誰でも、ドイツは中国と蜜月関係にあると見てきた。ドイツのフォルクスワーゲンが2015年、データねつ造事件を起した際も、メルケル首相はいち早く中国へ飛んで説明。中国から締め出されることを免れた。あの一件こそ、独中蜜月ぶりを世界に見せつけたものである。
ドイツの本心は違ったという。習近平氏が国家主席に就任以来、中国の本心が「権威主義」にあると見抜いて警戒感を持ち始めたという。しかも、気付かれないように一歩一歩、後退してきたと言うのだが。
『日本経済新聞 電子版』(9月4日付)は、「『独中蜜月』の虚実、習体制へ深めた疑心」と題する記事を掲載した。筆者は、日経欧州総局編集委員 赤川省吾氏である。
ドイツ海軍のフリゲート艦バイエルンは8月、インド洋に入った。さっそく海上自衛隊と共同訓練し、在日ドイツ大使館が「対日連携を強化」とツイートした。
(1)「同艦はグアムなどを経て11月に日本に至る。「この航海は我々がインド太平洋地域に真剣に向き合おうとしているとのメッセージ」。ベルリンの執務室に電話をかけるとジルバーホルン国防政務次官は力説した。先んじて軍艦を日本に送った英仏と異なり、ドイツはインド太平洋に領土はない。それでも遠いアジアに海軍を展開するのはメルケル首相らが中国への懸念を深めているからだ」
アジアに領土を持たないドイツが、アジアへ軍艦を送る時代になった。中国の横暴な海外侵攻政策へ、はっきりと「ノー」という意思表示するためだ。第二次世界大戦の敗戦国ドイツが、過去の歴史の影を振り切って前向きだ。韓国へ見せてやりたいほどである。日本はまだ、過去に縛られている。日米同盟や「クアッド」が、過去のくびきを切っているはず。韓国には、それが理解できないのだろう。
(2)「対中政策の潮目は7~8年前に変わっていた。2014年、南シナ海で中国と対立する東南アジアにメルケル氏は接近し、各国首脳との会談を重ねた。外交・安全保障政策では中国と距離を置く――。その一歩を踏み出したのだ。次にドイツ外務省が組織再編に動き、日韓豪などの担当部署を新設。中国以外のアジア太平洋に目配りする体制を整えた。さらに閣僚の外遊で中国優先をやめた。18年、与党重鎮アルトマイヤー経済相はアジアの初訪問先に日本とインドネシアを選んだ。約1週間のアジア歴訪に同行取材中、政府専用機の大臣執務室で食事しながら2人きりで話し込む機会があった。印象的だったのは「日本は価値観をともにする戦略的なパートナー」と何度も繰り返したこと。中国からの招待には、あえて応じなかった、という」
ドイツは、習近平氏が国家主席に就任以来、徐々に外交姿勢を変えてきたという。習氏の民族主義を嗅ぎ取り、その危険性に気付いたのだ。ドイツは、ヒトラー民族主義の苦い思いがある。それだけ敏感に反応している。
(3)「なぜドイツは段階的に中国離れを図ったのか。中国と深く交流するというドイツの対中政策の指針は胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席と温家宝首相の胡・温体制の時期に確立した。メルケル首相が政策決定した、とされる。その指針が12年、習近平(シー・ジンピン)体制発足で揺らぐ。「対話で民主化支援」などの欧州流は通じない。「一帯一路」で欧州を切り崩すなど覇権主義がちらついた」
外目に明らかであったのは2018年、北京で開催された「一帯一路」シンポジュームで、EUと中国は物別れになった。EU各国は、声明文に調印せず帰国したほど。これ以来、EUは一帯一路に背を向けてきた。
(4)「懐疑心を強めたドイツは軌道修正したものの、急ハンドルは避けた。「ドイツ外交は継続性を重んじる。政策を急転換するわけにはいかなかった」。独紙の元北京特派員で、今は企業経営者向け中国情報誌チャイナ・テーブル編集長というドイツ屈指の中国通、フィン・マイアーククック氏は指摘する。日本は最近まで「ドイツと中国は蜜月」とみていた。なぜ見誤ったのか。まずドイツの中国離れがゆっくりで、変化に気づかなかった。つぎに日独のすきま風で目が曇った。安倍前政権の発足当初、ドイツは財政政策や歴史認識で立場の異なる日本を公然と批判。その姿勢が「親中」との印象を強めた」
ドイツは、中国へ接近する一方、日本を素通りしていた。今になって、中国の民族主義に気付かなかったことを恥じ、カムフラージュしているのではなかろうか。そんな感じも否定できないのだ。
(5)「しかも、外交対話にこだわる欧州流は、デカップリング(分断)をいとわない米国流と温度差がある。「国際社会では時に対立もやむを得ない。ただし非常に丁寧に、できれば外交的に共通の利益を探るべきだ」と社会民主党のシャーピング元党首は取材に語った。アフガニスタンの駐留失敗で欧州は自信を喪失した。しばらく対中批判を手控えるかもしれない。それでも誤解は禁物だ。対中政策は警戒モードで「輸出に響くから何もしない」という事なかれ主義ではない」
ドイツの立場は、相当な強硬姿勢を見せている。人権弾圧の中国へ妥協しないという姿勢だ。昨年前半までは、かなりの中国寄りであった。ファーウェイの「5G」導入でも、最後までファーウェイへ拘りを見せ、米国トランプ政権を困らせていた。本欄でも、当時の状況をつぶさに報じている。
(6)「9月26日はドイツ議会選。次期政権は人権重視だろう。先取りするように財界は中国などの強権国家を非難する声明を発した。「いまの時代は何も言わないことがリスク」との声が独企業から漏れる。翻って日本は強権国家にどう向き合うのか。決断の時が迫る」
ドイツは、中国経済の凋落がはっきりしてきたので、「負け馬に乗らない」という便宜的な姿勢がないだろうか。26日のドイツ総選挙の結果は注目である。「反中国」の緑の党が、政権に参加できるかどうかである。




