ドイツのショルツ首相は25日、訪問先のインドでモディ首相と会談し、安全保障政策で協力を深めることで合意した。ドイツ製潜水艦のインド輸出も視野に入れている。ドイツ海軍の艦隊が9月に、台湾海峡を通過した。ドイツは、アジアの安保体制にかかわり、中国をけん制する姿勢が一段と鮮明にしている。
インドのモディ首相は10月24日、中国の習近平国家主席と会談した。両首脳の正式会談は5年ぶり。2020年にインド北部ラダック周辺で衝突して以来、冷え込んでいた両国の関係が改善し始めたことを示唆した。
インドは、中国との緊張緩和を進める一方で、ドイツの軍事協力も強化する「二刀流」外交を行っている。インドは、非同盟が外交原則であるものの本質的な「中国警戒」が外交基本にある。
『日本経済新聞 電子版』(10月25日付)は、「ドイツがインドと安保協力、首脳会談 潜水艦輸出も」と題する記事を掲載した。
(1)「独印両国は25日、ニューデリーで「政府間協議」を開いた。両国首相のほか、経済・気候相など主要閣僚のほぼ全員が参加する実質的な合同閣議となった。安保・通商・気候変動・人材交流など広範な分野での協力を確認し、双方が合意文書に署名した。具体的には、外交・安保での連携強化に加え、欧州連合(EU)とインドの自由貿易協定(FTA)の交渉加速や、高度人材のEUでの受け入れなどが盛り込まれた」
ドイツは、インドとの幅広い交流を進める基本方針を立てている。日独協力の輪をさらにインドへ広げる戦略である。ドイツ海軍艦艇が、台湾海峡を通過するなどインド太平洋戦略へ肩入れしている。
(2)「ショルツ氏は協議前、中国の南シナ海などへの海洋進出を批判し「対立が沈静化することを願う」と語った。モディ氏も「インド太平洋は世界の安定にとって極めて重要だ」と応じた。ドイツは協議に先立って、対インド政策の基本指針となる「インド集中」と題する文書を閣議決定した。インドを「地域安定に影響力のある国」と位置付け、「緊密に協力」すると公約した。さらにドイツは「信頼できる安全保障上のパートナー」であるとも明記した」
ドイツは、インドを「信頼できる安全保障上のパートナー」であるとも明記した。ドイツの並々ならぬインド接近政策の表れである。ドイツにとって、インド太平洋地域は経済発展の重要地域である。それだけに、独印関係の強化は重要である。
(3)「ドイツ海軍は現在、インド太平洋に展開中で、26日はインド南部ゴアに寄港する。こうした軍事交流を拡充するほか、潜水艦のインド輸出を視野に入れる。ドイツはスペインとともに通常型潜水艦6隻の受注を目指しており、交渉は最終局面とされる。ドイツは冷戦中にインドに潜水艦を納入した実績がある。再度の輸出なら軍事面での協力が一気に深まるとドイツ側は期待する」
ドイツ海軍は26日、インド南部ゴアに寄港する予定だ。こうした、セレモニーを通して関係強化を図る。ドイツは、潜水艦のインド輸出を視野に入れている。
(4)「ドイツのインド接近には3つの狙いがある。まず、アジア安保に積極的にかかわり、中国をけん制する。2つ目は中国に依存する経済のデリスキング(リスク低減)だ。今回は独企業の経営陣が一堂に会する「アジア・パシフィック会議」をインドで同時開催した。ハベック副首相兼経済・気候相は日本経済新聞などに対し「独企業は進出先を多様化させる必要がある」と語った」
ドイツのインド接近目的は、これまでのドイツの中国依存度を減らして、インドとの関係構築にある。インドは自由主義圏であり、政治リスクがないのだ。
(5)「3つ目は、インドとロシアの軍事交流にくさびを打ち込むことだ。ドイツが、フランスやスペインなどと協力しながら、インドへの武器輸出を拡大すれば、インドがロシア依存を減らすのではないかとの思惑がある。もっともグローバルサウスの中核であるインドには、EUになびくつもりはない。モディ氏はショルツ氏に会う直前までロシアに滞在し、主要新興国で構成するBRICS首脳会議に出席していた。印シンクタンクORFのスワティ・プラブ研究員は「典型的なインドのバランス外交」と説明する」
ドイツは、インドへ武器輸出を増やす狙いもある。印ロの固い関係の裏には、インドのロシアへの武器依存がある。ドイツには、時間をかけてインドへ武器輸出を強化する狙いが込められている。
(6)「インドは、国連での対ロシア非難決議案で棄権に回るなど「中立」の立場を貫く。また割安なロシア産石油を買い増し、西側の対ロ制裁の効果を薄めている。今回の独印会談でウクライナ支援を続ける欧州勢との関係を重んじていることを示し、外交上の均衡を保つ狙いがある」
インドは、外交巧者である。非同盟を旗印にしており、外交的利益を得る目的だ。





