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韓国は、TPP11(環太平洋経済パートナーシップ協定)への参加意思を固めて、いよいよ加盟交渉を始める段階に来たようである。だが、TPPの今年の事務局担当は日本であるが、日本を窓口にせずマレーシアの門を叩いた。日韓関係が冷却化している折から、敷居が高いと見えて敬遠したのであろう。

 

『ハンギョレ新聞』(4月2日付)は、「韓国政府『マレーシアに“韓国CPTPP加盟”協力と支持要請』公式化」と題する記事を掲載した。

 

通商交渉本部は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟について、マレーシア政府に協力と支持を要請した」と発表した。

 


(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と企画財政部、通商交渉本部はこの間「CPTPP加盟を積極的に検討している」と明らかにしてきたが、政府が既存のCPTPP加盟国に韓国の加盟に対する協力・支持を要請したと公式に明らかにしたのは初めて。新たに加盟を希望する国は、正式加盟要請の前に11の既存の加盟国との個別協議を経なければならない。日本(同協定の今年の議長国)、ニュージーランド(協定の寄託国)、マレーシアなどのCPTPP加盟11カ国と、すでに個別協議を進めていることを意味する」

 

韓国は、米国オバマ政権時代にTPPへ加盟するように強く要請されたが、中国に遠慮して「原加盟国」にならなかった。もう一つの理由は、日本が加盟すると聞いて腰が退けたもの。日本製自動車が輸入されれば、韓国自動車産業に大きな影響が出ることも加盟を躊躇する理由であった。

 


この韓国が、意を決してTPP加盟を決意したのは、中国もTPP加盟を口にするようになって、あえて遠慮する必要もなくなったことだ。中国のTPP加盟は、国有企業がネックで不可能である。

 

カトラー元米国通商代表部(USTR)副代表は、先ごろ「韓国は、CPTPPへの参加を考慮するのが望ましい」と述べた。韓国が先にCPTPPに加盟し、その後、米国の協定復帰を期待して待った方が、通商利益を最大化できる戦略だという見解を示したのである。『ハンギョレ新聞』(4月1日付)が報じた。韓国は、米国に背中を押された格好である。

カトラー氏は、オバマ政権時代にTPPに関わった経緯がある。そのカトラー氏の発言だけに、米国も内々でTPP復帰を検討しているのかも知れない。

 


(3)「ユ・ミョンヒ通商交渉本部長は4月1日、ソウルのロッテホテルでマレーシアのモハマド・アズミン・アリ上級大臣兼国際貿易産業大臣と会談し、両国間の通商協力策について話し合った。アズミン大臣は、両国間の貿易投資拡大、および企業誘致のため、貿易投資使節団を率いて訪韓した。この日の会談でユ本部長は、「ASEANの主要貿易協力パートナーとして、韓国のCPTPP加盟に対するマレーシア政府の協力と支持を要請した」と述べたことを政府は明らかにした。CPTPP加盟に向けた交渉を公式化し、対外的に公開したかたちだ。2月1日には英国がCPTPP加盟を協定加盟国に正式に申請している」

 

英国は、年内に手続きを済ませて正式加盟が実現すると見られる。ジョンソン首相は「英国は、CPTPPに新規加盟する最初の国としてグローバル自由貿易の先駆者となり、全世界の友好国およびパートナーと最良の関係でビジネスを展開するという我々の熱意を示すもの」と強調している。

 

(4)「韓国が加盟交渉を開始すれば、最終妥結までには数年はかかる見通しだ。現在のところは、既存の11の加盟国が韓国や英国などの加盟希望国を一つにまとめて市場開放交渉を行うのか、それとも「11対1」の個別交渉方式で進めるのかが鍵となっている。韓国としては、農水畜産物の敏感品目を含め、およそ6000(HSコードによる)の品目ごとに市場開放譲許案(関税撤廃・削減スケジュール)を準備しなければならない。一方、加盟の過程で、既存の11カ国の市場開放水準は交渉対象とはならない。CPTPPの商品自由化水準は95~100%(品目数による。関税の即時撤廃~最長で21年後に撤廃)で、新たな加盟希望国は「最も高い水準の市場アクセス(開放)提供」が義務付けられている」

 

韓国がCPTPPに加盟する際の課題として、次の諸点が指摘されている。

1)国営企業

2)環境(水産補助金)

3)衛生及び植物衛生措置(SPS)

4)知的財産権

 

前記項目をTPP基準に合わせるには数年が必要のようである。ここで、気付くのは、2)環境(水産補助金)である。福島原発を理由に、日本の海産物輸入を禁止しているが、真相は韓国水産業が補助金を出すほど輸出競争力がないことだ。放射能汚染を理由にして、東北地方の海産物輸入を止めているのは不愉快千万である。