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日英両国は、太平洋戦争で敵味方に分かれて熾烈な戦いをした。75年を経て、英国ラ-ブ外相から「日本は親密で永続的友人」との声明が出るまでに関係改善が進んでいる。これは、後で言及するように日英両国にとって、歴史的な意味を持つ。

 

日英同盟(1902年)によって、アジアの日本は、大英帝国の威光を背景に世界外交の檜舞台に立つことができた。それが太平洋戦争で切断されたが、今再び英国との外交関係を蜜にし、インド太平洋における安全保障をより確かなものにするべく、世界史の再構築に寄与しようとしている。

 

第二次世界大戦後の大英帝国は、多くの植民地を失った。現在は、EU(欧州連合)からも脱退して、孤塁を守っている形である。だが、日本とのパートナーシップを固め、これからの世界で新たな地歩を固め再出発を期そうとしている。それだけに、日英の新たな結びつきは、かつての日英同盟同様に、日本の経済や安全保障において大きな力を発揮するだろう。

 


『大紀元』(2月8日付)は、「日英22で『友情』確認、英国はインド太平洋地域を重視」と題する記事を掲載した。

 

日本と英国は23日、両国の外相・防衛相会合(22)を開催し、安全保障における協力と地域情勢について話し合った。英国側は日英関係の親密さをアピールし、インド太平洋地域のプレゼンス強化を表明した。英国はEU離脱に伴い、新たな市場の開拓を図っている。日本は地域へ英国を引き込み、経済と外交の両面で中国に対抗する狙いがある。

 

(1)「茂木敏充外相と岸信夫防衛相は、ドミニク・ラーブ外相とベン・ウォレス国防相と第4回日英外務・防衛閣僚会合を映像形式で行った。英国の声明によれば、ラーブ英外相は日本を「英国の主要な安全保障パートナーにして、親密で永続的な友人」と呼んだ。また、英国は「インド太平洋を重視」し、海上航行の安全と自由貿易は両国の「共通の優先事項と戦略的利益」だと述べた。日本の声明では、本年中に空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群をインド太平洋地域に展開するという英国の発表に歓迎の意を表した」

 

今後の世界経済の発展余地は、欧州からアジアへ移っていることが世界の共通認識である。英国が、歴史的につながりの深い欧州から抜け出て、アジアへ発展の舞台を移すことは歴史的な決断であろう。その核として、日本とインドを選んだことは確かである。日英関係が、日米関係と同様に堅固なものになることは、日本の将来にとっても極めて重要である。

 


(2)「日英4大臣は、安全保障環境が大きく変化し基本的価値観が挑戦にさらされている中で、戦略的パートナーである日英両国が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて協力していくことを確認した。また、中国共産党政権による香港での人権抑圧や、新疆ウイグル自治区の人権状況について「重大な懸念」を表明した。日本側の声明によれば、双方は東シナ海・南シナ海情勢における懸念を両国間で共有した。また、中国海警法を例に挙げ、「力による一方的な現状変更」「国際法に基づかなければならない海洋権益の主張」について意見交換して重大な懸念を表明した」

 

世界の軍事的攪乱要因は、中国の海洋進出である。この新興勢力が、世界に及ぼす悪影響をどのようにして遮断するか。それは、「同盟」の力を借りるしか道はない。英国は、EUを去ったがNATO(北大西洋条約機構)の重要メンバーである。英国や米国との共同戦略によって、「アジア版NATO」を結成して、中国へ軍事対抗するのが、最も賢明である。

 

(3)「英国は、ブレグジット(脱欧州)の成果として、インド太平洋地域で有力なパートナーを探しているとの見方がある。ヨーロッパ外交関係委員会のマニシャ・ロイター氏は、独『ドイチェ・ヴェレ』の取材に対し「英国はEUの多くの国際貿易協定を見直し、安全保障や環境変動そしてデジタル化の方面で協力し合えるパートナーを探している」と述べた。「英国も他のヨーロッパ諸国と同じように、このようなパートナーの多くはインド太平洋地域にいると気づいている」と付け加えた」

 

昨年11月、ロンドンを拠点とするシンクタンク「ポリシーエクスチェンジ」は、英国が「インド太平洋地域で今まで以上に大きな役割を果たすべきである」と主張するレポートを発表した。日英の協力関係強化は、まさに前記のレポートに合致する動きであろう。同時に、英国は元植民地のインドが秘める発展性に注目している。2027年には、中国を抜いて世界一の人口大国になる。このインドとの関係強化も、英国の発展に寄与することは間違いない。

 

(4)「英国王立防衛安全保障研究所のべルル・ナウエン研究員は、『ドイチェ・ヴェレ』の取材に対し、「英国は、この地域の防衛と外交的プレゼンスにより多くの資源を割り当てている」と語った。彼女は、英国がすでにブルネイとシンガポールに軍事施設を建設していることを踏まえ、軍用船や航空機の配備・運行、そして防衛関連の外交を展開させることで「より持続的な関与」ができると話した地域安全保障に対する取り組みはこれにとどまらない。英国は拡張政策を掲げる中国共産党に対抗するため、空母打撃群を南シナ海で通過させ、米海軍と自衛隊との合同軍事演習を行う予定だ。さらに日米豪印による安保協力枠組み「クアッド(QUAD)」への参加も検討すると報じられている」

 

英国は、すでにブルネイとシンガポールに軍事施設を建設している。これは、防衛面でもアジアへシフトしつつあることを示している。米国が、日米豪印による安保協力枠組み「クアッド(QUAD)」へ、英国の参加も検討中と報じられている。これが実現すれば、英国は名実ともにブレグジットが完成する。欧州に本籍を置き、アジアが「現住所」となろう。

 

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