トランプ米大統領は10日、米NBCテレビのインタビューで「14日にロシアに関する重大な声明を発表するつもりだ」と述べた。詳細は明かさず「ロシアには失望しているが、数週間で何が起こるか見ていく」と語った。
トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)を通じて、ウクライナへ新たな武器を供与する方針を示した。「米国はNATOに武器を送り、NATOがその費用を100%負担する。NATOが武器をウクライナに渡してNATOが費用を負担する」 と表明した。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月10日付)は、「プーチン氏『口先だけ』平和戦略、トランプ氏は忍耐切れ」と題する記事を掲載した。
トランプ氏は、ロシアによる空爆が続いていることを批判し、ウクライナへの兵器供与を再開する方針を示している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)は8日、トランプ氏がウクライナに地上配備型長距離防空システム「パトリオット」を追加で供与することを検討していると報じた。
(1)「ロシアのプーチン大統領は、厳しい選択を迫られている。戦場での優位を追求して米国から一段と大きな対応を招くリスクを取るか、それとも要求に関して一切妥協しないというこれまでの立場を後退させるのか。トランプ氏は8日、プーチン氏と関係が悪化していることを、これまでで最も明確に示した。閣僚会議でプーチン氏について「でたらめばかり並べ立てている」と述べ、「感じは良い」が、発言の多くは無意味なことが分かった、と続けた」
プーチ氏は、口先で適当な発言をしている。本心では、戦争を止める意思がない。トランプ氏は、こう見抜いている。
(2)「ここ数週間、ロシアはウクライナ東部での領土拡大に向けて攻撃を強め、同国の都市への空爆を激化させている。戦争を終結させると表明し、ウクライナとロシアに和平交渉開始を促してきたトランプ氏は、不快感を強めている。7日には、ロシアの攻撃に耐えられるようウクライナに兵器を供与すると述べた。ロシア政府は8日、米国との対話の余地を残したい意向を示した。米国がウクライナに供与する兵器について確認中だとし、トランプ氏の和平仲介への取り組みを評価していると強調した」
ロシアは、なんとかしてトランプ氏を引きつけておきたいと必死だ。それだけに、14日のトランプ重大発表をどう受け取るか。
(3)「ロシアのペスコフ大統領報道官は、米国と欧州を区別しようとした。「欧州もウクライナへの兵器供与に積極的に参加していることは明らかだ」とし、「こうした行動は、平和的解決を促そうとする試みとは、おそらく合致しないだろう」と述べた。一方で、ロシア政府内では米国のことは忘れて戦争への取り組みを強化すべきとの声も上がっていた。ロシアのタカ派で過去に大統領を務め、現在は安全保障会議副議長のメドベージェフ氏は、トランプ氏が大統領2期目に就任する前からプーチン氏が主張している立場を指摘した。それは、ロシア政府の要求を認める和平合意に至らなければ、同国は戦闘を続けるというものだ」
ロシアの本心は、ロシアの要求を認めなければ、戦闘を続けるというものだ。トランプ氏は、こういうロシアへどう対応するのか。
(4)「ロシアは、これまでのところ交渉で強硬姿勢を崩しておらず、戦争の解決には「根本的な原因」に対処する必要があると主張している。これはウクライナの非武装化と同国の政治に対する支配力を再び確立したいというロシアの意向を指している。アナリストらによると、プーチン氏は当初、外交を通じてこうした目標を達成できる相手としてトランプ氏を見ていた。こうした取り組みは、ロシアと関わろうとするトランプ氏の意欲と相まって、当初は成果を上げているように見えた」
ロシアは、ウクライナの非武装化と、ウクライナへの政治的支配力の確立が狙いだ。ウクライナの属国化である。応じられるはずがない。これでは、決裂である。
(5)「トランプ氏のロシアに対する姿勢は、ここ数週間で変化している。プーチン氏がイスラエルとイランの対立を巡って仲裁支援を申し出た際、トランプ氏はそれを退けた。「私は言った。『頼むから、自分自身のことを仲裁してくれ。まずはロシアのことを仲裁しよう』と」。先週の両首脳の電話会談で、トランプ氏は後に失望を表明した。「彼はその気がないと思う」とプーチン氏について語った。「彼が止めようとしているとは思えない。それは残念なことだ」。ここ数日間でプーチン氏に対するトランプ氏の口調は大きく変化したものの、トランプ氏はウクライナ支援にどこまで踏み込むつもりなのかは示していない」
ロシアは、プーチン氏へ手を回してウクライナを支配する意図だ。これは、不可能であろう。トランプ氏が、応じるはずがない。
(6)「米国との関係が明らかに後退しているにもかかわらず、ロシアは目標を諦めていない。それどころか、長期戦に向けて態勢を整えている可能性が高いとアナリストらは指摘する。カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのタチアナ・スタノバヤ上級研究員は、25年にわたって米国の大統領たちと交渉してきた経験を持つプーチン氏は、トランプ氏が見解を変える傾向があることを知っていると述べた。トランプ氏は現在、ウクライナの決意を称賛し、苦境に立つ同国への支援拡大を約束しているかもしれないが、すぐに再びプーチン氏の主張を支持する可能性がある」
ロシアは、プーチン氏の心変わりを待っている。