勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    欧州自動車大手6社の2026年16月期決算が出そろいました。中国市場への依存度の高い(販売台数の2割強を依存)ドイツ勢は、VWなど3社が最終減益となりました。長年、ドイツ車は中国市場で利益を上げてきましたが、補助金縮小の影響を受けて大きく後退しました。

     

    ドイツ車は、中国市場に依存しすぎていたため、補助金縮小によって一気に「中国依存」が崩れたのです。ドイツ車の中国依存度は、VWが24%、BMWは20%超、メルセデスも20%超と2割台となっています。この依存度の高さは「リスクを高め」ており、補助金縮小で利益が蒸発することになったのです。ドイツ車が、ここまで深く中国市場へ依存度を高めたのは、メルケル元首相の「親中国」ぶりがもたらしたものでした。メルケル氏は、旧東独出身であるだけに、共産主義への親和性が強く、中国市場へすいよせられました。

     

    中国の高級車市場は、今や「中国ブランド」が支配しています。Zeekr(吉利)、理想汽車(Li Auto)などが、高級車領域でドイツ車を圧迫しているのです。つまり、 中国の高級EV市場は、すでに中国ブランドが支配しています。こうなると、ドイツ車の出番が減ります。ここへ、中国の消費者向け補助金が減らされたので、ドイツ車も窮地に立たされる結果となりました。

     

    ドイツ車が、苦境に陥ったのは前述の通り、消費者向け補助金削減ですが、これは中国車にとっても同様に厳しい条件となりました。中国車は、この危機突破策として逆に欧州で足場を固める戦略に出ています。こうなるとドイツ車は二重の負担を背負い込みます。中国での競争が、欧州へ持ち込まれる事態になるからです。中国は、消費者向け補助金は削減され始めましたが、中国車メーカー自体へはまだ補助金が出ているのです。欧州では、これを問題にして、高い関税で防波堤にしようとしています。

     

    欧州での中国車は、EV(電気自動車)で勝負を挑んでいます。中国EVは、もともと価格競争力が高いのです。ドイツ車は、すでに高い中国依存が裏目に出て収益的に疲弊しています。ここへ、高い補助金に守られている中国EVが本格進出すると、ドイツ車はコスト的に中国EVとの競争が重荷となります。この欧州EV構造の脆弱性が、中国EVを欧州へ呼び込むことになりかねません。

     

    ドイツ車には、不運が重なっています。中国EV市場が飽和化して利益が出なくなっていること。中国EVメーカーも同じ苦境に苦しみ、逆に欧州市場へ「逃げ場」を探し始めていることです。こうなると、これまでの中国市場での競争が、欧州へ舞台を移すことになります。ドイツは、国を挙げて中国車の欧州進出に神経を尖らせ始めています。

     

    中国で競争している、日本車の立場はどうか。幸いと言うべきか、ドイツ車が占める中国のシェアに比べると、日本車の中国依存度ははるかに低いのです。日本車は、「中国依存モデル」ではなく、「世界分散モデル」なので、ドイツ車のような崩壊が起りません。むしろ中国市場での消費者向け補助金削減は、日本車にとって競争条件がプラスに働く可能性が高いのです。補助金が薄まれば、車の「質」で勝負できるからです。

     

    ここで、日本車の中国シェアをみておきましょう。トヨタ自動車約10%、ホンダ約15%、日産約20%となっています。日本車共通の強みは、世界で市場が分散していることです。仮に、中国でシェアが落ちても他の地域で挽回できる強みがあります。

     

    トヨタを例に取ると、次のようになっています。中国約10%、北米約30%、欧州約7%、ASEAN約20% 中東・アフリカなどで世界販売1100万台を実現しています。ドイツ車の場合、中国市場と欧州市場が利益の源です。普通ならば、「金城湯池」であるはずの中国と欧州の両市場が、ドイツ車と中国車が食い合うという皮肉な結果となりました。

     

     

     

     

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    ドイツが、中国の弱点を本気で把握し、貿易戦争の長期戦に備え始めた。欧州の対中戦略が、質的に変化してきたと言える。ドイツは、中国の弱点を「技術依存」であると正確に把握し始めている。ドイツ政府は、中国が依存する技術分野を非公開で分析している。対象は、半導体露光装置のサプライチェーン、レーザー加工、光学などの分野である。これらは、中国が最も弱い「先端製造のコア技術」である。欧州が、中国の「のど元」を握る技術を戦略資産として認識したのだ。

     

    『レコードチャイナ』(7月30日付)は、「ドイツ当局、中国経済の弱点を分析し貿易戦争に備え仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    仏国際放送局『RFI(中国語版サイト)』7月28日付)は、ドイツ政府が対中貿易戦に備えて中国の技術的依存分野を非公式に分析していると報じた。

     

    (1)「記事は、ドイツ政府が貿易フローや企業データを分析し、中国が自国に依存している高度技術分野の特定を進めていると紹介。半導体露光装置のサプライチェーンに関わるトルンプ(Trumpf)やカール・ツァイス(Carl Zeiss)などの企業や技術分野がその分析対象に含まれていると伝えた。また、分析では単なる装置の輸出停止にとどまらず、中国の現地で稼働する機器の保守・メンテナンスサービスを停止することが最も強力な交渉カードになると認識されていることに言及。メルツ首相の強硬な姿勢を背景に、国家安全保障会議が34の非公開措置を策定したと指摘した」

     

    ドイツは、基幹産業の自動車が中国のEV輸出の急増によって苦境に立たされている。中国EVが、補助金をテコにしているとの見方に立っており、対抗策を発動する事態へ追い込まれている。ドイツの対抗策は、装置の輸出停止にとどまらず、中国の現地で稼働する機器の保守・メンテナンスサービスを停止が検討されている。

     

    中国は、量産・コスト競争は強いが、基礎科学・精密技術は弱いとされている。ドイツが握る領域は、すべて「基礎科学+精密技術」である。いずれも、中国が最も苦手な分野であるだけに、中国がこれら技術関連を止めれば、中国に大きな影響が出る。

     

    (2)「記事は、ドイツ政府関係者が企業との非公開協議を行っている事実は認めつつも、基本的な対中政策の変更や、企業への強制的なデータ提出要求については明確に否定したと伝えている。一方で、政府による安保上のけん制の動きが進む中で、現場の産業界が対中競争で苦境に立たされていると指摘。中国市場での激しい競合により打撃を受けたメルセデス・ベンツのオーラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)が、ドイツ国内でのコスト削減と生産性向上を社内に強く訴えたことを紹介した」

     

    ドイツが握る中国の弱点は、「中国が代替できない核心技術」ばかりである。欧州は、米国と連携し、その弱点を戦略的に突く方向へ動いている。中国は、構造的にこの包囲網を突破できないであろう。

     

    中国は、国内で稼働中の露光装置のメンテナンス停止を受ければ、ソフトウェアアップデートの停止、交換部品の供給停止、技術者派遣の停止、装置の遠隔診断サービスの停止などが予想される。これらは、中国の半導体製造ラインを「即死」させるほどの威力を持っている。

     

    (3)「報道によると、メルセデス・ベンツでは乗用車部門のコア営業利益が急減し、中国事業における減損処理や通期売上予測の下方修正を余儀なくされているという。記事は、同様にフォルクスワーゲン(VW)やBMWにおいても大規模な削減計画や利益予測の引き下げが進んでおり、自動車業界全体に苦境と打撃が広がっていると伝えた」

     

    ドイツ自動車業界は、電気自動車(EV)への高コストな移行、中国との厳しい競争、米国の関税で厳しい事業環境にあり、フォルクスワーゲン(VW)やメルセデス・ベンツも大規模な人員削減計画を打ち出している。関係者によると、今回の措置で総従業員数が約8000人減少する見込み。同社の従業員は世界全体で15万人。『ロイター』(7月30日付)が報じた。

     

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    日本とドイツは、世界有数の製造業データを持ちながら、それをデジタル化で十分に活用できない悩みを抱えている。ラピダスとシーメンスは25年、この日独共通の課題をフィジカルAIとデジタル化接合で実現させる目的で提携した。

     

    日本とドイツは、「現場データの宝庫」である。自動車、工作機械、電子部品、ロボット、工場設備と現場データは豊富である。しかし、データが分散していてはAIで直接利用できないという宝の持ち腐れになる。シーメンスが、これをPLM(製品ライフサイクル管理)で統合し、ラピダスのPDK(プロセス・デザイン・キット)と接続する。つまり、 日本の製造業データがAI稼働の「燃料」になるのだ。

     

    シーメンスは、世界最大の製造業ソフト企業である。PLM、EDA(設計ソフト)、工場制御、デジタルツイン(デジタル上の仮想コピー)、インダストリー4.0の標準化で、世界中の製造業が導入している。そこへ、ラピダスの「フィジカルAI」がスパッと組込まれるのだ。

     

    これは、ラピダスにとってこれ以上ない「好条件」である。座って商売する、という形であり最高のスタートだ。販路が広がるのではなく、世界の製造業の「入口」がすでに開いている状況である。「世界製造業の標準を握る」形である。凄いことが、始まるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月27日付)は、「独シーメンス、ラピダスのデータ活用支援 取締役『製造業にAI実装」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのシーメンスは、先端半導体の量産を目指すラピダスへ製造業支援ソフトを導入する。半導体の設計情報や生産工程などのデータをもとに開発効率を引き上げる。日本の製造業に人工知能(AI)などデジタル技術の実装を進める。

     

    (1)「シーメンスのデジタル産業事業を率いるセドリック・ナイケ取締役が日本経済新聞の単独取材に答えた。ラピダスとは25年に先端半導体の開発に向けた協業を発表した。ナイケ氏は、「日本の半導体産業復活を可能な限り支援する」と強調した。ラピダスに導入するのが製品ライフサイクル管理(PLM)のソフトだ。設計情報や開発履歴、生産工程などのデータに関し部門をまたいで一元管理する。データを使ったAI活用を促す」

     

    ラピダスに導入するの、製品ライフサイクル管理(PLM)のソフトである。これをきっかけにして、導入ソフトの種類が広がるのであろう。

     

    (2)「シーメンスは、半導体設計ソフト(EDA)の世界大手でもある。ラピダスの顧客が、半導体を設計するのに必要な情報をまとめた「PDK(プロセス・デザイン・キット)」も共同開発する。シーメンスは、これまで35社以上のソフトウエア企業を買収し、主力のファクトリーオートメーション(FA)と組み合わせて製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導してきた。次にAI実装を通じた「自律型工場」の実現を目指す。同社はドイツ南部エアランゲンで、米エヌビディアのAI技術やヒト型ロボットを活用する電子機器生産のモデル工場の構築を進めている。ナイケ氏は、「世界で最も進んだ工場になる。AIが工場全体の頭脳となる」と語った」

     

    シーメンスは一足早く、米エヌビディアのAI技術を使って「自律型工場」を建設中である。世界で最も進んだモデル工場になる。これをモデルに自社ソフトを売り込むのであろう。ラピダスが、AIチップを発売次第、エヌビディア・チップがラピダス・チップと置き換わり真の「フィジカルAI」を実現する。

     

    (3)「同氏は日本企業の「カイゼン」と、ドイツが提唱した「インダストリー4.0」が製造業のあり方を定義してきたと指摘する。次の段階として、AIで機械やロボットを動かす「フィジカルAI」の時代が来るとした。フィジカルAIを巡って「日本とドイツはともに世界有数の製造業データを持ちながら、十分に活用できていない」とした。データを整えてAIの活用につなげることがシーメンスの役割になるとした」

     

    これは、日本の製造業の「歴史的転換点」を示している。カイゼンは、人間中心の改善である。インダストリー4.0はデジタル化だ。フィジカルAI=ロボットとAIが、現場で自律判断する。つまり、日本の強み(現場)とAIが初めて完全に接続する段階に入った。

     

    (4)「日本では、ラピダスのほか、パナソニックやアドバンテスト日産自動車などとデジタル技術の導入で協業している。ナイケ氏は、「日本を極めて重要なパートナーと考えており、これまで以上に協力関係を築きたい」と語った。ナイケ氏は「データは顧客のものというのが大前提」とした上で、業界標準の策定などの非競争領域では、各社がデータを持ち寄ってAIモデルの性能を高めればよいとの見方を示した」

     

    日本の各社は、自社のデータを持ち寄りAIモデルの業界標準の策定が有利とした。日本ではすでに、ソフトバンクなど44社が出資する国産AI(人工知能)開発のNoetra(ノエトラ)が始動した。フィジカルAIに向けた各社共通のモデル作製である。

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    ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が、世界で最大10万人規模の人員削減を検討していることが26日、分かった。独経済誌『マネジャー・マガジン』が伝えた。ドイツ国内の4工場の閉鎖も視野に入れる。VWは18日、2030年までに年間60億ユーロ(約1兆1000億円)以上のコストを削減する方針を明らかにしていた。30年の売上高営業利益率は8〜10%と、25年(2.%)比で大幅に引き上げる。この経営改革には、世界で最大10万人規模の人員削減が不可欠としている。

     

    現在の苦境を招いた最大の要因は、EV(電気自動車)の販売が「谷」(キャズム)へ陥っている結果だ。大型耐久財は、一直線に販売が伸びず普及率15%見当で落込むものだ。EVでも、これが起っている。ただし、3~4年でこの期間は終わるとされている。VWは、2030年頃を回復のメドにしている。トヨタは、EVのキャズムを想定しており、EV一本槍で進まずに来た。HV(ハイブリッド車)に賭けて成功した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月26日付)は、「VWが経営不振で最大10万人削減 ドイツ4工場閉鎖も視野、独誌報道」と題する記事を掲載した。

     

    報道によると、VWのオリバー・ブルーメ社長が経営再建策を取締役会に提示した。VWは世界で65万7000人の従業員を抱えており、実施されれば全従業員の約15%に相当する10万人を削減する。

     

    (1)「同社は3月、2030年までにグループで5万人を削減する方針を表明している。VW本体で3万5000人を減らすほか、傘下のアウディやポルシェ、ソフトウエア開発子会社のカリアドなども対象とする。今後さらなる対象の拡大が想定される。ドイツ国内の工場が閉鎖される可能性もある。北部のエムデンやハノーバー、東部ツヴィカウのほか、南西部ネッカーズルムにあるアウディの拠点を含む、稼働が低迷するグループの4工場が対象。具体的な時期は決まっていないもようだ」

     

    VWは、グループ全体で10万人もの人員削減を計画している。ドイツでは、自動車産業が最大の雇用受け皿だけに、ドイツ経済全体が大きなショックを受ける。

     

    (2)「VWの経営環境は厳しい。米関税政策の影響で北米向けの販売が低迷しているほか、中国市場では現地ブランドとの競争が激化している。電気自動車(EV)は投資を先行させたものの、普及が遅れており投資回収ができていない。地盤とする欧州においても比亜迪(BYD)など中国勢が低価格攻勢を仕掛ける。足元で販売を上向かせる抜本的な要素が見当たらず、当面はリストラによるコスト削減を急ぐ。ドイツや中国を中心に過剰生産能力を削減し、現在1000万台規模の世界生産能力を900万台にまで引き下げる」

     

    VWは、中国市場への依存度が大きいだけに、激しい競争で販売が落込んでいる。ドイツや中国を中心に過剰生産能力を削減し、現在1000万台規模の世界生産能力を900万台にまで引下げる。トヨタは、1000万台体制を維持しているので、トヨタとの差が開きそうだ。トヨタの世界首位は、不動のものになろう。

     

    (3)「販売車種の絞り込みやプラットホーム(車台)数の削減も進める。調達や生産、販売などは社長直轄で意思決定を速める。27年に生産停止する独北西部オスナブリュックの工場では、防衛装備品の部品製造でイスラエル企業と協業する案が浮上している。24日には船舶用エンジンなどを手掛ける子会社エバーレンスの株式51%を米投資ファンドのベイン・キャピタルに74億ユーロ(約1兆4000億円)で売却すると発表した。海運や産業機器向けの製品を手掛けるエバーレンスはVWにとって非中核事業とみなされ、売却が検討されてきた」

     

    VWは、27年に生産停止する独北西部の工場を防衛装備品の部品製造へ転換させる案も浮上している。自動車産業は、兵器産業への転換が可能という柔軟性を持っている。

     

    (4)「VWは、人員削減や非中核事業の切り離しを通じて経営再建を急ぐ。30年までに年間60億ユーロ以上のコストを削減する方針で、30年の売上高営業利益率を8〜10%と25年の2.%から改善させる計画だ」

     

    30年の売上高営業利益率は、8〜10%へ回復させる予定だ。自動車産業の売上高営業利益5%割れは、新車開発が不可能になるとされている。25年の状況は、レッドラインを大きく割込んでいた。人員削減の裏には、こういう切羽詰まった事態が起こっていた。

     

     

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    中国は、宣伝上手な国である。政府が、先頭に立って旗を振るから効果抜群である。メルツ独首相は、2月末に訪中した際、多忙な日程を繰り合わせて、浙江省杭州市のロボット企業「宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)」視察を組み込んだほど。人型ロボットは、中国の至る所に登場する。食傷気味であるが、実際に労働現場で使われている例はわずか。それでも、飽きもせずに人型ロボット「ショー」を繰り広げている。

     

    『レコードチャイナ)』(4月27日付け)は、「中国は『ロボット時代』を切り開いたのか独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独メディア『ドイチェ・ヴェレ』(DW)中国語版(4月23日付)は、独紙『フランクフルター・アルゲマイネ』(FAZ)が中国のロボット技術の発展現状を分析した記事を紹介した。

     

    (1)「FAZ紙は2月末のメルツ独首相訪中に当たって中国が浙江省杭州市のロボット企業「宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)」視察を組み込んだことに言及しつつ、「中国のロボットはドイツ首相に武術を披露したほか、最近ではハーフマラソンの人類世界記録を上回るタイムでゴールしたが、こうした映像は選択的で時に意図的に演出されたものだ」と指摘した。また、中国ではロボットが「うんざりするほど」至るところに現れ、展示会はもちろんのこと、北京マラソンから中国中央テレビ(CCTV)の春節特番まであらゆる場面に登場すると紹介し、「春節特番がロボットの見本市になった」と不満を漏らす中国人もいるほどだと伝えた」

     

    ドイツ首相は、訪中の際に杭州市のロボット企業を訪問した。中国政府が、人型ロボットを宣伝したい証拠であろう。だが、技術的には「未熟」なのだ。飛んだり跳ねたりはできても、筋肉部分が弱いので労働には向かないとされる。人型ロボットは、産業用ロボットで世界一の日本が最も進んでいる。「能ある鷹は爪を隠す」で、中国のように技術を見せびらかすことはない。ラピダスのフィジカルAIが量産化され次第、日本製人型ロボットが登場するであろう。

     

    (2)「さらに、「人型ロボットは中国に世界で最も多く存在するが、実は日常生活でほとんど目にすることはなく、展示会、ショールーム、SNSライブ配信、テレビ番組の中でしか頻繁に登場しない」と論じたほか、業界で最も知名度の高い宇樹科技のデータでも、生産現場の第一線に投入されている人型ロボットは極めて少ないと説明した。そして、現状では中国に「未来の世界」「ロボット時代」がやって来たわけではなく、中国のロボット技術は依然として発展段階にあり、日常生活で最も一般的な実用例はホテルの配膳ロボットという低次元なレベルにとどまっていると評した」

     

    人型ロボットは、派手な宣伝戦を繰り広げている裏に、中国政府の存在がある。EV(電気自動車)に続いて、人型ロボットを売出そうという魂胆である。ともかく、輸出してドルを稼ぎたいのだ。

     

    (3)「その一方で、中国が持っている真の強みは技術力の高さではないことに言及。「常に最高端の技術を最初に打ち出すことではなく、品質がほどほどで良く価格も手頃な製品をどこよりも早く提供する点にある」と指摘。特にそのスピード感は目を見張るものがあり、ドイツをはじめとする欧州よりも、中国の方が工場のロボット配置密度が高いほか、自動運転車両の普及も早いと紹介した」

     

    中国文明は、「質」を追求するのでなく「量」を求める文明だ。始皇帝の農本主義による量の拡大策を踏襲している。人型ロボットも質の高さを求めることなく、量をこなして満足する文明である。

     

    (4)「FAZ紙はまた、人手不足が深刻なドイツではなく、労働力があふれている中国でロボットの導入が進んでいる現状を皮肉交じりに伝えた上で、「ドイツのロボット技術普及を阻んでいるのは経済理論ではなく、増幅された『恐怖心』だ」と論じた。その上で、現実のロボットを目にすればその恐怖はたちまち解消されるとし、増幅された恐怖心を払拭するにも、自ら中国に足を運び街で活動するロボットの現状を正しく認識する必要があるかもしれないと結論づけた」

     

    人型ロボットの普及を阻んでいるのは、技術の壁である。本当の意味でのフィジカルAIが製造されていないからだ。現在のフィジカルAIは、クラウド型の情報処理である。これは、「まやかし」である。作業現場で、独自の判断で作業できるフィジカルAI(現場AI)が登場しない限り不可能である。クラウド型と分散型の情報処理の違いを理解しなければ、中国の人型ロボットが最も進んでいると誤解するに違いない。

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