勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ドイツ企業は、中国市場へ大きく依存していた結果、かなりの技術移転も行なってきた。それが今、ドイツ企業へ逆風となっている。その典型例が、自動車産業である。世界自動車ランキング2位のフォルクスワーゲンは、3位の中国BYDに激しく追われる立場になった。次のデータは、25年の自動車世界販売ランキング予測である。

     

    1位 トヨタ自動車 1050万台

    2位 VW      920万台

    3位 BYD     900万台

    4位 ステランティス 750万台

    5位 現代      720万台

    出所:『ドイチェ・ヴェレ』(9月9日付)

     

    このランキング表では、VW(フォルクスワーゲン)とBYDが20万台の差と接近するが、BYDには過剰生産に伴う「支払手形長期化」という信用短縮問題を抱えており、野放図な成長至上主義にブレーキが掛かり始めている。

     

    『レコードチャイナ』(9月13日付)は、「ドイツ車と中国車、対決の時―独メディア」とだいする記事を掲載した。

     

    独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ』(9月9日付)の中国語版サイトは「ドイツの自動車と中国の自動車が対決の時を迎えている」と題した記事を掲載した。

     

    記事は、ミュンヘンで開催中の国際モーターショー(IAA)において中国が最大の話題になっているとした上で、ドイツ紙「南ドイツ新聞」の文章を紹介。同紙はかつてドイツの自動車メーカーが中国市場への参入と引き換えに合弁事業を強いられ、その過程で中国側は自動車製造技術を習得しやがて独立していったと伝えた。

     

    (1)「かつての共存関係が崩れ、中国メーカーとの競争を余儀なくされているドイツメーカーは、高性能な電気自動車(EV)の製造を迫られているものの、その製造に必要な高性能バッテリーの大部分が中国製で占められていることを指摘。バッテリー本体に加えて、生産に必要な原材料も中国が支配する状況を「ドイツメーカーが陥った新たなわな」と形容した」

     

    ドイツは、日中関係が対立していることを「好機」とみて、中国市場へ大きく傾斜してきた。その咎めが一気に出ている。中国へ技術移転し過ぎた結果だ。いま、EV(電気自動車)で、中国に追われる立場となっており、巻返しに必死となっている。バッテリーは、中国メーカーに全面的に依存する形だ。EVは、この分野ですでに劣勢に立たされている。日本自動車メーカーは、電池は自社開発スタイルを堅持している。

     

    (2)「その上で、3日に北京で行われた戦勝80周年記念軍事パレードで中国、ロシア北朝鮮3首脳が並んだ光景に言及し、「もし地政学的要因でグローバルなサプライチェーンが変動すれば、ドイツや欧州の自動車メーカーのEV戦略は一瞬で崩壊しかねない」と指摘した。記事はまた、IAAがドイツと中国の自動車メーカーによる決戦の場になったとオーストリアの公共放送ORFが評したことも紹介。EV、特にバッテリー技術で中国に優位性を奪われた理由を「欧州メーカーが中国市場に参入するため長年技術移転を行ってきた結果」とした上で、BYDなどの中国メーカーがハンガリーで工場建設に着手するなど欧州市場攻略を進めていることを伝えた」

     

    ドイツ自動車企業は、地政学的に極めて劣勢に立たされている。EV電池が、中国依存であることは危険である。今後は、日本との関係強化に進むほかあるまい。

     

    (4)「市場調査のデータで、中国メーカーの欧州市場シェアが今年上半期に48%にまで上昇したことに言及し、数字こそまだ大きくないものの「わずか1年でシェアが倍増したという事実に注目すべきだ」と評した」

     

    欧州は、中国EVへ20%前後の関税で対応している。ブランド別の関税率が異なっている。それでも、中国国内の過剰競争を抜け出すべく、欧州市場へ殺到するであろう。

     

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    ドイツ自動車業界は、EV(電気自動車)戦略の失敗で工場閉鎖や従業員解雇など厳しい局面に立たされている。自動車が、ドイツ基幹産業だけに停滞は、経済失速を招く危機へ繋がる。メルツ首相は9日、ミュンヘンで開催された自動車ショー「IAAモビリティ」で演説し、ドイツは自動車業界の電動化への移行を主導すべきであり、後れを取ってはならないと力説した。日本は、政府と無関係にトヨタやホンダが自主的にEV戦術を練っている。日独には、これだけの大きな違いがみられる。

     

    『ロイター』(9月10日付)は、「ドイツ首相、自動車業界に『変革主導』呼びかけ」と題する記事を掲載した。

     

    メルツ首相は自動車産業がドイツ経済にとっていかに重要であるかを強調し、過剰な規制が深刻なリスクをもたらしていると指摘。

     

    (1)「われわれは、自動車産業の変革に追随するのではなく、その変革を主導していきたい」とし「この変革に潜む大きな機会を、ドイツの自動車産業、さらにはドイツ全体のために生かしていきたい」と述べた。メルツ首相は今後4~6週間以内に自動車メーカーやサプライヤーなど業界関係者とのサミットを開催し、業界が直面する課題について話し合う計画を明らかにしている」

     

    ドイツ自動車業界が現在、直面している最大の要因はEV戦略の失敗である。ガソリン内燃機関から一挙にEVへ移行すると想定して戦略を立てていたのだ。これが失敗した。耐久消費財には、共通なマーケッティング上の「蹉跌」が起こる。「ギャズム」(溝)と呼ばれるもので、普及率16%台へ達した段階で販売の勢いが止まるもの。これは、新技術に必ず「落し穴」があって、ユーザーはそれを忌避して購入を見送るのだ。

     

    EVでも、このギャズムが起こり販売は頓挫した。理由は、リチウムイオン電池の持つ固有の欠陥だ。

    1)走行距離が500キロメートル程度。

    2)充電時間が長時間を要する。

    3)火災事故の発生多発。

     

    こういう欠陥を抱えるリチウムイオン電池に代って、次世代型電池「全固体型電池」の登場を待たなければならない。これが、世界共通の認識である。

     

    ドイツでは、全固体電池の開発が遅れている。この分野のトップランナーは、トヨタである。商用化時期は、EV人気が世界的に高まる時期を想定している。当初は、2027年頃を想定していたが、これより遅れる見通しが強まっている。ドイツの自動車産業が復活するには、全固体電池が実用化される時期の到来に依存している。少なくも、2030年の声を聞くまでは困難であろう。

     

    ドイツは、EVに代るHV(ハイブリッド車)技術が十分に育っていないというハンディキャップを背負っている。ガソリン車から一足飛びにEVへ向うという「単線予想」であった。トヨタは、「複線=全方位予想」であらゆる技術開発を目指して研究を重ねている。今や、トヨタの独走態勢である。トヨタは、26年前半に米国市場で販売首位に立つ見込みだ。ドイツは戦略ミスによって、トヨタから大きく離される事態となった。

     

    中国自動車業界は、過剰生産によって値引き合戦を繰返し、体力消耗戦を繰り広げている。政府が6月から「支配手形60日規制」によって資金繰り面から、過剰生産を止める手立てを講じるほど乱戦状態にある。中国も「自滅状態」に向っている。

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    中国の越境ECは、国内不況を反映して「超低価格」で輸出している。これまで、米国の無関税により異常な伸びを続けてきた。だが、米国の規制によって下火になっている。米国が駄目なら欧州へと主戦場を移したが、ドイツでも小売業者から目の敵にされている。国内のサプライチェーンを破壊するという警戒である。

     

    『レコードチャイナ』(7月31日付)は、「ドイツ小売業者の8割が中国のECプラットフォーム禁止を支持―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ 中国語版サイト』(7月30日付)は、ドイツの小売業者の8割が中国のECプラットフォームの禁止を支持していることが調査で明らかになったと報じた。

     

    (1)「記事は、ドイツのデジタル産業協会Bitkomが、このほど発表したアンケート調査により、ドイツの小売業者の92%がTemuやSHEINといった中国の越境ECプラットフォームがしばしば関連法規に違反していると回答。これらのプラットフォームが、販売する製品には危険成分が含まれる高いリスクが存在すると認識する小売業者も88%に達したことが明らかになったと伝えた。

     

    TemuやSHEINの製品製造現場は、想像を超えた劣悪な環境下で生産されている。ほとんどが高齢な農民工が生産している。ただ、支払条件がいいなどのメリットがあるという。最近は、大きな工場を建設するケースもあるが、本質的に「低賃金」が武器になっている。低賃金労働力が枯渇すれば、生産コストが上がるので、いつまで「低価格」を売りにできるかは不明である。

     

    中国政府は、EC越境ビジネスの成功に味を占めて、他の地方政府にも推奨する動きをみせている。輸出で外貨を稼ぐ戦略である。

     

    (2)「85%が、「EUは欧州市場が外来のECプラットフォームによる権利侵害を受けないよう守る責任がある」、87%が「越境ECプラットフォームの製品について厳しい監督管理を行うべきだ」、76%が小口輸入品に対する関税免除措置(デミニミス・ルール)撤廃は賢明な措置との認識を示したと紹介している」

     

    越境ECが、劣悪な生産環境下で製品が生産されている。これが、正当な環境での生産を脅かすことになってはなない。ドイツが、垣根を高くすることは、「自衛」のためにやむを得ないであろう。

     

    (3)「記事によると、このアンケートは従業員10人以上を抱えるドイツの小売企業505社を対象に今年35月に実施したものだという。調査ではこのほか、約半数が「地政学的対立によってサプライチェーンに悪影響が出ている」、3分の1が「サプライチェーンが不安定になったことで製品の種類を減らした」、41%が「欧州以外のサプライヤーを欧州域内のサプライヤーに置き換えるつもりだ」と回答したことも明らかになった」

     

    中国は、国内需要でまかなうべきところを輸出で逃げるという仕法を取っている。過剰生産が最大の問題で、ここを改めようという姿勢は全くない。すこしでも外貨を稼ぐことが至上課題になっているからだ。

     

    (4)「記事は、欧州委員会が28日にTemuについて、プラットフォーム上での違法商品の販売を食い止めるための十分な措置を講じていないとの予備的な判断を下したと伝え、今後高額な罰金を科される可能性があると紹介したほか、EU域外国から個人宅へ送られる小包に対し、一律2ユーロ(約340円)の手数料を徴収する方針を示したことを併せて報じている」

     

    劣悪な生産現場でつくられている製品であるから、品質保証などあり得ない。そのような基準を設けて作るような生産環境にないからだ。中国政府に責任を持たせることしか解決方法はないであろう。あるいは、一律禁止するかである。

     

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    バブルから復活遂げる奇蹟へ

    科学の国・ドイツも日本詣で

    量子コンピュータ実用化段階

    日本は成長力取戻し再離陸へ

     

    2025年は、量子力学が発見されて100年になる。我々にとって、馴染みの深いニュートン力学に代る位置づけだ。その量子技術が、これから現実世界で応用される時代を迎える。これだけでも今後の「技術世界」は、大変革時代を迎えることが理解できるであろう。日本が、ここで躓いたら永久に落伍する。負けられない大技術競争時代へ突入した。政府が、2025年を「量子元年」として実用化の先鞭を切ると宣言した理由である。

     

    量子技術は、量子コンピュータによって実用化される。量子力学の原理を用いた新世代のコンピュータであり、「量子ビット」と呼ばれる情報の最小単位を使用する。これまでのニュートン力学の情報単位は、「ビット」(0か1)と呼ばれている。一方の「量子ビット」では、「0と1の両方を兼ねる」という複雑な構造になる。それだけ、計算速度が速くなるので、現在のスパンコン(スーパーコンピュータ)を何百倍も上回る速度で計算できる「怪物」である。

     

    この怪物を早く飼い慣らした国と企業が、世界競争で勝利を収められるので今後、熾烈な「戦い」が演じられる。日本は、理研(理化学研究所)が2023年に試作機を発表している。現在は、理研と富士通が共同で、超伝導量子コンピュータの本体製造に着手した。日立製作所は、単独でシリコン量子コンピュータ開発に取組んでいる。

     

    こうして日本では、理研・富士通と日立製作所の2グループが量子コンピュータ本体の製作に取組んでおり、かつての高度経済成長時代のメインフレーム(大型コンピュータ)競争を彷彿とさせる熱気を孕んだ状況だ。日本企業が、30年の雌伏期を経て世界と真っ正面から競争するまでになったのだ。将来への自信を示す象徴的な動きであろう。

     

    バブルから復活遂げる奇蹟

    世界のバブル経済史において、バブルを破綻させた国の経済が再び復活したのは、1929年の世界恐慌を引き起した米国のみである。オランダや英国は、ついに復活することはなかった。この伝で言えば、平成バブル(1990年)で崩壊した日本経済の復活の可能性も低かったはずである。だが、こういう杞憂を吹飛ばし始めたのは「日本技術の黎明」である。それは、量子技術だけではない。次のように、多くの企業が申し合わせたように新技術開発に成功したのだ。

     

    1)トヨタ自動車の全固体電池

    2)国策半導体ラピダスの「2ナノ」(試作中)

    3)NTTの次世代通信網「IOWN」(アイオン)

    4)曲がる電池「ペロブスカイト」

    5)南鳥島深海(6000メートル)のレアアース(希土類)採掘技術

     

    きら星のごとき世界をリードする技術が今、一斉に登場している。これらは、決して偶然の結果ではなく、その基盤になった日本の社会的土壌の存在に気づかねばならない。この基盤が失われない限り、日本に世界をリードする技術が生まれ続けることを期待させる。

     

    日本が、新技術を生み出す社会基盤を有することは、何を持って証拠づけるのか。それは、日本社会が「中庸」を保っていることに表れている。中庸とは文字通り、思考において極端な右にも左にも偏らないという意味である。この冷静さによって、日本社会が「失われた30年」と揶揄されながらも、内に秘めた「中庸」によって前述のような技術開発を成し遂げた、その背景であろう。決して既得権益にしがみ付かず、新規分野の技術開発を怠らなかったのだ。

     

    中庸とは、「節制」や「慎み」の精神であろう。これが、右へ左へと極端に走らせる行動の抑制に繋がっている。実は、この節制や慎みこそが、日本の「武士道精神」と深くかかわっている。困難の中で耐え忍びながら、信頼を守り未来を切り開く姿勢を表しているのだ。日本企業は、この歴史的な文化遺産を受け継いでいる。

     

    明治維新で、武士は特権階級としての地位を失い、教師や巡査となって庶民とともに生活して、新しい時代を切り開いた。明治の庶民の知的水準を押上げる役割を担ったのである。これは、「失われた30年」において、日本企業が取ったビヘイビアと極めてよく似ていると言えよう。

     

    企業は、低成長下で経営リスクの最小化を優先させた。結果として、それが内部留保の増加をもたらし、賃金引上げや設備投資増加に結びつかなかったというマイナス面は隠せない。ただこの裏には、日本経済の期待成長率が低かったという動かしがたい事実もある。ともかく、企業はこういう最悪な環境下で何をしていたか。惰眠を貪ることなくひたする、新技術の開発に努めていた。それが今、一斉に花開き始めている。

     

    武士道精神は、12世紀末からの鎌倉時代に始まる。これが、社会のみえざる規範になっていたことは否定し難い事実だ。武士道精神とは、新渡戸稲造によれば「義」や「誠実」といった価値観を重視する。これは技術開発に通じるもので、技術者や研究者が社会に信頼を築く上で重要な倫理的基盤となっている。大袈裟な表現でなく、技術者や研究者は現代の「侍」とも言える矜持を身につけている。この精神性が、世界を動かす新技術開発で実を結んだと言えるだろう。将来も、こうした文化遺産は保持され続けられるに違いない。(つづく)

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    EU(欧州連合)は、トランプ氏の相互関税で大きな痛手を被る見通しが濃くなってきた。米中が、二大輸出市場であるだけに両国の貿易戦争の影響を真っ正面から受けるからだ。4年間で120兆円規模の損失になるという。こうして、EUは米国との話合いを早急に始める意向だ。EU経済の核であるドイツは、今後4年間でGDPが、1.5%押下げられるという。25年のGDPマイナス成長が不可避の見込みとなってきた。

    『日本経済新聞 電子版』(4月13日付)は、「欧州経済、米関税で損失120兆円 独はGDP1.5%押し下げ」と題する記事を掲載した。

    欧州経済の回復シナリオがトランプ米大統領の「相互関税」で狂い始めている。欧州連合(EU)が被る経済損失は今後4年間で7500億ユーロ(約122兆円)規模に膨らむ見通しだ。ドイツは東西統一後で初めて3年連続のマイナス成長となるかどうかの瀬戸際に立つ。


    (1)「次期独首相に就任する見通しとなった中道右派キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は9日、「ドイツだけでなく、欧州諸国を代表してワシントンで話し合いたい」と述べた。独公共放送でトランプ氏との早期会談に意欲を示した。欧州と米国をまたぐ「大西洋横断の関税ゼロ」をめざす。ドイツ経済研究所(IW)の試算によると、トランプ氏の大統領任期である4年間でEUに与える域内総生産(GDP)の損失は7500億ユーロ規模に達する恐れがある。世界からの輸入品に課す相互関税の表明を踏まえて公表したもので、トランプ氏はEUの税率を原則20%とした」

    ドイツ次期首相は、EUを代表して米国と話し合う方針を固めた。4年間でEUに与えるGDPの損失は7500億ユーロ規模に達する見込みだという。

    (2)「当面90日間は、上乗せ分の一時停止で10%に下がるものの、EUとの交渉は成否が読めず、トランプ政権の政策も二転三転する。IWの分析は、他国の報復措置を含めておらず、中国が米国製品への報復関税を125%に引上げると表明したため不透明感は一段と増した。特に深刻なのが欧州最大の経済大国ドイツだ。累計の経済損失はおよそ2000億ユーロになり、関税がない場合と比べて28年時点の独GDPを1.5%押し下げる。IWで国際経済に詳しいユルゲン・マテス氏は、「EUは貿易紛争の新局面を迎えた」と指摘する」

    ドイツ経済は、輸出依存度が37.31%(2023年)と先進国では最も高い。それだけに、受ける影響が大きくなる。


    (3)「世界でも欧州は、景気回復が遅れてきただけに影響は大きい。ロシアのウクライナ侵略でエネルギー不安が高まり、歴史的なインフレが猛威を振るった。新型コロナウイルス禍からの景気回復シナリオを狂わせ、ドイツ経済は24年まで2年連続のマイナス成長に転落した。英HSBCによると、EUから米国への輸出にかかるモノの関税率は、23年時点で平均3%強だった。大幅な関税引き上げは製品の値上がりを通じて、ドイツ企業の米国での販売減少に結びつく。独自動車工業会のミュラー会長は一連の追加関税で「雇用にも影響が出るだろう」と懸念する」

    EUは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給遮断で大きな被害を受けた。ようやく、この被害から回復しようという矢先にトランプ関税の圧迫を受ける。

    (4)「実際、欧州各国で景気見通しの下方修正が相次ぐ。IFO経済研究所など主要な独研究機関が10日公表した共同の景気予測で、25年のドイツ実質成長率は0.1%と24年秋時点から0.7ポイント引き下げた。輸出の下振れで再び成長が止まり、東西統一後で初となる3年連続のマイナス成長も現実味を帯びる。フランス政府も25年の成長率予測を0.7%と0.2ポイント下方修正する。イタリアは0.6%程度の成長にとどまりそうだ。景気の急減速は想定外の税収下振れを招きかねず、国防費の引き上げやウクライナの軍事支援にも影を落とす」

    25年のドイツ経済は、憲法上の財政赤字規制が緩和されることから、回復が見込まれていた。それが一転、3年連続のマイナス成長の気配が濃くなっている。


    (5)「金融市場は欧州中央銀行(ECB)の利下げ終了が遠のくとの見方を強める。米ゴールドマン・サックスは欧州経済の下振れリスクを踏まえ、4月と6月に続いて9月まで連続利下げに動くとの予測に切り替えた。政策金利は現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。市場で景気浮揚への期待を呼んでいたドイツの財政出動も、効果をそがれる恐れがある。メルツ氏は憲法改正で厳格な債務抑制策を見直し、巨額の財政拡張へ道筋をつけた。今後10年あまりで国防費やインフラ投資に充てる追加の財政支出は1兆ユーロ規模になる見通しだ」

    政策金利は、現在の2.5%から1.5%まで下がると想定する。この効果は、相互関税で帳消しになりそうだ。




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