韓国の国家情報院(国情院)が18日、北朝鮮軍のロシア派兵をめぐり異例にも報道資料を出して関連情報を公開した。北朝鮮特殊部隊1500人が、すでに派兵された事実と、北朝鮮軍の個人の写真まで公開した。韓国は、「前例のない脅威」に「前例のない対応」をした形だ。
(1)「韓国国情院は今回、「ロシア太平洋艦隊所属の揚陸艦4隻、護衛艦3隻が8日から13日にかけて北の清津(チョンジン)・咸興(ハムフン)・舞水端(ムスダン)近隣地域から特殊部隊およそ1500人をロシアのウラジオストクに1次移送するのを完了した」と明らかにした。具体的にロシア艦艇が、北朝鮮特殊部隊兵力を移送する動きに関連し、人工衛星撮影写真も公開した。外国の衛星写真提供民間会社AIRBUSが提供した写真と、政府が運用する衛星が撮影したと推定される写真など3枚を北朝鮮軍派兵の証拠として提示した。ウクライナ情報機関と協力して人工知能(AI)顔認識技術を適用した結果、北朝鮮軍ミサイル技術者を特定した」
韓国国情院は、北朝鮮がロシアへ特殊部隊およそ1500人を派兵したと発表した。具体的な証拠写真も添えている。
(2)「特に北朝鮮軍が投入された地域や部隊名まで詳細に特定したのは、偵察資産だけでなく内部情報に直接接近したという解釈が可能だ。盗聴・傍受やヒューミント(HUMINT、人的情報資産)まで動員した結果と推定される。これは「情報は握っているほど価値が高まる」という過去の公式とは異なる接近だ。最近の情報戦で浮上する「戦略的機密解除」技法を積極的に活用したということだ」
北朝鮮軍が、投入された地域や部隊名まで詳細に特定されているのは、韓国情報網の力量を示したとみられる。
(3)「趙太庸(チョ・テヨン)国情院長も7月の国会情報委員会で「過去には軍事・安保分野の情報は絶対に外部に露出しないのが望ましいと評価されたが、最近、米国をはじめとする主要先進国では、戦略的秘密公開形態で一部を公開することで関係国家の警戒心を高める目的で使われる傾向がある」(国民の力情報委幹事の李成権議員)と説明した。一例として2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻当時、米国はロシアの地上攻撃時点まで特定の情報報告を友好国と共有し(当時、米ポリティコ報道)ロシアの動態を把握している事実を意図的に浮き彫りにした」
韓国情報院が、北朝鮮情報をあえて公表した理由は、米国CIAによってロシアのウクライナ侵攻情報を事前に発表した例に倣ったものだ。
(4)「韓国国情院が情報資産の露出リスクまで甘受して関連情報を公開したのも、これにより得るメリットの方が大きいという判断のためと解釈される。情報力を誇示する一方、ロシアと北朝鮮に内部の「穴」を疑わせ、不安と亀裂を誘発する効果があるからだ。高麗大の南成旭(ナム・ソンウク)統一融合研究院長は、「国情院が異例にも大量の物証を公開したのは、それだけ情報の信憑性に自信を持って心理戦をしているという傍証」とし「ただ、朝ロは国際世論を眼中に置かず行動しているため、当分は『マイウェイ』の動きを見せる可能性が高い」と話した」
今回の韓国情報院の情報公表で、ロ朝は衝撃を受けているはずである。この件について、ロ朝が沈黙していることに表れている。事前に情報が察知され、筒抜けになっていたからだ。
(5)「朝ロの行動を抑止できなくても高い費用を払わせる効果はあるとみられる。統一部の金秀卿(キム・スギョン)次官はこの日、チャンネルAに出演し「『暴風軍団』と呼ばれる特殊部隊の1次派兵があったのに続き、近いうちにその配下部隊員が追加で派兵されるとみられる」とし「防御より攻撃に特化している部隊員であり、激戦地のクルスクが(投入される戦場として)可能性があるのではと思う」と話した」
韓国統一部は、近いうちに北朝鮮の実戦部隊が派兵されると予測している。
(6)「ウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は1月、米外交専門紙『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿で「米国は情報外交の価値が高まっている点を学んでいる」として、次のように指摘した。「戦略的機密解除は競争者を弱化させ、同盟を結集するために特定の機密を意図的に一般公開するものであり、これは政策立案者に強い道具となっている」と指摘」
バーンズ米CIA長官は、事前に機密情報公開が敵方を弱体化させ、同盟側を結集させるとしている。中国が台湾侵攻を行えば、事前に情報が公開され西側が準備する時間的ゆとりができる。奇襲攻撃はできない時代だ。
(7)「(今回の韓国情報院の発表は)バーンズ局長の説明のように、同盟および似た立場の国が警戒心を共に高める効果もある。今回の件の余波で北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ派兵論がまた台頭するという見方が出てきた。マルク・ルッテNATO事務総長は18日、北朝鮮のウクライナ派兵について「現在までの我々の公式立場は確認不可だが、もちろんこの立場は変わる可能性がある」と話した。主要国の情報機関も朝ロ間の動向を注視する可能性が高まった」
NATOは、北朝鮮のロシア派兵を重大視するであろう。火に油を注ぐことにならぬよう、ロシアへ自重を望みたい。