勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ドイツは、西ドイツ時代に高成長を遂げた。東西ドイツ後は、統一負担が大きく低成長を余儀なくされた。だがその後、EU(欧州連合)誕生で共通通貨がユーロとなり、ドイツ経済は割安な通貨で得をしてEUの経済大国として復活した。さらに、ロシアからの安いエネルギーに依存して、競争力は抜群となって、日本経済との差を詰めてきたのである。

     

    だが、「好事魔多し」のとおり、ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアからの安いエネルギー依存が、すべて裏目になった。ドイツ製造業は、エネルギー高コストによって、破綻の際に立たされている。米国は、かねてからドイツのエネルギー政策が、「ロシア依存・脱原子力」でその危うさを指摘し続けてきた。米国の「予言」が的中した形だ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月30日付)は、「ドイツ産業、エネルギー高騰で崖っぷち」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツは9月29日、広範なエネルギー価格高騰への対応策を発表した。全土に経営破綻の波が押し寄せ、ドイツ最大の産業部門を支えるサプライチェーン(供給網)が断絶しかねないという懸念が企業の間で高まっていることを受けた措置だ。独政府は、ロシアのウクライナ攻撃後のエネルギー価格高騰から企業や消費者を保護する第4弾の措置として、電気と天然ガスの価格に上限を設ける方針を明らかにした。この背景には、長年ドイツ産業のエンジンを駆動し続けてきた豊富なロシア産エネルギーが枯渇し、企業が生産縮小や投資中止に乗り出したことがある。企業や消費者の信頼感は急落し、2008年の世界金融危機時に記録した最低水準に近づいている。

     


    (1)「ドイツは長年、欧州の成長をけん引し、製造業の中枢を担ってきたが、今や欧州で最も脆弱な経済の一つとなっている。ドイツ銀行のエコノミストは、個人消費や投資、純輸出の縮小により、来年の経済成長率はマイナス3.5%になると予測している。ドイツの4大シンクタンクは、エネルギー危機を理由に同国の経済成長予測を下方修正した。連邦政府に提出された年2回の報告書によると、春の時点では来年の成長予測は3.1%だったが、現在の予測はマイナス0.4%となっている。ガス不足はいずれ幾分解消されるだろうが、価格は危機前をはるかに上回る水準で推移する可能性があると報告書は警告している。「これはドイツにとって繁栄の永続的な喪失を意味する

     

    ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰が、ドイツ経済の首を締めることになった。脱原子力発電を進め、ロシアエネルギーへ大きく依存してきた裏目が、ドイツ経済を苦しめている。

     


    (2)「業界団体「ドイツ自動車工業会」が今月実施した調査によると、独自動車会社の10社に1社はエネルギーコスト高騰の結果、生産を減らしたと回答し、さらに3分の1がそれを検討していると回答した。同団体によると、半数以上の企業が予定していた投資を中止または延期し、4分の1近くが投資を国外にシフトしようとしている。ドイツ銀行のアナリストによると、ドイツの製造業界の生産高は今年が2.5%、来年は約5%減少する見込みだ。同国の近年の繁栄の基礎となってきた輸出は、インフレ調整後でコロナ前の水準を下回っている」

     

    ドイツの主要産業である自動車が、エネルギー高コストで国内生産が不利になった。国内投資を延期して海外へシフトせざるを得なくさせている。これは、国内経済を冷やす要因だ。

     


    (3)「エネルギー価格は構造的に高止まりする公算が大きいため、コスト高で市場から締め出されたドイツの生産設備のうち復活するのは一部に限られそうだとアナリストはみている。これは、労働人口の高齢化で既に圧迫されているドイツの長期的な成長力を低下させる可能性がある。
    S&Pグローバル ・マーケット・インテリジェンスのエコノミスト、ティモ・クライン氏は「現在のエネルギーコストとそれに伴うインフレ危機は、単なる循環的な現象ではなく、大きな構造的要素をはらんでおり、ドイツの経済見通しに対する深刻な中長期的ダメージを防ぐためには、政府の大幅な介入が必要だ」と述べた。

     

    エネルギー価格の構造的高止まりによって、ドイツ産業が長期的に大きな痛手を受けることは必至な情勢である。

     


    (4)「中国はドイツ最大の貿易相手国であり、多くの独企業にとって最大の単一市場だ。こうした中国への経済的な依存は、中国がロシアと対西側で結束を固めた場合、経済に一段と大きな衝撃をもたらすことになりかねない。政府当局者は今、それを懸念している」

     

    ドイツ企業は、多くが中国へ進出している。中ロ枢軸で両国が結束を固めれば、ドイツへの影響が懸念される。ドイツにとって、国際情勢の急変が企業経営へ大きな影響を与える局面になった。

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    ドイツ経済は、1990年の東西ドイツの統合後、経済成長失速に見舞われた。だが、EU(欧州連合)発足の1993年を機にして、ドイツにとって割安なユーロを武器に輸出急拡大を実現した。特に、ロシアや中国への接近が、ドイツ経済の起死回生につながった。

     

    その中ロが、西側諸国にとって安全保障上のライバルになった以上、ドイツのロシアや中国への政策は抜本見直しを迫られている。大きな衝撃である。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ドイツの牧歌的状況の終わり」と題するコラムを掲載した。

     

    先週末、ドイツは平常通りに見えた。柔和なオラフ・ショルツ首相は他の先進7カ国(G7)首脳やゲストたちを、バイエルン州のアルプス山脈に囲まれた豪華なエルマウ城に迎え入れた。しかし、外見は当てにならない。ドイツは第2次世界大戦後の連邦共和国の建国以来、最大の試練に直面している。

     


    (1)「これは突然起きたことだ。2020年の時点では、ほぼ全世界がドイツの独善的な自己評価に同意していた。つまり、ドイツは世界で最も成功した経済モデルを構築し、世界で最も野心的な気候変動対策に着手しておおむね成功し、極めて低コストで自国の安全保障と国際的な人気を確保する「価値に基づく外交政策」を完成させた、というものだ」

     

    これまで、ドイツの経済成長は順風満帆であった。対米外交では、独自性を主張して「我が道を行く」スタイルであった。中ロに太いパイプを築いてきたからだ。防衛費も対GDP比1%と最低に抑制してきた。この状況が、ロシアのウクライナ侵攻で、根本から引っ繰り返った。

     


    (2)「そのいずれも真実ではなかった。ドイツの経済モデルは世界政治に関する非現実的な想定に基づいており、現在の混乱を乗り切れる可能性は低い。ドイツのエネルギー政策は大混乱しており、他の国々にとって何をすべきでないかを示す格好の例となっている。ドイツの「価値に基づく外交政策」への評判は、ウクライナ支援をめぐる煮え切れない対応によって大きく傷ついた。そして、ドイツの安全保障専門家らは、非常に不愉快な真実を受け入れつつある。攻撃的なロシアと対峙(たいじ)すると、ドイツは欧州全体と同様に、安全保障面で米国に完全に依存するということだ」

     

    ドイツは、ウクライナ侵攻後に大慌てで米国から防空システムを購入した。防衛費も対GDP比2%へ引上げると発表し、「歴史的転換点」と国際情勢急変に驚愕した。日本と比べて、極めてナイーブであり過ぎたのだ。それまでのドイツは、日米一体化を日本外交の独自性喪失とみていたほど。ドイツは、目を覚ましたのだ。

     


    (3)「ショルツ氏と同氏の連立政権は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を受け、ドイツの基準で見れば一連の「革命的な変化」で対応してきた。ドイツは再軍備を始めているほか、出だしでつまずきながらもウクライナに兵器を供与している。野心的な気候変動政策を犠牲にしてまでも、ロシアからエネルギー面で独立するための第一歩を踏み出した。石炭火力発電所を徐々に復活させ、新たな天然ガス処理工場を建設する予定だ。欧州全体に対しては、もはや現実的に思えなくなった脱炭素の義務化の先送りを求めている」

     

    このパラグラフのように、ドイツは空想的世界でうたた寝を愉しんでいた。エネルギー政策は、ロシア(天然ガス)とフランス(原発)に依存し、自らは手を汚さずに気候変動政策に熱中してきた。これらの人任せのエネルギー安保政策が破綻したのだ。かねてから、米国が厳しく批判して来た点である。

     

    (4)「しかし、本当の仕事はまだなされていない。現代ドイツの国づくりは、何よりも経済プロジェクトだった。1949年に再建された瞬間から、中心的な目標は経済成長だった。経済成長は戦争による破壊を修復し、平和的な西欧への統合を促進し、共産主義の魅力を低下させた。国民の多大な努力、政治家の現実的な政策、企業経営陣の技能と決意、そして米国主導の世界秩序の形成がもたらした望ましい国際環境により、ドイツ経済は最高潮に達した」

     

    ドイツは、米国主導の世界秩序(NATO)の下で、経済的繁栄を謳歌してきた。この批判は、安倍政権登場までの日本へも向けられた批判である。世界の安全保障政策に責任を分かち合わないという共通の批判だ。

     


    (5)「近年のドイツの経済的な奇跡は、工業力、ロシアから調達する安いエネルギー、世界市場(とりわけ中国市場)へのアクセスという三つの要素に依拠してきた。現在、これらの全てが脅威にさらされている。1世紀にわたる産業界の取り組みを通じてドイツが身に付けてきた自動車の技術は、電気自動車(EV)へのシフトによる挑戦を受けている。19世紀以降、自国の技術で世界をけん引してきた化学業界は、世界的な競争が激化する中、環境面での試練に直面している」

     

    ドイツの経済的な奇跡は、次の三つの要素に依存してきた。

    1)高い工業力水準

    2)ロシアから調達する安いエネルギー

    3)中国市場へのアクセス

     

    ドイツは、前記の「成長三要素」のうち、ロシアを失い、中国はセーブされる。大きな痛手になることは避けられまい。

     

    (6)「ショルツ氏は、リベラルな価値観の重要性や気候変動の危険性に関して、理論上はジョー・バイデン米大統領に賛同するかもしれない。しかし、ドイツの実情を踏まえて計算するはずだ。当然ながら、それはロシアや中国との関係をいかに修復すべきか、という考え方につながる。バイデン氏の仕事は、ショルツ氏とともに西側の価値観を賛美することではなく、米国による安全保障の傘には代償が伴うことを独政府に理解させることだ。世界中で危機が拡大し深刻化している今、米国の政治的現実を考えれば、ドイツは米国を支えるためにさらに行動しなければ米国からの支援継続を期待することはできない」。

     

    ドイツは、いずれ自国の国益追求でロシアや中国の関係修復に動き出すかも知れない。だが、ドイツは安全保障で米国を助ける行動が求められる。そうでなければ、米国から安保上のメリットを受けられないことを知るべきである。日本は、すでに日米安全保障で同一歩調を取っている。ドイツも、同じことが求められるであろう。

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    EU(欧州連合)は最近、中国の新疆ウイグル族弾圧にからむ警察の秘密資料が流出した以降、中国への警戒感を強める。ドイツ政府は、ドイツ企業の対中投資について保証を拒否するなど、厳しい対応を見せているのだ。

     

    ドイツ企業は、すでに2年前から対中投資について慎重な姿勢を見せていたことがわかった。ナチスヒットラーのユダヤ人虐殺事件の連想から、素早く他国へ分散投資に動いていたのだ。この動きは、他のEU企業にも影響を及ぼす可能性が出てきた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月11日付)は、「独中企業の蜜月関係にすきま風、投資にも変調」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツと中国の企業は長らく、これ以上は考えにくいほど緊密な関係を維持してきた。だがここにきて、友情と利害関係で結ばれた絆にほころびが生じてきているようだ。

     

    (1)「最近の例では、中国で企業が政治絡みの理由で損失を被った場合に補償する保険について、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)がドイツ政府から更新を拒否されたとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先週報じた。独政府は、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡る懸念が理由だと説明しており、新疆地区にはVWの工場がある。同社は、自社の工場で強制労働は行われていないとした上で、中国が世界の経済成長をけん引するとの見方に変わりはないと述べた」

     

    VWは、中国市場が稼ぎの筆頭になるほど,中国へ傾斜している。外資の自動車企業では、最も早く中国へ進出した経緯がある。その点で、日本車は最後発であったが、今やドイツ車全体を追い抜く勢いである。

     

    ドイツ企業は、中国で人権問題が言及されると、直ぐに反応せざるを得ない歴史の十字架を背負っている。中国へは、これ以上の深入りをセーブせざるを得ないのであろう。

     


    (2)「ドイツに限らず欧州企業の幹部からは最近、中国についてさまざまな発言が出ている。独化学大手BASFの最高経営責任者(CEO)は、英誌『エコノミスト』とのインタビューで中国について強気の見方を示した。一方、欧州連合(EU)の在中国商工会議所が4月に行った調査では、既存もしくは計画中の投資を他国に移すことを検討していると回答した企業が4分の1近くに達した。この割合はここ10年で最も高い水準だ。こうしたセンチメント調査はうのみにしない方が賢明だが、投資支出に関する実際のデータも同じような傾向を示している。しかもこのデータは、春先に始まった上海のロックダウン(都市封鎖)の混乱ぶりを受けて中国への懐疑的な見方が広がり始めるより前のものだ」

     

    ドイツ企業の対中投資は、すでに曲がり角を回った。中国市場を絶対視する雰囲気ではない。中国の暗黒部分に気づき始めたのだろう。

     


    (3)「ここ10年の大半は、ドイツの海外直接投資に占める中国の割合が、欧州を除くと1位か2位で、2008年の金融危機以降はこの流れが加速した。特に2010年代半ばには、アジアの他の国々は存在感が薄かった。ドイツの対中投資は20年前半にいったん落ち込んだが、その後は力強く盛り返した。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータによると、ドイツから中国本土および香港への直接投資は21年末までにネットベースで64億ユーロ(約9030億円)に回復し、新型コロナウイルス流行前の19年の2倍近くに達した。だが同時に、奇妙なことが起きていた。それは、同じ時期に、他のアジア諸国向け投資が142億ユーロと、19年の3倍以上に急増していたことだ」

     

    ドイツ企業は、対中投資を増やす中で他のアジア諸国向け投資をそれ以上に増やしている。その増加幅は、他のアジア諸国向け投資が対中投資をかなり上回っていることだ。

     

    (4)「このことから、デカップリングとは言わないまでも、こうした投資分散の傾向は、ゼロコロナ政策やウクライナでの戦争を巡るロシアへの黙認姿勢で中国との緊張が高まる以前から始まっていたことがうかがえる。新疆地区の問題を巡りEUが21年前半に対中制裁を科すと、中国は対抗措置として欧州議会のメンバー数人に制裁を科し、EUと中国の投資協定は事実上とん挫。これが尾を引いている可能性がある」

     

    21年までに、ドイツ企業は対外投資国の選別を始めていたことが分る。中国からASEAN(東南アジア諸国連合)の発展性に注目していて、対外投資の軸足を動かしていたのだ。新疆ウイグル族弾圧事件の表面化に反応していることを覗わせている。

     


    (5)「ドイツ政府が(中国へ)圧力を強めたのは20年からで、サプライチェーン(供給網)問題をきっかけに、経済相が中国への過度な依存に警鐘を鳴らした。さらにドイツでは21年に連立政権が誕生し、中国の人権問題を声高に批判している緑の党が政権に加わった。ドイツの企業は中国に多額の投資を行っており、撤退することは考えにくいが、国としては脱中国を進めている。世界貿易においてドイツは大きな影響力を持つ。世界銀行によれば、20年のドイツの物品貿易額は同国国内総生産(GDP)の66%に相当する。ドイツが行くところには、他の国々もすぐについていくかもしれない」

     

    ドイツで、21年末に新たな連立政権が誕生した。中国の人権問題を声高に批判している緑の党が、対中批判の先頭に立っている。外相は、緑の党代表が務めており将来、対中投資の禁止まで検討しているほど。現在の連立政権が長続きすれば、ドイツの対中関係はかなりの変化が起こりそうだ。

     

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    中国政府は、長年にわたり行なっている新疆ウイグル族弾圧に関する秘密資料が、世界14のメディアで5月16日、同時公開されて大きな波紋を呼んでいる。

     

    米国務省のプライス報道官は5月24日の記者会見で「衝撃を受けた」と述べた上で、「今回の新たな報道は、中国当局による残虐行為の証拠をさらに追加するものだ」と指摘。収容政策に関する習近平国家主席ら指導部の指示について「組織的な取り組みが中国政府の最高レベルの承認なしに実施されるとは考えにくい」と話した。

     


    英国のトラス外相は24日の声明で「新たな証拠は、強制労働や宗教の自由への厳しい制限、親子の分離、強制的な出産制限や大規模投獄など、中国政府がウイグル族を並外れた規模で標的にしていることを示している」とし、引き続き中国に説明を求めていくと表明。

     

    AP通信などによると、ドイツのベーアボック外相は5月24日に行った中国の王毅国務委員兼外相とのオンライン会談で、報道を引き合いに出し「人権は国際秩序の原理の一部だ。こうした告発に、中国側が対応することが重要だと考えている」として「透明性のある調査」を求めた。以上の報道は,『毎日新聞 電子版』(5月25日付)から引用した。

     

    ドイツは、ナチスによるユダヤ人弾圧の生々しい記憶を抱えているだけに、敏感に反応している。これまでドイツは、中国融和路線を貫いてきた。今回の一件では、中国と訣別するほどの強い姿勢を見せている。

     

    『大紀元』(5月31日付)は、「独首相、『中国融資は危機の源』と批判 対中依存軽減する考え」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのオラフ・ショルツ首相は5月27日、中国が世界中で行っている「不透明な融資」は、新たな債務危機を引き起こす恐れがあると警鐘を鳴らした。

     

    (1)「ショルツ首相はシュツットガルトで開催されたカトリック教会の討論会で、「中国の不透明な融資が発展途上国や新興国への脅威となっている。新たな債務危機を引き起こしかねない」と批判した。中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」を通して低所得国に巨額の融資を提供し、「債務のワナ」を仕掛けていると批判を受けている。ショルツ氏は、欧州連合(EU)が昨年12月に発表した3000億ユーロ(約41兆1000億円)規模の世界投資構想「グローバル・ゲートウェイ」についても言及した。同構想は、中国の「一帯一路」に対抗する「真のもう一つの選択肢」になるとしている」

     


    ドイツは、中国の「一帯一路」融資が発展途上国を「債務の罠」に陥れていると批判、EUが、中国搾取を阻止すべく約41兆円規模の世界投資構想について言及した。

     

    (2)「ショルツ氏はさらに、「ドイツは経済的な懸念から中国の人権侵害への批判を避けるべきではない」、「ドイツ経済は多角化を進めて中国への依存を弱めるべき」と指摘した。同氏は、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権迫害についても言及し、「我々はこの問題で沈黙することはない」と強調した。中国はドイツの主要な貿易相手国であるが、「独ショルツ首相の対中態度は同国の対中政策の変化の一部である」とブルームバーグは指摘した」

     

    ドイツは、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権弾圧を看過しないと強調した。具体的には、次のパラグラフで指摘されている。

     


    (3)「ドイツ経済省は5月27日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の中国での新規投資に対する保証を拒否した。中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に挙げている。ドイツ誌「シュピーゲル」が報じた。同国のロバート・ハーベック経済・気候保護相(緑の党)は24日、新疆の人権侵害に関する新たな報道を受け、「人権問題の優先度を高めていく」と述べた」

     

    ドイツ自動車企業は、中国自動車市場で牽引力になり、成長によって大きな果実を得てきた。しかし、中国政府による新疆ウイグル族弾圧を巡る極秘資料が、世界中に公開された現在、ドイツ政府は、VWの新規投資に対する政府保証を拒否することになった。

     


    (4)「ハーベック氏は、「経済の多角化を図り、中国への依存を弱める。また、ドイツ企業の中国投資申請の際には、人権侵害や強制労働などを排除すべく綿密な審査を行う」としている。人権を理由に投資保証が拒否されたのは今回が初めて。ドイツは今後、人権をより優先させる。中国の投資プロジェクトはいずれ禁止になるだろう」とハーベック氏は明かした」

     

    ドイツ政府の中国への怒りは、相当なものがある。今後、中国の人権弾圧を理由に、ドイツ企業の中国投資プロジェクトを禁止するというのだ。ナチスによる世紀の犯罪を抱えるドイツだけに、中国の人権弾圧に対して敢然と立ち向かう姿勢を見せている。この流れは他の西側諸国へ拡大するであろう。そうなれば、中国経済はパニックへ落込む。

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    ロシア経済は、資源輸出で支えているようなものだ。税収の4割が資源から得た利益である。その大黒柱を支えてきたのがドイツの旺盛な需要である。ロシアが輸出している天然ガスの内、ドイツは15.9%(2020年:米国エネルギー情報局調べ)と断トツである。ドイツが、ロシア経済制裁に最後まで慎重であった理由は、このエネルギー問題であった。

     

    そのドイツが、ウソのように「脱ロシア」で動いている。24年にロシアからの天然ガス輸入比率を1割までに下げるというのだ。ロシアにとっては恐怖であろう。ウクライナ侵攻の経済的代償は、これから「未来永劫」にわたりロシア経済を苦しめることになろう。

     


    『日本経済新聞』(4月10日付)は、「ドイツ、脱ロシア依存急ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツが化石燃料のロシア依存脱却を急いでいる。ショルツ首相は8日の会見で、ロシア産原油の輸入を年内に停止できるとの見通しを示した。当面は資源の調達先を分散しつつ、再生可能エネルギーの普及を急ぐが、安定調達へ課題も残る。

     

    (1)「8日、ジョンソン英首相と会談したショルツ氏は、「我々は原油のロシア依存脱却へ活動している。今年中にそれが実現できる」と共同記者会見で強調した。ドイツがロシアから天然資源を買い続ければ資金の供給を通じて経済制裁の効果を弱めるとの批判は国内外で強い。ただロシアからの調達が止まれば、独経済への打撃は大きい。ロイター通信によると、ドイツ銀行協会のゼービング会長(ドイツ銀行最高経営責任者)は今月、ウクライナ侵攻の影響で2022年の独成長率が2%程度に減速する見通しを示したうえで、ロシアからのガス・石油の供給が止まると「独経済は深刻な景気後退に陥る」と予測した」

     

    欧州世論では、ロシアから天然資源を買付けることが、ウクライナ戦争を長引かせるという批判に繋がっている。それだけにドイツ政府は、ロシアへの石油や天然ガス依存度引下げが、大きな課題だ。

     

    ロシアが、こうしたドイツの動きに先手を打って、輸出を止めるという「自殺行為」も予想できるが、プーチン大統領は「契約を守る」としている。厖大な戦費を稼ぐには、「輸出停止」はできない相談である。

     


    (2)「ドイツは欧州域内でロシア産原油の最大の輸入国だ。国際エネルギー機関(IEA)によるとドイツは21年12月時点で推計60万バレルの原油をロシアから輸入する。ウクライナ侵攻前まではロシアへの依存度は35%だったが、足元は25%まで低下した。中東などの主要産油国は大幅増産に消極的だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは「在庫も取り崩しながら、米国やアフリカ、南米など他の産油国も含めて少しずつ確保して穴埋めすることになろう」と指摘する」

     

    国連統計によると、ドイツは2021年に114億ドル(約1.4兆円)相当の原油をロシアから輸入し、対ロ依存度は29%だった。ウクライナ侵攻前まではロシアへの依存度は35%だった。冬場で需要が高まっていたのだ。これからその需要期も過ぎる。

     


    (3)「他の国にも禁輸の動きが広がれば、ロシア産の穴埋めはより困難さが増す。欧州全体では21年にロシアから原油を推計日量240万バレル、石油製品で115万バレルを輸入している。限られた石油資源の争奪戦となり、原油価格には上昇圧力が大きくかかることになる。24年夏にもロシア依存から脱却するとした天然ガスは、3月に有力生産国のカタールと長期の調達契約を結んだ。独政府によると、ロシアへの依存度はすでに5割を下回っているという」

     

    ドイツの天然ガス調達のロシア依存の割合は、調達先の切り替えなどでウクライナ侵攻前の55%から40%にまで下がっている。今後も調達の多様化や再生エネルギーの拡大などが進めば、24年夏にはロシアからの輸入割合を1割程度にまで下げられるというのがドイツ政府の見立てという。

     


    ドイツは、ウクライナ侵攻など予想もしていなかったので、ロシアへ全幅の信頼を置いてきた。米国は、こういうドイツの「能天気」な動きに、これまでしばしば忠告してきた。ドイツは、これまで聞き流してきた咎めに苦しんでいる。地政学的リスクを無視していたのだ。

     

    (4)「エネルギーの分散も進める。6日に新たなエネルギー戦略を策定し、35年までにほぼ全ての電力を風力や太陽光などの再生可能エネルギーで賄う方針を打ち出した。原子力発電については明確な言及を避けたが、引き続き再エネへの転換を電力源の軸とする立場を維持している」

     

    ドイツは、原発廃止で動いている。その穴埋めとして、ロシア依存を高めたという背景もある。フランスの原発重視と好対照である。

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