勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 北朝鮮経済ニュース

    あじさいのたまご
       

    トランプ米大統領が13日、自身の交流サイト(SNS)に、2018年6月にシンガポールで行われた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との首脳会談時に会談場周辺を並んで散策しながら撮った写真を投稿した。トランプ大統領は、この写真に対する説明を書いていない。ただ、トランプ大統領が金委員長と並んで歩く写真を投稿したタイミングが注目される。北朝鮮との交渉へ向けた「助走」にみえる。

     

    トランプ氏は、イランの非核化に道筋をつけるという発言をした直後に、 金正恩氏との写真を投稿した 。これは明らかに 「次は北朝鮮だ」 というメッセージである。トランプ氏は外交を「取引」として扱う人物だ。「イラン・北朝鮮」という順番で、 自分の外交成果を積み上げる構図を示している。

     

    『中央日報』(6月14日付)は、「『イラン終戦』予告のトランプ大統領、突然金正恩委員長との写真を投稿」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ大統領が投稿した写真は8年前の2018年6月12日にシンガポールで開かれた初めての朝米首脳会談時に会談場所だったカペラホテルの庭を並んで散策する場面を含んでいる。


    (1)「この会談は1953年の分断協定から65年ぶりに行われた初の米国と北朝鮮首脳の会合だった。双方は会談終了後、▽韓半島(朝鮮半島)の完全な非核化▽平和体制保障▽朝米関係正常化推進▽戦死者の遺骨送還――の4項目に電撃合意した。しかし双方はシンガポールでの会談結果に対する細部履行案を合意するため2019年2月にベトナムのハノイで2度目の首脳会談を継続したが、この会談は成果なく終わり、トランプ大統領が2020年の大統領選挙で落選してこの合意は事実上無力化された」

     

    米国にとって北朝鮮の非核化は、「核ドミノ」を防ぐ意味で重要である。北朝鮮が核を持てば、韓国や日本へ波及する。それは、米国の世界覇権を揺るがすことになるからだ。

     

    (2)「その後、北朝鮮はむしろ核武力を増強し、韓国を「敵対的両国関係」と規定して対話自体を拒否している。トランプ大統領は、第2次政権発足後も金委員長に対する友好的なメッセージを繰り返してきたが、韓半島関連問題はウクライナと中東の戦争状況などに押され優先順位が下がっているとの評価を受けてきた。そうするうちに最近になり、北朝鮮問題が再度議論されるのではないかとの兆候がとらえられている。トランプ大統領は5月北京を訪問し、中国の習近平国家主席との首脳会談を終えた後に出したファクトシートで「北朝鮮の非核化という共同目標を確認した」と発表した。中国側は「韓半島問題が議論された」という表現を使ったが、双方が北朝鮮の核問題に対する議論をした点は明らかなようだ」

     

    中国には、北朝鮮の核保有が厄介な問題になることを認識している。だが、北朝鮮を中国寄りにさせる手段のないのも事実だ。この間合いに苦悩している。「体制保証」というニュアンスを出しているが、したたかな北朝鮮はこれをどう読むかだ。

     

    (3)「習主席は、トランプ大統領と会った直後の8~9日に北朝鮮の平壌(ピョンヤン)を電撃訪問した。習主席は米国と北朝鮮の関係が大きく変化する主要変曲点ができる直前に金委員長と会ってきた。ただ、習主席の訪朝後に非核化と関連した言及が出てこないことから、中国が北朝鮮の核保有を黙認しようとしているのではないかとの懸念が提起されたりもした。これに対し外交界では習主席の今回の訪朝は、「非核化をめぐる朝中間の緊迫した水面下の駆け引きの結果」だったという評価も出ている」

     

    中国が、北朝鮮の核保有について取った姿勢は、是認論と放棄論の二つに別れている。真相は、藪の中である。この動きが、米国へ伝わっているとすれば、トランプ氏の「金写真掲示」は核放棄へ向けた動きとなろう。トランプ氏が、外交力で扉を開けるというのであろう。

     

    (4)「中国と北朝鮮は結局、会談を通じて非核化に一切言及しない側で妥協を見た。ただ、習主席のトランプ大統領との会談で北朝鮮の核問題について議論した点を事実上認めた。東アジアでの「核ドミノ」を懸念する中国が、これまで堅持してきた「北朝鮮の核不容」という立場を維持しているという見方も少なくない」

     

    中国は、北朝鮮の非核化を唱えながら決定的な影響力を見いだせずにいる。トランプ氏は、この間隙をぬって、「俺ならできる」という自信を覗かせている。

     

    (5)「トランプ大統領も、金委員長との対話の可能性を閉じずにいる。彼は4月13日にホワイトハウスで韓国の金民錫(キム・ミンソク)首相と会談した際に、5月中旬の自身の訪中を契機に金委員長と会えるかに対し、「会うのは本当に良いが、それが今回中国に行く時期であるかもしれないがそうではないかもしれず、その後になるかもしれないのではないのか」という趣旨で話した」

     

    トランプ氏は、北朝鮮を中国から引き離せるとみている。米国主導で、非核化を進めるという「地政学的取引」を好む傾向があるからだ。イランの核問題が最終決着していない段階だが、「次は北朝鮮」という布石と読める。米国の国力と安全保障を背景に、北朝鮮と交渉するというスタンスである。

     

     

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    6月8日の中朝首脳会談で、習主席は「金正恩(キム・ジョンウン)総書記同志が領導する朝鮮の社会主義事業に対する確固たる支持は変わらない」と述べ、体制の保証を宣言した。これは、中国が「核保有」を認めたことを意味する。金総書記は、「両国関係は、社会主義国家間の模範とする」と宣言した。これは、両国の結束強化を意味する。

     

    経済が減速する中国と経済が弱い北朝鮮が、「思想」で結束しようとする意味である。 経済が弱くなるほど、権威主義国家はイデオロギーに依存するという特性を表わしている。東アジアの安全保障環境は、厳しくなってきた。

     

    『中央日報』(6月9日付)は、「『社会主義の模範を作ろう』…朝中首脳会談、『紅色外交』連帯強化」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席が、今年最初の海外訪問国に北朝鮮を選んだことで、中国の社会主義「紅色外交」基調が強化されているという分析が出ている。習主席は前日に掲載された労働新聞への寄稿で、金委員長の肩書を7年前の国務委員会委員長ではなく、労働党総書記に変えて呼んだ。2019年とは違い、理念的な同質性を強調した「紅色外交」(注:社会主義外交)の強化と解釈できる。

     

    (1)「北朝鮮の金正恩国務委員長も理念的な連帯を誓った。会談で金委員長は「朝中親善を最も重大な第一の戦略的事業として堅持し、両国関係を社会主義国家間の関係の模範として、変色することのない特殊で真実、かつ強固な戦略的関係へと強化・発展させるためにあらゆる努力をする」と述べたと、朝鮮中央通信が9日に報じた。金正恩体制を保証した中国に対し、朝中関係を社会主義連帯の模範にするとして応えたのだ」


    習近平氏が、金正恩氏に対して「体制保証」を明言したことは、北朝鮮の核武装を黙認し、米韓への牽制に使う意味だ。ロシアとの三角連携の強化によって、台湾有事の際の「後方基地」としての利用可能性も考え始めている。中国は、 北朝鮮を「負担」ではなく「戦略カード」として扱い始めたという意味だ。

     

    (2)「韓国外国語大学の姜埈榮(カン・ジュンヨン)教授は「2049年の中国式現代化の完成を掲げる中国が、ワシントンコンセンサスの対極として北京モデルを掲げた社会主義理念外交の戦略的パートナーとして北朝鮮を選んだ」とし「昨年4月に周辺国外交に関する指針を明らかにした工作会議以降、中国はベトナム、ラオス、カンボジアなどとの理念的連帯を本格化させている」と指摘した」

     

    中国は、ベトナム、ラオス、カンボジアを「衛星国」に仕立て上げようと画策を始めた。だが、ベトナムは中国に従う意思はない。日本や米国へ接近している。

     

    (3)「『紅色外交』とは、中国の外交官が必ず履修しなければならない必須課程であり、共産党の歴史において重要な概念だ。1930年代に中国共産党の「革命の聖地」と呼ばれた延安で始まった紅色外交は、1950年代のジュネーブ会議で当時の周恩来首相兼外相が展開した非同盟外交や、1970年代に国連加盟のために展開した多国間外交が代表的な事例として認められている」

     

    「紅色外交」とは、社会主義の正統性を強調したものだ。一党独裁が、正統であるとはとうてい思えない。だが、中国共産党ではこの危うい論理の上に成り立っている。極めて脆弱な基盤の上にあるのが、中国共産党である。

     

    (4)「中国は、今年に入り「紅色外交」を本格的に復活させる雰囲気だ。3月16日、王毅外相は王小洪公安相、董軍国防相とともにベトナムを訪問し、「3+3戦略対話」を初めて開催した。当時、王公安相は「カラー革命を防止しよう」と提案し、董国防相は「社会主義の紅色江山を死守しよう」と強調した。中国とベトナムの両国は「紅色修学旅行」の名目で1000人以上のベトナム人学生を招待し、中国の革命遺跡地の踏査を支援している」

     

    中国が、紅色外交を復活させた本当の理由はなにか。

     

    1)国内正統性の補強。経済成長減速・不動産不況・若年失業で、「経済成長による正統性」が揺らいでいるので、革命・社会主義という「赤い物語」に再び寄りかかっている。

     

    2)対米・対西側への「思想ブロック」構築。 米国陣営へ対抗する「北京モデル」として、北朝鮮・ベトナム・ラオスなどを巻き込んだ「赤い陣営」を再構成し始めている。

     

    3)安全保障上の「縛り」づくり。周辺の社会主義国家に「体制保証」「理念連帯」を与えることで、台湾有事や対米対立の際に離反しない「囲い込み」をしている。

     

    (5)「習主席は、訪朝の3日前の5日、ラオスのトーンルン・シースリット人民革命党総書記との会談で「両国は社会主義制度と共産党の執権地位を共に守るべき」と率直に語った。社会主義体制の死守を両国間の外交議題として公式化したのは中国外交において前例を見つけるのが難しいと、専門家らは評価する。ベトナム、ラオス、北朝鮮へとつながる中国の「紅色外交」基調を受け、韓国は従来の対中外交を再点検するべきという指摘が出ている。姜教授は「中国が北朝鮮の核武装を容認したのは事実上、北東アジアの安全保障秩序における現状変更に準ずる行動」とし、「中国の北核容認が北東アジアの核ドミノを呼び起こすという危険性を提起し、国際舞台で北核外交を韓国が主導しなければならない」と提案した」

     

    中国外交において、社会主義体制の死守をラオスとの間の外交議題として公式化したのは前例がないという。中国は、自国の経済疲弊で危機感を高めており、社会主義という「経文」を持ち出して来た。中国の危機感は相当、深刻なものになっていることが窺える。

     

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    韓国の国家情報院(国情院)が18日、北朝鮮軍のロシア派兵をめぐり異例にも報道資料を出して関連情報を公開した。北朝鮮特殊部隊1500人が、すでに派兵された事実と、北朝鮮軍の個人の写真まで公開した。韓国は、「前例のない脅威」に「前例のない対応」をした形だ。 

    (1)「韓国国情院は今回、「ロシア太平洋艦隊所属の揚陸艦4隻、護衛艦3隻が8日から13日にかけて北の清津(チョンジン)・咸興(ハムフン)・舞水端(ムスダン)近隣地域から特殊部隊およそ1500人をロシアのウラジオストクに1次移送するのを完了した」と明らかにした。具体的にロシア艦艇が、北朝鮮特殊部隊兵力を移送する動きに関連し、人工衛星撮影写真も公開した。外国の衛星写真提供民間会社AIRBUSが提供した写真と、政府が運用する衛星が撮影したと推定される写真など3枚を北朝鮮軍派兵の証拠として提示した。ウクライナ情報機関と協力して人工知能(AI)顔認識技術を適用した結果、北朝鮮軍ミサイル技術者を特定した」 

    韓国国情院は、北朝鮮がロシアへ特殊部隊およそ1500人を派兵したと発表した。具体的な証拠写真も添えている。

     

    (2)「特に北朝鮮軍が投入された地域や部隊名まで詳細に特定したのは、偵察資産だけでなく内部情報に直接接近したという解釈が可能だ。盗聴・傍受やヒューミント(HUMINT、人的情報資産)まで動員した結果と推定される。これは「情報は握っているほど価値が高まる」という過去の公式とは異なる接近だ。最近の情報戦で浮上する「戦略的機密解除」技法を積極的に活用したということだ」 

    北朝鮮軍が、投入された地域や部隊名まで詳細に特定されているのは、韓国情報網の力量を示したとみられる。 

    (3)「趙太庸(チョ・テヨン)国情院長も7月の国会情報委員会で「過去には軍事・安保分野の情報は絶対に外部に露出しないのが望ましいと評価されたが、最近、米国をはじめとする主要先進国では、戦略的秘密公開形態で一部を公開することで関係国家の警戒心を高める目的で使われる傾向がある」(国民の力情報委幹事の李成権議員)と説明した。一例として2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻当時、米国はロシアの地上攻撃時点まで特定の情報報告を友好国と共有し(当時、米ポリティコ報道)ロシアの動態を把握している事実を意図的に浮き彫りにした」 

    韓国情報院が、北朝鮮情報をあえて公表した理由は、米国CIAによってロシアのウクライナ侵攻情報を事前に発表した例に倣ったものだ。

     

    (4)「韓国国情院が情報資産の露出リスクまで甘受して関連情報を公開したのも、これにより得るメリットの方が大きいという判断のためと解釈される。情報力を誇示する一方、ロシアと北朝鮮に内部の「穴」を疑わせ、不安と亀裂を誘発する効果があるからだ。高麗大の南成旭(ナム・ソンウク)統一融合研究院長は、「国情院が異例にも大量の物証を公開したのは、それだけ情報の信憑性に自信を持って心理戦をしているという傍証」とし「ただ、朝ロは国際世論を眼中に置かず行動しているため、当分は『マイウェイ』の動きを見せる可能性が高い」と話した」 

    今回の韓国情報院の情報公表で、ロ朝は衝撃を受けているはずである。この件について、ロ朝が沈黙していることに表れている。事前に情報が察知され、筒抜けになっていたからだ。 

    (5)「朝ロの行動を抑止できなくても高い費用を払わせる効果はあるとみられる。統一部の金秀卿(キム・スギョン)次官はこの日、チャンネルAに出演し「『暴風軍団』と呼ばれる特殊部隊の1次派兵があったのに続き、近いうちにその配下部隊員が追加で派兵されるとみられる」とし「防御より攻撃に特化している部隊員であり、激戦地のクルスクが(投入される戦場として)可能性があるのではと思う」と話した」 

    韓国統一部は、近いうちに北朝鮮の実戦部隊が派兵されると予測している。

     

    (6)「ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は1月、米外交専門紙『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿で「米国は情報外交の価値が高まっている点を学んでいる」として、次のように指摘した。「戦略的機密解除は競争者を弱化させ、同盟を結集するために特定の機密を意図的に一般公開するものであり、これは政策立案者に強い道具となっている」と指摘」 

    バーンズ米CIA長官は、事前に機密情報公開が敵方を弱体化させ、同盟側を結集させるとしている。中国が台湾侵攻を行えば、事前に情報が公開され西側が準備する時間的ゆとりができる。奇襲攻撃はできない時代だ。 

    (7)「(今回の韓国情報院の発表は)バーンズ局長の説明のように、同盟および似た立場の国が警戒心を共に高める効果もある。今回の件の余波で北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ派兵論がまた台頭するという見方が出てきた。マルク・ルッテNATO事務総長は18日、北朝鮮のウクライナ派兵について「現在までの我々の公式立場は確認不可だが、もちろんこの立場は変わる可能性がある」と話した。主要国の情報機関も朝ロ間の動向を注視する可能性が高まった」 

    NATOは、北朝鮮のロシア派兵を重大視するであろう。火に油を注ぐことにならぬよう、ロシアへ自重を望みたい。

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    北朝鮮と中国との関係がギクシャクしている。中国政府は、外貨稼ぎのため北朝鮮から派遣されている労働者全員に対して、帰国を求めたことを韓国政府が把握したと報じられた。中国は、最近の北朝鮮がロシアと密着していることをけん制しているとみられる。中ロ朝関係は、中ロが北朝鮮を巡って互いに勢力争いを展開している状態が明らかである。中ロ関係も一枚めくると、こういう微妙な状態にある。

     

    『朝鮮日報』(7月14日付)は、「2年にわたる水面下の中朝対立が爆発、中国にむげにされロシアに抱き込まれた北朝鮮」と題する記事を掲載した。

     

    中朝関係が尋常でない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記と習近平国家主席が、2018年に中国・大連で一緒に散策したことを記念するために設置された「足跡の銅板」まで無くなった。中国側が、銅板の上にアスファルトを敷いて足跡を消してしまった。朝中首脳の友好の象徴物が除去されるというのは類例がない。

     

    (1)「今年1月の台湾総統選挙は、中国の最大の関心事だった。中国が嫌う親米・独立傾向の候補が当選したにもかかわらず、北朝鮮は中国の立場を支持する声明すら出さなかった。中国と日本で同じ時期に強い地震が発生し、どちらも大きな被害が生じた。通常なら、北朝鮮は中国に慰労の電文を送らなければならない。しかし金正恩は日本にだけ「岸田閣下」で始まる電文を送った。少し前には、北朝鮮が、朝鮮中央テレビの海外向け放送に使う衛星を中国からロシアに変えてしまうという「事件」もあった」

     

    北朝鮮の金正恩氏が1月、「岸田閣下」と最上段の敬意を表した「能登地震」へのお見舞い電文を送って日本を驚かせた。これは、中国への意趣返しが込められていた。中朝関係にヒビが入っていたのである。

     

    (2)「昨年7月、北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードで、ロシアはプーチンに最も近い側近の一人、ショイグ国防相(当時)を派遣した。ロシアが北朝鮮の軍事パレードに特使を送るのは異例だ。10年前の停戦60周年のときも、高官クラスの派遣は行われなかった。反面、中国の特使は李鴻忠政治局委員だった。最高指導部の常務委員(7人)を派遣するに値する行事なのに、委員(25人)を派遣したのだ。金正恩は、あからさまにロシア特使ばかりを歓待した。2022年から積もり積もってきた朝中対立が表面化したのだ」

     

    北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードでは、金正恩氏がロシアのショイグ国防相(当時)を優遇し、中国特使の李鴻忠政治局委員を冷遇したのは報道写真で明らかであった。金氏がショイグ氏に熱心に説明している一方で、李氏はこれより離れて一人でパレードを見ていたのだ。

     

    (3)「習近平は12年に政権を樹立した直後から、金正恩のことを良く思っていなかった。北朝鮮の核の暴走が北東アジアの均衡を揺るがす、と考えたのだ。北朝鮮の挑発は、米軍を中国の鼻先に呼び込む口実となる。14年に、中国の指導者として初めて、北朝鮮より先に韓国を訪問することで金正恩に警告のメッセージを送った。金正恩は15年、北京に牡丹峰楽団を派遣したが、中国の最高位クラスが観覧しないとなるや公演直前に楽団を呼び戻し、感情的ないさかいを起こした」

     

    習氏と金氏の関係は、ウマが合わない印象である。互いに、「突っ張り」あっている感じだ。金氏には、「直系一族」という誇りがあるのだろう。

     

    (4)「朝中は不信の歴史が深い。中国は、北朝鮮が触発した衝突に振り回されることを警戒する。6・25(韓国戦争)が代表的だ。北朝鮮によるロシア砲弾支援は「バタフライ・エフェクト」を呼びかねない、と懸念している。ウクライナ戦争の長期化で世界経済が動揺したり、朝中ロ結束の様子が韓米日軍事協力を強化させたりすることは、中国にとって不利だ」

     

    中国にとっては、日に日に包囲網が作られている感じだろう。最近は、NATO(北大西洋条約機構)が、日韓豪NZ(ニュージーランド)と密接な関係を深めてきた。北朝鮮のロシア支援もこうした包囲網づくりへのテコになっている。

     

    (5)「中国は、北朝鮮に「ロシアとの武器取引を自制せよ」というシグナルを送っただろう。しかし北朝鮮は、逆にロシアと軍事同盟まで復活させた。朝中同盟よりも包括的だ。金正恩は今年4月、朝中修好75周年を迎えて中国の趙楽際常務委員(序列3位)の訪朝を待っていた。09年の修好60周年のとき、温家宝首相が工場建設などプレゼントを用意して訪朝した記憶を思い出しただろう。ところが趙楽際は手ぶらだった。金正恩はプーチンの方にいっそう傾き、朝中関係はさらによじれた。反面、中国は、自分たちの「畑」である北東アジアに米国はもちろんロシアが割り込むことも嫌う」

     

    金氏は、経済的な苦境に立っている。何でもいいから支援が欲しい心境だ。中国は、何もくれないが、ロシアはお土産を持たせてくれる。こうして、北朝鮮はロシアへ傾斜しているのだろう。中国は、この余波を受けているという不満が重なっている。中ロ朝の関係は、決して盤石なものでない。

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    朝鮮戦争が始まった6月25日が間もなく来る。1950年であるから、今年で74年を迎える。折も折、ロシアと北朝鮮が「包括的戦略パートナー協定」という名の軍事同盟を結んだ。「また、朝鮮戦争の準備か」と思わせるほどの不気味さを感じさせる。 

    朝鮮戦争は、侵略側の北朝鮮・ソ連・中国が「短期決戦」で終わると楽観して始めた戦争である。米国は、北朝鮮の侵略はないという前提で韓国から撤兵していた。韓国は準備もなく、「南北統一」を叫んで北進論を唱えていた。こういう「三者三様」の思惑違いが生んだ悲劇である。 

    現在の朝鮮半島情勢はどうか。客観的にみれば、経済力の疲弊した北朝鮮が韓国侵略を行う力はない。ロシアは、ウクライナ侵略戦争真っ只中である。中国は、台湾侵攻を狙っており北朝鮮支援の余力なはい。こうみると、今回のロ朝同盟がすぐに戦争を始める引き金にはならない。ただ、楽観しているとその虚を突かれる。警戒態勢をしくことが、朝鮮戦争から得られる教訓だろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月21日付)は、「誤った判断が招いた朝鮮戦争、悲劇を繰り返してはならない」と題する寄稿を掲載した。筆者は、パク・チャンスン漢陽大学史学科名誉教授である。 

    数日後に迫った6月25日は、朝鮮戦争が起きて74年になる日だ。朝鮮戦争が起きる過程では、この戦争についての各国の指導者たちの深刻な誤算と誤った判断があった。 

    (1)「戦争による統一を夢見てきた金日成(キム・イルソン)は、1949年と1950年の春にソ連のスターリンに会い、戦争支援を要請した。1949年春には「まだその時ではない」と拒否したスターリンは、1950年春にはその要請を受け入れた。この時スターリンは、戦争が起これば米国が介入してくるのではないかと金日成に問うた。金日成は、中国の国共内戦にも介入しなかった米国が、それより小さな朝鮮半島の戦争に介入するはずはないと主張し、米国が介入してきたとしても、その前に速戦即決で戦争を終わらせる計画だとスターリンを説得した。しかし米国は戦争が起きるやいなや直ちに介入を決定し、国連軍を組織して朝鮮戦争の主役となった。金日成の判断は完全に間違っていた」 

    北朝鮮は、武力による南北統一を実現するチャンスを狙い続けてきた。これが、ソ連と中国を引き込み開戦に至る経緯である。

     

    (2)「ソ連をみてみよう。1949年8月に核実験に成功すると、スターリンは米ソ冷戦対決にある程度自信を持ったようだ。また同年9月に中国共産党が国民党政権を台湾へと追いやり、中華人民共和国政府を樹立すると、東アジアの情勢は共産主義者に有利なものへと変化したと考えた。彼は、金日成政権が朝鮮半島全域を掌握すれば、ソ連の影響力が朝鮮半島南端にまで及ぶと期待したとみられる。彼は、ソ連が朝鮮半島での戦争に直接軍隊を送ることは難しいと考え、戦争が起きて万が一北朝鮮が不利になったら、ソ連の代わりに中国に軍を派遣させるという計画を立てた」 

    ソ連は、中国が同意すれば北朝鮮へ開戦を認める姿勢をみせた。中国を利用する腹積もりであったのだ。 

    (3)「中国をみてみよう。スターリンはモスクワを訪れた4月の金日成との会談で、毛沢東の同意を条件に北朝鮮の戦争開始を許した。結局、毛沢東は米軍の介入を懸念しつつも、戦争開始に同意した。毛沢東が同意したのは、スターリンがこの戦争をすでに決意していると考えたからだ。当時、様々な面でソ連の助けが必要だった新生中国の指導者として、毛沢東はスターリンの顔色をうかがわざるを得なかった」 

    中国は、建国間もない時期でソ連の支援を必要としていた。そのソ連が開戦をOKしたとなれば、参戦するほかないという受け身姿勢であった。

     

    (4)「米国は1949年6月、韓国から軍事顧問団を除くすべての米軍を撤退させた。これは北朝鮮からのソ連軍の撤退に対応したものではあったが、北朝鮮の南侵の可能性を見過ごしたものでもあった。米軍撤退後もまさかソ連が北朝鮮を前面に押し立てて南侵しては来ないだろうと考え、韓国に対しては軍事援助よりも経済援助に関心が高かった。そして、アチソンラインを発表した。ソ連と北朝鮮は、太平洋での米国の防衛線が日本―沖縄―フィリピンをつなぐ線だと考え、韓国はそこから除外されていると判断した。その結果は、ソ連軍の支援を受けた北朝鮮軍の全面南侵だった」 

    米国は、北朝鮮の開戦を全く想定していなかった。むしろ、韓国を軍事支援することが北朝鮮を刺激するとみていたほどだ。 

    (5)「韓国は1949年以降、北朝鮮と頻繁に国境線で衝突を起こし、北朝鮮の「全面南侵」も懸念しており、米国に軍事援助を大幅に増やすよう要請していた。米国はそれを拒否した。米国は、北朝鮮の南侵の可能性はあまりないと考えていた。むしろ軍事援助を増やせば、韓国が北侵するのではないかと懸念していた。当時、李承晩(イ・スンマン)政権は北朝鮮の全面南侵に対する備えが不十分であったにもかかわらず、「北進統一」を叫んで虚勢ばかり張っていた」 

    韓国は、軍備もそろっていない状況下で「北進論」を唱えるなど北朝鮮を刺激していた。これも超楽観論であった。 

    以上の関係国による判断をみると、韓国が軍事的「空白地域」になったことが悲劇を生む最大要因であったことだ。共産主義国は、この「空白」に吸い寄せられるように軍事進出するのがパターンである。その後の中国が行った南シナ海での占拠も、全てこのパターンに従っている。尖閣諸島も「空白」になれば、簡単に占領するであろう。「空白」をつくることが侵略を招く原因である。

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