勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済

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    英国は昨年、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟申請を出しており審査は順調に進んでいる。TPP加盟条件は、全てクリアした。関税率の引下げ問題が残っているだけだ。これが済めば、英国の加盟が決まる。

     

    これに続くのが、中国と台湾である。中国は、国有企業や強制労働でTPP条項抵触が確実である。それが分っていて、なぜ加盟申請したのか。台湾申請の実現を妨害する目的と見られている。台湾の「有力保証人」は日本と豪州である。とりわけ、日本の後押しが力を発揮すると見られる。中国の保証人は、メキシコ・シンガポールだ。

     


    『大紀元』(2月22日付)は、「中国と台湾のTPP加盟、『日本はキーマン 中国は妨害工作の可能性』=米VOA」と題する記事を掲載した。

     

    米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)によると、通商専門家は、加盟を申請した台湾と中国をめぐって、日本の後押しを受けている台湾に対して、中国当局は友好関係にあるTPP加盟国を味方につけ、台湾の失敗を目論んでいると指摘した。中国当局は昨年9月16日に、台湾政府はその6日後の22日にそれぞれTPP加盟を申請すると発表した。専門家は、TPP協定の拡大で主導権を発揮し、台湾に友好的な姿勢を示している日本は、台湾が加盟を成功させるキーマンであると指摘した。

     

    (1)「台湾政府系シンクタンク、中華経済研究院WTO・RTAセンターの李淳・副執行長は、台湾だけでなく「すべての申請国は『主要保証人』となるTPP加盟国の支持を得なければならない」と指摘した。「台湾の加盟を歓迎したのは日本だ。日本の立場は非常に重要である。台湾にとって、われわれの主要保証人が躊躇するのであれば、これからの手続きは難しくなるだろう」。李氏は、日本とオーストラリアは、すでに一部の加入手続きを終えた英国の主要保証人であるとの見方を示した」

     

    台湾の主要保証人は、日本・豪州である。中国の主要保証人は、メキシコ・シンガポールと見られる。

     


    (2)「日本政府は18日、加盟国の首席交渉官は同日のオンライン会合で、英国の加盟について、ルール順守に関する英国の取り組みを確認する協議を終えたと公表した。手続きは次の段階である市場アクセスの協議に進むという。台湾が昨年9月22日にTPPへの加盟申請を発表した翌日、茂木敏充外相(当時)は台湾の加盟について「歓迎したい」と述べ、「台湾は自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナーだ」と語った。また、岸田文雄首相は昨年12月10日の参院本会議の代表質問で、台湾のTPP加盟について「歓迎している」と述べ、中国をめぐって「貿易慣行に関して様々な意見があり、しっかり見極める必要がある」とした」

     

    日本では、首相や外相が「台湾歓迎」と発言している。中国については、「お手並み拝見」と他人事である。

     


    (3)「台湾政府は21日、2011年の東京電力福島第一原発事故以降に実施した福島県を含む5県で生産された食品に対する輸入禁止措置を解除したと公表した。台湾のNPO団体、当代日本研究学会の陳文甲・第一副会長は米VOAの取材に対して、日本側が過去10年にわたり台湾政府の輸入禁止措置を自由貿易に反していると批判してきたことを挙げ、台湾政府の措置撤廃で、日本は台湾のTPP加盟をより支援しやすくなると述べた。日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の佐藤幸人・上席主任調査研究員は、台湾政府の輸入禁止解除で、日本は疑いなく台湾を支持していくと指摘した」

     

    台湾は、TPP加盟を前提にして福島県産外の食品に対する輸入禁止措置を解除した。日本の「歓迎」に応える意味だ。

     

    (4)「TPP委員会では、申請国の加盟や交渉入りに関して、すべての参加国の承認が必要になる。陳文甲氏は、中国と台湾のTPP加盟をめぐって今後、3つの可能性を指摘した。「1つ目は、中国当局が加盟を拒否された後、TPP協定に参加している友好国に、台湾加盟に反対するよう働きかけていく。2つ目は、ハイテク分野で中国本土が台湾に強く依存していることを考え、WTO(世界貿易機関)加盟時と同じように、中国も台湾もTPP協定に加盟する。3つ目は、中国が台湾より早くTPP加盟を実現した後、TPP参加国として台湾の加盟に反対していく」

     

    中国は、最初からTPP加盟条件を満たしていないことを承知で申請している。台湾が極秘で加盟申請準備をしていたが、中国に漏れて申請で先行された。中国は、台湾申請を潰す目的である。TPPはWTOと条件我違う。TPPが「選抜試合」なら、WTOは「一般試合」であり、加盟資格が完全に異なる。

     


    (5)「VOAの取材を受けた専門家の大半は、日本政府が最後まで台湾を支持していくと認識している。ただ、専門家は、国際社会が対中陣営と親中陣営に分かれているなか、中国当局がTPP参加国のなかから、どれほどの支持国を獲得できるかに注目している。
    李淳氏は、「少なくともシンガポール、マレーシア、メキシコとチリは中国の加盟を支持すると中国側は見ている」とした。しかし、マレーシア政府とチリ議会はTPP加盟を批准していないため、両国はTPP協定の未締結国である。李氏は、メキシコとシンガポールは中国の「主要保証人」になると推測した」

     

    中国の主要保証人では、マレーシアとチリがTPPの未批准国でその資格がない。

     

    (6)「佐藤幸人氏は、中国がシンガポールやペルーなどの友好国にどのように働きかけていくのか、日本は注視していると指摘する。同氏は、中国当局がTPP協定の高い加基準をクリアできないとし、中国側が友好国を通じて台湾の加盟を妨害する可能性が高いと指摘した。同氏はまた、「加盟国に混乱をもたらして対立させるためなのか、それとも加盟国に『1つの中国』原則を押し付けるためなのか」と中国がTPP加盟を申請した目的に疑問を呈した

     

    通商専門家は、中国加盟は「玄関払い」になると見られる。中には、TPP加盟を中国経済の近代化を進めるテコに使えという「善人」もいる。WTO加盟時の約束も全て反古にしている中国だ。約束など守ったことがない国である。TPPもしかり。騙されてはいけないのだ。

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    台湾では、中国との統一を促進する国民党が不人気である。香港への「国家安全維持法」導入をきっかけに、台湾市民の中国警戒論が一挙に高まっている。この煽りを食って、国民党の人気が下落、蔡政権が2016年5月以来続いている。こうした高い支持率を背景に2月18日、福島県産外の食品輸入再開を公表した。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月22日付)は、「台湾はなぜ『政治的リスク』を冒してでも、福島の食品を『解禁』したのか?」と題する記事を掲載した。

     

    2011年の東日本大震災で東京電力福島第1原子力発電所が放射能漏れの事故を起こしたとき、台湾はいちはやく日本産の食品に輸入規制をかけた。あれから11年。その規制を緩和する計画案が、28日に発表された。福島県と近隣4県で生産・加工された食品に対する10年以上にもわたる輸入規制は、台湾が日本との経済関係強化を図るなかで、大きな障害になってきた。今回の緩和案は、紆余曲折を経て、ようやく(しかし比較的予想外のタイミングで)示されたものだ。

     


    (1)「蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる民進党政権は、これを機に、日本が中心となっている「包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)」への加盟に弾みがつくことを願っている。その一方で、今回の提案は蔡を「台湾の人々の食を危険にさらしている」という批判にさらすリスクもはらんでいる。実際、日本産食品の輸入規制緩和措置は2018年に住民投票にかけられたことがあり、反対が多数を占めた(台湾では数年に1度、主要課題について住民投票が行われ、得票率によってはその結果が法的拘束力を持つ)。蔡政権としては昨年12月の住民投票で、自らが進めてきたアメリカ産豚肉の輸入解禁が支持されたことに勢いを得て、今回、日本からの食品輸入規制も緩和する計画を明らかにしたようだ」

     

    台湾蔡政権は、日米との関係強化が台湾の安全保障のカギと理解している。「台湾有事は日米有事」という共通認識を持たせたことは蔡政権の大きな功績になろう。こうした状況下で、台湾は日米へ食品輸入問題で大きな「バリア」を背負ってきた。豚肉(米国)と福島県産外食品(日本)である。この二大課題をクリアさせたのだ。

     


    (2)「11年前の台湾の動きは早かった。当時は国民党の馬英九(マー・インチウ)総統の時代だったが、3月11日の震災後、15日には8食品群のロット別抜き取り検査が始まり、26日には8品目の輸入規制が始まった。現在は野党となった国民党は、今回の輸入規制緩和案にさっそく反対の姿勢を示している。そもそも国民党は、中国との統一を目指して親中路線を掲げており、日本との関係強化を嫌ってきた。その反日感情は日中戦争にさかのぼる根深いものだ。日本からの食品輸入問題を、日台の接近阻止に利用したいという政治的動機があるのも驚きではない」

     

    福島県産外食品の輸入禁止は、中国本土との接近を進める国民党政権が行なったものだ。日台接近にくさびを打ち込む目的であった。

     

    (3)「一方、民進党は日本との関係を強化して、万が一の台湾有事のときは、日本が台湾の肩を持つ政治的インセンティブを高めたいと考えている。これと同じ理由から、蔡政権はアメリカとの関係強化も急いでいる。長年にわたり規制していたアメリカ産豚肉の輸入を、2021年1月に解禁したのもそのためだ。アメリカ産豚肉には、世界約200カ国中180カ国ほどで使われていない成長促進剤ラクトパミンが使用されている。このため台湾でも安全性への懸念から輸入が規制されてきた」

     

    民進党の蔡政権は、国民党と外交方針が異なる。台湾有事の際は、日米の支援を仰がなければならぬという事情から日米へは格別の友好姿勢を取っている。

     

    (4)「アメリカと自由貿易協定を結んで通商関係を強化したい蔡にとっては、2016年の政権発足以来の頭の痛い問題だった。それ故の昨年1月の輸入解禁だったわけだが、国民党は猛反発。輸入規制の再導入を求めて署名を集め、12月の住民投票にかけることに成功した。だが、実際の投票では十分な賛成票を集めることができず、輸入解禁は維持されることに。それどころか、国民党主導で住民投票にかけられた4つの事案は、全て有権者のダメ出しを食らった」

     

    台湾では住民投票制度がある。これによって、台湾の民主主義制度は世界でベストテンに数えられている。日本よりも上位だ。この住民投票が昨年12月に行なわれ、国民党主導の4事案は全て否決された。この中には、米国産豚肉輸入禁止案も含まれており、輸入継続になった。この住民投票結果から、福島県産外食品の輸入禁止を解除することにしたもの。

     


    (5)「蔡政権が日本の食品の輸入規制緩和案を発表すると、国民党は輸入規制を支持した2018年の住民投票の結果を無視する決定であり、台湾の民主主義を踏みにじる措置だと非難の声を上げてきた。さらに国民党は、蔡政権によるアメリカ産豚肉の輸入解禁も「独裁的だ」と非難してきたが、昨年12月の住民投票で、かえってその措置が民意に沿っていることを証明することになった。蔡は日本の食品輸入についても、同じような展開を期待しているのかもしれない。蔡が今回、日本産食品の輸入規制緩和に向けて動いたのは、このように台湾政治の勢力図で民進党の立場が盤石であることを確認してのことだろう」

     

    米国の豚肉問題よりも、福島県産外食品の方がはるかに安全である。実態が明らかになれば、台湾で理解されるであろう。

     


    (6)「2期目を迎えた総統としての任期は2024年5月まで十分あり、その政治的影響力は衰えていない。今年11月には、次期総統選の前哨戦となる統一地方選が予定されているため、早めに日本産食品の輸入規制を緩和したいという思いもあっただろう。だが、国民党が選挙でこの問題を持ち出すのは必至だ。このため蔡は、今回の規制緩和があくまで部分的であること(例えば、野生鳥獣肉やキノコ類の輸入は引き続き禁止)、そして現在も輸入を禁止しているのは世界で中国と台湾だけであることを強調した。さらに台湾原子力委員会は、食品に含まれる放射能物質を検査できる態勢を台湾全土で整えると発表した」

     

    台湾は、日本産食品の輸入規制緩和に積極的である。韓国は、全く逆である。悪意に満ちた行動を重ねている。台湾は、日本の安全保障面で重要な関わりを持つが、台湾もそのことについて十分な認識を持っている。こういう相互理解が成り立つ日台関係は理想的である。韓国は全く別である。日本に対して敵意すら抱いている。対照的である。

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    台湾が、欧州からの来客で賑わっている。英下院外交委員会の議員団が、2月下旬に台湾を訪問することになった。英国は、台湾が示す民主主義の価値観を支持し、中国へ毅然とした態度をみせることが狙いだという。

     

    フランスは昨年10月、上院議員団が訪台したが、12月には元環境相で前下院議長のドルジ氏ら下院の台湾友好議員メンバーが訪台するなど、台湾への友好姿勢を強めている。西側諸国では、「実益外交」よりも「価値観外交」を重視し始めている。英仏両国が、台湾との関係強化に動いている。

     

    欧州の主要国では、英仏が台湾へ積極姿勢を見せている。だが、ドイツの動きははっきりしない。ドイツは、貿易面で中国との関係が深く「実益外交」を「価値観外交」よりも重視しているように見える。ドイツは、ウクライナ問題でも最も動きが鈍く批判を浴びた。台湾問題でも同様かも知れない。となれば、ドイツはますます韓国と同類の国になろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月11日付)は、「英下院議員団、2月下旬に台湾訪問へ 蔡総統と会談」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の外交部(外務省)は11日、英下院外交委員会の議員団が、2月下旬に台湾を訪問すると明らかにした。台湾が示す民主主義の価値観を支持し、毅然とした態度をみせることが狙いだという。中国の激しい反発は必至だ。議員団は19日に英国を出発する予定。訪台中は蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談する。

     

    (1)「議員団には、外交委員会の委員長で、対中強硬派として知られるトゥーゲントハット氏が含まれる。台湾の中央通信社によると、外交部は「一行の訪問を心から歓迎する」と伝えたという。昨秋以降、欧州からの議員団の訪台が増えている。11月には欧州連合(EU)の欧州議会の代表団や、リトアニアなどバルト3国の国会議員団が訪問したほか、12月にはフランスの下院議員団が訪台し、蔡総統と会談した。いずれも中国対抗を念頭に、台湾の民主主義への支持を、強くアピールしてみせた」

     

    フランスは、さすが「フランス革命」の母国だけに、人権・自由という基本的人権擁護に鋭い嗅覚を見せている。英国は、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟が正式に承認される今年、台湾との関係強化に乗出すのであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(21年12月16日付)は、
    「台湾・蔡総統、EUとの関係強化訴え 仏議員団と会談」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は16日、訪台中のフランスの議員団と会談した。中国からの圧力を念頭に台湾への強い支持を表明した議員団に対し、蔡氏は「フランスのリーダーシップのもと、台湾とEU(欧州連合)の新しいパートナーシップの幕開けを期待する」と述べ、さらなる関係強化を呼び掛けた。

     

    (2)「フランスからは10月にも上院議員団が訪台したばかり。今回の議員団は、元環境相で前下院議長のドルジ氏ら下院の台湾友好議員メンバーで構成された。欧州内には台湾を巡って温度差があるが、フランスでは台湾への支持が強い。5月に上院が世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加を支持する決議案を採択したほか、11月末には下院でも同様の決議案を賛成多数で採択した」

     

    世界の公用語は、英語とフランス語である。さすがは、フランス外交は見事である。

     

    (3)「これらを念頭に、蔡氏は会談で「今年は台湾とフランスの関係が急速に進展した年だった」と指摘。上下両院の台湾支持に感謝の意を示した。「22年はフランスが(14年ぶりに)EU理事会の議長国となり、台湾との投資協定の推進を期待する。権威主義が急速に広がるなか、民主的な国同士の協力が今後はより重要になる」とも述べた。議員団も「自由で透明な選挙、表現の自由など(フランスと台湾は)共通の価値観を持つ。今後も効果的な協力関係に発展させるため、さらに平和への関心から、我々はこうして今、台湾にいる」などと語った」

     

    今年は、フランスがEUの議長国である。中国のエストニアへの経済制裁に対して、断固として対抗する姿勢を見せている。ドイツとは全く姿勢が異なる。

     


    (4)「台湾への支持を表明するため、台湾と正式な外交関係のない国から議員団の訪台が相次いでいる。米国からは11月、今年3度目となる議員団が訪台した。日本など各国議員の間でも台湾支持の声が増える。一方、EUからの明確な支持はいまだにフランスやリトアニアなどバルト3国、東欧諸国など一部にとどまり、台湾との距離は微妙なままだ。国際政治に詳しい台湾・成功大学の蒙志成副教授は「昔から関係が深い日米と違い、台湾と欧州は以前から距離感があった。最近になって欧州と接近し、突破口が開いてきたことは評価できる」と語った。「欧州にとって経済的にも中国は重要だ。米国が台湾を支持するようには、欧州も台湾を支持すると簡単に言いにくい事情があり、EUの方向性はまだ定まっていない」とも指摘した」

     

    まだまだ現状は、「実益外交」が「価値観外交」を上回る状況である。だが、同盟国の結束が固まれば、「価値観外交」が支配的になるだろう。

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    台湾政府は、福島県産など5県の食品輸入解禁を決定する。2011年の東京電力福島第1原発事故後から、福島県など5県産の食品の輸入を禁止した措置を解除するもの。台湾はTPP(環太平洋経済連携協定)加盟を申請しており、日本との関係強化の一環と見られる。

     

    韓国は、この4月にもTPP加盟を申請する意向である。台湾同様に福島県産などの食品の輸入を禁止している。日本は、WTO(世界貿易機関)へ提訴。初審で日本の主張は認められたが、二審で「風評被害」という非科学的理由で韓国の主張が通った。

    日本としては、非科学的な韓国の主張を退けるためにも、韓国のTPP加盟に当ってはこの一件が壁になる。日本は、強い姿勢で臨むはずで、場合によってはTPP加盟反対もあろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月8日付)は、「台湾、福島県産など5県の食品輸入解禁へ 震災以来」と題する記事を掲載した。

     

    台湾当局は7日夜、「日本産食品の輸入に関する規制措置」について、8日午前に記者会見をすると発表した。2011年の東京電力福島第1原発事故後から、福島県など5県産の食品の輸入を禁止した措置を解除する内容とみられる。輸入が解禁となれば、約11年ぶりとなる。

     

    (1)「台湾は、昨年9月に加盟申請した環太平洋経済連携協定(TPP)入りに向け、日本との長年の懸案を解消し、加盟に弾みを付けたい狙いだ。輸入を解禁するとみられるのは、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の食品。台湾は放射能汚染のリスクがあるとして、5県産の食品の輸入を広く制限していた」

     

    日本政府は昨年9月、台湾がTPP加盟方針を発表した際、いち早く「歓迎」する旨を当時の加藤勝信官房長官が述べた。「高いレベルのルールを完全に満たす用意があるか見極めたい」とし、「国民の理解も踏まえながら対応していく」と語った。中国が「一つの中国」を理由に台湾の加盟申請に反発していることにも言及した。「TPPの協定は、新規加入の対象を国または独立の関税地域と規定している。台湾の加入は協定上可能だ」と後押したほど。

     


    台湾は、日本がこれほど「好意」を持ってTPP加盟を歓迎している以上、福島県産などの輸入禁止手続きを撤廃せざるを得ない局面にあった。ただ、市民の了承を得ることも必要である。その事前手続きとして、昨年12月の住民投票で、米国産豚肉輸入禁止提案が否決された。これを手がかりに、今回の福島県産などの輸入禁止措置撤回に踏み切る。

     

    (2)「福島県産の場合、輸入を現在でも広く制限するのは、台湾のほか、中国、香港、マカオにとどまる。台湾の世論は、現在も依然として輸入解禁に反対論が根強いが、蔡政権はTPP加盟には、同措置をこれ以上続けるわけにはいかないと判断し、輸入解禁の適切な時期を慎重に議論し、検討していた」

     

    この記事では、福島県産などの輸入禁止措置を行なっている国に韓国が抜けている。韓国は、いまなお、放射性物質の海洋放出について、政治的意図で反対している。科学的には無害なっていることを知りながら国内政治に利用しているもの。韓国原子力学会も「無害」と認めているほどだ。こういう「反日」韓国が、次期大統領が保守派に変われば、話合いも少しはスムーズに行くであろう。 

     

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    台湾は一時、北京冬季五輪開会式への選手団出席を取り止める方向だった。中国が「中国台北」の呼称を用いる方針であったからだ。これでは、台湾が中国の一部であることを世界に告知するようなもの、と判断したのである。これにIOC(国際オリンピック委員会)が反応し、「中華台北」の呼称を保証したので開会式に参加した。ただ、中国国営TVは、「中国台北」と連呼。

     

    台湾が、呼称の問題一つをめぐっても中国本土と妥協しないのは、台湾が本土よりも科学技術で優っていると自負しているからだ。とりわけ、中国は、半導体で台湾の足下にも及ばないのである。台湾は、こういった優位性を生かして、中東欧諸国への食い込みを図っている。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(2月3日付)は、「台湾・半導体技術を携えて中・東欧諸国に接近」と題する記事を掲載した。

     

    サプライチェーン(供給網)から中国を排除しようという動きが国際社会の一つの潮流になっている。これに乗じて、台湾が民主主義諸国との結びつきを強めようとしている。台湾を世界で孤立させたい中国政府の思惑に対抗するためだ。

     

    (1)「台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、「新ブルーオーシャン」戦略と名づけた機動力重視の外交を進めていく考えだ。台湾の3人の高官によると、外交ルートの確保や(海外での)代表事務所の新設といったこれまでの方策に加え、技術・投資のパートナーシップといった分野に力を入れる。高官の1人は「特定の機会に的を絞り、そこで(外国と)絆を深めるべきだというのが総統の意向だ」と話した。ビジネスや文化といった領域に関連するイベントのほか「しかるべき地域との戦略的な機会」を想定しているという」

     

    台湾は、西側諸国と台湾の半導体技術を前面に出して、相手国との戦略的な関係強化を打ち出している。世界的な、サプライチェーン再編の動きを利用するものである。

     


    (2)「台湾がいま、正式な外交関係を維持しているのは14カ国だけだが、実質的な大使館として機能する代表事務所は60カ国に置いている。台湾の歴代政権は、中国との妥協、外国への支援を通じた中国への接近阻止といった様々な方策で、台湾を孤立させようとする中国の圧力に抵抗してきた。だが、安全保障はなお米国に依存し、通商では中国への依存が高いままだ。一方、中国政府は、台湾の国際機関加盟を妨害し、企業や民間組織の台湾支援も規制している。台湾は、中国からの圧力が続く限り、従来型の外交アプローチよりも、経済や政治の面で必要とされる関係をできるだけ多くの国と結ぶことの方が効果的だとみている」

     

    台湾は14ヶ国と国交を結んでいるが、外交的な業務を担う代表事務所は60ヶ国に及んでいる。この代表事務所を置く国々と今後、「戦略的関係」強化を図ろうというのだ。

     

    (3)「台湾の国家発展委員会の龔明鑫主任委員(閣僚級)はインタビューに答え、「テクノロジーを巡る(米中の)覇権争いが続きそうだ。しかも新型コロナウイルスの感染拡大後、誰もが何かを変えたいと考えている。かつては世界のサプライチェーンの大部分が中国を軸にしていた。ところが、足元では、その一部が中国のほかの地域に広がろうとしている」と指摘した。龔氏は「台湾企業はサプライチェーンを巡り、とても豊かな経験がある。台湾は極めて重要な時期を迎えていると思う。台湾と同じようなことができる国は、ほかにないかもしれない」とも言い切った」

     

    世界では今、米中デカップリングとサプライチェーン再編が同時に起こっている。戦略技術は半導体である。台湾は、この半導体で世界一の生産実績を上げている。実際に、台湾への関心が高まり、「引く手あまた」である。これまで、台湾は雌伏を余儀なくされてきたが、半導体という武器でサプライチェーン再編の波頭に立っている。

     

    (4)「サプライチェーンの多様化を模索する国々に対し、台湾は域内の企業関係者や研究者を派遣し、関係構築を支援している。「官民が手を組む形での外交政策における関係構築だ。新たな発展の機会になる」と龔氏は語った。米欧諸国はサプライチェーンの安定と信頼の確保に関心を寄せており、人材の相互派遣の継続や共同研究が必要だとの認識を高めている。「こうしたプロセスで築かれた関係は一段と緊密になる」というのが龔氏の持論だ。台湾は中・東欧諸国に注目している

     

    中・東欧は、半導体産業の空白地である。とりわけ、バルト三国は台湾との提携による半導体育成に大きな関心を寄せている。

     

    (5)「龔氏が2021年の終わりに企業の代表団とともに中・東欧を訪問した後、リトアニアにおける電動バスの生産計画をはじめ、複数の共同プロジェクトについての協議が進められているという。リトアニア、チェコ、スロバキアといった中・東欧諸国は台湾の強みである半導体に関心を示している。台湾は、こうした国々と台湾の研究所同士のパートナーシップの構築も視野に入れる。その試みのなかで新技術を手がける企業が生まれれば、台湾が1月に発表した2億ドル(約230億円)の基金と10億ドルの融資枠を利用して支援する方針だ。蔡氏は次の一手として、欧州との関係をより広い範囲で強化する計画を打ち出した。これは龔氏が、これからの半年の間に具体的な方策を検討していくことになっている」

     

    台湾は、2億ドルの基金と10億ドルの融資枠を用意して、半導体工業立上げを支援する意向を見せている。リトアニアは現在、台湾の代表事務所の名称をめぐって対立している。リトアニアは、一歩も引かない姿勢である。

     

     

     

     

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