中国は、欧州から軍事的に警戒される存在へと評価を落としている。一方、台湾は民主主義の砦として評価を高めるなど、対照的な動きだ。
『ロイター』(6月5日付)は、「スロバキア議員団が台湾到着 蔡総統と会談へ」と題する記事を掲載した。
台湾の外交部(外務省)は6月5日、欧州連合(EU)加盟国のスロバキア議員団が同日、台湾に到着したと発表した。スロバキア国会のミラン・ローレンチク副議長らで構成され、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統との会談などを予定する。台湾に対する中国の圧力が強まるなか、台湾支持を表明するため各国議員の訪台が相次いでいる。
(1)「外交部は2日、到着に先立ち「訪問を心から歓迎する」との声明を発表した。訪問は10日までの日程で、当局関係者や研究機関と経済や科学技術の分野で交流を深める。スロバキアは4~5月にかけ、議会の複数の委員会が台湾の世界保健機関(WHO)総会参加を呼びかける決議を実施するなど、台湾支持の姿勢を示している。2021年10月に台湾の呉釗燮・外交部長(外相)がスロバキアを訪問し、同年12月にはスロバキア高官が訪台するなど往来も活発だ」
中国は、これまで「一つの中国」を根拠にして、中国と国交のある国の台湾訪問を強くけん制してきた。だが、今やこの「けん制」は何の効果もなく、欧州から次々と使節団が訪問している。中国がロシアと「限りない友情」を誓いあったことに反発するごとく、訪台する国が増えている。
(2)「台湾には5月30日~6月1日の日程で米民主党のタミー・ダックワース上院議員も訪問したばかり。相次ぐ各国議員の訪台に中国の反発は避けられない」
中国は、台湾海峡へ中国空軍機を飛行させる「嫌がらせ」ぐらいしかできない状況である。
『日本経済新聞』(4月12日付)は、「台湾・蔡総統、スウェーデン議員団らと会談」と題する記事を掲載した。
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は4月12日、訪台したスウェーデン議会と欧州議会の合同議員団とオンラインで会談した。中国が台湾への圧力を強めるなか、議員団は台湾支持を表明するため10~14日にかけ訪台中だ。会談で両者はロシアのウクライナ侵攻も念頭に、民主主義推進に向けた協力で一致した。
(3)「総統府によると、蔡氏は会談で「台湾とスウェーデンは民主主義・自由という普遍的な価値観を共有するパートナーだ」と指摘した。その上で「世界は権威主義の持続的な拡大に直面している」と強調。台湾や欧州が「民主主義を守るために協力することがいっそう重要になった」として連携を呼びかけた。これに対し、議員団の代表は「中国は台湾に脅威を与え続けている」と指摘。「私たちは台湾の自由と民主主義を守るため、全力を尽くす義務がある」と述べた。スウェーデンではロシアのウクライナ侵攻を受け、北大西洋条約機構(NATO)加盟の機運が高まっている」。
下線部のように、スウェーデン議員団は中国を批判して「中国は台湾に脅威を与え続けている」と指摘するまでになっている。中国による、高度に工業発展を見せている台湾への圧力は不当なものと映るのだ。中国にとっては、マイナスイメージである。
欧州が、台湾を高く評価しているのは、出遅れている半導体技術で世界最先端を走っていることへの敬意を込めているものだ。
『ロイター』(6月5日付)は、「台湾、半導体分野で貢献アピール EUと閣僚級協議」と題する記事を掲載した。
台湾と欧州連合(EU)は6月2日、産業通商関係閣僚級協議を行った。王美花経済部長(経産相)は欧州委員会の通商総局総局長のザビーネ・ベヤント氏に、台湾が世界の半導体産業にとって信頼できるパートナーであり続けると述べた。EUは今年2月に「欧州半導体法」を公表し、半導体分野における協力相手として台湾を挙げた。
(4)「台湾経済部の声明によると、協議では半導体分野の協力が主要議題となり、王氏は「台湾は今後も世界の半導体産業にとって信頼できるパートナーであり続け、強固なサプライチェーン(供給網)の安定を支援する」と強調した。EUなどが半導体不足に対処するのを台湾は支援してきたとした。また、これまで台湾とEUの会合は次官級だったが、今回は閣僚級に格上げされたと指摘。「これは国際経済・貿易協力に向けたEUの青写真で台湾の重要性が増したことを示し、台湾とEU関係の大きな飛躍を意味する」と述べた」
下線のように、台湾とEUの関係は半導体を軸に発展方向にあると認め合っている。今後は、双方が閣僚級レベルの会談に格上げすることになった。台湾は、長年にわたり中国の影に隠れていたが、半導体という武器をもってEUと交渉する場を持てるようになった。