勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 北朝鮮経済ニュース

       

    文政権時代、北朝鮮スパイ事件が国家情報院長(当時)の手によって、もみ消されていたことが明らかになった。もみ消しの理由は、「南北関係を悪化させる」というもの。スパイ活動の取締りは、国家の安全を守るために必須である。文政権は、北朝鮮を刺激しないという政治的配慮で「見て見ぬ振り」をしていたことになる。職務の怠慢である。

     

    『中央日報』(1月20日付)は、「民主労総の幹部まで関与したスパイ事件文在寅政権の責任はないのか」と題する社説を掲載した。

     

    全国民主労働組合総連盟(民主労総)の元・現幹部がスパイ活動をした容疑で国家情報院の捜査を受けている。家宅捜索が行われた民主労総は昨日、「一つのショーだ」と「7月のゼネスト闘争を通じて尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府に対抗して戦う」と明らかにした。共に民主党と正義党も「公安政局の復活」とし、尹政権の反労働組合政策、国家情報院の対共捜査権維持のための政治的捜査だと批判した。

     

    (1)「裁判所が発行した捜索差押許可状には、国家情報院が長い時間をかけて確保した具体的な根拠が含まれているという。彼らは2017~19年にカンボジアとベトナムで北朝鮮の対南工作部署の文化交流局(旧225局)工作員と接触し、その指令に基づいて反米・親北活動をした容疑を受ける。民主労総組織局長、民主労総傘下保健医療労働組合組織室長、金属労働組合元副委員長として各種活動に大きな影響力を行使することができた」

     

    韓国の「貴族労組」と言われる民労総の元・現の幹部が北朝鮮スパイ行為に加担したとされる事件である。現在、民労総組織局長が、2016年8月に中国で北朝鮮工作員にかばんを手渡し、それから1カ月後にベトナムで工作資金が入った黒いものを受け取ったとみられる。その後、資金追跡をかわすため南大門など韓国国内にある複数の私設外貨両替所で約1万ドル(約130万円)を換金したとされる。

     

    (2)「正確な事実は、捜査および裁判の結果を見てこそ分かるが、これまで民労総がしてきた政治闘争からみて北朝鮮との連係の可能性は排除できない。労働者の権益とは距離がある「在韓米軍撤収」「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」のような声明と集会スローガンが代表的な例だ。昨年6月に開かれた「反米自主労働者大会」、8月の「8・15自主平和統一大会」では韓米同盟の撤廃を主張した」

     

    民労総は、労働運動目標に過激な政治目標を掲げてきた。「在韓米軍撤収」、「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」などである。組織局長が北朝鮮から資金を得ていたとすれば、その見返りとして米軍撤退という項目を挙げざるを得なかったであろう。

     

    (3)「さらに大きな問題は、こうした内容がすでに数年前から捕捉されながらも本格的な捜査が行われなかったところにある。これは、文在寅政権が南北関係に執着し、対共捜査機能を量的・質的に縮小したためという批判が避けられない。政府側の人物を要職に座らせながら国家情報院はもちろん、軍、検察、警察の対北朝鮮情報収集と捜査機能を大きく弱化させた。2011~16年に26件だったスパイ摘発件数は、文政権の2017-20年には3件にすぎなかった。2021年8月に北朝鮮の指令を受けて大統領選挙はもちろん総選挙に介入してきた忠北(チュンブク)スパイ集団を捜査したとはいえ、縮小捜査という声が多かった」

     

    国家情報院の担当官が、長年の捜査で証拠固めをしてきたにもかかわらず、国家情報院長は捜査を握り潰したことだ。文大統領(当時)の意向を反映した捜査握りつぶしかどうか、現状では不明である。今後の捜査次第では、文氏の責任追及もあろう。文政権時代のスパイ摘発は3件だが、朴政権では26件もあったのだ。

     

    (4)「さらに2020年、共に民主党は国家情報院の対共捜査権を廃止して2024年に警察に移管する国家情報院法改正案を単独処理した。1年単位で主要幹部人事が行われる警察組織の特性上、数年間の情報を蓄積しながら高度なノウハウで進める対共捜査を担当するには無理があるという指摘があったが、耳を傾けなかった。北朝鮮の脅威の強度が強まる状況で、北朝鮮の指令を受けたスパイまでが暗躍するようなことは決してあってはならない。対共捜査能力を強化するための超党派的な議論が必要だ。国家情報院は、確実な証拠に基づいた捜査を進めることを望む」

     

    文政権は、南北融和が最大の目的であった。できるだけ、スパイ捜査をしないように「工夫」を凝らしたのである。文政権はまた、スパイ捜査権を国家情報院から警察に移管させる。これを24年か実行すると法改正したほど。事実上のスパイ捜査縮小を狙っているのだ。ここまでして、北朝鮮に「スパイ天国」を提供しようとしたことは疑いない。危ない橋を渡っていたのだ。北朝鮮が、軍事的攪乱を図る事態になった時、どのように対応する積もりであったのか。

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    文大統領は、北朝鮮による国連が禁じた違法なミサイル発射実験に対して、ひたすら沈黙している。抗議すれば、北の猛反撃を受けて感情的に拙くなることを恐れている結果だ。ひたすら堪え忍び、南北対話を「お願いする」立場を貫いている。こういう腑抜けな態度が、北を一段と強気にさせて、ミサイル発射実験をエスカレートさせている。

     

    文氏がここまで低姿勢を貫いているのは、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出して、その名を歴史に留めたいという名誉心である。習近平氏の「終身国家主席」願望と同様に、文氏の名誉心も相当強いようだ。この被害は、世界に及ぶことを忘れている。

     

    『朝鮮日報』(1月8日付)は、「北の挑発、文在寅大統領就任後に約30回 朴槿恵政権期の6倍」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の期間中に最も多くのミサイルを発射したことが分かった。

     

    (1)「パク・チョンイ予備役陸軍大将は今月6日、自由民主研究院および自由フォーラム主催のセミナーで、「北朝鮮の公式発表を分析した結果、北朝鮮は文在寅大統領就任4日後の2017年5月14日から最近まで、およそ30回にわたり50発あまりのミサイルを発射した」と発表した。北のミサイル発射は、朴槿恵(パク・クンへ)政権時代には5回(8発)、李明博(イ・ミョンバク)政権時代には12回(19発)だった。文大統領は今年の新年の演説で「韓半島情勢はかつてないほど安定的に管理されている」と発言したが、北の挑発の回数だけを比べると、朴槿恵政権時代の6倍も多いということになる

     


    北朝鮮の交渉相手は、米国だけである。韓国を、単なる露払い程度にしか見ていないのだ。文氏は、この事実を認めようとせず、北へ無条件の融和策を取っている。大きな「引出違い」に陥っているのだ。この延長上で、中国へも無原則な融和策に出ている。

     

    文政権のこうした外交姿勢は、中朝双方から低評価されるという思わぬ結果を招いている。韓国は、毅然とした外交姿勢を取らないので、中朝から「舐められ放題」という事態である。下線のように北朝鮮は、文政権になってから朴大統領時代と比べ6倍ものミサイル発射実験を行なっている。この数字こそ、北朝鮮がやりたい放題の振る舞いをしている現実を見せつけている。

     

    (2)「北朝鮮は2017年9月に水素爆弾の実験(6回目の核実験)に成功し、核弾頭を本格生産した。米国ランド研究所は、現在北朝鮮は67発から116発の核弾頭を保有しており、2027年には151発から242発の核弾頭を持つという見込みを示した。また、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に加えて極超音速ミサイルの技術発展まで成し遂げた。朴・前大統領は、「北朝鮮が、表面的には非核化交渉と南北関係改善に乗り出すふりをしつつ、裏では核・ミサイル開発に全力疾走していたことを示している」と語った」

     

    韓国の北朝鮮政策は、朴大統領時代の方がはるかに厳しかった。対応の甘くなった文政権において、北朝鮮のミサイル能力は格段の進歩を遂げている。すべて、文氏の無原則な融和策が招いた結果である。日本への被害も大きくなるのだ。

     


    『朝鮮日報』(1月7日付)は、「北朝鮮の極超音速ミサイルを世界が糾弾、韓国は沈黙」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮は6日「国防科学院は15日、極超音速ミサイルの試験発射を行った」「700キロに設定された標的に誤差なく命中させた」と報じた。マッハ5以上で滑空し変速的な軌道を描く極超音速ミサイルは現存のミサイル防衛システムでは迎撃が不可能な「ゲーム・チェンジャー」となる武器だ。昨年9月に続き2回目に行われた今回の発射を通じ、速度と変速的な軌道で飛行する能力が大きく向上したとみられる。

     

    (3)「過去に北朝鮮がこれと同じような挑発を行った際に、韓国と米国の外交当局が最も迅速に状況の共有と対策の準備に取り掛かったが、今回は米国と日本の外相による電話会談が先に行われた。米国のブリンケン国務長官と日本の林芳正外務大臣はこの日、北朝鮮が発表を行った2時間後35分間にわたり電話会談を行った。会談について米国務省は「ブリンケン国務長官は北朝鮮の弾道ミサイル発射を糾弾し、日本に対する米国の防衛公約は鉄壁だと強調した」と説明した」

     

    日米外相による電話会談は行なわれたが、米韓では行なわれていない。多分、韓国側にその動きがない結果であろう。米韓外相の電話会談では、北朝鮮へ抗議する内容になるはずだから,韓国が避けたに違いない。「終戦宣言」に賭けているのだ。

     


    (4)
    「欧州連合(EU)報道官は、「北朝鮮による度重なるミサイル発射は対話の再開を目指す国際社会の努力に逆行する」とした上で「北朝鮮には国連安保理決議に従う義務を順守するよう求める」と述べた。北朝鮮ミサイルの射程圏から遠く離れた国々は一斉に北朝鮮を糾弾しているが、北朝鮮のミサイルの脅威に直接直面している韓国だけが口を閉ざしている形だ」

     

    EUが、北朝鮮のミサイル発射実験に抗議しているのに対して、韓国が沈黙しているのは不思議な現象だ。沈黙は、容認という意味だ。文氏の安全保障観はどうなっているのか。自分の名誉心だけ満たされれば、それでよしとすることだろう。困った大統領が出てきたものである。

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    韓国文大統領は、来年2月の北京冬季五輪で北朝鮮の金正恩国務委員長と会談を計画中と見られてきた。だが、IOC(国際オリンピック委員会)は、東京五輪へ参加しなかった北朝鮮の資格停止を決めたことから、文氏は北京での金氏との会談が不可能になった。

     

    文大統領は、来年5月までが任期である。文氏は、南北交流への糸口をつくる外交努力を重ねてきたが、北朝鮮の一方的な中断によって宙に舞っている。文氏は、IOCによる北朝鮮制裁によって、最後の会談機会を失うのは確実である。

     


    『中央日報』(9月9日付)は、「IOC、東京五輪不参加の北朝鮮に資格停止 文大統領の平和構想に直撃弾」と題する記事を掲載した。

     

    国際オリンピック委員会(IOC)が2022年まで北朝鮮のオリンピック委員会(NOC)の資格を停止させることにした。北朝鮮の一方的な東京五輪不参加決定にともなう懲戒で、2022年2月の北京冬季五輪に北朝鮮代表団が参加するのは不可能になるものとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の韓半島(朝鮮半島)平和プロセス再稼働計画にも直接的影響を及ぼす恐れがある。

     

    (1)「IOCは8日に報道資料を出し、こうした執行委員会での議論結果を発表した。IOCは具体的に▽国際制裁により保留したが北朝鮮NOCに配分されていたIOCの財政的支援を没収する▽北朝鮮NOCの懲戒期間中はIOCのすべての支援やプログラムの恩恵受ける資格を剥奪する▽2022年北京冬季五輪出場資格を得た北朝鮮NOC選手に対してはIOC執行委員会が適切に決める――などだ」

     

    IOCは、北朝鮮に対して3つの制裁を科した。ただ、選手の出場については個人の資格で出場する可能性を残している。ロシアは、ドーピングで国家として出場できぬが、個人資格で出場を認めていると同じ対応になる。

     


    (2)「IOCは、「北朝鮮NOCが東京五輪の成功的開催に向け寄与しなかった点を考慮した措置」と明示した。「北朝鮮のNOCは東京五輪に参加しなかった唯一のNOCだった」とも明らかにした。ただ制裁期間は執行委員会の決定により再考できるとも明示した。これに先立ち北朝鮮NOCは4月に総会を開き、新型コロナウイルスを理由に東京五輪不参加を決めた。「悪性ウイルス感染症(新型コロナウイルス)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するために」としながらだ」

     

    北朝鮮は、反日で東京五輪に参加しなかったが、こういう形でペナルティが加えられた。過去の財政支援も没収され、22年末までの資格を剥奪されるという不名誉な措置である。

     


    (3)「これと関連してもIOCは、「われわれは東京五輪前数カ月にわたり北朝鮮NOCと多様な疎通と協議を通じ安全な開催を再確認しており、ワクチン提供を含め適切な解決策を見出すことができる建設的提案を最後の瞬間まで出したが、北朝鮮NOCから体系的に拒絶された」として不快感を隠さなかった。IOCは、北朝鮮にワクチン支援まで提案しながら東京五輪参加を誘導したが、北朝鮮が一方的な不参加決定を翻意しなかったということだ。IOCは、「北朝鮮NOCは(東京五輪不参加により)五輪憲章に提示された措置と制裁にさらされるという事実に対し極めて明確な警告を受けた」とも説明した」

     

    改めて、IOCの持つ権力の大きさが注目される。ドーピングだけでなく、五輪不参加でも出場停止という制裁が加えられるからだ。五輪参加は義務である以上、国家としての不参加は許されない。北京冬季五輪も参加が義務である。欧米で言われている北京冬季五輪ボイコット論は、政府関係者が出席しないというだけの限界がある。

     


    (4)「これまで外交界では、文在寅政権が2022年2月の北京冬季五輪を契機に南北関係改善を試みるだろうという観測が支配的だった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が友好国である中国の慶事を祝う名分で五輪に参加する場合、南北首脳会合も可能になるかもしれないためだ。次期総選挙が2022年3月に行われることを考慮すれば、文大統領の任期末にぴったりのタイミングに機会を設けることができた」

     

    文大統領は、今回のIOC決定が大きな痛手になろう。東京五輪には出席せず、北京冬季五輪へ出席するという形で、日本への「意趣返し」を狙っていたであろうが、これも不発に終わる。文氏の外交戦略は、ことごとく失敗という形で締めくくられそうだ。 

     

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    韓国の国立外交院は、韓国外交官の教育や外交方針を考究する場である。それだけに、外交院長は外交部の次官ポストで遇されている顕職である。その国立外交院長が、「トンデモ発言」をして物議を醸している。

     

    『朝鮮日報』(8月13日付)は、韓米訓練不要論者の韓国国立外交院長「北がミサイルを発射すれば斬首訓練もすべき」と題する記事を掲載した。

     

    韓国国立外交院の洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)院長は8月12日「もう(北朝鮮に)好意を見せる必要はない」とした上で「北朝鮮が短距離ミサイルなどを発射すれば、斬首・先制攻撃、北朝鮮占領作戦の訓練も今週中にやってしまうべきだ」と提案した。

     


    (1)「洪院長はつい先日まで「連合訓練はやらなくても良い」、「こちらは訓練をするのに、北朝鮮に短距離ミサイルの発射などをやるなというのは非常識だ」と発言し問題となっていたが、今回は突然、自ら正反対の主張を行ったのだ。この日就任したばかりの洪院長は、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長の談話や通信連絡線の復元撤回について、「非常に巧妙な『南南葛藤(韓国内部の対立)』を誘導する戦術」「野党が政府を攻撃すれば、彼ら(北朝鮮)としては利得だ」との見方を示した。

     

    国立外交院長が、こういう踏込んだ発言をしていいのか疑問がわき上がる。洪院長は、国防長官のような発言をしているからだ。軍事力に訴えず、いかに外交案件を処理するか、というのが、外交の巧拙が問われる場面である。

     

    米韓合同の軍事訓練目的は、純粋な防衛目的とされている。北朝鮮へ攻め込む演習でない。国連の報告によれば、北朝鮮は昨年末から秘かに核開発を続けている。こういう状況で、米韓が、何らの演習もしないのは軍隊の存在を否定するのと同じである。軍隊は常時、訓練することで戦闘能力を維持できる。こういう、軍事演習を否定するのは論外である。

     


    (2)「洪院長はさらに、「朴槿恵(パク・クネ)政権当時の木箱地雷の時は、韓米が協力し国民の総和団結によって固く一つになる態勢を示したため、北朝鮮は最終的に尻尾を下ろして謝罪したではないか」「こちらが固い心で厳重な姿勢を示せば、北朝鮮も『もう一度仲良くしまよう』と言ってくるはずだ」とも語った」

     

    北朝鮮の挑発を事前に防止できるのは、米韓が十分な備えをしておく時だけである。隙を見せれば必ず、そこを突いてくる。朝鮮戦争が、その適例である。韓国の与党は、この理屈が分からない振りをして北朝鮮に迎合している。核を持つ北朝鮮への対抗は、生やさしいものでないことを認識すべきだ。

     

    (3)「洪院長は、「主張を変えた」との指摘を受けることを予想するかのように、「私を『韓米連合訓練は必要ない』と主張した人間と言いたいだろうが、私は韓米同盟を非常に尊重する人間だ」とも述べた。

     

    この発言は、かなり飛躍している。米韓合同訓練は、北朝鮮の野望を未然に防ぐ役割である。しかも、軍隊は常時、演習していなければ力量が落ちるという宿命を負っている。「練度の低下」は、軍隊の最も避けなければならない点である。米韓同盟を重視するならば、合同演習を認めなければならないのだ。この程度の認識もない国立外交院長では、韓国外交の先が思いやられる。

     


    (4)「
    洪院長が北朝鮮への強硬姿勢を主張したこととは対照的に、この日与党などからは韓米連合訓練の取消しを求める声が相次いだ。民主平和統一諮問会議の丁世鉉(チョン・セヒョン)主席副議長は、「韓米関係だけを考えるのではなく、国民に希望を与えたことの責任を取らねばならない」として、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は16日から始まる韓米連合訓練の本訓練を取り消すべきだ」と主張した。丁氏は「光復節の祝辞ではどうせ南北関係に関する大統領の政策の意思が語られるはずだ。それなら北朝鮮が恐れる後半部の訓練を中断する措置を行うべきではないか」と訴えた。防衛目的の定例連合訓練を取りやめることで、北朝鮮に「誠意」を示そうという趣旨だ」

     

    朝鮮戦争がどういう状態で起ったか、韓国与党はそういう歴史的検証を忘れている。ただ、徒手空拳で平和が守られるという幻想にしがみついている。旧ソ連も現在の中国も、武力を背景にして外交を展開しているのが現実である。韓国は、北朝鮮と中国の共謀による侵略で、その犠牲を背負わされた身である。

     

    戦後の日本も、いわゆる平和勢力は、この類いの議論を好んできた。「非武装中立論」で盛り上がっていたのだ。尖閣諸島が中国に狙われている事態で、「非武装中立論」はあり得ない。

     

     

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    コロナと食糧不足に悩む北朝鮮は、中国の支援に依存しきっている。これを反映して、中国最大のポータルサイトが、金正恩氏の出自について中国朝鮮族出身と虚偽記載しても訂正させる余力も失っているようだ。

     

    北朝鮮が中国への依存を象徴する話は、新鴨緑江(アムノッカン)大橋の年内開通情報である。北朝鮮新義州(シンウィジュ)と中国遼寧省丹東をつなぐ新鴨緑江大橋が、今年開通する可能性があるとの報道が出ている。新鴨緑江大橋は、2014年事実上完工したが、北朝鮮が接続道路の建設を先送りして開通が遅れていたもの。だが、「中国と北朝鮮が今年7月友好協力援助条約締結60周年を記念し、新鴨緑江大橋の開通式を開く可能性がある」と、『中央日報』(3月17日付)が報じた。

     

    『朝鮮日報』(4月3日付)は、「中国、金正恩委員長は中国朝鮮族」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ボルチャン記者である。

     

    中国最大のポータルサイト「百度(バイドゥ)」で「金正恩(キム・ジョンウン)」と検索すると、「中国朝鮮族」という説明書きが表示される。「北朝鮮」と検索しても、民族の項目には「朝鮮族」と書かれている。韓国の大統領と国家説明についても、過去にこのような表記が見られたものの、韓国側の抗議を受け削除された。北朝鮮は何も言えず、屈辱に耐えている。北朝鮮の事情に詳しいある専門家は、「コロナと経済制裁で国際社会から完全に孤立してしまった北朝鮮は、今や中国を前にプライドを傷つけられ、言うべきことも言えなくなった」と説明する。

     

    (1)「北朝鮮が中国に頭を下げる回数は、今年に入って露骨とも言えるほどに増えている。3月12日の国連人権理事会会議でジュネーブ駐在の北朝鮮代表部大使は「新疆ウイグル自治区と香港の問題で中国に内政干渉しようともくろんでいる一部の国々は、これを直ちに中止せよ」と要求した。自分のことで精いっぱいの北朝鮮が、国際社会で「兄さん格」である中国の肩を持ったのだ。3月18日には前任者が10年以上を勤務してきた駐中北朝鮮大使の座に突然「中国通」のリ・リョンナム氏を座らせた。リ大使は北京外国語大学を卒業したため中国語が流ちょうで、対中貿易に強い「親中派」の人物だ。金正恩委員長は3月22日、習近平中国国家主席と交わした親書で「朝中関係を世界がうらやむ関係に発展させたい」と述べた」

     

    金正恩氏が、2017年まで見せた中国への対抗的姿勢は現在、全く消えてしまった。ひたすら、中国へ恭順の意を示すほど低姿勢である。それだけ、北朝鮮が経済的に困窮していることを物語っている。

     

    (2)「米中の葛藤が激しさを増す中、中国は北朝鮮の求愛にいつになく積極的に応じている。米国との対決構図の中、北朝鮮を交渉カードとしてうまく利用するには統制力を育まなければならない、といった計算があるからだ。習近平国家主席は3月22日、金正恩委員長に送った親書から「非核化」の文言を削除し、中国外交部(省に相当)の華春瑩報道官は翌日の定例ブリーフィングで対北制裁緩和を促した」

     

    中国も、米中対立の中で「北朝鮮カード」を上手く使うために、北朝鮮を手元に引き寄せている。4月3日、中韓外相会談が中国で開催された。北朝鮮の非核化で意見が一致したというが、詳細は不明である。韓国は、南北交流実現を中国に依頼したであろう。米国が反対しているので、中国が北朝鮮を説得しても実現は困難である。となると、今回の中韓外相会談の目的は何であったか、関心を呼ぶはずだ。

     

    (3)「国境地域の貿易商の間では、早くも「4月の朝中貿易再開説」がまるで既成事実であるかのようにうわさされている。中国各地では、北朝鮮の外貨稼ぎの手段である絵画販売展示会が次々と開催されている。香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)は、「米中が対立状態にあるため、今後中国が核兵器問題で北朝鮮に圧力を加える可能性は大幅に低下した」と報じた」

     

    中国が、米中対立激化によって北朝鮮へ非核化の圧力を掛ける可能性は大幅に低下している。バイデン政権の構想通り、中国が北朝鮮へ圧力を掛けざるを得ない状況をつくる「迂回作戦」が取られよう。それは、中国を経済的に圧迫することである。米国が早く、TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰して、中国を米国市場から閉出すことである。

     

    (4)「朝中密着に拍車が掛かる場合、韓半島(朝鮮半島)は米中対立の戦場と化す恐れが高まる。中国が北朝鮮を操り、代弁するようになれば、北朝鮮の核問題はさらに複雑な力関係へと発展する。このようなとき、韓国政府が乗り出し、米中対立により朝鮮半島に「新冷戦」前線が描かれるようなことがないよう対処しつつ、北朝鮮に対して効率的に圧力を加えていかなければならないが、政権維持にしか関心のない現政権は効果的な対応を講じ切れない」

     

    韓国は、クアッドにコソコソと接近するのでなく、堂々と加盟して旗幟を鮮明にすることだ。米中対立の激化は、韓国の「バランス外交」を不可能にするであろう。米韓の一体化以外に、韓国の生きる道はない。

     

    次の記事もご参考に。

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    メルマガ230号 米のインド太平洋戦略から韓国脱落、文在寅「空想外交」の破綻

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    メルマガ242号 米国、中国へ「冷戦布告」 バブルの混乱抱える習近平へ「追い打ち」

     

     

     

     

     


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