勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース

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    先のG7首脳会議は、ロシアへさらなる経済制裁を見送った。効果は確実に出始めた。資源高騰で外貨を稼いでいるが、経済制裁で部品や技術の供給が止まっている。これにより、国内の鉱工業生産に大きな影響が出る。4月は、3.0%のマイナス成長に落込んだ。これから、マイナス幅が拡大されるはずだ。

     

    『日本経済新聞』(6月30日付 経済教室欄)は、「ロシア経済の強さと弱さ 制裁に伴う在庫不足、大打撃」と題する記事を掲載した。筆者は、ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所代表の隈部兼作氏である。

     

    2月24日に始まったウクライナ侵攻により、ロシア経済を取り巻く環境は激変した。西側諸国は外貨準備の凍結、ロシア主要行の国際銀行間通信協会(SWIFT)排除、エネルギー資源の一部禁輸、半導体などの輸出制限、対ロ新規投資の禁止など、ロシアを国際金融システムや世界経済から孤立させる措置を次々と導入した。ウクライナは欧米諸国から供与される重火器などで反撃しており、紛争は長期化が予想される。

     


    (1)「貿易に関しては、ロシア税関庁は侵攻後に通関統計の公表をやめている。対ロ輸出入の60%以上を占める欧州連合(EU)、米国、日本、中国、インドの統計から、これらの国の対ロ貿易が侵攻前後でどう変化したかを見る。34月の対ロ輸入は米国を除き前年比で増えた。資源価格の高騰が主因だ。ただし、制裁に参加している米国、EU、日本は減少傾向で、いち早くエネルギーを禁輸した米国は4月に前年同期比15%減少した。一方、制裁に参加していない中国は4月に57%、インドは253%増加させており、制裁参加国と非参加国の違いが鮮明だ」

     

    インドと中国は、ロシアからの原油輸入が激増している。対ロ制裁で西側諸国は減少し、好対照である。

     

    (2)「特筆すべきは制裁に参加していないインドで、割安なロシア産ウラル原油の輸入を急増させており、ロシアの原油輸出に占める割合は侵攻前の1%から18%に拡大した。インドは輸入した原油を精製し、その一部を米国、フランス、イタリア、英国などに輸出している。インドや中国が制裁の抜け道になると懸念していた欧米諸国は、ロシア産原油が原料であることを知りながら、インドからの石油製品輸入を増やしている。EUはロシア産石油を輸送する船舶への保険提供を禁止し、制裁を科していないインドなどへの輸出を制限する効果に期待するが、こちらも6カ月間の猶予期間があり即効性はない」

     

    インドは、急増するロシア原油を精製して第三国へ輸出して利益を上げている。この便乗商法は、秋に船舶への海上保険付保が禁止されるので、不可能になる。西側諸国は、インドを陣営へ取り込もうとしており、見て見ぬ振りをしている。

     


    (3)「6月に入りロシアから欧州へ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム」の輸送量が60%減少した。ロシア側の報道によれば、西側企業の撤退で出荷基地の保守・点検・修理ができなくなった。制裁による西側企業の撤退は、エネルギー禁輸よりも早くロシアのエネルギー産業に影響を与えそうだ」

     

    下線部は、極めて重要だ。ロシアの原油出荷基地では、保守・点検・修理業務の6割を西側企業が担ってきた。西側企業の撤退で、前記業務が大幅に滞っている。これにより、ロシアは原油の生産減に追い込まれる。

     

    (4)「各国の対ロ輸出をみると、3月以降大幅に減少した。制裁を科していない中国やインドも減少している。SWIFT除外の影響による海外送金の停滞、半導体などの先端技術の輸出制限強化、サプライチェーン(供給網)の分断などにより、ロシアのビジネス環境は急速に悪化し、企業の撤退や工場の操業停止が相次いでいる。これらの制裁は即効性が高く、ロシアは原材料、設備、部品、高度な技術などを西側から調達することが困難になった。現時点で電子部品などを海外から輸入する自動車工場はすべて操業を停止している」

     

    ロシアの輸入ビジネスが、禁輸の影響を真っ正面から受けている。ロシアは、モノカルチャー経済ゆえに、禁輸の影響は甚大である。想像を超えるマイナス効果が及ぶはずだ。

     


    (5)「ロシア中央銀行の調査では、ロシアの製造業の約4割が代替サプライヤー(部品会社など)を見つけるのが困難で生産に支障を来している。夏以降の生産に不安を抱く企業も多い。
    ロシアは資源価格の高騰で外貨を稼げても、必要な物資や技術を海外から調達できない状況にある。エネルギー資源の生産・輸出についても、今後は西側企業の撤退により保守・点検・修理などが困難となり、生産量が減少する可能性が高い。中長期的にはエネルギー禁輸や船舶保険の提供禁止の発動により輸出も減少していくと考えられる

     

    ロシアは資源価格高騰で外貨を稼いでいるが、その外貨を使った肝心の輸入ができないのだ。モノカルチャー経済最大の弱点である。中長期的には、海上保険の付保禁止の影響が、これからのし掛ってくる。

     

    (6)「4月以降のロシア経済は景気後退が一段と鮮明になった。1~3月の実質経済成長率は3.%に達したが、4月は3.%のマイナスとなった。鉱工業生産は1.%減、小売売上高は9.%減など、経済指標は軒並み悪化している。1~5月の経常収支は資源価格の高騰による輸出増加と輸入激減から1103億ドルの黒字を計上し、一時暴落したルーブル相場は侵攻前よりも強くなった。だが、外貨があっても必要な物資や技術を海外から調達できない結果ともいえる」

     

    外貨があっても、必要な物資や技術を海外から調達できない結果、下線部のように経済指標は軒並み悪化している。インドや中国では、その代役ができないのだ。

     


    (7)「ロシアの連邦財政をみると、14月は歳入が前年比34%増えた。資源価格の高騰で石油ガス収入が91%増えたことが大きい。他方、非石油ガス収入は制裁による景気後退で5.%の増加にとどまり、侵攻後の34月は単月で前年よりも減少した。一方、歳出は3月以降急増し、4月は前年比40%増えた。ロシア財務省は侵攻後、歳出の内訳を公表せず詳細は不明だが、一部報道から算出すると4月の国防費が前年比約150%増えたことが原因とみられる。4月の連邦財政は赤字となった。22年の国防予算は3.5兆ルーブル(約9兆円)が計上されていたが、4月時点で4割強の1.5兆ルーブルが使われたことになる」

     

    歳入は、石油関連が増えても非石油関連が減少し、トータルでは減っている。歳出は、国防費関連が激増し、財政赤字に陥っている。

     

    (8)「今後も国防費が膨らむのは確実だ。ロシア政府は4月に国民福祉基金の資金の繰り入れと使途に関するルールを変更した。同月だけで基金残高は約2兆ルーブル減っており、戦費流用の可能性を指摘する専門家もいる。今後問題になる失業対策や年金などの社会保障についても、国防費が財政を圧迫する中で手当てせねばならない。原材料や部品の在庫が底をつき始める夏以降に、経済は厳しい状況になるだろう」

     

    国防費激増分を賄うべく、国民福祉基金を流用し始めている。財政も悪化は必至である。輸入の原材料や部品の在庫が、夏以降に底をつく。これから、ロシア経済の危機が表面化するだろう。



    ムシトリナデシコ
       

    メドベージェフ前大統領は、プーチン大統領の影のような存在である。そのメドベージェフ氏が突然、昨秋からウクライナ批判を始め存在感をアピールしているのだ。誰でも感づくのは、プーチン氏の健康不安から、メドベージェフ氏がその後釜を狙っているのでないか、というのである。真相は不明だが、メドベージェフ氏の言動からプーチン氏の健康状態を推し測れるかも知れない。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月30日付)は、「『プーチンの犬』メドベージェフ前大統領の転落が止まらない」と題する記事を掲載した。

     

    最近のメドベージェフのソーシャルメディア投稿には、欧米政府高官に対する口汚い批判や、アメリカを攻撃するとか、ウクライナを地図から消し去るといった好戦的な言葉が目立つ。ウクライナ侵攻がロシア国内にもたらす混乱が日常生活に表れ始め、さらにウラジーミル・プーチン大統領の健康悪化がささやかれるなか、メドベージェフは自己防衛策を強化しているようだ。

     


    (1)「メドベージェフは昨年10月、ロシアの日刊紙コメルサントに反ユダヤ主義むき出しの寄稿をした。ロシアがウクライナ国境に兵力を集める少し前のことで、ユダヤ系であるウォロディミル・ゼレンスキー大統領をナチスと非難するなど、支離滅裂な陰謀論と罵詈雑言に満ちた寄稿だった。かつては温厚に見えたメドベージェフの変節は、ロシアがヨーロッパにとって厄介な隣人から、存亡を脅かす存在に変貌したことと一致する」

     

    温厚に見えたメドベージェフ氏が、昨秋から豹変して過激派になった。ウクライナ批判を始めたのだ。そのきっかけが、プーチン氏の健康不安を察知した結果とみられる。

     


    (2)「2月のウクライナ侵攻以来、ロシア政界はナショナリズム色が極めて濃くなり、異論を認めない風潮が強まった。メドベージェフの過激な主張も、強硬派の監視の目を意識して繰り出された可能性が高い。「ロシア政治で起きている非常に興味深い変化の1つだ」と、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤ代表は語る。「ロシアは変わった。そしてメドベージェフは、自分が新しいロシアの一員であることを示す必要に駆られている」と指摘」

     

    メドベージェフ氏は、ロシアの動きに合せて過激発言を行い一体感を演出しているというのだ。

     

    (3)「リベラル派からはプーチンの犬と揶揄され、ロシアの安全保障当局からは、アメリカに擦り寄ったと疑念の目で見られて、近年のメドベージェフは孤立していた。だから余計に、プーチンの厚意にすがるしかなくなっていた。「メドベージェフはロシアの政治エリートで、最も立場が弱い1人だ」とスタノバヤは語る。メドベージェフは6月のテレグラムへの投稿で、最近極端な愛国主義を唱えるようになった理由を説明した。「あいつらのことが憎いからだ。連中はろくでなしのクズだ」。この「連中」とはウクライナのことらしい。「私の命ある限り、あいつらを消滅させるために何でもする」と言う」

     

    メドベージェフ氏は、リベラル派から揶揄され安保当局からは警戒されるという挟み撃ちに遭っている。どうしても、プーチン氏の庇護を得なければならない立場とされる。これによって、「ポスト・プーチン」の座を固めたいのかも知れない。

     


    (4)「メドベージェフが大統領に就任したのは08年、プーチンが当時の憲法が定める大統領の任期上限に達して、ひとまずその座を降りなければならなくなったときだ。それはロシア国内にも欧米諸国にも、大きな希望を生み出した。なにしろメドベージェフは、プーチンをはじめ過去のロシア(とソ連)の政治指導者たちとは大きく違っていた。大学を卒業したのはベルリンの壁崩壊の数年前で、ソ連の政治に染まっていなかった。ロシアの「弱い民主主義」と「非効率な経済」は問題だと語るなど、言うことは言う。だが、欧米諸国にこうした希望を抱かせることになったメドベージェフの特質が、ロシア政界では、保守派の愚弄と疑念を招く原因となった」

     

    メドベージェフ氏の経歴は、ソ連政治に染まっていないことだ。だから、第三者の立場で過去のソ連を批判できる。ロシア保守派には、それが気に入らないのだろう。

     

    (5)「ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイは17年、ロシアの政治家による幅広い腐敗を暴露する動画を発表した。プーチンが大統領に復帰すると入れ替わるように首相に就任していたメドベージェフもターゲットの1人だ。すると、その豪勢な暮らしぶりを知った多くの市民が全国で怒りのデモを繰り広げた。10代の若者たちは、黄色いアヒルのおもちゃを手にデモに参加した。メドベージェフの広大な別荘に、ヨットハーバーやスキー場やヘリ発着場だけでなく、アヒル小屋があることにちなんだ抗議だ。支持率が38%に落ち込むと、メドベージェフは20年に首相辞任を発表した」

     

    メドベージェフ氏も、利権漁りをして広大な別荘を手に入れていた。これが暴露され結局、首相辞任へ追い込まれた。プーチン氏と同じ蓄財に励んだが失脚原因になった。

     


    (6)「コロナ禍が始まってから2年、プーチンはいまだに群衆に近づこうとしないし、政府高官とさえ距離を置きたがる。このため欧米のメディアでは、「プーチン健康悪化説」が盛り上がる一方だ。もちろんロシア政界も噂には気付いている。メドベージェフの最近の行動は、長年自分を守ってくれたパトロンも、政治的・肉体的な死と無縁ではないという思いと関係していると、ロシアのコンサルティング会社R・ポリティクのタチアナ・スタノバヤは語る。「メドベージェフは『プーチン後のロシア』における、自分の居場所を確保するために戦っているのだ」と指摘」

     

    メドベージェフ氏にとっては、プーチン氏の健康不安が絶好のチャンスになる。何と言っても大統領と首相の経験者である。秘かに、「闘志」を燃やしても不思議でない、政治環境になったと判断したのであろう。

     

     

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    先進7ヶ国首脳会議(G7サミット)は、6月28日に終了した。ロシアへの新たな経済制裁は見送られた。G7各国への経済的負担が大きくなることが理由である。一方では、ウクライナへの支援継続を決めた。和平問題は、ウクライナが決めることとし、G7側からの働きかけをしないことを明らかにした。欧州国内での「和平論」は封印された形だ。

     

    ロシアへの新たな経済制裁を見送り、ウクライナへの支援継続となれば、軍事面でウクライナをさらに支援するほかなくなった。ウクライナの要望する大型火器を供給して、ウクライナに有利な和平条件をつくり出す段階へ移っているようだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月29日付)は、「即効薬なきロシア制裁策、G7会合では手詰まり感も」と題する記事を掲載した。

     

    先進7カ国(G7)はドイツで3日間にわたり開催した首脳会議(サミット)で、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁措置の検討を続けることで合意したものの、侵攻から4カ月が経過し、経済的手段で制裁を加えることの限界も浮き彫りになった。

     

    (1)「これまでは武器供与によって戦況がすぐに変化しており、ウクライナはロシア軍を押し戻すために支援拡大を求めている。ただ、制裁措置は効果が表れるまでに時間がかかり、一部は西側諸国への打撃となって跳ね返っている。最新の制裁措置は複雑になりすぎ、迅速な発動が困難になっている。今回のサミットでは、G7首脳はある程度の結束を示した。ウクライナへの支援を継続することに表立った反対意見はなかった。だが、ウクライナや西側の一部専門家の間では、重火器の増強以外に、ロシアの侵攻を短期的に食い止める方法はないとの見方がある」

     

    戦線で直ぐに効果の出るのは、ウクライナへの大型武器供与である。米国は、重火器供与に舵を切っている。不幸なことだが、これ以外に、侵攻解決の手段はなくなった。

     


    (2)「G7を含む各国が実施した前例のない対ロシア制裁は世界の市場に変動を引き起こし、エネルギー価格の上昇を招いた。ここにきて、高インフレや成長鈍化、さらに欧州における今冬のエネルギー不足への懸念を背景に、西側諸国ではロシアへの制裁を強化する意欲がそがれている。G7各国の間には対ロシア制裁を巡り温度差があり、具体的な追加措置で合意することができなかった。合意したのは、ロシア産石油の価格上限設定や、ロシアからの金の輸入禁止などについて検討していくことにとどまった。ロシアをすぐに罰することができる選択肢はほぼ使い果たされ、検討対象となっているのは複雑で議論の余地のある選択肢しか残されていない」

     

    これまでの経済制裁は、西側諸国の物価高騰という形ではね返っている。経済制裁の限界を示したものだ。ただ、ロシア経済は今年下半期から制裁効果が出てくるという経済予測もあるので、西側は一呼吸おいて状況を見守ることも必要だ。ここは、戦線立直しが優先されるのだろう。ウクライナは、年内の終結を目指している。これに合わせた武器供与が課題に挙がるに違いない。

     


    (3)「G7は声明で、ロシアを制裁する「さまざまなアプローチを検討する」とし、ロシアの原油や石油製品の世界的な海上輸送を可能にするサービスの全面的な禁止などを検討する方針を示した。政府関係者や専門家は、G7が声明で言及した対策はどれも、実施までに長い時間がかかると指摘する。G7議長国ドイツのオラフ・ショルツ首相は、米国が提案したロシア産石油の価格上限設定について「非常に野心的な取り組みであり、もっと時間と作業が必要になる」と述べた。ショルツ氏はその一方で、ロシアへの対応では他に選択肢がないとの見方を示し、「ウクライナ侵攻前の時代に戻ることはできない。なぜなら、状況が変われば、われわれも変わらなければならないからだ」と語った」

     

    下線部分は重要ある。一定の時期に「休戦」を示唆した言葉だ。西側が、十分な武器を供与して、その結果を見て最終判断するという含みに取れるのである。

     


    (4)「英国のシンクタンク「チャタムハウス」のジョン・ロック氏は、G7首脳が具体的な追加制裁で合意できなかったことは、既存の制裁措置が西側の政策立案者が許容できる痛みを超えたことを示していると指摘。その上で「ロシア経済に圧力をかけるための最初の選択肢を使い果たし、追加制裁には代償が伴うことを西側の指導者らは今になって身に染みて感じている」と述べた」

     

    経済制裁の限界は、和平交渉への精神的な準備をさせるであろう。

     

    (5)「ショルツ氏はロシアに対抗するための連携拡大を目指し、インド、インドネシア、南アフリカ、セネガル、アルゼンチンなど新興国の首脳をG7サミットに招いた。ところが、こうした国々は対ロシア制裁に加わる意向をほとんど示さなかったと西側当局者は語る。インドのナレンドラ・モディ首相はショルツ氏に対し、ウクライナでの戦争は途上国の経済に打撃を与えており、インドはロシアへのいかなる対抗策にも参加できないと告げた。両氏は27日午後に会談した。インド政府はロシア産石油の購入を正当化している」

     

    G7にオブザーバーとして出席した新興国は、経済制裁に加わる意思のないことを明らかにした。それは、各国がロシアの反撃に耐えられない経済体質であることの結果だ。

     


    (6)「シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)のグスタフ・グレッセル氏は現在議論されている制裁について、軍事ではなく経済でロシアに対応しようとする西側の意向を反映していると指摘する。ただ、ロシアは軍事的に敗北しない限りは侵攻を継続する公算が大きいという

     

    下線のように、ロシアは軍事的な敗北のない限り侵攻を続けるという。ならば、西側諸国も腹を括って大型火器の供与に踏み切らざるを得まい。ロシアの「核脅迫」に怯えていれば、ウクライナ侵攻を長引かせるだけだ。これが、結論のようである。 

     

     

     

     

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    6月26日を以て、ロシア国債のデフォルト(債務不履行)が最終確定した。1918年以来の「歴史的事件」である。ロシアは、今回デフォルト状態に陥ったことで、経済、金融、政治の面での孤立が急速に進むという厳しい現実を示している。

     

    いかなる国といえども、世界覇権を握る西側諸国と軍事対決すると、このような冷酷な事態が起こることを示す象徴的な事例であろう。中国が軍事侵攻をすれば、ロシアと同様の結果を招くという意味で、重大な警告になる。

     


    『ブルームバーグ』(6月27日付)は、「ロシア国債がデフォルト状態、約1世紀ぶりー利払い猶予26日終了」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが外貨建てソブリン債のデフォルト(債務不履行)状態に陥った。旧ソ連の初代指導者レーニンが帝政ロシア時代の債務の履行を拒否した1918年以来、約100年ぶりとなる。同国のウクライナ侵攻に対して米国と西側諸国が科した金融制裁が国外債権者への支払いルートを閉ざした結果、2件のユーロ債の利払いが履行できなくなった。

     

    (1)「債権者が5月27日の期日に受け取るはずだった約1億ドル(約135億円)の利払い猶予期間が26日に終了した。期限内に支払われない場合、デフォルト事由と見なされる。ロシア側はこれに対し、いかなる支払い義務も履行する資金があるにもかかわらず不払いを余儀なくされていると主張し、デフォルトの指定に反対する構えを示す。同国政府は先週、発行残高400億ドル相当のソブリン債について、ルーブルでの返済に切り替えると発表。西側が人為的に生じさせた「不可抗力」の状況だと批判した」

     

    ロシア側は、今回のデフォルト措置に反対意向を示している。支払う資金があるにもかかわらず、支払い手段を奪われたとしている。ロシアは、デフォルト判定された後の混乱を恐れている。世界の金融網から遮断されるからだ。

     

    (2)「デフォルトは、正式には格付け会社が通常認定するが、欧州連合(EU)が制裁強化の一環でロシアの発行体への格付けを禁止したため、S&Pグローバル・レーティングなど主要格付け会社は、既存の格付けを全て取り下げた。ロシアが発行したユーロ債は3月初め以降、発行体を破綻状態として扱うディストレスト水準で取引されてきた。中央銀行の外貨準備が凍結され、上位金融機関も国際金融システムから締め出されており、今回デフォルト状態に陥ったことは、ロシアの経済、金融、政治的孤立が急速に進む厳しい現実を浮き彫りにする。ただ、ロシアの経済と市場が既に被っている打撃を考えると、デフォルトは差し当たり象徴的意味合いが大きく、2桁のインフレと数年ぶりの深刻な景気縮小に見舞われるロシア国民への影響は限定的となりそうだ」

     

    デフォルト判定は、世界の主要格付け会社が行なう。EUは、ロシアの債券発行体の格付けを禁止している。「無格付け」の債券発行は不可能ゆえに、ロシアは孤立させられる。ただ、国民生活への影響は当面、限定的とされる。影響が出るのは、ロシア経済が大きく傾いた場合だ。来年以降となろう。

     

    (3)「ルーミス・セイレス・アンド・カンパニーのシニア・ソブリンアナリストのハッサン・マリク氏は、「違う状況なら返済手段を持つ政府が、外国政府によって債務不履行を余儀なくされる極めて珍しい事態だ。歴史の転機となる大きなデフォルトの一つになるだろう」と指摘した」

     

    このパラグラフは、支払う資金があってもデフォルトになるという珍しい事例である。政治的な理由で、今後も他国で起こり得る先例になる。さしずめ、中国が次の候補国であろう。

     

    (4)「猶予期間が終了したユーロ債に関する文書によると、発行残高の25%を占める保有者が「デフォルト事由」が発生したと認めれば、債権者自身でデフォルトと認定できる。同文書によれば、請求が無効になるには、支払期日から3年経過する必要があり、債権者側は直ちに行動する必要はない。経済制裁が最終的に緩和されると期待し、ウクライナでの戦争の今後の展開を見守る選択もあり得る

     

    下線部では、ロシアへの経済制裁が解除される場合を想定している。短期間の制裁で済むだろうか。ロシアが、ウクライナの復興資金を負担させられる事態になれば、絶対に拒否するであろう。となれば、制裁は解除されるはずがない。

     

    もう一つの注目点は、EUがロシはからのエネルギー輸入を他国へ切り変えることだ。ロシアは、大手輸出先を失うので経済失速が続く。ロシア国債の格付けは、低位に沈むだろう。ロシアは今後、ウクライナ侵攻で失ったものが、人命のほかに余りにも大きいことを悟らされるはずだ。

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    EU(欧州連合)は、ウクライナとモルドヴァの両国を「加盟候補国」と承認した。EU加盟国27カ国が全会一致で決めた。今後は、国内の制度改革が実効を挙げたか、その実績評価によって、正式な加盟国になる。これによって、経済的なメリットを受ける。EU域内では、モノやサービス、ヒトが自由に移動できる。ウクライナ国民も、EU市民になれば域内のどこにでも住み、働くことができるからだ。現状から見ると、夢のような環境が生まれる。

     

    こうした経済的メリットもさることながら、「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」という指摘がある。バルト三国(エストニア・リトアニア・ラトビア)が、「一寸の虫にも三分の魂」で自由を叫び、ロシアから独立した血の叫びを想起すべきだろう。人間には、自由が不可欠である。ウクライナ国民は、それを勝ち取ろうとしているのだ。

     


    英国『BBC』(6月23日付)は、「ウクライナがEU加盟候補国へ『何が変わる』ロシアの反応は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ゼレンスキー大統領は、今年2月にロシアの侵攻が始まった5日後に、EU加盟を申請した。ウクライナ側は即時の加盟を求めているが、その手続きには数年かかる可能性もある。EUに加盟すれば財政的な利点があるだろう。しかし、ブリュッセルのシンクタンク「欧州政策研究センター」のザック・パイキン博士は、ウクライナの動機は経済的なものではないと指摘する。「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」と、パイキン博士は述べた」

     

    ウクライナのEU加盟への目的は、欧州の一員になってロシアと縁を切りたいことだという。ウクライナ人の親類縁者はロシアに一杯いるが、もはや価値観が異なる以上、絶縁したいのだ。ウクライナ正教は、すでにロシア正教から独立した存在である。信仰が異なる以上、ロシアの支配を受けたくないという独立精神が旺盛なのだ。

     


    (2)「欧州委員会は、
    申請した国が加盟候補にふさわしいかどうかを判断する。安定した民主主義政府があるかどうか、人権が尊重されているか、自由市場経済が存在しているかどうかなどが基準となる。この手続きの後、欧州委が申請国を加盟候補に推奨すると、次は全加盟国の承認が必要となる。全加盟国が承認し、正式な加盟候補となった国は、数年をかけてEU法や規制を国内法に適用していく。このプロセスが終わって初めて、加盟候補国は加盟条約に署名することができる。この条約も、全加盟国が批准する必要がある」

     

    欧州は、カソリックかプロテスタントである。宗教改革や科学革命を経験している文化圏だ。それだけに、正教の古い慣行に染まっている国では、汚職などがはびこっている。EUは、それを糺さないと正式加盟国として受入れない。

     


    (3)「ブルガリアやルーマニア、クロアチアといった直近の加盟国は、一連の手続きに10~12年を費やした。アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままだ。ウクライナの隣国のモルドヴァも、ウクライナと同じ日に加盟候補国に認められた。ジョージアも同時期に申請したが、いくつかの改革が必要と判断された」

     

    ブルガリアやルーマニアの宗教は正教である。クロアチアはカトリックが8割である。一連の手続きに10~12年も費やしている。ウクライナは、こういう国々と比べてどこまで短縮できるかだ。ウクライナ侵攻という多大の犠牲を被っても、新しい国造りを目指す熱意が、期間を短縮させることを期待したい。

     

    (4)「ウクライナは、EU加盟申請への準備としてすでに、数々の国内法や規制をEU基準に変更している。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナは「良い仕事をしている」と述べた一方で、加盟に向けてはさらに「重要な改革」が必要だと指摘した。これには、法の統治の強化、人権状況の改善、オリガルヒ(新興財閥)の権力縮小、汚職対策などが挙げられている。欧州政策研究センターのパイキン博士はさらに、「ウクライナは一人前の市場経済を構築する必要がある。旧ソ連国には難しい課題だ」と指摘した。また、大きな批判を浴びている司法体系の整備も、課題の一つだという」

     

    ウクライナが、EUの加盟国になるには下線部のような改善が課されている。オリガルヒの権力はかなり縮小されている。ウクライナ侵攻撃退で、自費で戦費を提供している例もあるという。

     


    (5)「EU加盟から15年がたった
    ルーマニアでは国民総所得が3に、ブルガリアでは2に拡大した。EUは欧州構造投資基金(ESIF)を通じ、両国に数百億ユーロを投入している。こうした資金は、新しい道路や港の建設などに充てられ、経済開発を支援している。2014~2020年に、ブルガリアは112億ユーロを、ルーマニアは350億ユーロを受け取っている。一方で、各国の腐敗・汚職に取り組む非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルは、こうした資金の多くが汚職によって失われていると指摘する」

     

    EUが、汚職に厳しい目を向けているのは、EUからの補助金が汚職で消えているからだ。EUが、新加盟国のハードルを高くしているの裏には、こういう事情があるのだ。

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