異常な暑さは、人間社会に何を訴えているのか。「母なる」海は、大気の上昇を食止めるべく二酸化炭素を吸収してきたが、ついにその限界を超えようとしている。海水温度が、史上最高を更新しているのは、海洋の吸収力に危険信号を出している。
『BBC』(8月5日付)は、「海水温が史上最高を更新、地球環境に厳しい影響」と題する記事を掲載した。
欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、地球の平均海水温は今週、2016年の最高記録を破り、20.96度に達した。この季節の平均をはるかに超えている。海洋は気候を調整するうえで、不可欠な役割を担っている。熱を吸収し、地球の酸素(O2)の半分を生成し、気象パターンを作り出している。
(1)「海水温が上昇すると、二酸化炭素(CO2)の吸収力が下がるため、大気中に温暖化ガスがより多くとどまることになる。氷河の溶解にもつながり、さらに海面が上昇する。熱くなった海洋と熱波が、魚やクジラといった海洋生物の行動を変化させる。こうした生物が冷たい水を求めて移動すると、食物連鎖が乱れる。専門家らは、漁獲量に影響が出ると警告している。高い温度に混乱したサメなどの捕食生物が攻撃的になる可能性もある」
下線部のような現象が韓国で起っている。この50年で、韓国周辺海域の表層水温が約1.35度上昇し亜熱帯性海域に現れるサメが出現している。浦項海洋警察によると、7月9日午後1時ごろに釣り船の船長からサメを目撃したという通報が寄せられた。船長は浦項北西約3.7キロメートル沖で体長2~3メートルのサメが船舶の周囲を泳ぐ様子を撮影、浦項派出所に提供したもの。
(2)「米海洋大気庁(NOAA)でメキシコ湾の海洋熱波を観測しているキャスリン・レスネスキ博士は、「海に飛び込むとまるでお風呂のようだ」と語った。「フロリダの浅いサンゴ礁ではサンゴの白化が広がり、すでに多くのサンゴが死滅している」。英プリマス海洋研究所のマット・フロスト博士は、「我々は海洋に、歴史上かつてないほどのストレスを与えている」と述べ、海洋汚染や乱獲などの影響にも触れた」
メキシコ湾は、お風呂のように熱くなっている。サンゴが死滅しているのだ。
(3)「科学者たちは、今回記録が破られたタイミングについて懸念を示している。コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス博士は、海洋が最も暖かくなるのは8月ではなく3月のはずだと指摘する。「今この記録が出たことで、来年3月までにどれだけ海洋が温まるのか不安になっている」と、バージェス博士は語った。英スコットランド海洋科学協会でスコットランド海を観測しているマイク・バローズ教授も、「変化がこれほど急速に起きているのを見ると、気が重くなる」と述べた」
海洋が最も暖かくなるのは8月ではなく3月という。となれば、来年3月の海温はさらに上がるはずだ。
(4)「科学者たちは、なぜ今、海が熱くなっているのかを調査しているものの、海は気候変動によって温暖化し、温室効果ガスの排出による熱の大部分を吸収していると指摘する。「人間が化石燃料を燃やすほど、余剰の熱が海に吸収されるため、海が安定化して戻の状態になるのに時間がかかる」と、バージェス博士は説明した」
大気中の温室効果ガスが増えれば、余剰の熱を海が吸収するのでそれだけ熱くなる。これが、海水温度上昇のメカニズムである。根本は、温室効果ガスの削減しか方法はない。
(5)「海水温の記録更新の前には、イギリス沿岸や北大西洋、地中海、メキシコ湾などで多数の海洋熱波が見られた。バローズ教授は、「我々が目にしている海洋熱波は、予想もしていなかった珍しい場所で起こっている」と述べた。英気象庁と欧州宇宙機関(ESA)によると、イギリスの領海では今年6月、海水温が平均より3~5度高かった。米フロリダでは先週、海面の温度が38.44度と、大浴場並みだった。NOAAによると、通常であれば海水温は23~31度だという」
北太平洋ではなぜ、海水温が5度も高くなっているのか。これは、大西洋の広範囲にわたって循環する海流に異変が起っている結果である。大西洋循環システムは、事実上、世界で最も強力な海流のひとつである。南極海からグリーンランドまで往復し、アフリカの南西海岸、米国南東部、欧州西部の間を行き来して、何万キロもの距離を流れている。この大西洋循環システムが、大気温上昇で「狂い」を生じさせている。
(6)「大気温はここ数年で劇的に上昇している。一方で海は、温室効果ガス排出の90%を吸収しているにもかかわらず、温まるまでに時間がかかる。しかし、海水温の上昇も、気温に追い付いてきているようだ。海の深くに貯めこまれていた大量の熱が、恐らくエルニーニョ現象との関係で表面へと上がってきているという説も出ていると、メルカトル・オーシャン・インターナショナルのカリーナ・フォン・シュックマン博士は話した。科学者たちは、温室効果ガスの排出によって海面が温暖化し続けることは知っていたが、なぜ海水温が例年を大きく上回ったのか、その正確な理由を調査中だ」
海は、温室効果ガス排出の90%を吸収している。ただ、温まるまでに時間がかかる。最近の海水温上昇は、その吸収余力が減ってきていることを示している。エルニーニョ現象とは、南アメリカ西岸沖で暖かい海水が海面まで上昇し、世界の気温を押し上げることだ。これが、最近の海水温急上昇の裏で影響しているとも見られるという。