勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ドイツと中国は過去20年間、経済面で理想的なパートナーだった。世界貿易の活況から両国とも大きな恩恵を受けていた。中国が、世界向けに消費財を製造するためにドイツが必要な機械を供給していた。だが今や、中国はドイツを必要としなくなり、ドイツは関係解消を望んでいる。中独関係が、逆転したのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月22日付)は、「中国との『離別』 ドイツが望む理由」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの企業と政治家はここ数十年で初めて、同国を工業大国に変えた無制限の自由貿易に疑問を呈している。製造企業は、製品をより安価で迅速に提供し、品質も向上している中国の競合企業からの保護を求めている。ドイツのメルツ首相は先月、政府が国内の鉄鋼メーカーを中国の競合企業から保護すると表明した。

     

    (1)「ドイツの中国離れは、しばらく前から進行していた。中国メーカーは低い生産コストや人民元安、政府の補助金に支えられ、最近までドイツ企業が支配していた分野で、中国国内だけでなく欧州を含む他の市場でも、ますます優位に立つようになっている。しかし、そのタイミングはトランプ米大統領と大いに関係がある。化学品から自動車部品に至るまで、安価な中国製品の波が今年、米国の新たな関税障壁ではね返され、欧州に押し寄せ始めた。その結果、かつて経済的自由主義の象徴だったドイツが、関税や規制障壁、その他の保護主義的措置に傾倒しつつある」

     

    中国は、トランプ関税で対米輸出が困難になった代替市場として、ドイツへ焦点を合わせて輸出ドライブを掛けている。ドイツは、こうして保護主義的措置へ傾いている。中国製品の排除である。

     

    (2)「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は最近の中国訪問後、仏紙レゼコーに対し「ドイツは動き始めており、自国にも影響を及ぼす不均衡を認識しつつある」と語った。「中国は欧州の産業・イノベーションモデルの中核を直撃している」。欧州で最も影響力のある自由貿易の声が弱まっていることは、米中間の大国間競争と、欧米で台頭するポピュリスト勢力が主導する反グローバル化の動きを背景に、世界経済がいかに分断されつつあるかを示している」

     

    フランスのマクロン大統領も、ドイツの保護主義的措置に「賛意」をみせている。

     

    (3)「ドイツの方針転換は、経済と政府の全ての分野にまだ浸透していない。中国との関わりが深い企業ほど、軌道修正は困難だ。一部の自動車メーカーや化学品メーカーは依然として中国に多額の投資を行っている。ドイツの政治家は、同盟国が中国との対峙(たいじ)と融和の間で揺れ動く中、その動向を注視している。だが進むべき方向性は明確になりつつある。まず企業から始まり、その後、国内の影響力のあるロビー団体に浸透し、最近では政府にも広がっている」

     

    在中ドイツ企業は、中国の補助金に魅力を感じており、軌道修正が遅れている。だが、ドイツ政府は中国からの輸出急増に危機感を漲らせている。

     

    (4)「口火を切ったのはドイツ産業連盟(BDI)だ。2019年、中国に友好的な立場を捨て、同国が「システム全体における競争相手」だとする報告書を発表した。今年に入ると、ドイツ経済の屋台骨を支える輸出志向の企業間取引企業から成るドイツ機械工業連盟(VDMA)が、中国の不公正な競争を非難した。VDMAは、欧州の法律を無視する中国の輸出企業に対する反ダンピング措置と制裁を求めている。ドイツ政府は来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、「中国との関係における経済、技術、安全保障政策上のリスク増大に対処するプロジェクト」に取り組んでいると、政府当局者は述べた」 

     

    ドイツ産業連盟やドイツ機械工業連盟は、中国の不公正な競争を非難している。ドイツ政府は、来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、対中の経済、技術、安全保障政策上におけるリスク増大を指摘する予定だ。

     

    (5)「中国が投資財の買い手から製造側へと脱却したスピードは目覚ましい。シンクタンクのロジウムが近く発表する報告書のデータによると、19年から24年の間に、ドイツは発電設備と機械の世界市場シェアで首位の座を中国に明け渡した。化学品と自動車におけるドイツの優位性は今や紙一重であり、電気機器市場では中国に大きく後れを取っている。ドイツは今年初めて、中国から輸入する資本財が中国への輸出を上回った」

     

    中国は、改革開放時に日本企業の技術を強引に開放させた。それ以降、日本企業は対中へ警戒姿勢をみせてきた。ドイツ企業は、まんまと中国の術中に嵌まったのだ。

     

    (6)「こうした動向は加速している。ドイツ経済研究所によると、25年第2四半期には中国からの手動変速機の輸入がほぼ3倍に増加した。ドイツ自動車メーカーの中国市場におけるシェアは、2年間で50%から3分の1に低下した。ドイツの対中輸出は19年以降に約25%減少した一方、輸入は急増した。ドイツ政府の統計によると、今年の対中貿易赤字(財・サービス)は過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する見通しだ。これは深い傷痕を残している。産業部門は19年以降に雇用の5%近くを削減した。自動車部門は同期間に約13%の雇用を失った」

     

    ドイツの対中輸出は、19年以降に約25%減少した一方、輸入が急増している。今年の対中貿易赤字(財・サービス)は、過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する。ドイツは従来、中国市場がドル箱であった。いまやこの関係が逆転したのだ。中国のダンピング輸出の凄さが分るであろう。こうして中国は、ドイツの支持を失っていく。

     

    あじさいのたまご
       

    ロシアは、ウクライナ侵攻で停戦気配をみせないどころか、さらに欧州へ戦線拡大を危惧される事態を迎えている。欧州の盟主であるドイツは、ロシア侵攻への備えとして、26年から18歳男子すべての身体検査を行うことになった。ドイツ連邦軍は当面、現在の18万2000人から2035年までに26万人へ増やす必要があるしている。ドイツは、2011年に徴兵制を停止したが、志願兵への兵役制度を復活させることになった。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月13日付)は、「ドイツ連立与党、新たな兵役制度で決着 18歳男性全員に身体検査」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの連立与党間で合意された軍事力増強政策に基づき、今後18歳の全ドイツ人男性は兵役適性を確認するための身体検査が義務付けられることになる。

     

    (1)「欧州連合(EU)最大の経済国であるドイツは、ロシアの侵略に対する北大西洋条約機構(NATO)の懸念を受け、軍を拡大しようとしている。新しい形の兵役制度については、当初は志願者のみを募集する。新たな兵役制度の詳細をめぐる数カ月の政治的駆け引きの末、ピストリウス独国防相は募集活動の進捗状況について6ヶ月ごとに独連邦議会(下院)に報告することに同意した。もし志願兵を十分に確保できなかった場合、議員らは強制兵役の対象者を無作為に抽選で選ぶ案など、他の選択肢の検討を求められることになる」

     

    当初は志願制であるが、募集が定数に満たない場合、徴兵となる。

     

    (2)「合意を発表したピストリウス氏は、欧州諸国がドイツに注目しているのは、今後数年にわたってドイツが軍の装備刷新に数千億ユーロを投じるだけでなく、兵員の拡充に取り組んでいるからだと強調した。「これらすべてが成功すると強く確信している」と述べた。メルツ独首相は5月に就任した際、ドイツ軍を欧州で最も強力な通常戦力にすることを約束していた。軍当局は、ドイツ連邦軍の規模を現在の18万2000人から2035年までに26万人に増やす必要があると述べている。また、危機時に招集可能な予備役も6万人から20万人へ拡大する必要がある」

     

    現在の定員18万2000人が、2035年までに26万人に増える。予備役も6万人から20万人へ拡大する必要があるという。

     

    (3)「ドイツは11年に徴兵制を停止した。メルツ氏率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)と連立相手の中道左派ドイツ社会民主党(SPD)が結んだ連立協定は、新たな志願制の兵役制度の導入を約束していた。しかし、新たな兵役制度の法制化は難航してきた。CDU内には、欧州の緊迫した安全保障状況を考えると、志願制だけでは不十分だと警告する声が多い。一方、平和主義が根強いSPDは徴兵制の導入を求める声に抵抗してきた。両党は10月に合意に達したかに見えたが、ピストリウス氏が合意内容のいくつかの要素に不満を示したため合意は頓挫していた

     

    連立政権のCDUとSPDでは、徴兵制への意見が食い違っている。CDUは、徴兵制やむなしであるが、SPDが徴兵制へ抵抗してきた。それがようやく合意した。

     

    (4)「11月12日夜に取りまとめられた新たな合意によれば、26年1月から18歳全員に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付されることになる。男性は、法律により回答が義務付けられる。女性は任意となる。これは以前の兵役制度が男性のみに適用されていた名残である。性別に関する規定を撤廃するには憲法改正が必要で、連邦議会で3分の2の賛成が必要となるが、現在の連立政権ではその確保は困難だろう。質問票に回答した後、若年男性全員は、たとえ従軍する意思がなくても身体検査を受ける必要がある」

     

    26年1月から18歳全員の男女に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付される。男性は回答を義務づけるが、女性は任意となる。女性の徴兵は憲法改正が必要。若年男性全員は、身体検査を受ける義務がある。

     

    (5)「ピストリウス氏は、能力がある若者全員の招集が必要となりうる危機に備えるために、こうした検査が重要だと強調した。同氏は13日、検査によりドイツの若い男性の「全体像を把握」することができ、これは「防衛能力を評価する上で不可欠だ」と述べた。ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くする補助などの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている」

     

    ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くするなどの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている。

     

     

    テイカカズラ
       

    ドイツ経済が低迷している。8月失業率は6.3%、失業者300万人という悪条件にある。自動車産業が、EV(電気自動車)不振で大量解雇者を出している結果だ。日本は、EV戦略でドイツのように特化せず、HV(ハイブリッド車)に傾斜していたことでEV被害を受けずに「命拾い」した。そうでなければ、ドイツの二の舞を演じていた。日本の8月の失業率は2.3%、失業者数は169万人だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)は、「ドイツ、失業者10年ぶり300万人超え 自動車不振でリストラ連鎖」と題する記事を掲載した

     

    欧州最大の経済大国ドイツで、景気の低迷が雇用不安に波及しつつある。8月の失業者は10年ぶりに300万人の大台を超えた。エネルギー高が直撃した製造業でリストラが相次ぎ、日本のライバルとなる自動車産業は競争力低下に危機感を強める。

     

    (1)「メルツ首相は9日、「もし自動車産業が無くなれば、ドイツ全体が貧しくなる」と南部ミュンヘンで開催した国際自動車ショーで、産業競争力の衰えに危機感をにじませた。安価で性能が高い中国車が台頭するなか、国内雇用を支える自動車産業への後押しを約束した。欧州で中国車の販売シェアは高まっており、中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)は販売店を増やして攻勢をかける」

     

    ドイツ首相は、「自動車産業が無くなれば、ドイツ全体が貧しくなる」と発言したが、事情は日本も同じ。日本は、トヨタ自動車がEVの方向を誤らなかったから救われた。「トヨタ様々」である。

     

    (2)「独連邦雇用庁によると、8月の失業者は302万5000人と2015年2月以来となる300万人を突破した。夏季休暇に伴う季節要因が押し上げた側面はあるが、前年同月比でも15万3000人増えた。ウクライナ危機で高インフレに見舞われた22年以降は増加基調が鮮明だ。雇用環境は業種で明暗が分かれる。社会保険の義務を負う従業員の数をみると、製造業は6月時点で前年同月比14万人減少した。鉄鋼業などは11万人の喪失だ。対照的に人手不足が解消できない医療や介護・社会福祉は雇用をそれぞれ6万〜7万人ほど増やした」

     

    自動車不振は、主要材料の鉄鋼の需要減へと波及している。鉄鋼も大量の解雇者を出している。

     

    (3)「失業者の増加は、ドイツ企業の厳しいリストラを映し出す。失業の大半は移民などの外国人ではなくドイツ人で、かねて企業の景況感調査でも雇用削減による実体経済への悪影響が指摘されていた。実際、リストラの動きは連鎖している。大手会計事務所EYの調査では、25年6月までの1年間でドイツの自動車産業で従業員5万人あまりが削減された。ドイツ産業全体における人員削減数の45%を占める規模だ。ドイツ経済研究所(IW)の集計によると、自動車関連の雇用は30年までに9万人ほど純減する見通しだ。フォルクスワーゲン(VW)が30年までに独国内の従業員3万5000人を削減する計画を公表するなど、部品大手も含めてリストラ計画が進む。海外で現地生産する流れもあり、ドイツからの自動車輸出は減少する。VWは中国事業が振るわず、トランプ米政権による高関税政策も逆風だ。加えて、欧州でEVの販売が失速した」

     

    失業の大半は、移民などの外国人ではなくドイツ人である。自動車や鉄鋼では、ドイツ人が主力労働者になっている。

     

    (4)「ドイツ経済は25年、東西統一後で初となる3年連続のマイナス成長となるかの瀬戸際だ。プラス成長を維持する見通しだが、実質成長率はゼロ%近辺の低空飛行となる可能性が高い。直近46月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0.%減だった。ドイツはGDPに占める製造業の割合がおよそ2割で、フランスなどの1割台より高い。ウクライナ危機に伴うエネルギー高は製造コストの上昇に直結した」

     

    ドイツは、GDPに占める製造業の割合がおよそ2割である。日本も同じレベルである。日独の産業構造は、似通っている。

     

    (5)「ドイツの産業は輸出依存型。サービス業が発達していない分だけ、影響は深刻だ。景気をてこ入れするため、メルツ政権は大規模な財政支出を計画する。金融市場では景気回復に期待が高まるものの、9月に入ってから成長率見通しを下方修正する動きが相次ぐ。独ハレ経済研究所(IWH)は26年の実質成長率が0.%との予測を示した。IWHによると企業の破産件数も新型コロナウイルス禍前の平均より1.5倍の高水準で、景気回復は遅れている」

     

    ドイツの輸出依存度は、対GDP比33.53%(2023年)と日本の16.99%(同)をはるかに上回っている。これは、ドイツ経済が海外経済動向に大きな影響を受けることを意味する。現状のドイツは、厳しい国際環境下にある。

     

    (6)「ドイツは少子高齢化で慢性的な人手不足感が強く、これまで景気の下降局面でも雇用は安定していたが、長引く低迷で企業は解雇を避けられなくなってきた。5月にドイツ首相に就任したメルツ氏には大きな試練となる。ショルツ前政権は景気不安が政局に飛び火し、連立の枠組みが瓦解した。既存政党への不満から極右ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し、直近の世論調査では政党別の支持率で首位を争う。西部ノルトライン・ウェストファーレン州で14日実施した地方選でもAfDは躍進した」

     

    ドイツ企業は、これまで中国市場で安定した利益を上げてきた。現在は、状況が一変している。中国が過剰生産に落込んでおり、価格が暴落している結果、ドイツ企業も利益を出せる状況でなくなっている。

     

     

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    ドイツは2024年に、34年ぶりに日本を抜いて世界最大の対外純資産国となった。だが、ドイツの対外投資は証券投資が主体。日本の対外投資は、直接投資で相手国へ根付いたもの。証券投資とは性格が異なるのだ。こうした結果、ドイツの世界1は長続きせず、日本が首位へ復帰するとみられている。

     

    『ロイター』(5月30日付)は、「ドイツ、日本に代わる対外債権国首位の座はつかの間か」と題する記事を掲載した。

     

    米国が、世界の貯蓄の大半を吸い上げる中で、世界貿易と投資の巨大な不均衡を安定させることは、市場にとって最大のテーマの1つとなってきた。貿易戦争が繰り広げられている今は、なおさらだ。日本の財務省が今週発表したデータは、世界を俯瞰(ふかん)する人々にとって注目すべき節目を示すものだった。ドイツが24年、日本に代わって世界最大の債権国の座に就いたことを浮き彫りにしたのだ。

     

    (1)「首位交代には、為替レートも影響しているとは言え、これは世界の貯蓄、投資、人口動態について多くを物語っている。債権国首位の座は、低成長と国内の投資機会の欠如が生み出したものであり、ドイツにとってありがたくはない。債権国トップ3のドイツ、日本、中国には重要な共通点がある。いずれも高齢化が進む大国であり、人口はピークを越えて今世紀末まで減少し続ける見通しだという点だ。それに伴い内需は圧迫され、過大な貯蓄プールが生み出されるだろう」

     

    債権国首位の座は、低成長と国内の投資機会の欠如が生み出したものだ。ドイツ、日本、中国には、重要な共通点がある。高齢化が進む大国であり、人口はピークを越えて今世紀末まで減少し続ける見通しだ。

     

    (2)「ドイツ銀行のチーフエコノミスト、ロビン・ウィンクラー氏が指摘する通り、ドイツと日本の投資は、性質を大きく異にする。ドイツと日本はいずれも、米国および諸外国に対する慢性的な貿易黒字国であり、内需が低迷する中で輸出に成長を頼ってきた。そして両国とも、その結果生じた貯蓄の大半を国外投資、特に成長の速い米国に投じてきた。この資金フローは、その過程で10年以上に及ぶ米国の資産ブームとドル高を生んだ。トランプ政権は、ドル高のせいで米製造業の競争力が打撃を被り、高給の職が奪われたと主張している。トランプ氏によれば、輸入関税、そしてドルの下落がこの不均衡の是正に役立つ見通しだ」

     

    ドイツと日本の対外投資は、性質を大きく異にする。ドイツは、証券投資である。日本が、直接投資である。ドイツは、相手国へ根付かない投資で、金融情勢の変化で変わり身が早いのだ。

     

    (3)「ウィンクラー氏によると、長年にわたる日本の貿易黒字の大半は企業買収や海外での工場建設、雇用創出といった直接投資に振り向けられてきた。これに対してドイツの貿易黒字は、主に株や債券などの証券投資に回っている。これは直接投資に比べてはるかに「粘着性」が弱く、容易に反転し得る。ドイツにとって、このことは諸刃の剣だ。ウィンクラー氏は「ドイツは、特定の国々に対する貿易黒字がその国々で直接雇用を創出していないとの批判にさらされやすい」と記し、目下の貿易交渉において問題にされかねないと指摘している」

     

    日本は、貿易黒字の大半を企業買収や海外での工場建設、雇用創出といった直接投資に振り向けている。相手国経済へ貢献している。ドイツは、証券の利回りや相場推移で居所を変えていく投資だ。

     

    (4)「ウィンクラー氏は、「直接投資の割合が低いことにより、ドイツの対外純資産は日本よりも流動的で代替可能性が高い」とし、「このことは、地政学的な分裂が進んでいる時期には有利に働く。必要となれば、対外資産を速やかに再配置したり、場合によっては引き揚げたりすることが容易だからだ」と説明した」

     

    ドイツは、地政学的変化に合せて簡単に撤収できる身軽さがある。このことが、ドイツの対外純資産残高に流動化をもたらす。

     

    (5)「欧州の資本ニーズは急速に高まっており、それに伴って投資家と貯蓄者にとって域内に投資するインセンティブも強くなった。これは、米国の金融市場に重大なリスクを生じさせる。そのリスクは、トランプ政権が後押ししているとみられるドル安だけではない。米国債の外国投資家の中で、最大グループは日本の投資家だが、欧州も2012年以来、海外の株式に7兆ドルを投資している。多くの争点を抱える米国と欧州の貿易交渉は、期限がわずか6週間後に迫っているが、その結果がもたらす影響は双方ともに非常に大きいだろう」

     

    欧州の資本市場が注目されている。米国金融市場が、トランプ関税で流動化している結果だ。ドイツは、この機会を捉えて、欧州市場への証券投資を増やす可能性もある。日本は、これまでの超低金利で海外へ流出していた資金が、国内へ還流している面もあろう。これが、日本の対外純資産残高で2位へ後退した面もあろう。

     

    テイカカズラ
       

    ドイツ産業連盟(BDI)は28日、ドイツは深刻な経済危機に見舞われていると指摘し、2025年のGDP成長率がマイナス0.1%との見通しを示した。ドイツ統一後初めて、3年連続のマイナス成長となる。

    ドイツ企業の景気見通しは、1月に一段と悪化した。来月の選挙を控え、同国の速やかな成長回帰はさらに疑問視される格好となった。Ifo研究所が27日に発表した1月の期待指数は84.2と、前月の84.4から低下した。

    『ロイター』(1月28日付)、「ドイツは深刻な経済危機、25年GDPはマイナス0.1%へー産業連盟」と題する記事を掲載した。

    ドイツ産業連盟(BDI)のペーター・ライビンガー会長は、ベルリンで「状況は非常に深刻。特に産業の成長は構造的な打撃を被っている」と指摘。危機は、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻が影響しただけではないと語った。

    (1)「原因は国内要因であり、政府が取り組めなかった18年以来の構造的弱さの結果だと述べた。「近代的なインフラや経済の転換と耐性への公共投資が早急に必要」とし、官僚主義の是正、エネルギー価格の引き下げ、ドイツの技術革新と研究を強化するための明確な戦略も求めた。同会長はドイツが再び自信を持って欧州連合(EU)で指導的役割を担い、欧州がより戦略的に自立することが重要だと主張した」

    ドイツ経済は、25年もマイナス成長のリスクを抱えている。原因は、国内要因としている。財政赤字制約が大きく響いており、インフラ投資が遅れている。問題は、基本法(憲法)の財政制限条項にある。これが、ドイツ経済の立ち直りを遅らせている。

    (2)「トランプ米大統領の返り咲きと関税警告の影響で、25年のGDPが予想の0.1%減ではなく約0.5%減に下振れするリスクがあるとの認識も示した。「最も重要なことは、取引関係を構築し、われわれにしか提供できない戦略的に重要な能力を確立することだ」と述べた」

    25年は、トランプ関税で引上げられればマイナス0.5%成長に落込むリスクもある。ドイツ独自の製品をつくり出すことが経済立直しの基本としている。

    『日本経済新聞 電子版』(1月15日付)は、「ドイツ経済、2年連続マイナス成長に 中ロ依存が裏目」と題する記事を掲載した。

    欧州最大の経済大国ドイツが景気低迷から脱せない。連邦統計庁が15日発表した2024年の実質GDPは暫定値で前年比0.2%減だった。マイナス成長は2年連続だ。ロシアの資源や中国市場への依存が構造不況を招き、2月の総選挙では経済政策が最大の争点になる。

    (3)「マイナス成長はドイツ政府や独連邦銀行(中央銀行)も予測していた。連邦統計庁は「循環的かつ構造的な圧力が経済成長を妨げた」と指摘した。2年連続は景気低迷から「欧州の病人」と呼ばれていた02〜03年以来で、これまで東西ドイツの統一後では1度しかなかった。ドイツ経済はフランスやイタリアなどユーロ圏20カ国GDP全体のおよそ3割を占める。2%台後半の成長が見込まれる米国や1%程度のフランスなどと対照的に、景気回復の遅れが一段と鮮明になった」

    2年連続のマイナス成長は、統一ドイツ後では一度しかない。25年もマイナス成長であれば、ワースト記録を塗り替える。

    (4)「最大の理由は、ロシアによるウクライナ侵略だ。安価なロシア産ガスの途絶が製造業を直撃し、生産が落ち込んでいる。主な貿易相手国である中国も内需が振るわない。主力の機械や自動車を中心に24年の輸出は0.8%減となった。インフレ鈍化で回復するはずの個人消費も鈍い。家計の最終消費支出は0.3%増にとどまった。年末のクリスマス商戦も、物価高を考慮した実質売上高は前年比でゼロ%程度の横ばいとみられている。景気不安から節約志向が強まり、家計の貯蓄率はコロナ禍前の水準を超えてきた。欧州中央銀行(ECB)は24年6月から利下げを始めたものの政策金利は3%台と歴史的に高く、賃上げが進んだ分のお金は消費ではなく銀行預金にとどまりやすくなった」

    ドイツ経済の落込みは、中ロ依存度の高さが裏目に出たことだ。安価なロシア産ガスの途絶と中国への輸出不振である。かつての好景気を支えた要因が、すべてマイナスになったのだ。消費者の節約意識が強く、貯蓄に励んでいる。

    (5)「ドイツ産業界からは悲鳴が上がる。基幹産業である自動車の業績が悪化し、フォルクスワーゲン(VW)やボッシュは工場の稼働停止や大規模なリストラの検討に追い込まれた。ウクライナ危機のエネルギー不安は景気不安に変わり、倒産件数も増加基調にある。自動車だけではない。独化学工業会によると、同じく基幹産業の化学・製薬は24年の年間売上高が2%減った。「電気コストが国際的に高すぎで負担軽減に向けた法人税改革も必要だ」(同工業会)と訴える」。かつて2年連続のマイナス成長になった02〜03年と比べ、足元は低い失業率と景況感の冷え込みが特徴だ。高齢化に伴う労働力不足が深刻で、皮肉にも低い失業率がドイツ経済の供給力の限界を映し出す」

    高齢化に伴う労働力不足が、低い失業率と供給力の限界を映し出している。ドイツ経済は、人口高齢化で潜在成長率が1%へ落ちている。それでも、日本より高い潜在成長率である。ドイツは、政策ミスが明らかだ。

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