勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: 北朝鮮経済ニュース

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    儒教社会に人権はない

    北朝鮮がナンバーワン

    国連も乗り出す事件へ

    根深い女性蔑視の社会

     

    立つ鳥跡を濁さず、という。韓国前大統領の文在寅氏は退任後、世間から忘れられたいと言っていたが、どうも希望通りになりそうもない雲行きだ。在任中に、韓国公務員が北朝鮮軍により射殺された事件が蒸し返され、責任を追及されているからだ。射殺された遺族は、文氏を訴えると発言しており、事件の行方が注目されるにいたった。

     

    この問題は、文政権が北朝鮮とのいざこざを恐れて「不問」に付した疑惑が持たれている。韓国公務員は、北朝鮮領海を漂流して生存していることを確認されながら、韓国政府が直ぐに救助の要請をせず3時間後に北朝鮮軍により射殺・焼却されたという衝撃的事件である。この事件の顛末が、韓国新政権で明らかになった。政権交代がなければ、隠蔽されたままで葬り去られたであろう。

     


    儒教社会に人権はない

    事件の詳細は後で触れるが、文氏は「人権派弁護士」として名前を売ってきた人物だ。これを足がかりにして大統領まで上り詰めた。文氏は、果たして人権派であったか。そういう疑問の声が最近、米議会からも上がっている。文氏が、北朝鮮外交重視の結果、最も大事な人権問題を棚上げするご都合主義者になったと批判されているのだ。韓国にとっても、極めて由々しい批判である。

     

    この人権問題と関係あるのが、大統領夫人への嫌悪感である。大統領夫人は、「私人」であって批判対象になるべき存在でない。ところが、韓国では大統領夫人を「公人」扱いし、批判対象にしているのだ。「出しゃばり」とか、「目立ちたがり屋」とまで批判される始末だ。極めつけは、尹大統領が愛妻家で食事の支度をしていたことを、進歩派メディアまで批判していることだ。これは、夫人が「良妻賢母」という儒教社会のイメージとかけ離れていることを指摘しているのであろう。

     


    韓国は朝鮮李朝以来、儒教が国教になったことから、無意識のうちに儒教倫理で社会を規制している。儒教の基盤である宗族社会では、個人の認識はなく集団の認識が先行している。「私」という概念は邪悪なものとされており、「私たち」が優先概念である。ここには、個人の「人権重視」という概念は、口先では存在しても、心の奥まで響かない曖昧な概念になっているのだ。この事実に注目すべきであろう。

     

    儒教倫理では、男女平等という認識もない。女性蔑視を意味する、「男女七歳にして席を同じうせず」という言葉通りに男尊女卑社会が形成された。韓国で、大統領夫人への批判が絶えないのは、伝統的に根付いている儒教の男尊女卑の認識が無意識に働いている結果だ。韓国が、真に近代社会へ脱皮するには、こういう儒教倫理の残滓を一掃することであろう。

     


    北朝鮮がナンバーワン

    冒頭から、儒教倫理などと「小難しい」ことを持出したのは、理由あってのことである。それは、前記二つの「人権」と「女性蔑視」の問題を何の脈絡もなく取り上げると、「三文記事」に堕する危険性があるからだ。韓国社会が、いかに儒教に毒されているかを検証するには、まずその検証ツールを明らかにしておかなければならない。こういう私の流儀をご理解いただきたい。

     

    まず、「人権問題」に該当する事件からとり上げたい。

     

    2020年9月22日、北朝鮮軍の銃撃を受け遺体を燃やされて死亡した韓国海洋水産部の公務員、故イ・デジュンさんの事件に関する事件だ。韓国政府は、故イさんが多額の債務を抱えており、勤務中の水産部調査船から姿をくらました、という説明をした。自分の意思で北朝鮮領海へ泳いで行き、北朝鮮軍から「不審者」として射殺された、という説明で事件の幕引きとした。

     


    政権が代わって大逆転が起こった。海洋警察庁の丁奉勳(チョン・ボンフン)庁長が6月22日、「多くの誤解をもたらした」として、国民と遺族に向け謝罪したのだ。

     

    海洋警察は同事件を巡って、男性が行方不明になった8日後に中間捜査結果を発表。軍当局と情報当局が傍受した北朝鮮の通信内容や本人の債務などを根拠に、「男性が自ら北朝鮮に渡ろうとした」との判断を示した。国防部と海洋警察庁が今年6月16日、「自ら北に向かったという証拠はない」とし、文在寅政権当時の立場を覆したことから、海洋警察庁トップが謝罪会見に追い込まれたものだ。

     

    文前大統領は、事件の報告を受けてから3時間後に、公務員は北朝鮮軍による銃撃で死亡した。その3時間に文氏がどのような対応したかが問われている。遺族側の弁護士は、文氏が何ら救命指示を出さなかったならば、職務放棄罪で告発。事態を放置するよう指示したのであれば、職権乱用罪で文氏を告発すると強い姿勢である。(つづく) 

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    あじさいのたまご
       

    韓国文大統領は、東京五輪を舞台に南北会談構想を練ってきたが、北朝鮮の不参加決定で水の泡になった。韓国与党では、来年2月の北京冬季五輪に期待を繋ぐ向きもある。ただ、来年5月退任の文大統領と会談しても、実効は期待できない。となれば、東京五輪での南北接触が不可能になったことで、文大統領の4度目の南北首脳会談は事実上、消えたと言える。

     

    『朝鮮日報』(4月7日付)は、「北朝鮮『東京オリンピックに参加しない』、文大統領の南北構想に狂い」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮が6日、東京オリンピック・パラリンピックへの不参加を宣言した。これによって北朝鮮をオリンピックに参加させ、「南北関係の改善」から「米朝対話の再稼働」へとつなげたかった文在寅(ムン・ジェイン)大統領のいわゆる「平昌アゲイン構想」も水の泡になった。外信(ロイター)は「北朝鮮が韓国の希望を打ち砕いた」と報じた。

     

    北朝鮮体育省は同日、「共和国オリンピック委員会は総会(3月25日)で、悪性ウイルス感染症(コロナ)による世界的な保健危機状況から選手たちを守るため、オリンピック競技大会に参加しないことを討議・決定した」と発表した。南北は東京オリンピック・パラリンピックで女子バスケットボール、男女のボート、男女の柔道、女子ホッケーで合同チームを組む方向ですでに合意していた。

     

    (1)「大統領府はいわゆる「ハノイ・ノーディール(米朝首脳会談決裂)」以降、完全に行き詰まり状態にある米朝関係を改善させるため、東京五輪を積極的に活用する計画を進めていたようだ。北朝鮮の平昌冬季五輪参加を通じて実現した南北の高官級による交流を通じ、その後南北首脳会談から米朝首脳会談まで一気に実現させた「2018平昌の春」をもう一度繰り返すという構想だった。そのために強行一辺倒だった対日政策も大きく見直した。文大統領は先日の三・一節における演説で「東京五輪は韓日間、南北間、朝日間、そして朝米間の対話のチャンスになり得る」として「韓国は東京五輪の成功に向け協力したい」との考えを示していた」

     

    南北首脳会談は、2018年4月、5月、9月と続けて行なわれた。雪解けムードが一気に高まった。文大統領の人気が最も高まった時期である。半年間に3度も南北首脳会談が行なわれたことは、韓国が北朝鮮へ相当に深い約束をしたと見られる。それが、ことごとく実施できなかったので、北朝鮮の受けたショックも大きいであろう。北朝鮮が、4度目の会談に応じる可能性は小さい。

     

    (2)「北朝鮮はオリンピック不参加の口実として「選手保護」を挙げたが、実際は「韓国への圧力」という側面が大きいとの分析もある。かつて国家安保戦略研究院長などを歴任した劉性玉(ユ・ソンオク)氏は、「韓米連合訓練の完全中断といった根本問題の解決なしには南側に会わないということだ」との見方を示した。北朝鮮が先月25日に下した不参加の決定を12日も過ぎてから公表したことも、このような見方を後押ししている。韓国政府の安保部処(省庁)関係者は「与党勢力にとって悪材料となる知らせがよりによって補欠選挙の前日に発表された。これは韓国に対する高度な心理戦だ」との見方を示した」

     

    北朝鮮は、米韓軍連合訓練の完全中断を要求している。これが実現しなければ、南北首脳会談に応じない姿勢と見られる。日本が、韓国の国際法違反判決を自国で解決せよ、と要求しているようなものである。北朝鮮と日本の主張は無関係だが、韓国は簡単に答えの見つからないだけに苦しい立場である。

     

    米韓軍連合訓練の完全中断は、北朝鮮が核開発を中止することと同等の重みを持っている。韓国は、なぜそのことを北朝鮮に伝えて核開発中止と核放棄を迫らないのか。ただ、南北が会談しても解決の糸口は見つかるはずがない。

     


    (3)「それでも韓国政府は文大統領の任期中に南北関係改善のモメンタム(勢い)を取り戻すことを諦めていない。韓国統一部の関係者は「韓半島の平和、そして南北による対話と協力が可能となるきっかけを探し求める政府の立場に変わりはない」とした上で「今後もそのきっかけを見いだすための努力を続けていくだろう」と述べた。

     

    南北問題は、今や米中問題になっている。韓国は、「南北関係改善のモメンタム(勢い)を取り戻す」と言っているが無駄なことだ。国際情勢の急変を見落としている。

     

    (4)「与党などからは、「現実的に考えて北京冬季五輪が南北関係改善の最後のチャンスだ」との見方も出ている。平昌、東京、北京での五輪については文大統領も昨年8月15日の演説で「史上初めて迎える東アジアでのリレー・オリンピックだ」として「東アジアが友好と協力の土台を固め、共同で繁栄する道へと進む絶好の機会だ」と呼び掛けていた」

     

    北朝鮮は、来年2月の北京冬季五輪で南北首脳会談に応じるだろうか。その可能性はゼロであろう。残り任期2~3ヶ月しかない文大統領を相手に、会談する意味がないのだ。韓国の外交センスはずれていると言うほかない。

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