ロシアは、経済制裁によって欧州への原油輸出が先細りになってきた。このマイナス分を埋めるべくインドへ接近している。3月31日には、ロシア外相が訪印したので、この問題が議論されると見られる。
インドは、対中国への安全保障のため「クアッド」(日米豪印)に参加している。西側諸国が一致してロシア制裁を行なっている中で、インドがロシアを救済するような取引を行なうのは批判を呼んでいる。インドは、国連における「ロシア非難決議」で棄権した。
『ブルームバーグ』(3月31日付)は、「ロシア、インド向けに原油の大幅な値引き販売を提案-関係者」と題する記事を掲載した。
ロシアは国産原油を大きく値引きしインドに直接販売することを提案している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
(1)「ウクライナに侵攻したロシアに対し国際社会が制裁を強める中で、ロシアはインドによる原油購入を促そうと、ウラル原油を侵攻前の価格と比べ1バレル当たり最大35ドル安く提供しようとしている。極秘に交渉が行われているとして関係者が匿名を条件に語った。ウクライナで戦争が始まってから、原油価格の指標である北海ブレントは10ドルほど値上がりしており、ロシアが提示する値引きは現行水準からみると極めて大きなものとなる見込み。原油の売買交渉は政府間で行われていると関係者は説明した」
インドは、ロシアからの武器輸入でトップになっている。国連決議で「ロシア非難」に参加しなかった理由として、この武器輸入が上げられている。インドは,ここでロシアへ恩を売れば、武器輸入でメリットがあると期待しているのであろう。
(2)「国際的な圧力や制裁を無視し、ロシア産原油への購入を増やそうとしている国は少ないが、アジア2位の石油輸入国であるインドは原油調達でロシアに傾斜。二国間の直接売買は、ロシアのロスネフチと石油精製でアジア最大手のインド石油が関与する見通し」
インドは、西側諸国が結束してロシアへ圧力をかけている中で、大幅なディスカウントで原油を輸入しようとしている。一種の「火事場泥棒」のようなものだ。インドの品格を傷つける行為である。
『ブルームバーグ』(3月30日付)は、「ロシア、インドにSWIFTに代わる決済手段の利用提案-関係者」と題する記事を掲載した。
インド政府はロシアとの2国間決済について、国際銀行間通信協会(SWIFT)国際決済ネットワークに代わりロシア中央銀行が開発したシステムを利用するよう同国側から提案を受け、それを検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
(3)「インドは、厳しい国際的制裁を受けるロシアから原油や武器を引き続き購入したい意向。ロシア側の提案には、メッセージシステムSPFSを利用するルピーとルーブル建ての決済が含まれるという。最終的な決定は下されておらず、ロシアのラブロフ外相が3月31日から2日間の日程でインドを訪れる際にこの問題が議題に上る可能性がある。ロシア中銀の当局者が詳細を詰めるため来週インドを訪問する公算が大きいとも、この関係者は述べた」
ロシアとインドは、SWIFTを逃れロシアのメッセージシステムSPFSを利用するという。このシステムは、SWIFTから取引情報を得ている筈だから、無傷で「スルー」は無理であろう。米国が、インドを制裁するよりもロシアを制裁する形で、何らかの行動に出ると見られる。
『ブルームバーグ』(3月31日付)は、「米国と豪州、インドを批判-対ロ制裁を骨抜きにする提案検討で」と題する記事を掲載した。
米国とオーストラリアは、対ロシア制裁の骨抜きにする同国案を検討しているとしてインドを批判した。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の溝の深まりが浮き彫りになった。ロシアのラブロフ外相は31日にインドのニューデリーに到着する。
(4)「ブルームバーグはインドが国際銀行間通信協会(SWIFT)国際決済ネットワークに代わり、ロシア中央銀行が開発したシステムを利用するよう同国側から提案を受け、それを検討していると、事情に詳しい関係者を引用して伝えていた。レモンド米商務長官は30日、ワシントンで記者団に、「今こそ歴史の正しい側に立って米国および他の多数の国々と連帯するとともに、ウクライナ国民と共に自由と民主主義、主権のために立ち上がり、プーチン大統領の侵略への資金供給や後押し、支援を控えるべきだ」と語った。同長官はインドとロシアの協議の報道について「極めて遺憾」とした上で、詳細は見ていないと説明した」
インドには、インドの事情があるとしても、自由陣営の一員で中国と鋭く対立している現在、自国の利益だけ考慮した行動は控えるべきだ。
(5)「オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は記者ブリーフィングで、「第2次世界大戦以降、われわれが堅持してきたルールに基づくアプローチを守るため」、民主主義諸国が協調することが重要だと述べた」
インドが、ロシア産原油を直接取引するならば、米国も見逃す訳にはいくまい。ロシア制裁という形を取るのだろう。