ウクライナが、ロシアのプーチン大統領の公邸をドローン(無人機)で攻撃したとするロシアの主張を巡り、米中央情報局(CIA)が「標的にしていなかった」と結論づけたことがわかった。米主要メディアが12月31日に相次ぎ報じた。
CIAは、立体的な情報収集をしており、ロシア情報の虚言を指摘したが、ロシアの狙いは何であったのか。国内向けには、結束強化(ナショナリズムの喚起)である。「国家元首が狙われた」という演出は、国民の危機意識を高め、戦時体制への支持を強化する効果がある。特に長期化する戦争に対する国民の疲弊や不満を、外敵への怒りに転化する狙いがあるのは明瞭だ。
「自国の指導者が攻撃された」という構図を作ることで、より強硬な軍事行動やインフラ攻撃を正当化しやすくなる。これは、戦争の主導権を握り直すための戦術的布石とも言える。また、和平交渉を望む国々(特にグローバルサウス)に対して、「ウクライナは挑発的で和平に非協力的だ」という印象を与えることで、外交的圧力をウクライナ側に向けさせる意図もあるだろう。
ロシアは、和平拒否の伏線としての演出でもある。「和平を望まない」あるいは「自国に有利な条件でしか和平を結ばない」という姿勢を正当化する布石という見方も十分に成り立つ。特に、戦況が膠着しつつある中で、交渉の主導権を握るための情報操作は、ロシアの常套手段として注目すべきだ。米CIAの分析は、技術的な情報収集(シグナルインテリジェンス)に基づいており、攻撃の意図や実行主体に関する信頼性の高い判断とみられる。
『日本経済新聞 電子版』(12月1日付)は、「プーチン氏公邸へ『攻撃なかった』、CIAがロシアの主張否定 米報道」と題する記事を掲載した。
ロシア大統領府はウクライナ軍が12月28〜29日にかけてロシア北西部ノブゴロド州のバルダイ湖畔にある大統領公邸を攻撃したと説明していた。投入された91機のドローンをすべて撃墜したと唱えたものの、裏付ける証拠は示していなかった。
(1)「米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)は、米国の国家安全保障当局者の話として「ウクライナはプーチン氏や公邸をドローン作戦の対象にしていない」と伝えた。ロシア側の立場と食い違う内容になる。ウクライナや欧州は「虚偽だ」と否定していた。米CNNによると、CIAのラトクリフ長官は12月31日、トランプ米大統領に情報機関としてロシアの主張を「真実だとは考えていない」と報告した。衛星や通信傍受などを通じてロシア領土内の攻撃を監視しているという」
CIA情報が、ロシアの発表を虚言とした。ロシアは、ウクライナと米国が和平案を詰めている最中だけに、妨害したかったのだろう。
(2)「トランプ氏は、12月29日にプーチン氏と電話協議した際に「(プーチン氏が)今朝それが起きたと私に伝えた」と明かしていた。虚偽の可能性にも言及しつつ「私はこの件に非常に怒っている」とも表明した。一方、12月31日には自身のSNSにプーチン氏公邸「攻撃」の主張について「和平の妨げとなっているのはロシア側だと示している」と訴える米紙ニューヨーク・ポストの社説のリンクを投稿した。CIAの分析に対する自らの立場は明確にしていない」
トランプ氏は、プーチン氏の虚言性に目を見開かねばならない。あとになって、世界の笑いものにされるのはトランプ氏であるからだ。
(3)「ロシアは、トランプ氏が仲介する和平協議のさなかの「攻撃」を口実に、ウクライナ侵略を正当化しようとする思惑がある。ペスコフ大統領報道官は「和平協議により強硬な姿勢で臨む」と発言し、交渉で有利な条件を引き出そうともくろむ。トランプ氏は1期目だった2018年にプーチン氏と会談後の記者会見で、16年の米大統領選への介入疑惑を否定したプーチン氏の立場を支持。介入があったと断定した米情報機関の分析を退け、プーチン氏の言い分を認めた経緯がある」
トランプ氏は、プーチン氏の虚言に騙された経緯がある。ノーベル平和賞に目がくらんで、プーチン氏に乗せられてはならない。
(4)「ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが偽情報を拡散することで「米国との和平交渉で対ロシア制裁の緩和につなげる狙いがある」と発言した。米国とウクライナが、和平案で合意に近づいているのを受け、ロシアが焦りを抱いているとの見方も示した。ウクライナとロシアとの和平交渉を仕切る米国のウィトコフ中東担当特使は12月31日、X(旧ツイッター)でウクライナや英国、フランス、ドイツの高官と和平案を巡って話し合ったと投稿した。米国によるウクライナへの「安全の保証」のほか、戦争終結と再侵略抑止策などを話し合ったと書き込んだ」
ロシアを無条件で、和平交渉の席に着かせるには、米国がウクライナへ長距離砲を与えることだ。それによって、侵略の無意味さを悟らせることだが、トランプ氏はそれをためらっている。理由は、ロシアを取り囲み中国へ対抗するという思惑があるからだ。





