中国は、感情的理由で豪州へ経済制裁を加えているが、大きなブーメランを浴びることが決定的になってきた。中国の台湾侵攻の際に、豪州は米国と共に戦うと国防相が発言したもの。中国の「戦狼外交」が、事前にこうして敵をつくっていくことを察知できない無能さに呆れるほかない。
中国は、先にロシア海軍と多数の軍艦によって日本列島を一周して「威圧」を与えた積もりになっている。清国時代、英国から購入した最新鋭軍艦で長崎まで二度も回航し威圧する行動を取ったことがある。これに奮起した日本は、自力で軍艦を建艦して日清戦争で大勝した。日本は、こうした中国の威圧に屈することがない国家である。それは、中国を文化的に恐れていないからだろう。
『朝鮮日報』(10月27日付)は、「オーストラリア国防相『中国が台湾を攻撃すれば同盟国の米国と共に対応』」と題する記事を掲載した。
(1)「オーストラリアのダットン国防相は10月24日(現地時間)「中国が台湾を攻撃した場合、オーストラリアは米国と共に行動するだろう」と発言した。国際的な外交・安全保障問題で米国の側に立つ考えを重ねて明確にした形だ。今年5月にはオーストラリアのモリソン首相も「中国が台湾を攻撃した場合、オーストラリアは米国とその同盟国を支持するだろう」と発言していた。オーストラリアは先月、米国や英国と共に中国の膨張に対抗するため、3カ国による安保協力体「AUKUS」を立ち上げた」
豪州が、AUKUS(米英豪三ヶ国)の軍事同盟を結んだ意味は大きい。米英から攻撃型原潜技術を導入して建艦することになったもの。原潜が完成する前に、米英からリースして配備する計画である。南シナ海で豪海軍の原潜が米英海軍と同一行動を取るのだ。
近代戦の経験のない中国海軍にとっては、身震いするほどの恐怖感に襲われるはずだ。海南島から出撃するはずの中国潜水艦部隊は、AUKUSの潜水艦部隊によって、足止めされる危険性に遭遇するであろう。
(2)「ダットン国防相はこの日、オーストラリア・スカイニュースとのインタビューで「ある時期に中国と(自由民主陣営との間で)戦争が起こる可能性はあるのか」との質問に「中国は台湾に対する意図を明確にしており、米国も台湾についての考えを明確にしている」「中国が台湾に対して武力攻撃を行えば、オーストラリアは米国の対応を見極めた上で、70年以上にわたりそうだったように同盟国(米国)と共に行動するだろう」との考えを示した。ダットン国防相はさらに「(戦争は)誰も望んではいないが、(戦争が起こるかどうかは)中国側に問うべき質問だ」とも指摘した」
台湾侵攻を決めるのは習近平氏である。自らの政治生命が掛かった決断になるはずだ。敗北すれば、習氏の政治生命はそこで終わる。同時に、反習派の手によって拘束されるだろう。こういう大きなリスクの掛かった台湾侵攻を簡単に始めるかどうか。中国経済斜陽化の中で、余りにも危険な台湾侵攻作戦になるはずだ。
(3)「オーストラリアのこのような考えは、米国による台湾防衛の約束とも一致する。今月21日に米国のバイデン大統領はタウンホール・ミーティングの際、「中国が台湾を攻撃した場合、米国は防衛するのか」との質問に「そうする」と答えた。オーストラリアは先月15日に米国、英国と共に各国名の最初の文字を取った安保協力体「AUKUS」を立ち上げ、米英から技術支援を受け原子力潜水艦8隻を建造することを決めた。米空母をオーストラリアに循環配備することにも合意した」
バイデン大統領は、台湾防衛についての質問に対した「決まり切ったこと」と言ったニュアンスで、「イエス」と答えている。ホワイトハウス報道官は、後からこれを「否定」したが、演出に過ぎない。米国は、米国のために台湾防衛へ出るのだ。台湾を見捨てたら、米同盟国は疑心を持ち、米国覇権は大きく揺らぐはずである。米国は、「同盟国と共にある」のが現実である。
(4)「ダットン国防相は、上記のインタビューで「オーストラリアは20世紀に起こったあらゆる戦争で米国、英国と共に行動し、次の世紀でもこの協力を深めていく大きな義務がある」「これはわが国の安全保障の基盤だからだ」との考えも示した。その上でダットン国防相は「今すぐ100隻の潜水艦を購入したとしても、中国のようなスーパーパワーと競争できるわけではない。重要なことは同じ考えを持つ国々との協力だ」と指摘した」
米英豪は、「一卵性」である。英国が、米豪の「母国」のようなものだ。「血は水より濃し」である。一緒のルーツであることが、最後の結束力の要になる。日本は、この三ヶ国と最も親しい関係にある。それは、外交上の大きな財産だ。中ロによって、軍艦で日本列島を一周されても「冷笑」している理由であろう。
(5)「ダットン国防相はオーストラリアの政権与党では保守系のグループを代弁する人物として知られる。警察で勤務してから2001年に国会議員に当選し、政治家としての道を歩み始めた。移民国境警備相や内務相などを経て今年3月に国防相に就任した。2018年には自由党内で代表の座を巡ってモリソン首相と争ったが敗れた」
ダットン国防相は、まだ51歳の若さである。将来は、豪州首相の座につく人であろう。こういう重要人物が、中国に対して一歩もひけをとらない姿勢を見せていることは、AUKUSの結束力の強さを証明している。