勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済

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    最先端半導体(3~4ナノ)生産が遅れている。原因は製造設備の供給遅延だが、従来型半導体不足の影響とされている。従来型半導体の供給遅延が、最先端半導体の製造設備供給を遅らせるという悪循環だ。

     

    1ナノメートルとは、10億分の1つまり、0.000 000 001メートルという気の遠くなるような超超微細の単位である。ここまで「極細」にした半導体がなければ、高性能コンピューティング、人工知能(AI)、自動運転車といった最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍りかねないと懸念される。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月10日付)は、「先端半導体に広がる供給不足、製造装置納入に遅れ」と題する記事を掲載した。

     

    2年にわたる世界的な半導体不足が、次世代スマートフォンやアプリを支えるデータセンターに欠かせない先端半導体の分野にも広がってきた。先端半導体はこれまで、自動車や電子製品を直撃した世界的な半導体不足の影響を概ね免れてきた。ところが、ここにきて生産障害や製造装置の不足といった問題に直面しており、世界のトップ2社が顧客への納期を確実に守れるのか懸念が生じている。

     

    (1)「こうした影響は来年にも電子製品のサプライチェーン(供給網)に波及する可能性があり、あるアナリストは2024年以降に先端半導体が最大で20%不足する恐れがあると警告している。先端半導体の供給が脅かされれば、高性能コンピューティング、人工知能(AI)、自動運転車といった最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍りかねないとの指摘が出ている。世界で最先端半導体の製造能力を備えているのが、台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の2社に限られることも、問題の一因となっている。コストの高さや技術的な障害が2強集中の構図を生んだ背景にある。両社とも向こう数カ月にわたる野心的な計画を掲げている」

     


    最先端半導体の生産シェアは、TSMCが92%、サムスンが8%であり、TSMCが圧倒的な強みを発揮している。最先端半導体が、2024年以降に最大で20%不足する恐れがあるという。これによって、最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍る恐れが出てきた。

     

     

    (2)「半導体ファウンドリー(受託生産)で世界最大手であるTSMCは、製造装置の入手に手間取っており、2023~24年に期待しているほど生産ペースを引き上げることができないかもしれないと顧客の一部に通知した。内情に詳しい関係筋が明らかにした。製造装置の納入は足元で想定以上に遅れている。新規受注のリードタイム(発注から納品までの期間)は、従来型半導体の不足が主因となって23年に延びているケースもある」

     

    最先端半導体製造装置の大手メーカーは、オランダのASMLホールディングである。日本メーカーは、技術競争力の面で最先端半導体設備から脱落した。最先端半導体設備の製造では、従来型半導体を使っている。これが供給不足に陥っており、2~3年納品が遅れている。

     


    (3)「技術的な問題も立ちはだかっている。サムスン電子のファウンドリー部門では、4ナノ工程の歩留まり(欠陥のない合格品の割合)改善ペースが想定を下回っており、生産能力に制約が生じているという。ただ、TSMCとサムスンは供給障害を回避するための取り組みで前進していると話している。TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は4月、アナリストとの電話会議で最新の3ナノチップの生産について聞かれ、製造機械の納入で問題が生じているが、問題に対処していると述べていた。サムスンのファウンドリー事業幹部、カン・ムンスー氏は先月、アナリストとの電話会議で、4ナノ工程の歩留まり改善が遅れたが、「想定される改善カーブに戻っている」と説明した」

     

    サムスンは、4ナノチップの歩留まりが良くないこと。TSMCは、製造機械の納入遅れで最新の3ナノチップ生産が軌道に乗らないことを明らかにした。

     


    (4)「先端半導体メーカーが増産に向けて見込んでいる設備投資額と、半導体製造装置業界の売上高見通しには隔たりがある。業界団体SEMIによると、半導体製造装置の世界売上高は今年およそ1070億ドル(約14兆3400億円)に達すると見込まれている。製造装置は半導体工場の新規建設コストの大半を占める。それに対し、コンサルティング会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズ(IBS)では、半導体メーカーの設備投資予算は1800億ドルに達すると予想している」

     

    半導体製造装置の世界売上高は、今年およそ1070億ドルを見込む。半導体メーカーの設備投資予算は1800億ドルである。この差の730億ドルは、製造設備の供給遅延になる。実に、4割にも相当する製造設備納品の遅延が起こる計算だ。

     

    (5)「IBSのハンデル・ジョーンズCEOは、最も進んだ3ナノ、2ナノ半導体の生産について、旺盛な需要と設備不足による影響が非常に大きくなると指摘する。同分野では2024~25年に推定10~20%の供給不足が生じるリスクがあるという。米インテルはファウンドリー事業の構築を目指しているが、計画はなお初期段階にあり、またサムスンやTSMCの代役を務めるにはまだ道のりが遠そうだ」

     

    最も進んだ3ナノ、2ナノ半導体は、24~25年に10~20%の供給不足が起きる懸念もあるという。世界でTSMCとサムスンしか製造できない以上、穴埋めできるメーカーが存在しないのだ。

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    中国では、ウクライナ軍の頑強な抵抗ぶりに衝撃が走っているという。中国人民解放軍にとって、ロシア軍はまさに仰ぎ見る存在だった。それだけでない。ロシアは、中国にとって最大の武器供給国である。その最新鋭武器を擁するロシア軍が、ウクライナ侵攻で大きく躓いたのである。中国は、台湾侵攻を最大の政治案件にしている。失敗すれば、中国共産党の屋台が傾ぐ。慎重にならざるを得まい。

     

    ウクライナ軍の強靱な戦いは、コサック兵の歴史を受け継いでいることと、NATO(北大西洋条約機構)軍から、近代戦を学んだ成果が出ていることだ。単に,武器の量という問題ではない。兵士一人一人が、命令に従った一律の戦い方を超越した戦いを習得した結果である。ロシア陸軍は、冷戦時代と全く変わらない「旧式戦法」とされる。この差が、戦果に出ていると専門家は評価している。中国軍は、米軍に訓練されている台湾軍とどう向き合うのか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月19日付)は、「中国、台湾攻略のシナリオ練り直し ウクライナ長期化で」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が、台湾攻略のシナリオ練り直しを迫られている。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を受け、従来の想定よりも中心都市台北の制圧は困難との認識が広がっているためだ。当面は台湾の「独立派」を封じ込め、米軍の介入を抑止するための核戦力増強に注力することになりそうだ。

     

    (1)「ベテラン共産党員は、「仰ぎ見てきたロシア軍が苦戦している現状は党内にも大きな衝撃を与えている」と打ち明ける。ロシア軍は2月24日、隣国ウクライナに北部、南部、東部の3方面から侵攻した。ロシアのプーチン大統領は情報機関の楽観シナリオを信じ、数日間で首都キーウ(キエフ)を制圧、ゼレンスキー政権を転覆させる短期決着を思い描いていたとされる。実際にはウクライナ側は各地で激しく抵抗し、北部ではキーウへの進軍を図ったロシア軍を押し戻すことに成功した。ロシア軍は東部・南部の制圧へと作戦の切り替えを余儀なくされている」

     


    中国軍が、ロシア軍を先生役にしてきたという。この一言で、中国軍もロシア軍と同様に、伝統的な戦術に従っているのだろう。これでは、米軍仕込みの台湾軍に差を付けられて当然だ。

     

    (2)「中国の軍事関係筋の話や日本の安全保障の専門家の分析をまとめると、中国の台湾侵攻計画もまた短期決着を想定して練り上げられてきた。まずサイバー攻撃で通信インフラなどを機能不全にし、短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルで防空システムや空軍基地を破壊し無力化を狙う。制空権を確保したうえで海と空から兵員や戦略物資を大量に送り込むというものだ。台湾から約600キロメートル離れた沖縄本島には、在日米軍が駐留する。中国の軍事関係筋は、侵攻時に米国が国内手続きを終えて軍を台湾に送るまでに必要な期間を「7日間程度」と見積もる。米軍到着前に台北を落とすことが作戦の成否を握る」

     

    この台湾侵攻作戦計画を読んで、台湾軍に支援国がつくという想定がゼロであることに驚く。台湾海峡や南シナ海、東シナ海には、日米海軍の潜水艦部隊が常時、警戒体制を敷いていることを忘れているのだ。この程度の荒い作戦計画では、ロシア軍のウクライナ侵攻失敗の二の舞いは不可避である。

     

    (3)「中国人民解放軍OBによると、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化で、このシナリオに「黄信号」がともっているという。軍内の認識が特に新たになったのが、台北攻略の難しさだ。台北市の人口は約260万人とキーウ(約290万人)とほぼ同規模だ。しかし、台北市の人口密度はキーウの3倍近い。そのうえ台北市をドーナツ状に取り囲む新北市には約400万人が暮らす。上陸作戦がうまくいったとしても、台北市内への進軍で相当数の民間人が巻き添えとなるのは避けられない」

     

    インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)や、「AUKUS」(米英豪:軍事同盟)が、中国の台湾侵攻の前に立ちはだかることは当然のこと。中国は、これを全く想定せず、中台の単独戦争を想定している。こんなことはあり得ないのだ。先ず、中国軍の台湾上陸作戦自体が,大損害を招くことになろう。前述の潜水艦部隊の活躍により、中国艦船は大被害を受けるからだ。

     


    (4)「民間人の犠牲を抑えようと、慎重に攻撃を進めれば米軍の到着を許してしまう。台湾軍や市民の抵抗を排除しながら蔡英文(ツァイ・インウェン)総統を捕らえる「斬首作戦」の実行はさらに難しい。台湾海峡は幅にして百数十キロメートルもあるうえに、潮流が速い。海峡を渡って上陸する作戦に適した時期は4、10月などの2、3ヵ月しかない。台湾軍も巡航ミサイルや地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)などの配備を急ピッチで進めている。ウクライナ危機を契機に、「海峡を越える難しさが改めて認識されるようになった」(解放軍OB)」

     

     

    下線部は、これまで自衛隊経験者が口を酸っぱくして指摘してきところだ。中国は,今になってこれに気付いたとは「ツー・レート」(遅すぎる)である。この程度の知識で、台湾侵攻作戦を練って来たとすれば、特攻隊と同じ「自殺行為」を意味する。

     

     

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    中国は、2月4日の中ロ「共同声明」でNATO(北大西洋条約機構)への警戒と、台湾統一を認め合った。この抽象的エールの交換が、中国にとっては大きなマイナスをもたらしている。中国は、ロシアのウクライナ侵略を間接的に支持したことになると同時に、台湾市民に「第二のウクライナ」にならない強い決意を持たせたからだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムス』(3月9日付)は、「『ウクライナの次は台湾かも』、中国に身構える市民」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナに侵攻するまで、ウー・ハオチンさんは対戦車ミサイル「ジャベリン」のことなど聞いたこともなかった。それが今、市街戦でのその威力について友人たちと話し、台湾は予備役に使い方を訓練すべきだと言うようになっている。「台湾はとても平和なので、戦争のことなど考えていなかった。でも、ウクライナでの戦闘をニュースで見て、これはここでも起こり得ることだとわかり始めた」と経済学を専攻する22歳の学生のウーさんは話した。

     


    (1)「『ウクライナの人々は勇敢に祖国を守っている。私たちも、中国が攻めてきたら同じことをしなければならないかもしれないが、まだ準備ができていない』 ロシアのウクライナ侵攻は台湾への警鐘となっている。台湾は自国の領土であるとする中国共産党が、武力統一の警告を行動に移す可能性があるという意識が高まっている。「ウクライナ危機は、この脅威が現実的なものであることを私たちに思い起こさせている。多くの人がにわかに自衛への意識を高め始めた」と話すのは法学教授で、2021年に一般市民を対象に戦闘と抵抗の意志を強めることについて教える団体を創立したホー・チェンフイ氏だ」

     

    台湾市民にとって、ウクライナ戦争は他人事でない。明日の我が身になるリスクという認識が高まった。中国にとっては,予期せぬ出来事だ。

     


    (2)「元特殊部隊の士官で、防衛関連や災害対応について8000人以上を訓練してきたイーノック・ウー氏も、市民の関心が一気に高まったと指摘する。「私たちは5月か6月にレジリエンス(回復力)に関する連続セミナーを始める予定だったが、全てを今週末に繰り上げることにした」と同氏は話した。「発表から1時間で予約が完全に埋まった」。台湾の当局者らは、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は戦わずに台湾の支配権を握りたい考えだとみている。だが、中国の武力行使する危険は高まっているという。中国に支配されることへの台湾の反発姿勢を政治的・経済的圧力では崩すことはできないと、中国側が認識するに至ったからだという」

     

    ウクライナ戦争を機に、台湾市民の防衛セミナー参加意識がぐっと高まっている。ウクライナ市民は、自主的に銃をとってロシア軍へ抵抗する姿勢を見せている。台湾市民にとっては、またとない手本である。

     


    (3)「中国は、台湾周辺の空と海での軍事活動で圧力を強めているが、その脅威に対する懸念の兆候は最近まではほとんどなかった。直近の意識調査でも、台湾市民の半数以上が戦争にはなりそうにないと考えていた。「台湾人は、欧米諸国がウクライナに食料や武器を送るだけで、人員は派遣しないのを目の当たりにしている。これまで台湾人が想像していなかったことだ」と淡江大学国際戦略研究所の黄介正教授は言う。「人々は、米軍がそばにいる限り、安全だと思っていた」

     

    台湾市民は、米軍へ大きく依存してきた。むろん、現実の戦争になれば、「クアッド」(日米豪印)や「AUKUS」(米英豪:軍事同盟)が出動して、中国軍と戦う準備が進んでいる。だが、先ず台湾市民によって台湾を防衛するのが基本である。

     

    (4)「米国は台湾の防衛を支援すると約束しているが、米軍が戦争に直接介入するかどうかについては曖昧な文言になっている。「今では多くの人が『今日のウクライナは明日の台湾』と言っている」。台湾の最大野党・国民党の国際問題部局の責任者も務める黄教授は付け加えた。「最初に香港、それから米国のアフガニスタン撤退、そして今はこの事態だ。これらの影響で多大な不安が積み重なり、水面下でくすぶっている」と指摘する」

     

    下線部は、重要である。国民党は、これまで中国共産党へ親近感を見せてきた。それだけに、中国からの侵攻を受ければ、最初に「白旗」を掲げ中国軍へ協力しかねない「危ない」存在と見られている。その国民党が、台湾人のアイデンティティを賭けて戦う意志を見せる。本当だとすれば、大きな変化だ。

     


    (5)「台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は戦争に関する議論を避け、ウクライナ紛争についても不安をあおるような発言はしていない。高官らによると、あからさまに防衛強化を急ごうとすれば、挑発的な戦闘準備と中国側に受け止められかねないことが理由に絡んでいる。米ホワイトハウスは先週、支援の証しとしてマイケル・マレン元米統合参謀本部議長率いる代表団を台北に派遣した。台湾の防衛強化を急ぎ、より踏み込む必要性について水面下で協議したとみられる。「私はマレン氏に、この問題に真剣に取り組める絶好の機会だと話した」と黄教授は話した」

     

    米国は、ウクライナ侵攻で台湾が動揺しないように、マイケル・マレン元米統合参謀本部議長率いる代表団を台湾へ送った。万一の際に米軍が取る対応策を示したに違いない。

     


    (6)「中国の人民解放軍は台湾海峡を越えなければならないため、台湾をめぐる戦争の遂行は全く異なるものとなるが、ウクライナ紛争は教訓をもたらしている。「ロシアが空挺(くうてい)部隊の投入にてこずっていることは、防空体制を維持することの重要性を示している」と台湾国防部のシンクタンク、国防安全研究院の許智翔研究員は指摘する。「我々の防空体制はパトリオットミサイルのような大規模なシステムを備える米国をモデルにしている。しかし、米国のような制空権の優位性はないかもしれない。ウクライナの状況から、人が持ち運べる地対空ミサイル『スティンガー』や対戦車ミサイルのジャベリンなど、小型の携帯式システムの有用性を見て取れる」」

     

    ウクライナ国民の戦いぶりは、台湾市民にとってひな形になる。どんなことがあっても、制空権を中国軍に奪われないことだ。これが、勝利への最後の道であることを示唆している。

     

     

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    中国が、「戦狼外交」で威張り散らしている間に、EUの対中国観は一変した。EUの大国・ドイツは、これまでメルケル首相の「親中政策」でEUを牽引してきた。そのメルケル氏の退任で,中国を応援する国はなくなった。

     

    EUは、代わって台湾へ熱い眼差しを向けている。台湾は、半導体生産で世界トップを行く。民主政治でありながら、中国から軍事的に威嚇されている。こういう台湾に対して、EUは「中国より台湾」というムードが高まってきたのだ。中国にとっては、思っても見なかった事態が展開している。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(11月17日付)は、「中国の怒りを買おうとも EUの台湾への急接近は 経済的にも合理的な判断だ」と題する記事を掲載した。

     

    去る11月3日、欧州議会の公式代表団が史上初めて台湾に足を踏み入れた。欧州議会の「外国の干渉に関する特別委員会」の面々は台湾に3日間滞在し、総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)や行政院長(首相)の蘇貞昌(スー・チェンチャン)、立法府(立法院)を代表する游錫堃(ヨウ・シークン)らとの協議に臨んだ。

     


    (1)「10月末にも、やはり史上初めて台湾外交部長(外相)の呉釗燮(ウー・チャオシエ)がブリュッセルで、9カ国を代表する欧州議会議員や複数のEU本部当局者(個人名や肩書は公表されていない)と「非政治的レベル」の協議をしている。こうした相互訪問は前例のないもので、欧州の台湾政策における大きな変化を示唆している。これまで欧州議会や加盟国の一部が主張してきた路線を、欧州委員会や(加盟国全体の外交政策などを調整する)欧州対外行動庁も支持するようになってきた」

     

    EUと台湾の交流が、軌道に乗り始めた。経済面での協力関係がスタートする。EUと中国の包括的投資協定の批准が棚上げされる一方で、EUと台湾の投資問題が取り上げられる雰囲気になっている。

     

    (2)「その背景には、民主主義の友邦である台湾を支えるためなら政治的にも経済的にも投資を惜しまないという欧州側の意思がある。それは経済的な利益にもなり、台湾海峡の現状を守り平和を保つことにも役立つ。台湾にも欧州にも攻撃的な姿勢を強める中国に対し、ひるまず剛速球を投げ返す姿勢だ。10月には欧州議会が、台湾との関係を強化し「包括的かつ強化されたパートナーシップ」の確立を求める決議を採択している。そこにはEUと台湾の投資協定や、各種の国際機関で台湾が果たす役割を強化することへの支持、科学や文化、人材面での交流の拡大、メディア・医療・ハイテクなどの分野での協力推進などが含まれる

     

    中国が、EUと台湾と対立している間に、これら両者は幅広い協定を結ぼうとしている。中国は、威張り散らしている間に、果実を台湾にとられてしまった感じだ。

     


    (3)「さらに注目すべきは、長年にわたり中国政府の怒りを買うことを懸念して台湾との関係強化に消極的だった欧州委員会や欧州対外行動庁が、この決議に賛同したことだ。外相に当たる外交安全保障上級代表のジョセップ・ボレルもマルグレーテ・ベステア上級副委員長(競争政策担当)も支持に回った。これは欧州議会における親台勢力、とりわけドイツ選出のラインハルト・ビュティコファー議員らにとって目覚ましい勝利だ。中国政府は激しく反発するだろうが、彼らの提案は伝統的な「一つの中国」政策の枠組みを全く崩していない。台湾の独立を支持しているわけではなく、むしろ台湾海峡の現状の維持を唱えている」

     

    欧州でいう「一つの中国」は、本土と台湾の「共存」である。本土が台湾を威嚇することは、「一つの中国」の精神に反するという見方だ。欧州は、この見解に立って台湾海峡の現状維持に務めなければならない、という論理の展開をする。中国は見事に一本、EUにとられた感じだ。

     

    (4)「欧州議会の採択した決議の内容は全て、従来の「一つの中国」政策の範囲内に収まる。要は今までの解釈が狭すぎただけだ。ビュティコファー議員は2020年9月に同僚議員や有識者と連名で発表した寄稿で、欧州が「一つの中国」を支持すべき理由をこう述べている。今は中国政府が「新たな台湾政策を通じて、現状の維持を極めて危うくしている」が、だからこそ「欧州諸国は従来の台湾政策を変え、(台湾海峡の)現状維持に努めなければならない」と。ビュティコファーらに言わせると、台湾はこの数十年で「開かれた複数政党制の統治形態へと進化し、個人の尊厳を重んじる」民主主義の友邦となった。だから欧州の支持・支援を得るに値する」

     

    EUは、台湾が民主主義の友邦であるという認識である。中国にとっては,痛いところだ。今回の中国「歴史決議」では、中国が欧米民主主義を採用しないと宣言している。これでは、EUと台湾の密着を非難する根拠がなく、自ら漂流する道を選んだに等しい。

     

    (5)「実は経済的な理由もある。台湾の人口は2400万、市場として小さくはない。それにハイテク産業の基盤があるから、協力すれば経済的にも科学的にも双方に利がある。いい例が台湾積体電路製造(TSMC)だ。この会社は半導体の世界生産の半分以上を占めている。だからこそEU幹部のボレルもベステアも、台湾は「欧州半導体法の目標達成にとって重要なパートナー」だと言っている。この法律は半導体の設計から製造に至る全過程(バリューチェーン)で欧州勢のシェア拡大を目指している」

     

    EUにとって台湾の存在は、半導体製造において願ったり叶ったりである。台湾は、EUにとって半導体の重要パートナーになる。

     

    (6)「皮肉なもので、欧州の台湾接近を主張するビュティコファー議員に共鳴する仲間が増えたのは、中国政府のおかげでもある。中国のこれまでにない攻撃的な姿勢こそが、欧州各国にビュティコファー議員の望むアプローチを支持させた最大の要因だ。例えば中国が香港における「法の支配」を踏みにじったこと。あれを見れば、台湾に「一国二制度」が適用されるとは思えなくなる。今では多くの政治家が、こう考えている。もしも台湾海峡の現状を変えるために武力を行使すれば欧州との政治的・経済的な関係は壊滅的な打撃を受けるぞ、と中国に警告し、軽率な行動を慎むようクギを刺す必要がある、と。一方で最近の中国政府は欧州に対し、これまでになく敵対的な姿勢を見せている。こうなるとEUとしても台湾支援を急がざるを得ない

     

    EUの中には、中国に対して台湾海峡の現状変更に反対する旨を警告すべき、という議論を生んでいる。下線部は、従来見られなかったEUの姿勢である。

     

    (7)「この先に必要なのは、欧州議会の決議を支持するよう加盟各国に働き掛けること。そして仮に中国が台湾に攻撃を仕掛けた場合には団結して強力に対応する用意があると表明することだ。既に中東欧の一部加盟国は台湾政策を大きく転換している。この動きに、欧州の諸大国も続くべきだ。中国寄りだったアンゲラ・メルケル首相が去り、新たな枠組みの連立政権が誕生するドイツには、主導的な役割を果たすチャンスがある。連立協議中の3党は全て、台湾との関係拡大を公約している

     

    ドイツの次期政権を担う3党は、台湾との関係強化を公約している。ドイツの「親台姿勢」は、中国にとってショックであろう。

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    中国は、米英豪3ヶ国による「AUKUS戦略」で、米英が豪州に原潜技術を供与すると発表した翌日深夜、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟を申入れた。中国としては、豪州が原潜を建艦するショックの大きさの余りに、TPPへ加盟申請して米国を困らせようという意図である。

     

    中国自身、TPP加盟条件を全く満たしていないにもかかわらず、「やけのやんぱち」という行動に出て来た。台湾も中国申請を追いかけるような形でTPPへ加盟申請した。この中台の「加盟競争」でどちらが最後に勝利を握るか。

     


    『大紀元』(9月24日付)は、「台湾と中国のTPP加盟申請、それぞれの勝算は」と題する記事を掲載した。筆者は、王赫氏である。

     

    台湾は9月22日、TPPへの加入を正式に申請したと発表した。これに先立ち、中国は16日に同協定への加盟を正式に申請したばかりだ。今回、中台双方がTPPへの加盟を申請したことで、加盟に向けた支持の獲得をめぐり、双方の競争が激しくなる可能性がある。

     

    (1)「長年にわたり、中国は自由貿易地域戦略を推進し、その名を借りて台湾を締め出してきた。台湾の二国間または多国間自由貿易協定(FTA)への参加を全力で阻止する中国の目的は、台湾当局に「92年コンセンサス(九二共識)」を認めさせることだ。当然ながら、今回の台湾TPP加盟への申請に対しても「一つの中国」原則に基づき、「公的な性格を持つ協定や組織への台湾参加に断固反対する」との姿勢を示している。

     

    中国が、台湾の加盟阻止の切り札にするのは「一つの中国論」である。だが、この点はクリアできる。台湾が、「中華民国」の名義で申請しているのでなく、「台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税区」の名義で申請していることだ。WTOも、この「関税区」の資格で加盟した。

     

    (2)「中国の加入申請の障害は2つある。1つは、TPPが目下最高水準のFTAであるため、加盟のハードルが非常に高いことだ。TPPが中国のために基準を下げる可能性は低く、中国がその基準に従って是正するとなれば、それは世界貿易機関(WTO)加盟時と同様の巨大なプロジェクトとなる。そのうえ、出来もしない約束をするトリックはすでに看破されているため、同じトリックを使うのはもはや難しい」

     

    中国は、「口約束」が得意である。IMF(国際通貨基金)で人民元をSDRに昇格させる際に「人民元の自由変動相場制移行・資本取引自由化の早期実現」を約束したがそのまま。WTO加盟の際も、補助金制度の撤廃を約束したが空約束に終わっている。罰則規定がないので、どうにもならないのだ。TPP加盟では、空約束の厳禁でまず制度改革を実行させることだ。三度も騙されてはならない。

     


    (3)「もう1つの障害は、TPPへの加盟には全加盟国の同意が必要となるという点だ。カナダやオーストラリア、日本などの既存の加盟国と中国の関係は悪化しているため、中国が関係を緩和させようとすれば、その「戦狼外交」を引っ込ませなければならない。しかし、「新時代の到来」「強国になった」などと吹聴する中国にとっては、それは容易なことではない」

     

    中国の戦狼外交は、先進国を等しく怒らせている。日本・カナダ・豪州は怒り心頭である。意地でも加盟させない、という気持ちにさせた中国の責任は重い。

     

    (4)「米経済通信社『ブルームバーグ』は最近、中国のTPP参加に関する今後のシナリオとして、4つの可能性が想定できると分析した。

    1)TPP加盟国による中国加入の拒否
    2)加入プロセスが開始されても、23年で交渉が行き詰まる
    3)中国が基準を下げるよう他国を説得
    4)中国が(国内経済の)構造改革を行った後に加入

    現状では、2番目のシナリオになる可能性が最も高いと考えられる」

     


    1)は、角が立つので先ず2)で交渉開始して制度改正を迫る。中国は例によって、なんだかんだと理屈をつけても、条件を整備して「また、いらっしゃい」で終わらせればいいだろう。それだけのことである。加盟資格のない中国へ気を配る必要はない。

     

    (5)「台湾にとって不利な点は、台湾国内の政治紛争である。TPP加入にあたってはいくつかの譲歩(農業や自動車産業の関税引き下げ、日本の東京電力福島第一原発事故に伴う5県産の食品の受け入れなど)が必要となるため、政治的困難を克服しなければならない。もう1つの不利な点は、中国からの干渉である。TPPの11加盟国はいずれも中国と外交関係を樹立している。中国はこの政治的優位性と自国の経済上での強みを利用して台湾の加盟阻止に乗り出し、さらなる圧力をかけるだろう」

     

    台湾は、国内の反対派をどう説得するかである。加盟条件を全て満たせば、それで済むことだ。中国の主張する「一つの中国論」は、台湾加盟阻止の理由にはならない。WTO加盟で証明済みである。

     


    (6)「台湾加盟における有利・不利の条件を合わせて考えても、筆者は台湾の加盟の可能性は残されていると考えている。しかし、それを実現するには、台湾当局と国民が以下の方向で努力しなければならない。

    1)国内が一致団結して共通の認識を高め、中国による分裂、扇動、嫌がらせなどに抵抗すること。

    2)TPP加盟国とのコミュニケーションを強化し、共通の価値観に基づいて日本、オーストラリア、英国、米国、欧州などとさらなる協議を進めて国際情勢を追い風にしていくこと。要するに、「天は自ら助くる者を助く」の一言に尽きる」

     

    米国が、TPPへ復帰すれば台湾加盟はスムースに行くはず。米国が、インド太平洋戦略の重要性という認識からTPPへ復帰すれば、問題は全て氷解するのだ。そういう大乗的な見地に立つべきである。

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