イラン戦争による原油輸入の途絶は、韓国経済へ甚大な影響を与えている。韓国の輸出企業の30%が操業停止の危機に怯えている。これは、韓国経済の基盤が極めて脆弱構造であることの証明でもある。日本と比べて、気の毒になるほどの大揺れだ。
理由は次の点にある。原油輸入が、安定的な長期契約でないこと。中国から部材を輸入し、加工し輸出していること。海運会社の規模が小さく、海上輸送で問題が起こっていること、などだ。日本とは、まったく異なる構造に直面している。日本は、ASEAN(東南アジア諸国連合)でサプライチェーンを完結させる盤石な構造である。
『ハンギョレ新聞』(5月3日付)は、「中東戦争の余波…韓国の輸出企業の30%が『操業停止・契約破棄の危機』」と題する記事を掲載した。
韓国の輸出企業の30%が、イランの戦争の影響で操業停止の危機に陥っている。契約破棄を余儀なくされるなど、深刻な被害を受けている。特に、中小企業の被害規模がより深刻であることが調査で明らかになった。
(1)「韓国輸出入銀行は、輸出企業505社(大企業51社、中小企業454社)を対象にした中東戦争の影響に関する調査結果を3日に発表した。調査期間は今年4月1日から10日までだ。現在、中東戦争が企業経営に与える影響について、10.5%が「非常に深刻」、19.0%が「深刻」な状況だと回答した。「非常に深刻」は巨額の金銭的損失や操業停止の危機を指し、「深刻」は売上減少の顕在化や契約破棄などの金銭的損失を意味する。輸出企業10社のうち3社が、戦争の直接的影響で損失を被ったと回答した」
輸出企業10社のうち3社が、戦争の直接的影響で損失を被ったのは、韓国の産業構造が、「中東依存+中国依存+海上物流依存」に偏っている結果である。海上物流依存とは注釈が必要である。韓国の海運会社が、小規模で海上運賃の大波に飲まれていることだ。この点で、日本とは大きく異なっている。日本は、日本郵船、商船三井、川崎汽船など世界一流の商船会社が揃っている。韓国には、こうした世界で通じる商船会社が存在しない。
韓国の弱小海運会社は、財務基盤の弱いので、保険・再保険の国際的信用力が劣っている。これが、海運運賃高となって荷主の負担として跳ね返っている。この点で、日本企業は、財務力強固な海運会社を擁しているのでプラスである。日本経済の総合力の恩典である。
もう一つ、韓国の輸出モデルは 「中国で部材生産 → 韓国で組立 → 中東・欧米へ輸出」 という海上輸送依存型である。ホルムズ海峡・紅海・パナマ運河が同時に混乱すると、韓国の輸出モデルはすぐに障害が起こる構造である。
(2)「コストアップなどで、圧迫されていると感じる「やや負担」と回答した人は44%に上った。一方、戦争の影響が軽微(一時的な不便で、自己対応可能)だと答えた企業は15.8%、否定的な影響は全くないと答えた企業は10.7%にすぎなかった。企業規模別に見ると、大企業の「深刻以上」の回答比率は19.6%にとどまったが、中小企業では30.6%と集計され、戦争の負の影響が中小企業により大きく表れた。産業別では、原油供給の混乱に直面している石油化学部門の「深刻以上」回答比率が58.7%で最も高く、次いで繊維類が40%、プラント・海外建設が30.3%の順で、否定的な影響が大きく表れた」
石油化学部門は、原油供給の混乱に直面して「深刻以上」が6割にも達している。これは、次の要因による。 中東原油への極端な依存の結果である。原料ナフサの大半を中東から輸入し、価格変動に弱く、供給ショックに対して「代替ルート」がないことだ。石油化学部門の深刻度は、他産業より突出している。
今回のショックは、韓国石油化学の弱点を「全部まとめて」直撃した形である。原油供給ショック、海上輸送ショック、中東市場の代金遅延、代替供給源なし、などだ。つまり、
「韓国石油化学が、韓国の最も弱い部分だけを狙い撃ちされた」 と言える構造である。
(3)「戦争による主な課題としては、「原材料価格の変動」(69.6%)が最も多く挙げられた。次いで「物流・輸送の混乱」(57.4%)、「為替急騰による収益性悪化」(32.8%)、「現地活動の縮小・中止」(15.5%)、「代金支払いの遅延」(12.2%)の順だった。特に戦争が勃発した中東へ輸出する企業は「物流・輸送の混乱」(86.7%)を最も多く回答し、「代金支払いの遅延」(56.7%)や「現地での活動の縮小・中止」(36.7%)も高い割合を示した」
イラン戦争の影響は、多方面にわたっている。原材料価格の変動を筆頭にして、物流・輸送の混乱など、韓国経済のシステム全体が脆弱であることだ。こういう韓国産業界が、TPP(環太平洋経済連携協定)へ参加するとなれば、日本産業界と「1対1」の競争になる可能性が高い。同種の産業構造であるから、韓国が劣勢であることは間違いない。




