勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 豪州経済

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    中国が発電で苦境に立たされている。それも自分の蒔いた種によるものだからお笑い種だ。発電用石炭は、輸入に依存している。その豪州炭を輸入禁止した咎めが、100%降りかかっているのだ。

     

    昨年4月以降、中国は豪州へ経済報復を行なっている。豪州が、新型コロナウイルスの感染原因を徹底的に調査するように発言したことがきっかけであった。中国は、このごく普通の発言に激怒して、豪州へ経済制裁を加え始めた。石炭、ワイン、大麦などと豪州特産を輸入禁止や高関税を科している。

     

    中でも、石炭の輸入禁止が今回の発電難を招く理由になった。中国は、豪州産の石炭に6割も依存してきた。それを無謀にも輸入停止した。一方、パンデミック明けで国際商品市況が高騰に転じている。このダブルパンチによって、中国の電力用石炭価格が7割も上昇している。これでは採算難に陥るとして発電をストップし、停電を招いているもの。こうして、「世界の工場」を直撃している。サプライチェーンが、能力ダウンに陥っているのだ。

     


    『中央日報』(7月4日付)は、「中国、10年ぶり電力難 グローバルサプライチェーン危機」と題する記事を掲載した。

     

    「世界の工場」と呼ばれる中国に10年ぶりの深刻な電力難が近づいている。広東省などでは電力配給制で日々を乗り越えているほどだ。香港に近い広東省は中国の核心産業地域に挙げられる。電力難で生産に支障が出れば、グローバル製造業サプライチェーンの「ボトルネック」現象が懸念される。

    (1)「中国南部の電力難が最も深刻だ。米CNN放送は「広東省だけでなく雲南・江西・浙江省など少なくとも9省で配給制など電力規制が施行されている。該当地域は英国・ドイツ・フランス・日本を合わせた面積とほぼ同じ」とし「中国は17省で電力使用を制限した2011年以降、最も深刻なエネルギー不足に直面している」と伝えた」

     

    中国南部9省が、電力難に陥っている。2011年以降で最悪状況である。石炭価格の急騰で、発電するほど赤字経営になる結果だ。電力供給という社会インフラの義務を放棄した暴挙である。民主社会では許されない事態だ。

     


    (2)「広東省は中国国内総生産(GDP)の10%、中国の貿易の25%を担う。中国経済メディア『財新』によると、5月中旬から広東省は省都の広州と深セン・珠海・東莞など17都市に電力消費制限措置を発令している。広東省には通信企業のファーウェイ(華為技術)、家電企業の美的集団とTCL、電気自動車企業のBYDなど主要企業の本社や生産施設が集まっている。米アップルに部品を供給する立訊精密、ファウンドリー(半導体委託生産)企業のSMICもこの地域にある」

     

    広東省は、中国貿易の25%を占める。その重要地域での電力難となれば、経済面での影響は大きい。

     

    (3)「広東省は、地域内の企業に電力の使用を最大限に抑えるよう指針を出した。今年末まで電力使用量がピークとなる時間帯には工場の稼働を最小限にする。週に幾日かは工場の稼働を停止する電力配給制も施行中だ。財新は「東莞では1週間に4日間だけ工場を稼働し、3日間は停止するよう指針が出ている」と伝えた。年初から中国で景気回復ペースが速くなり、工場稼働の需要が増加した。5月から広東省などでは異常高温のため冷房設備の使用も大きく増えた。中国は今夏の猛暑を予告した状態だ。SK証券のパク・ギヒョン研究員は「今後2、3カ月間は高温で冷房の需要が急増するだろう」と予想した」

     

    広東省の発電難は、今年末まで続く見通しである。東莞市の工場は、1週間に3日間の操業停止を行なっているという。事態は深刻である。

     


    (4)「電力の供給には「赤信号」がついた。中国の電力生産で火力発電が占める比率は56.6%(昨年基準)にのぼる。水力発電(16.8%)や原子力発電(2.3%)と比較すると、火力発電の比率がかなり高い。ところが火力発電の主原料である石炭の価格が急騰した。中国国家統計局によると、先月初めの中国の石炭価格は1トンあたり878元(約1万4750円)だった。1年前と比較すると70%ほど高い」

     

    中国の火力発電への依存率は56%と過半を占める。そこで起った石炭価格の7割高である。こういう事情を知りつつ、豪州炭を輸入禁止した当局の「盲判断」には呆れるほかない。

     

    (5)「石炭を輸入する条件も悪化した。オーストラリアとの対立のためだ。中国は2019年まで石炭輸入量の約60%をオーストラリアから調達してきた。オーストラリアは昨年、新型コロナの発源地を調査しようと提案した。すると中国はオーストラリア産の石炭輸入を禁止した。CNNは「中国はインドネシアと南アフリカからの石炭輸入を増やした。しかしオーストラリア産石炭の輸入不足分は埋まっていない」と伝えた」

     

    中国の発電用石炭輸入は、6割が豪州依存である。その豪州炭の輸入を止めたのだから影響は甚大である。

     


    (6)「中国は自国の石炭生産を増やすのも難しい。習近平国家主席は2060年までに炭素排出ゼロを実現するという計画を提示した。中国は共産党創党100周年記念日を控え、大型炭鉱の作業を中断した。中国証券会社の首席戦略家は「世界最大石炭消費国の中国の野心に満ちた目標が自国の石炭減産を招いた。それで石炭価格が急騰した」と話した」

    下線部は、世界的な商品市況高騰という大きな流れを無視している。米国経済の急回復が、国際商品市況を押し上げている。世界商品市況は、米国経済が主導権を握った。局面の大転換が起こっているのだ。

     

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    中国と豪州の外交関係が悪化している。中国は、豪州へ報復することで「一罰百戒」を狙っていると見られる。豪州が、自治体の結んだ中国との経済協定を破棄しているからだ。これが先例になると中国の「一帯一路」計画において今後、取消しが続出しかねないことを恐れているのであろう。追込まれる中国が、豪州へ牙を剥いて威嚇している構図である。

     

    『大紀元』(5月13日付)は、「対立深まる豪中関係 一戦交える可能性も―豪少将」と題する記事を掲載した。

     

    豪中関係の対立が深まるなか、軍事衝突の可能性を指摘する声が豪軍から上がっている。特殊作戦部のアダム・フィンドレイ少将は4月、兵士に向けた演説の中で、中国とオーストラリアはすでに「グレーゾーン」の紛争を始めており、将来的には中国と実際に衝突する可能性もあるため、計画を立てなければならないと述べた。

     


    (1)「豪日刊紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』がリークされた情報として54日に報じた。少将は、中国との緊張が今後も高まれば、海軍、陸軍、空軍のほか、サイバー作戦や宇宙作戦も視野に入れる可能性があると述べた。少将は、中国はオーストラリアと「協力」すると言いながら、同時にロシア、北朝鮮、イランなどと手を組み、オーストラリアと「グレーゾーン」で競争していると指摘。中国は「戦略的な戦争」を重要視し「力を使わずに効果を得る」ことを望んでいると非難した」

     

    豪州は、西太平洋における重要な地政学的な位置を占めている。過去には、友好関係を結んでいたが、中国の海洋進出が盛んになると共に悪化している。中国が、豪州へ大量のスパイを送り込み発覚して、外交問題へ発展した。

     

    (2)「ピーター・ダットン国防相もまた、中台関係とオーストラリアの関与の可能性に触れている。4月25日、ABCテレビのインタビューで、台湾問題における中国との対立は「軽視されるべきではない」と述べた。「中国は台湾を統一する野心をあらわにしており、(中略)中国と台湾の間には敵意がある」とも述べた」

     

    豪州は、中国の台湾侵攻に対して危機感を募らせている。台湾が、中国へ統一されれば、安全保障上で大きな脅威になるからだ。豪州がクアッド(日米豪印)へ参加した理由は、中国脅威が理由である。

     


    (3)「オーストラリアと中国は資源の貿易で関係を築いてきた。去年、中国は2900万トンのLNG(液体天然ガス)をオーストラリアから輸入し、日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となった。しかし、中国国家発展改革委員会は56日、オーストラリアとの経済的対話を全面的に「無期限停止」すると発表した。中豪間の緊張がさらに高まる見通しだ。また、ブルームバーグによると、中国のLNG(液化天然ガス)輸入会社のなかには、規模が小さめの少なくとも2社がオーストラリアからLNGの新規購入を避けるよう、政府当局者から命じられているという」

     

    豪州は、農業国と同時に資源国である。中国は、豪州と距離的に近いことから貿易関係が密接であった。中国は現在、豪州からの輸入をストップして揺さぶりを掛けている。

     

    (4)「豪シンクタンクのローウィー研究所首席経済学者ローランド・ラジャ氏は現地紙『オーストラリアン』に対して、「中共の経済復讐はオーストラリアに対して大きな損をもたらしていない」と説明した。「ワイン以外に、オーストラリアの輸出の損は10億豪ドル以下であり、全額の輸出を考慮すると、鉄鉱石の価格高騰が報復措置による損失を完全に相殺している」と述べた」

     

    中国の誤算は、パンデミック後を見越して世界的に資源価格が高騰していることである。豪州の鉄鉱石価格も高騰しており、中国が経済制裁しても値上がりによってカバーできるのだ。逆に中国は、資源価格の高騰で卸売物価が急上昇して悲鳴を上げている。被害は、豪州よりも中国の方が顕著である。

     


    (5)「オーストラリア北部のダーウィン港について、53日にオーストラリア当局は、中国・山東省のエネルギー・インフラ企業、嵐橋集団(ランドブリッジ)によって99年貸与している契約に対して見直すことを発表し、今年中に審査結果を出す予定だ。安全保障上の懸念が原因と見られる。契約が取り消される場合は、中豪関係はさらに悪化するとみられる。ダーウィン港は商用・軍用の両用港であり、訪豪した米軍の船舶はダーウィン港に寄港している。2015年から中国嵐橋集団(ランドブリッジ)の管理下に置かれた」

     

    ダーウィン港という安全保障上、重要拠点を中国へ99年間も貸し付けること自体が異常である。この港は米軍も利用しているだけに、情報は中国へ筒抜けである。

     

    (6)「同社の豪州責任者によると、2015年に港湾を99年間賃貸する契約を5億600万豪ドル(約429億円)で交わし、全額を前払いしたという。西太平洋における中国の脅威が拡大するなか、2019年豪当局はダーウィン港に米軍海兵隊を収容できる軍事施設を作る予定があると発表した。嵐橋集団の葉成(よう・せい)総裁は2013年、中国政府に「中国国防発展に関心を持つ十大人物」と評され、中国共産党や中国解放軍と深い関係にあると指摘されている」

     

    豪州の自治体が、勝手に中国企業と99年間も貸し付ける契約を結んだもので、豪州政府は何らタッチしていなかった。こういう弊害を取り除くために、対外的な協定や契約は政府が一元的に行なうことに法改正した。

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    豪州の輸出先トップは中国である。だが、両国の関係は昨年4月以来、悪化の一途である。豪州が、中国に対してコロナ発症の原因調査を求めた発言に中国が反発し、経済制裁を強化している結果だ。非は、明らかに中国にある。

     

    中国は自らの非を隠すべく近隣諸国へ軍事威圧を加えている。豪州は、これを警戒して対中政策の見直しを進めている。その一環としてすでに、マリズ・ペイン外相は4月下旬、新たな自由裁量権を行使し、ビクトリア州と中国政府が交わした投資協定2つを無効にした。

     

    この協定で中国は、インフラや生命工学、高度な製造業とテクノロジーの分野でビクトリア州と協力する計画だった。無効にされた2018年の覚書と19年の包括協定は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の一部である。一帯一路は資金とソフトパワーを使って、中国の世界的な影響力を拡大しようとするものである。豪州は、その連環を断ち切った。

     


    さらに、中国企業がオーストラリアの地方政府と結んだ北部ダーウィンの商業港の99年賃借契約について、モリソン政権が安全保障上の観点から利用制限を含めた見直しを検討していることが5月3日分かった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月3日付)は、「豪、中国企業のダーウィン港賃借見直しへ」と題する記事を掲載した。

     

    ダーウィン港の中国企業による賃借は、米国の同盟国への中国の影響力拡大を示す事例として問題化していた。背景には、台湾問題や最近の豪中関係の悪化もある。5月3日付の豪紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』がダットン国防相の発言として伝えた。ダットン氏はモリソン首相が議長を務める国家安全保障会議が契約の見直しについて国防省に助言を求めたことを明らかにしたうえで「(助言するための検討)作業はすでに進行中だ」と語った。

     

    (1)「中国企業が持つ権益の強制売却の可能性について問われると、国防省からの助言の後に「国益にかなった複数の選択肢を検討できるようになる」と述べ、否定しなかった。ダットン氏は中国に厳しい姿勢で知られ、利用制限を含めた複数の選択肢を提言する可能性が高い。モリソン首相は4月末、出演したラジオ番組でダーウィン港について問われ「国防省や情報機関から安保上のリスクがあるとの助言があれば、政府は何らかの行動を取るだろう」と語っていた」

     

    豪州は、中国の軍事圧力に対して敏感に反応している。国内の中国スパイ網を一掃して、中国による政治への関与を断ち切った。同時に、日本との安保面での関係強化に努め、日豪関係は実質的に同盟的な濃密さを見せている。豪州は、中国へ対抗すべくダーウィン港99年租借を無効にする意向である。

     


    (2)「ダーウィン港は北部準州政府が2015年、中国の嵐橋集団がと約5億豪ドル(約420億円)で同港を99年間賃借する契約を結んだ。ダーウィン港は、米海兵隊が巡回駐留する安保上の要衝で、当時のオバマ米政権は、中国の脅威に対して無神経だと不快感を表明したとされる。この動きを受けて豪議会は18年、外国からの重要インフラへの投資について安全保障上のリスクがある場合、担当大臣がリスク軽減の命令を出せるようにする「重要インフラ保安法」を可決した」

     

    ダーウィン港には、米海兵隊が巡廻駐留する要衝の地である。米中対立激化という戦略上の変化からみて、中国企業への99年租借契約は拙い話である。租借契約を取り消すのは、常識的線である

     

    (3)「豪州政府は、2020年には地方自治体が外国政府と結んだ協定が連邦政府の外交方針と一致しなければ、無効にできる法律も制定した。今年4月、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」に関して南東部ビクトリア州が中国と結んだ覚書や協定を無効にすると発表した。このタイミングでのダーウィン港の契約の見直しには、台湾問題などで深まる豪中対立がある」

     

    豪州が、安全保障上の理由でダーウィン港の租借契約を無効にする背景には、台湾問題がある。モリソン首相は4月28日、米海兵隊が巡回駐留するダーウィン港軍事施設の増強を発表。ダットン国防相も4月25日、台湾を巡る衝突の可能性に言及した。豪政府が台湾問題に触れた。モリソン氏は北部準州で記者会見し、7億4700万豪ドル(約630億円)を投じて同準州にある4つの軍事訓練施設を増強すると発表した。滑走路を拡張してより大型軍用機の離着陸を可能にするほか、複数の射撃訓練設備を拡大、米軍との軍事演習を強化する。

     


    (4)「豪州は米国や日本、インドと連携する枠組み「クアッド」の一員だ。中国が台湾海峡や南シナ海で軍事活動を増やす中、ダットン氏は4月下旬に台湾有事について「軽視すべきとは思わない」と発言し、警戒を強める日米と足並みをそろえた」

     

    豪州は、クアッドの一員である。豪州には、インド太平洋戦略に位置する台湾の防衛が、重要任務であることを示している。日本にとっても台湾防衛が重要である。中国は、台湾と尖閣諸島の同時攻略を行い、米軍兵力の分散化を狙っていると見通している結果だ。台湾危機は、尖閣諸島危機でもある。台湾が、中国の支配下に落ちれば、中国は沖縄攻略を仕掛けるであろう。

     

    (5)「中国外務省の汪文斌副報道局長は、4月26日の記者会見でダーウィン港の賃借契約に関し「外国で投資して運営する中国企業の合法的権益を中国政府は断固として守る。オーストラリアは正常な協力に干渉することをやめてほしい」と発言している。同港の賃借契約の破棄に至れば中国はさらに反発するのは必至で、何らかの対抗策を打ち出す可能性もある」

     

    中国は、すでに豪州に対する制裁措置はやり尽くしている感じである。さらに新たな制裁措置を発動しても、豪州がダーウィン港の租借契約を継続するとは思えない。中国への包囲網は確実に形成されている。

     

     

    ポールオブビューティー
       

    昨年春以降、中国と豪州の外交関係は冷え切っている。豪州が、中国へ新型コロナ発生について厳密な調査を要求した結果、中国は豪州産の小麦・石炭・ワインなどへ関税引上げを行い、嫌がらせを始めた。豪州は、中国の制裁へ対抗し、ビクトリア州が中国と結んだ投資協定を無効処分にした。

     

    豪州にとって、中国は輸出第1位という重要な関係にある。それにも関わらず、中国からの不合理な経済制裁をはね返して、中国にとって大きな意味を持つビクトリア州との投資協定を破棄した。これによって、中国へ屈しないという強いシグナルを送った。

     

    韓国は、豪州と比べて中国の言われるままに振る舞っている。経済のためなら、中国に屈するという醜い姿だ。豪州の毅然とした外交姿勢を参考にすべきだろう。

     


    豪州による投資協定破棄は、中国にとってかなりの痛手になる。インフラ投資や生命工学の技術を習得できる機会を失うからだ。豪州が敢然と中国へ反撃した裏には、中国経済が苦境に向かうことを「ファイブ・アイズ」を通して知っている結果かも知れない。中国経済の落込みを察知して、強気の対抗措置を取ったとも見られるのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月26日付)は、「中国の経済的な脅しに豪州が反撃」と題する社説を掲載した。

     

    中国は政治的な武器として、一段と経済力を振りかざしている。だが、反撃を食らうことも多い。最近の例では、オーストラリアだ。マリズ・ペイン外相は先週、新たな自由裁量権を行使し、ビクトリア州と中国政府が交わした投資協定2つを無効にした。

     

    (1)「中国はインフラや生命工学、高度な製造業とテクノロジーの分野でビクトリア州と協力する計画だった。先週無効にされた2018年の覚書と19年の包括協定は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の一環である。一帯一路は資金とソフトパワーを使って、中国の世界的な影響力を拡大しようとするものだ」

     

    ビクトリア州知事は、親中国派であることから中国と経済協定を結んだ。豪州政府は、地方自治体による外国政府との協定禁止の法律をつくって中国へ対抗した。これまで、中豪関係は密接であった。それが、今日のような対立関係に変わったのは、中国が大量のスパイを豪州へ送り込み、豪州政界を牛耳るまでになったことが主因である。豪州議会が、日本の潜水艦技術導入を阻止したのは、中国スパイの暗躍結果とされている。こうした事態の発覚で、豪州政府は中国へ警戒感を示すようになった。

     

    (2)「オーストラリアは、中国の容赦ない経済外交がどんなものか分かっている。豪政府は2018年、自国の次世代通信規格「5G」ネットワーク構築で中国の通信会社参入を禁止。また昨年は、新型コロナウイルスの起源を巡る独立した調査を支持した。中国はオーストラリアにとって第一の貿易相手国だ。中国共産党は豪州産のワインや牛肉、石炭、ロブスター、材木、大麦、砂糖、銅鉱石を対象に関税や貿易制限を課すことでこれに対抗している」

     

    豪州は、中国の政治的影響を阻止すべく、「5G」導入で中国通信会社参入を禁止した。豪州研究陣が世界で初めて、中国「5G」にバックドアが仕組まれていることを発見した。これは、自由陣営にとって大変なお手柄である。バックドアに気付かなかったならば、中国の支配下に陥るところであった。

     

    (3)「エコノミストのマーセル・ティリアン氏は、「すでに対象とされているモノとサービスは、オーストラリアの対中輸出の4分の1近くに相当する」と推定。「こうした貿易戦争のエスカレートが、オーストラリア経済が新型コロナウイルス流行前の軌道に戻らないと考えるもう一つの要因だ」と警鐘を鳴らした。それは言い過ぎかもしれないが、オーストラリアが一次産品の輸出で何十億ドルも失っていることは間違いない」

     

    豪州は、経済的損失が出ても安全保障を第一とする姿勢を貫いている。それだけに、日本との連携に強い期待感を見せている。昨年9月、菅政権発足と同時にモリソン豪首相が、わざわざ訪日して日豪結束を確認し合うほどの親密な関係を築いている。

     


    (4)「今回の背景には、オーストラリア連邦議会が昨年12月、外国の事業体と自国の州や準州、地方自治体、公立大学との協定を見直し、無効にする権限を外相に与えたことがある。議員は、国益を損なう協定を州政府や地方自治体に結んでほしくなかったのだ。ペイン氏は先週、中国とビクトリア州の協定がそれに該当し、「オーストラリアの外交政策と整合しない、もしくはわれわれの外交関係に反する」ものだと述べた。これに対し、中国外務省の汪文斌報道官は「両国間の正常な交流と協力を気まぐれに中断させ、両国関係と相互の信頼を著しく損なうものだ」と非難した」

     

    中国外交部は、下線のような批判をしている。最初の種を蒔いたのは中国である。それが、大きなブーメランになって、中国経済を襲っているもの。自業自得である。

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    グローバル経済は、すでに名ばかりとなっている。中国の軍事進出は、世界的な懸念を生んでいるためだ。各国とも「戸締まり」に余念がなく、「赤い資本」に警戒信号を上げている。

     

    豪州は、中国からいわれなき制裁を受けている。昨年4月、中国へ新型コロナ発生を機に、感染調査の徹底を申入れたことが、中国の逆鱗に触れて嫌がらせが始まった。豪州は、今なお中国から制裁を受けっぱなしである。

     

    中国は豪州産大麦の輸入に80%の関税をかけ、豪州産牛肉の輸入に新たな制限をかけた。それ以来、紛争に巻き込まれた品目のリストは急速に増加している。さらに豪州産ワインに反ダンピング(不当廉売)措置を発動し、107%以上の保証金を徴収した。石炭まで輸入禁止処分される始末だ。こういう状況では、豪州が中国資本に「ノー」を突きつけたのも致し方ないであろう。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(3月1日付)は、「20年の豪への中国投資、ピークの16年から94%減」と題する記事を掲載した。

     

    中国企業によるオーストラリアへの投資額が2020年に大きく減少した。豪政府の審査厳格化や豪中関係の悪化、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による海外投資の世界的な落ち込みが影響した。豪州が、米英など5カ国と機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」の他の参加国も、安全保障の観点から外国からの投資への監視を強めている。

     

    (1)「最新のデータによると、20年の中国企業の対豪投資額は10億豪ドル(約830億円)と、前年の26億豪ドルから61%減少した。16年のピーク時は165億豪ドルだった。同年は両国が自由貿易協定を結ぶなど関係が良好だった。対照的に20年に記録された投資案件はわずか20件だった。豪州国立大学が管理する中国投資データベースによると、20年の投資は不動産、鉱業、製造業の3業種にとどまった。前年は全業種にわたっていた」

     

    豪州にとって中国は、もはや友好国でなく敵性国家へと落込んだ。20年の中国企業の対豪投資額は約830億円で、前年から61%も減少した。ピーク時の16年からは94%減である。中国と豪州の関係が如何に悪化しているかを示している。

     

    (2)「同大学のシロー・アームストロング東アジア経済研究所長は、新型コロナウイルスの影響および豪政府による海外資本、特に中国資本への監視強化が投資急減の主な理由だと指摘した。同氏は国連のデータを引用し、パンデミックが始まって以降、世界の海外直接投資は42%、対豪投資は46%それぞれ減少したと話した。「コモディティ(商品)ブームの最盛期には豪州が中国マネーの最大の投資先だったことを考えると驚くべき話だ。米国より多くの投資を受け入れてきたが、それが消えてしまった」と同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に話した」

     

    パンデミックが始まって以降、世界の海外直接投資は42%、対豪投資は46%それぞれ減少している。だが、中国の対豪州投資の減少率は昨年、61%にも達している。対豪投資全体の減少率を上回っている。

     

    (3)「豪中関係は過去数十年で最低の水準にある。豪政府が新型コロナウイルスの起源について国際的な調査を要求したほか、外国からの干渉を禁じる法律を制定するなど外国投資への監督を強化したためだ。また、豪政府は20年3月に投資制度を一時的に変更し、全ての外国からの投資案件が外国投資審査委員会(FIRB)の審査を受けることになった。案件に関わる銀行家によると手続きが大幅に遅れており、特に中国企業が影響を受けているという

     

    下線のように豪州は、中国への警戒を強めている。これは、中国のスパイが大量に入り込み豪州政治を左右するほどの影響力を持ち始めたことへの警戒だ。中国が、ことさら豪州へ辛く当っているのは、中国スパイが摘発されている復讐である。

     

    (4)「さらに政府は、中国の蒙牛乳業によるキリンホールディングスの子会社ライオン・デイリーへの6億豪ドルでの買収と、中国国有ゼネコンの中国建築による南アフリカ企業が保有する建設企業プロビルドへの3億豪ドルの買収を、非公式に反対の意向を示して断念させた。「豪政府は、中国投資を歓迎しないという非常に明確なメッセージを出した」と中国企業の顧問を務める元駐中国大使のジェフ・レイビー氏は話した。「最もひどい例はライオン・デイリーだ。戦略上も安全保障上もまったく正当化できない。FIRBは承認したが財務相が阻止した」

     

    中国の蒙牛乳業は、ライオン・デイリーへの6億豪ドルでの買収を決めたが、豪政府から安全保障を理由に買収を反対された。牛乳を安全保障と結びつけたのは、「食糧安全保障」という網であろう。豪州の中国への反発心の強さを証明している。

     

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