勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: オーストラリア経済時評

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    米英豪の3ヶ国が結んだ「AUKUS」(オーカス)は、米英の攻撃型原潜技術を豪州へ移転するだけでない。先端技術でも3ヶ国は協力するという広範な取極である。

     

    インド太平洋戦略では、すでに日米豪印4ヶ国が参加する「クアッド」が存在する。これとは別に、「AUKUS」を結成したのは、より密度の濃い協力姿勢を構築するためだ。米英が、対中国戦略を重層的に組立てていることがわかる。これまで、非同盟であったインドをクアッドに繋ぎ止めた意味は大きい。ただ、それには自ずと限界もある。そこで、AUKUSで核心部分の結束を図るというもの。ここへは将来、日本と台湾を参加させる意図も見え見えだ。ただ、韓国の名前はないのだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月28日付)は、「AUKUSは未来の『インド太平洋条約』」と題する記事を掲載した。

     

    AUKUSは深く根差しながら柔軟性も併せ持った技術大国間の連携枠組みであり、21世紀の世界像を描き出し、米国のインド太平洋域での協力関係のモデルにもなり得るものだ。

     

    (1)「モリソン豪首相が最近のワシントン訪問の際、インタビューに応じ筆者に語ったところによれば、AUKUSの枠組みは、オーストラリアの人々の考えが起点になったという。何年にもわたってオーストラリアへの圧力を強めてきた中国は、昨年11月にはキャンベラ駐在の外交官の口を通じて、豪州が中国政府との関係を改善するためには、14分野の中国の不満を解消しなければならないと警告した」

     

    豪州が、安保面で日本を頼りにしていることは確かだ。中国の圧力を強く受けており、意地でもこれをはね返すという強い意志が滲み出ている。

     


    (2)「この中で中国側は、豪州が取るべき措置として、「反中国」的な研究への資金援助の停止、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源に関する世界保健機関(WHO)のより徹底した調査を求めるような挑発的行動の抑制、中国による豪州への戦略的投資に反対する動きの停止、民間メディアによる中国関連の「非友好的」ニュース報道の阻止などを挙げた」

     

    中国は昨年11月、豪州が14分野で中国の不満を解消しなければならないと警告した。戦狼外交の典型例である。主権国である豪州が受入れるところでなく、今回のAUKUS結成が豪州の回答である。やぶ蛇となった。

     


    (3)「中国の海軍力強化の規模とスピードを目にした豪州の国防計画担当者らは、国防戦略の見直しを強いられた。この見直しで犠牲になったのが、フランスとの戦略的パートナーシップへの信頼感だ。豪仏間の協力の基盤となっていたのが、先にキャンセルされた潜水艦開発計画だった。とどまるところを知らない中国の台頭を受けて豪州は、自国が必要とする抑止力、防衛力を保証できるのは、米国との関係緊密化だけだと結論付けた」

     

    豪州が、フランスとのあいだで結んだ潜水艦開発は頓挫していた。これに嫌気した豪州が、米英という馬に乗り換えたもの。フランスの怒りは、「共通の敵」に向かい合うため、いずれ氷解するであろう。

     

    (4)「モリソン政権は中国政府に歯止めをかける方法を模索する中、斬新なアプローチを思いついた。インド太平洋地域には、北大西洋条約機構(NATO)のような、正式な安全保障協定を求める声がほとんどない。だが、豪州は、米国の外交官リチャード・ハース氏が「posse(民警団)」と呼んだことで知られる、緩やかな有志連合ではなく、より強固で耐久性のあるものを求めていた。豪州は、英米のパートナーを説得し、情報共有のパートナーシップであるファイブアイズ(米国、英国、カナダ、豪州とニュージーランド)が第2次世界大戦以降何十年をかけて築いてきた深い信頼を利用して、posseとは違う新しいものを創設しようと考えた」

     

    豪州は、中国の強い圧力を受けて、「緩やかな有志連合でなく、より強固で耐久性のあるものを求めた」のである。中国も豪州を怒らせる愚かなことをしたものだ。

     


    (5)「9.11以後のテロに関する情報共有から最近の中国をめぐる協力の間に、ファイブアイズの関係はかつてないほど強固になった。豪州はこのパートナーシップを情報分野から研究および防衛計画を含めるまでに拡大しても良いのではないかと考えた。こうした協力のモデルは既に存在していた。米国は核を推進力とする機密技術を英国の潜水艦計画と共有していた。豪州はこの計画に加わり、量子コンピューターから人工知能(AI)、電子戦争、ミサイル、サイバーに至るまでの分野で3カ国が一層協力することを提案すれば、軍事および外交的な利益とともに、経済的利益がもたらされる可能性があると考えた」

     

    豪州は、自動車産業もないほど製造業で弱体だ。それだけにAUKUS戦略で最先端技術を手に入れられれば「願ったり叶ったり」である。豪州が、これ以上のパートナーを得るのは難しいであろう。このAUKUSに、日本が欠けていては「絵」にならないのだ。

     

    6日)「インド太平洋諸国は多くの欧州諸国に比べ、主権の共有や、規則中心で官僚的な機構を構築することへの関心が薄い。東南アジア諸国連合(ASEAN)は欧州連合(EU)よりも緩く、日米豪印で構成されるクアッドは北大西洋条約機構(NATO)よりも緩い。中国の行為が、近隣諸国・地域を米国との一層緊密なパートナーシップに向かわせ続けるならば、日本や台湾が、よりAUKUSに近い取り決め、そしておそらくはAUKUSそのものに加わる可能性がある。日本、インド、台湾、AUKUS参加国を含む諸国が技術を共有し、防衛政策で協調するブロックとなれば、強大な力となるだろう

     

    AUKUSには、日本と台湾が加わって強固な軍事同盟を結成する可能性を示唆している。日本には憲法上の制約がある。ただ、将来の憲法改正で自衛隊が明記されれば、軍事同盟に参加する道も開かれるであろう。

     

    韓国は、このAUKUS拡大構想に入っていないのだ。韓国のような「宙ぶらりん国」は、中国への情報漏洩リスクを抱えて危険なのであろう。

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    中国は、武漢ウイルス研究所を新型コロナウイルス感染源として絶対に認めようとせず、ウソにウソを重ねている。だが、遅ればせながら動かせぬ証拠としてコウモリに関わる映像がすでに公開されている。

     

    豪メディアは新たに、中国科学院武漢ウイルス研究所の内部映像を入手した。映像には、研究所で生きたコウモリが飼育されている様子がある。世界保健機関(WHO)の専門家の1人は、今まで同研究所でコウモリが飼育されていることについて「陰謀論」と主張して否定してきた。

     

    これに先立ち、米紙『ニューヨーク・ポスト』(5月28日付)は、武漢ウイルス研究所の研究者が手袋やマスクなどの保護具を着用せずにコウモリとその排せつ物を扱う様子が映る中国中央テレビの映像を公開した。2017年12月29日に中国で放映されたこの映像で、半袖・半ズボン姿の研究者たちは、手袋以外は保護具を着用しないまま、感染性が高いコウモリの排せつ物を採取していた。これによって、すでに中国政府の主張は破綻している。

     


    『大紀元』(6月15日付)は、「武漢研究所でコウモリを飼育―豪メディア」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「豪メディア『スカイニュース・オーストラリア』(6月14日付)が、研究所で生きたコウモリが飼育されている様子の映像を入手した。それによると、2017年5月に中国でバイオセーフティーレベル4実験室(P4実験室)が稼働した際、中国科学院は、同実験室で働く科学者のインタビュー映像を公開した。この映像の中で、武漢ウイルス研究所の中ではコウモリがゲージ内で飼育されており、1人の研究者が餌として虫をコウモリに与えていた」

     

    今回、公開された映像は2017年5月に武漢ウイルス研究所で、コウモリをゲージで飼っている状態である。これとは別に、すでに2017年12月29日に中国で放映された映像が再公開されている。研究室の中で一般的な衣類を着て、頭に保護具をつけていない姿も映像にある。これら2つの公開された映像によれば、武漢ウイルス研究所でコウモリを実験していたことは疑いない事実である。

     


    (2)「今年2月に新型コロナウイルスの起源をめぐって武漢で現地調査を行ったWHOは、報告書で、武漢ウイルス研究所のコウモリ飼育について言及していない。現地調査に参加した調査員のピーター・ダザック氏は、同研究所でコウモリが飼育されているとの指摘を「陰謀論」と反論した。同氏は昨年12月、ツイッター上で「野外で採取したウイルスの遺伝子解析のために、武漢の研究所に送られたコウモリはいなかった」「われわれはコウモリを捕まえた場所で、またコウモリを放した」と投稿した」

     

    ダザック氏は昨年12月、ツイッター上で武漢の研究所に送られたコウモリはいなかったと投稿している。

     

    (3)「ダザック氏は昨年12月11日、「これは広く流れている陰謀論だ。これは私が率いてきた仕事や15年間協力してきた実験室への批判だ」「そこには生きている、あるいは死んだコウモリはいない。こんなことがあったと証明する証拠はどこにもない。これは過ちである。修正されることを望む」とツイッターに書き込んだ。しかし、6月初め、同氏はこれまでの主張を後退させ、武漢ウイルス研究所はコウモリを飼育していた可能性があると示した。その一方、自身は武漢ウイルス研究所のスタッフに質問しなかったと強調した」

     

    ダザック氏は今年6月初め、これまでの主張を後退させ、武漢ウイルス研究所はコウモリを飼育していた可能性があると示した。なぜ、これまでの発言を否定する行動に出たのか。それは5月末、バイデン米国大統領が情報機関にコロナ発生源の再調査を命じた結果であろう。これ以上のウソが重荷になってきたと見るほかない。

     


    (4)「オーストラリア政府は一貫として、新型ウイルスの起源をめぐり独立した調査の実施を呼びかけている。米政府と議会はこのほど、新型ウイルスが実験室から漏えいした可能性が高いとの認識を示し、中国批判を強めている。バイデン大統領は5月末、情報機関に対し、ウイルスが実験室から流出した可能性を含めて追加調査を行うよう指示したことを明らかにした」

     

    最近、分かってきたニュースによると、武漢ウイルス研究所が発生源であることを疑わせるものばかりである。2019年11月に武漢ウイルス研究所の研究員3人が未知の病にかかったという内容も公になっている。

     

    先に閉幕したG7首脳会談の共同発表では、コロナ問題について次のように記述されている。新型コロナの起源を巡って、「われわれは研究所にアクセスできていない」とし、「動物や環境と接したコウモリが原因になったのか、それとも研究所での実験で問題が生じたのか」どうか、まだ明確になっていないと述べた。このように、疑惑に満ちた内容である。武漢ウイルス研究所が、コロナ発生源の焦点になってきた。

     

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    豪州の大学教授が、韓国で新著『中国の静かな侵攻』を出版した。それによると、かつての豪州は、チャイナ・マネーに酔いしれて、「ウエルカム中国」であった。その豪州が、中国による政治的な陰謀に気づき、現在は「反中国」の姿勢へ大きく転換している。こういう経緯を踏まえて、韓国も中国の「底意」に気づき目を覚ませと忠告している。

     

    『朝鮮日報』(6月13日付)は、「われわれが選択しなければ、中華は彼らの夢想にすぎない」と題する記事を掲載した。

     

    米中貿易紛争に陰に隠れてしまっているが、オーストラリアも昨年から中国と本格的な貿易紛争を繰り広げている。理由は簡単だった。中国の湖北省武漢で最初に発生したコロナの起源について、オーストラリアが「国際調査をやろう」と主張したからだ。

     


    輸出全体の40%を中国に依存するオーストラリアが、ある種のオーストラリア版「THAAD(高高度防衛ミサイル)報復」に遭っているのだ。しかし、オーストラリアは後に退かない。今年3月には中国をけん制する米国・日本・インド・オーストラリア4カ国の初の「クアッド」首脳会談まで開いた。経済を武器にして圧迫する中国に立ち向かっている。

     

    (1)「オーストラリアはもともと、中国に立ち向かう国ではなかった。オーストラリアの融和的対中政策の基調を変えたきっかけの一つが、本書『中国の静かな侵攻』だ。英国サセックス大学で経済学の博士号を取った、オーストラリアの中国専門家クライブ・ハミルトン教授は、本書で「中国共産党はおよそ30年にわたって組織的に影響力拡大戦略を追求してきた」と主張している」

     

    中国4000年の歴史は陰謀の歴史である。先ず、このことを頭に入れて置くことだ。外交面で、「ニーハオ」と微笑しながら近づいてくる裏に、何かの企みがあると見なければならない。中国と接触する際には、それくらいの用心深さが必要だ。中国の唱える「友好論」には、トゲが隠されている。

     


    (2)「2017年、最初に本書を出すことになっていたオーストラリアの出版社は、中国の抗議を恐れて契約を破棄した。紆余(うよ)曲折の末に別の出版社から本を出したハミルトン教授は、このように語る。「オーストラリアは復活する中華の朝貢国になるだろうと悟った」。当時のオーストラリアは、香港独立を支持したという理由で大学生が学校側から停学処分を受け、中国の政治家が「元の時代の13~14世紀ごろ、中国の探検家がオーストラリアを発見した」と発言しても異議を唱えない国だった」

     

    豪州には、チャイナ・マネー欲しさに中国へ媚びを売っていた恥ずかしい時代がある。

     

    (3)「ハミルトン教授は、オーストラリアの政界・財界はもちろん学界にまで入り込んだ「チャイナ・マネー」を追跡する。オーストラリアで活動する中国出身の実業家らは政界の大手スポンサーになり、主な政治家らに巨額の献金を惜しみなくばらまいて「中国の友」にした-と指摘する。ハミルトン教授は、ロバート・ホーク元首相の名を挙げ「10年以上にわたり中国企業の契約締結を助ける仕事に集中し、2000年代半ばには5000万豪ドル(現在のレートで約42億円)もの財産を持つ富豪になった」と説明した」

     

    ホーク元首相は、対中ビジネスの支援によって巨額の富を稼いだ。中国は、こうして政界トップに焦点を合わせて賄賂工作をしている。米国の元国務長官キッシンジャー氏へも、多額の資金が「顧問料」名義で渡っている。キッシンジャー氏が今も、「親中」の立場を離れられないのは、この理由である。トランプ氏は、キッシンジャー氏の意見を無視していた。

     


    (4)「ハミルトン教授は、新しい韓国語版の序文で「中国はあらゆる側面で過去より国力が強くなり、より深刻な摩擦と葛藤も甘受できるようになった」とつづった。強くなった中国は米国・オーストラリア・韓国などを経済的に圧迫し、経済的侵攻を行っているというのが現実だ。この状況下で、ハミルトン教授は「『経済脅迫』を通して中国に経済的に依存する国から政治的譲歩を引き出した」と指摘する。韓国も直面したので分かる話だ。結局、中国の野心は領土紛争よりも経済と文化の領域で現れる、ということを示している。また、中国は一段と相手にし難い国になるだろうという見方も一致している」

     

    中国は、日本の尖閣諸島国有化で大きな圧力を掛けたが不発に終わった。日本が毅然として対応したからだ。中国の前で狼狽えると、さらに付けあがってくるだけである。力には力で押し返すことが、中国に諦めさせる早道である。この中国に「正義論」は通用しない。

     


    (5)「ハミルトン教授は、韓国語版の序文に「オーストラリア政府は北京(中国共産党)のいやがらせに立ち向かったが、韓国の政治指導層は早々とおじけづき、『戦略的あいまいさ』という惰弱な態度を維持している」と記した。食べていかねばならないので実利のためには仕方ない、という考えも抱くが、彼は著書で覚醒を促す。「『中国がわれわれ(オーストラリアの)運命だ』という思考は、実のところ中国のおかげで生計を維持している人々や企業が誇張し、メディアがばらまいたものだ。われわれは自ら選択したときにのみ、中華世界で生きることになるだろう」。韓国はいつまで選択を先延ばしにできるだろうか」

     

    韓国は、歴史的背景によって中国に飼い慣らされている。その潜在的な不平不満のはけ口が反日である。「親中・反日」は、韓国社会の精神的バランスをとる必要な装置になっている。韓国は、1000年単位での中国支配と、たった36年間の日韓併合を比較して、なぜ日本をここまで非難するのか。それは、中国の過去に見せた韓国への報復が、いかに残忍であったかを示唆しているのだろう。ストックホルム症候群に陥っている証拠だ。韓国は、中国病の患者である。

     

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    中国、「呆れる」G7直前に王毅外相、韓国へチャイナを忘れるな「宗主国気取り」

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    韓国、「自己反省」朝鮮以来、韓国に真の友好国が現れなかったのは「なぜか?」

     

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    中国は、周辺国を軍事的に威嚇しているので、これが新たな反応を生んでいる。日本と豪州の外務・防衛「2+2会合」では、海上自衛隊が豪艦艇を防護(護衛)することに決まった。中国は、日豪に同盟強化の動きを加速化させている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月10日付)は、「自衛隊の豪艦防護、日豪2プラス2で確認 米軍以外で初」と題する記事を掲載した。

     

    日豪両政府は9日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をオンラインで開いた。自衛隊が平時から防護できる他国軍艦の対象にオーストラリアを追加したと確認した。米軍以外に適用するのは初めて。両国の2プラス2は2018年10月以来、およそ2年半ぶり。日本側は茂木敏充外相と岸信夫防衛相が、オーストラリア側はペイン外相とダットン国防相が出席した。

     


    (1)「自衛隊が他国軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」はこれまで米国だけが対象だった。豪州は2カ国目となる。共同文書に「自衛官による豪州国防軍の武器等の警護を実施する準備が整っている」と書き込んだ。共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と明記した9回目となる日豪2プラス2で台湾海峡に初めて言及した。中国による軍事的圧力への対抗策として盛り込んだ。

     

    日豪「2+2会合」でも台湾問題に言及した。豪州は、中国の経済制裁を受けているので、中国脅威論が強い。

     

    (2)「米国の同盟国である日豪の安全保障上の協力は、対中抑止の前線となる。東シナ海と南シナ海の状況には「深刻な懸念」を表明した。中国の海警局を「準軍事組織」と位置づけた海警法にも「懸念」を訴えた。自衛隊と豪軍が互いに共同訓練で入国するときの手続きを簡素にする「円滑化協定」に関しては署名に向けた調整を加速させると申し合わせた。中国外務省の汪文斌副報道局長は9日の記者会見で「日豪に中国への内政干渉を停止し地域の平和と安定を破壊しないよう促す」と反発した」

     

    日豪軍が、互いに相手国へ入港できる手続きを急ぐという。いずれ日本でも豪国旗をつけた艦船の入港が見られるようになろう。こうなると、日韓関係が一段と疎遠化する。旭日旗を付けた艦船は入港するなという韓国との関係はさらに低下するに違いない。豪州こそ、旭日旗の「被害」を被った国である。その豪州が、過去を忘れて未来志向になっている。

     

    (3)「菅義偉首相は20年11月、モリソン豪首相と会談した際に「防衛協力を新たな次元に引き上げる」と打ち出した。今回の2プラス2を早い段階で開くと決めた。背景には豪州が中国との対立を深めている状況がある。野党議員が、中国側から多額の資金援助を受けていたと発覚し、4年ほど前から国内の反中感情が高まった。当初、中国寄りとみられていたターンブル政権は17年から対中強硬姿勢に転じた。同年の豪州の外交白書は「中国が米国の地位に挑戦している」と記した。関係の深い太平洋の島嶼国に中国が経済支援で影響力を拡大していると警戒した」

     

    豪州が、反中に転じたきっかけは中国のスパイ行為にあった。中国は、多額の政治資金を持込んで、中国へ有利な政策決定へ誘導しようとしていた。豪州が、日本の潜水艦技術導入を直前で中止した背景には、中国スパイの暗躍が取沙汰されている。豪州が、日本技術採用の潜水艦を建艦すれば、中国にとって脅威と見た結果である。

     


    (4)「18年に就任したモリソン首相もこの路線を踏襲した。20年4月にはモリソン氏が新型コロナウイルスの発生源に関する調査を国際社会に呼びかけた。猛反発した中国は豪州産の食肉輸入を一時停止した。豪州は経済面で中国への依存が大きいものの、対中批判を続けた。国防相のダットン氏は4月、テレビ番組で台湾海峡有事への懸念が強まる状況に「軽視すべきではない」と指摘した。「台湾と中国の間には敵意がある」とも語った。豪州はその後、米軍が使う北部ダーウィンの拠点を増強する方針を発表した。中国は経済協力について議論する閣僚級の枠組み「中豪戦略経済対話」の活動を停止すると決定した」

     

    豪州は、地方自治体が結んだ外国との協定を破棄させている。外国とは、中国を指している。ダーウィンの港を99年間、中国企業へ租借させる協定も破棄に向かって調整中である。ここには、米海軍の基地がある。中国へ情報が筒抜けになるのだ。

     


    (5)「日本政府高官は、「現時点で中国と最も対立している国は豪州だ」と話す。中国にとって豪州は直接の国境線がない国で、日本やインドに比べれば軍事衝突が起きる可能性が低いため圧力をかけやすい。豪州は自国産商品の輸入制限など事実上の「制裁」と受け止められる措置を受けた。中国との経済的な結びつきが深い日本も同様の心配がある。沖縄県・尖閣諸島などでは中国の海洋進出による脅威を受ける。同盟国と一緒に中国を抑止する戦略を描くバイデン米政権にとって、日豪は中国と対峙する前線になる」

     

    日豪の密接な関係構築は、大きな軍事的な力を発揮する。日韓関係が水と油の関係であり、日豪関係強化が、この穴を埋めるに違いない。

     

    (6)「米国では次の駐豪大使にオバマ政権時に駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名する案が浮上する。日米豪の結びつきを強めるための人事とみられる」

     

    次の駐豪大使に、駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名する案が浮上しているという。ケネディ氏は大の日本贔屓である。それだけに、駐豪大使に就任すれば日米豪が、日米韓に変わって重要な役割を果たすであろう。韓国の反日が、自らの地位低下を招いている。

     

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    中国は、これまでオーストラリアとニュージーランド(NZ)の間に溝をつくる戦略を駆使してきたが、どうやら不発に終わる気配だ。5月31日、豪・NZ首脳会談が開かれて、香港問題で強い憂慮の念を共有していると発表した。

     

    中国は、豪・NZ離間の策略を次のように行なってきた。

     

    4月5日、中国官営「Global Times(グローバルタイムズ)」は、「オーストラリアが米国の考えに従わせようとニュージーランドを圧迫している」というタイトルの寄稿文を掲載した。『中央日報』(4月7日付)が報じた。

     

    この寄稿文で、中国聊城大学のYu Lei首席研究員は、「豪メディアが最近新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)発生源調査に懸念を表明する共同声明からニュージーランドが外れたことをめぐって批判を加えている」とし「これはニュージーランドの対中路線を批判する唯一の記事でもない」と書いた。あわせて「これはオーストラリアが自分たちを米国に続く南太平洋の覇権勢力と感じ、ニュージーランドも自分たちが進む方向に従うべきだと信じているということ」と強調した。



    世界14カ国は3月30日、世界保健機関(WHO)の新型コロナ発生源調査の結果をめぐって懸念を声明した。NZが、ここに合流しなかったという理由で不当な圧力を受けているという趣旨であった。この声明には、米国の主導で結成された機密情報共有同盟体「ファイブ・アイズ」に属した米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド」のうちニュージーランドだけが合流しなかった。

    以上のような事情から、NZが中国寄りに「鞍替え」したのでないかとみられていた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月1日付)は、「豪・NZ、対中強硬で足並み 首脳会談 香港問題『深い懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアのモリソン首相とニュージーランド(NZ)のアーダーン首相は5月31日、NZ南部クイーンズタウンで会談した。会談後の共同声明は香港や新疆ウイグル自治区の問題で「深い懸念」や「重大な懸念」を示した。対中国で強硬姿勢を取る豪州にNZが足並みをそろえた。

     

    (1)「共同声明は、「香港の人々の権利や自由への制限が進んでいることや、2047年まで認められている香港の高度な自治の弱体化について深い懸念を表明する」とした。ウイグル族の人権の状況についても「重大な懸念」を示した。豪州とNZはいずれも米国と機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」に参加する。米国や豪州などほとんどの参加国が中国への強硬姿勢を深めるなか、NZの対中姿勢は融和的だと指摘されてきた。

     

    NZは一時、中国寄りが明らかであった。中国から相当の圧力を受けていたことを覗わせている。中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に関心を持った際も、NZを窓口に利用するなど、目立った行為をしていた。

     

    (2)「例えば、対中国を念頭にファイブ・アイズの機能強化を求める声があるが、NZのマフタ外相は4月、慎重な姿勢を示した。1月には改定した中国との自由貿易協定(FTA)に署名した。報道によるとNZのオコナー貿易・輸出振興相が豪州は「NZを見習って、中国に敬意を示すべきだ」と発言した。ウイグル族を巡っても、NZの少数政党が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する決議を議会に提出しようとしたが、「深刻な人権侵害」と書き換えられた。地元メディアによると与党・労働党が「ジェノサイド」の文言を削除するよう求めた」

     

    中国は、豪州に経済制裁を科しながらNZからは優先的に輸入するという、あからさまな差別政策を行なっていた。これを見れば誰でも、NZが中国によって「洗脳」されていると見るはずだ。中国のやり方は露骨で幼稚である。

     


    (3)「会談後の記者会見で、「NZの中国に対する最近の姿勢が、豪州や欧米諸国の警戒を招いている」と問われ、アーダーン氏は「(人権や通商など)重要な問題に対して我々が強い姿勢を取っていないとの指摘には合意しかねる」「NZと豪州は通商や人権問題で完全に同じ立場を取っている」などと反論した。ファイブ・アイズについても「我々は献身的な参加国であり続ける」との姿勢を示した」

     

    ファイブ・アイズに日本参加論が出ると、NZが「現在のメンバーを増やす必要はない。増やせばNZは脱退する」とまで発言した。これは、中国の入れ知恵によることは明らか。中国は、日本がファイブ・アイズに参加されると困るのだ。

     

    (4)「モリソン氏も「我々の分断を試みる動きがあるかもしれないが、成功はしないだろう」と強調した。また「米中の戦略的競争は激化しているが、それは必ずしも衝突の可能性が高まることにはつながらない」と指摘、「我々が求めるのは各国が主権を保ち、(自由な)貿易が行えるような自由で開かれたインド太平洋だ」と述べた」

     

    下線の部分は、明らかに中国を指している。中国が豪・NZの離間を策して暗躍しているのだ。

     


    (5)「地域の安全保障に詳しいビクトリア大学のロバート・エイソン教授は、両首脳が各国の懸念を受けて「特に中国に関して、できる限りの結束を示そうとした」とみる。一方で「中国では、NZが豪州の(対中強硬的な)方向に動いたとの声が出るだろう」述べ、中国が反発する可能性もあると指摘した」

     

    中国は、「孤軍奮闘」してあちこちで外交爆弾を仕掛けて歩いている。気の毒になるほどだ。中国が、反発してももはや影響力は薄れている。それだけ、中国包囲網が広がっているということである。

     

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