勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: フランス経済ニュース

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    フランスの株式市場では18日、仏自動車大手ルノーの株価が一時前日比7%高と急騰した。同社が株式を保有する日産自動車がホンダと経営統合に向けた協議に入るとの報道を好感したもの。ルノーは、ホンダと日産の経営統合に前向きのようだ。米ブルームバーグ通信は18日、ルノー関係者の話として「日産に資金支援をするつもりはなく、経営強化の手段を日産自身に見つけてほしいと考えている」と伝えた。また関係者は、日産の経営判断には大株主のルノーの合意が必要だと指摘したという。『日本経済新聞 電子版』(12月19日付)が報じた。

    ルノーは、日産株の43%を保有する筆頭株主だったが、2023年11月に資本関係を見直し、15%ずつの相互出資で合意した。現在は日産への出資比率を引き下げる途上で、35.7%を保有する。ルノー所有の日産株売却先は、日産が決定権を持っている。

    『日本経済新聞 電子版』(12月21日付)は、「ルノーが選んだ独自路線、ソフト開発強化 陰る日仏連合」と題する記事を掲載した。

    四半世紀前、経営危機の日産自動車へ手を差し伸べたのがルノーだった。日産への支配力を強めようとしたこともあるが、ホンダと日産の経営統合に向けた協議が明らかになった今は影を潜めている。日仏連合の結束が弱まった背景には、ソフトウエア開発などを進めたルノーの独自路線があった。

    (1)「ルノーは、日産へ出資するとともにカルロス・ゴーン氏を最高執行責任者(COO)として送り込んだ。大規模な合理化策で日産を再生させ、日仏連合は車メーカーの協業の成功例とも評された。その後、フランス政府の意向も受けてルノーは日産への支配力を強めようとした。背景にあったのは、規模が一定の正義とされる車産業の考え方だ。規模を拡大してブランド力を高め、車両設計などの標準化を通じたコスト削減を進めるには日産を取り込む必要があった」

    ルノーは日産を取り込んで、世界規模の自動車メーカーを目指した時期がある。現在は、「量より質」の経営へ転換している。台数を追わない経営である。

    (2)「ゴーン氏が2018年に逮捕され、ルノーが新たな経営体制になると風向きは変わる。きっかけの一つが、ルカ・デメオ氏が20年に最高経営責任者(CEO)に就任したことだ。独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車も渡り歩いたデメオ氏はイタリア人で、仏企業のルノーにとって初の外国人CEOだ。100年に1度といわれる自動車業界の大転換に、電気自動車(EV)新会社のアンペアを設立するなどルノーを動かした。デメオ氏は経営幹部を入れ替え、規模にとらわれない戦略を相次ぎ打ち出す。ひとつが異業種連携だ。ここ数年でルノーが打ち出した協業先には、米グーグルや半導体大手の米クアルコム、欧州のソフトウエア関連企業など車メーカー以外の名前が並ぶ」

    現在のルノーCEOであるデメオ氏は、同業よりも異業種連携へ舵を切っている。米グーグルや半導体大手の米クアルコムなどだ。

    (3)「デメオ氏の就任前後、赤字だったルノーの最終損益は、ロシアからの撤退があった22年12月期を除くと上昇傾向にある。23年の最終損益は21億ユーロの黒字(約3400億円)と、18年以来の高水準を記録した。直近2年で、同社の株価は約4割上昇した。日産はこの間、ほぼ横ばいだ。中国勢の台頭などで逆風が吹く足元も大崩れはしていない。路線転換の道筋を付けたデメオ氏には昨年、業界紙の米オートモーティブニュースから車業界で最も影響力のあるリーダーに与えられる賞が授与された」

    デメオ氏の戦略転換は、見事に的中した。23年の最終損益は約3400億円で、18年以来の最高益である。

    (4)「ある日産幹部は、「長年連れ添った配偶者が自分だけの新居を求め始めた」と表現する。日仏連合に依存しないというルノーのスタンスは、出資の対等な関係への修正を目指していた日産にとっては好都合でもあり、23年に両社は出資比率を15%ずつにすることで合意した。ただ、新技術を中心に独自の道を歩み、ヒット車も投入するルノーと日産の差は開き続けた。22年に発売した軽EV「サクラ」以降売れ筋の車がない日産は、全従業員の7%に相当する9000人を削減するなど大規模リストラに追い込まれた。今回、救いの手を差し伸べたのはルノーではなくホンダだった」

    ルノーは、日産依存経営から脱皮している。それが、今回の日産・ホンダの統合報道に冷静に対応し、「賛意」を示しているのであろう。

    (5)「今なおルノーは、日産の筆頭株主だ。保有する日産株の一部を段階的に放出するため、日産株の22.8%(9月時点)を信託銀行に置いている。日産とホンダの統合が実現すれば、世界の車産業の競争構図を大きく変える可能性がある。同時に、長年の「盟友」だった日産とルノーの距離が、さらに広がる契機にもなりえる」

    ルノー所有の日産株は、売却先決定について日産の意向に従う条件になっている。それでも、なお15%所有の大株主である。日産が、ホンダと統合する場合、ルノーの意向を聞くのは常識であろう。

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    フランスで極右の首相が登場するのか危惧されてきた下院選は、最新の世論調査の結果、過半数に達しない見通しとなった。ただ、マクロン大統領の基盤である与党は3位に沈む公算が強まっている。マクロン氏の強行した下院解散戦略は、完全に目論見を外れた形だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月4日付)は、「仏下院選、極右は過半数に届かない見通し 世論調査」と題する記事を掲載した。

     

    調査会社ハリス・インタラクティブの世論調査によると、フランスの国民議会(下院、定数577)選挙で極右の国民連合(RN)は単独過半数に届かない見通しとなり、議会は大きく分裂した状態に戻りそうだ。7日に行われる決選投票で(どの政党も過半数に届かない)ハングパーラメントに陥るとの予測が現実になれば、フランスはいずれの会派も政権樹立に必要な議席を確保できず混迷期に入ることになる。

     

    (1)「ハリスの世論調査(7月2~3日実施)は、複数の仏メディアの依頼を受けて実施された。これによると、RNと共闘勢力は190〜220議席を確保する見通しだ。だが、首相を指名する議会多数派を握るには過半数の289議席が必要で、それには遠く及ばない。新たに設立された左派連合の新人民戦線(NFP)は、159〜183議席を確保して2位に付けるとみられている。マクロン大統領率いる中道の与党連合は135議席にも届かず、解散前の半分またはそれ以上に減る見通しだ。解散総選挙に打って出るというマクロン氏の決断が間違いだったことが鮮明になった」

     

    極右のRNは、最大限220議席で、過半数の289議席へ遠く及ばないことが分った。左派連合の新人民戦線(NFP)は、最大限183議席。マクロン大統領率いる中道の与党連合は、135議席と3位である。

     

    (2)「現時点では、獲得議席数を正確に予想することは難しいとアナリストは指摘する。だが、RNが実際に単独過半数を獲得できないとすれば、対抗勢力が連携して「共和戦線」を張った戦略が奏功したと言えるだろう。RNが大差で得票率首位を獲得した6月30日の1回目の投票後、中道派と左派勢力は選挙協力で合意し200人前後の出馬を取り下げた。ルペン氏が主導する極右勢力の政権獲得を阻止するために連携する戦法だ」

     

    中道派と左派勢力は、選挙協力で合意し200人前後の出馬を取り下げた。この協力関係から言えば、新たな下院でも協力すれば、合計議席は最大限318議席で過半数を上回る計算になる。

     

    (3)「決選投票で候補者を絞れば、左派と中道派の支持者は通常なら支持しない政党に投票をせざるをえない。とにもかくにもRNが次期議会に送り込む議員を減らすためだ。仏内務省の集計によると、候補者3人で争う選挙区は306区から89区に減った。有権者が政党首脳の思惑通りに投票するかどうかは不透明だ。初回投票で投票率が高水準に達しただけに、決選投票でも投票率がカギを握る。夏季休暇や投票したい候補者が出馬を取り下げたいら立ちから、投票率が下がるのではないかと懸念する政党幹部もいる。RNにとっては、単独過半数を獲得する可能性が後退しても支持者を投票所に向かわせることができるかどうかが重要になる」

     

    決選投票では、候補者3人で争う選挙区は306区から89区に減った。候補者2人では、極右は不利になろう。フランス国民も、極右を選ぶことに戸惑いが出るという前提である。

     

    (4)「ユーロ圏2位の経済規模を持つフランスは、政治で行き詰まり成長が鈍化すれば、仏国債の約半分を保有する外国人投資家にとってフランスの長期的な魅力が薄れかねない。議会が3分裂しそうな公算が大きくなるなか、各党首脳は他党との連携の可能性を探る意向を示し始めた。マクロン氏が首相に任命したアタル氏は、中道派で単独過半数は取れないと認めたものの、個別の政策ごとに協力余地がある政党と連携する「多元的な議会」の構築を呼びかけた」

     

    フランスは、政治状況が混迷すれば経済政策の一貫性が損なわれる懸念も生じよう。仏国債の約半分を保有する外国人投資家にとって、フランスの長期的な魅力が薄れかねない事態を迎えようとしている。

     

    (5)「アタル氏は、公共ラジオ局フランス・アンテルで3日、「中道連合で最大限の議席を獲得したい。そうすれば、(法案ごとに)合意を取り付けて前に進むことができる」と述べた。そうした動きに先鞭をつけたのはヨーロッパエコロジー・緑の党のトンドリエ事務局長だが、同氏は中道派と連携する場合でもマクロン氏やアタル氏の提示条件ではなく、左派の提示する条件で行うとクギを刺した。「この国で前例のないことに踏み出さなければならないのは間違いない」。同氏は仏テレビTF1のニュース専門局でこう語った」

     

    アタル首相は、極右を除いた中道連合を構想している。法案ごとに、合意を取り付けるというもの。この狙いがうまく行くかどうか。

     

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、強烈な国である。一帯一路では途上国を「債務漬け」にした。外交では、フランスのマクロン大統領に対して4月6~7日、習近平国家主席が二度もマクロン氏と会食すると厚遇ぶりを見せた。一度は北京で、もう一度は広州だ。習氏が、北京を離れて外国の賓客を持てなすのは異例とされる。それだけ、米国包囲網の中で突破口を探そうという現れであろう。これからは、「外交漬け」を目指すのであろう。 

    マクロン氏は、この厚遇に応えて「台湾情勢の急変は欧州諸国にとって利益にならない」と指摘した上で、「最悪なのは、欧州がこの問題で米国のペースや中国の過剰反応に追随しなければならないと考えることだ」とも主張した。つまり、欧州は台湾問題では中立であるとまで言ってのけた。大変な「リップサービス」をしたものだ。

     

    『ロイター』(4月10日付)は、「中国がマクロン氏異例の厚遇 米の包囲網に手札」と題する記事を掲載した。

    中国の習近平国家主席は、4月6~7日に国賓としてフランスのマクロン大統領を招待、異例なほどの好遇でもてなした。米国に対抗しようとしている中国が、欧州連合(EU)内に重要な連携相手を確保するため外交攻勢を強めていることの表れだ、と複数の専門家はみている。 

    (1)「習氏とマクロン氏は4月7日、中国有数の商業都市、広東省広州を訪れ、習氏の父親が省トップ時代に使っていた公邸で茶会を開いた。複数の外交官は、習氏が中国に対する「全方位の封じ込めと抑圧」と呼ぶ米国の動きに反対する際に支持してくれる国を探す中で、EUの主要メンバーであるフランスとの関係を重視している姿勢が浮き彫りになったとの見方を示した。米デンバー大学のチャオ・スイシェン教授(中国問題・外交政策)は「中国が積極的な外交を展開する裏には、全て米中関係が絡んでいる。だから特に中堅国やフランスのような大国への働きかけは、米国に対する何らかの反撃という意味合いがある」と指摘する」

     

    EU(欧州連合)の加盟国は、すべて対等な関係である。中国が、フランス一国を厚遇しても、他国の中国批判が沈静しなければ限界があるのだ。中国は、権威主義国家であるから、こういう微妙な点を理解できないのだろう。 

    (2)「ロジウム・グループのアナリスト、ノア・バーキン氏は、中国の主たる目的は欧州が米国とより緊密に足並みをそろえる行動をするのを防ぐことだと分析。「その意味で、マクロン氏は恐らく中国政府にとって欧州で最も大事なパートナーになる」と述べた。外交界でも、マクロン氏はEUの重要政策を主導する人物の1人との認識がおなじみになっている。今回マクロン氏は、EU欧州委員会のフォンデアライエン委員長とともに中国を訪れ、2人はいずれもウクライナ問題で習氏から従来の立場を軌道修正するという公的な言質を得ることはできなかったが、それでもマクロン氏は下にも置かない扱いを受けた」 

    ロシアのウクライナ侵攻が続き、中国のロシア支援が変わらない限り、EUは中国への警戒心を解かないだろう。中国は、こういう微妙な心理が分からないのだ。

     

    (3)「訪中前に中国を「抑圧的」と批判したフォンデアライエン氏は、空港での出迎えもおざなりで、見方によっては独りぼっちで悄然としている印象を残すことになった。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は6日の論説記事で、「米国の戦略上の走狗であり続ければ行き詰まるということは誰の目にも明らかだ。中仏関係を中国と欧州の協力体制への架け橋とするのは、両国と世界のどちらにも有益だ」と主張した」 

    中国のこういう驕り高ぶった発言が、EUの加盟国を刺激しているはずだ。中国が、「井の中の蛙」という印象を強めるだけである。マクロン氏は、欧州の本音をプーチン氏と習氏に伝えたいとして意欲的とされる。そのためには、相手の心を開かせるべく、少しは「お世辞」も言ったのだろう。

     

    (4)「米政府内では、中国によるフランスとの外交関係強化の取り組みが本格化するかどうか疑わしい面があるとみられている。ウクライナ問題が決着した後なら、中国は対米関係悪化の埋め合わせとして欧州との経済的な接近につながるような外交戦略の再編に動くだろうが、現時点ではその公算は乏しい、と米政府の考えに詳しい複数の関係者は話す。同関係者らによると、ウクライナ問題について欧州が中国に関与することには米政府は静観姿勢を貫いている」 

    マクロン氏は、訪中前に米国のバイデン大統領と事前の打ち合わせをしている。米国が、マクロン氏の発言を静観している理由だ。

     

    (5)「もっともロジウム・グループのバーキン氏は、マクロン氏は今回の訪中で大した成果は得られなかったようだとの見方を示した。「マクロン氏はウクライナ戦争における習氏の姿勢を変えさせることができると信じていたようだ。彼は習氏にデカップリング非難、大規模なビジネス代表団の同伴、中国の戦略的独立性支持の再確認といった一連の贈り物をした。それに対する大きな見返りはほとんどなしだ」という」 

    中国は、マクロン氏から「快い発言」を引き出して満足しているかもしれない。これで安心して台湾侵攻へ踏み切れば、事態は一変する。米欧日の対中経済制裁の発動である。EUが、ロシアへ経済制裁して、中国を見逃すことなどあり得ないからだ。

     

     

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    欧州が、これまでの親中国姿勢を大きく変えている。中国の人権弾圧への抗議が、「中国強硬論」を生み出しているもの。フランスは、ドイツと共にEU(欧州連合)を牽引しているが、反中国への雰囲気を高めている。

     

    フランスの元国防相アラン・リシャール議員は、上院で台湾友好議員連盟の代表を務め、今夏にも台湾を訪問する方針だ。中国は猛反対している。実現すれば、EUでは二国目になる。

     

    昨年8月30日、チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長ら代表団89人が台湾を訪問した。台湾と国交はないが、公式訪問を通じて関係強化を図る意図を鮮明にしている。中国は、「一つの中国」を主張しており「卑劣な行為」と激しく非難した。

     


    フランス海軍は5月11~17日にかけ九州近海で、日米豪の三海軍と合同演習を実施している。これに対して、中国外交部広報官は、「油のムダ遣いにすぎない」と批判した。中国共産党系メディア『環球時報』は13日付の1面トップ記事で「日本が仏米豪を巻き込み対中で強硬な姿勢をみせている」と指摘する記事を掲載した。社説では、中国近海で中国人民解放軍の武装力は米国とその同盟国を「圧倒している」と主張した。

     

    『日本経済新聞』(5月14日付)は、「仏、広がる対中強硬論 台湾の国際機関参加、上院支持 人権やコロナ対応不満」と題する記事を掲載した。

     

    フランス国内で対中強硬論が広がっている。仏上院は台湾の国際機関への参加を支持したほか、海外領土を持つインド太平洋での中国の海洋進出にも警戒が高まっている。マクロン大統領は気候変動問題では中国との対話を探る必要があるとして、バランスに苦慮している。

     


    (1)「仏上院は今月上旬、台湾の国際機関参加を支持する決議案を圧倒的な賛成多数で可決した。決議は法的拘束力をもたないが、世界保健機関(WHO)や国際刑事警察機構(ICPO)などへの参加を目指す台湾を支援するよう仏政府に求める内容だ。決議案を3月下旬に提出した元国防相のアラン・リシャール議員は上院で台湾友好議員連盟の代表を務め、今夏にも台湾を訪問する方針だ。これに対し、中国は強く反発している」

     

    フランスは、人類にとって人権復活への狼煙になったフランス革命を経験している国だ。中国の人権弾圧に対する本能的な嫌悪感があるのだろう。台湾の国際機関参加を支持する決議案を圧倒的多数で可決した。元国防相のアラン・リシャール上院議員は、台湾訪問計画を発表している。

     

    (2)「リシャール氏の訪台計画が明らかになった2月、在仏中国大使館がリシャール氏に手紙を送り、訪台の中止を求めた。中国大使館は、この対応に疑問を呈したフランスの中国研究者を「小さなごろつき」と非難。仏外務省が大使を呼び出す事態に発展した。欧州連合(EU)がウイグル族への人権侵害で中国政府当局者に制裁を打ち出し、中国も対抗措置をとり、対立が激しくなっている。中国による新型コロナウイルスへの初期対応の遅れが世界的な拡大を招いたとの不満も強硬論につながっている」

     

    チェコ上院議長が訪台した際に、中国はチェコへ経済制裁を加えると脅迫した。結果は、20台のピアノ輸入をキャンセルしただけ。外に輸入品がなかったので、チェコではかえって中国を笑い者にされた。フランス上院議員の訪台が実現した場合、どのようは制裁をするのか。

     

    (3)「フランスは2020年で約180億ユーロ(約2兆3000億円)の対中貿易赤字があり、対中黒字のドイツに比べて対中関係の悪化による経済的な打撃は相対的に小さい。一方で、フランスは南太平洋の仏領ニューカレドニア、インド洋の仏領レユニオン島などに軍事基地を持ち、中国の海洋進出への警戒が強い。フランスが強い影響力を持つアフリカでも、中国は積極的な外交を展開している」

     

    フランスは、対中貿易で赤字である。これでは、中国が対仏制裁するどころか、逆にフランスから報復されかねない立場だ。フランスは、アジアに軍事基地を保有する。中国への警戒感が強いのは当然である。

     

    (4)「フランスは軍事的関与も強めている。20年11月に原子力潜水艦をオーストラリアに派遣したほか、21年4月にはインド東部のベンガル湾で日米豪印と共同訓練を実施。今月11~17日に九州各地で実施する共同訓練にも参加する。マクロン氏自身も中国の人権問題や強権的な外交姿勢に対して警戒感を強めているが、強硬姿勢に傾きすぎれば、気候変動問題で中国の協力を得にくくなると懸念する。20年12月、習近平(シー・ジンピン)国家主席と電話協議した時には「21年が気候変動対策に向けて国際的な機運が高まる年になるよう取り組もう」などと呼びかけた」

     

    フランスは、アジアへの利害関係が深いことから、日米豪印と共同訓練を重ねている。将来、「クアッド」(日米豪印)へ参加する可能性も出て来そうである。英国も、その可能性が大きいと見られている。中国にとっては、「油の無駄遣い」などと言っていられない状況がつくられている。

    テイカカズラ
       

    フランス最高裁判所は、ファーウェイ「5G」の「バックドア」による情報操作防止措置が合憲との判決を下した。民主主義国にとって、中国の諜報活動から国家の安全を守る行為は、当然の権利という判断である。中国にとっては痛い判決である。

     

    英議会国防委員会は、昨年10月8日に発表した最新の報告書で、中国通信機器大手のファーウェイが「中国共産党政権と結託していた明白な証拠を見つけた」と明らかにした。英国政府は昨年7月、同国のモバイルネットワーク事業者が、昨年中にファーウェイ設備の購入を停止し、2027年末までに次世代通信規格「5G」ネットワークから同社製品を締め出すよう命じていた。英議会国防委員会は、英国政府の決定を追認した形である。

     

    『大紀元』(2月10日付)は、「フランス、反ファーウェイ法は『合憲』最高裁判所が判決」と題する記事を掲載した。

     

    フランス国内大手通信会社2社が、中国ファーウェイ社製品の規制を定めた「ネットワークセキュリティ法(通称・反ファーウェイ法)」は合憲性が疑われると訴えた裁判で、憲法裁判所は2月5日、同法は合憲だとの判決を下した。これにより、通信会社は2028年までにファーウェイ設備の段階的な撤去を強制される。

     


    (1)「フランスの最高裁判所にあたる憲法裁判所は、立法府は「5Gが提供する新機能によってもたらされる新たなスパイ行為や著作権侵害、妨害行為のリスクから、モバイルネットワークを保護するための国家防衛および国家安全の維持という目的を考慮して」ネットワークセキュリティ法を制定したと説明した。ブイグテレコムとSFRの2大通信会社の訴えを退けた」

     

    フランス最高裁判所は、国家の安全保障が最重要課題になっていることを認めた。これで、中国のもたらす危険性が立証された。

     

    (2)「フランスは現在、ファーウェイ設備の使用禁止を明確にしていないものの、国家情報システム安全局(ANSSI)は昨年成立したネットワークセキュリティ法に基づいて許可証の発行を厳格化した。ANSSIは昨年7月、ファーウェイの5G製品を購入しようと計画する企業に対し、許可証の更新はできなくなると通達した」

     

    欧州は当初、ファーウェイ「5G」について、米国の警告をなかなか理解できず、足並みが揃わなかった。それが一転して「反ファーウェイ」に固まったのは、中国発のパンデミックによる被害と、香港への「国家安全法導入」で人権弾圧が現実化したことで、中国警戒論となった。中国は、オウンゴールしたようなものである。

     


    (3)「ブリュノ・ル・メール経済財務復興相は以前、フランス政府は国内でファーウェイを全面的に禁止することはしないが、国家安全保障等のセンシティブな分野に保護を与えると述べた。「私たちはファーウェイの5Gにおける投資を禁止せず、いかなる企業も差別しない。しかし、私たちは国家の安全と敏感地域を保護しなければならない」とした」

     

    フランス政府による、「国家の安全と敏感地域を保護しなければならない」という発言は、企業に対して凄みを持っている。政府は、企業に対して一律に禁止しないが、自主的に判断しなさいと言っているからだ。企業が、最終リスクを負うという市場経済の原点を再確認させられているのである。

     

    (4)「仏2大通信会社は、すでにファーウェイ製品のアンテナなどを使用してネットワーク構築を半分以上完成させていた。ブイグテレコムとSFRの両社は、設備の交換には高額の費用が発生するため国家賠償を要求するとしている。しかし、フランス政府は昨年9月、ファーウェイ設備を撤去するのに生じた損失を補填しないことを決定した」

     

    ファーウェイの「5G」問題は、早くから米国によって提示されていた。企業が、そのリスクを考慮せずにファーウェイと契約を結んだのは、企業責任という立場である。見事な論理の展開である。市場経済の本質を突いているからだ。フランスの2大通信会社が、醜聞を無視して契約したのは企業責任という立場である。

     

     (5)「アメリカ司法当局によると、ファーウェイは中国共産党政権のためにスパイ活動を行っている疑いがある。フランスのみならず、イギリスとスウェーデンは昨年、5Gネットワーク構築からファーウェイを排除することを表明した」

     

    ファーウェイが、中国共産党のスパイ活動に手を染めていることは衆知の事実である。

     

    次の記事もご参考に。

    2020-12-26

    米国、「やっぱり危険」中国製TV、大手家電TCLにバックドア装着「油断禁物」

    中国、「完敗」米の対ファーウェイ輸出禁止、5Gで競争力低下し世界3強から「脱落」

    2020-10-11 05:

     

     

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