勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    日本・ドイツ・イタリアは、第二次世界大戦を「枢軸国」として戦ったが、共に敗戦の憂き目にあった国々である。いずれも戦争で多くの死傷者を出したので、戦後のベビーブームも同じ様相を呈した。それが今、「団塊の世代」の退職期を迎えている。ドイツでも、ベテラン従業員の後を継ぐ人材不足に直面し「ロボット」が代役を果す時代を迎えている。 

    『ロイター』(11月2日付)は、「『団塊世代』退職で人手不足、ロボット導入急ぐドイツ中小企業」と題する記事を掲載した。 

    機械部品メーカーのS&Dブレヒでは、研削加工部門長が退職の時期を迎えようとしている。深刻な人手不足に悩むドイツでは、こうした熟練を要する一方で危険で手を汚す仕事を引き受ける人はほとんどいない。S&Dブレヒは、このベテラン従業員の後継にロボットを起用する予定だ。

     

    (1)「S&Dブレヒでマネージングディレクターを務めるヘニング・シュレーダー氏は、同社がここ数年自動化とデジタル化を推進している理由として、こうした人手不足の深刻化を挙げた。「特に製造分野や専門技能職において、ただでさえ困難な熟練労働をめぐる状況さらに悪化させる」。新たに研削加工部門のトップを探してくるのは難しい。シュレーダー氏はロイターに対し、「退職者の経験値が高かったからというだけでなく、こういう辛い仕事はもう誰もやりたがらないからだ」と語った。機械による研削加工には高熱と騒音が伴い、飛び散る火花による危険もある」 

    ロボットの能力が高まると同時に、人手不足が重なってロボットはなくてはならない存在である。 

    (2)「ドイツでは、働く女性の増加と移民の急増が近年の人口構成の変化を補ってきた。だが、ベビーブーム世代が引退していく一方で、労働人口に新たに加わる若い世代は出生率の低下によりはるかに少なくなっている。連邦雇用庁では、労働人口は2035年までに700万人減少すると予測している。給与・人事関連サービスをグローバル規模で提供するADPでチーフエコノミストを務めるネラ・リチャードソン氏は、これに似た変化は他の先進諸国にも影響を及ぼしていると指摘し、ロボット工学から人工知能(AI)に至るまで、高度な自動化技術の影響が広がっていくだろうと語る。リチャードソン氏はロイターに対し、「長期的には、こうした技術革新全般が労働の世界におけるゲームチェンジャーになる。あらゆる人の働き方が変わっていく」と述べた」 

    ロボット工学から人工知能(AI)に至るまで、高度な自動化技術の発展が、労働の世界のゲームチェンジャーとして人間の働き方を変える時代になった。

     

    (3)「自動車メーカーやその他の大手工業企業は、自動化に莫大な投資をしているため、ドイツのロボット市場の規模はすでに世界で4番目、欧州では最大となっている。ロボットの価格が低下し操作も容易になっているため、S&Dブレヒのような製造業からパン製造、クリーニング、スーパーマーケットに至るまで、ドイツ経済の屋台骨であり、家族経営の多い中小企業「ミッテルシュタント」でもロボットの活用が進んでいる。国際ロボット連盟によると、昨年ドイツで導入されたロボットは約2万6000台。過去にこれより大きな数字となったのは2018年だけで、その後はコロナ禍のため、かつての平均年4%という増加ペースは減速していた」 

    ドイツは、家族経営で行う企業比率が高い國だ。それだけに、人手不足に直面するが、その代役をロボットがこなす時代になった。その意味では、ロボットが家族に加わるのだ。 

    (4)「ファナック・ジャーマニーでマネージングディレクターを務めるラルフ・ウィンケルマン氏は、「ロボットは、人手不足で将来を危ぶまれていた企業の生き残りを可能にした」と語る。同社が販売する日本製ロボットの約半分は中小企業向けだ。ラルフ・ハートデーケン氏が経営するコンサルティング会社では、こうしたロボット活用へのシフトについて企業へのアドバイスを提供している。同氏によれば、自動化は進めたいが従業員の解雇はしたくないという企業では、定年退職による従業員減少を機にロボット導入を進める例が増えているという 

    下線部は、ドイツの家族経営の一端をのぞかせている。従業員がいる限りロボット導入を控え、その従業員が退職すればロボットへ切り替える。ドイツ中小企業の雰囲気が伝わる。

     

    (5)「産業用エレクトロニクス機器や制御装置の保護ステムを製造している家族経営のローレックでは、昨年初めてロボットを購入し、夜間も生産を続けられるようになった。すでに2台目のロボットも調達しており、自動化への投資を続ける計画だ。「朝、工場に来て電気をつけると、加工済みの部品が保管コンテナに収まっているというのは素晴らしい」と、マシアス・ローゼ最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。自動化が普及する背景には、ロボットの操作が簡単になり、プログラミングのスキルを必要としなくなったことがある」 

    下線部は、微笑ましい雰囲気だ。こういう形で、ロボットがドイツ中小企業へ浸透していくのであろう。 

    (6)「従業員20~100名の企業をターゲットとするスタートアップ、シェルパ・ロボティクスの共同創業者フロリアン・アンドレ氏によると、ほとんどのロボットにはスマートフォンのタッチパネルのようなヒューマン・マシン・インターフェースが備わっているという。かつてはロボット導入による失業を警戒していた労働者や労働組合でさえ、前向きになりつつある。ロボットの国際見本市オートマティカが6月に発表したアンケート結果では、ドイツの労働者の半数近くが、ロボットを人手不足対策に役立つものと見ていると回答した」 

    産業革命(18~19世紀)初期は、労働者が職を奪うとして反対し、「機械打ち壊し」が行われた。現代は、ロボットを敵視せず仲間として受け入れる。高度産業化時代の大きな変化である。AI(人工知能)もチャットGPT(生成AI)も、弊害を抑制しながら活用するのであろう。

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    韓国とドイツは、対中輸出依存度が高いという共通点もあり、景気低迷に直面している。韓国は半導体、ドイツは自動車の輸出で中国依存度が高い。日本も影響を受けているはずだが、大きな問題にはなっていない。この差はどこにあるのか。日本は、中国市場へ輸出製品で特化していないのが難を免れている理由であろう。 

    『中央日報』(9月27日付)は、「好調だった韓国とドイツ、成長率がともに下落…産業集中と中国依存がそっくり」と題する記事を掲載した。 

    韓国経済とドイツ経済が同病相憐れむ状況に陥っている。同様の経済構造のためだ。韓国は半導体、ドイツは自動車の産業集中度が大きい。特定の産業に頼って経済が成長しただけに弱点を露出したという見方が出ている。また、両国とも対中輸出依存度が高い。中国の景気鈍化がそのまま景気低迷につながる。 

    (1)「韓国とドイツは最近経済が力を失っている。経済協力開発機構(OECD)は19日、韓国の今年の経済成長見通しを1.5%と発表した。6月の見通しと同じだ。ドイツは今年の成長率がマイナス0.2%と予想した。米国が1.6%から2.2%に、日本が1.3%から1.8%に成長見通しを引き上げたのと対照的だ。高金利の余波で輸出中心の国は厳しいという評価が出ているが、その理由だけでは説明にならない。同じように輸出中心の経済構造である日本の成長率は今年25年ぶりに韓国を上回る見通しだ」 

    日本は、対GDPの輸出依存度は17.89%(2022年)で、ドイツ(同39.92%)や韓国(同41.45%)に比べてはるかに低い。中国不況の影響は、こういう輸出依存度の多寡にある。

     

    (2)「韓国経済研究院によると、2021年にドイツの総付加価値で製造業が占める割合は20.8%で、G7平均の14.1%より高く、米国の10.7%、英国の9.8%の2倍水準だ。自動車など製造業への依存度がそれだけ高いという意味だ。高金利と緊縮による需要減少は製造業製品購入余力を落としてしまう。また、ドルの価値が上がっただけに原材料輸入による費用負担も大きくなる構造だ」 

    ドイツは、製造業のウエイトが高いことで分るように輸出依存度を高めている。ドイツの今年のGDPがマイナス成長になる理由の一つはエネルギー高も響いている。 

    (3)「特に特定品目への依存度が高い。韓国貿易協会によると、昨年のドイツの輸出額のうち自動車が占める割合は10.6%に達した。部品まで含めば15%に迫るという分析が出ている。自動車販売不振が景気鈍化に直結する構造だ。ドイツはエンジン車に集中したため先端技術だけでなく電気自動車産業でも遅れをとった。市場調査機関SNEリサーチによると1~6月の電気自動車シェアは中国BYDが20.9%、米テスラが14.4%。中国上海自動車が7.5%の順だ。ドイツのフォルクスワーゲンは6.7%で4位だ」 

    ドイツの自動車輸出は、エンジン車である。中国はEV(電気自動車)が大きく伸びているので、このEVブームに乗れなかった。

     

    (4)「欧州が最近中国の電気自動車補助金調査を始めたのも危機感を見せる。貿易協会のチャン・サンシク動向分析室長は「ドイツ最大の黒字品目だった自動車が最大赤字品目に変わるという見通しまで出ている。EUの対中電気自動車輸入の割合は5%程度だが2030年には20%まで上がるという予想も出ている。ドイツの製造業競争力が落ちた状況でシェアまで押されかねない状況」と話した」 

    ドイツ最大の輸出での稼ぎ手であった自動車が、逆転して赤字になることで経済成長に響いている。 

    (5)「経済構造がドイツと似た韓国には他人事でない。韓国の製造業の割合は2021年に27.9%でドイツより高かった。半導体という特定産業への依存度が高い点でも似ていた。総輸出で半導体が占める割合は2020年に19.4%、2021年に19.9%に達した。半導体の好況は貿易収支黒字につながった。だが今年1~8月の半導体輸出が全体で占める割合は14%水準に減った。月間輸出が昨年10月から11カ月連続で減少しているのはこのためだ。延世(ヨンセ)大学経済学部のキム・ジョンシク名誉教授は「半導体のほかにバッテリーやバイオなど今後韓国の輸出を分散し責任を持つ産業を育成しなければならない」と話した」 

    韓国は、半導体輸出で稼いできた。それが、ドイツの自動車と同様に落ち込んでいる。特定品目に依存する危険性が良く表れている。

     

    (6)「中国依存度が高い点でも似ている。国連国際貿易統計によるとドイツの昨年の輸出額のうち中国が占める割合は6.7%で、3番目に高かった。韓国は昨年の輸出で中国が占める割合が22.8%に達した。2位である米国の16.1%とも格差が大きかった。今年1~8月には19.7%に減ったが、輸出多角化ではなく中国の景気が振るわない影響が大きく作用した。梨花(イファ)女子大学経済学科のソク・ビョンフン教授は「中国の景気が予想より振るわないため依存度が高い韓国とドイツとも経済に直撃弾を受けたもの。中国ではなく東南アジアや中東など輸出できる国を多角化しなければならない」と話した」 

    輸出市場の多角化は、「言うは安く行うは難し」である。短期間に市場を変えることは、ライバル国がすでに基盤を築いているだけに困難である。韓国の場合は、個人消費の対GDP比が46.14%(21年)であるから、引上げに努力することが早道であろう。ドイツ(同49.25%)も同様だ。日本はそれほど自慢もできないが、53.83%(21年)で韓国やドイツよりも高い。

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    半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、欧州初となる工場をドイツに建設する方向で最終調整に入っている模様だ。ドイツのシュタルクワツィンガー教育・研究相が21日、台湾を訪問した。

     

    すでにこの1月、ショルツ連立政権の一角である自由民主党(FDP)の議員団が訪台している。FDP所属のシュタルクワツィンガー氏は、台湾の国家科学及び技術委員会の呉政忠主任委員と臨んだ技術協力協定調印式で、「同じ考えを持つパートナーとの協力を促進することは、私の省と私にとって非常に重要だ」と述べている。

     

    ドイツのショルツ政権は最近、日本政府と「合同会議」を開催して、「脱中国」政策を模索している。TSMCが、ドイツを欧州最初の工場立地として選ぼうとしている背景には、ドイツの「脱中国」政策との関連性があろう。

     

    『ロイター』(3月21日付)は、「ドイツ教育相が訪台、『尊敬するパートナー』と賞賛 中国は抗議」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ドイツのシュタルクワツィンガー教育・研究相が21日、台湾を訪問した。「尊敬するパートナー」である台湾を訪問できたことを光栄に思うと述べる一方、自身の訪問はドイツ政府の中国戦略とは無関係とも強調した。中国は同氏の訪台を「卑劣な行為」と呼び、独政府に抗議した。中国は台湾を自国の領土とみなし、軍事的、政治的、経済的圧力を強めている。ドイツ政府は現在、これまで緊密だった中国との関係を見直している」

     

    ドイツの教育・研究相が訪台したことは、通常ではごく稀なケースであろう。わざわざ、教育・研究相が訪台したのは、TSMCの工場建設や技術の保護などの打合せと見られる。

     

    (2)「北京では、中国外務省報道官が、シュタルクワツィンガー氏の「卑劣な行為」についてドイツ政府に強い抗議を行ったと述べた。記者会見で、ドイツは「台湾独立分離主義勢力との付き合いや交流、台湾独立分離主義勢力に誤ったシグナルを送ることを直ちにやめよ。台湾問題を利用して中国の内政に干渉することも、直ちにやめるべきだ」とした」

     

    中国は、ドイツを初めとして外交関係を結んでいる国が、台湾訪問することに極めて警戒的姿勢を見せている。「一つの中国」という原則に反するという理由だ。だが、台湾にも主権がある。国民を統治しているからだ。中国は、こういう現実を無視した主張を繰り広げている。ドイツのTSMCによる半導体工場建設問題は、どのようになっているのか。

     

    『日本経済新聞』(22年12月23日付け)は、「台湾TSMC、欧州初の半導体工場 ドイツに建設検討」と題する記事を掲載した。

     

    半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、欧州初となる工場をドイツに建設する方向で最終調整に入ったことが、12月23日分かった。年明けに経営幹部が現地入りし、地元政府による支援内容などについて最終協議する。早ければ2024年に工場建設を始める。投資額は数十億ドルに達する見通しだ。

     

    (3)「計画は、複数のサプライヤーの経営幹部が明らかにした。ドイツ東部のザクセン州ドレスデン市に工場を建設する予定だという。TSMCの広報担当者は日本経済新聞の取材に対し、「(工場建設について)いかなる可能性も排除しない」と述べた。工場建設が正式に決まれば、欧州連合(EU)にとって大きな追い風となる。欧州は、これまで半導体の多くを台湾などアジアから調達してきた。危機感を持つ欧州は域内での半導体生産の拡大に向け、「欧州半導体法」で官民が30年までに430億ユーロ(約6兆円)を投じる計画などを持つ。TSMCが予定する生産品目は、主にスマートフォンなどに搭載される「先端品」ではなく、「成熟品」といわれる「22~28ナノ品」になる見通し。自動車や家電製品などへの採用が想定される」

     

    ドイツのドレスデン市が、工場建設候補地という。生産品種は、中級品の「22~28ナノ品」でスマホなどに搭載されるという。

     

    (4)「関係者によると、TSMCは21年、顧客から欧州進出の要請を受けたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて検討を中止した。その後、欧州の大手自動車メーカーの間で、現地での半導体製造への需要が高まり、改めて工場建設を検討することになったという。あるサプライヤーの経営幹部は、新工場建設について「我々は顧客(TSMC)をサポートしたい」とした上で、「(実現には補助金などの)公的支援が必要になる」との見方を示した。欧州への進出にあたっては、人材の確保も課題となりそうだ。TSMCは米アリゾナ州に先端品の新工場を建設中で、数百人規模の技術者を派遣している。日本の熊本県にも500~600人の技術者を派遣する必要があるという」

     

    TSMCは、熊本で第二工場建設計画を発表している。これとの兼ね合いもあり、ドイツ工場建設計画は未だ発表されていない。中国にとっては、正式発表を受けてショックとなろう。

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    トヨタ自動車は、22年も3年連続で世界1の販売台数を達成した。EV(電気自動車)で出遅れていると指摘されながら、トヨタの強みは盤石という。S&Pの推計によれば、2030年も2位VW(ドイツ)に198万台の差をつけて、世界1位の座を守るという。

     

    『ブルームバーグ』(1月30日付)は、「トヨタが世界販売3年連続首位、当面盤石かー2位独VWとの差は拡大」と題する記事を掲載した。

     

    トヨタ自動車が、2022年の世界販売台数で3年連続で世界首位となった。世界的な半導体不足などによる生産制約はあったものの、中南米やアジアで販売を伸ばしたことが奏功した。独フォルクスワーゲン(VW)との差は拡大しており、市場ではトヨタの世界首位は当面揺るがないとの声も出ている。

     

    (1)「トヨタの30日の発表によると、子会社のダイハツ工業や日野自動車を含めたグループ全体の昨年の世界販売は前年比0.1%減の1048万3024台だった。VWは今月、22年の世界販売が同約7%減の826万2800台だったと発表していた。トヨタの主力市場である北米では、部品供給不足の影響を受けたほか、新型コロナウイルス感染拡大の影響が薄れた21年前半が好調だったことの反動が出て、トヨタ・レクサスブランドは前年比8.8%減の244万5125台となった。一方で、アジア地域ではコロナ禍からの経済回復や各国の経済刺激策などにより同6%増の332万4735台となったほか、中南米でも2割超の販売増となった」

     

    トヨタは、アジア・中南米・中東・アフリカで販売台数を伸している。地球規模的な強みを発揮している。

     

    (2)「VWは、16年に世界販売台数でトヨタを抜いて世界首位に立ってから4年連続でその座を維持していたが、コロナ禍で地盤とする欧州の販売が落ち込んだことなどで20年にトヨタにタイトルを奪還された。その後、両社の販売台数の差はさらに拡大しており、トヨタの世界首位は当面揺るがない可能性がある。S&Pグローバル・モビリティーの川野義昭アナリストは、「両社とも生産制約の影響は徐々に緩和傾向になり、全般的には緩やかな回復・成長となると中長期では見込まれる」と指摘」

     

    トヨタの世界首位は、当面揺るがない可能性があると指摘されている。

     

    (3)「トヨタは、インドなど南アジア地域の市場成長や中東・アフリカや南米などの地域での牽引が下支えするのに対し、「VWはロシアや欧州地域での市場自体の不透明性が残り、かつ欧州地域での電動車の拡大により新たにテスラや中華系OEMのプレイヤーの需要の高まりなどを受ける」とみているという」

     

    トヨタは、インドなど南アジア地域の市場成長や、中東・アフリカや南米などの地域での牽引が下支えする。各国の映像を見ていると、トヨタ・マークが頻繁に出てくる。強い販売網が構築されていることを示している。

     

    (4)「トヨタは、16日に23年のトヨタ・レクサス車の世界生産について1060万台を上限として取り組むと発表。ただ、1割程度下振れするリスクもあるとしており、車載半導体を中心とした部品不足や新型コロナウイルス感染拡大など不確定要因が依然多く、安定的に生産ができるようになるまではまだ時間がかかる見通しだとしている。22年の世界生産は902万6713台だった。また、世界景気見通しの悪化に伴う自動車需要の鈍化に対する懸念もある。VWのアルノ・アントリッツ最高財務責任者(CFO)は昨年12月のインタビューで、23年は前年よりも「さらに厳しい」年になるとし、自動車業界の成長は1桁になるとの見通しを示した

     

    VWは、欧州地域の販売で力強さを欠く。23年は、前年よりも厳しいと見込んでいる。

     

    (5)「S&Pの予測によると、トヨタの23年ライトビークル(乗用車と小型商用車)の販売見通しは約1039万4800台で、VWは約799万4800台。トヨタの販売台数は、30年時点でもVWを約198万台上回ることが見込まれるという」

     

    S&Pの予測では、トヨタが2030年でも2位のVWに対して、約200万台の差をつけるという。トヨタが盤石の強みを発揮する見通しだ。

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    ドイツは、西ドイツ時代に高成長を遂げた。東西ドイツ後は、統一負担が大きく低成長を余儀なくされた。だがその後、EU(欧州連合)誕生で共通通貨がユーロとなり、ドイツ経済は割安な通貨で得をしてEUの経済大国として復活した。さらに、ロシアからの安いエネルギーに依存して、競争力は抜群となって、日本経済との差を詰めてきたのである。

     

    だが、「好事魔多し」のとおり、ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアからの安いエネルギー依存が、すべて裏目になった。ドイツ製造業は、エネルギー高コストによって、破綻の際に立たされている。米国は、かねてからドイツのエネルギー政策が、「ロシア依存・脱原子力」でその危うさを指摘し続けてきた。米国の「予言」が的中した形だ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月30日付)は、「ドイツ産業、エネルギー高騰で崖っぷち」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツは9月29日、広範なエネルギー価格高騰への対応策を発表した。全土に経営破綻の波が押し寄せ、ドイツ最大の産業部門を支えるサプライチェーン(供給網)が断絶しかねないという懸念が企業の間で高まっていることを受けた措置だ。独政府は、ロシアのウクライナ攻撃後のエネルギー価格高騰から企業や消費者を保護する第4弾の措置として、電気と天然ガスの価格に上限を設ける方針を明らかにした。この背景には、長年ドイツ産業のエンジンを駆動し続けてきた豊富なロシア産エネルギーが枯渇し、企業が生産縮小や投資中止に乗り出したことがある。企業や消費者の信頼感は急落し、2008年の世界金融危機時に記録した最低水準に近づいている。

     


    (1)「ドイツは長年、欧州の成長をけん引し、製造業の中枢を担ってきたが、今や欧州で最も脆弱な経済の一つとなっている。ドイツ銀行のエコノミストは、個人消費や投資、純輸出の縮小により、来年の経済成長率はマイナス3.5%になると予測している。ドイツの4大シンクタンクは、エネルギー危機を理由に同国の経済成長予測を下方修正した。連邦政府に提出された年2回の報告書によると、春の時点では来年の成長予測は3.1%だったが、現在の予測はマイナス0.4%となっている。ガス不足はいずれ幾分解消されるだろうが、価格は危機前をはるかに上回る水準で推移する可能性があると報告書は警告している。「これはドイツにとって繁栄の永続的な喪失を意味する

     

    ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰が、ドイツ経済の首を締めることになった。脱原子力発電を進め、ロシアエネルギーへ大きく依存してきた裏目が、ドイツ経済を苦しめている。

     


    (2)「業界団体「ドイツ自動車工業会」が今月実施した調査によると、独自動車会社の10社に1社はエネルギーコスト高騰の結果、生産を減らしたと回答し、さらに3分の1がそれを検討していると回答した。同団体によると、半数以上の企業が予定していた投資を中止または延期し、4分の1近くが投資を国外にシフトしようとしている。ドイツ銀行のアナリストによると、ドイツの製造業界の生産高は今年が2.5%、来年は約5%減少する見込みだ。同国の近年の繁栄の基礎となってきた輸出は、インフレ調整後でコロナ前の水準を下回っている」

     

    ドイツの主要産業である自動車が、エネルギー高コストで国内生産が不利になった。国内投資を延期して海外へシフトせざるを得なくさせている。これは、国内経済を冷やす要因だ。

     


    (3)「エネルギー価格は構造的に高止まりする公算が大きいため、コスト高で市場から締め出されたドイツの生産設備のうち復活するのは一部に限られそうだとアナリストはみている。これは、労働人口の高齢化で既に圧迫されているドイツの長期的な成長力を低下させる可能性がある。
    S&Pグローバル ・マーケット・インテリジェンスのエコノミスト、ティモ・クライン氏は「現在のエネルギーコストとそれに伴うインフレ危機は、単なる循環的な現象ではなく、大きな構造的要素をはらんでおり、ドイツの経済見通しに対する深刻な中長期的ダメージを防ぐためには、政府の大幅な介入が必要だ」と述べた。

     

    エネルギー価格の構造的高止まりによって、ドイツ産業が長期的に大きな痛手を受けることは必至な情勢である。

     


    (4)「中国はドイツ最大の貿易相手国であり、多くの独企業にとって最大の単一市場だ。こうした中国への経済的な依存は、中国がロシアと対西側で結束を固めた場合、経済に一段と大きな衝撃をもたらすことになりかねない。政府当局者は今、それを懸念している」

     

    ドイツ企業は、多くが中国へ進出している。中ロ枢軸で両国が結束を固めれば、ドイツへの影響が懸念される。ドイツにとって、国際情勢の急変が企業経営へ大きな影響を与える局面になった。

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