中国の「安売り商法」が、花のパリで肘鉄をくれられたも同然の事態が起った。中国発のネット通販大手、SHEIN(シーイン)が、意気揚々と乗り込んだパリで、罰金を課されたり、他の店舗が抗議して撤退するなどの騒ぎを巻き起こし、シーイン自体がやむなく撤退する羽目に陥った。これは、完全に「中国式・薄利多売商法」が、欧米の文明基準(ESG・知財・労働・税制)に「正面から否定された」と言える不名誉な結果に終わった。
『日本経済新聞 電子版』(8月17日付)は、「中国SHEIN、薄利多売モデル崩れ多額の罰金 免税撤廃の米欧で赤字」と題する記事を掲載した。
中国発のネット通販大手、SHEIN(シーイン)の成長に陰りが見え始めた。米国や欧州が小口輸入品の免税措置を相次ぎ終了したことで、増収ペースが鈍っている。各国の規制違反で巨額の罰金を科されるリスクもある。
(1)「広東省広州市に中小の縫製工場が密集する地域がある。通称「シーイン村」だ。8月中旬、現場を歩くと厳しい現状を物語る証言が相次いだ。「春節(中国の旧正月)明けまでチームに30人以上いたが、今では半分以下だ」。シーインの下請け工場で働く男性はこう明かす。受注量も単価も減り、多くの同僚が職場を去った。Tシャツ1枚の縫製で得られる報酬は2〜3元(約50〜70円)。昨年より1元下がった」
シーインの製造現場は、Tシャツ1枚の縫製で得られる報酬は2〜3元(約50〜70円)だ。低賃金の見本である。
(2)「シーインは、低価格かつ最新の流行を取り入れたデザインの衣類で、多くの若者をひきつけ世界を席巻した。利用者は世界で2億7000万人に上る。競争力の根幹は中国語で「小単快返(少量生産と迅速な追加生産)」と称されるビジネスモデルだ。7500超の協力工場に製品の仕様や納期などを指示し、完成品を集荷して海外へ輸出する。100〜200着の小ロットから生産し、売れるとみれば最短5日で追加生産する」
少量生産と迅速な追加生産が、シーインの「売り」である。これは、低賃金であるから可能になる。
(3)「ビジネスモデルは、急成長の原動力となる一方、大量の衣類の廃棄や劣悪な労働環境、他社の知的財産の侵害などの批判も招いた。これが同社の成長に影を落とす。フランスは9月にも「超ファストファッション」に対し、商品1点ごとに罰金を科す規制を施行する。米ブルームバーグ通信は13日、シーインが28日めどに香港証券取引所に上場する見通しであると伝えた。ただ7月26日に同社が開示した目論見書には訴訟案件がずらりと並ぶ。米連邦取引委員会(FTC)による調査を受けていることも初めて明かし「多額の罰金支払いを科せられ経営に重大な影響を来す可能性がある」と記載した」
シーインは、大量の衣類の廃棄や劣悪な労働環境、他社の知的財産の侵害などの批判も招いた。これは、欧州の「ESG基準」のE(環境)とS(低賃金)に抵触するもので、罰金の対象になった。
(4)「判明しているだけでも、罰金リスクは計300億円に上る。仏データ保護当局の情報処理・自由全国委員会(CNIL)は2025年9月、不正にウェブサイトの閲覧記録データを集めたとして1億5000万ユーロ(約270億円)を科した。別の仏当局も罰金を科している。シーインは争う構えだが、さらに火種はくすぶる。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会や、アイルランドのデータ保護委員会(DPC)も別事案で調査を進める」
罰金リスクは、300億円にも達している。フランスは、シーインを「違法企業」として取締り対象にしている。悪いイメージを与えたのだ。
(5)「目論見書では極端な薄利多売で成長を遂げたことも明らかになった。25年の売上高営業利益率は4%と、「ZARA(ザラ)」運営のインディテックス(26年1月期、20%)やファーストリテイリング(25年8月期、17%)と比べて大きく劣っている。26年1〜3月期の営業利益率は3%とさらに悪化している。発行済み優先株の評価替えに伴う損失もあり、最終損益は9900万ドル(約157億円)の赤字だった」
25年の売上高営業利益率は4%と、ファーストリテイリングの17%を大きく下回っている。度の過ぎた薄利多売が仇になった。
(6)「薄利多売の事業モデルが曲がり角を迎えた要因の一つが、小口輸入品の関税を免除する「デミニミス・ルール」だ。シーインは同ルールを活用し、売上高の6割を占める米欧への輸出を増やしてきたが、25年8月以降に相次ぎ撤廃された。打撃は大きく、先行してデミニミス・ルールが終了した米国における25年の売上高は24年比3%減、26年1〜3月は前年同期比14%減だった。関税を商品価格に転嫁せざるを得ず販売が減った」
シーインは、法の裏をかくビジネスで急伸してきた企業である。抜け穴を塞がれると、途端に勢いを失う。中国企業に共通している弱点である。
(7)「25年11月、鳴り物入りで開店したパリの老舗百貨店、BHVの店舗も撤退が決まった。シーインの出店に反発した有力ブランドが相次ぎ撤退し、百貨店の経営が悪化した。BHVの運営会社は営業権を手放した。米欧以外でも低価格が強みの中国系ECへの締め付けが強まる。シーインが、念願の上場を果たしても、成長の持続に向けては難路が待ち構える」
ESG基準違反のシーインが、パリの一等地に出店したのではイメージはガタ落ちである。他の店舗が、シーインと同格に見られことに抗議して撤退するのは当然であろう。中国の欧州における評価は、未だ低いのだ。



