勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 北朝鮮経済ニュース

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    北朝鮮と中国との関係がギクシャクしている。中国政府は、外貨稼ぎのため北朝鮮から派遣されている労働者全員に対して、帰国を求めたことを韓国政府が把握したと報じられた。中国は、最近の北朝鮮がロシアと密着していることをけん制しているとみられる。中ロ朝関係は、中ロが北朝鮮を巡って互いに勢力争いを展開している状態が明らかである。中ロ関係も一枚めくると、こういう微妙な状態にある。

     

    『朝鮮日報』(7月14日付)は、「2年にわたる水面下の中朝対立が爆発、中国にむげにされロシアに抱き込まれた北朝鮮」と題する記事を掲載した。

     

    中朝関係が尋常でない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記と習近平国家主席が、2018年に中国・大連で一緒に散策したことを記念するために設置された「足跡の銅板」まで無くなった。中国側が、銅板の上にアスファルトを敷いて足跡を消してしまった。朝中首脳の友好の象徴物が除去されるというのは類例がない。

     

    (1)「今年1月の台湾総統選挙は、中国の最大の関心事だった。中国が嫌う親米・独立傾向の候補が当選したにもかかわらず、北朝鮮は中国の立場を支持する声明すら出さなかった。中国と日本で同じ時期に強い地震が発生し、どちらも大きな被害が生じた。通常なら、北朝鮮は中国に慰労の電文を送らなければならない。しかし金正恩は日本にだけ「岸田閣下」で始まる電文を送った。少し前には、北朝鮮が、朝鮮中央テレビの海外向け放送に使う衛星を中国からロシアに変えてしまうという「事件」もあった」

     

    北朝鮮の金正恩氏が1月、「岸田閣下」と最上段の敬意を表した「能登地震」へのお見舞い電文を送って日本を驚かせた。これは、中国への意趣返しが込められていた。中朝関係にヒビが入っていたのである。

     

    (2)「昨年7月、北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードで、ロシアはプーチンに最も近い側近の一人、ショイグ国防相(当時)を派遣した。ロシアが北朝鮮の軍事パレードに特使を送るのは異例だ。10年前の停戦60周年のときも、高官クラスの派遣は行われなかった。反面、中国の特使は李鴻忠政治局委員だった。最高指導部の常務委員(7人)を派遣するに値する行事なのに、委員(25人)を派遣したのだ。金正恩は、あからさまにロシア特使ばかりを歓待した。2022年から積もり積もってきた朝中対立が表面化したのだ」

     

    北朝鮮の停戦協定締結70周年軍事パレードでは、金正恩氏がロシアのショイグ国防相(当時)を優遇し、中国特使の李鴻忠政治局委員を冷遇したのは報道写真で明らかであった。金氏がショイグ氏に熱心に説明している一方で、李氏はこれより離れて一人でパレードを見ていたのだ。

     

    (3)「習近平は12年に政権を樹立した直後から、金正恩のことを良く思っていなかった。北朝鮮の核の暴走が北東アジアの均衡を揺るがす、と考えたのだ。北朝鮮の挑発は、米軍を中国の鼻先に呼び込む口実となる。14年に、中国の指導者として初めて、北朝鮮より先に韓国を訪問することで金正恩に警告のメッセージを送った。金正恩は15年、北京に牡丹峰楽団を派遣したが、中国の最高位クラスが観覧しないとなるや公演直前に楽団を呼び戻し、感情的ないさかいを起こした」

     

    習氏と金氏の関係は、ウマが合わない印象である。互いに、「突っ張り」あっている感じだ。金氏には、「直系一族」という誇りがあるのだろう。

     

    (4)「朝中は不信の歴史が深い。中国は、北朝鮮が触発した衝突に振り回されることを警戒する。6・25(韓国戦争)が代表的だ。北朝鮮によるロシア砲弾支援は「バタフライ・エフェクト」を呼びかねない、と懸念している。ウクライナ戦争の長期化で世界経済が動揺したり、朝中ロ結束の様子が韓米日軍事協力を強化させたりすることは、中国にとって不利だ」

     

    中国にとっては、日に日に包囲網が作られている感じだろう。最近は、NATO(北大西洋条約機構)が、日韓豪NZ(ニュージーランド)と密接な関係を深めてきた。北朝鮮のロシア支援もこうした包囲網づくりへのテコになっている。

     

    (5)「中国は、北朝鮮に「ロシアとの武器取引を自制せよ」というシグナルを送っただろう。しかし北朝鮮は、逆にロシアと軍事同盟まで復活させた。朝中同盟よりも包括的だ。金正恩は今年4月、朝中修好75周年を迎えて中国の趙楽際常務委員(序列3位)の訪朝を待っていた。09年の修好60周年のとき、温家宝首相が工場建設などプレゼントを用意して訪朝した記憶を思い出しただろう。ところが趙楽際は手ぶらだった。金正恩はプーチンの方にいっそう傾き、朝中関係はさらによじれた。反面、中国は、自分たちの「畑」である北東アジアに米国はもちろんロシアが割り込むことも嫌う」

     

    金氏は、経済的な苦境に立っている。何でもいいから支援が欲しい心境だ。中国は、何もくれないが、ロシアはお土産を持たせてくれる。こうして、北朝鮮はロシアへ傾斜しているのだろう。中国は、この余波を受けているという不満が重なっている。中ロ朝の関係は、決して盤石なものでない。

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    朝鮮戦争が始まった6月25日が間もなく来る。1950年であるから、今年で74年を迎える。折も折、ロシアと北朝鮮が「包括的戦略パートナー協定」という名の軍事同盟を結んだ。「また、朝鮮戦争の準備か」と思わせるほどの不気味さを感じさせる。 

    朝鮮戦争は、侵略側の北朝鮮・ソ連・中国が「短期決戦」で終わると楽観して始めた戦争である。米国は、北朝鮮の侵略はないという前提で韓国から撤兵していた。韓国は準備もなく、「南北統一」を叫んで北進論を唱えていた。こういう「三者三様」の思惑違いが生んだ悲劇である。 

    現在の朝鮮半島情勢はどうか。客観的にみれば、経済力の疲弊した北朝鮮が韓国侵略を行う力はない。ロシアは、ウクライナ侵略戦争真っ只中である。中国は、台湾侵攻を狙っており北朝鮮支援の余力なはい。こうみると、今回のロ朝同盟がすぐに戦争を始める引き金にはならない。ただ、楽観しているとその虚を突かれる。警戒態勢をしくことが、朝鮮戦争から得られる教訓だろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月21日付)は、「誤った判断が招いた朝鮮戦争、悲劇を繰り返してはならない」と題する寄稿を掲載した。筆者は、パク・チャンスン漢陽大学史学科名誉教授である。 

    数日後に迫った6月25日は、朝鮮戦争が起きて74年になる日だ朝鮮戦争が起きる過程では、この戦争についての各国の指導者たちの深刻な誤算と誤った判断があった。 

    (1)「戦争による統一を夢見てきた金日成(キム・イルソン)は、1949年と1950年の春にソ連のスターリンに会い、戦争支援を要請した。1949年春には「まだその時ではない」と拒否したスターリンは、1950年春にはその要請を受け入れた。この時スターリンは、戦争が起これば米国が介入してくるのではないかと金日成に問うた。金日成は、中国の国共内戦にも介入しなかった米国が、それより小さな朝鮮半島の戦争に介入するはずはないと主張し、米国が介入してきたとしても、その前に速戦即決で戦争を終わらせる計画だとスターリンを説得した。しかし米国は戦争が起きるやいなや直ちに介入を決定し、国連軍を組織して朝鮮戦争の主役となった。金日成の判断は完全に間違っていた」 

    北朝鮮は、武力による南北統一を実現するチャンスを狙い続けてきた。これが、ソ連と中国を引き込み開戦に至る経緯である。

     

    (2)「ソ連をみてみよう。1949年8月に核実験に成功すると、スターリンは米ソ冷戦対決にある程度自信を持ったようだ。また同年9月に中国共産党が国民党政権を台湾へと追いやり、中華人民共和国政府を樹立すると、東アジアの情勢は共産主義者に有利なものへと変化したと考えた彼は、金日成政権が朝鮮半島全域を掌握すれば、ソ連の影響力が朝鮮半島南端にまで及ぶと期待したとみられる。彼は、ソ連が朝鮮半島での戦争に直接軍隊を送ることは難しいと考え、戦争が起きて万が一北朝鮮が不利になったら、ソ連の代わりに中国に軍を派遣させるという計画を立てた」 

    ソ連は、中国が同意すれば北朝鮮へ開戦を認める姿勢をみせた。中国を利用する腹積もりであったのだ。 

    (3)「中国をみてみよう。スターリンはモスクワを訪れた4月の金日成との会談で、毛沢東の同意を条件に北朝鮮の戦争開始を許した。結局、毛沢東は米軍の介入を懸念しつつも、戦争開始に同意した。毛沢東が同意したのは、スターリンがこの戦争をすでに決意していると考えたからだ。当時、様々な面でソ連の助けが必要だった新生中国の指導者として、毛沢東はスターリンの顔色をうかがわざるを得なかった」 

    中国は、建国間もない時期でソ連の支援を必要としていた。そのソ連が開戦をOKしたとなれば、参戦するほかないという受け身姿勢であった。

     

    (4)「米国は1949年6月、韓国から軍事顧問団を除くすべての米軍を撤退させた。これは北朝鮮からのソ連軍の撤退に対応したものではあったが、北朝鮮の南侵の可能性を見過ごしたものでもあった。米軍撤退後もまさかソ連が北朝鮮を前面に押し立てて南侵しては来ないだろうと考え、韓国に対しては軍事援助よりも経済援助に関心が高かった。そして、アチソンラインを発表した。ソ連と北朝鮮は、太平洋での米国の防衛線が日本―沖縄―フィリピンをつなぐ線だと考え、韓国はそこから除外されていると判断した。その結果は、ソ連軍の支援を受けた北朝鮮軍の全面南侵だった」 

    米国は、北朝鮮の開戦を全く想定していなかった。むしろ、韓国を軍事支援することが北朝鮮を刺激するとみていたほどだ。 

    (5)「韓国は1949年以降、北朝鮮と頻繁に国境線で衝突を起こし、北朝鮮の「全面南侵」も懸念しており、米国に軍事援助を大幅に増やすよう要請していた。米国はそれを拒否した。米国は、北朝鮮の南侵の可能性はあまりないと考えていた。むしろ軍事援助を増やせば、韓国が北侵するのではないかと懸念していた。当時、李承晩(イ・スンマン)政権は北朝鮮の全面南侵に対する備えが不十分であったにもかかわらず、「北進統一」を叫んで虚勢ばかり張っていた」 

    韓国は、軍備もそろっていない状況下で「北進論」を唱えるなど北朝鮮を刺激していた。これも超楽観論であった。 

    以上の関係国による判断をみると、韓国が軍事的「空白地域」になったことが悲劇を生む最大要因であったことだ。共産主義国は、この「空白」に吸い寄せられるように軍事進出するのがパターンである。その後の中国が行った南シナ海での占拠も、全てこのパターンに従っている。尖閣諸島も「空白」になれば、簡単に占領するであろう。「空白」をつくることが侵略を招く原因である。

       

    文政権時代、北朝鮮スパイ事件が国家情報院長(当時)の手によって、もみ消されていたことが明らかになった。もみ消しの理由は、「南北関係を悪化させる」というもの。スパイ活動の取締りは、国家の安全を守るために必須である。文政権は、北朝鮮を刺激しないという政治的配慮で「見て見ぬ振り」をしていたことになる。職務の怠慢である。

     

    『中央日報』(1月20日付)は、「民主労総の幹部まで関与したスパイ事件文在寅政権の責任はないのか」と題する社説を掲載した。

     

    全国民主労働組合総連盟(民主労総)の元・現幹部がスパイ活動をした容疑で国家情報院の捜査を受けている。家宅捜索が行われた民主労総は昨日、「一つのショーだ」と「7月のゼネスト闘争を通じて尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府に対抗して戦う」と明らかにした。共に民主党と正義党も「公安政局の復活」とし、尹政権の反労働組合政策、国家情報院の対共捜査権維持のための政治的捜査だと批判した。

     

    (1)「裁判所が発行した捜索差押許可状には、国家情報院が長い時間をかけて確保した具体的な根拠が含まれているという。彼らは2017~19年にカンボジアとベトナムで北朝鮮の対南工作部署の文化交流局(旧225局)工作員と接触し、その指令に基づいて反米・親北活動をした容疑を受ける。民主労総組織局長、民主労総傘下保健医療労働組合組織室長、金属労働組合元副委員長として各種活動に大きな影響力を行使することができた」

     

    韓国の「貴族労組」と言われる民労総の元・現の幹部が北朝鮮スパイ行為に加担したとされる事件である。現在、民労総組織局長が、2016年8月に中国で北朝鮮工作員にかばんを手渡し、それから1カ月後にベトナムで工作資金が入った黒いものを受け取ったとみられる。その後、資金追跡をかわすため南大門など韓国国内にある複数の私設外貨両替所で約1万ドル(約130万円)を換金したとされる。

     

    (2)「正確な事実は、捜査および裁判の結果を見てこそ分かるが、これまで民労総がしてきた政治闘争からみて北朝鮮との連係の可能性は排除できない。労働者の権益とは距離がある「在韓米軍撤収」「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」のような声明と集会スローガンが代表的な例だ。昨年6月に開かれた「反米自主労働者大会」、8月の「8・15自主平和統一大会」では韓米同盟の撤廃を主張した」

     

    民労総は、労働運動目標に過激な政治目標を掲げてきた。「在韓米軍撤収」、「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」などである。組織局長が北朝鮮から資金を得ていたとすれば、その見返りとして米軍撤退という項目を挙げざるを得なかったであろう。

     

    (3)「さらに大きな問題は、こうした内容がすでに数年前から捕捉されながらも本格的な捜査が行われなかったところにある。これは、文在寅政権が南北関係に執着し、対共捜査機能を量的・質的に縮小したためという批判が避けられない。政府側の人物を要職に座らせながら国家情報院はもちろん、軍、検察、警察の対北朝鮮情報収集と捜査機能を大きく弱化させた。2011~16年に26件だったスパイ摘発件数は、文政権の2017-20年には3件にすぎなかった。2021年8月に北朝鮮の指令を受けて大統領選挙はもちろん総選挙に介入してきた忠北(チュンブク)スパイ集団を捜査したとはいえ、縮小捜査という声が多かった」

     

    国家情報院の担当官が、長年の捜査で証拠固めをしてきたにもかかわらず、国家情報院長は捜査を握り潰したことだ。文大統領(当時)の意向を反映した捜査握りつぶしかどうか、現状では不明である。今後の捜査次第では、文氏の責任追及もあろう。文政権時代のスパイ摘発は3件だが、朴政権では26件もあったのだ。

     

    (4)「さらに2020年、共に民主党は国家情報院の対共捜査権を廃止して2024年に警察に移管する国家情報院法改正案を単独処理した。1年単位で主要幹部人事が行われる警察組織の特性上、数年間の情報を蓄積しながら高度なノウハウで進める対共捜査を担当するには無理があるという指摘があったが、耳を傾けなかった。北朝鮮の脅威の強度が強まる状況で、北朝鮮の指令を受けたスパイまでが暗躍するようなことは決してあってはならない。対共捜査能力を強化するための超党派的な議論が必要だ。国家情報院は、確実な証拠に基づいた捜査を進めることを望む」

     

    文政権は、南北融和が最大の目的であった。できるだけ、スパイ捜査をしないように「工夫」を凝らしたのである。文政権はまた、スパイ捜査権を国家情報院から警察に移管させる。これを24年か実行すると法改正したほど。事実上のスパイ捜査縮小を狙っているのだ。ここまでして、北朝鮮に「スパイ天国」を提供しようとしたことは疑いない。危ない橋を渡っていたのだ。北朝鮮が、軍事的攪乱を図る事態になった時、どのように対応する積もりであったのか。

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    文大統領は、北朝鮮による国連が禁じた違法なミサイル発射実験に対して、ひたすら沈黙している。抗議すれば、北の猛反撃を受けて感情的に拙くなることを恐れている結果だ。ひたすら堪え忍び、南北対話を「お願いする」立場を貫いている。こういう腑抜けな態度が、北を一段と強気にさせて、ミサイル発射実験をエスカレートさせている。

     

    文氏がここまで低姿勢を貫いているのは、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出して、その名を歴史に留めたいという名誉心である。習近平氏の「終身国家主席」願望と同様に、文氏の名誉心も相当強いようだ。この被害は、世界に及ぶことを忘れている。

     

    『朝鮮日報』(1月8日付)は、「北の挑発、文在寅大統領就任後に約30回 朴槿恵政権期の6倍」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の期間中に最も多くのミサイルを発射したことが分かった。

     

    (1)「パク・チョンイ予備役陸軍大将は今月6日、自由民主研究院および自由フォーラム主催のセミナーで、「北朝鮮の公式発表を分析した結果、北朝鮮は文在寅大統領就任4日後の2017年5月14日から最近まで、およそ30回にわたり50発あまりのミサイルを発射した」と発表した。北のミサイル発射は、朴槿恵(パク・クンへ)政権時代には5回(8発)、李明博(イ・ミョンバク)政権時代には12回(19発)だった。文大統領は今年の新年の演説で「韓半島情勢はかつてないほど安定的に管理されている」と発言したが、北の挑発の回数だけを比べると、朴槿恵政権時代の6倍も多いということになる

     


    北朝鮮の交渉相手は、米国だけである。韓国を、単なる露払い程度にしか見ていないのだ。文氏は、この事実を認めようとせず、北へ無条件の融和策を取っている。大きな「引出違い」に陥っているのだ。この延長上で、中国へも無原則な融和策に出ている。

     

    文政権のこうした外交姿勢は、中朝双方から低評価されるという思わぬ結果を招いている。韓国は、毅然とした外交姿勢を取らないので、中朝から「舐められ放題」という事態である。下線のように北朝鮮は、文政権になってから朴大統領時代と比べ6倍ものミサイル発射実験を行なっている。この数字こそ、北朝鮮がやりたい放題の振る舞いをしている現実を見せつけている。

     

    (2)「北朝鮮は2017年9月に水素爆弾の実験(6回目の核実験)に成功し、核弾頭を本格生産した。米国ランド研究所は、現在北朝鮮は67発から116発の核弾頭を保有しており、2027年には151発から242発の核弾頭を持つという見込みを示した。また、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に加えて極超音速ミサイルの技術発展まで成し遂げた。朴・前大統領は、「北朝鮮が、表面的には非核化交渉と南北関係改善に乗り出すふりをしつつ、裏では核・ミサイル開発に全力疾走していたことを示している」と語った」

     

    韓国の北朝鮮政策は、朴大統領時代の方がはるかに厳しかった。対応の甘くなった文政権において、北朝鮮のミサイル能力は格段の進歩を遂げている。すべて、文氏の無原則な融和策が招いた結果である。日本への被害も大きくなるのだ。

     


    『朝鮮日報』(1月7日付)は、「北朝鮮の極超音速ミサイルを世界が糾弾、韓国は沈黙」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮は6日「国防科学院は15日、極超音速ミサイルの試験発射を行った」「700キロに設定された標的に誤差なく命中させた」と報じた。マッハ5以上で滑空し変速的な軌道を描く極超音速ミサイルは現存のミサイル防衛システムでは迎撃が不可能な「ゲーム・チェンジャー」となる武器だ。昨年9月に続き2回目に行われた今回の発射を通じ、速度と変速的な軌道で飛行する能力が大きく向上したとみられる。

     

    (3)「過去に北朝鮮がこれと同じような挑発を行った際に、韓国と米国の外交当局が最も迅速に状況の共有と対策の準備に取り掛かったが、今回は米国と日本の外相による電話会談が先に行われた。米国のブリンケン国務長官と日本の林芳正外務大臣はこの日、北朝鮮が発表を行った2時間後35分間にわたり電話会談を行った。会談について米国務省は「ブリンケン国務長官は北朝鮮の弾道ミサイル発射を糾弾し、日本に対する米国の防衛公約は鉄壁だと強調した」と説明した」

     

    日米外相による電話会談は行なわれたが、米韓では行なわれていない。多分、韓国側にその動きがない結果であろう。米韓外相の電話会談では、北朝鮮へ抗議する内容になるはずだから,韓国が避けたに違いない。「終戦宣言」に賭けているのだ。

     


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    「欧州連合(EU)報道官は、「北朝鮮による度重なるミサイル発射は対話の再開を目指す国際社会の努力に逆行する」とした上で「北朝鮮には国連安保理決議に従う義務を順守するよう求める」と述べた。北朝鮮ミサイルの射程圏から遠く離れた国々は一斉に北朝鮮を糾弾しているが、北朝鮮のミサイルの脅威に直接直面している韓国だけが口を閉ざしている形だ」

     

    EUが、北朝鮮のミサイル発射実験に抗議しているのに対して、韓国が沈黙しているのは不思議な現象だ。沈黙は、容認という意味だ。文氏の安全保障観はどうなっているのか。自分の名誉心だけ満たされれば、それでよしとすることだろう。困った大統領が出てきたものである。

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    韓国文大統領は、来年2月の北京冬季五輪で北朝鮮の金正恩国務委員長と会談を計画中と見られてきた。だが、IOC(国際オリンピック委員会)は、東京五輪へ参加しなかった北朝鮮の資格停止を決めたことから、文氏は北京での金氏との会談が不可能になった。

     

    文大統領は、来年5月までが任期である。文氏は、南北交流への糸口をつくる外交努力を重ねてきたが、北朝鮮の一方的な中断によって宙に舞っている。文氏は、IOCによる北朝鮮制裁によって、最後の会談機会を失うのは確実である。

     


    『中央日報』(9月9日付)は、「IOC、東京五輪不参加の北朝鮮に資格停止 文大統領の平和構想に直撃弾」と題する記事を掲載した。

     

    国際オリンピック委員会(IOC)が2022年まで北朝鮮のオリンピック委員会(NOC)の資格を停止させることにした。北朝鮮の一方的な東京五輪不参加決定にともなう懲戒で、2022年2月の北京冬季五輪に北朝鮮代表団が参加するのは不可能になるものとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の韓半島(朝鮮半島)平和プロセス再稼働計画にも直接的影響を及ぼす恐れがある。

     

    (1)「IOCは8日に報道資料を出し、こうした執行委員会での議論結果を発表した。IOCは具体的に▽国際制裁により保留したが北朝鮮NOCに配分されていたIOCの財政的支援を没収する▽北朝鮮NOCの懲戒期間中はIOCのすべての支援やプログラムの恩恵受ける資格を剥奪する▽2022年北京冬季五輪出場資格を得た北朝鮮NOC選手に対してはIOC執行委員会が適切に決める――などだ」

     

    IOCは、北朝鮮に対して3つの制裁を科した。ただ、選手の出場については個人の資格で出場する可能性を残している。ロシアは、ドーピングで国家として出場できぬが、個人資格で出場を認めていると同じ対応になる。

     


    (2)「IOCは、「北朝鮮NOCが東京五輪の成功的開催に向け寄与しなかった点を考慮した措置」と明示した。「北朝鮮のNOCは東京五輪に参加しなかった唯一のNOCだった」とも明らかにした。ただ制裁期間は執行委員会の決定により再考できるとも明示した。これに先立ち北朝鮮NOCは4月に総会を開き、新型コロナウイルスを理由に東京五輪不参加を決めた。「悪性ウイルス感染症(新型コロナウイルス)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するために」としながらだ」

     

    北朝鮮は、反日で東京五輪に参加しなかったが、こういう形でペナルティが加えられた。過去の財政支援も没収され、22年末までの資格を剥奪されるという不名誉な措置である。

     


    (3)「これと関連してもIOCは、「われわれは東京五輪前数カ月にわたり北朝鮮NOCと多様な疎通と協議を通じ安全な開催を再確認しており、ワクチン提供を含め適切な解決策を見出すことができる建設的提案を最後の瞬間まで出したが、北朝鮮NOCから体系的に拒絶された」として不快感を隠さなかった。IOCは、北朝鮮にワクチン支援まで提案しながら東京五輪参加を誘導したが、北朝鮮が一方的な不参加決定を翻意しなかったということだ。IOCは、「北朝鮮NOCは(東京五輪不参加により)五輪憲章に提示された措置と制裁にさらされるという事実に対し極めて明確な警告を受けた」とも説明した」

     

    改めて、IOCの持つ権力の大きさが注目される。ドーピングだけでなく、五輪不参加でも出場停止という制裁が加えられるからだ。五輪参加は義務である以上、国家としての不参加は許されない。北京冬季五輪も参加が義務である。欧米で言われている北京冬季五輪ボイコット論は、政府関係者が出席しないというだけの限界がある。

     


    (4)「これまで外交界では、文在寅政権が2022年2月の北京冬季五輪を契機に南北関係改善を試みるだろうという観測が支配的だった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が友好国である中国の慶事を祝う名分で五輪に参加する場合、南北首脳会合も可能になるかもしれないためだ。次期総選挙が2022年3月に行われることを考慮すれば、文大統領の任期末にぴったりのタイミングに機会を設けることができた」

     

    文大統領は、今回のIOC決定が大きな痛手になろう。東京五輪には出席せず、北京冬季五輪へ出席するという形で、日本への「意趣返し」を狙っていたであろうが、これも不発に終わる。文氏の外交戦略は、ことごとく失敗という形で締めくくられそうだ。 

     

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