文政権時代、北朝鮮スパイ事件が国家情報院長(当時)の手によって、もみ消されていたことが明らかになった。もみ消しの理由は、「南北関係を悪化させる」というもの。スパイ活動の取締りは、国家の安全を守るために必須である。文政権は、北朝鮮を刺激しないという政治的配慮で「見て見ぬ振り」をしていたことになる。職務の怠慢である。
『中央日報』(1月20日付)は、「民主労総の幹部まで関与したスパイ事件文在寅政権の責任はないのか」と題する社説を掲載した。
全国民主労働組合総連盟(民主労総)の元・現幹部がスパイ活動をした容疑で国家情報院の捜査を受けている。家宅捜索が行われた民主労総は昨日、「一つのショーだ」と「7月のゼネスト闘争を通じて尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府に対抗して戦う」と明らかにした。共に民主党と正義党も「公安政局の復活」とし、尹政権の反労働組合政策、国家情報院の対共捜査権維持のための政治的捜査だと批判した。
(1)「裁判所が発行した捜索差押許可状には、国家情報院が長い時間をかけて確保した具体的な根拠が含まれているという。彼らは2017~19年にカンボジアとベトナムで北朝鮮の対南工作部署の文化交流局(旧225局)工作員と接触し、その指令に基づいて反米・親北活動をした容疑を受ける。民主労総組織局長、民主労総傘下保健医療労働組合組織室長、金属労働組合元副委員長として各種活動に大きな影響力を行使することができた」
韓国の「貴族労組」と言われる民労総の元・現の幹部が北朝鮮スパイ行為に加担したとされる事件である。現在、民労総組織局長が、2016年8月に中国で北朝鮮工作員にかばんを手渡し、それから1カ月後にベトナムで工作資金が入った黒いものを受け取ったとみられる。その後、資金追跡をかわすため南大門など韓国国内にある複数の私設外貨両替所で約1万ドル(約130万円)を換金したとされる。
(2)「正確な事実は、捜査および裁判の結果を見てこそ分かるが、これまで民労総がしてきた政治闘争からみて北朝鮮との連係の可能性は排除できない。労働者の権益とは距離がある「在韓米軍撤収」「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」のような声明と集会スローガンが代表的な例だ。昨年6月に開かれた「反米自主労働者大会」、8月の「8・15自主平和統一大会」では韓米同盟の撤廃を主張した」
民労総は、労働運動目標に過激な政治目標を掲げてきた。「在韓米軍撤収」、「THAAD(高硬度防衛ミサイル)配備撤回」などである。組織局長が北朝鮮から資金を得ていたとすれば、その見返りとして米軍撤退という項目を挙げざるを得なかったであろう。
(3)「さらに大きな問題は、こうした内容がすでに数年前から捕捉されながらも本格的な捜査が行われなかったところにある。これは、文在寅政権が南北関係に執着し、対共捜査機能を量的・質的に縮小したためという批判が避けられない。政府側の人物を要職に座らせながら国家情報院はもちろん、軍、検察、警察の対北朝鮮情報収集と捜査機能を大きく弱化させた。2011~16年に26件だったスパイ摘発件数は、文政権の2017-20年には3件にすぎなかった。2021年8月に北朝鮮の指令を受けて大統領選挙はもちろん総選挙に介入してきた忠北(チュンブク)スパイ集団を捜査したとはいえ、縮小捜査という声が多かった」
国家情報院の担当官が、長年の捜査で証拠固めをしてきたにもかかわらず、国家情報院長は捜査を握り潰したことだ。文大統領(当時)の意向を反映した捜査握りつぶしかどうか、現状では不明である。今後の捜査次第では、文氏の責任追及もあろう。文政権時代のスパイ摘発は3件だが、朴政権では26件もあったのだ。
(4)「さらに2020年、共に民主党は国家情報院の対共捜査権を廃止して2024年に警察に移管する国家情報院法改正案を単独処理した。1年単位で主要幹部人事が行われる警察組織の特性上、数年間の情報を蓄積しながら高度なノウハウで進める対共捜査を担当するには無理があるという指摘があったが、耳を傾けなかった。北朝鮮の脅威の強度が強まる状況で、北朝鮮の指令を受けたスパイまでが暗躍するようなことは決してあってはならない。対共捜査能力を強化するための超党派的な議論が必要だ。国家情報院は、確実な証拠に基づいた捜査を進めることを望む」
文政権は、南北融和が最大の目的であった。できるだけ、スパイ捜査をしないように「工夫」を凝らしたのである。文政権はまた、スパイ捜査権を国家情報院から警察に移管させる。これを24年か実行すると法改正したほど。事実上のスパイ捜査縮小を狙っているのだ。ここまでして、北朝鮮に「スパイ天国」を提供しようとしたことは疑いない。危ない橋を渡っていたのだ。北朝鮮が、軍事的攪乱を図る事態になった時、どのように対応する積もりであったのか。