(NATO)に完全に軸足を移そうとしている。ショルツ氏は、全てのNATO加盟国の目標とされている、国内総生産(GDP)の2%への国防支出増額を約束したほか、その前払い金として、今年の国防予算に1000億ユーロ(約13兆円)を追加する方針を示した。F-35戦闘機やイスラエル製ドローンなどといった実際の兵器に使われる」

     

    ドイツ政府は、防衛の軸足を完全にNATOへ置くことを表明した。これまでは、在独米軍に依存する「人任せ防衛」であった。それを改め、ロシアの脅威に対抗する気構えを見せている。

     

    (3)「ショルツ氏はまた、エネルギー政策を安全保障と結びつけ、同国がもはやエネルギーを国内経済や気候変動のみの問題として扱えなくなったと警告した。ドイツ政府は再レル生可能エネルギーへの投資を増やすが、戦略的な石炭や天然ガスの備蓄についても投資を行う。政府は2カ所の液化天然ガス(LNG)基地を早期に建設して、ロシア以外からの輸入ができるようにする」

     

    ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア産天然ガスへの依存度を引き下げ、エネルギー政策を大きく転換する。このため、石炭火力発電所と原子力発電所の運用期限を延長する。エネルギーのロシア依存度を下げなければ、いつ「ロシア・リスク」に見舞われるかも知れないからだ。ロシア依存のエネルギー政策を転換する。

     


    (4)「ショルツ氏によると、ドイツは今後、ロシアとの間で外交のための外交を行わない方針だ。これは恐らく最大の変化になる。そのためには、政府がNATOにおけるドイツの役割を見直す必要があるからだ。ドイツは長年、自らのことを米国とロシアの架け橋となる存在だと認識してきた。それは、東西冷戦の前線というポジションから生じる不安と、第2次世界大戦の東部戦線でドイツが行った戦争犯罪に対する罪悪感が影響して生じた態度だ」

     

    ショルツ氏は、ドイツの主張がプーチン氏に対する警戒であり、ロシア国民に対するものではないと強調して、過去の歴史に対するドイツの反省を示している。ドイツが、過去に犯した戦争への責任を忘れないが、ロシアとの間で外交のための外交を行わない方針を明確にしている。

     

    これは、日本についても言えることだ。韓国は、日本の軍備増強に対して「戦争責任」を持出して批判する。だが、中国の軍備増強の前に「丸腰」はあり得ない。ドイツの歴史的転換は、日本に対してもそのまま当てはまる。

     

    (5)「ドイツ人が「転換点」と呼ぶこの変化について、与党3党および野党キリスト教民主同盟(CDU)の指導者は、いずれもショルツ氏の政策革命を支持している。市民は、プーチン氏の野心を阻止しないままでいれば、欧州がどんな代償を支払うことになるかをウクライナ情勢で目の当たりにした。そしてショルツ氏の演説の中で最も政治的に重要な転換の1つは、彼が防衛・エネルギー安全保障とその他の対応は、単に同盟国からの圧力に応じてではなく、自国の利益のために行う必要があると説明した点である」

     

    欧州のプーチン氏とアジアの習近平氏が、ともに領土拡大を狙っている。こういう危険な状況下で、国家の安全保障をいかに守ってゆくか。日本も防衛・エネルギー安全保障の再構築を迫られている。ドイツは、「外交のための外交」を捨てると宣言した。単なる友好増進でなく、それを裏付けるシステムの確立が不可欠である。

     

     

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    ドイツ政府はこれまで、対ロシア経済関係を重視して、ウクライナ問題で逃げ腰姿勢を見せてきた。だが、2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナへの積極支援に変わっている。以前は、ウクライナの武器供与の要請を断わり、ヘルメット5000個を送り、嘲笑されるほど危機に鈍感であった。

     

    『ロイター』(2月27付)は、ドイツのベーアボック外相が、中国の王毅外相との電話会談で、ウクライナに関する中国の「特別な責任」を強調した。ドイツ外務省が26日にツイッターで明らかにしたもの。

     

    ドイツ政府が、中国に対して間接的に中国政府の責任を問う姿勢にまでなっている。プーチン氏が、ウクライナを「ヒトラー」呼ばわりしていることへの反発も手伝い、中国へ間接的な異議を伝えたのであろう。

     


    ドイツはこれだけでない。ドイツ運輸省は、自国の空域からロシアの航空会社を締め出す準備を進めていることを明らかにした。ARDが複数の関係者を引用して報じたところによれば、EU全体でこれに追随する可能性がある。『ブルームバーグ』(2月27日付)が報じた。ロシア航空機をドイツ空域から締め出すとは、思い切った行為である。EU全体が、このドイツの措置に追随すれば、ロシア航空機はEUへの乗り入れが困難になる。

     

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、ドイツは紛争地帯に兵器を送らないという従来の方針を転換し、ウクライナに携行式地対空ミサイル「スティンガー」などを送ると発表した。外国への兵器供給は長年維持してきたドイツの方針を転換するもので、ロシアのプーチン大統領が指示したウクライナ侵攻に対する憤りを浮き彫りにした。ドイツ政府の26日声明によれば、ドイツ製ロケット推進手りゅう弾(RPG)400本と装甲兵員輸送車14台がオランダ経由で、1万トンの燃料がポーランド経由でウクライナに供給される。追加供給も検討中だという。

     


    ドイツ政府は、ウクライナへドイツ製ロケット推進手りゅう弾や装甲兵員輸送車装甲兵員輸送車を供給する。さらに追加供給も検討中という。ロシアの野望粉砕に全力投球である。

     

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「ドイツ首相、国防費の大幅増額を表明ーウクライナ危機で歴史的転換」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのショルツ首相は27日、国防費を大幅に引き上げる計画を発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受け、歴史的な政策転換に踏み込む。

     


    (1)「同首相は連邦議会(下院)で演説し、軍の強化に向けた基金に今年1000億ユーロ(約13兆円)を振り向ける方針を示すとともに、政府は2024年までにGDPの少なくとも2%相当を国防費に毎年充てると表明した。北大西洋条約機構(NATO)は国防予算についてGDPの2%相当を目標としているが、ドイツは未達に終わることが多かった」

     

    ドイツは、これまで防衛費のGDPの2%目標を達成せず、米軍駐留に依存してきた。今回のロシアによるウクライナ侵攻で、目が覚めた感じである。ウクライナへの積極支援が、ロシアの野望を阻止する試金石と見ているに違いない。

     


    (2)「ポーランドのドゥダ大統領は同日、ショルツ氏の演説について、ウクライナ支援と国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークからのロシアの一部銀行排除とともに「ロシアによる侵攻の阻止に向けた重要な一歩」だとツイート。「共に行動することだけが、ロシアのプーチン大統領の帝国的野心と戦争を止めることができる」とコメントした」

     

    ポーランドは、これまでロシアの暴政を経験しているだけに、対ロ姿勢では厳しい姿勢だ。ドイツも旧東ドイツは、旧ソ連の占領地であった。だが、ロシアに対して経済的利益優先で妥協しすぎたと言える。その「反省」が今、ドイツを襲っているのであろう。

     


    (3)「ポーランドのヤブウォンスキ外務次官はワルシャワでの記者会見で、プーチン大統領を孤立化させることが侵略を止める唯一の手段であるため、ロシアへの圧力を続ける必要があると指摘。「われわれにはまだなすべき多くのことがあるが、その一つがベラルーシを制裁対象とすることだ。ベラルーシはロシアの同盟国だ」と述べた」

     

    ポーランドはベラルーシをロシア衛星国と見ている。このベラルーシを、制裁対象に加えるように主張している。

     


    (4)「ポーランド政府のムラー報道官は同じ記者会見で、同国のモラウィエツキ首相がショルツ独首相と26日にベルリンで会談し、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の「2」に続き「1」も停止するよう主張したことを明らかにした。ポーランドは「ロシアのプロパガンダ」拡散が疑われるウェブサイトを閉鎖する方針。ポーランド首相府トップのドボルチク氏は、人道支援でウクライナに1日当たり2本の列車を向かわせ、帰還する列車に難民を乗り込ませることを明らかにした

     

    ポーランドは、ウクライナ避難民を積極的に受入れる方針だ。ウクライナへ、1日当たり2本の列車を向かわせ受入れる。国連では、40万人程度の避難民が出ると予想している。ポーランドが、ベラルーシ制裁を主張するのも当然であろう。

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    バイデン米大統領とドイツのショルツ首相は7日、ロシアがウクライナに再侵攻した場合、ロシアに大規模な経済制裁を科す方針を確認した。バイデン氏は、会談後の共同記者会見で、侵攻すれば独ロを結ぶ新たなガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」は稼働しないと明言した。

     

    ドイツは、ロシアからの天然ガス欲しさにこれまで対ロ制裁で逃げ回ってきた。EUの大国が、率先してロシアの暴力に立ち向かうのでなく、自国利益擁護に奔走し、同盟国を失望させたのだ。今回の一件は、ドイツの身勝手さを強く印象づけている。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月8日付)は、「米独、対ロ制裁で一致『侵攻なら、ガス管稼働せず』」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン氏は、会見でロシアが再侵攻すれば「ノルドストリーム2はなくなる。我々はそれに終止符を打つ。できると約束する」と述べた。ショルツ氏も「我々は団結している。制裁に関しては一致して行動すると明確にしている」と語り、足並みをそろえた。これまでドイツは同計画が民間事業だとして介入を拒んできた経緯がある。

     

    (1)「ノルドストリーム2はウクライナを経由せずに欧州に天然ガスを供給する構想で、ロシア依存が深まるとして米国はかねて稼働中止を求めてきた。ドイツがロシアにエネルギーを頼り、パイプライン計画で協力する構図は対ロ制裁で連携する足かせになっているとの見方が多い。米独両政府が2021年7月に発表したノルドストリーム2に関する共同声明で、ロシアがガス停止を武器にウクライナへの軍事圧力をかければドイツが制裁を含む措置を講じると記した。メルケル前政権が結んだ共同声明だが、米政府高官は「ショルツ政権でも拘束力を持った合意だ」とクギを刺す」

     


    ノルドストリームは
    バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつないだ天然ガスのパイプラインである。2011年11月に稼働を開始したノルドストリーム2は、ロシア国営企業とドイツ、フランスなどの企業が出資する新たなパイプラインである。施設は2021年9月時点で完成したが、稼働に関してはドイツの承認待ちの状態となっている。今回の米独首脳会談では、このノルドストリーム2を稼働させない、としている。

     

    ロシアには、天然ガス販売計画が狂う。ドイツにとっても、天然ガス需要期だけに供給不足になる点で負担は大きい。だが、同盟国側の強い圧力で米国の要請を受入れることになった。

     


    (2)「ドイツを含め欧州は天然ガス輸入の4割をロシア産に頼る。ロシアが米欧による制裁への対抗措置として欧州向けのガス供給を絞り込む事態も想定される。ショルツ氏は「経済を近代化し、ガスが使われているところを水素に切り替えていく」と話した。エネルギーのロシア依存を低減するためエネルギーの構造転換をめざす意向を示した。バイデン氏は「ロシアはガスや石油を売らなければならない。彼らの唯一の輸出手段が途絶えれば大きな打撃になる」と主張した」

     

    米国は、欧州がロシア産の天然ガスに依存しているだけに急遽、調達先の変更をさせるべく、各国へ協力を呼びかけている。日本へも天然ガスの欧州への融通を求められている。在庫が少なく苦悩しているが、応分の負担は不可避であろう。

     

    ロシアは、こういう過程で信頼を失えば二度と再び天然ガス需要は戻るまい。領土拡張という20世紀の悪夢に唆されて、自分の首を締めるのだ

     


    (3)「米欧はロシアの再侵攻を抑止するため、大規模な金融・経済制裁を科すと繰り返し警告してきた。バイデン氏は「ドイツは世界で最も重要な同盟国の1つであり、両国のパートナーシップに何の疑いもない」と指摘。侵攻すれば「ロシアは大きな代償を払うことになる」と改めて強調した」

     

    ドイツは、ロシアへの大規模な金融・経済制裁で協力する羽目になった。これまでは、抜け穴を求めて右往左往して、顰蹙(ひんしゅく)を買ってきたのである。そのドイツが、NATO(北大西洋条約機構)の米兵3万人以上が駐留して恩恵を受けている手前、米国へ「ノー」と言えなかったのだ。こういう結論が出るのは当然である以上、往生際が極めて悪かった。外交感覚がゼロである。何か、韓国に似た部分がある。往年のドイツが見せた威厳はゼロである。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「
    ドイツは頼りになるのか、対ロで米同盟国に疑念」と題する記事を掲載した。

     

    緊迫するウクライナ情勢を巡り、ロシアに近いドイツを本当に信頼することができるのかとの疑念が米国や同盟国の間でにわかに強まっている。ドイツは伝統的に平和主義の姿勢を貫いているほか、ロシア産ガスに過剰に依存しており、政治・経済面でもロシア政府とのつながりを深めてきた。そのいずれも過去数十年に形成されてきたもので、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の当局者がドイツに懐疑的な視線を向ける要因となっている。

     

    (4)「ショルツ首相は米政府からの度重なる勧告にもかかわらず、ロシアがウクライナに侵攻した場合に、問題となっているロシア・ドイツ間のガスパイプラインを凍結するとは公の場で確約していない。しかも、西側諸国が対ロシア追加制裁の発動に踏み切る場合には、ロシア産ガスの購入を継続できるよう、ドイツは例外扱いすら求めていると外交筋は明かす」

     

    ドイツ首相は、ウクライナ問題で経済負担を負わぬように逃げ回っていた。万一の場合でも、ロシア産ガスの購入継続を求めていた。NATO同盟国としての責任感がゼロの振る舞いである。この一事を以て、ドイツの「国格」が崩れ去った。

     


    (5)「ロシアは、ウクライナ国境沿いに軍部隊を集結させており、ドイツは危機の前線に近い大国として、通常なら他の欧州諸国から指示を求められる立場だ。だが今回のウクライナ問題で、ドイツはできる限り目立たない存在にとどまっていたいとの意向を強く滲ませている。アナレーナ・ベアボック独外相は、ウクライナ危機におけるドイツの役割は金融・外交支援を提供することであり、他のNATO加盟国が軍事支援を行うべきだと発言。NATOの結束を巡り、同盟国から懸念の声が上がった」

     

    バルト三国は、ドイツから提供受けた武器をウクライナへ移動させ、防衛力強化に協力したいとドイツの許可を求めた。だが、ドイツは返事を渋っている。ロシアの制裁を恐れたからだ。バルト三国という「小国」が、あえて武器を移してでも対抗したいと「奮起」しているのに、ドイツは経済計算に忙しく逃げ回る。これでは、ドイツを信じる国などあるはずがない。見損なったドイツである。

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