勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    トヨタ自動車とドイツのBMWが水素を使い発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない燃料電池車(FCV)で全面提携する。トヨタが水素タンクなど基幹部品を供給し、BMWが数年内にFCVの量産車を発売する。両社で欧州の水素充塡インフラも整備する。

     

    トヨタ自動車の水素戦略は、(1)量産化、現地化、(2)有力パートナー連携、(3)技術革新の3つの施策に成り立っているとされる。要するに、自社の革新技術をバネにして、世界へFCVを普及させる手堅い戦略である。トヨタは、EV(電気自動車)でも同様の経営戦略である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月27日付)は、「トヨタとBMW、燃料電池車で全面提携 部品や水素充塡」と題する記事を掲載した。

     

    次世代エコカーの選択肢として日欧大手がFCVで手を組む。販売が減速する電気自動車(EV)以外の戦略が必要となっている。両社は9月3日にもFCVの全面提携に向けた基本合意書(MOU)を交わし、5日に予定しているBMWのメディア説明会で公表する。  FCVは、水素と酸素の化学反応で作った電気で動く。発電時に水しか出ないため「究極のエコカー」と呼ばれている。エンジンに当たるのはモーターで、電力で駆動する点はEVに近い。

     

    (1)「今回、トヨタはBMWのFCV向けに水素タンクのほか、水素を使って発電する「燃料電池」など水素関連の基幹部品を全面供給する。駆動システムなどEV技術を活用できる領域はBMWが主体となって手がける。トヨタとBMWは2012年6月からFCVで協業関係にあった。ただこれまではトヨタ側からは燃料電池部品のセルを供給するだけで、水素タンクや駆動システムなどはBMWが独自開発していた。トヨタは、世界に先駆けて14年にFCV「ミライ」の一般販売を始めるなど、FCV量産化で世界をリードしている」

     

    トヨタが、ドイツの高級車BMWとFCVで全面提携することは、トヨタのFCV生産コストの引下げに寄与するほか、FCV需要を拡大させるという二つのメリットがある。

     

    (2)「現在、BMWは多目的スポーツ車(SUV)の「X5」をベースに、FCViX5 ハイドロジェン」を研究開発する。2本で容量計6キログラムの水素タンクを搭載。34分でフル充填でき、航続距離は500キロメートルを超える。日本を含む各国で実験走行を展開している。今後、トヨタの水素システムを全面的に取り入れることでコストを抑え、数年内の販売開始を目指す」

     

    BMWは、トヨタとの全面提携によって数年内にFCV発売へ漕ぎつける。トヨタは、2030年以降にFCVの全面展開を意図してきただけに、予定取りの進捗である。

     

    (3)「包括提携では、BMWとトヨタが欧州での水素インフラ整備について協力関係を構築することも盛り込まれる見通しだ。欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州連合(EU)域内のEVなど向けの公共充電ポイントは23年末時点で63万2000カ所を超えた。一方、水素ステーションは欧州全体でも270カ所にとどまる。マークラインズによると、トヨタの「ミライ」の累計販売台数は約2万6000台にとどまっている。販売価格が700万円以上と高額であることが普及の足かせになっている。トヨタとBMWはコストの多くを占める水素関連システムの基幹部品を共通化することで、FCVの価格を抑えたい考えだ」

     

    FCVが、排ガス規制の厳しい欧州で需要を集められることは確実である。しかも、BMWという超一流ブランドでFCVが発売されれば、爆発的人気を得られるであろう。トヨタらしい「迂回戦略」である。

     

    (4)「EVの失速でFCVに追い風が吹いている。急速充電器を使ってもフル充電に数十分かかるEVと比べ、充填時間の短さも長所だ。ホンダは7月、新型FCV「CR-V e:FCEV」を国内と米国で発売した。同社は21年8月にFCV生産から撤退していた。BMWもiX5 ハイドロジェンを発売した後、30年代には複数のFCVをそろえる計画で、EV一辺倒からの脱却を目指す」

     

    EV失速は、数年間は続くとみられる。FCVは、その間に販路拡大のチャンスを生かせる。手堅いトヨタの計算通りの動きであろう。

     

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    日本は、名目GDPでドイツに抜かれたが、そのドイツ経済がふらついている。これで、日本がドイツに追い抜かれ原因の多くが、異常円安にあったことを示している。ドイツは今や、周辺国にも成長率で抜かれる事態になった。ドイツ憲法(基本法)による財政赤字規制が、足を引っ張っている面も強い。

     

    『ロイター』(8月13日付)は、「成長率で周縁国に抜かれたドイツ タカ派からの転換必要か」と題するコラムを掲載した。

     

    聖書に「後の者が先になる」とあるが、欧州ではかつて財政が放漫で成長が遅いと叩かれていたポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインのいわゆる「PIGGS」諸国が、これまで強国とされていたフランスやドイツよりも速いペースで成長し、投資家もこうした「主役交代」から恩恵を受けている。ドイツが失った地位を取り戻すには、金融政策タカ派の従来姿勢を改め、緩和的政策を提唱する必要がありそうだ。

     

    (1)「ユーロ圏は今や、2010年代の欧州債務危機の際に不名誉な言い回しで呼ばれた周縁5カ国が経済を支えている。スペインは第2・四半期の年間成長率が2.9%と目を見張る数字で、ユーロ圏全体の0.6%を大幅に超えた。イタリアとポルトガルも他の国々を圧倒し、成長率で域内トップに立ったのはアイルランドだ。対照的にユーロ圏最大の経済国ドイツは0.1%のマイナス成長に沈んだ」

     

    ドイツは、24年第2・四半期の年間成長率でマイナス0.1%へ落込んだ。ユーロ圏経済の3割を占めるドイツ経済の不振が注目を集めている。

     

    (2)「「周縁国」による「中核国」経済への逆襲は一過性ではない。2019年以降、ドイツ経済はスペイン、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドに追い越され、後者の国々の成長ペースはドイツを20%上回った。高齢化や硬直した企業セクター、役所での煩雑な手続きといった問題を抱えるイタリアでさえ、ドイツやフランス並みの成長を達成した」

     

    ドイツ経済は2019年以降、スペイン、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドの周辺国に抜かれている。この状況で、23年名目GDPが日本を抜いたからと言って喜べるはずもなかった。異常円安がもたらした「悪戯」だったのだ。

     

    (3)「PIIGS諸国は、輸出や製造業への依存度が低く、新型コロナウイルスのパンデミックや、中国のような主要市場の景気減速による苦境を乗り越えるのに役立った。例えば、高級車や家電など製造業はドイツのGDPの約5分の1を占めるが、スペインでは11%にすぎない。さらにパンデミック後の観光業の復活もPIIGS諸国にとって大きな追い風となった。バルセロナやローマ、リスボンなどの都市は外国人にとって人気の観光地だ」

     

    周辺国のPIIGS諸国は、ドイツのような製造業強国ではない。観光業のウエイトが高い国だ。こういう業態の周辺国経済が順調である。皮肉なものだ。日本は、製造業を復活させ、同時にインバウンド(外国人観光客)が、30年に6000万人(現在、3000万人)、50年に1億人(フランス並み)まで拡大できれば、「文武両道」の強みを発揮できる。

     

    (4)「投資家は、こうした変化に注目している。過去2年間にPIIGS諸国の10年物国債利回りと同年限のドイツ国債の利回りスプレッドは縮小。今後、PIIGSの成長が強くなり、新たなEU財政規則でイタリアやスペインの財政規律の改善が進めば、スプレッドはさらに縮小する可能性がある」

     

    PIIGS諸国の10年物国債利回りは、ドイツ国債の利回りスプレッド(差)は縮小している。市場は、ドイツ経済の落込みを読み込んでいる。

     

    (5)「ドイツは、高齢化や老朽化するインフラ、国防への支出を拡大するための借り入れが憲法上の制約を受けている。ドイツが最も期待できるのはGDPの47%を占める輸出の拡大だが、それには金利の低下とユーロ安が欠かせない。ドイツと欧州中央銀行(ECB)のドイツ出身理事は長い間、インフレリスクを避けるためにタカ派の金融政策を支持してきた。しかし経済が「周縁」に転落するのを防ぐには、「何でもやる」可能性が高まりそうだ」

     

    ドイツ憲法(基本法)は、財政赤字の上限を対GDP比0.35%と制限している。変更するには上下両院で3分の2以上の賛成が必要である。ドイツは、第一次世界大戦の敗戦後に天文学的インフレに陥った。このときの教訓が、憲法に引き継がれている。IMF(国際通貨基金)は、この規制を緩めるように要請しているほどだ。

     

     

     

    テイカカズラ
       

    欧州最大のドイツ経済は、4~6月期GDPが再びマイナス成長へ転落した。インフレ鈍化でも賃上げが追いつかず、頼みの個人消費にも陰りが目立つのだ。GDPで日本を抜いたドイツだが、青息吐息の状態だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月11日付)は、「欧州経済『回復失速の兆し』賃上げ追いつかず消費不振」と題する記事を掲載した。

     

    オランダ金融大手INGのシニアエコノミスト、バート・コリーン氏は、「欧州経済はセーヌ川の水質に似ている。一見して良く見える日もあるが、全体では懸念が絶えないほど悪い」と皮肉る。11日に閉幕するパリ五輪では水質の悪化が問題となり、トライアスロンの公式練習が中止に追い込まれた。

     

    (1)「欧州連合(EU)統計局がまとめた46月期のユーロ圏の実質GDPは、速報値で前期比0.%増だった。プラス成長は2四半期連続で、成長率は年率換算で1.%だ。ウクライナ危機に伴う急激なインフレが峠を越え、景気底入れの薄明かりが差し始めた。個人消費などが堅調な米国と対照的に、欧州は景気後退の瀬戸際で推移してきた。ロシアのウクライナ侵略に伴う資源高で所得が流出し、一時は貿易赤字が定着。欧州中央銀行(ECB)はインフレ抑制へ急激な利上げを進め、金利負担が企業や家計の重荷になってきた」

     

    欧州経済は、パンデミックとロシアのウクライナ侵攻と二重の経済負担を負っている。急激なインフレも峠を越えたが、病み上がり経済の状態である。

     

    (2)「問題は景気回復の持続力だ。ユーロ圏GDPの3割を占めるドイツは前期比0.%減と、域内の主要国で唯一のマイナス成長に陥った。フランスの0.%増やイタリアの0.%増と対照的で欧州経済の足を引っ張る。独連邦銀行(中央銀行)もプラス成長を想定していた。国際通貨基金(IMF)は7月に改訂した世界経済見通しで、ユーロ圏の成長率が2024年に0.%、25年に1.%になると分析した。ECBもほぼ同様の分析で、成長率が1%台に戻るのは25年と時間を要する」

     

    ドイツは、ユーロ圏GDPの3割を占めるが、4~6月期は前期比0.%減とマイナス成長へ逆戻りである。フランスやイタリアの回復からは遅れている。

     

    (3)「先行きの景気回復シナリオは、不透明感が強まる。ECBのラガルド総裁は7月に「経済成長のリスクは下振れ方向に傾いている」と警鐘を鳴らした。米モルガン・スタンレーは25年の成長率予測を1.%と従来から0.1ポイント引き下げた。誤算を招きかねないのが、個人消費の不振 投資・生産の低迷 保護主義の高まり――という3つの不安材料だ。小売売上高は5月が前月比0.%増、6月が0.%減と一進一退が続く。EUの執行機関である欧州委員会はインフレ鈍化による個人消費の持ち直しが景気回復をけん引するとみていた」

     

    ユーロ圏経済の先行きは、ドイツの不調で不透明感が高まっている。個人消費の不振で、投資や生産の低迷を招いている。米国大統領にトランプ氏が復帰すれば10%の関税が負担になる。

     

    (4)「ドイツでは、ストライキによる賃上げで実質賃金が上向きつつあるが、歴史的なインフレに完全には追いついていない。消費回復が持続力を伴うかは不透明感が残る。独連邦統計庁によるとドイツの実質賃金指数は16月平均で102と、新型コロナウイルス禍前の19年の105をまだ下回る。コロナ前の購買力を取り戻すのは早くても25年となる見込みだ」

     

    ドイツの賃上げ率が、物価上昇率を下回っている。これが、消費回復の足かせになっている。コロナ前の購買力を取り戻すのは早くても25年の見込みという。景気回復は、来年までお預けだ。

     

    (5)「政治リスクの高まりも欧州経済の死角となる。11月の米大統領選では、共和党のトランプ前大統領が全輸入品に一律10%の関税を課すと唱えた。工業立国のドイツにとって米国は最大の輸出相手国で保護主義の高まりが直撃する。ドイツ経済研究所(IW)はトランプ氏が返り咲いた場合、4年間でドイツ経済に最大1500億ユーロ(約24兆円)の経済損失をもたらすと試算する。米中の貿易摩擦の激化に巻き込まれる。ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係やウクライナ支援が揺らげば「地政学上の不確実性が投資に悪影響を及ぼす」と警告する

     

    欧州は、トランプ氏が復活すると大揺れ必至である。米国から10%関税をかけられ、ウクライナ支援を打ち切られることになれば、経済への影響が大きいからだ。

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    ドイツは、中国との経済関係を重視している。中国が、これを利用してドイツ国内でスパイ活動を積極化させている。ドイツ情報機関の連邦憲法擁護庁(BfV)は4月24日、国内企業に対し、中国政府による産業スパイ活動を警戒すべきと伝えた。異例の事態だ。中国は、かねてから産業スパイ活動によって重要技術を窃取していると非難されてきたが、ドイツからも警戒されることになった。 

    『ロイター』(4月25日付)は、「中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内企業に警告」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ情報機関の連邦憲法擁護庁(BfV)は24日、国内企業に対し、中国政府による産業スパイ活動を警戒すべきと伝えた。中国に対して甘い考えを持ったり、過度に依存したりしないよう警告した。

     

    (1)「BfV高官は、中国がドイツ企業のセキュリティーに与える影響に関するイベントで、「中国との貿易における過度に楽観的または過度に前向きとみられる姿勢が、これらの企業の事実上の解体につながった例は数多くある」と指摘。問題の1つは、中国企業は完全な民間企業と主張しているものの実際は全て中国政府の影響下にあり、その支援を受けていることだとした。また、中国の最終的な目標は2049年までに世界最大の経済、技術、政治大国になることだと言及。中国が特に関心を持っている分野として航空宇宙技術、ロボット工学、エレクトロモビリティー、省エネ技術、バイオメディカル、情報技術などとした」 

    ドイツ連邦憲法擁護庁も、中国共産党が2049年の建国100年までに世界秩序へ挑戦する計画を把握している。これは、西側諸国共通の認識になっている。中国包囲網が作られているのは、こうした中国による挑戦への抑止を目指したものだ。中国は、下線のような先端技術を窃取しようと狙っていると指摘している。 

    ドイツ連邦憲法擁護庁が、中国スパイへの警戒を呼掛けているのは、中国による相次ぐスパイ事件が摘発された結果である。

     

    『ロイター』(4月23日付)は、「スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕、独検察 中国に情報提供」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ連邦検察庁は23日、中国の情報機関のためにスパイ活動を行ったとして、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」所属の欧州議会議員のスタッフを逮捕したと発表した。 

    (2)「逮捕されたのはマクシミリアン・クラー欧州議員のスタッフ。欧州議会の協議と決定に関する情報を中国の情報機関に提供していたという。このスタッフは、ブリュッセルとドイツのドレスデンに在住。検察庁によると、ドイツ国内の反中国派に対するスパイ活動も行っており、22日にドレスデンで逮捕された。検察庁は「外国の情報機関のために働いた特に深刻なケース」としている」 

    EU(欧州連合)議会議員のスタッフが逮捕された。ドイツ検察庁は、「深刻なケース」としている。 

    (3)「フェーザー内相は、事実であれば「欧州の民主主義に対する内部からの攻撃だ」とし「そのようなスタッフを雇った人間にも責任がある」とし、徹底的に調査すると述べた。昨年4月にクラー議員は、このスタッフが中国のためにロビー活動を行っているとの欧州誌「ザ・ヨーロピアン・コンサバティブ」の批判に反論していた。同議員は当時「私に対する新たな中傷記事だ。中国生まれのスタッフに関する記事だが、彼はドイツ市民でAfDの党員である。ドレスデンで学び、流ちょうなドイツ語と英語を話す。うそだらけだ」とXに投稿していた。AfDの報道官は逮捕について「非常に気掛かりだ。捜査を支援するためあらゆることをする」と述べた」 

    AfDは、極右政党である。最近、ドイツ国内では支持率を高めている。移民排斥など過激な発言が人気を高めているもの。中国スパイの事件は、これだけでない。ドイツ人による産業スパイ事件も摘発された。

     

    『ロイター』(4月23日付け)は、「ドイツ、中国に軍事転用技術提供の疑いで3人逮捕 海軍強化の恐れ」と題する記事を掲載した。 

    ドイツ当局は22日、中国の情報機関と連携し軍事転用が可能な技術情報を中国に提供した疑いで、ドイツ人3人を逮捕したと発表した。海軍の強化につながる恐れがあるとしている。 

    (4)「ドイツ検察当局によると、逮捕されたのはデュッセルドルフで会社を経営する夫婦と、中国の情報機関である国家安全省(MSS)職員のエージェントとされる人物。夫婦は自らが経営する会社を通してドイツの大学と協力協定を締結し、軍艦などの船舶エンジンに使用できる機械部品についてMSS向けの調査を準備するなどした疑いがある。このほか、容疑者らはMSSの代理としてドイツで特殊レーザー装置を購入し、許可なく中国に輸出した疑いが持たれている」 

    中国の情報機関MSSで、エージェントとされる会社経営のドイツ人夫婦が逮捕された。この夫婦は、ビジネスを装って中国スパイになっていた。 

    (5)「検察当局によると、逮捕はドイツの国内情報機関が収集した情報に基づいて行われた。ドイツのブッシュマン法相は、「逮捕時、容疑者らは中国の海上戦闘力の拡大に役立つ可能性がある研究プロジェクトについてさらなる交渉を行っていた」と指摘。フェーザー内相は、中国のスパイ活動によるビジネス、産業、科学に対する重大な脅威を政府は監視していると述べた 

    ドイツ検察当局は、国内情報機関が収集した情報によって逮捕したと、わざわざ言明している。これは常時、米国情報機関とも協力していることを窺わせている。米国は、幅広い情報網で他国のリスク回避にも協力しているからだ。先にロシアで起こったテロ事件も、米国情報機関は事前に情報を把握して、ロシア当局へ連絡した経緯がある。

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    日本・ドイツ・イタリアは、第二次世界大戦を「枢軸国」として戦ったが、共に敗戦の憂き目にあった国々である。いずれも戦争で多くの死傷者を出したので、戦後のベビーブームも同じ様相を呈した。それが今、「団塊の世代」の退職期を迎えている。ドイツでも、ベテラン従業員の後を継ぐ人材不足に直面し「ロボット」が代役を果す時代を迎えている。 

    『ロイター』(11月2日付)は、「『団塊世代』退職で人手不足、ロボット導入急ぐドイツ中小企業」と題する記事を掲載した。 

    機械部品メーカーのS&Dブレヒでは、研削加工部門長が退職の時期を迎えようとしている。深刻な人手不足に悩むドイツでは、こうした熟練を要する一方で危険で手を汚す仕事を引き受ける人はほとんどいない。S&Dブレヒは、このベテラン従業員の後継にロボットを起用する予定だ。

     

    (1)「S&Dブレヒでマネージングディレクターを務めるヘニング・シュレーダー氏は、同社がここ数年自動化とデジタル化を推進している理由として、こうした人手不足の深刻化を挙げた。「特に製造分野や専門技能職において、ただでさえ困難な熟練労働をめぐる状況さらに悪化させる」。新たに研削加工部門のトップを探してくるのは難しい。シュレーダー氏はロイターに対し、「退職者の経験値が高かったからというだけでなく、こういう辛い仕事はもう誰もやりたがらないからだ」と語った。機械による研削加工には高熱と騒音が伴い、飛び散る火花による危険もある」 

    ロボットの能力が高まると同時に、人手不足が重なってロボットはなくてはならない存在である。 

    (2)「ドイツでは、働く女性の増加と移民の急増が近年の人口構成の変化を補ってきた。だが、ベビーブーム世代が引退していく一方で、労働人口に新たに加わる若い世代は出生率の低下によりはるかに少なくなっている。連邦雇用庁では、労働人口は2035年までに700万人減少すると予測している。給与・人事関連サービスをグローバル規模で提供するADPでチーフエコノミストを務めるネラ・リチャードソン氏は、これに似た変化は他の先進諸国にも影響を及ぼしていると指摘し、ロボット工学から人工知能(AI)に至るまで、高度な自動化技術の影響が広がっていくだろうと語る。リチャードソン氏はロイターに対し、「長期的には、こうした技術革新全般が労働の世界におけるゲームチェンジャーになる。あらゆる人の働き方が変わっていく」と述べた」 

    ロボット工学から人工知能(AI)に至るまで、高度な自動化技術の発展が、労働の世界のゲームチェンジャーとして人間の働き方を変える時代になった。

     

    (3)「自動車メーカーやその他の大手工業企業は、自動化に莫大な投資をしているため、ドイツのロボット市場の規模はすでに世界で4番目、欧州では最大となっている。ロボットの価格が低下し操作も容易になっているため、S&Dブレヒのような製造業からパン製造、クリーニング、スーパーマーケットに至るまで、ドイツ経済の屋台骨であり、家族経営の多い中小企業「ミッテルシュタント」でもロボットの活用が進んでいる。国際ロボット連盟によると、昨年ドイツで導入されたロボットは約2万6000台。過去にこれより大きな数字となったのは2018年だけで、その後はコロナ禍のため、かつての平均年4%という増加ペースは減速していた」 

    ドイツは、家族経営で行う企業比率が高い國だ。それだけに、人手不足に直面するが、その代役をロボットがこなす時代になった。その意味では、ロボットが家族に加わるのだ。 

    (4)「ファナック・ジャーマニーでマネージングディレクターを務めるラルフ・ウィンケルマン氏は、「ロボットは、人手不足で将来を危ぶまれていた企業の生き残りを可能にした」と語る。同社が販売する日本製ロボットの約半分は中小企業向けだ。ラルフ・ハートデーケン氏が経営するコンサルティング会社では、こうしたロボット活用へのシフトについて企業へのアドバイスを提供している。同氏によれば、自動化は進めたいが従業員の解雇はしたくないという企業では、定年退職による従業員減少を機にロボット導入を進める例が増えているという 

    下線部は、ドイツの家族経営の一端をのぞかせている。従業員がいる限りロボット導入を控え、その従業員が退職すればロボットへ切り替える。ドイツ中小企業の雰囲気が伝わる。

     

    (5)「産業用エレクトロニクス機器や制御装置の保護ステムを製造している家族経営のローレックでは、昨年初めてロボットを購入し、夜間も生産を続けられるようになった。すでに2台目のロボットも調達しており、自動化への投資を続ける計画だ。「朝、工場に来て電気をつけると、加工済みの部品が保管コンテナに収まっているというのは素晴らしい」と、マシアス・ローゼ最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。自動化が普及する背景には、ロボットの操作が簡単になり、プログラミングのスキルを必要としなくなったことがある」 

    下線部は、微笑ましい雰囲気だ。こういう形で、ロボットがドイツ中小企業へ浸透していくのであろう。 

    (6)「従業員20~100名の企業をターゲットとするスタートアップ、シェルパ・ロボティクスの共同創業者フロリアン・アンドレ氏によると、ほとんどのロボットにはスマートフォンのタッチパネルのようなヒューマン・マシン・インターフェースが備わっているという。かつてはロボット導入による失業を警戒していた労働者や労働組合でさえ、前向きになりつつある。ロボットの国際見本市オートマティカが6月に発表したアンケート結果では、ドイツの労働者の半数近くが、ロボットを人手不足対策に役立つものと見ていると回答した」 

    産業革命(18~19世紀)初期は、労働者が職を奪うとして反対し、「機械打ち壊し」が行われた。現代は、ロボットを敵視せず仲間として受け入れる。高度産業化時代の大きな変化である。AI(人工知能)もチャットGPT(生成AI)も、弊害を抑制しながら活用するのであろう。

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