勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース

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    ロシア経済は、資源輸出で支えているようなものだ。税収の4割が資源から得た利益である。その大黒柱を支えてきたのがドイツの旺盛な需要である。ロシアが輸出している天然ガスの内、ドイツは15.9%(2020年:米国エネルギー情報局調べ)と断トツである。ドイツが、ロシア経済制裁に最後まで慎重であった理由は、このエネルギー問題であった。

     

    そのドイツが、ウソのように「脱ロシア」で動いている。24年にロシアからの天然ガス輸入比率を1割までに下げるというのだ。ロシアにとっては恐怖であろう。ウクライナ侵攻の経済的代償は、これから「未来永劫」にわたりロシア経済を苦しめることになろう。

     


    『日本経済新聞』(4月10日付)は、「ドイツ、脱ロシア依存急ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツが化石燃料のロシア依存脱却を急いでいる。ショルツ首相は8日の会見で、ロシア産原油の輸入を年内に停止できるとの見通しを示した。当面は資源の調達先を分散しつつ、再生可能エネルギーの普及を急ぐが、安定調達へ課題も残る。

     

    (1)「8日、ジョンソン英首相と会談したショルツ氏は、「我々は原油のロシア依存脱却へ活動している。今年中にそれが実現できる」と共同記者会見で強調した。ドイツがロシアから天然資源を買い続ければ資金の供給を通じて経済制裁の効果を弱めるとの批判は国内外で強い。ただロシアからの調達が止まれば、独経済への打撃は大きい。ロイター通信によると、ドイツ銀行協会のゼービング会長(ドイツ銀行最高経営責任者)は今月、ウクライナ侵攻の影響で2022年の独成長率が2%程度に減速する見通しを示したうえで、ロシアからのガス・石油の供給が止まると「独経済は深刻な景気後退に陥る」と予測した」

     

    欧州世論では、ロシアから天然資源を買付けることが、ウクライナ戦争を長引かせるという批判に繋がっている。それだけにドイツ政府は、ロシアへの石油や天然ガス依存度引下げが、大きな課題だ。

     

    ロシアが、こうしたドイツの動きに先手を打って、輸出を止めるという「自殺行為」も予想できるが、プーチン大統領は「契約を守る」としている。厖大な戦費を稼ぐには、「輸出停止」はできない相談である。

     


    (2)「ドイツは欧州域内でロシア産原油の最大の輸入国だ。国際エネルギー機関(IEA)によるとドイツは21年12月時点で推計60万バレルの原油をロシアから輸入する。ウクライナ侵攻前まではロシアへの依存度は35%だったが、足元は25%まで低下した。中東などの主要産油国は大幅増産に消極的だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは「在庫も取り崩しながら、米国やアフリカ、南米など他の産油国も含めて少しずつ確保して穴埋めすることになろう」と指摘する」

     

    国連統計によると、ドイツは2021年に114億ドル(約1.4兆円)相当の原油をロシアから輸入し、対ロ依存度は29%だった。ウクライナ侵攻前まではロシアへの依存度は35%だった。冬場で需要が高まっていたのだ。これからその需要期も過ぎる。

     


    (3)「他の国にも禁輸の動きが広がれば、ロシア産の穴埋めはより困難さが増す。欧州全体では21年にロシアから原油を推計日量240万バレル、石油製品で115万バレルを輸入している。限られた石油資源の争奪戦となり、原油価格には上昇圧力が大きくかかることになる。24年夏にもロシア依存から脱却するとした天然ガスは、3月に有力生産国のカタールと長期の調達契約を結んだ。独政府によると、ロシアへの依存度はすでに5割を下回っているという」

     

    ドイツの天然ガス調達のロシア依存の割合は、調達先の切り替えなどでウクライナ侵攻前の55%から40%にまで下がっている。今後も調達の多様化や再生エネルギーの拡大などが進めば、24年夏にはロシアからの輸入割合を1割程度にまで下げられるというのがドイツ政府の見立てという。

     


    ドイツは、ウクライナ侵攻など予想もしていなかったので、ロシアへ全幅の信頼を置いてきた。米国は、こういうドイツの「能天気」な動きに、これまでしばしば忠告してきた。ドイツは、これまで聞き流してきた咎めに苦しんでいる。地政学的リスクを無視していたのだ。

     

    (4)「エネルギーの分散も進める。6日に新たなエネルギー戦略を策定し、35年までにほぼ全ての電力を風力や太陽光などの再生可能エネルギーで賄う方針を打ち出した。原子力発電については明確な言及を避けたが、引き続き再エネへの転換を電力源の軸とする立場を維持している」

     

    ドイツは、原発廃止で動いている。その穴埋めとして、ロシア依存を高めたという背景もある。フランスの原発重視と好対照である。

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    第7代のドイツ首相(1998~2005年)を務めたゲアハルト・シュレーダー氏が、ドイツ全土から猛烈な非難の声に曝されている。ウクライナを侵略したプーチン大統領と親密な関係にあって、未だにロシアとの濃密な関係を続けていることが理由である。

     

    シュレーダー氏は25日、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムの取締役に指名された。この後の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が発生。シュレーダー氏は侵攻発生後も、「ロシアとの関わりを断つべきではない」とSNSへの投稿を行い、またロシア国営企業の役員も辞さなかったのだ。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(3月28日付)は、「シュレーダー元ドイツ首相、ロシアとの関係絶てず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナに侵攻した時、高額報酬でロシア政府系企業の取締役会に名を連ねていたかつての欧州首脳の大半は即座に、侵攻に抗議して辞任した。フィンランドからイタリア、フランスからオーストリアに至るまで、元首相がすぐさま取締役の職を辞した。辞任しなかった人物が1人だけいる。ドイツのシュレーダー元首相だ。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領を批判することを一切拒む態度に、元同僚とドイツ国民は当惑し、怒りを覚えている。「なぜ彼がこういうことをしているのか、とにかく分からない」とある元同僚はこう話す。「本当に理解しがたい」。この状況に対し、シュレーダー氏の事務所のスタッフが全員辞職し、同氏は地元ハノーバーから名誉市民権を剥奪された。同市が前回この処罰を下した相手は、死後のヒトラーだ」

     

    シュレーダー氏とプーチン氏との関係は、ソ連崩壊後からずっと続く盟友関係である。ドイツが、経済的にロシアへ深く食込むきっかけは、シュレーダー・プーチン両氏の親密関係に始まった。

     


    (2)「それでも、ドイツ社会民主党(SPD)元党首のシュレーダー氏は、クレムリンの支援を受けているロシア企業のポストを手放さなかった。今も国営石油大手ロスネフチと天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」運営会社の会長の座にあり、国営ガス大手ガスプロムでの最近の取締役候補指名を辞退していない。本人を知る人たちは、シュレーダー氏(がロシアとの縁を切らない)動機は極めて個人的なものでもあると主張する。1998年から2005年までドイツ首相を務めた同氏は、互いのトップ就任当初からプーチン氏と友情を築き、その関係が今日までずっと続いている」

     

    シュレーダー氏には、公私混同がある。プーチン氏がいくら親しい友人であっても、シュレーダー氏は決然とウクライナ侵略を非難すべきある。それが、元ドイツ首相を務めた人間の義務でもあろう。シュレーダー氏は、それをしなかったのだ。

     


    (3)「ある元高官によると、首相に就任したばかりの頃、シュレーダー氏は堅苦しい英語のせいで世界各国の首脳と親しい関係を築くことができなかった。だが、ベルリンの壁が崩壊した時に旧共産国の東ドイツに駐留するソ連国家保安委員会(KGB)工作員だったプーチン氏はドイツ語を流ちょうに話した。シュレーダー、プーチン両氏の家族はクリスマスに集まり、01年にはモスクワで一緒にそりに乗っているところを写真にとられている。よく似た幼少期も友情を育んだ。どちらも貧しい家庭の出身で、自らの才覚によってトップに上り詰めた」

     

    シュレーダー氏は貧しい家庭の生まれという。プーチン氏の場合、さらに複雑で出生の秘密を抱えている。こういう両氏が、互いの生まれ育った環境で理解し合い、刎頸の友になったのだろう。

     

    (4)「首相を退任して以来、シュレーダー氏は富豪になった。ロスネフチの決算報告は、同氏の報酬が年間60万ユーロ(約8100万円)であることを示している。ドイツメディアはノルドストリームでの給与が別途25万ユーロ(約3375万円)に上ると報じている。またシュレーダー氏はガスプロムの取締役候補に指名され、6月に承認が予定されている。さらに、ドイツ政府から月間約8000ユーロ(約1080万円:年間約1億2960万円)の年金も受給している。ウルシェル氏は言う。「60歳の誕生日に、政界を離れたら何をするか質問した。すると、ただ一言、『お金を稼ぐ』と言った。彼は自分の国に仕えたと感じている。今、そのお金を得る権利があると思っている」

     

    他人の懐を計算するのは悪趣味だが、シュレーダー氏は現在、相当の富豪になっている。ロシア企業の報酬が年間約8100万円、ノルドストリームが同約3375万円、ドイツの年金は同約1億2960万円である。合計すると、年間2億4435万円である。暮しに困ることはない。ロシア関連収入をすべて断っても、ドイツの年金だけで1億3000万円もあるのだ。

     


    (5)「
    今のところ、ウクライナについてシュレーダー氏が出した唯一の声明は、ビジネス向けSNS(交流サイト)のリンクトインのプロフィルに書き込んだものだ。「戦争と戦争に伴うウクライナの人々の苦しみは、できるだけ早く終わらせなければならない。それがロシア政府の責任だ」とある。シュレーダー氏の所属するSPD(社会民主党)は、元党首への対応でつまずいた。ショルツ首相は記者会見で、目に見えて腹を立てているようだ。4州のSPD支部はシュレーダー氏の党員資格を剥奪するよう求めた。だが、SPDに所属するニーダーザクセン州首相は同氏の名誉勲章を剥奪することを拒否し、今も連絡を取り合っている」

     

    シュレーダー氏の所属するSPDは、ショルツ首相の与党である。それだけに、ドイツ政府は、シュレーダー氏の振る舞いに困り果てている。SPD支部は、党員資格剥奪を求めるほど激昂しているのだ。

     


    (6)「政治的な反対勢力は、SPDのためらいに付け入った。CDU(キリスト教民主同盟)の人権問題担当の議会スポークスマン、ミヒャエル・ブラント氏は、シュレーダー氏に制裁を科すよう政府に求めた。「シュレーダー氏は元首相というよりも、プーチン氏の外国工作員だ」。シュレーダー氏が3月上旬にウクライナ危機を仲裁するためにモスクワを訪れたことが報じられた。会談からは何の成果も生まれなかった。ある元同僚は今、シュレーダー氏が事実上、プーチン支持に「追い込まれた」のではないかと考えている。「彼はいずれにせよ、もう政治的に終わった。もしかしたら今も昔も(プーチン氏の)親友なのかもしれない。だが今では、基本的にプーチン氏の従業員だ。同氏が過剰なお金を払うことでシュレーダー氏を堕落させた」と非難するのだ」

     

    野党CDUが、シュレーダー氏に制裁を科すべしと要求している。また、プーチン氏の外国工作員とまで罵倒される始末だ。ウクライナの人道被害が拡大されるほど、シュレーダー非難の声は高まる状況にある。

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    ドイツの対ロ政策は、これから180度もの大転換になる。親ロシア政策を捨てて、親米政策へと大きく舵を切るからだ。第二次世界大戦で、ドイツは旧ソ連へ多大の被害を及ぼした。このこともあり、ロシア政策では米国の意見を聞かず,ロシアに顔を向けてきた。だが、ロシアによる無慈悲はウクライナ侵攻によって、ロシアへの幻想は完全に消え、逆に警戒感が高まるという逆転現象が起こっている。この変化は、余りにも劇的である。

     


    『日本経済新聞 電子版』(3月19日付)は、「ドイツ『ロシアへの幻想』に幕 外交・安保を大胆転換」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツが冷戦後の外交・安全保障政策の大胆な転換に動いている。第2次大戦の反省もあり、ロシアとは対立よりも協力を優先してきたが、ロシアのウクライナ侵攻で警戒が急速に高まった。これまで米国に促されても拒んできた国防費の大幅な増額を決め、エネルギー調達でもロシア依存からの脱却を急ぐ。

     

    (1)「ランブレヒト独国防相は14日、「我々は今日、重要な一歩を踏み出した」と、最新鋭ステルス戦闘機F35を35機購入する計画を明らかにした。F35は米国との「核共有」の枠組みの中で、核爆弾を搭載する役割も担う。これまで軍備増強に消極的だったドイツが、ロシアへの対抗を明確にした。ドイツの方向転換の起点は、ショルツ独首相の2月27日の演説だ。ショルツ氏は「民主主義者、欧州人として、我々はウクライナの側、歴史の正しい側に立つ」と表明。ロシア配慮の曖昧な外交を封印し、プーチン大統領が「欧州の安全保障の秩序を打ち砕こうとしている」と強く非難した」

     


    これまで、米国との関係が疎遠であったドイツが、米国から
    最新鋭ステルス戦闘機F35を35機購入することになった。ドイツ国内に貯蔵されている米国の核を、万一の危機では搭載できるようにする準備だ。ドイツはトランプ前米国大統領時代、関係がギクシャクしていた。このことから見ると、現在の米独関係は良好なパートナーシップへと変貌する。

     

    (2)「懸案だった独ロの新パイプライン計画(ノルドストリーム2)を凍結し、拒み続けてきた対ウクライナ武器供与にも応じると決めた。最後まで及び腰だった国際決済網、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア排除にも同意した。ドイツは連邦軍を増強するために1000億ユーロ(約13兆円)を用意し、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やす。装備の老朽化が懸念されてきたが「平和と民主主義を守るため」(ショルツ氏)に大胆な投資に動く」

     

    独ロ関係の象徴であった「ノルドストリーム2」計画は、米国が建設自体に反対していたものだ。ドイツは、それを退けて完工に向け最大限の努力を重ねてきた。すでに完工済だが、このパイプラインは稼働を見ることなく、「廃止」されることになった。これまでのドイツの態度から見れば、想像もできない変化である。

     

    (3)「ショルツ氏を突き動かしたのが、何の大義もなくウクライナに攻め込んだプーチン氏への不信感だ。ショルツ氏は議会で「プーチンが(新たな)ロシア帝国を築こうとしていることにもはや疑いを持たない」と明け透けに語った。「ロシアへの幻想の終わり」。リントナー独財務相は侵攻が始まった2月24日の前と後で世界は変わったと語る。ロシアとの協力が平和につながるとの考えは色あせた。独誌『シュピーゲル』はここ数十年の対ロシア政策が「波にさらわれた砂の城のように崩れ落ちてしまった」と指摘した」

     

    ショルツ氏は議会で、「プーチン」と呼び捨てにするほどの怒りを見せた。プーチン氏へは、裏切られたという感情すら持っているのだ。ロシアは、これからドイツという「親ロ国」を失った痛手を痛感することになろう。

     


    (4)「ウクライナを見捨てれば、欧州で孤立しかねないとの焦りも背中を押した。決済網からのロシア排除では、同じ慎重派だったフランスのマクロン大統領とイタリアのドラギ首相が土壇場で賛成に転換。決定直前には、ポーランドのモラウィエツキ首相が「ドイツの良心を揺り起こす」とベルリンでショルツ氏に直談判した」

     

    ドイツは、EU(欧州連合)で要の役を果たしている。経済でトップという重みを持っているからだ。それだけに、ドイツの意向がEUを動かしてきた。今後のEUは、「反ロ」色を強めていくに違いない。

     


    (5)「ロシアに厳しい姿勢を貫くには、エネルギー政策の転換が避けられない。ショルツ氏はロシアへのガス依存から抜け出すため、ガスの備蓄の拡大を進めるとともに、液化天然ガス(LNG)ターミナルを新設すると表明した。ただ、エネルギー調達の転換は「今日明日でできることではない」(ショルツ氏)。ドイツは当面はロシアからのエネルギー輸入を続ける考えで、ロシア産原油の禁輸に動いた米国とは温度差も残る」

     

    EU全体が、2027年までにロシアからのエネルギー輸入をゼロにする目標を立てている。これが実現すれば、ロシア産エネルギーは一大購入先が消えることになる。ロシア経済の受ける打撃は大きなものになるはずだ。

     


    (6)「ドイツは冷戦後の30年、壁の消えた世界で輸出を伸ばし、経済的繁栄を築き上げた。国防費を最低限に抑え、平和の配当をもっとも多く享受した。退任したメルケル前首相はこの路線を貫くことで長期安定政権を実現したが、ロシアや中国の強権化が進み、危うさも指摘されていた。外交・安保政策の転換に踏み出したことで、メルケル時代は名実ともに幕を下ろすことになる」

     

    メルケル前首相は、親ロ・親中の政策を貫いてきた。これにより輸出を伸し、経済成長の軸にしてきた。先に、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインによる演説をドイツ議会で行なった。その際に、「ドイツは経済、経済、経済と一途に追求してきた」と耳の痛い点をズバリ指摘した。今後は、ウクライナの自由と独立への助力を要請したほど。ドイツは、この悲痛な訴えを外交政策の基軸に据える。 

     

     

     

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    ロシアのプーチン氏は、完全な独裁者になった。今回のウクライナへの侵略戦争は、プーチン氏の采配で行なわれた痕跡が濃厚である。戦略に詳しくない「元スパイ」出身のプーチン氏は、謀略だけで勝てると踏んだ粗雑な戦い方と言われている。

     

    プーチン氏のもう一つの失策は、これまでロシアへ親和的であったドイツが堂々と再軍備宣言したことである。対ロシアへ防衛を固める姿勢を明確にしたのだ。ロシアにとって、重要な理解国を失った。

     


    韓国紙『ハンギョレ新聞』(3月1日付)は、「プーチンの挑発がドイツの軍備増強に火をつけた」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻は、第2次世界大戦以降、軍事力ではなく通商と対話を通じた問題解決を主張してきたドイツの外交・安保政策路線を、一夜のうちに180度覆した。今回の侵攻が欧州に及ぼした衝撃のほどが推し量れる。

     

    (1)「オラフ・ショルツ首相は2月27日のドイツ議会での演説で、兵器の現代化に1000億ユーロを投じるとともに、空軍の老朽化したトルネード戦闘機の代替機として米国の先端ステルス機F-35を購入することを明らかにした。また、対国内総生産(GDP)比1.3%水準の国防費を2%以上まで引き上げることを約束した。対GDP比で2%の国防費支出は、2014年の北大西洋条約機構(NATO)会議で合意されている。しかしドイツなどは増額に消極的で、ドナルド・トランプ政権時代の米国と激しく対立した」

     


    ショルツ首相は、プーチン氏と対面で会談を行ない、性格の異常性に気付いたようである。ドイツ議会で「プーチン」と呼び捨てにしているところに、怒りのほどがあらわれている。プーチン氏の中に侵略魔「ヒトラー」を見たに違いない。

     

    (2)「ショルツ首相は、こうした政策を取る理由について「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻によって新たな現実を作り出した。この新たな現実は明確な対応を求めている」と述べた。同氏は「プーチンはロシア帝国の建設を望んでいる」とし、ドイツはロシアがNATO加盟国の領土を「一寸」たりとも侵略できないようにすると宣言した」

     

    プーチン氏への怒りは、習近平氏にも向けられて不思議はない。新疆ウイグル族弾圧は、習氏の指揮で始められたものだ。それを証明する公式文書が発表されている。ヒトラーは、ユダヤ人撲滅を狙った。習氏は、新疆ウイグル族撲滅を目指している。こう見ると、ヒトラー・プーチン・習近平は同一線上に並ぶ。危険な存在であることは確かである。

     


    (3)「この日のショルツ首相の発言は、戦後70年あまり続いてきたドイツの外交・安保政策の根幹を覆したものと評価しうる。ドイツは先の戦争を引き起こした「戦犯国」であるとの反省のもと、軍備に対する支出を抑制するなどの慎重な態度を取ってきた。民主的価値を無視する独裁国家や権威主義国家に対しても、強力な制裁よりも、いわゆる「貿易を通じた変化」というドクトリンの適用の方を好んできた」

     

    ドイツの外交政策は、最後まで性善説に立ってきた。性善説は、社会が明るくなる上で欠かせないが、国家間では通用しない。国家エゴが前面に出るからだ。その意味で、ドイツはロシアを疑うことがなかったのだ。余りにも「うぶ」過ぎた。

     


    (4)「1989年に冷戦が終わり、統一を達成して以降は、このような傾向はさらに強まった。1989年には50万人だった兵力は18万人に、戦車も5000台から300台ほどにまで削減した。今回の戦争が始まるまでは、支援を要請するウクライナに対して5000個の軍用ヘルメットを送るに止まっていたほどだ。しかし、ロシアの侵攻がすべてを変えた。ベルリンにある「グローバル公共政策研究所」のトーステン・ベナー所長は、ドイツは「プーチンがやったことに衝撃を受けただけではない。プーチンがどんなことをするかについて、我々は過小評価していたという羞恥心と自責の念を抱くようになった」と述べた」

     

    ドイツは、駐独米軍によって防衛され、自主防衛を怠ってきた。この裏には、第二次世界大戦でドイツが、米軍によって徹底的に破壊された恨みがずっと残っていたのだ。こういう怨念が、正規の防衛努力をせず、米国の足を引っ張る外交を行なってきた。日本とは真逆の対米外交である。今、その誤りを悟ったのである。その機会は、プーチンによって与えられた。

     


    (5)「平和主義外交を掲げてきた緑の党のアンナレーナ・ベアボック外相も、ドイツの政策は「180度転換した」と認めた。同氏は「本日ドイツは、外交と安保政策で特に自制力を行使してきたやり方を裏に置いてきた」、「世界が変わったのなら、我々の政策も変わらねばならない」と述べた」

     

    ドイツは、プーチン戦争で目を醒まされた。親しい国と思っていたロシアが、牙を向けてきたことで、その本性を悟ったのである。アジアでも事情は同じだ。中国が、いつ近隣国を襲うか。やはり未然にそれを防がなければならない。外交だけでは防げないのだ。ドイツの政策転換の意味は、ここにある。

     

    (6)「ドイツのこのような路線変更は、2月26日にロシアの銀行をSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)の決済ネットワークシステムから排除することに反対していた態度を変えていたため、ある程度は予想されていた。ドイツはこの日の夜、ウクライナにスティンガーミサイルなどの兵器を提供する方針も明らかにし、これまでは認めていなかったエストニアとオランダによるドイツ製兵器のウクライナへの供与も認めた」

     

    ドイツの政策転換は、まさに劇的であった。これだけ180度もの変わり方ができるのか。そういう典型的な変化である。

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    厚生労働省は2月14日、ファイザー社とビオンテック社の新型コロナワクチンを承認した。すでにワクチンは欧州より日本へ到着している。今週からまず、医療従事者にワクチン接種が始まる。

     

    今回のワクチン開発は、ドイツのビオンテック社によって行われ、米国ファイザー社がこれに販売面で協力したもの。主体は、ビオンテック社である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月15日付)は、「独ビオンテックCEO2年ごと接種で効果続く』」と題する記事を掲載した。

     

    2月14日に日本で初めて承認された新型コロナウイルスワクチンを米製薬大手ファイザーと共同開発した独バイオ製薬ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)が、日本経済新聞のインタビューに応じた。サヒン氏は効果の持続性について「2年ごとに接種が有効」と述べ、多くとも1年ごとで十分との見方を示した。

     

    (1)「ワクチンの効果の持続性が長いほど、接種が行き渡りやすくなり、通常の生活に戻る日も近づく。ビオンテックは同社の「mRNA」と呼ぶ技術をもとにファイザーと新型コロナワクチンを開発。同ワクチンは2020年12月に世界に先駆けて英国で承認を受け、すでに世界約50カ国で接種が始まった。日本での販売はファイザーが担当するが、サヒン氏は事実上の「生みの親」だ」

     

    サヒン氏は、mRNAは人間のすべての細胞の中にある分子であること。mRNAワクチンは自然の分子しか使わないため非常に安全なワクチンだと考えていると説明した。接種後は直ちに分解され、いずれ体内からなくなる。治験の4万人以上、これまでに接種した1千万人以上のデータからも少人数の発熱といったワクチンの典型的な副作用がみられた程度だとして、重大な副作用について杞憂としている。

     

    (2)「厚生労働省は、ワクチンの効果の持続期間は明らかになってないとしている。サヒン氏は同社のワクチンについて、通常は2年ごとの接種で効果が持続し、変異ウイルスの状況によっては1年ごとの接種が必要になるとの見方を示した。コロナ禍からの脱却のメドについては「75~80%の接種率で通常の生活に戻れる」と強調する」

     

    サヒン氏は、次のように説明する。「2年ごとが有効だろう。変異ウイルスの状況によっては毎年になるかもしれない。抗体免疫はほぼ確実に1年からおそらくは1年半続く。T細胞の免疫はずっと長い。定期的に打って免疫力を増強することは非常に役立つ。年に何回も打つ必要はないだろう」

     


    (3)「日本政府はファイザーと2021年中に1億4400万回(7200万人)分の供給契約を結んでいる。日本からの追加注文があった場合に対応できるのかの問いに「他の国・地域との契約を調べないといけないが、今のところ日本がより多く受け取ることはできると考えている」と述べた。日本へはベルギーのファイザーの工場と、このほど稼働した独マールブルクのビオンテックの工場から供給する。米国からの出荷も検討する。「欧米から十分な量を供給できる」とし、日本での現地生産は考えていないという。欧州連合(EU)が1月に導入したワクチンの域外への輸出について事前許可の取得を義務づける制限措置も、問題にならないとしている」

     

    日本へは、十分に供給すると説明している。EUによるワクチンの域外への輸出事前許可は問題にならないと一蹴した。

     

    (4)「同社は年内に20億回分を生産する予定。21年末までにベルギーとマールブルクの拠点だけで年産能力を少なくとも175千万回分に広げる。「22年はもっと生産する」と供給拡大に自信を示した。同社のワクチンはセ氏マイナス70度で保管する必要があるため、専用の輸送設備が必要だ。サヒン氏は「ほかのタイプのmRNAワクチンの準備も進めている。1つは凍結乾燥タイプで、21年後半の承認を目指している。もう一つはマイナス20度で保管できる液体タイプだ。こちらはもっと早くできるかもしれない」と明らかにした。凍結乾燥タイプは28度で保存が可能になるとされ、取り扱いが格段に簡単になる」

     

    ワクチンは現在、セ氏マイナス70度で保管する必要がある。だが、改良を加えており、凍結乾燥タイプは28度。もう一つは、マイナス20度で保管できる液体タイプという。

     


    (5)「サヒン氏は、日本での承認について「我々のワクチンを日本に届けられ、日本の人々が通常の生活に戻るのを手伝えることをたいへんうれしく思う」と述べた。同社はがんの治療薬開発で知られていたが、20年1月に中国で新型コロナが広がったのを見てすぐにワクチン開発への転換を決めた。同3月にファイザーと組み、11月に治験で9割を超す有効性があると発表。開発からわずか11カ月で英国での緊急承認にこぎ着けた」

     

    mRNAワクチンは、早くも今年のノーベル賞候補に挙がっているほど。科学力の勝利を示すものと高い評価を受けている。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-01-08

    中国、「怪しいワクチン」73種の副作用を明記、国際基準より甘く「世界一、安全でない」

    2021-02-09

    インド、「驚いた!」ワクチン外交開始、アストラゼネカの委託生産生かし「中国へ対抗」

     

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