勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ロシア経済ニュース

    あじさいのたまご
       

    トランプ米大統領は6日、ウクライナ戦争の解決は「人々が思っている以上に近づいている」と述べた。今週、トルコで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議での協議の場で、ウクライナ問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏は、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている。われわれは協議を続けており、戦争を終わらせられるか見極める」と語った。また、この件に関して「非常に良い電話会談を行った」とも述べた。以上、ロイターが6日報じた。

     

    トランプ氏が挙げた、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている」は、ウクライナによる攻撃でガソリン不足が全土で起っていることを指している。ロシア国民の間で不安と不満が高まっており、プーチン氏も決断を迫られている。

     

    『CNN』(7月6日付)は、「ロシアの燃料危機、ほぼ全土に広がる ウクライナのドローン攻撃が激しさ増すなか」と題する記事を掲載した。

     

    CNNの分析によると、ロシアの83地域のほぼすべてでガソリン不足が生じているか供給の混乱が報告されている。多くのガソリンスタンドが給油制限を導入する中、ロシア政府は同国の製油所を標的にしたウクライナの猛烈なドローン(無人機)攻撃の阻止に追われている。燃料危機は、まずロシア支配下のクリミアで深刻化し、6月21日に非常事態宣言が発令され、一般市民への燃料販売が全面的に禁止された。その範囲は現在、ロシアの11のタイムゾーンすべてに及んでいる。

     

    (1)「CNNは各地域の首長らの公式声明に加え、全国・地方メディアの報道を分析した。その結果、ロシアの国際的に認められている地域のうち50超が供給の問題を公式に報告しており、非公式にはほぼすべての地域で混乱が伝えられていることが分かった。東部のイルクーツク州やザバイカル地方を含む少なくとも3地域は、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している」

     

    東部のイルクーツク州やザバイカル地方でも、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している。クリミア半島の非常事態に次ぐ事態だ。

     

    (2)「ロシアのプーチン大統領は5日、国営テレビの長時間インタビューで「現在、一定の不足が見られるが深刻なものではない」と主張した。これは、すべてが制御下にあると国民を安心させるために仕立てられた、急ごしらえのPR活動の一環のように見えた。ただ、プーチン氏が最も喫緊の課題について「防空システムの生産を迅速かつ大幅に増やすこと」だとした発言は、あまり安心材料にはならなかったかもしれない。これは、ウクライナの攻撃に対するロシアの脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていることを明確に示すものだった」

     

    ロシアの防空体制は、ウクライナのドローン攻撃を防げないほど脆弱化している。完全に、攻守ところを変えている。

     

    (3)「ロシア国民の順応性も試されている。CNNの分析によると、ロシア各地のガソリンスタンドは購入制限を課しており、給油に最適な場所を探せる燃料追跡サイトも登場している。給油を待つ車の列が長くなるにつれ、人々の間では緊張が高まっている。SNSに投稿された動画では、クリミアに隣接するロシア南部の都市クラスノダールで車の後部に積んだ容器に給油する男性を2人の女性がルール違反だと非難している。燃料の買い占めを防ぐため、ロシアの複数の地域では19リットル程度の大型容器の使用は禁止されているのだ」

     

    ロシアの複数の地域では、19リットル程度の大型容器の使用は禁止されている。買い溜め防止である。これを巡って、市民同士のいざこざも起っている。

     

    (4)「国民にどの程度不安が広がっているかをはかることは不可能だが、プーチン氏もこの状況を懸念しており、国営メディアのインタビューで攻撃の目的について「我々に不確実性を生み出すこと、あるいはさらにロシア社会を分断すること」だと警告するほどだった。欧州政策分析センターの上級研究員、アレクサンダー・コリアンドル氏は燃料不足について二面性を持つと指摘する。「国民感情を直撃し、インフレにも打撃を与える」と」

     

    ガソリン不足は、国民に不安感を煽ると同時に、インフレをもたらしている。産油国ロシアが、意外な脆弱性を見せつけている。

     

    (5)「ロシアメディアは、給油所で最大18時間待つ人もいると報じている。インターネット上では、前に進まない車の横に飲み物やシーシャのパイプを置いたテーブルを広げる人々を描いたミームも登場している。首都モスクワでさえ、ガソリンスタンドの外にまで乗用車やトラックが列をなす異様な光景が広がっている。給油できる保証もないまま、何時間も待つ運転手もいる。モスクワでは、先月18日にウクライナが実施したドローン攻撃を受け、不安が高まっている。この攻撃は、ロシアが全面侵攻を開始して以降最大規模で、南東部カポトニャの製油所を狙った攻撃としては1週間足らずで二度目だった。迎撃は大規模な爆発を招き、燃料タンクの屋根が派手に吹き飛んだ」

     

    給油所では、最大18時間も待たされる人が出てきた。事態は、深刻である。こうなるとプーチン政権も国民へお座なりな説明で済まなくなってきた。停戦への決断が迫られる理由である。

     

    (6)「ロシアには、この危機に対処する手段がまだ残されている。しかし、専門家らはCNNに対し、その選択肢は狭まりつつあると語る。プーチン氏は、政府が取り組んでいる措置を列挙した。製油所の計画保守期間の短縮から、軽油輸出禁止の検討、輸入拡大などだ。しかしウクライナの攻撃が今のペースで続けば、その正常化は実現しない可能性がある。そして燃料不足によるインフレ進行と消費低迷という経済リスクは、これ以上ないほど悪いタイミングで訪れている。イランと米イスラエルの戦争の最初の数カ月で急騰した原油価格は現在下落しつつあり、ロシアが輸出で得る利益の増加によって拡大する財政赤字を埋める機会は閉じつつある。ロシア経済はすでに停滞しており、その一方で国防支出は増え続けている」

     

    ロシアは、燃料不足によるインフレ進行と消費低迷に加えて、ホルムズ海峡の通過が可能となり原油価格の値下がりに見舞われている。値下がりは、ロシア原油の輸出減となって経済へ跳ね返る。プーチン氏も「年貢の納め時」となった。

     

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    ロシアのプーチン大統領が、2014年にウクライナからクリミア半島を奪取した際、その併合はロシア国内で帝国の「王冠の宝石(最も貴重なもの)」の帰還として広く称賛された。しかし今や、クリミア半島は歴史的な偉業どころか、プーチン氏の首に巻き付いた重荷と化し、戦争を継続する同氏の能力を脅かしかねない急所となりつつある。

     

    英誌『エコノミスト』(6月27日号)は、「クリミア混乱、陰るロシアの威信」と題する記事を掲載した。

     

    クリミアはここ数カ月、絶え間なく攻撃されてきた。軍部隊、鉄道駅、発電所が標的となり、住宅が被害を受けることもある。例外は保養地ヤルタだ。緑豊かな山々に守られ、軍事目標も見当たらない。子どもたちが桟橋から海へ飛び込み、浜辺のデッキチェアは保養客で埋まる。だが、クリミアのそれ以外の地域は戦場と化している。6月20日夜、ウクライナのドローンは送電線を攻撃し、半島東端ケルチの石油ターミナルを爆破、貨物フェリーに損害を与えた。相次ぐ攻撃でフェリー航路は停止され、半島の主要な補給路の一つが断たれた。

     

    (1)「半島では停電が頻発している。621日、クリミアの首長は全ガソリンスタンドで一般向け燃料販売を一時停止すると発表した。ロシア側の行政区分で別扱いのセバストポリも販売停止に踏み切った(編集注、ロシア側当局は26日、クリミアとセバストポリに非常事態を宣言した)。一方、ウクライナのドローンはロシア本土の奥深くにも及んでいる。ここ数日にはシベリアの製油所を攻撃し、モスクワにも大きな衝撃を与えた。6月16日と18日のモスクワ攻撃では、煙の柱が住宅地の上に立ち上った。石油タンクの蓋が爆発で吹き飛ぶ動画はネットで拡散した。ロシアの半数を超える地域でガソリン販売が制限されている」

     

    ウクライナのドローン攻撃で、ロシアの製油所が炎上している。ロシアの半数を超える地域で、ガソリン販売が制限されているほどだ。原油産出国でガソリンの販売制限である。

     

    (2)「クリミアへの攻撃は大きな意味を持つ。同半島はロシアの橋頭堡(ほ)であり、軍の補給拠点でもある。とはいえ、ドローン攻撃で、黒海艦隊の残る艦艇はより遠くの港へ追いやられている。クリミアは、ロシアにとって精神的・象徴的な意味も大きい。ロシアが2014年にこの地をほぼ無血で制圧し、一方的に併合したことは、プーチン大統領の帝国的野心の勝利であり、同氏の人気を押し上げた。ロシア帝国とソ連の宝石とみなされてきたクリミアを手にしたことは、ロシア復活を象徴するものだった。当時、プーチン氏はクリミアを「多面的でありながら一体であるロシア民族の形成における精神的な源泉」と呼んだ。同氏はウクライナによる最近の攻撃について、ほとんど沈黙している。国営メディアも同様だ」

     

    クリミアは、ロシアの「宝石」にも当たる場所だ。ロシア復活を象徴している。その象徴が今、大きく揺れている。

     

    (3)「ウクライナの攻撃で、ロシア軍の防衛力に対する住民の信頼は揺らいでいる。だが、ロシアへの忠誠心まで揺らいだ兆しはない。ウクライナ統治への復帰を悪夢と見る人もいる。ウクライナ当局者が報復を示唆してきたためだ。住民たちはまた、周囲からロシアへの忠誠を疑われ、告発されることも恐れている。ベルゴロド州やクルスク州など他の前線地域に比べ、クリミアでは、ウクライナへの協力者をあぶり出すロシア側の防諜(ぼうちょう)キャンペーンがいっそう露骨だ。「敵のために働いているのか。祖国を売り渡すつもりか。ウクライナ側の指示役からの命令を待っているのか。それなら、こちらが行くぞ」――。クリミアのラジオ番組「同志少佐、捜査をお願いします!」では、こんな文句が流れる」

     

    クリミア住民は、ウクライナへの寝返りを極度に警戒されている。また、周囲からロシアへの忠誠を疑われ、告発されることも恐れている。「宝石の住民」は、地獄絵に晒されているのだ。

     

    (4)「戦争への不満はクリミア以外にも広がっている。ロシア支配層の間では、この戦争を袋小路と見る向きが強まっている。ウクライナ東部ドンバスで消耗を伴うほぼ膠着状態が続くなか、26年春にはロシア軍が急速な前進に転じるという政府の約束は、過去数年と同じく実現しなかった。サンクトペテルブルクやモスクワの製油所を狙ったウクライナの攻撃は、一般のロシア人にも戦争の影響を身近に感じさせている。治安機関によるネット遮断で、市民生活にも支障が出ている。ここ数カ月、国営世論調査機関の調査では、プーチン氏の人気低下が繰り返し示されている。支持率の水準はあてにならなくても、低下傾向は示唆的だ。与党・統一ロシアが5月下旬に秘密裏に実施した調査でも、参加者の大半は勝敗にかかわらず戦闘終結を望んでいた」

     

    国民の間では広く「戦闘終結」を臨んでいる。すでに、開戦後4年4ヶ月も経っている。国民生活へは、戦争の影が強く及んでいるのだ。

     

    (5)「大統領にとって最大の問題は、死傷者数の増加でも、ロシア経済への打撃でも、弾圧の悪化でもない。この戦争の成果として示せるものが何もないことだ。失敗し、弱さを見せているとの印象は、プーチン氏の正統性を揺るがす。ロシアの歴史が示すように、弱いと見なされた指導者が許されることはめったにない。いま、クリミアにもロシア全体にも広がるのは、戦争への疲弊感だ。ロシアを支持する人々でさえ、戦争の目的を見いだせない」

     

    プーチン氏は、開戦1週間でウクライナ侵攻が終わるものと想定していた。それが何と、4年以上経っても戦線は膠着状態である。この戦争は、どのように終わるのか。プーチン氏は、自らの汚名を避けるために「核」を持ち出すのでは、と秘かに恐れられてる。


     

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    プーチン大統領は19~20日の日程で中国を訪れる。同行する代表団は、エネルギー、工業、交通、金融など多くの分野をカバー。副首相5人、ラブロフ外相ら外交、農業、文化、交通、経済発展など8人の大臣のほかに、中央銀行総裁ら16人の名前が訪中リストにあるという。このほか、大企業の責任者も含まれている。

     

    米中が今や、世界秩序を話し合う場となり、 ロシアが含まれていないことは、「周縁国」に落ちたことを示している。だからプーチンは急いで訪中し、 「ロシアは中国の重要パートナーだ」と確認したいのであろう。「弱者」ロシアの行動を余すところなく示している。ロシアの輸出入の約4割が中国経由。 金融決済も中国の金融網に依存している。全ては、ウクライナ侵攻を始めた「代償」である。

     

    『レコードチャイナ』(5月19日付)は、「プーチン氏はなぜ訪中を急ぐのか香港メディア」と題する記事を掲載した。

     

    香港『フェニックステレビ』(鳳凰衛視)は17日、「プーチン氏はなぜ訪中を急ぐのか」として、北京外国語大学地域・グローバルガバナンス高等研究院の崔洪建(ツイ・ホンジエン)教授による解説を伝えた。

     

    中国には、米国のトランプ大統領が13~15日の日程で訪れたばかりで、16日にはロシアのプーチン大統領の19~20日の訪中が発表された。

     

    (1)「フェニックステレビは、「トランプ氏が去った直後にプーチン氏が中国を訪れる」「プーチン氏はなぜ訪中を急ぐのか」と問い掛けた上で、「最近の中国と米国の間のやり取りについて中国側と意見交換を行う」とロシア側が説明したことを紹介。さらに「ロシア側は両国のやり取りについてどのような情報を知りたがっているのか」と提起してから、崔教授の解説を伝えた」

     

    プーチン氏は、米中がロシア抜きで世界秩序を話し始めることへの恐怖感を持っている。ロシアは今、国際的な孤立によって経済制裁を受けている。戦争は長期化し、中国に依存せざるを得ない立場になった。こうして、米中が接近すると、ロシアは置いていかれる危険があるのだ。

     

    中国が、大国外交のハブになり、ロシアが周縁化している現実は、ロシアにとって屈辱的な事態である。かつては、米国、ロシア、中国 の「三大国」構造だった。今は、米国 ・中国の二極構造 であり、ロシアは「従属的パートナー」へ転落した。ロシアは、この現実を理解しているからこそ、 中国に見捨てられないように急いで訪中するに違いない。

     

    (2)「崔教授はまず、「中国はすでに大国外交の中核的ハブになっている」と言及し、今回の米ロ首脳の相次ぐ訪中は世界的な問題において高頻度かつ高効率な大国間協力が急務になっていることを際立たせていると指摘した。中国は仲介役、調整役という重要な役割を担っているという。また、プーチン氏が今回の訪中を切実に望んでいる理由として、崔教授は「第一に昨年は反ファシズム戦争勝利80周年に当たり、中ロ両国間の協力や国際的立場の合意が持続的に深化した」と指摘。今年は良好な協力関係の継続を急ぐ必要があるとの考えを示した」

     

    ロシアは、ウクライナ侵略戦争さえ引き起こさなければ、現在のような状況へ落込むこともなかったであろう。プーチン氏による判断の誤りが、こういう取り返しのつかない事態を招いた。習氏も、他人ごとではない。中国経済は、目に見えない形だが明らかに下り坂へ踏み込んでいる。調子に乗って台湾へ兵を送れば、確実に「第二のロシア」となろう。

     

    (3)「さらに、崔教授は第2の理由として、「多くの地域紛争が情勢転換を迎えようとする中、中国と米国がハイレベルの協議を終えたことを受け、ロシア側は双方の会談内容の核心を探り出すのを急いでいる。特にロシア・ウクライナ紛争や米国とイランとの駆け引きなど自国利益に密接に関わる議題に関心を寄せている」と指摘した」

     

    ウクライナ戦争では、ウクライナが主導権を握ったとも評されている。「大国ロシア」が、見下していたウクライナによって、「手玉」に取られ始めている。科学技術では、ウクライナが侮りがたい力を持っていることを示し始めている。ドローン開発がそれだ。

     

    (4)「第3の理由は、米中関係の改善がもたらす変化で、崔教授によると「ロシア側は中米関係の着実な改善がもたらす世界の構造変化に多大な関心を寄せている」。ロシアは世界秩序の行方や対中・対米外交の布陣を検討し、将来の発展方向を整理・明確化したい考えで、今回、中ロ首脳の間ではロシアの外交方向や戦略環境に関わる重要議題について深い意見交換が行われる見通しという」

     

    ロシアは今、経済力で中国の1割、技術力は経済制裁で崩壊寸前にある。外交力も孤立している。軍事力は、消耗の一方である。国際的正統性は、失墜している。この状況では、 中国に対して「対等」ではなくなった。プーチン氏の訪中は、「盟友」の訪問ではなく、「どうか見捨てないでほしい」という 立場の弱い側の外交行動に陥っている。もはや、「ロシア帝国」の片鱗もなくなった。

     

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    米中首脳会談はホワイトハウスの発表によると、中国がイランがホルムズ海峡を軍事化しようとするいかなる動きや、通行料を課そうとする試みにも反対することを明確にした。中国、ロシア、イランからなるいわゆる「枢軸」の実態が脆い関係であることを露呈した。枢軸の一角にヒビ割れが起こった理由は、中国の損得計算に大きく響くからだ。

     

    『ニューズウイーク 日本語版』(5月18日付)は、「イランを見捨てた中国は、次にロシアを見捨てる。中露イランの『枢軸』の『急所』とは」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア国内では、対中依存はすでに構造的なものになっている。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は約40%に上り、戦前のおよそ20%から増加している。機械、車両、通信機器、デュアルユース技術など、制裁下のロシアの戦時経済を支える主要分野では、中国が60%から90%の物資を供給している。中国は、ロシアにとって最大の債権者であり、最大のエネルギー顧客にもなった。結果、ロシアは石油や天然ガスの大幅な値引きを受け入れざるを得なくなっている。中国は、ロシアにとって最大の貿易相手だが、ロシアの中国の貿易に占める割合は3%強だ。この非対称性は、決して見過ごせるものではない。ロシアは対中依存状態に陥っている危険性を理解している。ただ、それを表に出さないだけだ」

     

    中国にとってのロシアは、安い石油や天然ガスの売手であるだけである。中国の貿易に占めるロシアの割合は3%強。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は、約40%で戦前の約20%から倍増している。この中ロの貿易関係が、国益の比重を示している。

     

    (2)「2024年にフィナンシャル・タイムズが確認したロシア軍の流出文書によると、ロシア軍参謀本部は中国が南方から侵攻してきた場合に備え、中国へ戦術核攻撃まで想定していたことが分かる。あるシナリオでは、中国がロシア極東で抗議者に資金を渡して警察と衝突させ、破壊工作員をロシアのインフラに投入し、そのうえで「ジェノサイド」を口実に人民解放軍を国境に集結させる展開が想定されている。ロシアの計画担当者は、中国の都市への核攻撃を机上演習で想定していたが、西側にはそのように考えていることを知られたくないようだ」

     

    歴史的にみた中ロ関係は、敵対関係にあった。中国は、帝政ロシアに極東地域を奪われたからだ。必ず、奪回に動くはずである。ロシアは、これを認識しているから「戦術核」という反撃構想を秘めている。

     

    (3)「ロシアは好戦的な、衰退しつつある劣位のパートナーである一方、中国は慎重に台頭しており、冒険主義よりも安定と貿易の維持を重視する。だからこそ、中国はホルムズ海峡をめぐってイランをかばわなかった。イランは中東で強硬な行動を続けた結果、すでに中国にほぼ全面的に頼らざるを得ない立場に追い込まれていた。中国は、イラン戦争開戦までは、イラン産原油輸出のおよそ90%の輸出先となっていた。イランによるホルムズ海峡への機雷敷設や通行料の徴収が、中国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼし始めると、習近平の判断は明確だった。中国にとって、従属的な立場にあるイランをかばうために、タンカーの重要航路を危険にさらす理由はなかったのだ」

     

    イランは、ホルムズ海峡を封鎖して中国経済に多大の被害を及ぼしている。だから、中国にとって救済相手でないという認識になっている。中国にとって、イランは従属的な立場にあるので、リスクを冒す必要はないとしている。

     

    (4)「トランプによると、習近平はさらに踏み込み、中国はイランに軍事装備を供給しないと約束した。トランプの言葉を借りれば、それは「大きな発言」であり、イランにとっては壊滅的な発言であった。中国のユーラシア戦略は、対等な同盟関係を築くことではない。相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。イランは、そのやり方が最もはっきり表れた例だった。イランの強硬姿勢が西側への圧力になっている間は有用だったが、それが中国のサプライチェーンを脅かした瞬間、中国はイランをばっさり切り捨てた。ロシアも今、同じ道を歩んでいる。ただ、イランよりスローペースなだけだ」

     

    中国の戦略は、相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。始皇帝以来の「合従連衡」そのものである。合従(同盟)を嫌い、連衡(従属)させるものである。

     

    (5)「中国にとって、ロシアはあくまで利用価値のある相手だった。安いエネルギーを供給してくれる上、アメリカの注意を引きつけてくれる。中国の北側にある緩衝地帯としても機能する。ロシアの行動が中国の経済的安定を脅かし始めた瞬間、中国は態度を変えるだろう。欧州への貿易ルートを破壊すること、中国の銀行に二次制裁のリスクを及ぼすこと、湾岸の中国顧客を巻き込むより広範な対立に発展すること。そのような事態が起これば、中国はイランに対してそうしたように、対応を変えることになる。ホルムズ海峡をめぐる今回の出来事は、中国、ロシア、イランの「枢軸」が、深い信頼や共通の理念で結びついているわけではないことを思い出させる。三者を結びつけているのは、西側からの圧力という側面が大きい」

     

    中国は最近、ロシア極東地域の地図に「中国名」を書き入れている。必ず、奪回するという意思を示したものだ。中国のロシアへの姿勢は、イランも同様で使い捨てである。

     

     

     

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    5年目に入ったウクライナ戦争は、未だに解決のメドが立たず泥沼化している。戦争という消耗経済が、ロシアの経済成長率にハッキリと影を落としてきた。26年1~3月期GDPは、3年ぶりのマイナス0.2%に沈んだ。プーチン支持率は、政府系調査でも66.8%へ低下した。3月以降の支持率低下が、目立ち始めている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「ロシア、3年ぶりマイナス成長 内需低迷で13GDP.%減」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア連邦統計局が15日発表した2026年1〜3月期の実質GDP(国内総生産、速報値)は、前年同期比0.%減だった。ウクライナ侵略によるインフレ抑制のため、金利を引き上げた影響などで内需減速が鮮明になり、四半期ベースで3年ぶりのマイナス成長となった。

     

    (1)「侵略は5年目に入り、契約軍人の採用増や西側諸国の対ロ制裁が人件費や調達コストの上昇につながった。失業率は13月で2.%と過去最低水準で推移する。ロシア経済発展省の報告書によると、26年1〜3月は製造業が0.%減(前年同期は3.%増)だった。非製造業では建設が10%減と前年同期(5.%増)からマイナスに転じたほか、輸送なども減速幅が拡大した」

     

    開戦6年目である。1~3月期の実質経済成長率がマイナス0.2%に落込むのは当然であろう。不毛な戦争による消耗だ。経済的には限界点に達している。

     

    (2)「ロシア中銀は、政策金利を23〜24年にかけ段階的に引き上げた。政権幹部や産業界からの金融緩和への要請が強まる中で25年6月に引き下げに転じたものの、高水準で推移する金利の影響で企業や個人の資金調達や債務返済コストが増加し、内需低迷につながった。厳しい金融市況の中、一部の商業施設で出店の動きは鈍い。モスクワ北部にある複合商業施設「サマーガーデン」では地下鉄駅側の好立地にもかかわらず、テナント部分は空室が目立つ。ロシア紙コメルサントによると、現在の入居はスーパー1店にとどまり本格開業に至っていないという。モスクワにある商業施設の空室率は26年11%に上昇する可能性があるといった調査会社の予測もある」

     

    モスクワにある商業施設の空室率は、26年11%に上昇する可能性があるという。戦争の疲弊がビジネス第一線に現れてきた。

     

    (3)「足元のインフレ率は低下基調にあるものの、13月で5.%と中銀が目標とする4%とは依然として開きがある。ネット通販と対面販売の小売店との競争も激化しており、インフレと高金利が中小企業に打撃を与えている。26年通年のGDPは成長鈍化が鮮明だ。ロシア経済発展省は12日、GDPの26年予測を0.%と従来(1.%)から下方修正した。一方、国際通貨基金(IMF)は4月、原油価格の上昇を受けて26年のロシアGDPの予測を1.%と0.3ポイント引き上げた。減速が目立った25年(1%増)並みの水準となる。制裁解除の継続や米国とイランの停戦実現時期がロシア経済の今後の動向に影響しそうだ」

     

    戦時下経済であり、インフレ率が13月で5.%である。GDPはマイナスで典型的なスタグフレーション(不況下の物価高)初期現象である。ロシアの場合、通常のスタグフレーションと違い、 戦争が経済の中心にある ため、次の特徴が出る。

     

     1)失業率は低い(2.2%)が、 戦時動員で労働力を吸収されているだけで、 生産性は低下している。

    2)軍需はGDPを押し上げるが、民需はすでに崩壊している。  戦争が止まれば、GDPは急落する。

    3)金利を下げられない。インフレが高いため、金融緩和ができない。こうして、 内需は回復しないであろう。

    4)制裁で供給制約が続く。インフレは構造的に高止まりしている。ロシアは、戦争を続けるほど景気が悪化し、 戦争をやめても景気が悪化するという袋小路に入った。

     

    (4)「ロシアは9月に5年ぶりとなる下院選を控える。経済の停滞が「社会にネガティブな空気を引き起こし、投票率の低下につながる可能性がある」(ロシアのエコノミスト)との見方も出ており、安定成長に向けた内政対応がプーチン政権の課題となっている。侵略の長期化で厭戦(えんせん)機運が高まり、無人機(ドローン)など安全対策を名目に3月に実施した大規模なモバイル通信規制などへの反発が強まる中、プーチン氏の支持率は低下している。政府系の全ロシア世論調査センターが15日発表した同氏の支持率は66.8%だった。3月以降低下基調が続き、侵略後の最低となる6割台半ばの水準で推移する」

     

    9月の下院選で、投票率はどうなるか。これによって、ウクライナ戦争への厭戦気分が示されるであろう。プーチン氏は最近、動静が不明になることが多いとされる。政治不安の高まりが影響しているとの見方も出ている。

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