米国のトランプ大統領が10月20日、中国のレアアース輸出規制強化に対抗し、豪州とレアアースおよび重要鉱物に関する協力を強化する。豪州は、世界第4位のレアアース生産国である。中国は、「レアアース輸出規制」を米国に対する「てこ」として利用しようしている。米国は、中国の交渉力を弱め、逆に対中圧力を高めようとする狙いが込められている。日本も一部のプロジェクトに参加する予定。米国が、同盟国と手を組んでレアアース供給網の再編を加速させている、という見方が強まっている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月23日付)は、「トランプ氏、豪レアアース開発で好ディール」と題する社説を掲載した。
中国は、レアアース(希土類)生産の支配力を政治的・経済的武器として利用している。そのため米国は、中国に代わるレアアースの供給源を必要とする。トランプ米大統領が今週、豪州のアルバニージー首相との間で鉱山開発と生産に関する協力強化の合意を結んだことは、代替供給源の確保に向けた重要なステップとなった。貿易面で同盟・友好関係にある国々の存在がいかに有益か、これでトランプ大統領もよく分かったことだろう。
(1)「中国政府は、何十年もかけてレアアース生産の支配力を強化してきた。その狙いは、軍事・経済両面で、西側諸国に対する影響力を強めることにあった。中国は、2010年に尖閣諸島の領有権を巡って日本と対立した際に、レアアースの対日輸出を制限した。今月に入って中国の対応はエスカレートした。中国産のレアアースがわずかでも使用されている製品について、それを製造する世界中のメーカーに対して中国の輸出許可を得るよう要求したのだ。こうした製品には、電子機器、コンピューター用半導体、国防装備品、自動車、医療用機器などが含まれる」
中国は、レアアースを武器化して自らの要求を実現しようとしている。すでに、2010年に日本へ向けて行なった経緯がある。
(2)「中国のレアアースのシェアは、鉱山生産で約70%、精製後で約90%を占める。中国政府は、レアアース産業に巨額の補助金を拠出することでこの支配的地位を築いてきた。巨大インフラ整備構想「一帯一路」の一環として行ってきた開発途上国での鉱山買収も、中国のレアアース支配に寄与してきた。中国企業は昨年、海外の鉱山買収に220億ドル(約3兆3000億円)を投じた。西側の競合他社に競り勝ったケースも多かった」
中国は、一帯一路によって開発途上国の鉱山を買収してレアアース独占に向けて準備してきた。昨年は、海外の鉱山買収に220億ドル(約3兆3000億円)も投じている。
(3)「中国では環境基準が緩いため、副産物として生じる有害物質の投棄が禁止されている西側諸国に比べて、低コストで大規模なレアアース加工処理が可能になる。レアアースの精製には鉱石採掘段階の22倍の水とエネルギーが必要になる。中国は低価格のレアアースを世界の市場にあふれさせて、先進国の生産者が対抗するのを難しくしている。中国の支配力の乱用と国家安全保障上の大きな利害を考えると、これは代替の調達源を確保するために米政府の支援が必要な(レアな)例だ」
レアアースの精製には、鉱石採掘段階の22倍の水とエネルギーが必要になる。日本の南鳥島のレアアース開発では、こういう煩雑な過程が省かれる。海底6000メートルの深海から「閉鎖系二重管揚泥方式」でレアアース泥を吸い上げ、AIによって元素分析して自動分類する。これを陸上まで輸送して精錬する。陸上のレアアース採掘と比べて、人力に依存しないシステムが進んでいる。28年から商業生産へ入る予定だ。年産100万トンのレアアース生産が可能で、中国を抜いて世界一の座に着く。
(4)「そこで思い浮かぶのが豪州だ。レアアース生産で世界4位の豪州(2位は米国、3位はミャンマー)を米国のパートナーとして考えるのは自然なことだ。また、米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、豪州におけるレアアース探査プロジェクトへの投資額は昨年、世界全体の約45%を占めた。これは世界最大のシェアだ。豪州では現在、89件のレアアース探査プロジェクトが行われているが、米国では12件にとどまっている」
米豪は、南鳥島のレアアース生産計画を知らずに共同で開発計画を立てている。日本は、ガリウム生産で参加する。レアアースでは参加しない。
(5)「米豪両政府は20日、複数のレアアース共同投資プロジェクトを発表した。米アルミ大手アルコアと双日は、日米豪3政府の支援を得て西オーストラリア州にガリウム工場を建設する。豪州の鉱物サプライチェーン(供給網)強化のために、米輸出入銀行が22億ドルを拠出する。合意のもう一つの目的は、生産者がもっと確実な価格見通しを持てるようにして、投資の増加を促すことだ。合意では、最低限の環境基準に同意した自由貿易政策を取る国のための代替的システムが提案されている。最低価格を設ける手法は、生産者が投資を回収するのに役立つだろう。投資の回収には通常30~40年かかる」
米豪両国は国防・先端技術製造業基盤の裏付けとなる重要鉱物とレアアースの安定的な供給を加速させるため、今後6カ月間で30億ドル(約4560億円)以上を関連プロジェクトに共同投資する予定だと発表した。「これを通して回収できる資源の価値は530億ドル(約8兆500億円)に達する」というのがホワイトハウスの説明だ。トランプ大統領は、「1年後には、どう処理すればいいか分からないほど多くのレアアースを確保しているだろう」と豪語した。以上は、『朝鮮日報』(10月22日付)が報じた。





