勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ドイツ自動車業界は、中国EV(電気自動車)の進出に神経を尖らせている。最近の市場調査では、自国製EVがリードしていると見るのは43%。中国製は23%に止まった。ただ、中国製の低価格が魅力とするのは42%もあるので、侮れない存在である。

     

    『レコードチャイナ』(2月26日付)は、「ドイツの消費者は国産EVが最も競争力があると見ている―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    『ドイチェ・ベレ』中国語版サイトによると、ドイツの消費者はドイツ製の電気自動車(EV)が世界で最も競争力があると見ていることがコンサルティング会社オリバー・ワイマンの最新の調査で分かった。

     

    (1)「コンサルティング会社オリバー・ワイマンは2025年11月、ドイツ国内で1000人余りを対象にオンラインで実施された調査によると、次のような結果が出た。国内メーカーの競争力が、リードしていると回答した割合は約43%で、2位の中国の23%を上回った。オリバー・ワイマンのパートナー、サイモン・シュヌーラー氏によると、この調査結果は欧州の自動車の価値創造を維持・拡大する機会を示している。メーカーは品質と安全性に対する既存の信頼をより迅速な購入決定につなげるために価格設定とデジタル機能への注力を強化する必要がある」

     

    EV競争力では、ドイツがリードしていると回答した割合は約43%。中国の23%を大きく上回った。品質面では、独製に軍配を上げている。ただ、中国EVがリードしているとみる向きが23%もいた。ドイツ車は、価格設定とデジタル機能の強化が必要という指摘は重要である。

     

    (2)「調査では、42%が主に価格の安さを理由にドイツブランドではなく中国ブランドのEVの購入を検討すると回答したことも分かった。一方、品質と安全基準への懸念を理由に中国ブランドのEVの購入を検討しないと回答した割合は34%に上った。ドイツ連邦自動車庁(KBA)のデータによると、ドイツで25年に新規登録されたEVは54万5000台超で、これまで市場で限定的な役割しか果たしていなかった比亜迪(BYD)などの中国の自動車メーカーが力強い伸びを見せている」

     

     

    中国EVには、根深い不信感が横たわっている。品質と安全基準への懸念を理由に、中国EVの購入を検討しない層が、34%もいることだ。こういう不信感は、先進国共通であろう。日本では、さらに強いであろう。

    テイカカズラ
       

    ドイツは、悩んでいる。2月25日からメルツ首相が訪中した。直前の24日、メルツ氏は高市首相へ電話し25分間ほど協議した。日本外務省の発表によると、メルツ氏はインド太平洋地域で同志国の日本との協力を重視していると語った。両首脳は、東アジア情勢を含む地域・国際情勢について意見交換したという。

     

    メルツ氏の高石市への電話は、同士国日本への気配りであろう。ドイツ首脳が訪中に当たり、日本へ「挨拶」したのは、ドイツが中国一辺倒でないという意味である。メルツ氏の訪中自体が気の重いものである。ドイツはこれまで、中国経済の成長と共に輸出を伸してきたが、今や逆転している。大幅な対中貿易赤字を抱えているのだ。この赤字を減らすには、中国依存度を減らすことである。日本への挨拶には、こういう意味もあるのだろう。

     

    メルツ氏は、訪中1週間後に訪米予定である。トランプ大統領と厳しい通商交渉が待っている。名うての「タリフマン」(関税男)トランプ氏を相手に、どう話をまとめるか。

     

    『ウォールストリートジャーナル』(2月26日付)は、「対中関係の再構築、ドイツが示す難しさ」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツ経済は長年、中国の爆発的成長に便乗してきた。25日に初めて北京を訪問したフリードリヒ・メルツ独首相は長年の中国懐疑論者であり、自国にとって最大の貿易相手国である中国との関係で新たな方向性を示そうとしている。ドイツ当局者によれば、メルツ氏は1週間足らずのうちにワシントンも訪問し、トランプ氏の厳しい通商政策を受けた米欧間の今後の通商関係を明確にすることを目指すという。

     

    (1)「独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)はかつて、売り上げの最大40%、利益はそれ以上を中国で得ていたが、その後同国でのシェア急減に見舞われた。このためVWは、その90年近い歴史において最大規模の人員削減とドイツ国内では初めてとなる工場閉鎖に追い込まれた。メルツ氏は、米誌『フォーリン・アフェアーズ』に今月掲載された寄稿の中で、中国は既存の世界秩序を変えようとする修正主義の超大国だと述べている。ドイツは中国との関係を断つべきではないが、中国への依存を大幅に減らすべきだとの考えを示した。同氏は、クリーンテクノロジーと自動車の分野で、中国からの輸入を関税と現地調達比率規制によって制限するという欧州連合(EU)の提案を受け入れ始めている」

     

    メルツ氏は、中国批判派である。だが、対中ビジネスをまとめなければならないという大役も担っている。今回の訪中は、経済界の強い要請に基づいていた。元首相メルケル氏が、中国一辺倒であっただけに、路線修正には大変なエネルギーが必要である。

     

    (2)「ドイツ当局者の中には、欧州での合弁事業に乗り出す中国企業に、現地の合弁パートナーとの知的財産の共有を義務付ける案を支持する可能性を口にする者もいる。これは、外国メーカーに中国が何十年も前から課してきたルールと同じだ。ドイツはまた、自国企業が輸入する原材料などについて、中国への依存を回避させる取り組みも進めている。あるドイツ政府高官によると、中国はEUに対し、2020年に大筋合意された中欧投資協定を批准するよう求めており、将来的な貿易協定締結への地ならしをしようとしている。だが、ドイツ政府は懐疑的だという」

     

    ドイツ当局には、中国の技術を現地企業に開示させるという「弱気論者」まで現れている。ここまで、「負け犬根性」が浸透しているのだ。かつてのドイツの誇りは消えた。

     

    (3)「ドイツにとって、今回の「チャイナショック」は全く新たな現実だ。21世紀に入ってからのほとんどの期間、中国とドイツは共生的な関係にあった。ドイツは、アジアの巨人である中国が、世界に安価な消費財を供給するために必要とした自動車や工場、インフラを中国に販売することで、中国の急激な成長にあやかることができた。この共生関係はもはや終わっている。ドイツの2025年の中国製品輸入額が8.8%増加した一方で、ドイツの対中輸出額は9.7%減少し、対中貿易赤字は33%拡大した」

     

    ドイツ企業は、中国急成長の「お相伴」に預かってきた。その急成長が止まって、逆にドイツへ製品が逆流している。まさに、チャイナショックである。

     

    (4)「長年、自由貿易の熱心な支持者だったドイツの経済ロビー団体や労働組合の一部は政府に対し、中国からの輸入に障壁を設けるよう迫っている。ただ、ドイツ政府には、中国との関係を断ち切れるだけの余裕は「まだ」ない。市場シェアが縮小しているとはいえ、独製造業大手の一部は中国市場への依存度が依然高い。自動車メーカーや武器メーカーなどは、今後何年も中国製の材料に依存し続けるだろう。一部の企業にとって、中国は主要な研究開発拠点になりつつある」

     

    政治体制の異なる国家と経済的に深入りすると、大変な結末を迎えるという生きた例がドイツである。価値観が全く異なると、常識が通用しないのだ。

     

     

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    ドイツと中国は過去20年間、経済面で理想的なパートナーだった。世界貿易の活況から両国とも大きな恩恵を受けていた。中国が、世界向けに消費財を製造するためにドイツが必要な機械を供給していた。だが今や、中国はドイツを必要としなくなり、ドイツは関係解消を望んでいる。中独関係が、逆転したのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月22日付)は、「中国との『離別』 ドイツが望む理由」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの企業と政治家はここ数十年で初めて、同国を工業大国に変えた無制限の自由貿易に疑問を呈している。製造企業は、製品をより安価で迅速に提供し、品質も向上している中国の競合企業からの保護を求めている。ドイツのメルツ首相は先月、政府が国内の鉄鋼メーカーを中国の競合企業から保護すると表明した。

     

    (1)「ドイツの中国離れは、しばらく前から進行していた。中国メーカーは低い生産コストや人民元安、政府の補助金に支えられ、最近までドイツ企業が支配していた分野で、中国国内だけでなく欧州を含む他の市場でも、ますます優位に立つようになっている。しかし、そのタイミングはトランプ米大統領と大いに関係がある。化学品から自動車部品に至るまで、安価な中国製品の波が今年、米国の新たな関税障壁ではね返され、欧州に押し寄せ始めた。その結果、かつて経済的自由主義の象徴だったドイツが、関税や規制障壁、その他の保護主義的措置に傾倒しつつある」

     

    中国は、トランプ関税で対米輸出が困難になった代替市場として、ドイツへ焦点を合わせて輸出ドライブを掛けている。ドイツは、こうして保護主義的措置へ傾いている。中国製品の排除である。

     

    (2)「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は最近の中国訪問後、仏紙レゼコーに対し「ドイツは動き始めており、自国にも影響を及ぼす不均衡を認識しつつある」と語った。「中国は欧州の産業・イノベーションモデルの中核を直撃している」。欧州で最も影響力のある自由貿易の声が弱まっていることは、米中間の大国間競争と、欧米で台頭するポピュリスト勢力が主導する反グローバル化の動きを背景に、世界経済がいかに分断されつつあるかを示している」

     

    フランスのマクロン大統領も、ドイツの保護主義的措置に「賛意」をみせている。

     

    (3)「ドイツの方針転換は、経済と政府の全ての分野にまだ浸透していない。中国との関わりが深い企業ほど、軌道修正は困難だ。一部の自動車メーカーや化学品メーカーは依然として中国に多額の投資を行っている。ドイツの政治家は、同盟国が中国との対峙(たいじ)と融和の間で揺れ動く中、その動向を注視している。だが進むべき方向性は明確になりつつある。まず企業から始まり、その後、国内の影響力のあるロビー団体に浸透し、最近では政府にも広がっている」

     

    在中ドイツ企業は、中国の補助金に魅力を感じており、軌道修正が遅れている。だが、ドイツ政府は中国からの輸出急増に危機感を漲らせている。

     

    (4)「口火を切ったのはドイツ産業連盟(BDI)だ。2019年、中国に友好的な立場を捨て、同国が「システム全体における競争相手」だとする報告書を発表した。今年に入ると、ドイツ経済の屋台骨を支える輸出志向の企業間取引企業から成るドイツ機械工業連盟(VDMA)が、中国の不公正な競争を非難した。VDMAは、欧州の法律を無視する中国の輸出企業に対する反ダンピング措置と制裁を求めている。ドイツ政府は来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、「中国との関係における経済、技術、安全保障政策上のリスク増大に対処するプロジェクト」に取り組んでいると、政府当局者は述べた」 

     

    ドイツ産業連盟やドイツ機械工業連盟は、中国の不公正な競争を非難している。ドイツ政府は、来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、対中の経済、技術、安全保障政策上におけるリスク増大を指摘する予定だ。

     

    (5)「中国が投資財の買い手から製造側へと脱却したスピードは目覚ましい。シンクタンクのロジウムが近く発表する報告書のデータによると、19年から24年の間に、ドイツは発電設備と機械の世界市場シェアで首位の座を中国に明け渡した。化学品と自動車におけるドイツの優位性は今や紙一重であり、電気機器市場では中国に大きく後れを取っている。ドイツは今年初めて、中国から輸入する資本財が中国への輸出を上回った」

     

    中国は、改革開放時に日本企業の技術を強引に開放させた。それ以降、日本企業は対中へ警戒姿勢をみせてきた。ドイツ企業は、まんまと中国の術中に嵌まったのだ。

     

    (6)「こうした動向は加速している。ドイツ経済研究所によると、25年第2四半期には中国からの手動変速機の輸入がほぼ3倍に増加した。ドイツ自動車メーカーの中国市場におけるシェアは、2年間で50%から3分の1に低下した。ドイツの対中輸出は19年以降に約25%減少した一方、輸入は急増した。ドイツ政府の統計によると、今年の対中貿易赤字(財・サービス)は過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する見通しだ。これは深い傷痕を残している。産業部門は19年以降に雇用の5%近くを削減した。自動車部門は同期間に約13%の雇用を失った」

     

    ドイツの対中輸出は、19年以降に約25%減少した一方、輸入が急増している。今年の対中貿易赤字(財・サービス)は、過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する。ドイツは従来、中国市場がドル箱であった。いまやこの関係が逆転したのだ。中国のダンピング輸出の凄さが分るであろう。こうして中国は、ドイツの支持を失っていく。

     

    あじさいのたまご
       

    ロシアは、ウクライナ侵攻で停戦気配をみせないどころか、さらに欧州へ戦線拡大を危惧される事態を迎えている。欧州の盟主であるドイツは、ロシア侵攻への備えとして、26年から18歳男子すべての身体検査を行うことになった。ドイツ連邦軍は当面、現在の18万2000人から2035年までに26万人へ増やす必要があるしている。ドイツは、2011年に徴兵制を停止したが、志願兵への兵役制度を復活させることになった。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月13日付)は、「ドイツ連立与党、新たな兵役制度で決着 18歳男性全員に身体検査」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの連立与党間で合意された軍事力増強政策に基づき、今後18歳の全ドイツ人男性は兵役適性を確認するための身体検査が義務付けられることになる。

     

    (1)「欧州連合(EU)最大の経済国であるドイツは、ロシアの侵略に対する北大西洋条約機構(NATO)の懸念を受け、軍を拡大しようとしている。新しい形の兵役制度については、当初は志願者のみを募集する。新たな兵役制度の詳細をめぐる数カ月の政治的駆け引きの末、ピストリウス独国防相は募集活動の進捗状況について6ヶ月ごとに独連邦議会(下院)に報告することに同意した。もし志願兵を十分に確保できなかった場合、議員らは強制兵役の対象者を無作為に抽選で選ぶ案など、他の選択肢の検討を求められることになる」

     

    当初は志願制であるが、募集が定数に満たない場合、徴兵となる。

     

    (2)「合意を発表したピストリウス氏は、欧州諸国がドイツに注目しているのは、今後数年にわたってドイツが軍の装備刷新に数千億ユーロを投じるだけでなく、兵員の拡充に取り組んでいるからだと強調した。「これらすべてが成功すると強く確信している」と述べた。メルツ独首相は5月に就任した際、ドイツ軍を欧州で最も強力な通常戦力にすることを約束していた。軍当局は、ドイツ連邦軍の規模を現在の18万2000人から2035年までに26万人に増やす必要があると述べている。また、危機時に招集可能な予備役も6万人から20万人へ拡大する必要がある」

     

    現在の定員18万2000人が、2035年までに26万人に増える。予備役も6万人から20万人へ拡大する必要があるという。

     

    (3)「ドイツは11年に徴兵制を停止した。メルツ氏率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)と連立相手の中道左派ドイツ社会民主党(SPD)が結んだ連立協定は、新たな志願制の兵役制度の導入を約束していた。しかし、新たな兵役制度の法制化は難航してきた。CDU内には、欧州の緊迫した安全保障状況を考えると、志願制だけでは不十分だと警告する声が多い。一方、平和主義が根強いSPDは徴兵制の導入を求める声に抵抗してきた。両党は10月に合意に達したかに見えたが、ピストリウス氏が合意内容のいくつかの要素に不満を示したため合意は頓挫していた

     

    連立政権のCDUとSPDでは、徴兵制への意見が食い違っている。CDUは、徴兵制やむなしであるが、SPDが徴兵制へ抵抗してきた。それがようやく合意した。

     

    (4)「11月12日夜に取りまとめられた新たな合意によれば、26年1月から18歳全員に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付されることになる。男性は、法律により回答が義務付けられる。女性は任意となる。これは以前の兵役制度が男性のみに適用されていた名残である。性別に関する規定を撤廃するには憲法改正が必要で、連邦議会で3分の2の賛成が必要となるが、現在の連立政権ではその確保は困難だろう。質問票に回答した後、若年男性全員は、たとえ従軍する意思がなくても身体検査を受ける必要がある」

     

    26年1月から18歳全員の男女に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付される。男性は回答を義務づけるが、女性は任意となる。女性の徴兵は憲法改正が必要。若年男性全員は、身体検査を受ける義務がある。

     

    (5)「ピストリウス氏は、能力がある若者全員の招集が必要となりうる危機に備えるために、こうした検査が重要だと強調した。同氏は13日、検査によりドイツの若い男性の「全体像を把握」することができ、これは「防衛能力を評価する上で不可欠だ」と述べた。ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くする補助などの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている」

     

    ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くするなどの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている。

     

     

    テイカカズラ
       

    ドイツ経済が低迷している。8月失業率は6.3%、失業者300万人という悪条件にある。自動車産業が、EV(電気自動車)不振で大量解雇者を出している結果だ。日本は、EV戦略でドイツのように特化せず、HV(ハイブリッド車)に傾斜していたことでEV被害を受けずに「命拾い」した。そうでなければ、ドイツの二の舞を演じていた。日本の8月の失業率は2.3%、失業者数は169万人だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)は、「ドイツ、失業者10年ぶり300万人超え 自動車不振でリストラ連鎖」と題する記事を掲載した

     

    欧州最大の経済大国ドイツで、景気の低迷が雇用不安に波及しつつある。8月の失業者は10年ぶりに300万人の大台を超えた。エネルギー高が直撃した製造業でリストラが相次ぎ、日本のライバルとなる自動車産業は競争力低下に危機感を強める。

     

    (1)「メルツ首相は9日、「もし自動車産業が無くなれば、ドイツ全体が貧しくなる」と南部ミュンヘンで開催した国際自動車ショーで、産業競争力の衰えに危機感をにじませた。安価で性能が高い中国車が台頭するなか、国内雇用を支える自動車産業への後押しを約束した。欧州で中国車の販売シェアは高まっており、中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)は販売店を増やして攻勢をかける」

     

    ドイツ首相は、「自動車産業が無くなれば、ドイツ全体が貧しくなる」と発言したが、事情は日本も同じ。日本は、トヨタ自動車がEVの方向を誤らなかったから救われた。「トヨタ様々」である。

     

    (2)「独連邦雇用庁によると、8月の失業者は302万5000人と2015年2月以来となる300万人を突破した。夏季休暇に伴う季節要因が押し上げた側面はあるが、前年同月比でも15万3000人増えた。ウクライナ危機で高インフレに見舞われた22年以降は増加基調が鮮明だ。雇用環境は業種で明暗が分かれる。社会保険の義務を負う従業員の数をみると、製造業は6月時点で前年同月比14万人減少した。鉄鋼業などは11万人の喪失だ。対照的に人手不足が解消できない医療や介護・社会福祉は雇用をそれぞれ6万〜7万人ほど増やした」

     

    自動車不振は、主要材料の鉄鋼の需要減へと波及している。鉄鋼も大量の解雇者を出している。

     

    (3)「失業者の増加は、ドイツ企業の厳しいリストラを映し出す。失業の大半は移民などの外国人ではなくドイツ人で、かねて企業の景況感調査でも雇用削減による実体経済への悪影響が指摘されていた。実際、リストラの動きは連鎖している。大手会計事務所EYの調査では、25年6月までの1年間でドイツの自動車産業で従業員5万人あまりが削減された。ドイツ産業全体における人員削減数の45%を占める規模だ。ドイツ経済研究所(IW)の集計によると、自動車関連の雇用は30年までに9万人ほど純減する見通しだ。フォルクスワーゲン(VW)が30年までに独国内の従業員3万5000人を削減する計画を公表するなど、部品大手も含めてリストラ計画が進む。海外で現地生産する流れもあり、ドイツからの自動車輸出は減少する。VWは中国事業が振るわず、トランプ米政権による高関税政策も逆風だ。加えて、欧州でEVの販売が失速した」

     

    失業の大半は、移民などの外国人ではなくドイツ人である。自動車や鉄鋼では、ドイツ人が主力労働者になっている。

     

    (4)「ドイツ経済は25年、東西統一後で初となる3年連続のマイナス成長となるかの瀬戸際だ。プラス成長を維持する見通しだが、実質成長率はゼロ%近辺の低空飛行となる可能性が高い。直近46月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0.%減だった。ドイツはGDPに占める製造業の割合がおよそ2割で、フランスなどの1割台より高い。ウクライナ危機に伴うエネルギー高は製造コストの上昇に直結した」

     

    ドイツは、GDPに占める製造業の割合がおよそ2割である。日本も同じレベルである。日独の産業構造は、似通っている。

     

    (5)「ドイツの産業は輸出依存型。サービス業が発達していない分だけ、影響は深刻だ。景気をてこ入れするため、メルツ政権は大規模な財政支出を計画する。金融市場では景気回復に期待が高まるものの、9月に入ってから成長率見通しを下方修正する動きが相次ぐ。独ハレ経済研究所(IWH)は26年の実質成長率が0.%との予測を示した。IWHによると企業の破産件数も新型コロナウイルス禍前の平均より1.5倍の高水準で、景気回復は遅れている」

     

    ドイツの輸出依存度は、対GDP比33.53%(2023年)と日本の16.99%(同)をはるかに上回っている。これは、ドイツ経済が海外経済動向に大きな影響を受けることを意味する。現状のドイツは、厳しい国際環境下にある。

     

    (6)「ドイツは少子高齢化で慢性的な人手不足感が強く、これまで景気の下降局面でも雇用は安定していたが、長引く低迷で企業は解雇を避けられなくなってきた。5月にドイツ首相に就任したメルツ氏には大きな試練となる。ショルツ前政権は景気不安が政局に飛び火し、連立の枠組みが瓦解した。既存政党への不満から極右ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し、直近の世論調査では政党別の支持率で首位を争う。西部ノルトライン・ウェストファーレン州で14日実施した地方選でもAfDは躍進した」

     

    ドイツ企業は、これまで中国市場で安定した利益を上げてきた。現在は、状況が一変している。中国が過剰生産に落込んでおり、価格が暴落している結果、ドイツ企業も利益を出せる状況でなくなっている。

     

     

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